土木学会論文集F4(建設マネジメント)
Online ISSN : 2185-6605
67 巻 , 4 号
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特集号(論文)
  • 稲積 真哉, 大津 宏康, 谷澤 勇気
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_1-I_12
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     本研究は、タイ王国における廃棄物処理事業に対して初期環境評価を実施し、中間処理過程および最終処分過程において廃棄物に如何なる処理を施せば費用と環境の両方に対して効率的であるか、複数の廃棄物処理シナリオ間で比較するものである。具体的には、想定した各廃棄物処理シナリオにおける長期的な処理コストおよび環境負荷(CO2およびCH4排出量)を定量的に推定している。さらに、CO2貨幣価値原単位を用いることで、環境負荷を環境コストとして内部化している。その結果、処理コストは現状の廃棄物処理事業をモデル化したベースラインシナリオが最も低額である一方、焼却処理施設とCH4利用施設を建設した廃棄物処理シナリオが最も高額である。また、環境負荷は焼却処理施設とCH4利用施設を建設した廃棄物処理シナリオが最も小さく、ベースラインシナリオが最も大きい。また、バンコク首都圏においては、CH4利用施設を建設する廃棄物処理シナリオがトータルコストならびに環境影響指標の観点から、処理コストと環境負荷の双方に対して効率的である。さらに、廃棄物発生量、CO2貨幣価値原単位、および評価期間における不確実性は、廃棄物処理事業における処理コストならびに環境コストの推定に大きな影響を及ぼすことを示した。
  • 松本 美紀, 矢田部 龍一
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_13-I_20
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     防災事業では,「被災可能性に対する不安」の軽減効果について評価手法の確立,評価値の精度向上に向けた検討が必要とされているが,こうした災害に対する不安の軽減に関する便益については,これまで計測手法が確立されていないのが現状である.そこで,防災事業を実施することで確保される社会の安心・安全に関する便益の計測手法を確立することを最終目的とし,本論文では,従来のリスクプレミアムによらない「被災可能性に対する不安」の軽減による効果を測定するための心理尺度の開発を試みた.愛媛県の地震被害想定シナリオを参考にして,被災可能性に対する不安を測定するための項目を14作成した.それらの項目を用いて,391名の愛媛県八幡浜市民を対象としアンケート調査を実施し,探索的因子分析,信頼性分析を行った.その結果,被災可能性に対する不安として,ライフライン断絶に対する不安(自己不安),二次災害に対する不安,他者不安の3因子が抽出され,それらの信頼性も高かった.本研究で作成した項目は,3つの被災可能性に対する不安概念を測定するテストとして,信頼性が高い尺度であることが判断できた.
  • 高野 伸栄, 藤井 直
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_21-I_31
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     我が国では, 今後,高度経済成長期に整備された数多くの公共構造物が一斉に老朽化を迎え,維持補修のための多額の費用が必要とされる.このため,アセットマネジメント手法の適用等,より効率的な維持管理を行っていくのと同時に,必要に応じた維持管理予算を充当していくことは極めて大きな課題である.本研究は実際に4ヶ月あまり通行止めされたトンネルを対象に利用頻度が高い住民と,その他の住民の道路維持管理についての意識構造の差違についてアンケート調査をもとに実証的に分析するものである.分析の結果,維持管理費の増額に賛意を示すのは,現行の「維持管理費」が安いと感じ,維持管理に関わる「行政満足度」が高い人であり,通行止めによる被害を受けた人は,逆に維持管理費増額の賛意が低くなる傾向があることが明らかとなった.市民生活への被害の発生が,直接的にそれを防止する公共構造物の整備に向かうのではなく,それが,管理者側に責任があると感じられれば,逆に管理者側が行う整備の反対に回る場合があることを明らかにした.
  • 松本 茂, 永井 護
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_33-I_45
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     国民のニーズは大きく変化するとともに,多様化しながら求める質は高くなり,社会資本整備の重要性は益々増している.安全安心で快適な経済活動を維持していくためには,新たな社会資本の重点的な整備と併せ,社会資本ストックの有効活用が重要である.土木施設に関する事業は,調査・計画,建設,維持管理の三つの段階に分けられる.本研究は,維持管理段階を対象とし,栃木県の管理ダムを事例として維持管理の現状と課題を整理する.そして,事後評価の制度と実施状況を整理した上で,より効率的・効果的な施設の運用を行うために,事業評価制度による三河沢ダムの事後評価の事例と,事業評価制度によらない西荒川ダム・東荒川ダム・寺山ダムの事後評価の事例をとおして,施設の機能向上に向けた事後評価(機能向上型事後評価)を提案するものである.機能向上型事後評価については,その基本的考え方を示すとともに,改善のポイントと行政システムとしての検討項目について考察する.
  • 大橋 幸子, 湯原 麻子, 神永 希, 高森 秀司
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_47-I_56
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     本研究は,多様な価値観を踏まえたまちづくり,社会資本整備を目指し,新たな潮流である地方部を志向する人の価値観の調査と分析を行った.研究では,地方部への移住者に着目し,福島県小野町,鳥取県日南町,鹿児島県垂水市をケーススタディ市・町として,移住者を対象に調査を行い,国民生活選好度調査と比較することで分析した.
