土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
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70 巻, 7 号
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環境工学研究論文集 第51巻
  • 喜多 諒, 小熊 久美子, 酒井 宏治, 滝沢 智
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_1-III_8
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     紫外線発光ダイオード(UV-LED)は小型,堅牢,無水銀などの特徴を持ち,優れた紫外発光光源として,従来の紫外線ランプでは実用化が難しい用途・分野への適用が期待されている.本研究では,環状外照式のUV-LEDモジュールを作製し,UV-LEDを利用した水消毒装置の有効性を実験およびシミュレーションによって評価した.実験では,大腸菌および大腸菌ファージQβにおける不活化効果を定量し,同時に行ったCFD解析ソフトウェアによる装置内の水流の解析から,モジュールの不活化効果が装置内の水理条件に大きく影響を受けることを明らかにした.さらに,装置内の線量率分布および流速分布のシミュレーションから,環状外照式モジュールの有する不活化特性を明らかにし,UV-LEDを用いた水消毒装置の開発に資する知見を得た.
  • 小坂 浩司, 福田 圭祐, 浅見 真理, 越後 信哉, 秋葉 道宏
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_9-III_16
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     2段階塩素処理によるトリクロラミン生成能[NCl3 formationpotential(-FP)]の低減効果を,対象水の違い,塩素処理条件の影響について検討した.本研究で用いた試料では,過去の報告と同様,全NCl3前駆物質に対するアンモニア態窒素の割合が高い場合に2段階塩素処理の効果が認められた.原水と凝集沈殿水との比較ではNCl3-FP低減効果に違いは認められなかった.2段階塩素処理の効果は,2回目塩素添加までに数時間は必要であることが示された.2回目塩素添加までのpHの影響は,pHが6~8の範囲ではpHが7の場合がNCl3-FP低減に対して最も効果が高かった.2段階塩素処理によるトリハロメタン(THM)-FPへの影響は対象水や塩素処理条件によらず小さかった.
  • 稲員 とよの, 原田 高志, 國實 誉治, 小泉 明, 松永 極, 岩瀬 伸朗
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_17-III_23
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     安全でおいしい給水を実現するため,送配水過程における残留塩素濃度の管理が課題となっている.なかでも貯水槽水道では,ランダムな水使用の影響を受けて受水槽に滞留する時間が長くなると,大幅な残留塩素消費が生じるリスクを有している.本論文では,小規模受水槽における実測調査結果をもとに,非定常入出力を有する受水槽を対象として残留塩素減少モデルの構築を試みた.水質を考慮した減少速度モデルと完全混合モデルとを組み合わせることで,提案モデルが残留塩素濃度の変動を再現可能であることを示した.さらに提案モデルによるシナリオ分析より,受水槽内回転率の低下や残留塩素低減化の影響について明らかにした.
  • 島﨑 大, 秋葉 道宏
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_25-III_31
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     透析用水の製造工程や原水中のATP濃度を測定することで,生菌の迅速スクリーニングが可能であるか検討を行った.公共水道と地下水を併用する病院を調査対象として,透析用水原水,製造工程,透析用水および透析液を採水した.ATP濃度が5×10-13[mol/L]を超える場合に全ての試料から生菌が検出されたものの,両者にはほとんど相関が見られなかった.試料の20倍濃縮を行うことで,透析液を除く全ての試料からATPが検出され,検出感度の向上に有効であった.ATP測定法は,従来の平板培養法による生菌モニタリングを補い,生菌汚染の有無を示唆することが可能な迅速スクリーニング法として,日常的な透析用水の衛生管理に適用できることが示された.
  • 明石 詢子, 石渡 恭之, 藤田 昌史
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_33-III_38
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     水質障害を招く懸濁態元素や細菌などは個別に調査されてきているが,懸濁物質の挙動を総合的には捉えられていない.そのため本研究では,懸濁態元素と細菌に着目して,流下過程における各々の挙動や関係性を現地調査により明らかにすることを目的とした.懸濁態元素濃度は流下過程で増減した.また,懸濁態元素組成は約270mの距離でも著しく変化した.以上のことから,配水管から生成した懸濁態元素は,生成した地点付近の管底に存在することが多いと考えられた.一方,キノンを分析したところ,Q-10やMK-8が優占キノン種として検出された.懸濁態元素と同様にキノン濃度も流下過程で増減した.懸濁態元素濃度とキノン量の変化に対応が見られたことから,両者は配水管内で同様の挙動を示していると考えられた.
  • 中村 寛治, 渡邉 暁, 成田 賢人
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_39-III_46
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     ビオラセインは細菌によって生産される青紫色の天然色素で,抗原生動物活性を有することが知られている.2種類のChromobacterium violaceumおよび2種類のJanthinobacterium lividum,それぞれから合計4種類のビオラセイン合成遺伝子群,vioABCDE,をPCR合成し,クローンを取得した.取得の際は,trpプロモーターによって発現するpBR322系のプラスミドpKNA94を利用した.目的のクローンがプラスミド中に組込まれた場合は,宿主である大腸菌の形質転換体のコロニーは青紫色を呈した.4種類中で,非常に濃い青紫色を示した,C. violaceum JCM1249由来の遺伝子により形質転換した大腸菌を使って,複数種の単離原生動物による捕食実験を行った.捕食は著しく阻害され,合成されたビオラセインに強い抗原生動物活性があることが明らかとなった.
