土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
69 巻, 7 号
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環境工学研究論文集 第50巻
  • 阿部 貴大, 荻野 修大, 宮里 直樹, 青井 透
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_435-III_443
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     直接投入型ディスポーザーを利用した厨芥のリサイクルシステムは循環型社会の構築に向けて期待されている一方, わが国では下水道施設への影響が懸念され, 一部地域を除き普及が進んでいない. 本研究では, 直接投入型ディスポーザーが導入された群馬県伊勢崎市で調査を行い, 排水の特徴を調べるとともに負荷量原単位を算出した. 結果, ディスポーザー排水の原単位は一般的な台所排水と比較してSSが約4倍に増大すると推察された. また, 下水管渠を流下する過程における水質変動を想定した試験を行い, 原単位と併せて公共下水道終末処理場の流入水への影響を検討した. 現状では影響は小さいが, 今後ディスポーザー使用者数が人口の25%ほどに増加した場合, SSが計画流入水質の値に近つくことが予想された.
  • 福嶋 俊貴, 宗宮 功
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_445-III_451
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     下水処理場を流域の水・物質・エネルギー循寮の拠点とすべく, 第一ステップとして流入下水中有機物を活用した電力自給率の向上を目指し, 下水処理場内での有機物の挙動を使用電力量と合わせて解析した. 下水処理量48,000m3/日のモデル処理場を対象として, 有機物指榛であるCODからエネルギーポテンシャルを計算し, 各プロセスでの挙動を検討した. 消化ガス発電により約10%は回収されるが, 大部分は曝気槽と焼却炉での無機化により損失していた. 電力自給率の向上施策を「自立に必要なCOD」として評価したところ, 通常の初沈が5800mg/Lであるのに対し, 高効率固液分離の導入で2800mg/L(51%低減), 汚泥炭投入で1800mg/L(69%低減), 高効率散気装置で4900mg/L(16%低減)となると計算された. 単独の施策では電力自立は難しいが, 施策の組合せにより自立の可能性は高まるものと考えられた.
  • 渡辺 亮一, 浜田 晃規, 伊橡岡 宏樹, 山崎 惟義, 島谷 幸宏, 山下 三平, 森山 聡之, 皆川 朋子
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_453-III_460
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     これまでに雨水を有効利用して都市型水害を抑制するシミュレーションは多くの研究者によってなされており, その効果は十分にあるという結輪が得られている. しかしながら, 雨水を活用する住宅(トイレなどに利用)の建設例はあるものの, 本格的に都市型水害を抑制する目的で建築された個人住宅は皆無であり, その分散的な貯留効果も兼だ某証されていない.
     そこで, 本研究では都市型水害を抑止する目的で2012年4月こF市内に建設された雨水利用実験住宅における雨水収支測定結果および水質測定結果を用いて, 雨水利用の可能性とその利用による分散型貯留施設での水害抑止効果を実証的に検討している.
  • 古川 靖英, 保高 徹生, 大村 啓介, 小林 剛
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_461-III_471
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     サステイナブルレメディエーションの導入に向けて国内で適用可能な簡易な手法の提案を目的として, 揮発性有機塩素化合物(CVOC)によって汚染されたサイトのデータを元に, 環境, 経済, 社会のカテゴリーと関係するパラメーターを評価の簡便性という観点から選定し, 5つの措置の持続可能性評価を行った. 統合化により, 環境負荷や残存の汚染物質量に伴う措置に基つく外部費用と措置費用を合計した総費用を算出することができた. 総費用が最も少ない措置は, 今回試算を行ったサイトでは, 加熱吸引工法であり, 5つの措置の中では最も持続可能性が高いと判断された. 算出された外部費用の割合は, 措置費用に対して最大3%程度と小さいことが分かった一方で, 感度解析の結果, 条件の変更に伴い, 総費用の順列は異なる結果となる可能性も示唆された.
