土木学会論文集D
Online ISSN : 1880-6058
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65 巻 , 3 号
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和文論文
  • 溝上 章志, 橋内 次郎
    2009 年 65 巻 3 号 p. 198-210
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    ジャーナル フリー
     効用関数を推定する必要がない行動意図法は新たな代替的な需要予測法として有用とされている.本研究では,熊本電鉄のLRT化計画案の実施による自動車からLRTへの転換需要を対象をとして,1)LOS水準の差などの定量的な要因も取り入れたより精度の高い行動-意図一致率の設定を試みた.また,2)従来型モデル法と行動意図法による転換需要の予測結果を,サンプルベース,拡大後の集計ベースの両方で比較・検討した.その結果,BI法では,LRT固有の特徴などの従来モデル法で考慮されていなかった要因が交通手段選択に影響を与えていることを確認することができた.また,行動-意図一致率の設定と共に,拡大・集計化方法がBI法による需要予測の精度に影響を及ぼすことを明らかにし,適切な拡大・集計化方法を考察した.
  • 葛西 誠, 野中 康弘, 内山 久雄
    2009 年 65 巻 3 号 p. 211-224
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    ジャーナル フリー
     観測方法の工夫や画像処理技術の進歩により,データオリエントなミクロ交通流モデルの構築が可能となってきている.筆者らの追従挙動モデルもその1つであり,実追従挙動が車間距離-相対速度平面上で描かれるスパイラル状曲線に従うことからバネ質点系の運動の類似としてモデル化されたものである.1 対の追従ペアに対する一定の再現性は既に確認されているが,その追従挙動モデル解の累積として生成される交通流が如何なる特徴を有するかの議論は課題とされた.交通流円滑化制御施策の検討等,工学的観点からもモデルパラメータと交通流現象との関係を知ることは極めて重要であり,本研究はこれを念頭に置きシミュレーション分析により本モデルパラメータの特性について考察することを目的とする.
  • 沢木 大介, 後藤 光亀
    2009 年 65 巻 3 号 p. 229-243
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    ジャーナル フリー
     明治初期の野蒜港(宮城県)建設に関係する遺構から採取された,セメントと思われる硬化物の化学的性状を評価した.化学組成分析,構成鉱物の同定および観察の結果から,硬化物はセメントと砂を用いたモルタルであることが明らかにされた.モルタルに含まれる未水和セメントの化学組成,粒子の大きさ,鉱物の種類,量および存在状態を,化学分析および電子線マイクロアナライザーにより評価した.その結果は,文書記録に残る明治初期のセメントの性状と符合するものであり,当時製造されたセメントが使用された可能性が示唆された.
  • 大澤 英昭, 広瀬 幸雄, 尾花 恭介
    2009 年 65 巻 3 号 p. 244-261
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    ジャーナル フリー
     本研究では,吉野川第十堰を事例に,徳島市民がどのような社会心理学的要因で,関係者を信頼し,関係者が提供する情報の理解の程度を高め,関係者の意見を受け入れるのかを確認することを目的に,アンケート調査を行った.その結果,以下のことが確認された.a)対象テーマに対し関心の高い人は,関係者と自分の意見との類似性によりその相手を信頼する傾向がある.一方,関心の低い人は,関係者の手続き的な公正さによりその相手を信頼する傾向がある.b)自分の過去の経験や関係者と自分の意見の類似性により,単に関係者の意見を理解するだけではなく,将来の姿などの理解をより深める傾向がある.c)市民全体で意見を確認する機会を設けることにより,市民は関係者を信頼し,提供される情報の理解の程度を高め,関係者の意見を受け入れる傾向がある.