  • Tao SU, Hiroyasu SATOH, Takashi MINO
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_47-III_54
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     The effect of extract from activated sludge on bacterial population in activated sludge was studied especially focusing on the effect of organic loading and incubation time. A laboratory scale activated sludge reactor was operated, the extract was obtained from the sludge with ethanol as the extractant, and activated sludge was incubated with and without the addition of the extract. The incubation was performed with low (0.5kgCOD/kgMLSS·d) and high (2kgCOD/kgMLSS·d) organic loadings up to 96 hours on a microplate under aerobic condition. Samples were obtained at 24, 48 and 96 hours, and bacterial population in them were analyzed by both polymerase chain reaction (PCR) with restriction fragment length polymorphism (RFLP) and reverse transcription PCR/RFLP. Clear difference in bacterial population was observed within 24 hours of incubation even when low organic loading was applied and increase of biomass amount was thought to be only around 25%.
  • 鈴木 裕識, 田中 周平, 藤井 滋穂, 中田 典秀, 石川 一真, Jira KONGPRAN, 齋藤 憲光
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_55-III_64
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究では,下水処理過程におけるペルフルオロカルボン酸類(PFCAs)の挙動をその前駆体を考慮して検討することを主目的とし,実処理場の調査結果を元に,1)各処理過程中のPFCAs存在状況の把握,2)包括的なPFCAs生成能の評価手法の検討,3)生成能を考慮した各処理過程中のPFCAsの存在量収支の検討を行った.その結果,1) PFOAやPFNAは処理過程を経て濃度が増加し, 返送汚泥とともに生物処理系を循環している傾向が示唆された.2) 塩基性条件下でペルオキソ二硫酸カリウムによる酸化分解を行うことで,返送汚泥中では317ng/LのPFOA生成能(初期濃度の4.5倍)と929ng/LのPFNA生成能(初期濃度の5.0倍)を検出した.3) 生物処理および最終沈殿処理では収支が合わなかったΣ6種PFCAsの存在量が,生成能を考慮することで収支がほぼ一致した.
  • Karnwadee WILAINGAM, 田中 周平, Pattarawan CHULARUEANGAKSORN, 鈴木 裕識, 小野 亮輔 ...
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_65-III_72
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     産業界におけるペルフルオロヘキサン酸(PFHxA)の使用量は増加し水環境中から広く検出されている.一般の下水処理場ではPFHxAは効率的に処理されていない.よって,効率的に処理方法を開発することは健康リスクと環境への影響を最小化するために必要である.本研究では,2種類の強イオン交換ポリマー(PFA300, PFA400, A860)と2種類の弱イオン交換ポリマー(BA103, MN102),非イオン交換ポリマー(XAD4)と粒状活性炭へのPFHxAの吸着容量を回分式試験により検討した.PFHxAの吸着に及ぼす塩化物イオン,硫酸イオン,硝酸イオンの影響をすべての吸着剤に対して検討した.吸着平衡データは,Freundlichの吸着等温式により回帰された.イオン交換能の最も高いBA103が最大の吸着容量(412mg/g)を示した.廃水中の塩化物イオン,硫酸イオン,硝酸イオン濃度が上昇するに伴い,吸着量は減少した.同濃度で比較した場合,硝酸イオンの及ぼす影響が最も大きいことが示された.塩化物イオン,硫酸イオン,硝酸イオンが存在する状況においてBA103が最大吸着量を示したことから,廃水中のPFHxA除去に対する適応可能性を示唆した.
  • 北村 友一, 真野 浩行, 岡本 誠一郎, 鈴木 穣, 李 相重, 山下 尚之, 井原 賢, 田中 宏明, 小林 憲太郎, 高畠 寛生
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_73-III_80
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     都市下水中に含まれる各種の生理活性物質は,その物性にもよるが下水処理場である程度除去されているが,こうした物質中で魚類への影響が懸念されているものの一つにエストロゲンがある.今後,下水処理水の高度処理として膜処理が普及すると考えられることから,膜処理過程でのエストロゲン活性の低減効果を把握しておく必要がある.外部刺激に速やかに反応する遺伝子発現に着目し,メダカの性特異遺伝子群を探索・抽出し,その遺伝子発現を指標として急性毒性試験と同じ96時間の半止水式曝露実験から,NF膜,RO膜の性特異遺伝子発現の変動抑制効果の評価を試みた.その結果,96時間の曝露実験でもエストロゲンがメダカの性特異遺伝子群へ及ぼす影響をfeminization factorとして定量的に評価することが可能であった.本法によるNF膜,RO膜のfeminization factorの平均低下率は,それぞれ47%と95%となった.
  • 村田 直樹, 青木 伸浩, 本山 信行, 李 富生
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_81-III_94
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は,微粉末活性炭(Supper-powdered activated carbon)と化学的強化逆洗(Chemical enhanced backwashing)を膜ろ過処理に組合わせ,臭気・トリハロメタン生成能の除去ついて評価するため,高濃度に藻類を含有する水源で長期のパイロットスケール膜ろ過実験を行なった.その結果,化学的強化逆洗は膜ファウリングを抑制するとともに,膜ファウリング抑制に必要な前塩素処理を行わないため,膜ろ過水中の消毒副生成物質リスクを低減できることを確認した.また,微粉末活性炭を注入することにより,膜処理では除去されにくいトリハロメタン生成能や臭気物質である2-MIB,ジェオスミンも同時に吸着除去できることを確認した.
  • 加藤 康弘, 奥田 健介, 村田 直樹, 藤江 幸一
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_95-III_102
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     高濃度の臭化物イオンを含有し,かつ藻類由来の臭気物質の発生が顕著な霞ヶ浦から取水した原水を対象に,オゾンと過酸化水素を併用した促進酸化プロセスの評価ならびに制御因子の検討を行った.臭素酸イオン生成に関して最も影響の強い因子は溶存オゾン濃度であり,低水温期に過酸化水素が共存する場合でも同様であった.臭気物質の分解速度はオゾン注入率や過酸化水素注入の有無にかかわらず,オゾン消費量に比例することが明らかとなった.オゾンの自己分解速度が低下する低水温期は,臭気物質の負荷に応じたオゾン注入率を与えると同時に,供給したオゾンを十分に分解するだけの過酸化水素の注入率を設定することが有効であることが明らかとなった.