  • 長濱 祐美, 池上 裕輔, 野村 宗弘, 西村 修
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_473-III_479
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     海草は沿岸域の生物多様性に対し重要な役割を担っていることが知られている. 一方で, これらの海草が受ける温暖化の影響が懸念されている. 海草コアマモ(Zostera japonica)は, 他海草よりも浅い環境を好み, 潮間帯や潮下帯上部に生息することから, 海面上昇や水温変動などの温暖化の影響を直接的に受けると推測されるが, 温暖化に対する既往の知見が少ない. そこで, 異なる水温下や光量子量における海草コアマモの光合成速度と呼吸速度の測定結果から, コアマモ光合成モデルを作成した. さらに, 同様にアマモ(Zostera marina)のモデルも作成し, これらにIPCCのA1Bシナリオを組み込むことで温暖化がこれらの海草に与える影響を検討した. その結果, コアマモの生育下限では季節的に光合成量の減少が見られるが, 生育上限では増加することが示された.
  • 伊藤 浩文, 関根 雅彦, 中村 好希, 神野 有生, 山本 浩一, 岡室 直樹, 田部 崇博
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_481-III_488
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     平成18年10月に「多自然川つくり基本指針」」1)が通知され, 平成20・22年に技術基準解説書「ポイントII, III」2)が作成された. 今後, 例えば魚類生息場の改修や保全する場合に設計が正しいかどうか照査できるシステムが必要となる. しかし, まだ実務では事例や技術基準解説書を参考に河川の特性を把握し経験的に現場に適合するように技術基準の採用を判断しているのが実情である. そのため, 魚類の生息に適した環境を把握し評価する方法としてPHABSIMが挙げられる. そこで, 本研究では, 2河川において単調区間4箇所と多様区間3箇所を調査し, 魚類生息密度と環境多様度指数の関係を確認した. また, その作業のなかで個々魚類の流速, 水深, 底質への選好性について多くの文献からデータを得ることができた. ここで得られた資料を基に, 河道計画において実務で採用可能な魚類生息場評価手法を提案する.
  • 八重樫 咲子, 渡辺 幸三, 大村 達夫
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_489-III_494
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     河川水生昆虫ヒゲナガカワトビケラ(Stenopsyche marmorata)の生息環境の特性が遺伝的多様性に与える環境選択の影響を評価した. 宮城県中南部地域4水系30地点と本州6地点で採取したヒゲナガカワトビケラをマイクロサテライト8遺伝子座でシェノタイピングした. 遺伝子座ごとに進化シミュレーションに基づく中立進化を帰無仮説とした仮説検定を行い, 3つの環境選遺伝子座を同定した. これら3つの環境選択遺伝子座における平均的な遺伝的多様性と環境指標の偏相関分析を行った結果, ヒゲナガカワトビケラ集団内の平均対立遺伝子数は餌資源の量(SS, FPOM, 付着生物膜のクロロフィルa濃度, FBOM)と河床環境の多様さ(石礫の粒径の分散, 堆積土砂の均等係数)と有為な正の偏相関を示した. この結果は, 餌が豊富で多彩な河床環境を有する地域では, 適応度の低い対立遺伝子・遺伝子型が定着し, 集団内の遺伝的多様性を高めていることを示唆する. ただし, BODと平均対立遺伝子数は有為な負の相関を示していることから, 水質の悪化は遺伝的多様性の悪化を引き起こす可能性も考えられる. 本研究の結果は, 環境選択遺伝子座を用いることで, 人為的河川環境の改変が水生生物の遺伝的多様性に与える影響を評価できる可能性を示す.
  • 丸尾 知佳子, 藤林 恵, 相川 良雄, 西村 修
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_495-III_501
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     本研究では, 近年, 資源量の減少が危倶されている二枚貝(イソシジミ)の成育状況(肥満度)と, それを取り囲む餌料環境に着目し, 炭素安定同位体, 脂肪酸組成および脂肪酸を構成する炭素安定同位体比を指標として, 変化特性を解析した. その結果, バルクレベルの炭素安定同位体比分析による有機物の起源解析では, 肥満度との関係は認められなかった. しかし, 脂肪酸分析によりEPA, DHA含有量が増えると肥満度が向上していることが明らかとなった. さらに, EPA, DHAを構成する炭素の安定同位体比が上昇すると肥満度が減少する傾向が明らかとなり, 餌料源に含まれる陸起源有機物の寄与が重要となっている可能性が示唆された. 今後, 餌料源に含まれる有機物の起源解析を進めることは, 干潟を含めた河口域における生態系保全を考える上で重要な課題である.