     その結果,本調査における移住者の価値観の特徴として,移住に際し,移住者は職の有無ややりがいを重視しており,また,休暇と余暇も充実した環境を求めていること,移住先の検討においては,より条件の合う環境や住居を求めているとともに,地域での人付き合いがうまくいくか不安を感じていること,移住後の生活の中で,家族や生活環境などの日常をとりまく環境や,地域の中での人間関係を重視していることなどが分かった.今後,地方部への移住を移住者の視点から考えるならば,身近にやりがいのある職場があること,良質な生活環境であること,地域における周囲との良好な関係を形成することが望まれる.また,地方部の地域づくりの視点から,移住者が移住しやすいまちを考えるならば,移住者が移住を検討しているときに重視する生活環境,地域生活に関する情報提供を充実させることが有効と考えられる.同時に,移住者が移住後も住みやすい地域づくりを考えることが必要であり,そのためには,生活環境を保持しつつ,移住者に開かれた地域生活環境の提供が重要と考えられる.
  • 高瀬 達夫, 涌井 克明, 小山 健
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_57-I_67
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     近年,地方鉄道では自動車利用への転換や少子化などにより利用者が減少し,厳しい経営を強いられているところが多い.長野県においても,現在存続問題を抱えている路線として,上田電鉄別所線,長野電鉄屋代線,松本電気鉄道上高地線の3路線があり,各地域で検討されている.これらの路線は地域の交通手段として重要な役割を果たしており,路線の存廃に関しては慎重な判断が求められるが,そのための判断指標の1つとして各路線がもっている価値評価を算出することとした.
     路線価値を計測する具体的な方法として,各路線の沿線および沿線以外の住民に対しアンケート調査を行い,調査データを用いてCVM(仮想市場評価法)による路線の価値を推定し,沿線と沿線以外で支払意思額の比較や,支払意思額に影響を与える要因の把握を行った.さらに地元自治体が支援している補助金の妥当性についての検討も行った.
  • 高橋 明子, 石田 敏郎
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_69-I_79
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     建設業での死亡災害事例を分析した先行研究により,建設作業現場におけるコミュニケーションエラーの発生パターンは記号化・メッセージ型,媒体型,理解型に分類された.これらの結果を基とし,本研究では建設作業従事者を対象とした質問紙調査を実施することにより,建設作業従事者のコミュニケーションエラーのリスクの程度に関する認識と職位間の認識の差異の検討を行った(n=811,管理者149名,職長208名,作業員454名).その結果,管理者はコミュニケーションエラーの全パターンのリスクを比較的高く評価した.一方,職長及び作業員は比較的類似した評価をし,パターンによってリスクの評価が異なった.また,コミュニケーションエラーの背後要因に関しては,「作業前の打ち合わせ不十分」「確認不足」が全パターンに共通して回答率が高く,職位間に認識の差異は見られなかった.さらに,職位間で回答率に有意差の見られた複数の背後要因について作業員の認識の低さが指摘された.建設作業現場における労働災害防止に役立てるためには,管理者がコミュニケーションエラーのリスクに関して職位間で認識が異なることを理解し,コミュニケーションエラー防止対策を検討する必要性がある.
  • 鈴木 信行, 渡部 正
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_81-I_92
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     QCT,いわゆる品質Quality,コストCost,時間Timeは,欧米でも永遠の三角形(Eternal Triangle)と呼ばれ1),建設施工マネジメントの中心要素としてきた.ところが,20世紀の終わり頃から21世紀初頭にかけて,建設産業を取り巻く社会経済環境が急変し,QCT以外のマネジメント要素も検討する必要があると指摘されている2).多くのマネジメント要素に細分化することにより,状況の把握や課題の抽出は容易になる可能性は高い.反面,それらのマネジメント要素間には相互に影響を与え合う連関が存在し,重要度等の階層性についても複雑化し,マネジメント効果の得られない場合が出てくる可能性が高い.
     本研究では,米国プロジェクトマネジメント協会が規定するマネジメント要素(知識エリア)から統合マネジメント要素を除いた8つの要素を対象として,マネジメント要素間の影響についてのアンケート調査を実施した.そして,マネジメント要素間の影響度合いを空間ネットワークモデルと捉え,ネットワーク解析手法の一つである接近性指標の考え方を導入して解析した.その結果,旧来の重要なマネジメント要素であるQCTと共に,人材の育成や組織の構築に該当するマネジメント要素である“人的資源マネジメント”が上位の階層に位置付けられることを定量的に示すことができた.
     本研究で適用した論理的プロセスは,更なる細分化したマネジメント要素へ拡張した解析や,総合評価落札方式の評価項目・評点の設定等の判断支援にも有用と考える.
