土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
67 巻 , 6 号
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環境システム研究論文集 第39巻
  • 西山 悠介, 中谷 隼, 栗栖 聖, 荒巻 俊也, 花木 啓祐
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_1-II_10
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     持続可能な社会の実現に向けた都市構造の再構築において住民の選好を反映していくために,住民選好を考慮した居住地選択行動の解析を行った.宇都宮都市圏に住む10年以内に移転を行った人を対象にアンケート調査を行い,選好の多様性及び特徴を分析した.まず,居住地属性26項目について移転時における重視尺度を尋ねる質問の回答結果に因子分析を使い,居住地属性選好因子を3因子抽出した.そしてこの因子得点にクラスタ分析をかけることで,同質な居住地選好を持つ6つのグループに類型化を行った.続いて各クラスタの移転傾向や,クラスタに属する人の特徴の分析を行った.さらにコンジョイント分析によって,代表的な7つの居住地属性について定量的な解析を行い,クラスタ間で特徴の比較を行った.
  • 和田 有朗, 中野 加都子
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_11-II_18
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     本研究では,使用済み小型家電10品目のアンケート調査に基づき,今後の使用済み小型家電のリサイクルシステムの構築について考察を行った.男女別では使用済み小型家電のリサイクルに関する知識に差異はあるものの,どちらもリサイクルの重要性を認識している.年齢層別では若年齢層ほどリサイクルに対して積極的である.小型家電の処理・処分に支払う負担金額の算定結果では全年齢層1,091円に対し,若年齢層1,522円,中年齢層1,531円,高年齢層560円と大きな差異がみられた.そのため小型家電の回収・リサイクルシステムを今後構築するには,居住地域の年齢構成を考慮した身近な場所での回収が必要であることが示唆される.
  • 白井 信雄, 樋口 一清, 東海 明宏
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_19-II_28
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     長野県飯田市は,環境基本計画への市民参加,環境ISOの導入における地域内の事業所間連携,市民共同発電事業による太陽光発電の設置等を実施している環境先進地である.本研究では,同市で実施した住民アンケート調査をもとに,(1)飯田市住民の環境配慮意識・行動の実態,(2)これまでの環境施策等の住民への影響,(3)社会関係資本の程度の違いと住民の環境配慮の関係を分析した.
     この結果,飯田市では全国と比較して高齢者層の環境配慮度が高いこと,環境施策等が環境配慮度等に影響を与えていることが明らかになった.また,結合型社会関係資本の強さが高齢者の環境配慮度の高さと関係すると考えられる.
  • 山根 直也, 酒井 亨, 三宅 洋
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_29-II_36
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     本研究は愛媛県重信川で侵入が確認されている外来性底生動物2種(サカマキガイおよびフロリダマミズヨコエビ)について,近年の分布状況を把握するとともに,流量減少に対する耐性を明らかにすることを目的とした.経年的な流程分布調査により,両種ともに汚濁が進行した重信川本流の中下流部に多く生息することが明らかになった.さらに,フロリダマミズヨコエビは近年分布域を上流側に拡大していることが分かった.流量低下の進行にともない実施した短期的な調査により,フロリダマミズヨコエビは一般的な底生動物と同様に流量低下により個体数が減少することが示された.一方,サカマキガイの相対密度が流量減少に伴って上昇したことから,同種は流量減少に対する耐性が高く,流量減少により侵入が助長される可能性があると考えられた.
  • 岡田 久子, 倉本 宣, 渡辺 泰徳, 松浦 克美
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_37-II_43
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     河川における下流への藻類由来の有機物負荷量を推定するために,付着藻類の発達速度,付着藻類量と剥離率の関係についての多摩川永田地区での実測データに基づいて,河道勾配1/300,幅20m,延長1.5kmの河川水路を仮定し,異なる礫サイズ組成をもつ3種類の河床と異なる頻度での出水条件を与えた場合の模擬計算を行った.出水頻度が低い場合と河床の安定性が高い場合,下流への藻類由来有機物負荷が顕著に大きくなることが模擬計算から推測された.
  • 横田 樹広, 中村 早耶香, 味岡 ゆい, 南 基泰, 那須 守, 米村 惣太郎
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_45-II_55
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     土岐川・庄内川流域圏を対象として,景観,生態系,ハビタットの3つのスケール間で生物多様性の特徴を評価した.小流域の類型化により流域圏の環境特性を把握したうえで,種多様性と固有種ヒメタイコウチの潜在的生息適地の分布予測を行い,それらの空間的関係性を把握した.その結果,流域圏中~上流域の里山地域において,流域の環境構造は植生条件よりも地史的な環境条件により特徴づけられ,とくにヒメタイコウチの生息適地の分布に影響する古い地層を伴った土岐砂礫層の分布が,種多様性と固有種生息適地の空間的な重複と不一致にも影響していることが明らかになった.これらをもとに,生態系の地域固有性に配慮した,流域圏の生物多様性マネージメントの空間指針について検討した.
  • 芦澤 和也, 倉本 宣
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_57-II_62
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     出水で冠水したユキヤナギ個体群における開花の経年変化と,開花に影響を及ぼす要因を解明するために,2008年から2010年の本種の開花状況を調査した.2007年9月の出水で冠水した多摩川の4つの個体群の計175個体に関する花の有無,花数,最大枝長,古幹数,萌芽幹数,比高を調べた.左岸(南向き斜面)の個体群では,1年目に比べて2年目に有花個体の割合が減少した.右岸(北向き斜面)では,有花個体の割合が増加し続けるとともに,花数が増加し続けた個体が多かった.古幹数が開花の有無の変化に影響を与えた可能性が示唆された.萌芽幹数は大規模な出水の翌年に多い傾向が認められた.以上より,北向き斜面と南向き斜面で開花状況の経年変化が異なった.また,出水がユキヤナギの開花と更新に影響を与えている可能性が示唆された.