  • 小林 楓, 室井 隆徳, 越後 信哉, 伊藤 禎彦
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_103-III_110
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     水道水の快適性を大きく損なう原因となる臭気物質トリクロラミンの前駆体であるアンモニウムイオンのオゾン/触媒処理における酸化特性・機構について,常温・希薄水溶液中にて実験的検討を行った.その結果,オゾン/触媒処理におけるアンモニウムイオンの酸化は,触媒表面への吸着によって促進されること,またヒドロキシルラジカルの寄与は小さいことを示した.さらに,共存無機イオンの影響として,塩化物イオンおよびカルシウムイオンが存在するとき,アンモニウムイオンの酸化が促進されることを明らかにした.あわせて,有機物が共存する場合にも,酸化反応が促進されうることを指摘した.またその単位濃度あたりの寄与は,カルシウムイオンおよび塩化物イオンの寄与を上回ることを示した.
  • 山田 武史, 和田 昌寛, 平山 修久, 伊藤 禎彦
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_111-III_118
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究では,事業継続性の観点から上水道システムの消火機能を評価することを目的として,災害時における機能低下の推移により被害抑止力と回復力とを表現することができる災害レジリエンス曲線を定義し,これを用いて配水管網システムの消火機能評価に関する数値解析モデルを構築した.ここでは,消火水量の取り出しを組み込んだ管網解析を行い,配水管網システムにおける節点の水圧条件より消火栓として利用可能な節点の割合を算出し,消火栓利用可能率により配水管網システムの消火機能を評価した.構築した消火機能評価モデル,ならびに管路被害モデル,復旧過程モデルを用いて,神戸市低層配水区域の実管網を対象とした応急復旧期間における配水管網システムの消火機能を災害レジリエンス曲線により評価した.以上のことから,災害レジリエンス曲線を用いて,配水管網システムの消火機能の事業継続性を評価する手法を示した.
  • 松林 良典, 福原 勝, 渡部 譲, 天野 重己, 松井 佳彦
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_119-III_130
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究は,日本の水道が抱える種々の課題への対応策として広域的事業統合に着目し,石狩川流域全体(面積約15,000km2,人口約310万人,46市町村,73水道事業)という広大な圏域を対象として,約40年後の平成62年度における給水人口,水需要動向などの将来の予測を行い,更新時のダウンサイジングや施設形態の再構築を考慮したうえで,同流域の事業形態が現状どおり推移した場合と全事業体が統合した場合について,年間支出額や給水原価などを定量化したものである.その結果,流域内の給水原価は一律249円/m3となり,統合しない場合の200~600円/m3と比較して格差を是正できるものの,統合による流域内の年間平均総支出額の削減率は3.3%にとどまる結果となった.しかしながら,大都市の札幌市を除くと削減率は8.8%となり,水道事業の持続確保に大きく寄与することが示された.
  • 大山 秀格, 川本 圭彦, 小池 亮, 森本 達男, 小熊 久美子, 荒巻 俊也, 滝沢 智
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_131-III_140
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     気候変動は水道の水量・水質に影響を与える可能性があるが,影響の受けやすさや受けにくさは各水道事業により異なる.本研究では各水道事業の気候変動による影響の受けにくさと,影響を受けた際の対応力を組み合わせた複合評価指標(CPI)を提案し,全国の水道事業体の適応力を共通指標で評価した.水道の取水,浄水,送配水の各々にCPIを開発し,評価結果を給水規模別や地域別に表し,日本地図に表示した.その結果,適応力は水道事業体の規模や地域により大きな違いがあり,特に小規模な水道事業体は適応力のばらつきが大きいことが明らかになった.さらに,CPIに水道事業の財政力や管路老朽化に関する指標を加えた水道経営指標群を用いて水道事業の気候変動適応力を総合的に評価する方法を提案し,適応策立案の支援ツールとして活用できることを示した.
  • 段下 剛志, 角野 晴彦, 小島 誠貴, 川上 周司, 高石 有希子, 山口 隆司, 珠坪 一晃
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_141-III_150
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     DHSリアクターの気相部を高濃度酸素で維持するHigh dissolved oxygen DHSリアクターの排水種に関する知見の拡大と処理性能向上のための運転方法の検討を目的に,平均全BOD 565mg/L,平均全COD 1016mg/Lのデンプン含有排水を処理温度20℃で461日間連続処理した.HRT 5h,容積負荷1.4(2.5)kg-BOD(COD)/m3-reactor/dにおいて,処理水は溶解性BOD 50mg/L以上,溶解性COD 130mg/L以上であった.処理水を向上させるために,ここで発生した短絡流とDO不足の改善をねらい処理水循環を試みた.その結果,循環比5における処理水は,溶解性BOD 25mg/L程度,溶解性COD 110mg/L程度に向上した.処理水質の向上には生物膜の剥離が関係しており,この制御は処理水循環という簡単な運転方法で可能になることが示唆された.活性汚泥および高濃度酸素で馴致した保持汚泥の酸素利用速度を,DO 8mg/LおよびDO 30mg/Lに曝して測定した.保持汚泥における後者は前者の1.7倍となり,活性汚泥よりも後者と前者の差が大きくなった,これより,高濃度酸素で馴致したことによる効果的な影響が見られた.
