土木学会論文集F3(土木情報学)
Online ISSN : 2185-6591
ISSN-L : 2185-6591
75 巻, 2 号
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特集号(論文)
  • 城古 雅典, 森脇 明夫, 宮本 勝則, 福士 直子, 有賀 貴志, 矢吹 信喜
    2019 年75 巻2 号 p. I_1-I_11
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     3次元モデルの幾何特性についての公差の設定は,寸法に着目した寸法公差ではなく幾何特性に着目した幾何公差を用いることの方がより的確に表現できると考えられる.

     本研究では,橋脚の3次元設計モデルに幾何公差のアノテーションの適用について考察を行った結果,橋梁躯体工,既製杭工(鋼管ソイルセメント杭),鉄筋工(組立て)において,土木工事施工管理基準の規格値を満たす幾何公差を適用することができた.これにより,従来の寸法による表現に比べ,図面解釈の一義性が保証されることにより,あいまいさや解釈の違いが排除され,正確な情報伝達が行なわれるため,土木構造物の精度が向上するものと考えられる.

  • 今井 龍一, 栗原 哲彦, 横田 拓也
    2019 年75 巻2 号 p. I_12-I_21
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     コンクリート打設は,機器の操作等の手動が主な作業であるため,熟練技能者の経験知を後進に継承していくことが極めて重要となる.著者らは,コンクリート打設における技能継承の基礎技術の開発を最終目標として,技能者へのヒアリング調査等により,バイブレータの差し込み動作が経験知に大きく影響することを明らかにしている.また,バイブレータの差し込み位置・深さの計測手法を考案し,実現場での計測により,有用性を検証している.しかし,差し込み深さは,実現場で計測不可となる場合がみられたことから,計測手法の改良が今後の課題として挙げられている.

     本研究は,ジンバル搭載カメラを用いたバイブレータの差し込み深さの計測手法を考案した.そして,考案手法に則した計測実験を実施し,有用な知見を得た.

  • 山脇 正嗣, 上山 晃, 中村 直人, 木川 堅司, 石田 孝司, 谷保 和則, 吉崎 皇淑
    2019 年75 巻2 号 p. I_22-I_29
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     我が国は世界の約7%を占める111箇所の活火山が存在する火山大国である.火山がひとたび噴火すると,噴石,火砕流,土石流等の噴火事象により甚大な被害が発生するため,定常的な観測・監視により噴火の兆候を迅速に察知し対策をとることが重要である.本研究では,活火山監視の効率化を目的に,AI技術の一種である深層学習(Deep Learning)を活用する方法について検討した.具体的には,気象庁が常時観測・監視を実施している50箇所の活火山の一つである焼岳を対象に,深層学習モデルの畳込みニューラルネットワーク(CNN(Convolutional Neural Network))により,火山監視を阻害する雲や霧等のノイズ除去,並びに噴火事象(噴煙,土石流等)を検出するモデルを構築した.その結果,活火山監視の効率化に深層学習が有効な技術となり得る可能性を示した.

  • 前田 典昭, 河村 圭
    2019 年75 巻2 号 p. I_30-I_39
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     社会基盤施設の維持管理は,点検等で把握した状態から事後の劣化状態を予測し,予防保全としての補修を実施するPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルから成るアセットマネジメントシステムが有効である.その中で予防保全の補修は,施設の延命化に重要な役割を有している.本研究では,道路トンネル内に設置された照明設備の灯具を対象に点検結果では経過観察となる状態に対して,予防保全として簡易補修を実施した場合の有効性を検討したものである.本論文では,はじめに全補修対象数に対する補修実施数を補修率として,著者らが提案した簡易動的マクロモデルを用いた補修率毎の健全度と補修費用の予測算出の方法を解説する.更にその健全性と経済性から最適な補修率の提案と予想される有用性,並びに実用化に向けた課題等について解説する.

  • 今井 龍一, 松島 敏和, 松井 晋, 池本 智, 中西 良成
    2019 年75 巻2 号 p. I_40-I_47
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     我が国の道路の維持管理では,120万km以上ものストックの舗装の劣化状況を定期的に点検し,その結果に応じて修繕・補修している.通常,道路舗装点検では,目視点検や高精度な計測器のレーザ技術を用いた路面性状調査が実施されているものの,路面性状調査は調査費用が高額のため,財政事情から時宜に即した実施が困難なことも往々にしてある.

