土木学会論文集D
Online ISSN : 1880-6058
ISSN-L : 1880-6058
65 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
和文論文
  • 屋井 鉄雄, 平田 輝満, 高田 潤一郎
    2009 年 65 巻 2 号 p. 88-100
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
     2010年の羽田空港再拡張により発着容量は現在の1.4倍となる予定であるが,将来の航空市場の動向によっては再び首都圏の空港容量が不足することも考えられる.また容量の不足がなくとも,狭い空域で多くの航空機を扱うことを強いられている羽田の進入管制において,如何に安全性を確保しながら効率性を向上するかは,極めて重要な課題であろう.これらの検討には現状の進入管制の方法を正確に理解し,容量拡大に繋がる柔軟な滑走路運用方法や,そのための空域での対応方法について分析する必要がある.本研究では,そのためのデータ取得や管制運用方法の分析ツールとして独自のターミナルレーダー管制シミュレータの開発を行い,さらに,本シミュレータによる簡易な管制実験から,取得データの特徴と将来的な用方法について分析を行った.
  • 引地 博之, 青木 俊明, 大渕 憲一
    2009 年 65 巻 2 号 p. 101-110
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,地域に対する愛着の形成過程を検討するため,地域環境に対する評価が高い住民ほど,地域への愛着が強いという仮説を措定し,社会調査によりその妥当性を検証した.共分散構造分析などの分析の結果,以下の知見を得た.1)地域の物理的環境に対する評価が高い人ほど,地域に対する愛着が強い,2)地域の社会的環境に対する評価が高い人ほど,地域に対する愛着が強い,3)社会的環境に対する評価は,物理的環境に対する評価に比べて,より愛着を高めうる,4)地域環境に対するこれらの評価は,居住年数以上に愛着形成を促す,すなわち,地域への愛着は,単なる居住年数の長さ以上に,地域での経験の質によって強く規定されることが示唆された.
  • 坂井 孝典, 屋井 鉄雄
    2009 年 65 巻 2 号 p. 111-128
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
     社会資本整備に関する計画確定行為が正当性を持つための要件である計画の合理性について,これまでにその全体像が充分に明らかにされてきたとは言い難い.そこで本稿では,計画確定行為における合理性を構成する概念体系を構築し,計画,及び,計画に関する制度や指針の検討において理論的示唆を与えることを目的とした.プランニングセオリーを始めとする合理性における知見と計画の特性を踏まえた上で計画確定行為の合理性を4つの概念に分解し,さらに既存の合理性概念の整理を援用しつつ,前述の4つの概念を構成する13の規範概念を示すことによって,計画確定行為の視座から描かれる合理性概念の全体像を明らかにしている.また,構築した概念体系を用いて法適用場面における合理性の使用実態を把握した.
  • 谷口 守, 藤井 啓介, 安立 光陽
    2009 年 65 巻 2 号 p. 129-142
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
     2008年8月に185.1(円/L)のピーク値を記録したおよそ2年におよぶガソリン小売価格の高騰は,自動車利用の抑制行動に少なからぬ影響を及ぼしたと考えられ,今後の交通計画のためにその実際を明らかにしておく必要がある.本論文では価格高騰期間をカバーした2時点のパネル調査を実施し,ドライバーの運転抑制行動実態と高騰に伴う価格弾力性の推移を,各自の運転動機を考慮した上で明らかにした.あわせて,価格高騰による運転削減量に対する自己予測の信頼性を吟味した.分析の結果,1) 運転動機や価格上昇率に応じてエコドライブを含めた抑制行動は多様で,2) 従来研究と比較して非常に大きな価格弾力性値が得られた半面,3) 実際の運転削減量は自己予測を下回る傾向にあることが明らかとなった.
  • 林 秀和, 貝戸 清之, 熊田 一彦, 小林 潔司
    2009 年 65 巻 2 号 p. 143-162
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
     土木施設の劣化状態は,複数の劣化事象によって規定されることが多い.土木施設の劣化評価においては,複数の劣化事象の中から,もっとも劣化が進行した事象が当該施設を代表する劣化事象として記録されることになる.本研究では,複数の劣化過程がそれぞれ独立にマルコフ過程に従い,その中でもっとも劣化が進行した劣化事象が代表的事象として選択されるメカニズムを競合的劣化ハザードモデルを用いて表現する.さらに,道路舗装のひび割れを,縦ひび割れ,横ひび割れ,面ひび割れに分類するとともに,それぞれのタイプのひび割れ過程を表すひび割れタイプ別供用性曲線を推計し,道路の構造特性,舗装特性,および交通条件等が,道路舗装のひび割れ過程に及ぼす影響について分析する.
  • 山田 忠史, 今井 康治, 谷口 栄一
    2009 年 65 巻 2 号 p. 163-174
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
     物流施策がサプライチェーンネットワーク(SCN)に及ぼす影響を的確に捉えることは,行政側の施策実施効果の把握と企業側の施策理解につながる.本研究は,物流施策の中でも貨物交通施策がSCNに及ぼす影響を分析するための手法開発を目指し,物流事業者の行動を考慮したサプライチェーンネットワーク均衡モデルを提案する.その際,輸送時間の変動性に伴う遅刻費用,店着価格制,施設費用,卸売業者の行動についても考慮する.このモデルを用いて数値計算を行い,輸送時間とその信頼性の変化,および,物流事業者の属性の相違が,SCN上の商品取引量(生産量,輸送量)や総余剰などに及ぼす影響を考察する.
  • 馬場 俊介, 樋口 輝久, 劉 瑜
    2009 年 65 巻 2 号 p. 175-186
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
     著者らの研究室で現在進行中の「近世以前の日本の土木遺産の総合調査」では,今まで認知されていなかった優れた土木遺産が次々と明らかになっている.その中で,リスト作りに加えて,1)価値評価基準の樹立,2)保存・活用事例の収集,3)地域的な特徴の抽出を三大目標として,収集結果の分析を同時並行的に進めている.本論文は,現地調査がほぼ完了した中国5県について,3)の地域的な特徴の抽出を中心にまとめたものである.そして,調査対象である近世以前(江戸期を含む)と,かつて著者らが調査に携わった近代以降の土木遺産との県別対比を行うことで,土木遺産を中心に見た時の地域的特徴が,該当する地域の発展とともにどのように変化していったかを分析する.本研究の成果は,「景観法」によるまちづくりの,一つの方向性を示すものでもある.
  • 林 倫子, 藤原 剛, 出村 嘉史, 川崎 雅史, 樋口 忠彦
    2009 年 65 巻 2 号 p. 187-197
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
     現在の京都御苑周辺に歴史上設けられた数多くの園池へは,禁裏御用水が供給されていた.本研究では,広域的な導配水システムとしての禁裏御用水に着目し,その流路構造や付帯施設を歴史的資料を用いて明らかにした.その結果,禁裏御用水の4つの施設面の特徴とマネジメントルールを抽出し,禁裏御用水が水の安定供給に加えて上流の田畑と下流の園池での水の共用にも配慮していたことを示した.更に,各園池への導水経路を検証し,水の引き込み方の特徴として,相国寺開山塔庭園の特殊性と御溝水の自由度の高さを指摘した.
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