土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
69 巻 , 5 号
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地球環境研究論文集 第21巻
  • 長谷川 知子, 藤森 真一郎, 申 龍熙, 高橋 潔, 増井 利彦
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_1-I_12
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     気候変化と気候変化に対する緩和策の実施により生じる,食料消費への影響をもたらす可能性のある要因として次の3つが挙げられる.i)気候変化による作物収量の変化,ii)バイオエネルギーの導入による食料作物とエネルギー作物との土地の競合,iii)緩和策の実施に伴うマクロ経済の変化,である.本研究では,上の3要因の食料消費への影響を定量的に示した.さらに,これらの影響は,先進国から中・低所得国への資金移動により軽減することが可能かについても検討した.結果から次の2点が明らかとなった.2℃目標の達成に向けた強い緩和策を実施する場合,食料作物とエネルギー作物との土地の競合,マクロ経済の変化による食料消費への影響は,気候変化による影響と比べて決して無視できない程度であった.2050年,先進国から中・低所得国への870億ドル(2050年世界GDPの0.06%相当)の資金提供により,これらの国々での緩和策による食料消費への負の影響は緩和策を実施しない場合での水準まで軽減できることが示された.
  • 神谷 大介, 赤松 良久, 宮良 工
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_13-I_18
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     沖縄県は亜熱帯海洋性気候に属し,特に小規模な島嶼では元々水資源に乏しかった.1972年の本土復帰以降,種々の水資源開発により水供給可能量は増加してきたが,人口および観光客の増加により,需要量は増加しており,給水制限の可能性を高めている.本研究では沖縄県の離島地域における渇水を地域社会の問題として捉え,水道事業の課題を整理し,水に関わる問題を地域社会との関係で構造化した.さらに,座間味島を対象に,観光客増加と住民の節水のみによる給水制限の回避というシナリオ分析を行った.この結果,さらなる節水は非常に困難であることが示唆された.さらに,キャリングキャパシティの考え方を援用して,水資源からみた島の観光客受け入れ容量について提示した.
  • 河瀬 玲奈, 松岡 譲
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_19-I_26
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     エネルギー集約素材である鉄鋼を対象に,世界を35地域に分類し,2005年の財別鉄鋼ストック量の推計を行った.まず,1900~2005年まで5種の財分類にて動態モデルを用いて推計し,その後,2005年について財ストック量を用い23種に分割を行った.その結果,世界の鉄鋼ストック量は2005年において140億トンであり,財別に見ると建築物が34%,土木構造物が24%,機械類が22%であった.先進国は1980年代以降ほぼ横ばいとなり,2005年に66%を占めていることが示された.また,先進諸国では4.9~10.6トン/人,途上国では3トン/人未満の国がほとんどである.一人あたり鉄鋼ストック量が多い地域は,建築物,交通インフラによる鉄鋼ストック量が主要な要因であることがわかった.
  • 杉本 賢二, 松村 寛一郎
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_27-I_32
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     本研究では,気象条件の変化が穀物生産に与える影響を推計することを目的として,とうもろこし,米,小麦の3品目を対象に,単位収量を作付情報を考慮した気象条件による関数として推定を行った.その結果,栽培期間における積算降水量と平均気温にかかる係数が負値と推定されたことから,極端事象の発生により生産量が減少していることが示された.また,推定されたパラメータを用いて気象条件が穀物生産に与える影響を推計したところ,栽培期間における積算降水量が1%増加した場合には,とうもろこし,米,小麦の生産量はそれぞれ,0.15%,0.07%,-0.32%変化すると推計された.一方で,積算平均気温が1%増加した場合には生産量がそれぞれ,3.78%,5.70%,1.36%減少すると推計されたことから,特に,人口が多いアジア地域で主食である米が気候変動に伴い生産量が減少することが明らかとなった.
  • 森田 紘圭, 金岡 芳美, 加藤 博和, 柴原 尚希, 林 良嗣
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_33-I_43
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     住民・世帯属性と地区特性による各種低炭素技術導入の効果の違いを分析するため,世帯各個人の生活スケジュールから世帯単位のCO2排出量を推計するモデルを構築した.これを用いて,名古屋都市圏の都市・近郊・郊外の3地区を取り上げ,ICT依存型ライフスタイル(テレワーク,シェアハウス)の普及,スマートハウス導入,地域内でのエネルギーの面的利用を対象に,CO2削減効果を分析した.その結果,1)低炭素技術の導入が進むにつれ,交通活動よりも太陽光発電の影響が卓越すること,2)面的利用を導入した場合,土地利用や世帯構成が多様で負荷平準化が図れる近郊部で効果が大きくなること,3)テレワーク普及によって,現状では郊外部でCO2削減効果が見込めるものの,将来的にCO2増大の可能性があること,を明らかにした.
