土木学会論文集F4(建設マネジメント)
Online ISSN : 2185-6605
72 巻 , 4 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
特集号(論文)
  • 鈴木 信行
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_1-I_10
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー
     1990年代初頭に名目国内総生産(GDP)は450兆円を超えたが,以降約20年間経済成長は停滞し,“失われた20年”とも呼ばれている.それに伴って建設投資額も1992年(平成4年)をピークに右肩下がりとなり,建設産業の就業者数はピーク時の約3割減となっている.2011年3月に発生した東日本大震災後の復興工事,そして2013年9月には2020年東京オリンピック招致が決定し,その準備のための整備工事が開始されている.急速な市場環境の変動により,建設資材,建設技術者および作業員,建設機械の不足等が顕著となった.特に,経済動向に追従することの困難な人材については,長期にわたり採用を控えていたうえに,団塊世代の退職が重なり,組織内に空洞化が生じているのが現状である.
     本研究では人材不足の要因等について,産官学からの様々な角度の自由な意見に対し,テキストマイニング手法により解析する.その結果を踏まえて,将来的な人材の育成,事業展開等について考察する.
  • 高木 元也
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_11-I_22
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー
     中小建設業者の多くは,人材面,資金面等に余裕がなく,安全活動推進力の向上が課題とされている.
     本稿は,管工事業を対象に安全講習会の受講者に対するアンケート調査を実施し,安全教育の実態等を把握した.その結果,1)一人親方,従業員5人以下の業者に所属する者,豊富な実務経験年数を有する者等は安全教育受講頻度が少ない傾向にある,2)小規模な建設業者は安全教育に有効とされる災害事例を十分に活用できていない,3)安全教育には教育後の理解度の確認が重要である,4)高年齢層の講習の理解度は他と比べ高くない,5)安全管理水準が高いとはいえない業者に所属するものの災害撲滅への自信が高い元請業者の管理者等は,その自信が安全活動推進の阻害要因になるおそれがある,などが課題として明らかとなった.
  • 岡田 優樹, 佐々木 邦明
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_23-I_31
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,生活満足度等の主観的指標による社会資本整備の評価を行う際に,複数断面のクロスセクショナル調査における分析方法について検討を行うものである.主観的な評価指標は,その背景となる個人の属性や様々な観測困難な要因によって変動することが知られているため,それらをコントロールしたサンプリングが望ましい.しかしそのようなサンプリングは現実的には期待できないことが多く,属性分布等の差異を考慮したうえでの比較を行う必要がある.本論文では,事例研究として山梨県内でDRT導入があった地域の3回にわたる意識調査で得られた主観的意識評価を,傾向スコアを用いて地域と時期の調整を行って生活満足度の変化を比較した.その結果,統計的な有意性に違いがでることを明らかにした.
  • 田中 皓介, 池端 菜摘, 宮澤 拓也, 宮川 愛由, 藤井 聡
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_33-I_42
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー
     わが国の経済は,1998年から長いデフレ不況の状態にある.デフレ脱却のために,財政政策による需要創出の有効性が示唆されているにも関わらず,1998年以降の公共事業費は削減され続けてきた.その背景として,経済政策の決定に多大な影響を及ぼすと考えられる内閣府の経済財政モデルが算出する乗数効果の小ささが挙げられる.そこで本稿では,内閣府モデルの妥当性の検証を行った.その結果,内閣府モデルには輸出入均衡値という概念が導入されており,輸出入を通じて均衡への調整が行なわれる構造が存在することを指摘した.その上で、マクロモデルに均衡値概念を導入することによって算出される乗数効果が大きく低下することを実証的に示すとともに,均衡値を導入することの不当性を明らかにした.
  • 沼尻 了俊, 宮川 愛由, 藤井 聡
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_43-I_54
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー
     本研究では,一国の行く末を左右する経済政策に関して,新聞メディアが特定の「物語」を共有しているという既往の知見に基づき,新自由主義,ケインズ主義それぞれの思想に基づいた「物語」がそれぞれの経済政策に対する受容意識とその規定因に及ぼす影響に関する知見を得るため,アンケート調査を実施し,共分散構造分析を行った.その結果,いずれの思想においても,「物語」が政策受容意識とその規定因に大きな影響を及ぼしており,経済政策を受容する世論形成の一因となっているという仮説が支持された.
