土木学会論文集F4(建設マネジメント)
Online ISSN : 2185-6605
68 巻 , 4 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
特集号(論文)
  • 稲積 真哉, 大津 宏康, 谷澤 勇気
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_1-I_12
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     本研究はタイ・バンコク首都圏における廃棄物処理マネジメントを対象として,将来予測の不確実性を考慮し得る既往の環境影響評価モデルの再構築を試みるとともに,社会環境会計論的に最適化する指標を提案している.具体的には,タイ・バンコク首都圏にて現状採用されている廃棄物処理マネジメント(ベースラインシナリオ),ならびに対策シナリオとして仮定した2種類の廃棄物処理マネジメントに対して,再構築した環境影響評価モデルを用いて長期的な処理コストおよび環境コストを定量的に評価するものである.なお,本研究で検討している社会環境会計論的な最適化は,タイ・バンコク首都圏における廃棄物処理に限らず,各国・各都市で生じる様々な環境問題に対して,その解決の重要性ならびに方法論を示す一助として位置付ける事が可能である.
  • 小池 淳司, 漆谷 敏和, 樋野 誠一
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_13-I_19
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     公共事業の投資効果に関する議論は,かつて,IS-LM曲線を用いた分析が主流であり,そこでは,公共投資が民間投資をクラウディング・アウトさせるか否かに強い関心がもたれていた.この議論での著者らの既存研究の結論は,デフレ不況のように経済が流動性の罠に陥っている場合は,クラウディング・アウトは発生しないというものである.一方で,このIS-LM曲線を用いた分析では,将来の期待を十分に反映していないという批判,いわゆるルーカス批判に十分に答えられない.しかし,近年の動学的確率的一般均衡(Dynamic Stochastic General Equilibrium:DSGE)モデルの発展によって,この問題についての議論ができるようになった.そこで本研究では,2000年以降のデータをもとに,MCMC法によるベイズ推定によってディープ・パラメーターを求め,DSGEモデルを用いて経済がデフレーションであり,かつ流動性の罠の状態にある日本における公共投資,いわゆる,財政政策の効果を明らかにする.
  • 樋野 誠一, 門間 俊幸, 小池 淳司, 中野 剛志, 藤井 聡
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_21-I_32
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     本研究は,デフレ時に実施する公共投資の効果は,通常(インフレ)時の効果と比較してどの程度異なるのか,あるいは,現下のデフレ不況から脱却するために必要な財政出動の規模と期間はどの程度かについて,公共投資のクラウディングアウトの有無に着目して,ケインズモデルにより検証する.特に,東日本大震災復興投資,新東名高速道路投資などさまざまな政策シナリオに基づき,公共投資の投資効果を実証的に分析することに主眼を置く.結論は,デフレ時においてはクラウディングアウトが生じないため通常時よりも乗数効果が約0.2ポイント高いことが示された.さらに,デフレ脱却のための公共投資の投資規模は,今の経済状況が続くと仮定すると,90年代の公共投資の持続的実施が必要となることが明らかとなった.
  • 皆川 勝
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_33-I_44
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     現在,我が国の建設マネジメントについては,二者構造の問題,設計変更における受発注者間の納得度の相違など多くの課題を抱えており,それを解決しようとする試みがなされているが,「組織」と「人」に着目し,心理・本能に基づく行動ととらえた研究はない.本研究では,これらの課題・問題点を,社会心理学の観点ならびに,人間の本能としての欲求の観点から解釈し,人間の本質的な欲求に基く行動としての分析を行った.その結果,二者構造執行形態から三者構造執行形態への移行は制度としてはより良い方向への変革とみることができるものの,本質的な人間の欲求に基づく行動としてとらえると,必ずしもFIDICに規定された第三者技術者の導入のみでは不十分であり,特に,統一・一貫性の欲求が人間の本能として存在することを踏まえ,個人主義的自己観の確立した個人の参画や,自律欲求を満たすような組織として「The Engineer」を導入することが有効であること等を考察した.
  • 鈴木 信行, 高崎 英邦
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_45-I_56
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     建設施工は,野外での作業が多い.したがって,天候の変化や周辺交通状況の変化等の不確定要素が多く,計画通りの工程で進捗することは少ない.工事担当者は,進捗を監視しながら要求される品質を確保し,安全に工事が進捗できるように,そして,費用の増幅を考慮して,自身の経験に基づいて施工管理を実施することが多い.