  • 二宮 仁志, 渡邊 法美
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_93-I_102
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     現在,地方公共事業においては,一般競争入札の適用範囲の拡大を進めるとともに,簡易な総合評価方式など,各自治体に実情に応じた入札制度の導入・適応が模索されている.価格競争入札では,応札者の多くが最低制限価格狙いで応札し,くじ引きくじ引きで受注者が決定される工事が頻出するなど,受注社側の品質確保・確実な施工への懸念が高まっている.総合評価方式は,品質確保やダンピング防止等の効果が期待される一方,取引コストの増大は避けがたく,総合評価方式が建築業の中長期経営に及ぼす影響について必ずしも十分に議論されているとは言い難い.本稿は,地方公共団体における「くじ引き」と「総合評価方式」が建築業経営に与える影響・メカニズムについて分析し,その特性と可能性について考察することを目的とする.先行研究において開発した入札・契約・経営シミュレーションモデル(SUMM)を発展させた新たなモデルを構築し,くじ引き入札と総合評価方式について比較分析した.また,地方建築業の健全な経営環境を”正直者”の業者による競争としてモデリングし,入札・契約制度改革の将来像をイメージ・議論する材料の提案を試みた.
  • 杉浦 聡志, 金森 吉信, 高木 朗義, 倉内 文孝, 森本 博昭
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_103-I_112
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     現在我が国では厳しい道路予算と道路施設の高齢化を背景として,各自治体が道路施設における予防保全型の維持管理計画を策定している.しかし,これらは道路施設の工種別に事業計画を策定するものである.利用者の視点からみれば1施設に着目する点の管理では不十分であり,ネットワーク全体の安全性を確保する管理手法が必要である.
     本研究では,舗装,橋梁,危険斜面を対象とし,それらを同等に取り扱うことで,より効率的にネットワークの安全性を確保する総合維持管理手法を提案した.具体的には,道路施設の維持管理にリスク評価の手法を用いることで複数工種における対策必要性を一元的に定量評価し,道路ネットワーク全体のリスクを効率的に減少させる道路施設あるいは区間を抽出する方法を示す.そして,岐阜県内の4路線においてリスク評価に基づく対策箇所選定を試算し,本研究で提案した対策箇所選定手法がネットワーク全体のリスクを効率的に低減できることを確認した.
  • 二宮 仁志, 滑川 達
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_113-I_120
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     近年,我が国の公共調達制度は,指名競争入札から一般競争入札へ,その適応範囲の拡大・総合評価方式の試行などダイナミックに変化・多様化している.国発注工事の殆どで総合評価方式が採用される中,地方においては,国の制度改革の動向を注視しながら,地方公共工事の特性・各自治体の実情に応じた新たな制度・運用が模索されている.一方,制度・運用面の急激な変化や多様化は,応札者・発注者双方の入札・契約担当者を混乱させるばかりか,建設業の経営環境を不安定にする恐れもあるなど,現場では戸惑いや不満の声が絶えない.また,企業の応札戦略は制度を規定するきわめて重要な要因といえるが,応札戦略と公共調達制度,相互の影響メカニズムについては必ずしも十分な分析・議論がなされているとは言い難い.本稿は,企業の応札戦略の観点から,公共調達制度のダイナミクスと総合評価方式の特性について分析・考察することを目的とする.地方建設業を想定した仮想的な入札・契約・経営シミュレーションモデルを構築し,公共調達制度の変遷メカニズムを検討するとともに,応札戦略が公共調達制度や企業の中長期的経営に与える影響について分析・考察し,改革シナリオについて提案を試みた.
  • 関口 信康, 大津 宏康, 伊豆 隆太郎
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_121-I_130
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     近年の我が国では台風,集中豪雨等による斜面災害が多発しており,限られた予算の中で,明日にでも起こりうる斜面災害に対し,被害を最小限に止めることの重要性が再認識されている.しかしながら,現在の厳しい経済社会情勢において道路斜面の管理に対する予算が削減される中,道路防災総点検において対策が必要と判断された膨大な数の要対策斜面への対応が滞っているのが現状である.こうした状況の中,道路斜面の適切な管理によって自動車走行の安全・安心を向上させるためには,サービス水準の低下による社会的損失を明確にした事業優先度を定量的・客観的に評価し,効率的・重点的に道路斜面の管理を実施していく必要がある.このような観点から,本研究では道路斜面防災を対象に,道路斜面管理の各段階において取得可能な情報を最大限に活用した事業優先度の評価手法はいかにあるべきかについて提案するとともに,その効果について試算する.
  • 下池 季樹, 島崎 敏一
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_131-I_143
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     土壌や地下水の汚染について調査及び浄化対策を行う土壌・地下水汚染対策事業(以下,環境修復事業)が近年,民間企業を中心に取り組まれてきている.しかし,我が国では環境修復事業に関する蓄積が豊富というわけではなく,また,その対策は高額なコストを要すること等,多様なリスクを伴うことが明らかになってきており,環境修復事業の効率的なマネジメント手法の確立が求められる.