  • 中原 望, 黒田 恭平, 蝶勢 智明, 幡本 将史, 若林 敬史, 河合 俊和, 荒木 信夫, 山口 隆司
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_151-III_158
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     高濃度の有機物・カチオン・硫酸塩含有糖蜜廃水を対象とした高速廃水処理装置の開発を目的とし,高温多段型上昇流嫌気性汚泥床(MS-UASB)反応槽と中温UASB反応槽を基本としたシステムに関して,糖蜜廃水の連続処理性能および処理条件に応じたMS-UASB反応槽保持汚泥の微生物叢を調査した.MS-UASB反応槽は最大CODcr容積負荷42kgCODcr·m-3·d-1を許容し,この条件においてシステム全体としてCODcr除去率82%,BOD除去率90%を達成した.最大容積負荷条件では,酢酸酸化細菌のThermacetogenium属,酪酸酸化細菌のSyntrophothermus属と水素資化性メタン生成古細菌のMethanothermobacter属とが優占していた.このことから酢酸からのメタン生成はこれらの微生物の共生により,酢酸酸化・水素生成経由で進行していたことが示唆された.
  • 新井 広基, 長岡 裕, 中島 光康
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_159-III_164
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     MBRにおける膜ファウリング抑制策として膜にポリマー加工を施す方法に注目した.親水性及びタンパク質吸着抑制効果を持つMPCをPVDF膜に加工をすることによって浸漬型膜分離活性汚泥法により長期運転を行うことで膜ファウリング抑制効果について検討した.本研究ではPVDF膜にMPCポリマーよりも安価かつ類似した性質を持つPVAとMPCポリマーの混合ポリマー加工膜を作製した.その混合ポリマー加工膜と未加工膜のPVDF膜を浸漬型膜分離活性汚泥法により長期運転を行い,膜ファウリングを起こすまでの運転日数,親水性,DOC,E260から混合ポリマー加工膜におけるろ過性能の効果について検討した.それによりMPC加工膜がタンパク質などの膜ファウリング物質を透過することにより膜ファウリングを抑制できることが示唆された.
  • 酒井 駿治, 長岡 裕, 井上 美穂
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_165-III_173
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     レーザー変位計を用い,平膜状浸漬型MBRにおいて用いられる平膜モジュールの曝気中の振動特性について検討した.膜モジュール間の曝気流路の液相流速が不規則かつ連続的に変動するため,平膜モジュールの両面間で不規則な圧力差が生じ,膜モジュールの支持板は基準点を軸とした振動現象を示した.振動と曝気風量との間に正の相関がみられ,厚さが薄い支持板では低曝気風量でも大きく変動し,厚くなるにつれて,振動には高曝気風量が必要であることがわかった.支持板の振動は曝気量によらず支持板の固有振動周波数に支配され,支持板の厚さが大きくなると,卓越周波数は大きくなった.支持板に貼付した膜シートは弾性が小さい材質であるため,卓越周波数を持たない不規則な自由振動を示した.
  • 村松 亜由美, 渡部 徹, 伊藤 紘晃, 佐々木 貴史, 梶原 晶彦
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_175-III_183
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     農業,畜産業と都市生活の間での資源循環を目的として,都市下水処理水の循環灌漑による飼料用米栽培の可能性を,水田模型を用いた栽培実験により評価した.その結果,食用米を栽培した先行研究と比べて3倍以上の窒素を下水処理水から除去することができた.循環を行わない系列でも同等の窒素除去が観察されたことから,窒素除去には必ずしも循環灌漑の必要はなかった.循環灌漑の有無に関わらず,除去された窒素の37~39%が水稲に吸収された.一方,循環灌漑により大気に流出する窒素の割合が増加した.飼料用米の収量と玄米タンパク質含有率には循環灌漑の有無で差がなかったが,循環灌漑を行う系列では,穂肥および実肥としての下水処理水を供給することで増収と飼料用米の品質向上が期待される.
  • 栗栖 太, 金谷 築, 浦井 誠, 春日 郁朗, 古米 弘明
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_185-III_192
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     下水再生水における微生物再増殖の制御を目的とし,生分解性有機物の評価を行った.同化性有機炭素(AOC)は活性炭処理では除去され,オゾン処理で生成し,そのほかのプロセスでは変化がなかった.AOC濃度が高いほうが微生物再増殖が起きやすい傾向があり,再増殖抑制のためにはAOC濃度の低減が有効である可能性が示された.Orbitrap型質量分析計により微生物再増殖前後の低分子有機物の分析を行うことで,再生水において微生物再増殖に伴い消費される有機物を分子種レベルで捉えることができた.また,同定した有機物にはオゾン処理により生成されるものや除去されるもの,処理工程で変化しないものがあり,処理工程での消長は多様であることがわかった.
  • 島田 洋子, 長江 卓也, 颯田 尚哉, 渡邊 篤, Seongjoo KANG, 米田 稔, 松井 康人
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_193-III_202
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日に起きた福島第一原子力発電所事故の被災地域の約7割を占める森林地域には,放出された137Csや90Srが拡散しており森林生態系中での長期の滞留が予想され,森林生態系内の動植物や林業に大きな影響を及ぼす可能性がある.本研究では,フィールドおよび室内実験を行った結果,森林土壌内中のCs,Srの浸透は土壌間隙水の遅く動く成分である緩流水に,溶出は土壌間隙水の速く動く成分である急流水によって決まることが明らかになったことから,実験結果をもとに森林土壌内のCs,Srの浸透を推定するモデルの構築を試みた.本研究で提案するモデルは,土壌中Cs, Srの浸透が土壌間隙水の移動特性に依存していると仮定しているが,実験値をよく再現しており森林土壌中の短期的な浸透の推定に有効であることがわかった.
  • 池上 麻衣子, 高瀬 雄平, 米谷 達成, 米田 稔, 島田 洋子, 松井 康人, 福谷 哲
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_203-III_208
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     福島第一原子力発電所の事故後,除染作業が進められており,除染廃棄物の中にはCsなどの放射性物質を含む土壌も存在している.廃棄物を焼却などを行った場合の放射性物質の挙動を把握する必要があるため,本研究では,Cs,Srを添加した土壌を熱処理し,溶出試験を行った.その結果,Csは熱処理温度の上昇に伴って溶出率が低下し,乾湿繰り返しによる差は見られなかった.これは,熱処理を行うことで,Csが土壌に固定されたためであると考えられる.Srは熱処理温度の上昇に伴って溶出率が上昇し,乾湿繰り返しを2回行った方が溶出率は小さくなった.熱処理によって,土壌を含む除染廃棄物中のCsが土壌に固定され,環境中への溶出を低減させる効果がある可能性が高い.