  • 岡本 尽, 桝谷 浩
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_55-I_64
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー
     国際建設プロジェクトにおけるプロジェクトの遅延に対する契約当事者の負担すべき責任を明確にするための遅延分析において,Concurrent Delayはその遅延責任負担を軽減するための手段となるために非常に重要な要素のひとつである.Concurrent Delayに関連する問題に対して様々な研究が過去になされているが,統一見解が合意されているわけではない.本論文は,Concurrent Delayに関する争議リスクを軽減するために契約当事者間で事前に何を決めて合意しておくべきかを整理し,また遅延責任負担の新たな分配手法を提案する.
  • 宗広 裕司, 笠原 拓郎, 宮内 章, 諏訪 晟治, 五艘 隆志
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_65-I_76
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー
     東南アジアの中でも経済成長が著しいインドネシアでは,深刻なエネルギー不足解消に向けたFIT制度改定を受け,IPPによる小水力発電事業の開発に拍車がかかっている.一方,既に運用中の小水力発電所では,発電量が計画通り発生せず収入減,債務返済難さらには経営難に陥るケースが散見される.この要因は,杜撰な計画・設計や施工品質の問題もあるが,特にO&Mの経験とノウハウ不足により設備利用率が計画通り達成されていないことが大きい.本稿では,発展途上国の小水力発電所におけるO&Mの最適化を図り発電量を最大限に維持することを狙いとしたクラウド型O&M情報システムの基本概念を概説するとともに,現地のモデル発電所で開発したプロトタイプと適用事例を紹介し,将来的なアセットマネジメントへの活用可能性について考察した.
  • 森 芳徳, 宮武 裕昭, 久保 哲也, 井上 玄己
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_77-I_87
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー
     近年,大規模な土工構造物が地震等により甚大な被災を受ける場合がある.被災によって遮断された交通機能は早期に回復することが求められ,復旧には被災現場の状況に応じて交通機能を効率よく且つ迅速に回復できる工法の選定が必要とされる.現場の実態調査から,被災現場では大型土のうを用いた応急復旧の採用が多く見られる.大型土のうは現場の状況に柔軟に対応でき簡易的に復旧可能であることから多くの被災現場で採用されていると考えられる.しかし,従来の大型土のうは仮設構造物であるため,本復旧の際には撤去作業が必要となり,本復旧が完了するまでには時間を要する.被災した土工構造物を効率的に本復旧するためには,大型土のうを用いた応急復旧盛土をそのまま本復旧として活用することが有効であると考えられる.
     本研究では,道路盛土災害事例から崩壊形態や現場の制約条件による復旧対策手法等について分析・整理するとともに,応急復旧として活用の多い大型土のうに着目した復旧モデルを考案し,大型土のうを用いた復旧盛土の本設構造物としての適用性について,動的遠心力載荷模型実験及び実大実験を実施し,変形挙動や施工性等を確認・検証した.
  • 山口 真司, 谷本 圭志, 後藤 忠博
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_89-I_96
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー
     地元をよく知り機動力を有する建設業は地域の持続可能性に大きな役割を担ってきた.しかしながら,公共事業の削減や就業者の減少に伴い,余力を失った現在の企業がその要請に十分に応えた経営を行うのは困難である.このため,行政が地元の建設企業を積極的に維持することの問題意識が高まっている.しかし,どれほどの建設企業を維持するかの考え方や,企業を積極的に維持せずに現行の体制のもとでどのような方策がありうるか,それらの社会的な損失がどれほどかが不明であり,具体的な議論への発展を阻害している.本研究では,災害対応を対象としてこれらの分析の枠組みを提示し,どのような検討が可能になるのかを数値実験を通じて示す.