     本論文では,環境修復事業と一般建設事業の比較や,実際に経験した住民とのトラブル事例等から環境修復事業の基本的な特徴を述べ,その事業の特徴に適した環境修復型のCM業務を示した.そして,環境修復事業における多様なリスクを整理し,その事業のリスクマネジメントの概念を図示した.さらに,その事業を構成する各要素間の関係やその重要度等を踏まえたマネジメントの体系化を図った.
  • 大野 沙知子, 高木 朗義, 倉内 文孝, 出村 嘉史
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_145-I_158
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     社会資本を資産と捉えて管理するアセットマネジメントが導入されつつある中で,安全で安心な地域を維持していくためには,従来,自治体が担っている公共の領域を見直し,様々な担い手を活用した道路施設管理体制が必要といえる.本研究では,多様な主体が協働で道路施設管理を担うための仕組みづくりと人づくりに着目し,地域協働型道路施設管理のあり方を検討した.具体的には,先進事例の運用実態を明らかにすることで,従来型の道路施設管理が抱える課題を抽出し,仕組みづくりの方向性として,「自治体間の連携」,「民間活力の活用」および「住民参加」を示した.また,仕組みづくりから見える人づくりの課題を抽出し,その方向性として「専門家の育成」,「住民の主体的な活動の創出」を示し,人づくりを仕組みづくりに結びつけるために「中間支援組織の活用」が重要であることを示した.さらに,主体間の関係および各主体の果たすべき役割を整理することで,地域協働型道路施設管理のあり方を考察した.
  • 古谷 宏一, 横田 弘, 橋本 勝文, 花田 祥一
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_159-I_168
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     社会基盤施設の維持管理において,事後保全型から予防保全型へとその枠組みを転換することにより,施設の有効活用やライフサイクルコストの低減を図る試みが進められている.この場合,劣化進行予測の信頼性を向上させることが重要になる.本論文では,係留施設の劣化に対する対策の実施推奨年をマルコフ連鎖モデルにより予測する場合の,予測結果の信頼性を議論する.つまり,係留施設の劣化度調査データを用いて次の検討を行う.1) 構造物ごとの劣化速度を算出し,K.S.検定により劣化速度の分布系を決定する.また,2) 分布に従う劣化速度乱数を発生させ,モンテカルロシミュレーションにより構造物の対策推奨年の分布を求める.さらに,3) 施設全体の代表劣化度の相違が対策推奨年の予測結果に与える影響を把握する.その結果,1) 係留施設の構造形式ごとに推定される対策推奨年の分布系が確認できた.2) 構造物に期待される対策推奨年の最頻値と最小値との差を定量的に示すことができた.また,3) 代表劣化度の相違に起因する対策推奨年の予測結果の差異を定量化する算定式を提案した.
  • 長谷川 信介, 大津 宏康
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_169-I_180
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     山岳トンネルにおいては,調査・設計段階で予測された地山状況と実際の地山状況が大きく乖離し,施工段階において建設コストの大幅な増加がしばしば発生している.このような乖離が生じる原因として,事前調査で得られる地盤情報の不確実性が挙げられる.著者らは事前調査で得られる地盤情報の不確実性に起因するトンネル掘削コストの変動リスク(以下,地質リスク)の評価および施工実績との比較を行ってきた.これまでの研究では,地質調査で得られる地盤情報の不確実性を考慮したときの乖離量に着目してきた.しかし,地質リスクのマネジメントにおいては,可能性は低いが顕在化すると大きな損失が生じる事象のマネジメントも重要である.そこで,本論文では,事前調査において予見されなかった不良地山が出現したため追加調査を実施した事例を用いて,事前調査および追加調査における地質リスクと施工実績との比較を行った.事前調査における地質リスクでは,施工実績に示される地山状況が出現する確率は低く,追加調査により確率は高くなることを予想した.しかし,追加調査において地盤情報の不確実性を適切に評価せずに地盤情報を追加すると,実際の地山状況が出現する確率は事前調査に比べて低くなった.このことから,単純に地質情報が増えることが重要なのではなく,適切に不確実性が評価された地盤情報が増えることが重要であることがわかった.
  • 佐藤 亙, 横田 弘, 橋本 勝文, 古谷 宏一, 加藤 博敏
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_181-I_190
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     社会基盤施設が供用期間にわたって要求性能を満足するように,適切な維持管理を行うことが改めて求められている.施設の維持管理計画は,施設が安全かつ円滑な利用等のために求められる要求性能を満足するとともに,利用上の制約や財政上の制約などの要因も加味したライフサイクルコスト(LCC)の抑制が図られるように立案されなければならない.しかしながら,LCC算出の際のパラメータは多岐に亘り,その多くは,基礎データの蓄積やその分析が十分進んでいないことから,様々な知見等を総合して得た経験値や仮定条件の下で設定されているのが現状である.そこで,本研究は,係留施設のLCC算出検討の際に考慮すべき主な諸事項がLCCの算出結果に及ぼす影響を定量的に把握することを目的とする.まず,LCCの算出結果に影響を与えると考えられる主要な因子を挙げ,それらの影響因子に着目しながら,モデル係留施設を対象とする維持補修シナリオを作成する.次に,各シナリオに対するLCCの算出結果の比較・検討を行い,取り上げた主要な因子の影響程度について定量的に考察する.その結果,構造諸元,遷移率,設計供用期間,シナリオ立案の基本方針のそれぞれがLCCへ与える影響についての定量的な知見を得た.また,対策を推奨する限界となる劣化度ポイント(DP)を新たに提案し,これに基づくシナリオの評価を行った.