  • 劉 兵, ラジブ ゴエル, 寺嶋 光春, 安井 英斉
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_503-III_513
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     生物学的排水処理システムでは, 阻害物によって処理性能が影響を受けることがある. このレスポンスを表現する従来の数学モデルは, 微生物の反応速度が阻害物の濃度によって直接的に定まる可逆的反応を仮定しているケースが多く, 阻害物による微生物の失活という不可逆的な現象を含めて表すことに充分でなかった. 本研究では, これら2つをまとめる新たな数学モデルを考え, 高濃度では毒物として働く濃度阻害性の基質である亜硝酸の生物酸化反応を例として, 可逆的阻害を増殖反応, 不可逆的阻害を自己死滅反応のステージにそれぞれマッピングした. 開発したモデルは亜硝酸濃度が0-2,000mg-N/Lの回分条件やSRT = 20 dの連続条件で亜硝酸の生物酸化反応を一定の精度で表現することができた.
  • 張 彦隆, 牛 啓桂, 李 玉友
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_515-III_522
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     本研究では脱窒素活性汚泥と嫌気性消化汚泥を接種し, 人工廃水を用いたUASB型Anamnox反応槽の連続実験を行った. 140日間の培養を経てAnammox反応槽の稼動に成功し, アンモニア性窒素の除去率は995%に達した. その後HRTを段階的に24hから3hまで短縮して窒素の負荷を上げた. 定常状態におけるNH4+とN02-の消費モル比は1.0~1.1の範囲にあった. TN除去率は90%以上であった. 連続実験において, FAとFNAの濃度がそれぞれ20mg/L, 7μg/Lを超えたとき, Anammox反応は60%阻害された. 回分実験では, FAとFNAの濃度がそれぞれ78mg/L, 30μg/Lを超えたとき, Anammox反応の低下が見られた. 一度基質による阻害を受けた後回復させたAnammox細菌は基質阻害への耐性が強くなる傾向が見られた.
  • 小寺 博也, 間口 暢之, 金田一 智規, 尾崎 則篤, 大橋 晶良
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_523-III_530
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     高塩分環境に生息する未知のポリリン酸蓄積細菌(PAOs)の探索を目的として, 密閉型のdown-flow hanging sponge(DHS)リアクターを用いて集積培養を試みた. 干潟底泥を植種源とし, リン含有人工模擬海水を通水して培養した結果, 運転130日後から安定したリン摂取・放出が観察され, 海洋性PAOsの培養に成功した. 16S rRNA遺伝子に基づくクローニングの結果, 嫌気時に供給する有機源が酢酸+プロピオン酸の場合には, 淡水環境で観察される主要なPAOsであるAccumulibacterがリアクター内で優占していた. 供給する有機源を酢酸のみに変更すると, Accumulibacterの割合は減少し, 未知の糸状PAOsが優占化した. これらの結果は, 高塩分環境でも多様なPAOsが存在し, 生物学的リン除去が可能である事を示唆している.
  • 高橋 竜司, 荒木 信夫, 川上 周司, 青木 仁孝, 山口 隆司
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_531-III_538
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     高感度fluorescence in situ hybridization (FISH)法の一つである(two-pass) tyramide signal amplification(TSA) -FISH法を利用し, 脱窒素細菌が保有するrRNAとnitrite reductase (nir) K遺伝子の同時検出を行った. まず三種類の純粋菌株, Pseudomonas aureofaciens, Achromobacter denitrificans, Pseudomonas stutzeriを用いて, rRNAとnirK遺伝子が高い検出率をもって同時に可視化できることを確認した. 次に, 人工培養液を用いて連続培養した屎尿・浄化槽の脱窒素処理汚泥に対し, 16S rRNA遺伝子, 及びnirK遺伝子に基づく分子系統解析を行った. 最終的に, 屎尿・浄化槽汚泥内に存在する脱窒素細菌のrRNAおよびnirK遺伝子の同時検出を行い, 優占する脱窒素細菌としてHyphomicrobium属の存在を明らかにした.