     工程管理を行う際,クリティカルパスメソッド(Critical Path Method)により時間軸を基準とした重要な作業工種の連携や流れを抽出し,監視することが一般的である.工程を変更した場合,パソコンソフトウェアを用いることにより,複雑な工程であっても,クリティカルパスを発見することは容易である.ところが,建設施工の特徴として,型枠工や鉄筋組工などの同じ作業資源が,連続的または断続的に繰り返して工事に従事することが多い.すなわち,作業工種の時間連鎖と共に作業資源にも連関がある.この作業資源の連関が,非クリティカルパス上の作業工種からクリティカルパスへ影響を与えることがある.
     本研究では工程順守に影響を与える作業工種の抽出法構築を目的に,ネットワーク工程表において作業資源の連関をリンクとして表現し,これにグラフ理論を組み込んだモデルを考案した.本考案モデルを橋梁工事の工程管理に適用し,工程変更に伴う工程順守に影響を与える非クリティカルパス上の作業工種を特定し,クリティカルパスへの影響を抑制できることを検証した.
  • 皆川 勝, 渡邊 裕介, 草栁 満
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_57-I_67
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     本研究では,災害初期の啓開に大きな影響を及ぼすと考えられる被災地の地元建設業者の建設重機数に着目し,災害初期の建設重機を用いたがれき撤去における地域間連携の有効性をマルチエージェントシミュレーターを用い検討した.対象地域を静岡県に設定し,予想される東海地震を対象に静岡県全域での災害初期の啓開における地域間での重機の共有体制の有無が啓開作業時間に与える影響をシミュレートした.その結果,地域間で連携を行った場合,連携が無い場合に比べ,各市町での作業時間を,最大で92%短縮できる事が示唆された.
  • 加藤 博敏, 北里 新一郎, 兵頭 武志, 横田 弘
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_69-I_78
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     港湾施設では,2007年の関係法令の改正等を受け,既存施設の点検や維持管理計画書の作成ならびにこれに基づく計画的な維持管理が始まっている.しかしながら,港湾施設は,国際的な生産拠点の再配置や定期航路の寄港地選択を始めとした企業の経営判断などにより,施設利用ニーズが大きく変化するなどの特殊性を有している.アセットマネジメントを行う際には,物理的な劣化現象のみならず,利用者ニーズの変化というリスクを認識し,その変動に対応したマネジメントが必要となる.
     本論文では,まず,港湾施設の維持管理制度と計画的な維持管理のための技術(アセットマネジメント)の現状を示し,経済社会の変化によって利用ニーズが変動する港湾施設の特殊性とニーズ変動への対応の必要性について紹介する.その上で,施設の物理的マネジメントを進める中で,経済社会の変化にも対応可能なマネジメント技術の必要性,構造物の劣化進行状況を総合的に示す指標を用いて行う利用ニーズ変動対応型のアセットマネジメント手法の提案,ならびにその活用展望について述べる.
  • 大津 宏康, Suksawat TAWEEPHONG, 木許 翔, 上出 定幸
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_79-I_88
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     本研究は,グラウンドアンカー工(以下,アンカーと称す)の経時的劣化に関して,目視点検結果およびリフトオフ試験結果に基づき,確率過程としてマルコフ過程およびワイブルハザード関数を用いて性能低下過程を表現する手法を提案するものである.具体的には,まず既存の目視点検結果およびリフトオフ試験結果に基づきアンカーの健全度を6つのランクに区分し,閾値を設けてアンカーの状態を健全・損傷の二値に分類する.そして,マルコフ過程およびワイブルハザード関数を用いてアンカーの生存確率を求め,将来状態を予測する.さらに,ワイブルハザードモデルを用いた性能低下モデルと,既往のマルコフ過程を用いた性能低下モデルによるシミュレーション結果を比較し,モデルの違いによる性能低下過程の相違について検討を加える.
  • 関口 信康, 大津 宏康
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_89-I_96
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     現在の厳しい経済社会情勢において道路斜面管理の予算が削減される中,道路防災総点検において対策が必要と判断された膨大な数の要対策斜面への対応が滞っており,道路斜面の効率的な管理のあり方が問われている.一方,インフラストラクチャ(以下,インフラと略す)の適切な管理に向け橋梁や舗装,トンネル等の維持管理計画が個別に策定されているが,これらの各施設は単独で機能を果たすのではなく道路ネットワークとして安全・安心な交通機能を果たすことから,道路をネットワークとして評価することで道路斜面を効率的に管理する必要がある.このような観点から,本研究では道路斜面の維持管理・防災対策の実施状況,対策の効果を資産価値の視点から道路ネットワークとして評価するマネジメント手法について提案する.