  • 多田 寛, 宮武 一郎, 毛利 淳二, 安食 典彦, 笛田 俊治
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_191-I_202
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     我が国では,公共調達において工事の品質確保や発注者の体制を補完する方策として,様々な取組みがなされており,その取組みとして,工事の施工状況の照合・確認・報告や契約の履行に必要な資料作成等を監督職員の指示に基づき実施する発注者支援業務や監督体制が不足する懸念がある場合等に関連工事との調整や事業の工程把握,関係機関との調整等,監督業務の一部を民間企業等に担わせる発注者支援型CM(コンストラクション・マネジメント)方式等,発注者・施工者・設計者以外の第三者による発注者に対する種々の支援方策(以下,「発注者支援方策」という.)の活用が議論されている.これら発注者支援方策については,これまでのフォローアップ調査を通じて様々な効果が把握されている.一方,それらの効果把握は,それぞれの発注者支援方策の業務全体を通じた包括的な効果把握に留まっており,業務受託者の業務項目ごとに発注者が何を期待し,その期待に対してどの程度の効果(成果)があったのかを把握するには至っていない.今後発注者支援方策をより効果的に活用するためには,導入目的に対して発注者が業務項目ごとに何を期待したのか,その期待に対してどのような効果(成果)があったのかを把握することが重要である.また,今後発注者支援方策を普及させていくためには,発注者の期待に対する効果(成果)だけでなく,国民に対する効果(価値の向上)を把握する必要がある.このような観点で見た場合,発注者支援方策に関する効果把握について,確立した方法が無い.このような背景を踏まえ,本研究では,今後の発注者支援方策の普及ならびにそれらの改善と適正運用に資することを目的として,我が国で適用された発注者支援型CM方式を事例とし,発注者支援方策の業務項目ごとの導入効果を計測・評価する一手法を提案するとともに,今後検討すべき課題と対応の方向性を整理した.
  • 多田 寛, 宮武 一郎, 毛利 淳二, 遠藤 健司, 笛田 俊治
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_203-I_212
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     我が国では,地域基盤の整備・管理,適切な公共事業の執行にあたって発注者の体制を補完する一方策としてCM(コンストラクション・マネジメント)方式が導入されている.CM方式におけるCMR(コンストラクション・マネージャー:CM業務を行う技術者チーム)の業務内容は,CM業務の契約図書の一部である特記仕様書に業務項目として記載されており,発注者がCMRに期待する内容はその業務項目に反映されることとなる.一方,CM業務の場合には工事発注前にどのような施工状況が出現するか十分な想定ができないため,適宜状況に応じて必要な業務を実施する特性があり,特記仕様書にCMRの業務内容を詳細に記載するには限界がある.その場合,特記仕様書に記載されている業務項目の具体的実施内容・範囲に関して発注者とCMRの間で認識の相違がある場合が考えられ,CM方式の導入効果が十分発揮されない可能性がある.また,発注者とCMRの役割分担が不明確である場合には,発注者とCMRの業務の重複による円滑な事業遂行が阻害されることが考えられる.そのため,今後CM方式を普及し,より効果的な手法とするためには適切な業務内容を設定した特記仕様書を作成することが重要であり,これまでに適用されたCM方式について運用実態の検証を行い,必要に応じて特記仕様書や運用方法を改善していくことが必要となる.このような背景を踏まえ,本研究では,CM方式の普及および,より効果的な運用に資することを目的として,CM方式適用事例における特記仕様書上の業務項目ごとの具体的実施内容と業務実施における発注者とCMRの役割分担等の運用実態を明らかにするとともに,今後のCM方式適用時におけるCMR等(CM業務に関連する発注者・CMR・施工者・設計者)の役割について考察を行った.
  • 藤井 聡, 中野 剛志
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_213-I_222
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     本稿では,国(政府)の公共事業の財源についての政治的判断を支援することを企図して,マクロ経済動向に及ぼす影響を加味しつつ,公共事業関係費の「水準」と「調達方法」を毎年どのように「調整」していくべきかの基本的な考え方を整理することを試みた.そして,市場における需要が供給を上回っているインフレ状況にある時には,インフレ緩和のために緊縮財政を基本とすることが得策であり,公共事業においては,公債ではなく,必要に応じた増税の可能性も視野に収めながら税収によって財源を調達することが得策であることを指摘した.一方で,逆にデフレ状況にある時には,デフレを緩和するための積極財政を基本とすることが必要であり,そのための財源については,定常的な税収に加えて公債を自国通貨建ての内債として発行することが得策であることを指摘した.