  • 本下 晶晴, 楊 翠芬, 玄地 裕, 田原 聖隆, 稲葉 敦
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_63-II_72
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     副産物として発生する稲わらは未利用/低利用のものが多く,食糧との競合回避の観点からも有望なエタノール原料として期待されている.既にエネルギー消費や温室効果ガス排出の抑制への有効性は確認されているが,稲わらの生産やエタノール精製プラントの土地占有による生態系への影響が懸念される.そこで本研究では,稲わらを原料としたエタノールについて生態系への影響を含めた環境影響評価を行った.
     稲わら生産やエタノール精製プラントの土地占有による生態系への影響は,評価手法によって差は見られるが,いずれの手法に基づいた場合でも環境影響全体に対して大きな割合(72~83%)を占めていた.現状ではガソリンに比べて稲わらを原料としたエタノールは土地占有の影響を含めた環境影響が大きく,その低減には精製プラントの稼働率や生産性の向上が不可欠である.
  • 松井 孝典, 池野 優子
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_73-II_82
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     本研究では,自然生態系と人間システムを包含する共生システムが適切な状態を築く,すなわち,自然生態系のストックである気候条件や環境物,植物群集,動物群集とそれに対する人々の感覚器の反応や活動系が良好な共起状態を持つことで,文化的生態系サービスが持続的に享受できるという仮説の基で,その生態系サービスを得るための共生システムの構造を解析することを目的としている.具体的には,この文化的生態系サービスを受け取った教師信号が内包されていると考えられる事例ベースの一例として小倉百人一首を選定し,生態系サービスを介した共生システムの概念モデルの構築,それに基づいたコンポーネントの出現に関するコーディング,および自己組織化マップと階層クラスタリングによる構造解析を行った.これにより,共生システムのデザインを支援するための7つの文化的生態系サービスの生成および享受の構造に関する知見を得るとともに,(1)全体的には環境物を視覚することを基礎としながら,(2)文化的生態系サービスの享受には,動植物を感知する際の気候条件や気象現象や人間システム側の活動モードとの相互作用が存在する可能性があること,(3)自然物そのものだけでなく,自然素材から成るプロダクトも文化的生態系サービスの生成および享受の要因となり得る可能性があることが示された.
  • 谷本 圭志, 杉本 泰亮, 宮本 慎也, 灘 英樹, 細井 由彦
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_83-II_91
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     地方自治体では,道路と下水道はそれぞれの管理主体が個別に維持管理を行っている.下水道管は道路の舗装下に埋設されていることが多いことから,それぞれの主体がタイミングを合わせて同時に更新するといったように集合的に管理することで,ライフサイクルコストの縮減に寄与しうる.しかし,道路舗装と下水道管路では,劣化の進行や更新費用などの様々な要素が異なるため,具体的にどのような場面でそれぞれをどのように維持管理したらよいかの判断が困難である.そこで,本研究では,道路舗装と下水道管の双方を集合的に維持管理する状況をモデル化し,ライフサイクルコストが最小となる方策を導出する.
  • 木戸浦 茂実, 高橋 正宏
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_93-II_103
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     国内では下水道普及率が70%を超え,衛生環境が大きく改善されたが,今後はこれらの施設が更新を迎えることになる.そのため多額の費用が必要となることが考えられている.その一方で国内では今後,長期に渡る人口減少が予測されており,使用料収入の減少といったことによる,経営の不健全性が危惧されている.本研究では,下水道が既に普及している都市として北海道の旭川市を対象とし,各種のシナリオを設定して将来の下水処理にかかる費用の予測を行った.その結果,旭川市では,個別処理システムを導入するよりも現在の下水道システムを維持した方が費用面で安価になることが分かった.さらに,管渠の更新を効率的に行うことで,現状を維持した場合よりも費用を低減できることが分かった.
  • 細井 由彦, 岩崎 翔志, Dagnachew AKLOG, 増田 貴則
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_105-II_112
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     我が国の水道管はこれから老朽化をむかえ更新を行っていく必要があるものが多い.一方で人口減少がすすみ,需要水量の変化や料金収入の減少が予想される.本研究においては,人口減少が顕著に進むと考えられる地方の水道管の更新について,人口が減少した状況を見据えて更新するとともに,その過程においても安定した給水状況と更新事業を保証しつつ進める手法について検討した.提案した方法で人口減少に配慮しつつ更新事業を進めることで,更新管の口径を小さくできることにより,予算内で更新管路を増やすことができ,完成後の管網は管内滞留時間が短く水の到達時間が改善された.
  • 森 正幸, 稲員 とよの, 小泉 明, 渡辺 晴彦, 荒井 康裕, 西澤 常彦
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_113-II_119
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     本論文では,将来水需要量の不確実性を考慮し,経済性と堅実性の2つの目的を有する管路更新計画モデルを提案する.経済性については,総費用期待値の最小化を取り扱う.堅実性については,将来水需要量の不確実性が費用の変動幅として現れるものとし,その最小化を取り扱う.経済性並びに堅実性を単一の目的とする線形計画モデルをそれぞれ定義し,その上で,ファジィ線形計画法を適用して2つのモデルの特徴を兼ね備えたモデルの定式化を行う.ケーススタディにおいて,提案したファジィLPモデルが,2つの目的をバランス良く達成する点で各単一目的のLPモデルよりも優れていることが明らかとなり,その有用性が確認された.さらに,計画案の比較を通して,管路更新における経済性と堅実性の意義を考察した.