  • 二宮 仁志, 渡邊 法美
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_97-I_106
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     地方公共工事執行プロセスにおいて,住民に負の影響を及ぼす事象の発生可能性とその対処コストを“住民リスク”と称す.近年,社会基盤整備における合意形成に関わる法改正やガイドラインの整備が進められているが,その多くは,事業規模や影響範囲の大きな社会基盤の新設・改良を対象としており,比較的小規模の維持補修工事等に適用することは,住民リスクに関する情報共有・合意形成の観点から必ずしも適切とは言い難い.住民リスクは,住民の安全・安心な生活を脅かすばかりでなく,施工業者や発注者にとっても,リスク分担についての事後的説明や対応への不満が感情的対立ひいては反対運動や行政批判に発展する恐れなど,工事執行に影響を与える脅威といえ,その適切なマネジメントは喫緊の課題といえる.本研究は,工事執行プロセスにおける住民リスクのマネジメント手法について提案することを目的とする.大分県で実施された橋梁補修工事について事例研究し,住民リスクのマネジメントと合意形成プロセスの現状について明らかにした.また,住民リスク分担にかかる入札・契約制度の課題について考察するとともに,住民リスクの適切なマネジメントを通じて,合意形成を支援する実践的手法について提案を試みた.
  • 坂本 麻衣子, 古谷 隆之
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_107-I_114
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     総合評価落札方式は,価格と品質を総合的に評価し,優れたものを調達していくことを企図した入札制度であるが,これに加え,技術者の育成,地方域での業務発注や雇用の創出,建設業の地域貢献など,多様な役割が期待されてきた.しかしながら,必ずしも期待される効果は十分に発現しておらず,国土交通省や地方自治体はそれぞれ制度改善の検討を行ってきている.本研究では,総合評価落札方式の入札企業の評価において,技術力と地域性に関する項目の配点割合や地元外からの建設企業の参入割合が変わることで,地元建設企業の技術力や地域性の蓄積に及ぼす影響を進化ゲームの理論にもとづいたモデルを構築し,分析する.そして,技術力と地域性を併せ持つ地元建設企業を育成するための制度のあり方についてモデルの枠組みのもとで試行的に検討する.
  • 天満 知生, 小澤 一雅
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_115-I_124
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     平成9年に国土交通省(当時建設省)の直轄工事で試行開始された設計施工一括発注方式は,その後の総合評価方式の導入により,平成17年以降は高度技術提案IまたはII型1)として発注されている.しかしながら平成22年度までの発注実績は道路部門または河川部門の発注によるもので14年間で合計100件強に留まる.さらに発注件数は年々減少傾向にあり,現在では年間数件に留まっている.
     本研究では設計施工一括発注方式が潜在的にもつ利点を認め,その適用拡大を図るために,同方式の発注時の課題を明らかにすることを目的として,工事を実施している国土交通省の発注機関の担当者を対象として聞き取り調査を実施した.調査の結果(1)入札手続き,特に技術審査に係る負担が大きい(2)設計施工一括発注方式の適用検討に至らない条件(3)予算枠の設定が困難(4)詳細設計期間中の関連機関協議の不確定要素という4つの課題を抽出した.
     また調査の中から得られた事例を参考にしながら,これら課題に対する解決の方向性を示した.
  • 川俣 裕行, 工藤 匡貴, 佐藤 志倫, 森田 康夫
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_125-I_136
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     設計・施工一括発注方式は,設計と施工を一括で発注することにより,民間の優れた技術を活用し,設計及び施工の品質の確保,施工能力を踏まえた合理的な設計,設計から施工を通じた効率性などを目指す発注方式である.国土交通省の直轄事業においては,設計・施工一括発注方式による初めての試行工事が平成9年度に発注され,それ以来継続的に試行が実施されているところである.
     本研究は,試行工事の経験が蓄積されてきている,国土交通省の直轄事業における設計・施工一括発注方式の実施状況を踏まえ,その適用にあたっての適性や条件を調査し,主要な工事内容毎の特性と適用の判断に際しての留意事項について考察し,提案したものである.