     本研究では,道路管理者の財政負担軽減を念頭に置き,一般的に入手可能なカープローブデータを用いて舗装の劣化箇所候補を簡易診断にて絞込む「道路舗装点検の効率化手法」を考案した.神奈川県藤沢市を対象地域として,カープローブデータを入手・蓄積し,考案手法を試行した.移動計測車両(MMS)による路面性状調査相当の点検を実施し,その結果との比較検証により,考案手法の有用性を確認した.

  • 永井 徹, 田部井 優也, 長田 哲平, 大森 宣暁, 新 吉高
    2019 年75 巻2 号 p. I_48-I_56
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     過度な車社会による都市部の深刻化する渋滞解決策として,次世代公共交通システムの導入が見直されるなか,新たな交通手段の導入に際し周辺住民との合意形成を円滑に進めるべく導入効果をより分かりやすく説明することが重要である.そこで,市販の3D都市モデルデータをベースに交通流ミクロシミュレータとゲームエンジンの統合開発環境による3DVR都市交通流モデリングシステムを開発した.そして,安価で持ち運びが容易なモバイルVRを用い,本システムにより作成したVRコンテンツの適用性について検証した.この結果,本方式によるVRコンテンツは,従来のCGモデリングツールを用いた方式に比べ,表示品質や処理負荷を低下することなく体験できることを確認した.また,VRコンテンツの作成工数・期間も大幅に低減できる見通しを得た.

  • 今井 龍一, 神谷 大介, 井上 晴可, 田中 成典, 坂本 一磨, 藤井 琢哉, 菊地 英一, 伊藤 誠
    2019 年75 巻2 号 p. I_57-I_68
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     建設現場の労働災害をゼロにするには,効果的な安全管理の徹底が肝要である.その対策として,ビデオカメラを用いて,危険箇所への侵入や建機と接触する恐れのある作業者をリアルタイムに自動で識別して警告する方法が考えられる.深層学習を用いた人物識別の既存研究では,顔認証,歩容認証や人物同定などで従来よりも高精度な成果を得られることが報告されている.しかし,これらの技術では,類似した作業者が往来する建設現場への適用が困難である.

     本研究は,建設現場の作業者が常に装着する安全ベストやヘルメットに着目し,画像認識に優れた深層学習の畳み込みニューラルネットワークに基づく装着物に模様を付けた人物の識別手法を考案した.そして,同手法の評価実験を実施し,建設現場における人物識別に適用できる可能性のある知見を得た.

  • 町田 純平, 原田 隆郎
    2019 年75 巻2 号 p. I_69-I_77
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     耐候性鋼橋梁の外観評点におけるさび形状評価(粒子状・うろこ状・層状の判別)は,評価者によるばらつきが生じやすい.本研究では,鋼材表面さびの三次元モデルを作成し,モデルから任意に抽出した複数のさび断面におけるフラクタル次元を利用して,さび形状を定量的に評価する手法について検討した.その結果,まずさびサンプルでは評点3と評点4の組み合わせ以外においてフラクタル次元の平均値に統計的な差があることがわかった.また,さび形状判定の基準値としてさびサンプルの平均値を利用し,実橋梁の鋼材表面さびの形状評価を行った結果,さび形状だけでなくさびの粒子径や色などの外観も考慮して評価している専門家のさび外観評点より,実橋梁の鋼材表面さびのフラクタル次元による外観評点は,評点が大きくなる傾向にあることがわかった.

  • 宇野 敬太, 佐田 達典, 江守 央
    2019 年75 巻2 号 p. I_78-I_86
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     Galileoの初期サービスが2016年に開始され,日本国内においてもGalileoを利用する際の利便性が高まっているため,今後GalileoとGPSやQZSSとの併用が進められていくことが予想される.本研究では,マルチパス等の影響が懸念される様々な遮蔽環境で,キネマティック測位におけるGPS/QZSSとGalileoの併用効果をFix率やRMS誤差等で評価した.GLONASS併用時の結果と比較することにより,マルチパス環境下におけるGPS/QZSSにGalileoを併用することでの有意な精度への影響を示した.