  • 野口 淡海, Yong ZHANG, 渡部 哲史, 平林 由希子
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_45-I_51
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     山岳氷河の中長期的な融解度の推定は,海水面の上昇や,氷河周辺地域における水資源量の変化を考える上で重要である.一方,氷河の融解速度を推定する際には,氷河表面を覆うデブリと呼ばれる砂礫などの堆積物の影響を考慮する必要があるが,現地観測では広域のデブリ厚さ分布を推定することは困難である.そこで本研究は,Caucasus地域を対象に,衛星画像データを使用した広域のデブリ分布の推定を試みた.既往研究による現地観測との比較を行った結果,厚さ5cm以上のデブリが妥当に推定できることが確認できた.また,Caucasus全域では氷河全体の約20%においてデブリの断熱効果に伴い融解係数が約半分になることが判明し,同地域における氷河質量変化を求めるにはデブリが氷河融解過程に与える影響を適切に考慮することが重要であることが明らかになった.
  • 前田 英俊, Hyungjun KIM, 平林 由希子
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_53-I_59
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     山岳氷河は貴重な水資源であり,また温暖化に伴い海面上昇へ寄与するとも考えられている.そこで本研究ではGRACE衛星によって観測された全陸貯水量の合計から,陸面モデルを用いて算定した土壌水分や積雪の影響を取り除くことで氷河の質量変化の算定を試みた.さらに,全球氷河モデルを用いて算定した氷河質量変化の結果との比較も行った.その結果,アラスカやカナダ北部において大きな氷河の減少が示され,2004年から2010年の期間で全球で-110Gt/yr減少していることが示された.一方で全球氷河モデルの結果-127Gt/yrと比較してみると,全球での値は似ているものの地域によって融解量の大小に大きな差がある.本研究の結果を用いることで氷河モデルの改善など氷河質量変化の理解のさらなる発展が期待される.
  • 井芹 慶彦, 鼎 信次郎
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_61-I_66
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     熱帯低気圧が地域環境に与える影響を定量的に調べるためには,熱帯低気圧の経路や強度といった社会・環境被害との関連が強いと考えられる性質を基に,熱帯低気圧の特徴を抽出することは有効だと考えられる.しかし熱帯低気圧の観測データは,観測の時間ステップ毎の緯度,経度,中心気圧等からなる多変量データであり,その特徴の抽出は容易ではない.そこで本研究では,自己組織化マップ手法を用いて,熱帯低気圧の経路・中心気圧から,1951年~2010年に北西太平洋で観測された熱帯低気圧のパターン抽出および分類を行った.更に,各パターンに分類された熱帯低気圧の傾向を調べたところ例えば,非常に中心気圧が低くなる熱帯低気圧と対応の強い熱帯低気圧経路が同定された.また,中心気圧が大きく低下するパターンの熱帯低気圧は,熱帯低気圧の持続時間が長い傾向にあることが確認された.
  • 西岡 和久, 松井 康人, 木村 寛之, 佐治 英郎, 米田 稔
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_67-I_72
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     本研究では,肺胞上皮に沈着したナノ粒子がどれだけ上皮内に取り込まれるのかについて,ヒトII型肺胞上皮細胞(A549)と修飾基の異なる3種類(カルボキシ修飾,アミノ修飾,修飾基なし)の蛍光ナノ粒子を用いて,「表面修飾」,及び「表面電位」に着目し,共焦点レーザー走査型顕微鏡によるイメージング,およびフローサイトメーターによる粒子を取り込んだ細胞数の定量を行った.その結果,表面電位と細胞への取り込み量の依存性に関しては明らかにできなかったものの,曝露時間が長い程取り込み量は増加し,特にカルボキシ修飾粒子で顕著であった.