  • 石川 奈緒, 畑中 拓真, 伊藤 歩, 海田 輝之
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_209-III_215
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     2011年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故により放射性物質が環境中に放出した.その一部は下水へ流入しており,既に放射性Csが下水汚泥中から検出されている.本研究では,上記事故で環境中に放出された放射性核種を持つCsとSrに着目し,両元素の下水処理過程における移行挙動について,全体的な総量から汚泥,焼却灰への移行率を明らかにした.さらに汚泥への移行に対する下水中のCs,Srの存在形態との関係を明らかにした.Cs,Srの移行量は,最初沈殿池汚泥と最終沈殿池から発生する余剰汚泥で同程度であり,最終的な脱水汚泥への移行割合は,Csでは流入分の約20%,Srは9.1%であった.さらに,主に無機固形物質に収着している粒子態画分のCs,Srが最初沈殿池汚泥の固形分として存在し,エアレーションタンク内ではSrのみが活性汚泥のような有機物質との収着により余剰汚泥の固相に存在することが示された.
  • 土手 裕, 関戸 知雄, 諸岡 龍, 島岡 隆行, 東條 安匡, 吉田 英樹, 河野 孝志
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_217-III_223
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     一般廃棄物焼却灰からのセシウム溶出を明らかにするために、安定セシウムを加えた廃棄物を焼却して得られた焼却灰を用いて逐次抽出試験、pH依存性試験、温度依存性試験を行った。その結果、木くずを原料とした焼却灰中の水溶性態を除いたセシウムの存在形態は、実焼却灰の存在形態と類似していると見なせた。pH5以下でセシウム溶出率は大きく増加した。pH5以上では自然のpHでの溶出率と同程度であった。溶出温度が20℃から60℃に上昇するとセシウム溶出率は平均で1.2倍の増加であった。以上から、実際の処分場において、pH、温度のセシウム溶出への影響は小さいと考えられた。残留態のセシウムは、還元状態で溶解しない形態のアルミニウムや鉄と共存していると推察された。
  • 有田 康一, 矢部 徹, 林 誠二
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_225-III_231
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     松川浦においては周辺よりも流入する宇多川の上流域において空間線量率が高いことから,放射性セシウムの浦内への初期沈着だけではなく,さらなる流入と蓄積も懸念されている.本研究では松川浦における放射性セシウムの蓄積様を明らかとすることを目的として,浦内各所からコア採取した底質の放射性セシウム濃度測定および性状分析を行なった.放射性セシウムが同程度に高濃度であっても底質性状は異なり,結果として放射性セシウムの蓄積量も異なった.含泥率の高い南西部では,放射性セシウムが高濃度であっても蓄積量は西部よりも少ないことが明らかとなった.松川浦全域の底質20cmまでの総蓄積量は220GBq程度と見積もられ,その80%以上が15cm以浅に蓄積していることが明らかとなった.
  • 劉 媛, 北條 俊昌, 何 士龍, 甄 広印, 李 玉友
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_233-III_241
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     省エネルギー型の新たな窒素除去方法として嫌気性アンモニア酸化(アナモックス)反応を利用した技術が注目されている.アナッモクスの幅広い応用を促進するために,本研究では約57%の部分的亜硝酸化の実現および維持方法について検討した.部分的亜硝酸化処理は完全混合型反応槽を用い,流入水のNH4+-N濃度を250mg/L,窒素負荷を0.5kgN/m3・dとし,リアクターの温度を25℃前後に設定して運転を行った.DO濃度を0.12mg/Lに制御することでNOBの活性が抑制され,リアクター内の遊離アンモニア(FA)と遊離亜硝酸(FNA)濃度がそれぞれ11.4mg/L,0.009mg/Lとなり,理想的な部分的亜硝酸化が実現され約50日間維持することができた.DO濃度により亜硝酸化率が変動し,FAとFNA濃度も変化するため,DOは亜硝酸化率を左右する重要な制御因子と考えられた.
  • 西村 文武, 村角 浩平, 楠田 育成, 高部 祐剛, 水野 忠雄
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_243-III_249
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     4槽連結型リアクターを用いて,硝化反応,ANAMMOXプロセスにおける亜酸化窒素(N2O)発生特性を調査した.硝化過程におけるN2Oの発生は,主としてアンモニア性窒素の消費に関連して生じることが示された.また負荷を増大させた期間においては,アンモニア性窒素の消費速度とN2Oの発生速度に高い相関が見られ,N2Oの発生はアンモニア酸化との関係が高いことが示された.ANAMMOXリアクターでは初期では連結した各槽でN2O発生が観察され,上流の第1槽において最もN2O発生量が多かった.しかし,継続運転後では,下流の生物反応槽においてN2Oの減少が観察された.槽内での滞留時間を十分とることでリアクター全体からのN2Oの発生量は抑制できることが示された.亜硝酸型硝化-ANAMMOXプロセスとしたときには,硝化・ANAMMOX双方からのN2O発生が見込まれ,微生物叢を安定させる等,N2O発生が抑制される運転操作が求められる.
