土木学会論文集F4(建設マネジメント)
Online ISSN : 2185-6605
ISSN-L : 2185-6605
76 巻, 1 号
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和文論文
  • 二宮 仁志, 堀田 昌英
    2020 年 76 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー

     農村における社会基盤マネジメントに関与するステークホルダーは,多様な価値や異なる考えを有するなど立場や利害錯綜を超えて合意に至るのは容易ではない.一方,我が国の農業用水や里山等の地域資源は,地域固有のルールや規範に基づき利用・管理されてきた.本研究は,事例研究を通じて,地域固有の水資源配分ルールが社会的に認知・承認された根拠ならびに紛争解決プロセスについて明らかにするとともに,地域の秩序形成の観点から,農業土木行政の役割について考察することを目的とした.大分県竹田市大野川上流域に位置する2地域において,コモンズ論の概念・枠組みを足がかりに,農業用水に係る (1) 利用・管理基準の正当性論拠,(2) 利害衝突の争点,(3) 紛争解決・合意を導いた要因について分析・考察を試みた.

  • 宮原 史, 堤 盛人
    2020 年 76 巻 1 号 p. 14-28
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

     道路橋を適切に維持管理してゆくためには,道路橋の維持管理に関わる主体が行う行為や意思決定に必要な技術力を有する技術者が継続的に確保できるように,目標を明確にした戦略的な人材育成を行う必要がある.しかし,各組織で行われる人材育成において,人材育成が目標とする技術力の全体像や構成要素が整理されているケースは稀であると考えられる.

     そこで本研究では,戦略的な人材育成の実現に向け,道路橋の復旧事例等から読み取ることができる道路橋を維持管理するための判断や検討の1つ1つを,認知心理学に基づき教育分野で開発された「ブルーム・タキソノミー」の枠組を用いて分類することによって,技術力の解明を試みる.さらに,人材育成手段との対応付けを試みることで,戦略的な人材育成を実現し得ることを示す.

  • 山名 宗之, 富澤 康雄, 水野 克己, 藤原 照幸, 稲垣 学武, 水田 和真, 勝見 武, 嘉門 雅史
    2020 年 76 巻 1 号 p. 29-41
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

     泥土圧シールドトンネル工法からの発生土(建設汚泥)を海面埋立資材として再生活用する「シールド建設汚泥の再生活用事業」において,トレーサビリティを確保する「ETC電子マニフェストシステム」を開発した.本システムを建設汚泥リサイクルに運用することにより,産業廃棄物の発生から最終処分までの一連の処理工程管理に義務付けされるマニフェスト作成の大幅な労力削減につながり,1日当たり最大700件程度の電子マニフェストの即日発行を実現した.本システムは,排出,運搬及び処理に係る各事業者に即時性のあるマニフェストデータの収集・統合・共有を可能とするものであり,大量排出現場における各事業者の責任の明確化と運搬管理作業の効率化,省力化につながるなどのメリットを有することを実証した.

  • 石田 辰英, 広瀬 茂男, Michele GUARNIERI
    2020 年 76 巻 1 号 p. 42-50
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

     橋梁点検は,点検技術者による近接目視点検を行うため損傷確認,計測,記録,写真撮影等の多くの作業を高所の限られた作業空間で行うことが一般的で,危険を伴う現場作業である.そのため点検技術者の作業負担低減とより安全で確実な点検を実現するため,ロボット化が有効と考えられている.ロボット化には特にドローンを利用する方式が多く試みられているが,我々は,点検者による現地の安全な場所での損傷確認と,計測,記録,撮影をロボットで実現することを目標として,ワイヤ支持方式を選択した.その上で対象となる橋梁の特性を分析して仕様を定め,従来の手法では課題となっている設置や,狭隘部への進入,広い適用範囲などを実現し,実橋実証実験で実用性を立証した.

  • 毅力 果奇, 村上 茂之, 阿 栄, 佐々木 博
    2020 年 76 巻 1 号 p. 51-62
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/20
    ジャーナル フリー

     近年,GPS・加速度センサーなど多種のセンサーを搭載したスマートフォン等の端末の普及が進んでおり,様々な情報を高頻度で低コストかつ大量に収集することが可能となった.本研究では,このような身近なスマートフォンを利用して収集した路面平坦性に起因する加速度に着目し,サポートベクトルマシーン(SVM)の手法を適用することによる路面平坦性の簡易診断について検討し,その可能性を示した.検討においては,SVMの特徴量として,計測されたサスペンション上部(ばね上質量)のみのデータを用いて算出される国際ラフネス指数IRIに相当する物理量(換算IRI)と,計測値(振幅)の分布特性を表す代表値である標準偏差を用いた.

  • 貝戸 清之, 二宮 陽平
    2020 年 76 巻 1 号 p. 63-82
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     橋梁RC床版の劣化と床版直上のポットホール発生は互いに影響を及ぼし合うことが経験的に知られている.RC床版の目視点検には多大な労力と費用を要する一方で,ポットホールの発生状況は日常の道路巡回を通して確認できる.そこで本研究ではRC床版の劣化とポットホールの発生との相互関係を明示的に考慮したポアソン隠れマルコフ劣化ハザードモデルを開発した上で,目視点検の効率化や,状態依存型の点検施策への移行を視野に入れた点検手法を提案する.具体的には,RC床版の目視点検周期を延伸する際に,日常の道路巡回で獲得できるポットホールの発生頻度を補完的情報として,延伸期間中の安全を担保する点検に関する理論的方法論を構築する.最後に,実際の道路橋RC床版とホットホールを対象とした点検データを用いた適用事例を示す.

和文報告
  • 原田 紹臣, 小杉 賢一朗, 里深 好文, 水山 高久
    2020 年 76 巻 1 号 p. 83-89
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

     現在,土砂災害に対する防災対策の検討に際して,経済性に加えて,施工性や環境面等にも考慮した総合的な比較検討の実施が求められている.しかしながら,環境や施工性の高度化と経済性とは,トレード・オフの関係になることが多く,アカウンタビリティーの観点より,これらの比較における根拠の明確化(例えば,定量的な指標)は重要であると考えられる.そこで,本研究では土砂災害対策における一般的な崖地対策や土石流対策の工法に関して,試行的に,設計実務者が工法比較検討時に際して考慮する経済性,施工性,環境等の着眼点に関する重みについて,複数の管理者,学識経験者,コンサルタント等を対象にしたアンケート調査及びAHP分析により定量的に把握するとともに,その活用方法について例示している.

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