  • 溝口 知広, 家村 享明, 藏重 裕俊, 水野 剣一, 谷口 修
    2019 年75 巻2 号 p. I_87-I_93
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     老朽化が進む桟橋上部工下面の効率的な調査のため,カメラを搭載した無線操作式ボートが利用されている.これにより撮影した画像群に対するSfM/MVS処理により,3D高密度モデルも取得可能となった.本論文では,3Dモデルの点検業務の様々なプロセスでの有効活用のため,テクスチャ付き3D簡略モデルへと自動変換する手法の開発を目的とする.簡略モデルとは,構造物を構成するスラブ,梁,杭頭といった各部材の平面領域を高精度抽出し,平面同士を接続することで得られる3Dモデルである.また領域ごとにその境界線を利用して高解像度オルソ画像も作成し,これを簡略モデルにマップする.これによりオルソ画像上でひび割れ等の劣化を検出し,これを簡略モデルと合わせて管理することも可能となる.様々な実験よりその有効性を検証する.

  • 井筒 竜宇, 矢吹 信喜, 福田 知弘
    2019 年75 巻2 号 p. I_94-I_105
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     建設現場における出来高管理は,通常,写真を撮影したり測量を行なって,図面やBIM/CIM(Building/Construction Information Modeling)モデルと照らし合わせて出来形を把握して行う.この作業は時間がかかり人的ミスも発生しやすいことから,より正確で効率的に進捗状況を把握する手法が求められている.そこで本研究では,深層学習を活用し,施工途中の鋼骨組構造における梁や柱などの各構造部材をカメラで撮影した画像から検出を行い,効率的に施工現場の進捗を把握する事ができるシステムの構築を目的とする.具体的には,既存の物体検出Convolutional Neural Network(CNN)とセグメンテーションCNNをファインチューニングすることで,撮影した画像から施工途中の構造物を検出可能なCNNを構築する.その後,構築した二つのCNNモデルの統合を行い,画像から各構造部材を把握する事が出来るシステムを構築する.開発したシステムの精度検証と考察を実施する.その後,深層学習を活用して得られた検出結果を用いる事によって,二次元の出来形画像を活用して三次元モデルから出来高を算出するための検出システムの構築を行う.

  • 北川 悦司, 加藤 諒, 安彦 智史, 津村 拓実, 中谷 優介
    2019 年75 巻2 号 p. I_106-I_113
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     UAV(Unmanned Aerial Vehicle)は,災害時の状況把握や地図作成,構造物の維持管理など多様な分野に活用できる機器として注目されている.一般的にUAVで撮影した画像を用いて測量を行う際には,SfM/MVS(Structure from Motion/Multi View Stereo)ソフトウェアにより3次元モデルデータを作成する.この際,入力データには,高解像度でラップ率の高い画像が必要である.しかし,UAVで撮影した画像には,機器の揺れなどの影響により,ピンボケ画像が含まれている.そのため,現状では,膨大な量の連続画像からノイズとなるピンボケ画像を人手で削除し,SfM/MVSソフトウェアに入力しており,非常に効率が悪い.そこで,本研究では,UAV空撮画像の多くがラップ率の高い連続画像であることに着目し,前後の画像とのエッジ率の違いを用いた汎用的なピンボケ画像の抽出手法を提案する.

  • 江守 央, 齋藤 幹貴, 佐田 達典, 岡島 正哲
    2019 年75 巻2 号 p. I_114-I_122
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     本研究は,ダイナミックマップへの活用を目指して,道路を計測した3次元点群データから白線を抽出する手法の検討を行った.区画線や中央線, 停止線などの特徴量を用いて機械学習により属性付与を行い,自動抽出を可能とするアルゴリズムを構築した.その結果,データ処理の範囲をMMSで取得された道路空間全体に拡大しても対象物を適切に抽出できることを確認した.