  • 羽鳥 剛史, 黒岩 武志, 藤井 聡, 竹村 和久
    2009 年 65 巻 3 号 p. 262-279
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    ジャーナル フリー
     本研究では,コールバーグの道徳性発達理論に基づいて,土木技術者の倫理規定が土木技術者の倫理性にどのような影響を及ぼすかについて実証的に検討することを目的とした.この目的の下,倫理規定の「解釈可能性」に着目し,倫理規定における解釈可能性が土木技術者の倫理性に及ぼす影響についての仮説を措定した.つぎに,土木技術者396名を対象として,実証実験を実施し,その仮説を実証的に検証した.その結果,本研究の仮説が支持され,解釈可能性の高い倫理規定を読んだ土木技術者において,解釈可能性の低い倫理規定を読んだ土木技術者よりも,その倫理水準が向上する可能性が示された.さらに,そうした倫理規定の解釈可能性による効果に影響する要因を探索的に検討したところ,現行の倫理規定の通読経験と倫理的問題の経験度が抽出された.
  • 片田 敏孝, 桑沢 敬行
    2009 年 65 巻 3 号 p. 280-292
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    ジャーナル フリー
     本研究では,ダムによる洪水調節の効率化と洪水時におけるダム下流域の危機管理の検討支援を目的としたシミュレーションシステムを構築した.本システムは,ダム上流の降雨を与件として,ダムによる洪水調節を考慮した河川の増水や河川氾濫などの洪水現象,また,河川流域の住民に対する放流警報や避難勧告の伝達,住民による避難行動などの社会的な対応,そしてこれらの状況に基づく洪水被害の発生状況を表現することができる.また,本システムは,シミュレーションの状況をアニメーションの形式で表現する機能を有しており,ダムや洪水に関する知識を持たない人を対象にダムの洪水調節機能や洪水時における適切な対応行動について説明するリスク・コミュニケーションツールとしても利用することができる.
  • 新田 保次, 藤岡 太造
    2009 年 65 巻 3 号 p. 293-302
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    ジャーナル フリー
     本研究においては,39事業所315台の営業用貨物車を対象に音声ナビ付きデジタルタコメーターによるエコドライブ支援の効果を,燃費・環境改善および安全性向上の視点から探ることを目的とした.その結果,今回対象としたシステムは,燃費・環境改善および安全性向上の両面において効果的であることが明らかになった.具体的には,燃費改善率においては大型車6.1%,中型車9.4%となり,大型車,中型車とも約8割の車両において改善がみられた.安全性向上においては,走行速度,加速度,減速度の指標からみたドライバーの運転行動において,危険行動の発生が減少した.さらに,事故件数が大幅に減少するとともに,損害額においても減少することが示唆された.
  • 紀伊 雅敦, 鈴木 徹也, 谷下 雅義, 土井 健司
    2009 年 65 巻 3 号 p. 303-316
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,人口減少下での持続可能な都市交通戦略の検討手法として,戦略代替案を俯瞰的に分析し政策統合の方向性を検討するヴィジョニングモデルを構築し,中長期的視点から2030年における公共交通戦略と都市のコンパクト化のアウトカムとその地域分布を分析した.その結果,全国レベルでは1)交通事業利潤最大化戦略はCO2を削減するが便益を低下させる,2)CO2最小化戦略は便益を向上する,3)コンパクト化はCO2を削減するが便益が低下する可能性が示された.一方,都市圏毎の分析より,1) CO2最小化戦略は大都市のCO2削減と便益向上を両立させるが地方都市では両立させにくい,2)コンパクト化は地方都市のCO2削減と便益向上の両立可能性を高める,3)大都市のコンパクト化は混雑を悪化させ,CO2削減や便益を低下させる等の知見が得られた.
  • 山口 敬太, 中島 功, 川崎 雅史
    2009 年 65 巻 3 号 p. 317-328
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,現存する京都の古庭園のうち,敷地外の地形が庭園空間の境界の形成や眺望景観の創出に大きく関わっている庭園として,成就院,慈照寺,南禅院,酬恩庵の四庭園を対象として,その地形的囲繞の構成と眺望景観の特性について地形的要因とともに考察した.その結果,これらの庭園では,地形的囲繞を補完するような敷地計画と視界方向の設定が行われることで,囲繞空間側に敷地規模の数倍の規模の空間を創出し,これにより山に囲まれた幽深,雄大な眺望景観を創出していたことを示した.さらに同一庭園内の複数の視点場において,地形による囲繞を強調,もしくは開放性を強調した眺望景観の創出と,それらの異なる眺めの対置がみられたことを示した.