  • 楊 黙, 湊 淳, 小澤 哲, 土田 寛
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_73-I_77
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     傾斜角の計測手法を提案し,無線技術を利用した防災のための傾斜計測ネットワーク構築の検討を行う.提案する計測手法は,気泡管の画像を撮影し気泡の中心の位置から装置の傾斜の方向と角度を計測する.実験の結果曲率半径800mmの気泡管を用いて,0.0053°/ピクセルの分解能で傾斜角の計測を行うことができた.また本論文では,開発した手法の防災のためのネットワーク計測網構築に関する議論を行う.
  • 斎藤 修, 桑原 祐史, 神澤 雅典, 石川 富子, 圷 拓男
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_79-I_84
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震による様々な被害から,我々は既存のライフスタイルを考え直す必要に迫られたが,重要であるはずの環境問題について震災後語られることが少なかった.しかし,我々の子孫が住み良い地球を受け継いで行くには環境を巡る様々な問題に真摯に対応する事が重要である.また近年,中国の急激な経済成長の付けとして大気汚染が深刻化し,越境汚染による日本への影響も大きな問題になっている事から,環境に対する認識を新たにしていく必要がある.このような背景のもとで,近年,小・中学校,高等学校では「総合学習の時間」を活用して環境教育への具体的な取り組みがなされている.この取り組みは環境についての関心や問題意識の高い人材を育てることが目的である.本論文では,2010年から茨城県ひたちなか市内の小学校で実施しているICT利用による環境教育プログラムが3年目を向かえた.その成果と今後の課題について報告する.
  • 生津 路子, 藤森 真一郎, 松岡 譲
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_85-I_95
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     本研究では,インドネシア,マレーシア,タイ,ベトナムを対象に,世界温室効果ガス排出量半減目標と整合した排出量削減を行う場合について,各国の必要削減量と目標を達成する場合のエネルギーシステムの変化を分析した.計算には応用一般均衡モデルを使い,削減目標の設定には一人当たり排出量一定化の概念を用いた.
     結果から対象国が上記条件で削減を行うとすれば,2050年には排出量削減を行わない場合と比較して,約50%から90%の排出量削減が必要であることが分かった.特に必要削減割合が大きいのはマレーシアとタイであった.さらに目標達成に伴って,一次エネルギー供給のうち最低でも50%以上が再生可能エネルギーや原子力といった低炭素エネルギーとなる.特にインドネシアではそのシェアは70%近くに達することが分かった.
  • 森本 涼子, 眞野 新吾, 工藤 希, 柴原 尚希, 加藤 博和, 伊藤 圭
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_97-I_105
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     本研究では,交通システム整備に伴うCO2排出量の変化を包括的に評価するために,車両走行とインフラ建設・車両新造も含むシステム全体のライフサイクルCO2排出量推計手法を構築する.特に,信号機や左右折等による自動車の渋滞,道路上でのLight Rail Transit(LRT)と自動車の混合を含む車両の詳細な走行挙動がミクロ交通流シミュレーションによって分析可能となる.LRT導入を対象に,並行する路線バスからの転換や,自動車の車線減少に伴う渋滞の増加についても考慮できる枠組みを提示する.この推計手法をケーススタディに適用した結果,車線減少がもたらした自動車の渋滞やLRT優先信号の導入がCO2排出量に影響を与えることが定量的に把握された.
  • 宮本 善和, 玉城 重則, 林田 龍一, 黒島 秀信, 恩田 聡
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_107-I_115
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     沖縄県のサンゴ礁生態系に負荷を与えている農地の耕土の流出防止を促進するため,各地域で自立的・持続的に農家の営農対策の促進をコーディネートしていく組織を構築することが求められている.そこで,本稿はこの組織のコーディネーターが担うべき作業の内容を明らかにすることを目的として,聴き取り調査によって,営農対策を促すコーディネート作業の内容を経験知として把握し整理した.そして,営農対策の促進/障害要素を抽出し,その連関構造分析を行ってコーディネート作業のポイントを明らかにした.そして,そのポイントを組み込み,コーディネート作業の内容を形式知として体系的に整理した.
  • 荒木 功平, 奥村 謙一郎, 安福 則之, 大嶺 聖
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_117-I_122
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     地球温暖化等の気候変動に伴う大雨の頻度増加が指摘されるようになり,各種産業への影響等が懸念されている.特に沖縄県では,亜熱帯特有の高温多雨気候により,赤土等流出を受けやすく,農地や開発事業地等から流出する赤土等は1950年代頃から問題化しているが,未だ解決に至っていない.さらに,沖縄のみならず亜熱帯化が懸念される九州もまた浸食を受けやすい土壌を有している.