  • 宮武 一郎, 工藤 匡貴, 馬場 一人, 川俣 裕行
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_137-I_148
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     本研究は,設計・施工一括発注方式の適用に関する基礎的検討と適用された場合の効果の調査について,土木機械設備工事のうちダム用選択取水設備を対象に行ったものである.
     本稿では,はじめにダム用選択取水設備工事の事業プロセスの各段階における設計等の実施内容について整理を行い,事業プロセスの進捗とともに設計者・施工者が行う設計の仕様が確定するプロセスについて述べる.次に,ダム用選択取水設備の設計業務受注者及び工事受注者へ行ったリスクに関するアンケートについて述べる.最後に,国土交通省直轄工事のダム用取水設備工事を対象に行った調査結果について報告し,調査結果を踏まえ,発注者が入札時に設定した総合評価の評価項目と受注者の実施内容を整理しつつ,適用された場合の効果について述べるものである.
  • 石原 康弘, 久保 尚也
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_149-I_157
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     総合評価方式は、1998年に導入されて以来、国、地方公共団体において多く導入されてきている。また、近年、技術力を重視した評価が行われるようになってきたが、技術的工夫の余地の大きい高度技術提案型は、その適用件数が極めて少ない。そこで、本研究においては、2006年度から2010年度までに国土交通省において高度技術提案型を適用した工事を対象に、技術審査結果等を分析し、技術競争優位とは言っても限定的であることや、技術提案のテーマ設定が標準型と大きく変わるものではないこと、費やす時間や労力の割には効果が少ないなどの課題を抽出した。その上で、技術評価においては、得点差の出やすい技術提案の設定、「高度な技術提案」に相応しいテーマ等の設定、「企画競争方式」(コンペ方式)の導入などの改善案の提案を行ったものである。
  • 倉内 公嘉, 島影 和也, 高野 伸栄
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_159-I_168
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     本研究はこれまで筆者らが実施してきた住民参加型入札の実験を踏まえて,参加業者の負担軽減を図るための実施方法や評価法の変更などを行い, 新たな工事の入札での実験結果を分析したものである.実験に当たっては, 住民が当事者意識を持ち, 内容を理解しやすい身近な公共工事として, 市街地の国道の線形改良工事を選定し, 住民参加型入札により落札者を決定した. これまで行ってこなかった工事施工中及び施工後の参加住民へのアンケートを行った結果, 回答者の多くが住民参加型入札が工事施工に際して良い効果を与えたと答え,工事に対する意識に係わる住民参加型入札の効果を明らかにすることができた.
  • 木下 誠也
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_169-I_179
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     わが国の建設コンサルタント業務の調達には,指名競争入札が長く用いられていたが,近年,プロポーザル方式の適用が増大するとともに,総合評価落札方式が導入された.しかし,地方公共団体等において依然として価格競争が多用されているほか,プロポーザル方式については技術競争が有効に機能しにくい,QCBSに相当する総合評価落札方式については低価格による契約を受注者に強いることが多いといった問題が生じている.
     一方,海外においては,QBSの適用拡大,QCBSにおける一層の品質重視の傾向がみられる.本研究は,海外との比較検討を踏まえ,建設コンサルタント業務の調達方式は,交渉手続きを法律上明確に位置づけた上で,公正さの確保等に特に留意しつつQBSを基本とすべきであり,QCBSを用いる場合は品質を一層重視すべきであると結論づけた.
  • 藤島 博英, 簗瀬 範彦
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_181-I_192
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     平成17年,「公共工事の品質確保の促進に関する法律」が制定された.以後,地方自治体において,総合評価方式の導入が進んでいるが,広域自治体の4割強は試行段階にあり,基礎自治体の本格的実施は,7%未満である.
     本研究は,すべての広域自治体を対象に公共調達実施状況,第三者委員会の運営状況および基礎自治体に対する支援状況に関するアンケート調査を実施した.アンケートの分析結果,地方自治体において総合評価の実施の大きな隘路となっている制度的要件は,第三者委員会であることを明らかにできた.しかし,職員配置状況から,小規模な広域自治体ほど,運営の負担が大きいため,第三者委員会の開催にかかる事務的負担を軽減するような制度的運用を行うことが,技術評価を伴う総合評価の導入促進に効果的であると考える.