  • 小泉 明, 末廣 美希, 荒井 康裕, 稲員 とよの, 増子 敦, 田村 聡志, 芦田 裕志
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_121-II_127
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     本研究では,集合住宅一棟を単位とした給水ブロックを定義し,これまで定性的に理解されてきた給水量の規模が与える時系列変動特性への影響を,定量的に把握することを目的とした.このため、東京都水道局により調査が実施された集合住宅使用水量データに対して基本統計量を分析するとともに,フーリエスペクトルを用いた主要周期成分の分析を行なった.その結果,給水量が小規模であれば変動周期の不規則性が増加し,規模が大きくなるに従い不規則成分が平準化され,主要周期成分が卓越していく傾向を実証した.本論文の結果から,新規に直結給水方式を導入するに当たり,給水規模から時間変動と時間最大給水量を予測する上で有用となる情報を得ることができた.
  • 津田 守正
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_129-II_134
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     香川県高松市を例として,節水型機器の普及による渇水被害の軽減の可能性を推計した.節水型機器の普及により生活用水需要量が抑制された場合に,不足量がどの程度減るかを推計し,渇水被害軽減効果を評価した.1人1日生活用水需要量が平成10年の給水量に対して25%抑制され174リットル/人・日になれば,1日5時間給水という厳しい給水制限が実施された平成6年の渇水時の給水量よりも,需要量が少ないため,不足は生じない.節水率15%(生活用水需要量197リットル/人・日)程度になれば,渇水被害を許容可能なレベルに抑えることができる.節水率15%を10年以内に達成するために,節水型機器の購入補助制度を導入する場合,市民1人につき1月200円程度の徴収が必要と推計される.
  • 小泉 明, 林 弘明, 荒井 康裕, 稲員 とよの, 田村 聡志, 芦田 裕志
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_135-II_142
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     本研究では,長年にわたり東京都水道局で収集されてきた管体環境調査データを用い,配水管路の外面腐食の面的な拡がりを示す全面腐食について分析を行った.まず,相関分析を用いて要因関連図を作成した結果,「埋設経過年数」や「ポリエチレンスリーブ(以下,PSと略す)被覆の有無」といった要因が全面腐食に特に大きな影響を及ぼすことが明示できた.次に,数量化理論第II類を適用し,非開削で全面腐食の状況を判別する腐食診断モデルを構築した.その結果,埋設経過年数とPS被覆の有無により,全面腐食を診断することが可能となった.さらに,回帰分析を適用し,PS被覆の有無や土壌環境の条件別に,全面腐食の経年的な変化を比較するとともに,幅のある腐食予測を行い,将来における全面腐食の不確実性を把握することができた.
  • 西澤 常彦, 稲員 とよの, 小泉 明, 渡辺 晴彦, 荒井 康裕, 森 正幸
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_143-II_150
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     管路更新計画における更新順序の決定では,管路単体の物理評価だけでなく管路ネットワーク構造における上下流関係を定量的に評価することが重要である.すなわち,ある管路上で発生した断水事故の影響は,まず,直近の仕切弁を閉じて作られる断水領域として生じ,次いでその影響が管路のネットワーク上の発生箇所によって異なる形で波及するといえる.そこで本研究では,管路ネットワーク上の仕切弁で閉じられる個々の断水領域を需要者ユニットと定義することにより,管路事故時における水供給への影響度を需要者ユニット間の相互関連構造から評価する方法を提案した.さらに,ケーススタディで,提案したネットワーク構造に基づく影響度評価を行うとともに管網解析の結果との整合性を確認することで本提案の有効性を示した.
  • 奥山 忠裕
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_151-II_162
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     Kuhn-Tucker modelは,近年研究され始めた顕示選好データを用いた便益評価手法であり,端点解を柔軟に利用可能なことが特徴である.顕示選好データを用いた便益計測では,関数形の選択が便益値に影響することは広く知られている.一方,Kuhn-Tucker modelでは,効用関数の形状が便益計測に与える影響について検証した研究は少ない.そのため,本研究は6種類の効用関数形を用い,関数の形状と便益値の関連性を分析した.宮城県の26箇所の海水浴場のレクリエーション活動のデータから年当たりの便益計測を行ったところ,Phaneuf and Siderelis (2003)もしくはWhitehead et al.(2010)で用いられた関数形による便益計測が望ましいという結果が得られた.
  • 武藤 慎一, 川島 美樹
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_163-II_172
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     近年,農山村の衰退が深刻化しており,その結果農山村の有する公益的機能がもたらす価値も減少していると懸念されている.これに対し本研究は,農山村の活性化を通じて公益的価値の増大を図れないかを検討したものである.具体的には,農山村と都市からなる二地域の空間的応用一般均衡(SCGE)モデルを構築し,(1)農山村部を中心とした交通整備,(2)農山村部の労働需要あるいは農山村部への労働供給を効率化させる労働政策,(3)農山村部の第一次産業への補助金支給策の3政策について,山梨県を対象に数値計算を実行した.その結果,労働政策は農山村部の活性化という面では大きな便益をもたらすこと,交通整備は公益的価値を考慮することにより3%ほどの追加便益を得ること,補助金支給策は税負担によって負の便益となっていたものが公益的価値を考慮することで正の便益になることなどが明らかとなった.
  • 大塚 佳臣, 麻 永隆, 栗栖 聖, 窪田 亜矢, 中谷 隼, 花木 啓祐
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_173-II_182
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     江戸城外濠は,東京都心における貴重な水辺環境空間であると同時に史跡として重要であり,近隣住民のみならず,東京近郊の市民からもその多様な価値が認められている.本研究では,一都三県の住民を対象としたアンケート調査データをもとに,空間構成要素と市民の特性に着目して,外濠の利用価値(直接・間接)および非利用価値(歴史的価値,遺贈価値,存在価値,生態系価値)の選好を評価した.その結果,全体としては,1)利用価値および非利用価値は見附より濠で高く評価されている,2)価値評価は利用頻度と正の相関がある,3)利用価値より非利用価値が高く評価されている,4)非利用価値の評価は居住地との関連はないことが明らかになった.外濠のこれからのあり方を考える上では,今後は,利用のための開発ではなく,非利用価値を高めるための施策(松・桜・石垣の保全等)が重要であると考えられた.