  • 石原 康弘, 久保 尚也
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_223-I_230
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     国土交通省直轄工事においては、落札者決定方式として、平成10年に総合評価落札方式(以下、総合評価方式)を導入して以来、平成21年度には、全工事件数の約99%が当該方式により実施されている。総合評価方式は、従来の最低価格による落札者決定方式と比較して、「価格及び品質が総合的に優れた内容の契約がなされる」方式であることから、発注する個々の工事における競争参加者の技術を如何に評価するかが課題となっている。このため、本研究においては、まず、国土交通省直轄工事を対象に、総合評価方式の発注型(タイプ)や工事の内容別に、技術評価項目の内容、配点等を分析し、技術提案が技術力の競争という形で十分現れていないことや、簡易型等においては多様な評価項目を設定していることなどの課題を抽出した。そのうえで、今後、技術提案のテーマを設定する場合には、明確な指標に基づき適切な得点差を付けるべきであることや、簡易型等では、企業の施工能力等により評価する方式を導入することなどの改善案の提案を行ったものである。
  • 島崎 敏一
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_231-I_237
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     本論文は,わが国の公共工事入札における落札率への入札者数と低入札価格調査基準価格の影響について分析を行ったものである.まず,最近の公共工事の入札対策の変遷を検討した.基本的には入札価格の最小値が落札価格となると仮定して,見積り価格の分布から入札者数が変動したときの最小値の分布を求めた.これに,平成18年度~21年度の国土交通省関東地方整備局発注の一般土木工事の入札データを用いて,モデルの適合度を検討した.低入札価格調査基準価格が,与えられたときの入札価格の分布を打ち切り分布と仮定して,同様の解析を行い,その影響を考察した.
  • 藤島 博英, 簗瀬 範彦
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_239-I_250
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     平成22年度現在,全地方自治体の約70%が総合評価方式による入札制度を試行的に導入したが,多くの地方自治体では本格的な導入に至ってはいない.その理由は,最も簡便な特別簡易型による型式でさえも,事務量の増大や入札期間の長期化などが負担とされているからである.その背景として,入札を担当する人員の問題や総合評価方式に相応しい工事規模や工種と実際の発注案件との乖離といった実務的な問題,さらに公共調達に関する自治体職員の意識の問題があるものと推定できる.
     本研究では,北関東3県の入札担当職員の配置状況と事務量,そして,職員の総合評価に対する意識等,地方中小自治体が総合評価導入に対して抱える実務上の課題を抽出した.
     その結果,上記の課題に対して小規模であっても,比較的総合評価方式に対応している自治体のグループの存在を確認できた.一方,体制と工事発注量の不均衡から,今以上の総合評価方式の導入に限界を感じている規模の自治体グループの存在も窺えた.
  • 宮武 一郎, 工藤 匡貴, 川俣 裕行, 笛田 俊治
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_251-I_262
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     公共事業の効率的な執行のため,民間企業が有する高い技術力を有効に活用し,コストの縮減や工事目的物の性能・機能の向上,工期短縮等の施工の効率化等を図ることが期待されている.
     その方法のひとつである設計・施工一括発注方式は,構造物の構造形式や主要諸元も含めた設計を施工と一括で発注することにより,民間企業の優れた技術を活用し,設計・施工の品質確保,合理的な設計,効率性を目指す方式である.
     本研究は,設計・施工一括発注方式の実施上の課題のひとつである,建設コンサルタントと建設会社の企業連合(コンソーシアム)の活用について検討を行い,今後,導入するコンソーシアムの形態について整理するとともに,その活用にあたり,入札時,契約後および設計を担当する建設コンサルタントからの見積提出等に関する実施事項について,提案を行うものである.
  • 松葉 保孝, 小澤 一雅, 安谷 覚
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_263-I_272
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     円借款供与により実施される公共土木工事の契約条件に関しては,FIDIC契約約款が一般条件書として使用されることが多いが,その国独自の契約条件や慣習に基づき,特記条件書に特異的な条項の追加あるいは一般条件書の各条項の変更により,請負者や,発注者業務の一部を代行する第三者技術者の権利が制限されることがある.本研究では,円借款の過半を占めるアジア地域の中から,フィリピンおよびベトナムの円借款供与による実際の公共土木工事を取り上げ,FIDIC契約約款を使用した契約条件がどのよう運用されているのかを明らかにすることを目的として,「発注者,請負者,第三者技術者の関係」と「権利主張と契約管理」の二つの観点から,文献調査とインタビュー調査を行った.そして,調査対象とした円借款工事では,自国資金による公共土木工事の場合と比較して,請負者の権利が認められている一方,第三者技術者の権利が制限されている事象および公共土木工事に適用される両国の契約条件の運用に関し違いが見られることを明らかにした.