     本研究では,亜熱帯地域である沖縄県国頭郡宜野座村の農地で赤土等流出実験環境を整備し,1年強行ってきた様々の適応策の赤土等流出抑制効果把握のための現地実験結果を考察している.また,農家が実施可能な適応策を選定し,その狙い等について述べている.
  • 桑原 亮, 梅田 信
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_123-I_129
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     ダム湖で問題となっている富栄養化現象は,集水域から流出した栄養塩が, 河川を通じて流れこむことが原因の一つである. そのため,流入河川の水質と集水域環境の関係について,検討していく必要がある.本研究では,全国的な多数のダム湖を対象に,GISを用いて集水域の人口や土地形態を解析した.さらに,これら流域背景と流入河川の総リン濃度を統計的に分析し,年平均の流入河川の総リン濃度を推定する式を作成した.この式を用いて,人口変化に伴う将来の総リン濃度の変化を推定したところ,現在流入リン濃度の高いダムが多い西日本において,特に水質の改善が示された.
  • 江蔵 拓, 小川 厚次, 手計 太一
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_131-I_136
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     近年,水災害のリスクが高まっており,これまで多くの洪水防止・緩和対策が実施されてきた.しかし,万全の対策には未だ至っておらず,適切な流域計画のあり方が見直されてきている.河川計画の基盤となる基本高水流量は,一般的に過去の雨量データ及び実際に発生した洪水データを基に設定されている.しかしながら,雨量データは観測流量データに比べて豊富であるものの,降雨流出モデルの使用や降雨時間スケールの引き伸ばしにあたり不確実性が見られるという短所がある.本研究では,実際の既往洪水の観測流量データの波形を利用して,超過洪水モデルを作成する方法を提案した.本モデルを富山県の社会,経済の基盤をなしている神通川流域に適用した結果,神通川流域における越流の危険性の高い地点を明らかにした.また,神通川の基本高水流量について考察した結果,既存の基本高水流量9700 m3/sは 1/150年規模であるが,GEV分布を用いると1/500年規模であることが分かった.加えて,検証に用いられている確率分布関数10個を比較すると大きなバラつきが認められた.
  • 児島 利治, Edwina ZAINAL, 大池 永子, 大橋 慶介, 篠田 成郎
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_137-I_144
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     森林による水源涵養機能の重要性は,我が国では緑のダムとして一般にも認知されているが,定量的評価は不十分である.岐阜県中津川市の森林集水域を対象とし,長期水文観測データを用いたタンクモデル係数の長期変動の解析により,緑のダム機能の解明,評価を行った.第1段タンクの側方流出孔係数は森林の生長に伴い減少傾向を示し,洪水緩和機能の向上を確認した.一方,森林の生長による変化は主に表土層厚,粗大孔隙の増加であり,地下水帯への浸透に関する基岩の割れ目等は増加しないとし,タンク下部浸透孔の係数が経年変化しなくとも側方流出孔係数の経年変化のみでピーク流量を低減し,地下水涵養量増加させる効果があることが示された.
  • 吉見 和紘, 山田 正
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_145-I_150
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     地表面に到達した雨水がどのような経路を辿り河川や湖沼に到達するかは,水文学の分野において精力的に研究されてきた.一般的に洪水時の流出現象は複数の流出成分で構成されると考えられており,従来から山腹斜面を多層構造とした流出計算手法が提案されている.これらの研究は精力的に行われているものの,物理的意義を持ち普遍的に洪水ハイドログラフを再現し得るには至っていない.
     そこで本論文では,洪水ハイドログラフの再現性を向上させるべく,山腹斜面を対象とした斜面流出の基礎式に鉛直浸透機構を考慮し,斜面内多層流れを表現する降雨流出計算手法を提案する.層構造は土地利用や土壌地形特性により異なり,複雑性を有する事から,複数の鉛直浸透機構を基礎式に組込み,その流出形態の違いに関して検証した.また,本流出計算手法を草木ダム流域(254km2)に適用し,その有効性を示す.