  • 肱岡 靖明, 岡 和孝, 高野 真之, 吉川 実, 市橋 新
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_183-II_192
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     温暖化による影響は世界各地で現れており,緩和策の強力な推進と共に,ある程度の悪影響が生じることに備えて,長期的な視点で適応策を検討・実施することが早急に必要である.適応策を検討するにあたり,日本では,長く防災や環境管理,食料生産,国民の健康の保護のための対策を推進しており,それらは温暖化への適応策として効果を発揮する可能性があると考えられる.本研究では,適応策を講じるべき対象分野・指標を網羅的に整理した上で,東京都を対象として適応策に資する既存の施策がどの程度存在するかを調査した.結果,多くの分野および指標に対して,既存施策が適応策として有効に機能する可能性があることが示された.さらに,自治体の適応策推進に向けた現状の課題を整理し,その問題点を改善するために科学的知見をどのように活かすべきかについて解決案を提案した.
  • 須田 英子, 窪田 ひろみ, 馬場 健司, 肱岡 靖明, 高橋 潔, 花崎 直太
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_193-II_202
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     近年,国内でも農業・食料生産分野における気候変動リスクが顕在化し,その適応研究が行われている.気候変動リスクは,その生じる地域の地理的・社会的特性により大きく異なるため,その適応策実施の戦略は,現場特性に即して立てる必要があるが,適応研究から成果の社会実装に至る過程を見通しての有効な戦略や考慮すべき事項の検討が不足していた.本研究では,気候変動リスクから,適応策のオプション検討と実施・普及に至る過程について,専門家の認知構造を多分野横断的に調査し,これらを集約して概念図とした専門家認知モデルを作成した.これにより,今後日本の農業・食料生産分野における気候変動への適応戦略を考える上で基礎情報となる,対策すべき気候変動リスクと適応策,および実施にあたり考慮すべき規定因子の構造を明らかにした.
  • Kazuya YASUHARA, Makoto TAMURA, Frank H. LING, Prabhakar S.V.R.K., Sr ...
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_203-II_212
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     Ongoing international climate negotiations are putting greater emphasis on the need for greater cooperation between developed and developing countries as well as among developing countries in order to promote climate change adaptation at all institutional levels. The pace at which adaptation is being implemented, however, does not meet the demands of climate sensitive communities due to various institutional barriers. While various adaptation networks, both globally and in the Asia-Pacific region, have recently formed to overcome these barriers, they have not met their full potential in enabling economies to become climate resilience. Among these is the lack of communication and collaboration among different domains of expertise. In this paper, we examine the role of existing networks, the stakeholders involved, operational modalities, and their expected outcomes and we identify recent activities that are helping to overcome these barriers and creating synergy by improving efficiency, strengthening coordination, and aiding in the convergence of multiple priorities.
  • 林 優里, Janice . J. SIMSON, 五味 馨, 松岡 譲
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_213-II_224
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     本研究では特定の機能に特化し製造業がほとんどない小規模都市において低炭素社会を実現するための対策費用を含む定量的な計画策定手法を開発し,これをマレーシアのプトラジャヤに適用した.基準年2007年,目標年2025年として社会経済指標,エネルギー需要量,CO2排出量の推計を行った.目標年対策導入ケースについては,交通対策重点,再生可能エネルギー利用促進,建物対策重点の3通りを想定した.その結果,対策の導入によりいずれの対策ケースでも「経済活動あたりCO2排出量を2025年までに2007年比で45%削減」という目標が達成可能であるという推計結果が得られ,対策費用は高い順に再生可能エネルギー利用促進,建物対策重点,交通対策重点となると推計された.C-ExSSにより,低炭素計画の方針および対策について,費用をふまえ地域に適した現実的な検討が可能になると考えられる.
  • 五味 馨, 金 再奎, 松岡 譲
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_225-II_234
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     本研究では地方自体において長期的な低炭素社会へのロードマップ(行程表)を構築する手法を開発する.行程表を推計するためのツールとして施策の実施主体の費用負担を考慮して施策実施スケジュールを推計するバックキャスティングツール(BCT)を開発する.これを滋賀県に適用しておよそ240の施策からなる行程表を構築した.滋賀県はすでに2030年の低炭素目標及びその時点で導入されているべき施策を策定しており,本研究ではそれらの施策を2030年までに全て実施するための行程表を2010年から2030年の期間で推計した.その結果,期間全体で必要とされる累積費用は7.3兆円となり,そのうち約17%が公的部門の費用となった.累積排出削減量は101MtCO2で平均削減費用は7.3万円/tCO2となった.これらの費用をどのようにして調達するか,また,国,県,市町のそれぞれがどれだけを負担するか,といった議論が必要であると考えられる.