  • 奈良部 昌紀, 佐田 達典, 江守 央
    2019 年75 巻2 号 p. I_123-I_131
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     高齢者や障害者なども含めた歩行者移動支援サービスの実現には,歩行空間ネットワークデータの整備が求められている.しかし,歩行空間のデータ整備には計測に人手を要するなど膨大な労力が伴うことが課題とされている.一方,計測技術の進展によりMMSを用いると高精度な点群データとして広域に歩行空間が取得できる.本研究では,点群データを用いてバリア情報を検出する手法を構築した.その結果,高性能MMSにより取得した点群データは100点/m2以上の点群密度において地物や地形形状が把握可能であった.そして,各点群密度における点群データから提案手法を検討した結果,レンジによる評価と隣接グリッドのデータ比較による評価で,1,000点/m2以上の点群密度と0.10m以下のグリッドサイズで歩道の一般的構造に関する基準に照らしてバリア評価が可能であった.

  • 富井 建, 蒔苗 耕司
    2019 年75 巻2 号 p. I_132-I_140
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     スマート社会における建設プロジェクトでは,フィジカル空間とサイバー空間が関係しあう複雑なライフサイクルになることが考えられる.本論文は,複雑化する建設プロジェクトに適用するためのシステムアーキテクチャモデルを提示する.このモデルは,プロジェクトの各プロセスの対象範囲に基づいてプロジェクトライフサイクルを階層化し,システム要素とプロセスを対応づけることで,プロセスの責任範囲を明確化する.また,このモデルを建設プロジェクトのライフサイクルへ適用し,プロセスとシステム要素について整理する.さらに,本モデルにおける対象範囲から,各プロセスを支援する情報技術の分析を行う.

  • 鈴木 紗苗, 宮森 保紀, 齊藤 剛彦, 山崎 智之, ムンフジャルガル ダンビーバルジル , 三上 修一
    2019 年75 巻2 号 p. I_141-I_149
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     近年,構造物の画像から3次元モデルの作成が可能になったが,構造物の実応力状態などを直接評価することはできない.本研究では,デジタル画像からFEMモデル構築の自動化手法について基礎的な検討を行った.まず,T形梁を対象として画像撮影を行い3次元点群モデルを作成した.点群の座標データを3次元格子中で平均化することでFEMの節点にするとともに,部材軸方向に断面ごとで2次元デローニー分割を行った.デローニー分割で作成した面と隣接面の節点を組み合わせて3次元ソリッド要素を作る処理を行った.このような手法で作成したモデルに対して線形静的解析を行った結果,実測値や従来の方法によるFEMと比較して応力値は高くなったものの,応力分布はおおむね一致し,モデル構築手法の改良は必要なものの,基本的な適用性が確認できた.

  • 今井 龍一, 神谷 大介, 山本 雄平, 田中 成典, 中原 匡哉, 中畑 光貴
    2019 年75 巻2 号 p. I_150-I_159
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     道路管理者は,道路の整備や管理のために交通量調査を実施している.この調査では,調査員が目視にて車両を計数するが,多地点かつ,長時間に及ぶことから省力化が求められている.その一策として機械式調査が導入されているが,昨今のICTの発達を踏まえるとさらなる発展が期待される.都市交通分野では,深層学習を用いて動画像から車両を認識する技術が注目されており,様々な手法が提案されている.これらを実用化して広く普及するには,既存研究の成果も参考に当該技術の実用可能性や動画像の撮影条件などを調査して体系化することが求められる.そこで,本研究では,既存手法に準じて実装した車両認識技術を複数の条件で撮影した動画像に適用し,都市交通分野における深層学習の有用性と動画像の適切な撮影条件を明らかにする.

  • 中村 健二, 塚田 義典, 田中 成典, 梅原 喜政, 中畑 光貴
    2019 年75 巻2 号 p. I_160-I_169
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     近年,レーザ計測技術の発展に伴って,道路地物の3次元情報を点群データとして計測する手段が多様化し,点群データの利活用に期待が集まっている.しかし,点群データは,道路地物の情報を保持しておらず,用途に即した効率的な運用が難しい.そのため,地物毎の点群データを抽出する技術が注目されている.既存研究では,完成平面図に記載された外形線情報を参照することで,点群データから道路地物を抽出する手法が提案されている.しかし,道路分野で広く利用されるMMSの点群データを用いた場合,トラジェクトリ毎の点群データ間,および,点群データと完成平面図間での位置ズレにより,点群データ抽出対象の領域が真値から外れ,地物の抽出精度が低下する課題があった.そこで,本研究では,これらの位置ズレを補正することで,道路地物の抽出精度を向上させる手法を提案する.