  • 玉井 典, 佐々木 勝教, 馬越 唯好, 白鳥 実, 豊田 康嗣
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_151-I_159
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     本研究では,高知県西部を流れる渡川水系四万十川の上流域を対象に,独自の現地調査で得られた森林の土壌保水力に関する知見,ならびに四万十川特有の蛇行形状を定量化することにより,既存の分布型流出解析モデルを改良し,従来モデルに比べ河川流量を制度よく再現できることを確認した.
     また,上記モデルにより,森林の樹種変化を想定した降雨流出シミュレーション解析を行った結果,落葉広葉樹林では,ヒノキ林に比べ長期流出が増加することが分かった.一方,洪水時のピーク流量については,降雨状況に左右され,樹種変化に伴う河川流量の増減に一定の傾向は見られなかった.
  • 高橋 潔, 高薮 出, 石崎 紀子, 塩竈 秀夫, 松井 哲哉, 田中 信行, 江守 正多
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_161-I_170
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     温暖化影響予測研究ではその不確実性の定量評価が重要課題になっている.その認識をふまえ,温室効果ガス排出シナリオや全球気候予測の不確実性に由来する影響予測の不確実性を論じる研究が近年増えてきている.本研究では,排出シナリオ・全球気候予測情報に加え新たに「地域気候モデル(RCM)を用いたダウンスケーリング(DS)」の手法選択に由来する不確実性までも考慮して影響予測を実施した.影響予測対象としては我が国のブナ林分布適域を扱った.全国的概観としては全球気候予測に比してDSの手法選択による不確実性幅は小さいが,地域規模で見た場合にはRCM間の差異は無視出来ず,地域別の保全対策の検討に際してはDSの手法選択による不確実性についても考慮すべきとの結論が得られた.
  • 辰己 賢一, 澁澤 栄, 小平 正和, 山敷 庸亮
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_171-I_176
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     統計的ダウンスケーリング手法により,対象地点最近接のCGCM3モデル出力値,NCEP再解析値および地上気象観測データを用いて,SRES A1B, A2シナリオ下における日単位気候データセットを作成した(1961-2100).得られた気候値を農作物収量算定モデルの入力値に用い,愛媛県松山市にある圃場における現在(2007-2011年),将来(2071-2100年)の水稲収量および蒸散,灌漑投入水量等を見積もり,気候変動が水稲の収量や水収支に与える影響を評価した.その結果,高CO2濃度下では両シナリオで30%以上収量が増加する結果となる一方,水稲の蒸散量は12%減少することが明らかとなった.また,将来の灌漑必要水量はA1Bで28%,A2で36%増加し,河川からの取水量増加の必要性を示唆する結果となった.
  • 河野 剛典, 山田 朋人, Yadu Nath POKHREL
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_177-I_182
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     水資源の安定及び持続的な確保は水ストレスを軽減させる上で必要不可欠である一方,農業による灌漑やダム湖への貯水などの人間活動が流域内の水収支に及ぼす影響は非常に大きいと考えられる.このような背景から全球スケールを対象とし人間活動の影響を考慮した陸面過程を再現するモデルが近年開発された.本研究は同モデルを北海道全域に適用し,その特徴並びに妥当性を明らかにするとともに,将来的には日本全域において水資源の効率的な活用方法を提示しうるモデルの構築を目指すものである.本論文では農業用灌漑活動が水熱収支に与える影響に特化した評価を行った.またモデルの再現するダム放流量については大雪ダムを対象に観測データとの比較を実施したところ年間取水量に関してある程度の妥当性が示された.
  • 呉 修一, Bambang WINARTA, 武田 百合子, 有働 恵子, 梅田 信, 真野 明, 田中 仁
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_183-I_190
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     2006年5月,インドネシア・シドアルジョ市で泥火山が噴出した.噴出に伴い,2011年6月の時点で6.5km2の範囲が泥水で覆われ,高速道路や鉄道が影響を受け,3万人以上の近隣住民の生活に影響が及んだ.堆積・貯蔵限界を超えた泥水は,隣接するポロン川へ導水路を通じて排出されている.噴出した泥には硫黄などの有毒成分が含まれるため,河川・海洋の環境汚染および汚泥の堆積による河川の洪水疎通能力の低下が懸念されている.本論文は,ポロン川における汚泥の堆積・流出状況を評価するため,河川横断面データを収集し河床形状の時間的な変化を解析した.解析結果により,ポロン川への汚泥の流入に伴い,乾期に汚泥の堆積が顕著に進むが雨期には流出し, その堆積量は年々減少していることが明らかとなった.