  • 坂本 光二, 中山 裕文, 島岡 隆行, 長谷川 良二, 大迫 政浩
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_235-II_242
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     近年,循環型の持続可能な社会システム実現に向けた取り組みが多方面で求められている.土石系廃棄物はH19年度の廃棄物全体の発生量の36%を占め,量が大きく廃棄物の物質フローに大きな影響力を持つ.循環型社会の実現のためには,最終処分の削減が不可欠であり,土石系廃棄物の有効利用は必須である.しかし,近年,建設分野を初めとする需要の減少などによる土石系循環資源の需給バランスの崩壊が危惧されている.そこで,本研究では,将来における土石系廃棄物の最終処分量削減策と土石系廃棄物の物質フローを検討することを目的とし,線形計画法による分析を行った.具体的には,2005年度を基準として2030年度での産業廃棄物の土石系廃棄物の最終処分量の削減目標を設定し,あわせてCO2排出量の削減を考慮した土石系廃棄物の有効利用方法およびフローについて検討した.2030年において土石系廃棄物の発生量が現状より増加すると設定しても,土石系資源の有効利用先を適切に確保できた場合には,現状よりも最終処分量を6割程度削減しつつ,また,CO2排出量についても2030年には5.2%減少(セメント混和材代替率が従来型のシナリオ1),20.4%減少(セメント混和材の利用を拡大するシナリオ2)するという結果が得られた.
  • 藤森 真一郎, 増井 利彦, 松岡 譲
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_243-II_254
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     ある一定の確率で気候変動による温度上昇を2度以内にするためには,2050年に世界全体の温室効果ガスを1990年比で半減する必要があるといわれている.本研究は多地域・多部門逐次動学型応用一般均衡モデルを用いて,この排出目標達成の実現可能性,その時の対策メニューやマクロ経済への影響を明らかにする.また,排出許可証取引が可能な場合とそうでない場合のシナリオを設定し,排出許可証取引の効果を分析する.推計の結果,上述の目標は達成可能であり,そのときの限界削減費用は750$/tCO2であった.エネルギー効率改善,再生可能エネルギー,炭素隔離貯蔵技術が主たる対策の中身であった.レファレンスケースに比べGDP損失は,排出許可証取引が自由に行える場合は4.5%,排出許可証取引が行えない場合は6.1%であり,排出許可証取引は多くの地域にとって有益な施策の一つであった.
  • 生津 路子, 藤森 真一郎, 松岡 譲
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_255-II_266
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     本研究では温室効果ガス(GHG)排出量制約に対応した逐次動学型応用一般均衡モデルを日本に適用した.原子力発電や排出許可証取引,CCS技術について様々なケースを想定しシミュレーションを行うことで,施策の影響,特に経済に及ぼす影響の定量的な評価・分析を行った.分析の結果,日本においてGHG排出量削減策として最も重要となるのは他国との排出許可証取引の有無であり,取引を行わない場合,GHG排出価格は2050年に2560 USD(2005年価格)まで上昇し,GDPも最大で3.8%減少することが分かった.原子力発電については2050年に撤廃を目指す場合でもCCS技術と排出許可証取引により補完が可能であり,また,CCS技術の導入スピードについてはGDPや排出価格にほとんど影響を及ぼさないことが分かった.
  • 神田 太朗, 瀧本 真理, 曽根 真理, 岸田 弘之, 花木 啓祐, 藤田 壮
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_267-II_278
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     CO2排出量の削減に向けて,社会資本分野においても個別分野,事業,技術についてCO2排出量に関する計算事例が蓄積されつつあるものの,社会資本分野全体での着実なCO2排出量の削減やその評価に必要な共通の計算手法は確立されていない.本稿では,CFPによる社会資本分野でのCO2排出量の計算の共通手法を提案する.計算対象は,社会資本関連の重要なCO2排出量のシェアを有し,各意思決定場面におけるCO2排出量の計算の基礎となる,建設資材とする.提案する手法は,資材製造の原料・燃料利用等の主要な活動について,詳細な物量情報で計算するとともに,共通性を確保するために,その他の活動によるCO2排出量を産業連関表で補完するものである.着実なCO2排出量の削減に資する計算手法に求められる要件を整理し,本手法がこれらの要件を満たすことを確認した.
  • 池田 鉄哉, 天野 邦彦, 岸田 弘之
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_279-II_286
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     河川工事などの社会資本整備分野では,コンクリートなど多くの資材を使用し,またその運搬距離も長くなる.昨今の環境問題に対する国民意識の高まりから,社会資本整備による環境負荷量を算定し,その低減に向けた取り組みが重要となってきている.社会資本整備分野では広域的・長期的な環境負荷として二酸化炭素(CO2)の排出や廃棄物の発生に留意が必要であるが,これら環境負荷量については実際の事業の実施状況を踏まえて定量的に評価し,その低減方策の検討が必要である.本稿は実際の河川工事を対象として,まずは設計段階において複数の代替案に係るコスト及びCO2排出量等を算定するとともに,LIME2の統合化指標を用いた比較検討を行い,環境負荷低減効果の分析を行った.また施工段階について環境負荷低減に関するシナリオ設定を行い,資材を新たに採取・製造する標準案(ベースラインシナリオ)に対する環境負荷低減効果の分析を行った.さらに本検討を踏まえ,全国の河川管理者や建設コンサルタント・施工会社が参照できるような環境負荷低減を意図した河道設計・施工の検討手順を構築した.
  • 長谷川 知子, 松岡 譲
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_287-II_298
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     計量経済学的手法により世界食料需給モデルを構築し,それを用いて世界35地域を対象に2005~2030年における農畜産物の需給を推計した.推計した農畜産物の生産量に基づき温室効果ガス(GHG)の排出量と削減ポテンシャルを推計し,個々の対策技術の導入にかかる費用と削減効果を評価した.その結果,世界全体における主要穀物の生産量は2030年では2005年比約1.4倍,主要家畜の生産頭数は2005年比約1.3倍になった.2005年のGHG排出量は5.7GtCO2eqで,家畜反芻由来のCH4と農耕地土壌由来のN2Oが高い寄与率を示した.2030年での技術的削減ポテンシャル2.0GtCO2eqは2000年比約36%に相当し,限界削減費用20US$/tCO2eq下における経済的削減ポテンシャル1.2GtCO2eqは2000年比で約22%に相当することが示された.水田の中干し等の水管理や稲わらの秋すきこみや有機物管理において高い削減ポテンシャルが示された.
