土木学会論文集D
Online ISSN : 1880-6058
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65 巻, 4 号
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特集(地域公共交通計画の新たな潮流)
  • 喜多 秀行, 谷本 圭志
    2009 年 65 巻 4 号 p. 519-520
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
  • 柿本 竜治, 鶴丸 康二
    2009 年 65 巻 4 号 p. 521-533
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
     規制緩和を目的とした道路運送法の改正が平成12年5月に成立し,平成14年2月に乗合バス事業は免許制から許可制に移行した.また,需給調整規制を前提としていた国の地方バス補助制度も需給調整規制の廃止により平成13年4月から生活交通確保のために地域にとって必要な路線に対する路線毎の補助制度に改められた.熊本県では,それらに加えて県単独補助制度を平成19年度に改正することを予定している.バス事業を取り巻く環境は,このような制度の変更の影響に加えて平成の大合併として加速度的に進んでいる市町村合併による地域構造の変化の影響も受けている.本研究では,熊本県下の各市町村の乗合バスを中心とした生活交通対策の取組みに対し,それらが及ぼした影響と問題点を整理し,役割が増している市町村の地域公共交通政策に関する知見を得る.
  • 谷本 圭志, 喜多 秀行
    2009 年 65 巻 4 号 p. 534-543
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
     地方自治体が公共交通を計画するに際しては,現行の公共交通サービスが住民の活動ニーズをどれだけ充足しているかをアンケートなどで把握し,それを中心的な計画情報として用いることが多々ある.しかし,現行の活動の機会に適応して住民の活動ニーズが形成される場合,この情報に依拠して策定される計画にはある特定の指向性が備わる可能性がある.本研究では,活動ニーズの充足に着目することの意味を再整理するとともに,住民の活動の機会と活動ニーズの関係を分析し,従来からサービス水準が著しく異なる地区を抱えることが一般的な地方部の自治体においては,活動ニーズの充足に着目した計画は地区間のサービス水準の格差の拡大を容認する計画となることを述べる.
  • 谷本 圭志, 牧 修平, 喜多 秀行
    2009 年 65 巻 4 号 p. 544-553
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
     公共交通は路線および運行の時刻が固定されている.このため,実行可能な個人の活動のパターンが制約される.活動の実行のしやすさを評価する指標としてアクセシビリティが提案されているが,それらがこの制約を明示的に考慮しうるかは必ずしも明らかではない.そこで本研究は,従来のアクセシビリティ指標をレビューし,この制約を直接的に考慮しえないことを明らかにする.その上で,その制約を考慮しうる指標として,所与の公共交通サービスのもとで実行可能な時間配分を数え上げる方法を定式化する.また,この指標を用いた適用例をいくつか示し,開発した指標が公共交通の計画に有用であることを示す.
  • 福本 雅之, 加藤 博和
    2009 年 65 巻 4 号 p. 554-567
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
     財政悪化・少子高齢化社会を迎えた日本における地域公共交通維持スキームとして,コミュニティバス等の公的補助方式に加え,地域住民・企業が自らのニーズに合った公共交通を創り出す「地域参画型運営方式」が出現している.本研究では,全国の地区内乗合バスサービス代表事例を横断的に調査し,関係主体間の役割分担の視点から類型化する.各類型の有効性と成立・持続可能性の地域特性による違いを,クラブ理論および組織論の観点から検討した結果,a) 成立の可否を主に左右するのは事業採算性と運動の組織化であること,b) 運動の組織化は地縁組織やキーパーソンの有無により大きな影響を受けること,を明らかにしている.その上で,地域の特性や資源に応じた運営方式を類型化している.
  • -「生活バスよっかいち」を対象として-
    加藤 博和, 高須賀 大索, 福本 雅之
    2009 年 65 巻 4 号 p. 568-582
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
     近年,地域住民・企業等が事業主体となり,資金的に自立し,住民・利用者のニーズに柔軟に対応しうる公共交通が出現している.本研究では,この「地域参画型運営方式」が成立し持続しうる条件を分析する.そのために,「生活バスよっかいち」を対象として,成立・運営プロセスの調査分析を行う.次いで,地域公共交通サービスをクラブ財ととらえ,供給のための運営組織の形態について検討する.その結果,地域参画型運営方式では運行開始までに多くの条件があり,継続についても資金や組織の面で課題があることを明らかにしている.そこで,成立の鍵となる,関係各主体の役割分担と協働のあり方,キーパーソンの存在や交通事業者・自治体の役割について考察する.最後に,近年の制度変更が地域参画型運営方式の普及に寄与する可能性について言及する.
和文論文
  • ∼理論的検討と交通・環境・まちづくり問題への適用∼
    谷口 綾子, 藤井 聡
    2009 年 65 巻 4 号 p. 432-440
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,環境配慮行動など利他的行動の心理プロセスにおいて重要な役割を果たす道徳意識に着目し,その階層構造モデルとして「階層的規範活性化モデル」を提案するとともに,そのモデルを用いて,自動車と公共交通に関するモビリティ・マネジメント授業実践を受けた小学生の心理データを分析した.その結果,道徳意識が階層的に活性化していく可能性が示されるとともに,「住民参加」や「規制や事業の受容」ならびに「環境問題」に関わる道徳意識は,必ずしも論理構造を認知していなくとも活性化され得る一方で,住民参加や規制・事業の受容とは関係のない「交通問題」に関する道徳意識は,その道徳意識が活性化されるべき論理構造を理解することではじめて活性化され得る,という可能性が示唆された.