  • 盧 現軍, 松本 亨
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_191-I_197
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     中国では, 2011年に家電リサイクル法が施行されるなど,今後諸制度が整備されることにより,従来のインフォーマルな家電処理体制から,フォーマルな処理体制に徐々に移行すると予想される.本研究では,中国の山東省を対象に,統計データをもとに2030年までの廃棄量を推計し,今後廃家電発生量が増加していくことを確認した.次に,2011年に発生する廃家電が全て山東省内にある政府公認企業の4社の処理事業者でリサイクルされる場合のCO2削減効果が38.25kg-CO2/台であることを明らかにした.さらに,日本の家電リサイクルのケースの環境負荷と比較することで,両国の環境負荷の差の要因が,電力のCO2排出原単位や再資源化率にあることがわかった.
  • Jun MATSUSHITA, SUHARYANTO
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_199-I_208
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     In most of Asian countries, recent urbanization causes, coupled with weak governance, serious impediments for public infrastructure services and serious water pollution problems. The effective countermeasures are requested world-wide. The UN's proposal on Millenium Development Goals is one of them. ODA is a main engine to promote technical transfer with capacity building generally leading to unsuccessful results so far.
     Hereupon, the authors intend to propose a new approach based on integral basin management systems (BMS), which have been applied successfully for every water-related problems including heavy water pollution in Japan. It consists of mainstay structural measures (centralized sewage works) and supplementary non-structural measures (on-site sanitation systems). Firstly, an analysis is made on the workability of BMS approach under rapid urbanization process during the high economic growth period in Japan. Then, an analysis is made on BMS application models for two Asian mega-city cases to verify how it could realize appropriate and flexible solutions in those basins.
  • Siti Norbaizura M.R., Takeshi FUJIWARA
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_209-I_216
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     Iskandar Malaysia (IM) is a new economic region in Malaysia's most southern state, Johor. The region is targeted for massive development by 2025 with a targeted rapid increase in the population to 3 million, or double the 2005 level, within the 20-years development period. The current handling method for solid waste in the area depends solely on final landfill and is not sustainable for the future of IM with massive waste generation forecasted by 2025. However, in order to develop an alternative solid-waste management plan, details study of the waste generated are crucial but are currently unavailable. We carried out a study at the Seelong Waste Treatment Facility in June 2012 to characterize household solid waste (HSW). We separated one hundred kilograms of HSW into 27 physical groups and proximate analysis and calorific value analysis were run on the samples in the laboratory. HSW generated in IM consists mainly of food, paper, and plastic in the proportions of 41%, 22%, and 21%, respectively. The moisture content, ash content, combustible content, and measured calorific value of the waste were 56.9%, 8.2%, 34.9% and 1591 kcal/kg, respectively. Further study of the suitability of the waste for alternative waste handling methods shows that, other than landfill, composting and incineration could be applicable in the study area through promotion of waste separation.
  • 川本 清美
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_217-I_225
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     再生可能エネルギーへの関心が高まっているが,その利用は途上である.環境やエネルギーに関する多くの情報はメディアを通して,人々に影響している.メディアを通して,今後ライフスタイルを決定する若年層の再生可能エネルギー利用行動を育成できれば,将来に亘り効果が期待できる.研究目的は,メディア選好が若年層の再生可能エネルギー利用行動形成に影響するメカニズムを明らかにすることである.研究対象は,小学生,中学生,大学生の集団とし,質問紙調査により618の有効回答を得た.分析手法は,ロジットモデルと共分散構造分析である.結果として,知識量によりメディア選好量が変化することや,年齢上昇に伴い利用意図と利用行動の規定因構造が変化することを明らかにした.最後に,メディアを活用した利用行動育成への提言を行った.