  • 本多 了, 福士 謙介
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_299-II_305
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     下水汚泥の有効利用と下水処理における創エネルギー施策として,下水汚泥由来の堆肥を利用して燃料作物を栽培してバイオ燃料を生産した場合の温室効果ガスの排出削減効果を試算した.政令指定都市および特別区にある下水処理場から排出される汚泥全量を利用して大豆を栽培しバイオディーゼル(BDF)を生産した場合,下水処理部門の4.0%に相当する温室効果ガス排出削減効果があることがわかった.一方で,同一都道府県の耕作放棄地のみを栽培に用いた場合の削減量は,トウモロコシと大豆の場合でそれぞれ下水処理部門の0.60%,0.62%となり,燃料作物の作付面積が削減量の主要な制限因子となりうることが分かった.汚泥堆肥量が作付面積の制限因子となったため,面積当たりの施肥量が小さい大豆を生産した方がより多くの温室効果ガス排出削減が見込めることがわかった.
  • 島田 洋子, 郭 敏娜, 倉田 学児, 松岡 譲
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_307-II_314
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     発展途上国では,調理や暖房で固形燃料が多く使用され,その燃焼によって室内で発生するPM2.5による健康影響が懸念されている.本研究では,各国の室内PM2.5暴露濃度をコホート別に都市域と農村域ごとに推計できるモデルの開発を目標に,中国を対象に,10省(北京,河北,黒龍江,浙江,安徽,河南,広東,四川,雲南,甘粛)の都市域と農村域における生活時間,家庭内燃料消費量,人口や住居の統計情報を用いて,各地域のコホート別の室内PM2.5暴露濃度を都市域と都市域を区別して推計することを試みた.その結果,暴露濃度は農村域の方が高く,固形燃料の消費量,コホート別の調理時間や自宅滞在時間,住居の床面積に影響されることが明らかになった.黒龍江省農村域の60~64歳の無職女性の暴露濃度が最も高く3027μg/m3であった.
  • 亀卦川 幸浩, 石坂 泰斗, 保刈 和也, Manju MOHAN, Bhola Ram GURJAR
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_315-II_326
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     本研究では,乾季デリーを対象に地上気温分布構造の現況把握とヒートアイランド対策ポテンシャルの推定を試みた.2008年5月と2010年3月における地上気温の多点計測の結果,夜間を中心に都市気候学的な土地利用分類であるLocal Climate Zoneに対応した合理的気温変化の特徴が見出された.加えて,デリー市街地の夜間昇温が都市キャノピーと人工被覆の作用によることが推測された.これら地上気温の時間的・空間的変化の傾向は,著者らの都市気候・ビルエネルギー連成モデルにより概ね再現可能であった.人口1.5倍増と一人あたりエネルギー需要の東京現況水準への到達を想定した近未来シナリオ下での連成モデルによる数値実験の結果,乾季5月のデリー市街地の日平均地上気温について約1℃の昇温が予測された.同昇温は,地表面の緑化・高アルベド化対策を以ってしても0.1℃前後しか緩和されないものと推計された.
  • 中川 秀治, 中谷 隼, 栗栖 聖, 花木 啓祐
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_327-II_338
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     屋上緑化や水辺創出,ドライミスト,保水性舗装といった暑熱緩和事業は,主に屋外気温の低下を目的としているが,生物種の増加,浸水の緩和,空間のデザイン性向上,環境啓発など,屋外気温の低下以外にも多側面の効用を持つものがある.本稿では,暑熱緩和事業の優先順位の決定と多側面効用に対する選好評価に基づいた,代替案の設計段階の意思決定支援の方法を示した.まず,階層分析法(AHP)を援用し,便益受益者,専門家,事業実施主体といった多様な主体の多側面効用に対する主観的評価に基づいて,事業実施の優先順位を決定した.次に,コンジョイント分析を用いて事業の便益受益者であるオフィス勤務者の選好構造を明らかにした上で,それぞれの効用を金銭価値で評価し,具体的な事業内容の設計に当たって重視するべき側面について検討した.
  • 山田 宏之, 田中 明則, 日根 隆夫, 奥田 芳雄, 小山 博之, 羽田 雄一
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_339-II_349
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     本研究は,新しく開発した建築用保水性コンクリート板を用いて,小学校の実物建物を対象に,屋上面からの熱流入の軽減量と室内温熱環境改善効果の実測と解析を行い,省エネルギー対策,室内暑熱環境改善資材としての有効性を検証することを目的として実施した.2010年夏季の7~9月の実測結果から,表面温度,スラブ面温度の低減効果は保水板下で顕著に現れ,対照とした砂利敷き屋根と比べて,表面温度で22℃,防水層表面温度で15℃程度の温度差を生じた.保水板区と対照区の室内環境を比較した結果,天井面温度,室内平均輻射温度は常に保水板区の方が低かった.窓を開けて換気している時間帯の差は小さかったが,換気を中止すると速やかに顕著な差が現れた.密閉状態でPMVでは0.5程度,WBGTでは0.5℃程度の低減効果が,換気状態ではWBGTで0.3程度の低減効果が確認された.
  • 池上 貴志, 片岡 和人, 岩船 由美子, 荻本 和彦
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_351-II_362
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     混合整数線形計画法を用いた家庭内機器最適運転計画モデルを拡張し,太陽熱集熱器とヒートポンプ給湯機を併用した住宅におけるエネルギー需給解析を行った.現行の電気料金およびヒートポンプ給湯機の運用方法の下での解析結果より,太陽熱集熱器とヒートポンプ給湯機を併用した住宅においても十分な省エネ効果およびCO2排出削減効果が得られることが分かった.また,将来に期待されるヒートポンプ給湯機の電力需給バランス調整機能について,太陽熱の利用による調整力減少の影響を分析した.ヒートポンプ給湯機の昼間の運転量は減少するが,太陽光発電余剰電力の売電量低減効果も得られることが分かった.