  • 井口 晃徳, 大久保 努, 立花 真, 永井 寛之, 上村 繁樹, 山口 隆司, 久保田 健吾, 原田 秀樹
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_539-III_546
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     下水処理システムとして導入が検討されているUASB-DHSシステムにおける, 第三世代型(G3)と第六世代型(G6)担体を充填した実証規模下水処理DHSリアクターの微生物群集構造を, rRNA遺伝子クローニング法およびリアルタイムPCR法を用いて解析した. クローン解析による結果は, 流入水温の異なる期間において微生物群集構造が異なっていることを示しており, 高水温時において微生物多様性は高く, 低水温時において多様性は低かった. リアルタイムPCR法によるnirS, nirK遺伝子を標的とした脱窒細菌群の定量の結果, 多くの場合においてリアクターの高さ方向における脱窒細菌群の存在割合は, ほぼ一定で推移していた. またその存在率から, 活性汚泥プロセスと同程度の脱窒細菌群を保持している可能性が示された.
  • 高橋 真司, 竹門 康弘, 大村 達夫, 渡辺 幸三
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_547-III_555
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     ダム下流河川区間は, ダム湖で生産されたプランクトンなどの微粒状有機物(FPOM)を大量に受容しているため, ダム湖に依存した有機物環境が形成されているが, ワンドやタマリなどの止水性のハビタットは, このダムの影響が軽減されている可能性がある. 本研究はダム下流域の流水域および止水域に着目し, FPOMの起源の違いを明らかにすることを目的とした. 起源物質はダム湖有機物, 河川内付着生物層, 落ち葉の3種とした. 解析の結果, 止水域の浮遊性FPOMへのダム湖有機物の寄与率は, 流水域より有意に低い値を示した. また, 止水域は付着生物層及び落ち葉の現存量が流水域より多かった. したがって, 止水域は付着生物層及び落ち葉由来のFPOMが多く供給され, ダムに依存しにくい有機物環境が形成されていることが明らかとなった.
  • 尾崎 彰則
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_557-III_563
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     閉鎖水域における水面被雇に伴う風の作用面横の減少は, 風による溶存酸素供給を低下させることから, 閉鎖水域の水質維持・管理に関わってくる重要な要素の一つである. 本研究では, 水面被覆を伴う小規模閉鎖水域を対象とし, 風速特性と風による溶存酸素供給に及ぼす水面被覆の影響について検討することを目的として, 水面を被覆した風洞水槽を用いた水理実験を行った. この結果, 風による溶存酸素供給の度合いを示す物質移動係数と, 空気の摩擦速度およびシュミット数の相関を明らかにした. また, これらの相関関係を用いて空気の摩擦速度およびシュミット数をパラメータとする物質移動係数の推算式を導出し, 推算式の係数を比較することにより, 風による溶存酸素供給に及ぼす水面被覆の影響を定量的に表現した.
  • 藤林 恵, 野村 宗弘, 許 暁光, 佐藤 亮, 相川 良雄, 西村 修
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_565-III_570
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     宮城県の閉鎖性水域伊豆沼の底質形成機構を解明するために, 流動と底質有機炭素の関係および底質の脂肪酸組成を調べた. その結果, 平均流速と底質有機炭素含有率との間には関係性が見られなかったが, 流速超過確率と底質有機炭素含有率には負の関係性が認められた. また, 底質からは高等植物に由来する脂肪酸が多く検出された. さらに, 底質における高等植物由来の脂肪酸含有量と有機炭素含有率には有意な正の相関が認められ, 伊豆沼の有機汚濁は高等植物によって引き起こされていることが明らかとなった. 流動の制御や高等植物の刈り取り等が伊豆沼の有機汚濁の予防に有効であると考えられた.