  • 藤森 真一郎, 増井 利彦, 松岡 譲
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_227-I_238
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     これまでの気候緩和策の分析に用いられてきたエネルギー需給を推計するモデルはトップダウン型,ボトムアップ型という二つのタイプが存在した.それぞれ利点,欠点を持っており,部分的にモデルを統合する試みはこれまでいくつかなされてきた.本研究は,この両タイプのモデルを完全に統合したモデルを開発した.そこで本論文では,その手法を述べ,適用例として世界全体の気候緩和策分析を示す.そして,新しく開発したモデルと既往のモデルの挙動の違いを中心に解析した.エネルギー消費量は部門間で異なり,拓に発電の差異は大きかった.また同じ排出制約化ではGHG排出価格はほとんど同じ傾向にあった.エネルギー消費量のエネルギー価格弾性値は地域間で異なったが,中位値は既存のモデルと近い値となった.機器選択の費用に対する感度を表すパラメータの感度分析を行ったところ,ある一定以上の値でGHG排出価格は大きく変わらなくなることがわかった.
  • 有働 恵子, 武田 百合子, 吉田 惇, 真野 明
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_239-I_247
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     CMIP5に提出されたMIROC5の最新の海面水位データを用いて,気候変動に伴う2031~2050年(近未来)および2081~2100年(将来)の20年平均の海面上昇量予測値に対する全国の砂浜侵食予測を行った.日本沿岸では,RCP8.5のときに海面上昇量が0.3m程度であったが,それ以外のRCPシナリオではいずれも0.2m程度であった.これを反映して,日本全国の砂浜侵食量は,RCP8.5では80~180km2程度,それ以外のシナリオでは60~130km2程度と予測された.いずれのシナリオにおいても,近未来と比して将来は侵食が加速する結果となった.底質粒径による砂浜侵食量予測の不確実性幅は,RCPシナリオによる不確実性幅と比べて大きく,また,その他の要因により,海面上昇量が大きくなるにつれて不確実性が増大する可能性があることが示唆された.
  • 佐尾 博志, 森杉 雅史, 大野 栄治, 坂本 直樹, 中嶌 一憲, 森杉 壽芳
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_249-I_257
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     地球温暖化に伴う海面上昇の影響は地域によって異なることが予測されており,現在と比べて65cm以上になる場合,砂浜が完全に消滅する地域も存在する.したがって,砂浜消失による経済的被害額や適応政策の適応効果の算出を試みた場合,その地域差が明示的となる評価手法の採用が望ましい.これに対して筆者らは先行研究にて,旅行費用法によりレクリエーション需要関数を導出し,また,これに整合的な効果関数の特定化を図った応用一般均衡モデルを構築し,被害評価を試みている.本論文ではさらにこれらを発展させ,海面上昇予測シナリオ別に各地域の砂浜消失による被害額,並びに,過去の代表的な養浜事業を元に仮想的な適応政策を設定し,その効果を都道府県別の費用便益比として算出した.この数値実験の結果,各都道府県の砂浜被害額は海面上昇30cmの場合,約0.8億円/年(徳島県)から約60.0億円/年(沖縄県),65cmの場合,約1.6億円/年(徳島県)から約72.5億円/年(沖縄県)と大きく地域差が存在し,また,砂浜の存在する39都道府県のうち,海面上昇30cmでは17地域,海面上昇65cmでは20地域において同適応政策の有効性が確認された.
  • オトゴンバヤル エンフツォルモン , 松本 亨, Khaltai Galimbek
    2013 年 69 巻 5 号 p. I_259-I_265
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/21
    ジャーナル フリー
     ウランバートル市の主要な大気汚染の発生源である,ゲル地区の石炭ストーブの大気汚染物質削減プロジェクトを対象に,石炭消費削減量や室内空気汚染の現地調査を踏まえ費用便益分析を実施した.まず,大気汚染対策の一つであるエネルギー効率を高める改善ストーブプロジェクトについて,その直接的な便益のうちの燃料費節減を明らかにするために,改善ストーブ利用者にアンケート調査を行った.その結果,改善ストーブで燃料消費量は従来のストーブと比較して約305削減されていることが明らかになった.改善ストーブプロジェクトの純現在価値は15年間で133.81億ドル,排出削減による健康便益は毎年875万ドルと推定された.その他の対策を含め,各削減プロジェクトの投資期間中の純現在価値及びPM10とPM2.5削減排出量を推定した.さらに,改善ストーブの効果と燃料(石炭とセミコークス)の効果を分析するために,ゲル地区における戸建てとゲルの室内空気質(PM2.5, PM10, CO)を測定し,その費用対効果を分析した.
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