特集号(報告)
  • 宇野 昌利, 飛田 悠樹, 宮瀬 文裕, 藤原 泰明
    2019 年75 巻2 号 p. II_1-II_7
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     工事現場では,同じ場所であっても安全指示事項の内容が日々変わっていく.従来,ビーコンを活用したシステムでは,信号を受け取ると決まった内容をアナウンスする機能はあるが,内容の変更が困難であることが課題であった.今回開発した安全リマインドツールは,ネット環境下であれば,リアルタイムでアナウンス内容を変更できる.これにより朝礼での安全指示事項を,現場で再度,安全情報のアナウンスを聞く事で確認できる.そのため,現場で現物を見て現実を確認できる三現主義が実現できる.また,このシステムが英語などを含めた多言語対応が可能であるため,今後,さらに増加が想定される外国人労働者に対して,母国語により安全指示ができ,現場の安全性向上につながると考える.多言語対応は,現場案内などにも活用できるため,現場の積極的な広報などにも本技術を活用していく予定である.

  • 関 和彦, 岩佐 宏一, 窪田 諭, 塚田 義典, 安室 喜弘, 今井 龍一
    2019 年75 巻2 号 p. II_8-II_16
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     2014年に公共インフラ施設(橋梁等)の5年に1度の定期点検が法制度化された.全国で約73万橋ある橋梁のうち,53万橋が橋長2~15mの小規模橋梁である.これらの橋梁には点検技術者が容易に近づくことができないことが多い.そこで,本研究では,小規模橋梁を対象にして,目視点検の代替となる点検手法の検討を目的として,点検ロボットの開発,3次元モデルデータ作成の効率的手法の検討,3次元モデルによる点検結果の管理システム,AIによる写真からの損傷箇所の抽出という4つの観点で検討を行った.

     研究の成果として,実証実験を複数回実施し,利用シーンに応じた技術の適用範囲を整理し,機能要件定義を明確にした.これは,実運用に向けて開発するための一資料となり,今後の小規模橋梁における点検の効率化,生産性の向上,安全性等の発展に寄与することが大いに期待できる.

  • 松浦 弦三郎, 今井 龍一, 谷口 寿俊
    2019 年75 巻2 号 p. II_17-II_24
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     建設現場におけるマシンコントロール・マシンガイダンスシステムにて使用されているICT建設機械では,走行や挙動のログデータが取得されており,活用や流通の進展が期待できる.

     著者らは既存研究にて,道路舗装工事におけるICT建設機械のログデータから工事目的物の3次元形状を生成できる可能性があることを明らかにしている.また,工事境界の舗装端部を算出できる補正手法が確立できると,ログデータを用いた出来形管理の実現可能性がある知見が得られている.

     本研究はログデータの補正手法を考案し,既存の3次元形状の生成手法を改良した.そして,道路の切削および舗装の試験施工にて出来形管理を試行し,改良した手法が実務に適用できることを明らかにした.

  • 江本 久雄, 小野 智生, 中村 秀明, 河村 圭
    2019 年75 巻2 号 p. II_25-II_33
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     社会基盤構造物のひとつである橋梁は,道路ネットワーク網を構成し防災の観点からも常日頃からメンテナンスを実施し維持していく必要がある.橋梁の点検方法である近接目視点検においては,専門技術者の不足などの問題があり,点検時に必要なデータに効率的にアクセスできることが重要である.また,近年,ICT技術の進歩により,AR(Augmented Reality)といった技術が開発されている.

     本研究では,近接目視点検時の点検作業の効率化を目的として,名刺サイズの橋梁の図柄を中心とした橋梁カードを作成し,スマートフォンのカメラにかざすことでARによって点検時に必要な点検情報である橋梁の基本諸元データ,点検履歴,補修・補強履歴をスマートフォンからアクセスする点検支援システムを開発した.