  • 木下 誠也, 佐藤 直良, 松本 直也
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_273-I_284
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     わが国の公共工事入札契約制度における建設業の許可から2年毎の競争参加資格の審査, さらには工事毎の競争参加資格の確認等に至る企業評価方式は, 公共工事の大部分が指名競争入札により発注されていた時代に構築されたものである. 民間の技術力を活用する多様な入札契約方式を導入するには企業評価方式に着目することが重要であり, 総合評価落札方式を用いる一般競争入札への転換が進んできた現状, さらには今後の入札契約方式の多様化に対応するためには, 企業評価方式の見直しが必要と考えられる. 欧米先進国においては, 費用に対する価値(Value for money)を高めようと, 企業評価方式の制度整備がここ数年の間に大幅に進んでいる. 企業評価方式の見直しにあたっては, こういった海外の先進事例を参考にすることが有効である.
     本研究においては, アメリカ, イギリス, フランス等の主要先進国の最新の企業評価に関する取り組みを分析し, わが国と比較して類似している点・相違している点を明らかにした. そして, これらの国においては, 企業の財務情報等の経営力評価と過去の工事実績等の技術評価は分けて取り扱っており, わが国のように一つの数値に統合して評価するようなことはしていないことを明らかにした.
  • 松村 吉晃, 金子 雄一郎, 島崎 敏一
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_285-I_292
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     本研究は,わが国の公共工事入札における落札率の変動要因について分析を行ったものである.具体的にはまず最近の公共工事の入札・契約対策の変遷を整理し,落札率の変動に影響を及ぼしていると想定される要因を抽出し,定性的な検討を加えた.その上で国土交通省関東地方整備局発注の一般土木工事及びアスファルト舗装工事の入札結果データを用いて,落札率を被説明変数とした重回帰分析を行い,推定された各説明変数のパラメータの符号の妥当性や有意性を検証した.その結果,一般土木工事においては,調査基準価格の設定と入札に参加した企業数(応札者数)が,落札率の変動に対して一定の影響を及ぼしていることが統計的に確認された.一方,アスファルト舗装工事については同様の傾向は見られず,工種によって異なる結果となった.
  • 工藤 匡貴, 宮武 一郎, 馬場 一人, 横井 宏行, 笛田 俊治
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_293-I_304
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     国土交通省においては,民間企業の技術力やノウハウの活用が期待できる設計・施工一括発注方式の試行を継続しており,平成17年度からは総合評価方式である高度技術提案型を導入するなど,入札・契約制度の改善に取り組んでいる.一方で,実際の試行工事における設計・施工一括発注方式による効果については,いくつかの報告事例があるものの,十分に周知されているとは言い難い状況であり,設計・施工一括発注方式の採用件数については,年々減少傾向にある.
     本稿では,今後の設計・施工一括発注方式の拡大・促進に向け,改善方策検討のための基礎研究として実施した,事業プロセスと設計または技術提案の自由度の調査および試行工事のフォローアップ調査の結果と考察について述べる.対象とした工事内容は,シールド工法の共同溝トンネル工事と橋梁工事とし,工事内容による違い,工事目的物と仮設物の違いに焦点をあて整理,考察している.この結果,仮設物に工夫の余地がある工事内容については,設計を含めた技術提案を求めることにより,設計・施工の効果が得られ適していると考える.
  • 尾中 隆文, 森地 茂, 井上 聰史, 日比野 直彦
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_305-I_314
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     日本でPFIが施行されて11年が経つが,建築設備に関するものが大半を占め,交通整備に伴う事業は約5%しか実施されていない.とりわけ,政府が主体的に整備を行ってきた道路事業においてはその実施において様々な実務上のボトルネックが存在している.本研究の目的は,世界のPPP事業の動向を調査し,事業方式と制度の比較分析を行い,日本への展望を示すものである.分析の結果,事業方式の課題と支援制度の重要性を示し,支払根拠と支援の透明性を確保した料金制度を定義した.さらに,日本の制度課題として,制度設計について言及し,地方道路公社が運営する一般有料道路への導入を提案した.