  • 谷口 綾子, 香川 太郎, 藤井 聡
    2009 年 65 巻 3 号 p. 329-335
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,都市の中心市街地の商店街において,自動車との接触が歩行者の心理状態に否定的な影響を与えているであろうとの仮説を措定し,その仮説を検証するため,東京都目黒区自由ヶ丘商店街を対象に,歩行者の街路歩行に対する主観的評価と自動車からの物理的干渉を測定する調査を行った.歩行者の主観的評価の指標として「歩きやすさ」「雰囲気のよさ」「楽しさ」の3指標を用い,これらを自動車流入規制のある時間帯と無い時間帯で比較を行うとともに,共分散構造分析による因果構造分析を行った結果,歩行者が自動車から何らかの干渉を受けると,上記3指標が有意に低下することが統計的に示された.これらより,歩行空間への自動車の流入は,歩行者の意識に否定的な影響を及ぼすことが示唆された.
  • 吉田 樹, 秋山 哲男, 竹内 伝史
    2009 年 65 巻 3 号 p. 348-359
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/18
    ジャーナル フリー
     成熟社会の地域公共交通は,市民生活を支える大きな役割を担っている.しかし,わが国の乗合バス事業は,利用者が減少傾向にあるうえに,独立採算原則の下に運営されていることから,採算性などの事業効率性を根拠に路線の廃止や減便が実施され,市民生活に欠かせない移動が確保されていない場合がある.そこで,本研究は,日常社会生活における空間的移動の確保を考慮した地域公共交通の評価手法を検討する.具体的には,空間的移動の達成水準を地域別・属性別に集計した概念として,外出活性水準を定義し,その推定モデルを構築する.そのうえで,現況の交通サービスでは移動の達成可能性が確保されていない地域や属性を評価するとともに,公的補助を投じても維持を図る必要のあるバス路線の抽出を試みる.
  • 屋井 鉄雄, 平田 輝満, 山口 晋弘, 林 和史
    2009 年 65 巻 3 号 p. 360-372
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/18
    ジャーナル フリー
     近年,首都圏を中心に地下構造の道路が検討・建設されているが,都市内道路と長大トンネルという複合的な走行環境について,走行安全性の面からの懸念も指摘される.特に大深度の地下では,その閉塞性等から事故被害が甚大化しやすく,単独事故の防止対策に加え,多重衝突事故への発展を抑制する対策も併せて検討すべきである.多重衝突事故についてはデータ取得などの問題から過去の研究は十分に行われておらず,その発生メカニズムの分析などの基礎研究も必要である.本研究では都市内地下道路を対象に,複数被験者が同時走行可能なドライビングシミュレーションシステムを活用した走行実験により,多重衝突事故時の運転挙動データを大量に取得し,多重衝突事故の発生メカニズムや発生確率に関する従来にない分析・考察を行い,幾つかの知見を得た.
  • 堂柿 栄輔, 井上 信昭
    2009 年 65 巻 3 号 p. 373-385
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/18
    ジャーナル フリー
     平成18年6月より導入された民間有資格者による駐車監視員制度は,駐車規制に関する過去の道路交通法改正の中でも大きな制度変更であった.この制度の施行により,ドライバーの駐停車行動には相当の変化が予測されたが,本研究では当制度の導入効果を駐車時間長や駐車目的及び放置行動の変化等から統計的に示した.このための調査は,制度の実施以前と直後及び一年後の3時点で行ったが,これより予期し得たまたは予期し得なかったいくつかの駐停車行動の変化を示すことが出来た.同時に路上駐停車行動への待ち行列モデルの適用により,当制度の実施効果をうろつき交通の削減からも示した.