  • 尾崎 則篤, 上村 浩樹, 田中 辰憲, 森下 史崇, 金田一 智規, 大橋 晶良, Kai BESTER, Per MOLDRUP
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_571-III_579
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     本研究ではPPCPsの一群である3種類の香料成分(OTNE, HHCB, AHTN)と抗菌剤であるtriclosanを対象として下水処理場内への流入と放流濃度を測定し, 除去率を導出した, また広島湾北部域での底質濃度分布を測定した. それに基づき広島湾流入城を対象として処理場からの流出と湾内への堆積負荷を導出し, それぞれの物質収支を検討した. 流域内での下水処理場を経由する負荷は流入においてはそれぞれ200-1000kg yr-1, 流出は0-600kg yr-1であった. 広島湾北部の底質への堆積負荷はそれぞれ0-4kg yr-1であり, 下水処理場からの流出負荷は広島湾の堆積負荷と比較して高いという結果が得られた. 更に関連する物質の濃度を測定しその動態を考察した.
  • 澤田 育則, 市木 敦之, 出井 寛志, 大久保 卓也, 國松 孝男
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_581-III_588
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     農繁期には水田から多量の汚濁物が流出し, 水田排水は流域の水環境にとって大きな影響を及ぼしている. 本研究では, 滋賀県の用排水路が分離され, 環境配慮型農業が実施されている水田小流域を対象として, 灌漑期に用排水路にて流量と水質を実測し, 水田由来負荷量の実態を定量的に把握した. その結果, すべての排水路水質で代かき・田植え時期にピークを記録した. 水田からの正味排出負荷量を算定すると, この時期のSS流出量は灌漑期間全体の流出量の80%~95%, 他の項目でも30%~48%を占めていた. この時期のSS粒径は他の時期より小さく, 容易に沈降しないことから, 受水域に及はす影響が大きいものと考えられる. また, 環境配慮型農業の拡張に伴い正味排出負荷畳が減少しており, その有効性が示唆された.
  • 高柳 和幸, 喬 偉, 李 玉友, 大坂 典子, 押部 洋
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_589-III_595
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     本研究はメタン発酵回分実験によるコーヒーかすのエネルギー回収の可能性の検討, 高塩の嫌気性膜分離法を用いた連続処理プロセスの確立を目的とした. コーヒーかすの回分実験ではCOD分解率は75%程度となりメタン生成ポテンシャルとして290mlCH4/g-CODが得られた. 嫌気性膜分離法を用いた連続実験ではコーヒーかすのみの運転を行い, コーヒーかすのメタン発酵にはアルカリ剤と微量元素を添加する必要があることが分かった. コーヒーかすと余剰活性汚泥の共発酵基質にアルカリ剤を添加することで安定して処理が可能であった. その際1.93L-Biogas/L-reactor·d, メタンガス濃度60.6%が得られた. 分離膜はバイオガスの返送による表面洗浄のみで139日間の連続運転が可能であった.
  • 戸苅 丈仁, 池本 良子, 中木原 江利, 中出 貴大, 古 婷婷, 本多 了
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_597-III_603
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     小規模下水処理場に適した効率的な嫌気性消化を目的として, 高濃度混合嫌気性消化実験を行った. 石川県A町を対象フィールトに設定し, 小規模下水処理場で数多く採用されている水処理方式であるオキシデーションティツチ法から発生する汚泥(OD汚泥)とA町で発生する代表的な有機性廃棄物である廃油揚げを用いて, 連続式実験を実施したところ, OD汚泥単独系では投入有機物槽負荷3.4kg-VS/m3/dまで, 廃油揚げとの混合系では3.5kg-VS/m3/dまでは, 安定的に発酵反応が進行した. また, 廃油揚げのVS分解率は80~90%程度であり, 嫌気性消化において優良な基質であることがわかった.