  • 森本 恵美, 滑川 達
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_315-I_326
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     受注者の利益は落札価格と自社施工価格の差であるが,近年は低入札価格調査基準直上への落札が増えている。そのため官積算である低入札価格調査基準と自社施工価格の差が受注者の利益になる状態が続いている。我が国の官庁契約では発注者が積上げ積算またはユニットプライス型積算で算出した予定価格に対して,応札者が自社のコスト等を見積り,入札価格を決定する。現状のように応札価格が低入札調査基準に集中している建設市場環境では,官積算と応札者の入札価格は不可分の関係にある。本研究は,積上げまたはユニットプライスのいずれかの積算方式によって算出された予定価格のうち,一般土木を対象に入札結果の比較分析を行った。入札値分布を価格決定行動,応札者数を入札参加行動として,積算方式の違いがこれらに及ぼす影響を分析した。入札値分布の比較では,2007年度にユニットプライス型積算に見られた,低価格入札を抑制している可能性が見られなくなった。さらに規模の大きいユニットプライス型積算工事では,積上げ積算に比較してより低入札価格調査基準に集中して応札する割合が高くなる傾向が見られた。一方で入札参加者数はユニットプライス型積算工事の方が有意に多くなる傾向が示された。積上げ積算よりも,価格競争状態の厳しいユニットプライス型積算工事への入札を応札者が選択している様子が明らかになった。積算方式の違いは,建設企業が入札参加/不参加を決める要因として働いている可能性がある。
  • 門間 俊幸, 樋野 誠一, 小池 淳司, 中野 剛志, 藤井 聡
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_327-I_338
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     公共事業関係費の適正規模を検討するには,公共投資額とその効果についての適切な把握は重要な判断材料となる.現在,財政支出を行うための財源調達については,税金,利用者負担だけでなく,政府の公債発行が行われることが多い.公債発行は金融市場の需給に影響することから,経済状況がインフレ期なのかデフレ期なのかによって,公共投資効果も大きく異なることが予想される.本稿では,現在のマクロ経済状況を最新のデータに基づき分析・整理した上で,道路投資額及び道路整備量から国内総生産の変化等を推計するマクロ計量経済モデルを構築する.その際にインフレやデフレの時の需給バランス及びこれに伴う価格調整メカニズムを考慮することにより,現下の経済情勢等を踏まえた従来のマクロ計量経済モデルの課題点の検証を行った.その結果,現在の経済状況は流動性の罠に陥っているデフレ状態の可能性があること,デフレ時には国債発行によるクラウディング・アウトが生じ難いこと,公共投資の効果がインフレ時に比べ効果が大きく表れる傾向があることが示された.
  • 大内 雅博
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_339-I_348
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     コンクリート構造物や建築物のストックが量的に充足した段階においては,人口増加率の大小がコンクリートの新規需要の差異を決定する主要因であるとの仮説を立てた.この仮説を,わが国の47都道府県におけるセメント需要を用いて検証した.当該地域の当該年度におけるセメント消費量の,前年度いっぱいまでの累積セメント消費量に対する比率をコンクリート増加率と定義し,コンクリート需要の指標とした.47都道府県の人口増加率とコンクリート増加率との関係に着目した.全国一本のコンクリート増加率と人口増加率との差を1人当たりのコンクリート増加率と定義し,各年における全国平均の1人当たりコンクリート増加率と各都道府県の人口増加率との和をコンクリート増加率の理論値として,統計から得られた各都道府県の1人当たりコンクリート増加率を実測値として比較して誤差率を求めた.1985年ごろから1990年ごろまで人口増加率の影響が徐々に大きくなり,それ以降2004年までの間,平均誤差率はほぼ1割強で推移した.
特集号(報告)
  • 小川 晋, 安間 陽子
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_349-I_356
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     品川区では公園の新設および改修を実施するにあたり,住民説明会やワークショップ,パブリックコメント等を行い,地域住民の多様なニーズを収集して,公園の計画・整備・維持管理にあたっている.しかし,従来の住民説明会等では,多くが大人のみの参加で,遊具などはじゃまだからいらないといったような大人の意見・要望が公園づくりに反映される結果となっており,本来公園をよく利用する子ども達の意見を聞く状況になっていなかった.
     そこで,平成20年4月に新しく策定された品川区基本構想の中で謳われている,区民と区との協働によるまちづくりの一環として,区の未来を担う子ども達の手によって,新しい公園の計画案づくりを行った.また,実際の公園整備にあたっては,公園に対し,より一層の愛着を持ってもらうため,子どもを対象とした工事見学会を開催した.公園完成後においても,子どもボランティアを公募し,花の植え替えを行うなど,公園の維持管理の中でも子ども達の参加ができないか検討を行っている.
     このように品川区では,公共事業の中で子どもが主体的に関わる事業において,計画・整備・維持管理の各段階において継続的に子どもが参加できる仕組みを作り,子どもと大人が共にまちづくりを担う地域意識の向上を図っていく.
  • 馬場 一人, 宮武 一郎, 工藤 匡貴, 横井 宏行, 笛田 俊治
    2011 年 67 巻 4 号 p. I_357-I_364
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
     平成17年に施行された公共工事の品質確保の促進に関する法律において,公共事業の品質確保にあたって民間事業者の積極的な技術提案,創意工夫の活用への配慮が求められるとともに,高度な技術等を含む技術提案を求めた場合には当該提案に基づく予定価格の策定が可能となり目的物の設計を含む技術提案を求めることが容易となった.
     このような環境整備も相まって国土交通省ではより広範な技術提案を活用するため,設計・施工一括発注方式等の試行が行われてきた.設計・施工一括発注方式では,提案の自由度が高い反面,現地条件等が不確実な段階で入札価格を決定することとなることから,そのリスクの負担が大きな問題となる.初期の設計・施工一括発注方式ではリスクは原則受注者負担としていたが,試行において必ずしも適切ではない事例が散見されたことから,契約図書に明記されたリスクのみを受注者が負担することとなった.
     本調査は,発注者も一定程度のリスクを負担しつつ競争の公平性を確保する方法を検討するための基礎資料とするため,実際の事業において発生しているリスクを調査したものである.
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