土木学会論文集E
Online ISSN : 1880-6066
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和文論文
  • 塩永 亮介, 佐藤 靖彦, Joost C. WALRAVEN
    2010 年 66 巻 4 号 p. 366-379
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
     本論文では,130N/mm2程度の圧縮強度を有し,鋼繊維を最大で1.6vol.%で混入した高性能繊維補強モルタルを適用したRC部材の変形特性とひび割れ性状の把握を目的に,両引き試験およびそれに対する数値解析を実施した.実験より,鋼繊維の混入率が高いほどひび割れ荷重や降伏荷重が向上し,ひび割れ分散性が高まるとともに,テンションスティフニングの効果も増加した.しかし,鋼繊維が同混入率であっても配向性の違いでその効果が低下することも明らかとなった.また,これらのRC部材の一軸引張挙動を数値解析的に把握することを目的に,材料特有の引張軟化特性を考慮した2次元剛体バネモデル解析手法を開発し,本解析法が所要の精度を有することを確認した上で,平均ひび割れ幅の評価法を検討した.
  • 松本 浩嗣, 佐藤 靖彦, 上田 多門
    2010 年 66 巻 4 号 p. 380-398
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
     ミクロからメソスケールまでの材料の微細構造とそれらに対する現象論的仮定に基づき,モルタルの変形を,弾性,粘弾性,粘塑性特性を有する非ひび割れ成分とひび割れ成分とに分離した.さらに,各変形成分に対して実験的事実に基づいた力学モデルを導入し,剛体ばねモデルの時間依存型構成モデルを構築した.また,荷重増分法による構造解析に対する新しい破壊判定法により,疲労,クリープ荷重下で材料が破壊に至るまでのプロセスを追跡可能とした.本論文では,ひずみ速度を変数とした単調載荷解析,作用応力比を変数とした疲労およびクリープ解析を行った.その結果,時間依存荷重を受けるモルタルの種々の力学的挙動の再現,残存強度変化の評価に成功した.また,メソスケールにおける力学的挙動から,モルタルの時間依存破壊メカニズムを検証した.
  • 加藤 絵万, 審良 善和, 岩波 光保, 横田 弘
    2010 年 66 巻 4 号 p. 399-412
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
     部分断面修復を施したRC床版におけるマクロセルの形成メカニズムについて実験的に検討を行った.試験体中に埋設した分割鉄筋の腐食電流を測定し,コンクリート-断面修復材間におけるマクロセル腐食電池の形成,鉄筋の交差部がマクロセル形成に与える影響,断面修復材中の鉄筋の腐食進行の可能性について考察した.その結果,コンクリート-断面修復材境界部の鉄筋は,初期はカソードとして挙動するが,部材中の電気化学的バランスの変化により,境界部のコンクリート中の鉄筋がアノード化すること,コンクリート中の鉄筋交差部は二次元的な腐食電流の流出入により,初期に著しく腐食が進行すること,また,断面修復材中の鉄筋間に腐食電池が形成される可能性があることが分かった.
  • 岩城 一郎, 上原子 晶久, 子田 康弘, 内藤 英樹, 皆川 浩, 鈴木 基行
    2010 年 66 巻 4 号 p. 413-432
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
     青森県日本海沿岸において著しい塩害を受け,架け替えを余儀なくされたPC道路橋に対し,目視および各種非破壊試験による現地調査,桁ブロック採取を行った後,コンクリートの圧縮強度,ヤング係数,中性化深さ,並びに塩化物イオン濃度分布を測定した.また,桁ブロックよりコンクリートをはつり,内部の鋼材を全て露出させることによりその腐食状況を観察した.さらに,PC鋼材の腐食による質量減少を測定した後に,引張試験を行い,腐食した鋼材の荷重-伸び関係を求めた.以上の結果より,本橋は極めて厳しい腐食性環境にあったことを明らかにするとともに,塩害による鋼材腐食と種々の要因との関係,さらには鋼材の機械的性質と腐食による質量減少との関係について解明した.
  • 山本 佳士, 中村 光, 黒田 一郎, 古屋 信明
    2010 年 66 巻 4 号 p. 433-451
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
     本研究は,帯鉄筋により補強された横拘束コンクリートの内部抵抗機構を解明することを目的として,著者らが提案している,コンクリートの準微視的な力学挙動をモデル化した3次元RBSMの適用性を検証するとともに,供試体形状・寸法,帯鉄筋形状,帯鉄筋比および帯鉄筋間隔を変化させた横拘束コンクリートの1軸圧縮破壊解析を行ったものである.既往の実験結果および提案式との比較により,提案手法は,1軸圧縮下における横拘束コンクリートの耐力および軟化・局所化挙動に加え,応力分布性状や帯鉄筋の変形性状などの詳細な力学応答までを妥当な精度で再現できることが分かった.さらに,実験では観察が困難な内部の3次元的な損傷進展過程および応力分布性状を可視化することにより,横拘束コンクリートの内部抵抗・破壊機構を解析的に評価した.
  • 矢野 隆夫, 西山 哲, 中島 伸一郎, 森石 一志, 大西 有三
    2010 年 66 巻 4 号 p. 452-465
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
     透水性舗装の貯留・浸透特性を精緻に評価するためには,舗装を構成する各材料の保水特性と透水特性を把握しておくことが必要不可欠である.本研究では,ポーラスアスファルト混合物の保水・透水特性を明らかにすることを目的として,それらの特性に影響を与えると考えられる供試体の最大粒径,空隙率および厚さを変えた直径φ=150mmのポーラスアスファルト混合物供試体に対して,水分保持特性試験と飽和-不飽和透水試験を実施した.その結果,水分保持特性はVan Genuchten式で,不飽和浸透特性はIrmay式でよく表現できることを示した.