  • 藤井 聡, 宮川 愛由
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_97-I_109
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー
     自然災害に見舞われるリスクが高い我が国において,社会資本整備のみならず,防災及び経済発展の担い手として,土木建設業が非常に重要な役割を果たしてきた.一方で近年,公共工事の入札市場では,闇雲な低入札等の弊害により,建設業界全体が疲弊しており社会全体が甚大な不利益を被ることが危惧されている.そこで本研究では,我が国の公共調達制度適正化に資する知見を得ることを目的として,明治初期から今日に至るまでの我が国の公共調達の歴史変遷を整理した.その結果,我が国の公共調達は純粋な競争を避け,実質的に受発注者で調整を行うことで個々の受注価格と請負者を特定し,その中で,適切な工事品質を確保するという公益に資する目的で行われていた談合の存在と,それを正式に活用するための制度発展という歴史的経緯の存在が示唆された.
  • 張 文君, 大西 正光, 小林 潔司, 石 磊
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_111-I_122
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー
     近年,国際的なインフラ整備において中国の役割が拡大しており,日本の建設企業も中国流の建設契約ガバナンスに関する知見を蓄積していく必要がある.中国国内の建設工事における契約約款の内容は、国際的に用いられる標準契約約款と必ずしも一致していない.契約内容は,当事国における発注者と請負業界の間の契約慣行が反映される.本研究では,中国国内の公共工事における標準契約約款を分析対象として,中国における建設市場の契約慣行の構造を明らかにする.その際,国際的な建設契約の標準約款であるFIDIC約款を比較分析対象とする.その結果,中国の建設契約は概ねFIDIC約款と同じ構造を有しているが,紛争解決ルールの運用規則に違いが見られることを指摘する.また,両契約約款に差異が見られる理由として関係性に基づくガバナンスの存在を指摘する.
  • 浜田 成一, 貝戸 清之, 水谷 大二郎, 杉原 栄作, 平川 勝彦
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_123-I_134
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー
     土木工事の建設契約は不完備要素の高い契約が多いために,契約締結時に予測できなかった事象が顕在化するときには,受発注者間において契約変更協議が実施される.しかし,契約変更協議が円滑に進まずに,契約紛争に発展する事例も少なくない.そこで,本研究では土木工事の建設契約における設計変更に伴う契約変更の紛争事例を通して,会計検査や議会承認といった発注者が抱える制度上の課題,さらには契約の二者執行構造,官の片務性・無謬性など,建設契約の遂行の弊害となる課題について考察する.その上で,受発注者の契約変更協議を円滑に進める方策として,当事者以外の第三者への協議経過の公開(経過管理システムによる可視化)を提案する.
  • 城古 雅典, 森脇 明夫, 有賀 貴志, 石川 和弘, 福士 直子
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_135-I_144
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー
     製造業では3次元情報技術を駆使して生産することは必要不可欠であるのに対し,公共土木工事においてはCIM等の導入により事例は増えつつあるものの,3次元情報技術は必要不可欠の技術とは位置付けられていない.その原因としては,3次元化する効果および目的が明確ではないことに加え,3次元モデル作成に費用や労力がかかることがある.
     そこで本研究は,まず3次元情報技術に関する活用事例をもとに,どのようなフェーズで,どのような効果,課題,変革があるかを抽出し,次に抽出されたの事象の公共土木工事への適用を考察し,最後に公共土木工事が目指すべき方向性を提案するものである.
  • 宮武 一郎, 田村 利晶, 盛 伸行, 岡井 春樹, 高岸 智紘
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_145-I_154
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー
     国土交通省では,公共事業の調査・計画,設計,施工,維持管理の各過程において扱う,あるいは作成される3次元モデルを一元的に共有,活用,発展させることにより,建設生産システムにおける各過程での諸課題を解決し業務の効率化を図る目的で,CIM(Construction Information Modeling/Management)の導入の検討を行っている.
     筆者らはCIMを築堤事業の施工段階に適用した試行工事を担当し,その試行工事において発注者・施工者以外の第三者の支援により3次元モデルの作成・修正を実施した.本稿では,その試行工事における3次元モデルの作成・修正に関する業務フローについて報告するとともに,その試行工事の結果を踏まえ,CIMを適用する場合において第三者を導入する必要性,導入する場合における第三者の位置づけや役割,運用上の課題について,述べるものである.
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