  • 谷口 綾子, 浅見 知秀, 藤井 聡, 石田 東生
    2009 年 65 巻 4 号 p. 441-448
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/20
    ジャーナル フリー
     効率的な都市構造「コンパクトシティ」を実現するためには,土地利用規制とともに,人々の居住地を公共交通機関の近くに誘導する施策が不可欠である.本研究ではこうした認識の下,平成20年4月に転居予定の筑波大学の学生を対象に,居住地選択のための探索行動を行うであろう平成19年11月から平成20年3月の期間に,一般的な住宅情報とともにバス停位置の情報を提供するというコミュニケーションを実施し,これによりバス停近くの居住地選択を促すことが可能か否かを実証的に検証した.その結果,バス停位置を強調した情報を提供した群は,バス停を強調しない情報を提供した群よりも,バス停近くのアパートを選択する傾向が2倍程度高いという結果が示された.
  • 大西 正光, 足立 康史, 吉田 護, 小林 潔司
    2009 年 65 巻 4 号 p. 449-464
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,都市内の小規模の小売店で構成される商店街とそれ以外の商店街・ショッピングセンターの競争関係に着目する.家計が複数小売店でショッピングを行う場合,家計の商店街の選択行動を通じて,各小売店の利潤の間に相互関係が発生する.このような需要の外部性が存在する場合,個々の小売店による分権的な価格決定行動では,需要の外部性を内部化できず,商店街の商圏が過小になるという問題が発生する.本研究では,既成商店街における割引ポイント制度による価格調整機能に着目し,社会的に最適な市場構造を実現する方策について考察する.さらに,既成商店街における持続的な価格コーディネーション機能を維持するためには,割引ポイント制度の加盟店の間での価格束縛メカニズムが機能することが不可欠であることを明らかにする.
  • 三輪 富生, 石黒 洋介, 山本 俊行, 森川 高行
    2009 年 65 巻 4 号 p. 465-479
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
     近年,プローブカーシステムによる交通情報収集が各地で進められている.プローブカーデータから生成される交通情報には,車両間での走行特性の違いやGPSエラー等によりばらつきが含まれる.このため,信頼性の高い情報を生成するためには多くのサンプル数が必要となる.このため,各リンクで必要なプローブサンプル数を効率よく収集するためには,プローブカーを適切に配備しなければならない.本研究は,名古屋市周辺で収集されたタクシープローブカーデータを用い,各道路リンクでの通過頻度や必要サンプル数をモデル化し,情報収集確率を最大とするプローブカーの最適割当て計画を行う.分析の結果,信頼性の高い情報を効率的に得るためには,より多くのプローブカーの確保や都心部を囲む広いエリアへの割当てが必要であることを示した.
  • 福本 雅之, 西山 陽介, 加藤 博和, 孫 卓
    2009 年 65 巻 4 号 p. 480-492
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
     本研究では,公共交通の需要が希薄な人口低密度地域において,費用に対してサービス水準の高い乗合運送サービスの供給方法について検討する.愛知県田原市を対象として,利用者の少ない現在の路線バスを,ジャンボタクシー車両を用いた少量乗合運送に置き換える場合を想定し,その際の利用意向の変化をアンケート調査結果を元に分析している.さらに,デマンド運行導入に伴う運行経費の変化を,ランダムな予約の発生に対応した配車を考慮できる運行シミュレーションによって推計している.その結果,1)利用意向は運賃の影響を大きく受ける一方,運行本数や電話予約の影響は小さいこと,2)デマンド運行導入によって必要車両台数が増加する可能性はあるが,ある程度までの利用者であれば運行経費が削減できる可能性があること,をそれぞれ示している.
  • 奥田 隆明
    2009 年 65 巻 4 号 p. 493-502
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
     土地利用モデルでは消費行動と消費地選択行動を同時に考慮する必要があり,前者についてはCES型効用関数を仮定すればCES型の消費モデルを構成することができる.ところが,後者については,従来,非集計行動モデルに基づくロジット型モデルが用いられてきたため,同じ土地利用モデルの中に2つのタイプのモデルが混在することになる.そこで,本研究では,Anderson et al.を参考にしながら,消費行動と消費地選択行動をともにCES型関数で表現したCES型土地利用モデルを開発する.また,このモデルは2階層の層化CES型効用関数を仮定したマクロな効用最大化問題からも導出できることを示す.そして,通勤費用や土地サービス市場を考慮したモデルへと展開し,このモデルを用いると等価変分や補償変分を比較的容易に求めることができることを示す.
  • 金森 亮, 森川 高行, 山本 俊行, 三輪 富生
    2009 年 65 巻 4 号 p. 503-518
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
     総合交通戦略の策定に資する都市圏レベルの交通需要予測モデルとして,著者らが提案しているモデルを改良し,実用性を検証する.提案モデルは四段階推定法の問題点を解消/緩和すべく,発生-分布-分担-配分の各段階の統合としてNested Logitモデルにて各時間帯内の個人の活動・交通行動を記述し,交通ネットワークの需給関係を考慮できる時間帯別・統合均衡モデルである.また,逐次的なモデル実行にて時間軸の導入,トリップチェインの再現もできる.実都市圏への適用の際,活動・交通行動モデルのパラメータ再推定,並列処理の導入などを行うことで,現況再現性は妥当であり,計算コストの面からも有用な予測モデルであることを確認した.
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