  • 粟田 貴宣, 西本 一真, 金田一 智規, 尾崎 則篤, 大橋 晶良
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_251-III_256
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     海洋環境中から嫌気性アンモニア酸化(アナモックス)細菌の集積の際に植種源として採取された海洋底泥中には,アナモックスプロセスに必要なアンモニア性窒素および亜硝酸性窒素がわずかに存在するのみであり,海洋性アナモックス細菌は実験室での最適培養条件とは異なる代謝プロセスによって生存のための補助的なエネルギーを獲得していると考えられる.そこで本研究では,海洋性アナモックス細菌が利用する可能性のあるマンガン,鉄,硫酸塩の還元について,海洋性アナモックス細菌が優占しているバイオマスを用いた際に,酸化・還元反応が起こるかどうかを回分試験によって確認した.その結果,海洋性アナモックス細菌“Candidatus Scalindua sp.”のマンガン還元速度,マンガン酸化速度,鉄還元速度,硫酸還元速度はそれぞれ0.16,0.005,0.01,2.05 nmol mg-protein-1min-1であった.また,硫酸還元に対する亜硫酸生成の割合は約60%であり,一部が硫化水素もしくは硫化鉄へ変化していることが推察された.
  • 村角 浩平, 萬 泰一, 西村 文武, 高部 祐剛, 楠田 育成, 水野 忠雄, 松田 知成
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_257-III_265
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     廃水処理の省エネ・省コスト化の要求は益々高まっており,より効率的な廃水処理技術の開発が希求されている.省エネ型廃水処理技術の中で亜硝酸型硝化-ANAMMOXプロセスが効率的な窒素除去技術として注目されている.本研究では,SRT制御による亜硝酸型硝化の確立を目指し,SRT制御硝化反応器の処理水質および菌叢の変化を観察し,SRT制御の硝化反応への影響を調査した.SRT 3.4日での制御により,約15日間TNに対して亜硝酸が50%以上の蓄積したことを確認し,SRT制御が亜硝酸型硝化の達成に有効であることが示された.亜硝酸が蓄積し始める際にAOBおよびNOBの菌量の推移に変化が見られ,亜硝酸型硝化には硝化菌の菌量が影響している可能性が示唆された.菌叢解析の結果,SRT条件の違いで反応器内の菌叢が変化するが,SRT条件が類似した場合には菌叢も類似した結果になることがわかり,SRT制御による菌叢の制御の可能性が示唆された.
  • 中野 和典, 中村 和徳, 武田 文彦
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_267-III_275
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     畜舎排水を処理する軽量気泡コンクリート(ALC)を利用したフルスケールの多段型人工湿地における4年間のリン除去性能に基づき,高度処理手法としての人工湿地の可能性と植栽の存在効果について検討した.運転当初は植物の枯死期より成長期で高いリン除去率が得られたが,経年によりその傾向は逆転した.多段型人工湿地の各段の面積あたりのリン除去量は,当初は上段ほど高いが,経年とともに上段と下段の差が減少し,均等化する傾向となった.無植栽区と植栽区の各段のリン除去性能の推移の違いより,植栽の存在がALCのリン吸着性能を維持し,下段に位置する人工湿地へのリン負荷の移行を遅らせ,リン除去性能を延命することが明らかとなった.植栽区における4年間の平均TP除去率は87.6%となり,植物の刈り取りを行わなくても人工湿地によるリンの高度処理は可能であった.
  • 原田 浩幸, 山口 智史, 赤木 孝太郎, 大浦 誠一郎, 川喜田 英孝
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_277-III_284
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     リン及びカリウム含有排水から大きな形状のリン酸カリウムマグネシウム(MgKPO4/MPP)を選択的に回収することを目的とする.沈殿剤として塩化マグネシウムをモデル溶液中に添加した.静置時間,撹拌速度及び添加速度を変化させ,MPPの品質の制御や固液分離能の向上のために大きな形状のMPPを選択的に回収するための最適条件の検討を行った.SEM画像によりMPP特有の針状結晶を確認した.EDXによりMPPの生成を確認した.静置時間及び滴下時間の変化によって,MPPとMg3(PO4)2の割合が変化した.また撹拌速度の変化によって,結晶の長さが変化した.静置時間を短く,添加時間を長くそして撹拌速度を遅くすることに加え,添加するMg濃度を低く設定することで大きな形状のMPPを選択的に回収することが可能となる.
  • 安川 太希, 浅田 安廣, 國本 啓太, 大河内 由美子, 伊藤 禎彦
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_285-III_294
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     土壌浸透処理を組み込んだ水再利用システムでの再生水飲用によるCampylobacter jejuniが引き起こす健康影響を障害調整生存年数(DALYs)により定量化することを試みた.DALYs推定に必要な情報である下水処理水中C. jejuni濃度は9.2~1.2×104MPN/Lであり,滞留時間10日間の土壌浸透処理による細菌類除去・不活化能は5.06~6.81log10と安定して高い除去・不活化効果が確認された.また下水処理水中にギラン・バレー症候群(GBS)発症関連菌株が確認され,リスク評価に対してGBSによる健康影響を組み込む必要性があることを示した.そして再生水飲用によるDALYsの定量化を行い,再生水直接飲用のケースで3.96×10-4DALYs人-1-1(平均値)と推定された.
  • 三浦 郁修, 渡部 徹, 渡辺 幸三, 福士 謙介
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_295-III_304
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究では,家庭内二次感染を考慮したノロウイルス感染症伝播モデルの構築,対象地域でのモデルシミュレーションの実行,およびそのシミュレーション結果と疫学データの比較を通じた本モデルの有用性を検討した.その結果,流行のピークまでに要する時間は,考察した4種類の不確定性が高いパラメーターのうち,NVを含む食品の摂取期間に敏感に反応することがわかった.加えて,家族構成に応じて,家庭内二次感染リスクは一次感染リスクよりも大きくなることが定量的に示された.特に,総員4人以上で幼児が存在する家庭では家庭内二次感染リスクは一次感染リスクの10倍以上になった.最後に,上記のパラメーターに対するピーク時点の反応を利用し,疫学データとの比較を通じた実際の流行に対するアプローチの一例を示した.