  • 日高 平, 王 峰, 内田 勉, 鈴木 穣
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_605-III_614
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     下水汚泥に加えて食品系廃棄物, 生ごみ, 畜産廃棄物, 野菜屑などに馴致した消化汚泥を用いた回分式実験を中温および高温条件下で行い, 基質および消化汚泥の性状ならびに消化特性を比較した. 有機性廃棄物は, 含まれる有用な物質も多いことから, メタン発酵後段の資源回収や肥料利用も含めて, 下水処理場への受入が有用になることが考えられた. メタン転換率は中温と高温で大きな差がなく, おおむね下水汚泥と同等以上のCOD基準メタン転換率0.6以上が得られた. メタン転換率の高い廃棄物はど反応速度の速い傾向が見られた. 消化液への水質影響として, 中温と高温で区別して, 投入基質のC/N比とアンモニア性窒素の増加, C/P比とリン酸態リンの増加などについての関係が示された.
  • 北候 俊昌, 牛 啓桂, 喬 瑋, 李 玉友
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_615-III_621
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     TS濃度約10%の高濃度鶏糞を用いて中温と高温のメタン発酵の連続実験を行い, そのメタン発酵性能およびアンモニア阻害の検討を行った. 中温発酵では生鶏糞を用いても安定したメタン発酵が継続した一方で, 高温発酵では脱アンモニア鶏糞のメタン発酵は順調に行われたが, 生鶏糞ではアンモニア阻害が生じた. ガス生成状況などから判断して, 中温発酵ではアンモニア性窒素(TAN)濃度が4000~5000mg/L, 高温発酵では4000mg/L以下で阻害を受け始めたと考えられるが, 急激な揮発性脂肪酸の蓄積はTAN濃度約10000mg/L(中温発酵)および約5000mg/L(高温発酵)で生じ, その阻害濃度は異なる結果となった. またTANの増加に伴い各有機物の分解率は低下する傾向を示したが, 特にタンパク質の分解は他の有機物に比べてアンモニア阻害に対して影響を受けやすいことが明らかとなった.
  • 藤本 典之, 稲葉 英樹, 窪田 恵一, 珠坪 一晃
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_623-III_630
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     本研究では、低濃度産業排水の創エネ処理法の確立を目指し、EGSB法による飲料系工場排水(約1,000mg-COD/L)の低温(17 ~ 19°C)でのメタン発酵処理を試みた。その結果、容積負荷15 kg-COD/(m3·d)、汚泥負荷0.63 kg-COD/(kg-MLSS·d)、COD除去率88 ~ 93%、メタンガス転換率60 ~ 69%の良好な処理性能を安定的に示し、中温メタン発酵と同等の性能を達成した。保持グラニュール汚泥は若干肥大化したが、安定した沈降性を維持していた。更に、低温耐性のあるメタン生成古細菌の集積化が進むことで、保持汚泥の低温(20℃)でのメタン生成活性は植種汚泥の中温(35℃)での活性と同等にまで増加し、EGSB法の無加温条件での安定した処理性能発揮に寄与した。
  • 岸田 直裕, 原本 英司, 今野 祥顕, 泉山 信司, 浅見 真理, 秋葉 道宏
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_631-III_637
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     水中のクリプトスポリジウム・ジアルジア検査における遺伝子検査法の実用性を検討するため, 国内30箇所の浄水場から水道原水を採取し, 顕微鏡観察法および遺伝子検査法を用いてこれらの原虫を検査し, 検出結果を比較した. 遺伝子検査法としてRT-qPCR法を用いた場合, 顕微鏡観察法と同程度の検出率で原虫が検出されたが, 一部の試料ではクリプトスポリジウムの検出濃度が顕微鏡観察法に比べ極端に低くなることもあった. また, 遺伝子検査法により, 水道原水中に存在する原虫の種・遺伝子型が多様であることが明らかとなり, その多くがヒトに感染する可能性のあるものであった. さらに, 遺伝子検査法によって検出された種・遺伝子型によっては, 水源における汚染源の推測も可能であることがわかった.