  • 内田 賢悦
    2009 年 65 巻 3 号 p. 386-398
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/18
    ジャーナル フリー
     本研究では,OD交通量,リンク交通容量,および移動時間に関する認知における確率変動を反映した利用者均衡配分を提案する.認知の確率変動を反映する場合は,確率的利用者均衡配分,反映しない場合は,確定的利用者均衡として定式化する.また,経路選択基準としては,経路移動時間の平均を用いる場合,さらに,標準偏差も用いる場合の2つの定式化が可能である.確定的利用者均衡配分において,経路移動時間の標準偏差を経路選択行動に反映させる場合,経路の評価値がリンク評価値の和として表現されないため,非線形相補性問題として定式化している.最後に,テストネットワークを対象とした数値実験を行い,提案した利用者均衡配分モデルによる解の特性を調べた結果を示す.
  • 藤見 俊夫, 多々納 裕一
    2009 年 65 巻 3 号 p. 399-412
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/18
    ジャーナル フリー
     適切な応急・復興住宅政策を実施するためには,その政策で実現されるであろう便益を定量評価しておくことが望ましい.それには,まず,住宅損壊に伴う居住環境質の悪化がもたらす負の便益を推定する必要がある.本研究では,避難時,応急時,復興時における住居選択行動を表明選択法に基づき分析し,被災による住宅損壊のため自宅以外での生活を余儀なくされることで生ずる被害額を推定する具体的な手順を提案した.この手法を,新潟県長岡市の世帯と中越地震により仮設住宅に居住している世帯を対象として適用し,被害額を住居属性や世帯属性に応じて推定した.また,自宅の価値が非常に高いことから,復興支援政策で最も効果的なものは,自宅の迅速な修復・再建を補助する政策であるとの示唆が得られた.
  • 菱田 憲輔, 松島 格也, 小林 潔司
    2009 年 65 巻 3 号 p. 413-431
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/18
    ジャーナル フリー
     本研究では,供給量制約のある独占的サービス市場における事前割引料金システムの導入効果を理論的に分析する.事前割引システムは,サービス消費に対する不確実性と家計のサービス選好に対する異質性が存在する状況の下で,より大きな効用を持つ家計に優先的にサービスを割り当てるメカニズムを有することを指摘する.その上で,同質のサービスが供給される独占市場を対象とした市場均衡モデルを定式化し,事前割引料金システムの導入がもたらす経済便益を評価する.事前割引料金システムの導入により,独占企業の利潤,社会的厚生の双方は増加するが,家計の経済厚生は逆に減少することを明らかにする.さらに,家計の経済厚生低下を抑止するためには,料金規制が必要であることを指摘する.
和文報告
  • 赤倉 康寛, 二田 義規, 渡部 富博
    2009 年 65 巻 3 号 p. 336-347
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/20
    ジャーナル フリー
     石炭,鉄鉱石,穀物等のドライバルク貨物は,産業の基礎素材や食糧原料等であり,これらの貨物の海外からの輸送は,我が国の産業活動や国民生活の生命線の一つとも言える.しかし,ドライバルク貨物は,特定荷主のための不定期輸送であり,企業専用ターミナルで取り扱われることも多いため,その全体像の把握に困難な部分がある.この点を踏まえ,本研究は,品目別の輸送船及び積出港データを用い,寄港実績データより輸送実績を特定する手法を構築し,北東アジアへの三大バルク貨物の輸送実績を分析したものである.中でも,当該バルク貨物を荷揚げするバースの諸元と,輸送船の船型との関係に着目した.
和文ノート
  • 羽鳥 剛史, 藤井 聡, 水野 絵夢
    2009 年 65 巻 3 号 p. 225-228
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    ジャーナル フリー
     本研究では,土木事業に対する批判的な報道や論調が高まりつつある中で,土木事業に対する一般の人々の意識が,ここ数年の間にどのように変化しつつあるのかについて把握することを目的とする.この目的の下,京都市内の世帯を対象として,2001年と2006年に実施した調査から得られたパネルデータ(N=76)を用いて,土木事業に関わる肯定的・否定的論点に対する人々の認知度の変化について分析を行った.その結果,「土木事業は役に立たないものを造る」という否定的認知についてのみ,2001年からの5年の間に,有意に強まったことが示され,人々の土木事業の意義や必要性についての理解が低下しつつある可能性が示唆された.
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