  • 伊藤 紘晃, 熊谷 卓也, 風間 しのぶ, 真砂 佳史, 植木 洋, 渡部 徹
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_305-III_311
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     パイロシークエンシング法を用いることによって,カキに蓄積したノロウイルスGIIの網羅的遺伝子解析を行った.ダイレクトシークエンシング法やクローニングシークエンシング法に代えて,パイロシークエンシング法を用いることによって,数%の割合で存在するような比較的マイナーなノロウイルスの遺伝子も,高い確率で検知できることが実証された.検査対象とした全てのカキからGII.4 Sydney2012亜型が85-100%の極めて高い割合で検出され,また,一部のカキからは10%及び15%の割合でGII.6型が検出された.流域内の感染状況との比較から,カキ中に優占して蓄積しているノロウイルスは,同一シーズン内,または直近のシーズンの1月以降に流域内で発生した感染者の体内で増殖したノロウイルスに由来していることが示唆された.
  • 李 善太, 山下 尚之, 田中 宏明, 小林 憲太郎, 高畠 寛生
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_313-III_322
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     下水再利用を目的とし,下水処理場の二次処理水を用いて凝集と膜ろ過を組み合わせた処理によるウイルス除去法を検討した.凝集剤としてPAClを添加した試料をUF膜に通水する処理では,処理系全体でのウイルス除去能は3-log程度であった.このため,凝集処理を施しても一部のウイルスがUF膜を透過することが考えられた.そこで,ウイルスの凝集処理への影響因子を整理し,その最適化を試みた.二次処理水中の成分について,pHと溶存有機物はウイルスの凝集効果に大きく影響することが示唆されたが,0.01μm以上の濁質粒子の影響は軽微だと考えられた.凝集剤として適量のPAClを用い,試料pHを5程度とすることでウイルスのフロックへの移行/吸着を最大化可能であり,本凝集処理水を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過することで,7-log程度のウイルス除去が達成できた.
  • Hamidatu S. DARIMANI, Mariam SOU/DAKORE, Nowaki HIJIKATA, Drissa SANGA ...
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_323-III_330
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     The application of improperly treated compost is one of the causes of bacterial contamination in the field, crops, food and water. Although there are practical guidelines for treatment of compost published, there could be a misapplication in local situations, such as lack of attention by traditional users, labour ineffectiveness and material unavailability. Considering these setbacks, farmers may unknowingly use improperly treated compost as fertilizer. The objectives of this study were (i) to characterize the die-off represented by kinetic inactivation rate coefficient, κ (h-1) of Enterococcus in clay and sandy loam soils, (ii) to determine the effect of temperature, compost-to-soil ratio and soil type on the inactivation rates of Enterococcus. The soils were amended with compost at a ratio of 1 part compost to 10 parts of soil 1:10, 1:25, 1:50 and 1:100 held at different temperatures (30°C, 40°C and 50°C). The moisture content was set to 25% in all conditions. Enterococcus is enteric bacteria and not always pathogenic but an indicator of pathogenic bacteria. Inactivation of Enterococcus (pathogenic bacteria) in the soil with high temperature under different compost application rates was tried in the laboratory test. As a result, (1) the inactivation rates of Enterococcus in clay soils were 0.015-0.027 h-1 , 0.246-0.322 h-1 , 0.397-0.571 h-1 for 30, 40 and 50°C respectively. Sandy loam soils were 0.056-0.130 h-1 , 0.348-0.447 h-1 and 0.475-0.630 h-1 for 30, 40 and 50°C respectively, (2) inactivation rates of Enterococcus in soils amended with compost from the composting toilet depended on temperature and soil type but not on the compost-to-soil ratios. The experimental conditions in this study are different from the real field situation because temperature and humidity changes over time under field conditions. Therefore, care must be taken when interpreting the results of this study to estimate the die-off rates in real field conditions. Further research is required to simulate the behaviour of pathogenic bacteria in field conditions of a hot semi-arid climate.
  • Ahmad S. SETIYAWAN, Toshiro YAMADA, Joni A. FAJRI, Fusheng LI
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_331-III_340
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     Decentralized domestic wastewater treatment systems are generally used in rural areas for preventing pollution of local water environment. Treated waters of decentralized systems potentially contain fecal contaminants and the degree of contamination can vary seasonally. To identify the seasonal characteristics of fecal indicators in the area of decentralized system, seasonal monitoring on the characteristics of fecal indicators (total coliforms, Escherichia coli, and F-specific coliphages) was performed along an open channel receiving johkasou effluents over 3-year period. Fecal indicators were detected higher than environmental quality standard throughout the season, particularly for total coliforms, and the concentrations of Escherichia coli downstream seemed to be higher than upstream in winter. The low water quality was recorded during cold-low flow season and the effluent of johkasou was an important factor reflecting water environment quality. In contrast with most physicochemical parameters, significant seasonal differences of total coliforms and Escherichia coli were not observed both in water and sediment. The principal component analysis results show that four dominant factors related to chemical contaminants, environmental conditions, byproducts, and fecal contaminants were responsible for the water quality data structure and significant seasonal differences were observed for chemical contaminants, environmental conditions, and byproducts, accounting for 59 % of the total variance in the data set. Seasonal maintenance of discharged water quality and controlling downstream network capacities are necessary to reduce the potential impact of johkasou effluents into local water environment.