  • 勝又 雅博, 真砂 佳史, 大村 達夫
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_639-III_646
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     ノロウイルスなどの病原ウイルスによる感染症拡大を抑制するには, 流行ウイルス株の早期検出・同定が必要である. しかし, 現在一般的に用いられているウイルス遺伝子検出・同定手法では, 試料中の相対的存在割合の高いウイルス株の遺伝子型しか同定できず, 流行している遺伝子型分布の把握や新型の流行株の検出ができない. 本研究では, 下水試料中に存在するノロウイルス遺伝子の塩基配列をパイロシーケンシンク法により読み取り, 遺伝子型の同定を行った. その結果, 多数の配列が存在したGI/14型やGII/4型のみでなく, GI/6型やGII/2型といった得られた配列数が少ない遺伝子型の検出に成功した. また, 得られたシーケンスに対してノイズ除去処理を行うことにより, 信頼度の高いOTUを作成することに成功した.
  • 安井 宣仁, 諏訪 守, 桜井 健介, 鈴木 穣, 小林 憲太郎, 高畠 寛生
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_647-III_656
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     現在,アジア地域のみならず世界的な水問題に向け,下水再生水を安全に利用するための国際規格作りが検討されており,今後,再生水の利用促進が期待されている.再生水を様々な用途で利用する際,特に病原微生物の感染リスク管理が重要である.本報ではケーススタディーとしてUF膜処理によるパイロットプラントでの再生水を農業利用した場合を想定し,再生水の農業従事者と消費者に対して,ノロウイルスを対象に定量的微生物リスク評価を行った.その結果,消費者に対するノロウイルスの感染リスクは,農業利用されている河川水を直接利用した場合と比較して,UF膜処理単独で約26倍,凝集沈殿+UF膜処理で約140倍のリスク低減効果が期待でき,農業への利用価値は高いと考えられた.
  • 伊藤 紘晃, 真砂 佳史, 植木 洋, 渡部 徹
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_657-III_665
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     カキ中腸腺からのウイルス抽出において, ウイルス抽出液のpHの効果,及びアミラーゼによる酵素処理の効果を比較し, それぞれの効果を利用した抽出法がノロウイルスの定量検出に有効か評価した. カキ中腸腺に添加したマウスノロウイルスの回収試験においては, pHが低くなるほどウイルス回収率が高くなることが示された. また, 低pHの抽出液による回収率はアミラーゼ酵素処理による回収率よりも高かった. 一方, 養殖カキからのノロウイルスの定量検出においては, 低pHの抽出液よりもアミラーゼによる酵素処理を用いた方が検出頻度が高かった. カキに添加したマウスノロウイルスとは異なり, 中腸腺内で有機物に強く結合したノロウイルスを解離させるためには, アミラーゼによる酵素処理が有効と考えられる.
  • Ahmad S. SETIYAWAN, Toshiro YAMADA, Joni A. FAJRI, Fusheng LI, Denny H ...
    2013 年 69 巻 7 号 p. III_667-III_678
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
     An open channel receiving the johkasou effluents may play a role in transmitting several contaminants into the aquatic environment downstream, including viruses that cannot be completely removed by the johkasou system. To assess the contamination of viruses in the open channel receiving the johkasou effluents, the spatial and temporal variations of the concentration of F-specific RNA bacteriophages, as model enteric viruses, were examined both in water and sediments. The investigations were carried out at six sites along an open channel in a residential area (Gifu, Japan) from September 2011 to January 2013. F-RNA bacteriophages and Qβ were detected in the open channel ranging from 0 to 102 PFU/mL and from 102 to 104 eqPFU/mL in water, and from 0 to 102 PFU/mg and from 102 to 104 eqPFU/mg in sediment. Significant spatial variations in the concentration of F-RNA bacteriophages were found possibly due to the contribution of sources along the open channel. Significant temporal variations in the concentration of F-RNA bacteriophages were also observed both in the johkasou effluents and in the open channel. A significant positive correlation of F-RNA bacteriophages with VS and DS suggests possible interactions of viruses and sediment particles that seem to be carriers of viruses in the open channel.
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