  • 金子 雄一郎, 松村 吉晃, 島崎 敏一
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_193-I_199
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     本研究は,総合評価落札方式で実施された入札における競争参加者間の技術面及び価格面での差の状況を分析したものである.具体的には,国土交通省関東地方整備局発注の一般土木工事を対象に,過去6年間の入札結果データを用いて,1件1件の入札における競争参加者間の技術評価点及び応札価格のばらつき具合とその経年変化を把握した.その結果,技術評価点のばらつきが平成21年度以降縮小傾向にあることが分かった.このことは,近年の総合評価落札方式における技術評価が,入札参加者の選別の観点から必ずしも有効に機能していないことを示唆したものと考えられる.
  • 中尾 聡史, 中野 剛志, 藤井 聡
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_201-I_208
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/12
    ジャーナル フリー
     我が国では,自然災害に見舞われるリスクが高く,自然現象がもたらす被害を如何に抑制するかが問われてきた.そこで,注目されているのが,事業継続計画である.社会を構成する組織である企業が,BCPの導入に取り組み,事業継続能力を高めることは,企業自らにとっても,我々の社会にとっても,その営みを継続する上で重要であると考えられる.特に,中小企業は,我が国の企業数の99.7%を占め,社会・経済の基盤を支えていることから,中小企業においてBCP導入を普及させることは社会の強靭性を高める上で,極めて重要であろう.そこで,本研究では,中小企業においてBCP導入を普及するにあたって,どのような施策を行うことが有効であるのかを,既往のBCPの諸種の実務的実践的経験と社会的ジレンマの理論的枠組みの双方を踏まえつつ提案する.
  • 角崎 巧, 五艘 隆志
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_209-I_218
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/04/04
    ジャーナル フリー
     明治以来続いてきた官主導による中央集権型の地方制度は,社会の成熟や行財政の破綻から,地方分権と規制緩和による地方の自主性を尊重した制度へと転換する過程にある.地域経営の将来像として,地域を統括する道州と直接住民に関わる市町村からなる道州制が議論されており,道州と市町村で行う業務の配分が重要な問題となってくる.住民意思の反映を考えれば市町村主体の地域主権型道州制が望ましく,市町村に求められる機能も拡大することになる. その際,市町村の組織や区域の拡大による住民との乖離を補完することが重要になる.一方,市町村が厳しい財政や社会情勢のなかでこれからも必要とする社会資本の整備を続けるには,無駄な施設の重複を避け,その機能や効果を最大化するという視点に立った整備も重要となる.本研究ではこれらの問題を整理し,将来の市町村が果たすべき役割を支援するツールとして,GIS(地理情報システム)を活用した社会資本整備支援システム(LSI:Layer System for Infrastructure)の概念を構築した.
  • 野口 好夫, 鈴木 弘司, 清水 千尋
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_219-I_229
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/04/04
    ジャーナル フリー
     本研究では土木技術者の評価・育成の現状把握を目的に企業・自治体を対象としたアンケート調査を実施し,土木技術者に求められている評価・育成の仕組みに対する現状や課題の整理を行った.その結果,中小規模ゼネコンでは評価項目を決めて技術者評価を行っている割合が低いなど建設会社,建設コンサルタントといった業種・業態による違いがあること,技術者に対する評価項目が業務経験年数や業種・業態によって異なることがわかった.技術者育成の現状については,中小規模ゼネコンの約半数がOJTを制度化しておらず,キャリアプランを考える機会をあまり与えず,さらにはキャリアパス自体を作成していない傾向が強いこと,また,民間では資格取得支援をする割合が高い一方,自治体ではその割合が低いことなどがわかった.
  • 大内 雅博
    2012 年 68 巻 4 号 p. I_231-I_242
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/04/04
    ジャーナル フリー
     最近30年間におけるセメント消費量の地域差におよぼす人口増加率の影響度合いを,土木・民需建築・官公需建築の3種類の建設需要発生要因ごとに明らかにした.各5年間ごとのセメント消費量の,前年度末時点での累積セメント消費量に対する比率の年間平均値として定義したコンクリート増加率をセメント需要の指標とした.各都道府県における各用途のコンクリート増加率,全世代人口1人当たりのコンクリート増加率および生産年齢人口1人当たりのコンクリート増加率を求め,全国をまとめて1地域とした場合の1人当たり平均値とのバラツキを定量化した.最近10年間においては土木向けと民需建築向けのセメント需要における生産年齢人口1人当たりのコンクリート増加率のバラツキが最も小さくなった.
特集号(報告)
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