  • 田中 泰司, 山口 貴幸, 下村 匠
    2010 年 66 巻 4 号 p. 466-482
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
     日本海沿岸で80年間供用され,塩害による鋼材腐食が進行していた鉄筋コンクリート橋梁から試験桁を切り出し,破壊試験を行った.対象とした橋梁には,重ね継ぎ手が配置されており,継ぎ手が有効に機能した桁では,耐力低下は腐食率と同程度だったが,継ぎ手の定着性能が低下していた桁では,腐食量に比べて耐力低下が大きかった.有限要素解析を実施し,実験との比較を行ったところ,定着・付着が確保されている場合には,軸方向の平均な腐食量を考慮することで構造性能を適切に評価できることが確認された.一方,腐食の進行によって,定着や付着の性能低下が顕著な場合には,鉄筋一本一本の付着・定着性能を適切に評価しなければ,部材全体の構造性能が予測できないことが明らかとなった.
  • 羽田野 英明, 山上 正遵, 阪口 裕紀, 小林 孝一, 六郷 恵哲
    2010 年 66 巻 4 号 p. 483-494
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
     橋梁の桁遊間は,伸縮装置の耐久性や騒音防止の観点からは,縮小することが望ましいが,免震支承を用いた場合には桁の衝突防止の観点から,拡大することが求められる.本研究では,まず伸縮装置の騒音や橋台胸壁の耐荷力についての現状を調査した.その上で通常時には輪荷重等の鉛直荷重を支え,地震時には水平方向に容易に大変形して桁の移動に追従でき,また被災後には交換が容易で,構造物に高い復旧性を付与できる,特殊なブロックを,複数微細ひび割れ型繊維補強モルタルと発泡スチロールから作製した.ブロックは力学的に非常に異方性が高く,水平方向に20%以上変形するなど,期待した機能を有した.また繊維の混入によって破壊時の破片飛散を防ぐことができ,発泡スチロールの使用によって大変形後にも半分以上の変形を回復させることができた.
  • 井上 真澄, 岡本 享久, 平尾 和洋, 児島 孝之
    2010 年 66 巻 4 号 p. 495-506
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,日本の伝統的景観素材である土壁や土塀のような意匠性を持ちながら強度と耐久性に優れる意匠構造材料の開発を目的として,産地や色彩の異なる8種類の廃陶器粉末を着色材として使用した場合のモルタルおよびコンクリートの力学的特性および着色効果について実験的検討を行った.その結果,廃陶器粉末の置換が強度や耐久性に及ぼす影響は小さく,水セメント比や廃陶器置換率を適切に設定することで普通コンクリートと同等の性能を発揮すること,また既存の景観素材に調和可能な色彩を発現することを確認した.さらに,実躯体への適用を想定し,廃陶器粉末による着色効果と表面処理方法が躯体の意匠性に与える影響についても考察した.
  • 松下 博通, 佐川 康貴, 佐藤 俊幸
    2010 年 66 巻 4 号 p. 507-519
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,地盤に含まれる硫酸イオンおよび硫酸塩によるコンクリートの硫酸塩劣化について取り上げた.はじめに,旧産炭地域のぼたを用いた盛土地盤と新第三紀泥岩層の造成地盤における住宅基礎コンクリートの劣化既往事例を概説し,その原因が地盤に含まれる硫酸イオンおよび硫酸塩によるものであることを示した.次に,黄鉄鉱を含む海成層による堆積地盤において,細菌の作用により黄鉄鉱が酸化され,硫酸イオンが生じる過程を示した上で,日本各地の地盤中に含まれる硫酸イオン濃度について考察した.最後に,地質と気象要因に基づき,日本全土におけるコンクリートの硫酸塩劣化の可能性を有する地盤を「コンクリートの腐食程度の厳しさ」として提案した.
  • 橋本 勝文, 大即 信明, 斎藤 豪
    2010 年 66 巻 4 号 p. 520-527
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/20
    ジャーナル フリー
     セメント系材料の長期に亘る変質において,水和物の溶脱および物質移動抵抗性指標としての拡散係数の評価が重要になると考えられる.そのため,電気的手法による物性取得の妥当性を示すことが期待される.本論文では,電気的手法を用いた場合の溶脱現象を把握し,溶脱後の物性取得に対する妥当性の検証を行うことを目的とした.その結果,実際の溶脱現象において確認される1)Ca(OH)2の消失およびC-S-HのCa/Si比の低下,2)累積空隙量および空隙率の増加を電気的手法を用いて確認し,拡散係数の増加に対する影響を明らかとするとともに,3)溶脱現象に伴う拡散係数の評価における電気的手法の妥当性を示した.
  • 須田 裕哉, 田中 洋介, 佐伯 竜彦
    2010 年 66 巻 4 号 p. 528-544
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/20
    ジャーナル フリー
     C-S-Hは主要な水和物であり,その組成と性質はコンクリートの性能に影響を及ぼす.しかし,C-S-Hの組成と物理的性質,さらに両者の関係については十分に明らかにされていない.
     そこで本研究は,C-S-Hの組成と密度および比表面積などの物理的性質を把握することを目的として検討を行った.合成C-S-Hおよび種々の材料・配合の水和試料を用いてC-S-Hの組成および密度と比表面積を測定した.その結果,C-S-HのH/S比は,材料・配合に依らずC/S比に比例することを明らかした.さらに密度および比表面積も材料・配合に依らず,C/S比と比例関係にあることを明らかにした.
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