  • 金森 有子, 松岡 譲
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_363-II_374
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     業務部門(第三次産業)におけるエネルギー消費構造を把握することは挑戦的な課題の一つである.業務部門は, 業種によってエネルギー消費構造(エネルギー種・用途)が異なる特徴をもつため,エネルギー種や用途だけでなく業種も考慮してエネルギー消費構造を把握することが, 地球温暖化問題やエネルギー問題を克服するために重要となる. 本研究では,エネルギー需要の発生と消費構造を考慮して,限られた情報からエネルギー消費量を把握する手法を開発した.そして本手法を世界35地域に適用し,2005年の業務部門におけるエネルギーサービスの需給構造を明らかにした.
  • 其其格 , 北脇 秀敏
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_375-II_383
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     本研究では,湖面積減少が著しい中国内モンゴル其甘湖流域を研究対象地域として,流域内の9村において,地下水の持続可能な利用方法を明らかにするため,地下水使用量と地下水涵養量を算出して地下水収支を検討した.その結果,全流域において,2010年に地下水位は1.0m/年低下したことが明らかになった.また,其甘湖流域の水使用量の99.4%を占める灌漑用水の効率的利用を,地下水位低下の防止と農業収入の維持の観点から検討した.その結果,作物転換から考えた場合,水効率が最も良い作物に転換すると地下水位低下量を現状より年間3割程度緩和できるが,農業収入は現状の農業収入より8%減少することが明らかになった.一方,農業用水路のライニング改善により水路からの損失を改善した場合,建設費が必要なものの農業収入を下げずに,地下水位低下量を現状より年間6割程度緩和できることが明らかになった.
  • 山崎 公子, 菊池 彩子, 小泉 明, 横山 勝英, 閔 丙大, 田村 聡志, 池田 麻衣子
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_385-II_393
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     大雨により貯水池に高濁度水が大量に流入すると,大規模な貯水池であるほど,貯水の高濁度状態が長く続き,利水上の問題が発生する.本研究では,小河内貯水池において降雨時に流入した高濁度水の早期排出のための基礎資料として,河川から流入した濁質が貯水池から放流されるまでの滞留時間の推定を行うことを目的とする.推定には,従来の流れの解析に用いられている拡散方程式を用いず,貯水池内の複雑な水の流れをブラックボックス化し,入出力応答関係を求める相互相関分析により,降雨時の大量出水に伴い貯水池に流入した高濃度の濁質が放流されるまでの時間遅れを求め,貯水池に流入した濁質の挙動推定を試みた.今回使用した分析手法は,水の流動に影響する風や密度などの複雑な要因を用いない方法であり,他の貯水池にも容易に応用が可能である.
  • 孫 穎, 宮寺 哲彦, 藤田 壮
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_395-II_403
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     中国では,高度な経済成長と環境保全の両立を実現するため,国内企業によるグリーンサプライチェーンマネジメント(GSCM)の推進が重要な課題となっている.本研究では,中国・瀋陽市における機械装備製造業,自動車製造業,化学産業の3業種を対象としたアンケート調査の結果に基づき,因子分析及び一次元分散分析を用いて,産業別のGSCM実施程度の違いを明らかにした.その結果,中国企業のGSCM実施が依然初期段階にとどまっていることが示され,産業別では,機械装備や化学(国内政策による推進)と比べ,自動車製造業(国際的市場競争による促進)のGSCM実施が進んでいることが明らかとなった.そのうえで,異なる産業における政策立案者や企業にGSCM実施の推進条件を示した.
  • 馬場 健司, 杉本 卓也, 窪田 ひろみ, 肱岡 靖明, 田中 充
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_405-II_413
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     本研究は,気候変動適応策への理解や受容性の向上に資する基礎的な知見を得るため,一般市民を対象として実施したインターネット調査データの分析により,市民の適応策に対する態度形成の要因やメカニズムを明らかにした.得られた主な結果は以下のとおりである.第1に,7割強の人々が気候変動に対して何らかの危機感を持っており,その影響として風水害を中心に実感を持っている.第2に,適応策の重要性認識は緩和策に比べて低いが,緩和策と異なり,適応策は国や自治体の責任というよりも個人的対策が重要と捉える人が多い.第3に,適応策に対する態度の規定要因としては,性別,被災経験,居住意向といったデモグラフィック属性に加えて,政策のベネフィット認知と,手続き的公正感が特に重要である.
  • 本間 隆之, 古市 徹, 石井 一英
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_415-II_426
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     本研究は,林地残材をペレットとして利用している足寄町を対象に,さらなる林地残材の拡大利用を目指した林地残材拡大熱利用システムの事業規模決定のための方法論を検討した。特に足寄町周辺の熱利用施設へのアンケート調査により,代替燃料としてのペレット購入希望価格,配送距離及び平均1日ペレット使用量からなる熱需要構造を明らかにした上で実行可能な事業規模の算出を試みた.その結果,119 kmの配送距離の範囲内で,合計12施設,ペレット量2,627 t/年の熱需要を明らかにした.そして灯油価格が105円/L、A重油価格が97円/Lにまで値上がりしたと仮定すると,1,800 t/年の事業規模であれば,ペレットは配送費を加えた販売価格で全て売却されるので事業として成立する可能性があることを明らかにした.