  • 馬場 那仰, 谷川 さくら, 江本 久雄, 中村 秀明, 河村 圭
    2019 年75 巻2 号 p. II_34-II_42
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     近年,わが国では,高度経済成長期に集中して建設された橋梁の多くが建設後50年を経過し,老朽化による損傷箇所が増えてきた.このような損傷を放置すると橋梁の崩壊へとつながる可能性もある.その損傷を早期発見するために,国土交通省は2014年に道路法施行規則の一部を改正し,道路橋は近接目視により5年に1回の頻度で点検を行うこととなった.これにより,点検作業における業務量が増加し,点検業務を行う専門知識を備えた技術者の確保と点検作業の効率化を早急に行うことが求められている.

     そこで著者らは,点検業務を行う若手技術者の教育と今後の維持管理計画への活用を目的として,VR空間において点検作業を疑似体験できるMRヘッドマウントディスプレイ(以下「MR-HMD」という)による橋梁点検体験システムを開発した.

  • 岡本 健, 今井 龍一, 新名 恭仁
    2019 年75 巻2 号 p. II_43-II_52
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     都市部では,今後老朽化の著しいインフラ設備や地下埋設物が輻輳している箇所での構造物の改築・更新・新設といった事業の増加が予想される.既存の構造物は主に二次元図面で管理されているため,工事施工の際に地下埋設物の位置・高さの把握が困難となっている.

     本研究の目的は,既存研究による地下埋設物の簡易な三次元モデル生成手法で得られた三次元モデルを用いて既存の二次元図面を効率的に補正する手法の確立とした.本研究では,既存二次元図面の補正効率化のためのシステムを開発し,実現場において生成された三次元モデルの精度およびそれを用いた二次元図面の補正を試行した.その結果,生成した三次元モデルから画像データを抽出し,既存二次元図面と重ね合わせることで迅速な図面の補正が可能であることを確認した.

  • 堀江 陽介, 羽柴 秀樹, 園部 雅史
    2019 年75 巻2 号 p. II_53-II_61
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     平成29年7月九州北部豪雨や平成30年北海道胆振東部地震では,広域に多くの土砂災害が発生した.災害箇所の特定や山間部などの被災直後に近づくことが困難な場合では衛星リモートセンシング技術が有効である.本研究では,被災前後の高分解能衛星の差分画像による土砂災害域抽出のために,被災地の土地被覆状況を考慮に入れた災害域と非災害域を分離するための閾値の補正手法の検討を行った.また,衛星画像処理による災害域の抽出精度をより適切に評価するために,被災後の衛星画像の目視判読によって補正された災害域の基準データに基づいて評価した.その結果,ここでの補正手法による精度向上が示された.さらに,解析結果を画素補完するためのGIS技術と被災地の傾斜情報を併用することによって,土砂災害域の誤抽出が軽減された.

  • 小林 亘, 市川 広志
    2019 年75 巻2 号 p. II_62-II_70
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     建設工事や建設物から条件に適合するものを抽出する作業に,ルーチン業務で生成される情報を活用し,さらに自動分類できれば,データベースの構築や人手での分類に比べて格段に効率が向上する.本報告は,活用する情報として工事発注資料を取り上げ,各ページの種別をCNN(畳み込みニューラルネットワーク)によって8つのクラスに自動分類した実験の成果と評価を示すものである.実験により,静岡県の一般的な土木工事の発注資料から,入札公告または実施設計書表紙を抽出して工事の概要を得ることは,クラス当たり50の教師データにより可能であり,データ数の増加によって分類性能は向上した.本報告は,道路地図の更新のために収集した工事発注資料を対象とした実験であるが,電子納品などによる一般的な工事成果品へも応用が期待できる.

  • 樋口 智明, 佐田 達典, 江守 央, 村山 盛行, 福森 秀晃
    2019 年75 巻2 号 p. II_71-II_78
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     2016年度から国土交通省では,i-Construcitonに取り組んでおり,生産性向上を目標としている.その中で2016年4月に地上型レーザースキャナーを用いた出来形管理要領(舗装工事編)(案)が公表され,今後の利用が増加すると見込まれる.本研究では出来形管理要領の条件に沿って複数の計測手法で地上型レーザースキャナーの計測を行い,作業時間,計測精度を検証した.その結果,計測時間は計測回数が多いほど長くなった.データ処理時間は標定点の個数が多いほど座標変換の時間がかかるが,計測範囲が狭いほうがノイズ処理をする時間が短くなった.また,標定点の間隔が短く半周計測であると計測精度が上がり,全周計測の場合,機器設置位置近傍では較差が大きくなる傾向が見られた.

  • 藤村 大輔, 山口 裕哉, 白石 宗一郎, 岩上 弘明, 佐田 達典, 江守 央
    2019 年75 巻2 号 p. II_79-II_86
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     近年,MMS(Mobile Mapping System)は,道路台帳の作成や基盤地図の整備に活用されている.今後は構造物の点検での活用が期待されていることから,従来より高精度な計測データが求められている.既存研究では,MMSの計測精度の基礎的な検証はされているが,MMSの走行速度と計測精度に関する研究は十分になされていない.本研究ではMMSの走行速度の違いによる計測精度への影響について基礎的な実験による検証を行った.走行速度22km/hと47km/hで比較した結果,絶対精度では22km/h走行の方が47km/h走行よりもRMS誤差で0.023m小さく,22km/h走行の方が較差が小さいことが示された.照射点密度と相対精度の高さとの関係では,22km/h走行の方が較差が0.010m以内に収まっている箇所が47km/h走行より多く,計測精度が良いことが示された.

  • 中島 和希, 佐田 達典, 江守 央
    2019 年75 巻2 号 p. II_87-II_96
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     本研究は高層ビルが立ち並ぶ街路を走行した際のGNSS測位において,QZSSを併用することによる精度向上効果の検証を目的とする.実験を行った2018年10月10日時点ではQZSSは4機運用中で,解析では衛星の組み合わせ,周辺環境の異なる区間,時間帯,往路と復路による違いに着目したFix率の比較を行った.その結果,GPSにQZSSを併用することで走行実験全体で約12%の向上がみられ,最も効果の大きい区間では約36%向上した.同じ区間でも時間帯によってFix率に最大で約7%~43%の差が出ること,同じ区間における往路と復路でFix率に最大で約10%~36%の差が出ることも確認された.これらのことからQZSSの併用効果は明らかに認められるが,Fix率は最大でも約43%という結果となったことから安定した高精度測位には至っていない.

  • 宮内 弘太, 高田 和幸
    2019 年75 巻2 号 p. II_97-II_104
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     近年,我が国では,高齢運転者が第一当事者となる交通事故が深刻な社会問題となっている.高齢運転者による交通事故は,加齢に伴う身体機能の低下によって起こることが多い.自動化運転の実現は,この問題を解決する可能性を秘めているが,市街地道路での導入はまだ先であると考えられる.つまり,運転者による運転操作は当分無くならず,事故を未然に防ぐ予防安全の技術開発が重要である.

     本研究では,高齢運転者が交差点内で運転の誤操作による交通事故が多いことから交差点内での異常運転を検知する手法を提案する.車内にスマートフォンを取り付け,加速度や操舵角速度などの車両特性を観測した.観測した車両特性にOne Class Support Vector Machine(OCSVM)を適用することで,個々の運転者ごとに異常運転をしているかを検知する識別モデルが構築できることを示唆した.

  • 窪田 諭, 塚田 義典, 田中 成典, 梅原 喜政, 中原 匡哉, 飯田 拓馬
    2019 年75 巻2 号 p. II_105-II_113
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/07
    ジャーナル フリー

     我が国では,i-Constructionを契機として,レーザスキャナやカメラ等の計測機器により取得した三次元データの利活用場面が拡大している.道路空間の計測にはMMSが利用されてきたが,MMSは,衛星測位が困難な場所や車両が進入できない場所の計測に適さない.そのため,橋梁下部,山間部や屋内でも利用可能な可搬型レーザスキャナが注目されている.しかし,それらの製品は,各種センサの設置角度や精度等が異なる上に,データ処理のアルゴリズムが公開されていないため,精度低下の要因分析等に限界がある.そこで,本研究では,既存製品を調査し,それらの特性や利用上の留意点を踏まえた上で,試作機による計測実験を行い,構造物の三次元データ計測に最適な可搬型レーザスキャナを設計する.

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