  • 北 朋子, 金谷 健
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_427-II_438
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     食品リサイクル法「再生利用事業計画認定制度」に基づく食品リサイクルループの実施実態を,実施事業者へのアンケートによって調査した.得られた主な知見は以下の通りである.1)取り組みの発案者は,リサイクル業者である場合が最も多い.2)計画段階で苦労したことは「事業者間の意見交換・調整」,「国・自治体とのやりとり」が多かった.3)外食産業と食品小売業については,食品廃棄物の再生利用割合が,法改正前の2006年度における業種別の再生利用等実施率(農水省統計)より高く,再生利用事業計画認定制度の見直しの効果が示唆される.4)再生利用事業計画認定制度の課題として,「消費者の理解・認知度を高める」を挙げている事業者が多い.
  • 藤井 実, 藤田 壮, 陳 旭東, 大西 悟, 大迫 政浩, 森口 祐一, 山口 直久
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_439-II_447
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     一般廃棄物中のプラスチックや雑紙は,発熱量が高く有用な資源であるが,リサイクル費用が高額になりがちな問題点がある.長期的な低炭素化や省資源化には廃棄物の発生抑制が重要な対策であり,その進展とも整合するリサイクルシステムが求められる.本論文では,一般廃棄物中のプラスチック及び雑紙を地域の拠点に収集し,これらを統合的に処理して動脈産業での利用を可能にし,同時に品質の高い一部のプラスチックを再生樹脂化するリサイクルシステムを提案し,その効果を概算した.循環資源の高効率利用が可能で,柔軟な受け入れ能力を持つ動脈産業の既存施設の活用により,循環資源発生量の変動に対して頑強なシステムが描出された.システムの導入により,一都三県で最大350万t/年のCO2の追加削減効果が得られる可能性が示唆された.
  • 荒井 康裕, 河村 永, 小泉 明, 茂木 敏
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_449-II_458
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     都市で発生する産業系プラスチック廃棄物(産廃プラ)は,その多くが再生利用されずに埋立処分や焼却処理されてきた.しかし,今後においては有用な資源としてそれらを積極的に活用し,環境負荷の少ない循環型社会を実現化する必要がある.合理的なリサイクルシステムを構築するためには,産廃プラをどの場所へ,どれくらい輸送するのが適切なのかといった「輸送問題」に取り組むことが必要となる.本研究では,埋立ゼロ化に伴って発生する東京都の産廃プラに着目し,線形計画法を用いた輸送計画モデルを検討した.設定シナリオの下で最適化計算を行い,東京を中心とした首都圏でのリサイクル処理の実現可能性のみならず,広域的な循環システムの有効性について論じた.
  • 池松 達人, 森安 洋平, 平井 康宏, 酒井 伸一
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_459-II_467
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     ごみ減量効果に寄与するごみ有料化施策の制度設計要因について,国内71自治体を対象に1998-2006年度における,年度内の施策の導入期間の重みづけを考慮したパネルデータ分析による検証を行った.この結果,可燃ごみ指定袋 1[円/L]あたりの減量効果は45[g/人/日]と推定され,袋種類数を4種類以上設定すること,15L以下の小さい指定袋を設定することによる減量効果が示唆された.また,資源ごみの指定袋価格を可燃ごみより相対的に低くすることにより,可燃ごみ収集量の減少,資源ごみ収集量の増加,資源循環ルートへの排出促進が期待された.さらに,可燃ごみ,不燃ごみ,資源ごみの指定袋料金を一斉に値上げしたとしても,可燃ごみや資源ごみの収集量に有意な変化はみられないことが示唆された.
  • 森 万由香, 金谷 健
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_469-II_480
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     県単位でのレジ袋削減に関する自主協定の実施実態の把握及び拡大への方策を,実施県へのアンケート調査と,実施県内の事業者数と店舗数のiタウンページでの調査とによって,明らかにした.得られた主な知見は以下の通りである.1)レジ袋辞退率は,自主協定の実施前は10~40%であるのに対して,実施後は70~90%程度に向上し,自主協定の実施前後で40~70%程度の効果が認められる.2)「取組提案から協定締結まで」にかける時間や会議回数と,参加店舗割合には何らかの関連が示唆された.行政の参加と参加店舗割合では,行政が「県・市町村」で参加している県の方が,参加店舗割合が高い.
  • 盛岡 通, 尾崎 平, 北詰 恵一, 山本 司
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_481-II_488
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     ごみ焼却施設は,多くの設備,機器部材から構成されており,安定的なごみ処理のためには定期的な施設保全が必要である.本研究では,施設保全勘定モデルを構築することを目的に,ストーカ式全連続運転焼却炉を対象とした施設保全費に関する実態調査を行い,7つのプロセスフローと3つの共通要素からなる設備毎に,点検,補修,更新を区別し,ごみ焼却施設の施設保全勘定モデルを描いて検討を加えた.実態調査に基づくモデルパラメータを設定した結果,構築した施設保全勘定モデルは,処理能力500~600トン/日の施設に適用可能であり,他施設における施設保全費と比較の結果,概ね妥当であることを検証した.
  • 西田 憲一, 古市 徹, 石井 一英
    2011 年 67 巻 6 号 p. II_489-II_499
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
     産業廃棄物を残置したまま実施する不法投棄現場の地下水の原位置浄化は,廃棄物の全量撤去に比べて経済的負担が少ない重要な技術であり,その社会的必要性は高い.本研究では,三重県桑名市の不法投棄現場を対象として,複数の揮発性有機化合物(VOC)により汚染された地下水を,地下水揚水循環浄化工法により5年間で目標レベルまで浄化することを試みた.その結果,浄化目標達成には,本研究で提案する複数のVOCを統合的に評価する指標である加重平均濃度とその等濃度分布図の作成による地下水浄化過程の把握,汚染残留箇所の特定,計画見直し,追加的な浄化促進対策の実施を一連のプロセスとして実施することが重要であることを明らかにした.
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