  • 西田 渉, 鈴木 誠二, 上原 勇一, 重 龍樹, 野副 泰裕
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_341-III_347
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     浮遊懸濁物質(SS)は,表面に有機態物質や栄養塩類を吸着することから,水域の水質管理を適切に実施する上で,その時空間変化を明らかにすることは重要である.本研究では,諫早湾干拓調整池でのSSの短時間変化を把握することを目的として,まず,24時間連続観測を3回実施した.観測結果によると,SSは表層から中層にかけて鉛直方向にほぼ一様に分布しているが,水面上を吹く風の状態に応じて水中の懸濁量に変化を生じることが示唆された.また,風が静穏状態になる夜間においても比較的高濃度の状態が継続することが示された.つぎに,SSの空間変化を予測するための数値モデルを構築し,現地に適用した.得られた計算結果から,SSの分布は風による流動に影響されており,今回の計算条件下では調整池の南西沿岸で粒子の再懸濁によって濃度が高まること,北部水域の潮受堤付近において懸濁粒子は堆積傾向にあることが示された.
  • 永瀬 真豪, Narumol VONGTHANASUNTHORN, 三島 悠一郎, 荒木 宏之, 古賀 憲一
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_349-III_354
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     有明海における溶存酸素濃度(以下DO濃度)の季節的な低下現象は主として夏期に湾奥部で発生している.さらには赤潮発生や密度成層に伴っても短期的かつ局所的に発現することが指摘されている.有明海のDO濃度の低下現象に関する研究は調査期間や対象域が限定的であることから,DO濃度の変動機構を長期的かつ広域的な観点から解明するには,検討課題も残されているようである.本研究は,有限容積モデルを用いて有明海におけるDO濃度の長期的変動機構について現象解明を試みたものである.主な結論として,夏期における1970年代の低DO濃度のレベルは,直近10年間に較べても,より低い傾向であること,原因として,し尿の海洋投棄由来の藻類増殖の影響を指摘した.
  • 小野 文也, 山本 浩一, 対馬 幸太朗, 大石 正行, 神野 有生, 関根 雅彦
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_355-III_363
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     安価で測定時に電源を必要としないペーパーディスク型地下水流向流速計の現地適用を行った.本装置は紙の上に印刷された染料インクが紙の中を浸透する水の流れにより輸送された軌跡(テーリング)が表れることを利用したものである.市販のインクジェットプリントを用いて染料インクで円形のパターンを印刷した画用紙を透水性スポンジで挟み,地下水観測井のストレーナ付近に一定時間静置する.染料インクの流れた方向から流向とし,室内実験で作成した検定曲線から流速を推定した.平成25年9月19日に山口県山口市秋穂町地先に位置する海岸砂州で現地適用実験を行った.計測された地下水流向は現地の地下水位から推定した結果と概ね一致したが,潮位変動による急激な流向の変化を伴った場合,本装置では流速の計測は困難であった.
  • 大塚 佳臣, 荒巻 俊也
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_365-III_372
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     パーソナル・コンストラクト理論に基づき,水辺経験の履歴が都市河川に対する意識に与える影響について,アソシエーション分析を用いて確率論的に評価を行った.その結果,日常生活で河川と関わりの深い経験をすることで,80%以上の確率で普段目にする河川(近隣河川)に対して人より肯定的な意識を持つようになる一方で,幼少時代に学校から水辺で遊ぶことを制限され,かつ現在の近隣河川がきたないと感じる経験を経ると,65%以上の確率で近隣河川に対して人より否定的な意識をもつことが明らかになった.近隣河川への肯定的な意識を高める上では,水辺に親しむこと経験を増やすこと,否定的な意識を持たせないようにするためには,学校や保護者が子供の水辺遊びを制限せず見守る姿勢を持つことが必要である.
  • 横山 裕樹, 小山 陽介, 島田 洋子, 米田 稔, 松井 康人
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_373-III_380
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     本研究では,一般市場に出回っているナノマテリアル含有製品使用時の,製品使用者に対する曝露評価手法の開発を目的とした.評価手法には,実際の使用状況を再現するチャンバー法と,発生した粒子の捕集を行うための静電捕集器を作成し,組み合わせることで新たな曝露評価手法の開発を行った.チャンバー法に関して,HEPAフィルタによる換気でバックグラウンド値を抑えることが可能となり,またチャンバー内で発生させた粒子の凝集が発生しないことが確認できた.また静電捕集器について,2000Vの印加時に粒子の捕集効率が78%となった.
     この手法を用いて,抗菌スプレーの使用時を想定した曝露評価を行った.抗菌スプレー使用時の肺への沈着量は1.29×10-5mg/kg/dayと推定された.
  • 玉井 昌宏, 澤井 健志
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_381-III_388
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     WBGTは最も一般的に用いられている熱中症の危険度指標であり,運動時や日常生活の指針としても活用されている.ところが,この指標値の低下する夜間においても熱中症罹患者は発生することが知られており,WBGTだけで危険性を予測することは難しい.何らかの別の指標の開発し,さらに,それに基づく指針の策定が必要であると考える.本論では,地上風向の日変動パターンがWBGTに代わる指標として利用可能であるかどうかについて,大阪市消防局の熱中症患者の救急搬送データを用いて検討する.このパターンによってWBGT値の変動傾向に差異が生じることを示したうえで,暑熱環境の履歴を考慮できる新しい指標を提案する.この指標の月別パターン別の平均値が夜間熱中症罹患率と強い相関関係にあること,加えて,一日中西風が連吹するパターンWが夜間熱中症に対して最も危険な気象状況であることを示す.これらから,地上風向の日変動パターンが一つの夜間の熱中症危険度指標となり得ることを示す.
  • 加藤 伸悟, 増田 貴則
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_389-III_401
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     水界の食物網モデルには,栄養塩濃度の違い(栄養塩段階)によって異なる食物網動態の変化を表現しうることが求められる.また主要な分解者・基礎生産者である細菌は,食物網全体に影響をおよぼすものと考えられる.本研究では,観測事象による検証を踏まえた食物網モデル構築と,それを用いて細菌が食物網動態におよぼす影響を示すことを目的とした.本モデルは,栄養塩段階ごとの食物網動態を表現しうるものであることが示された.細菌はリン再生を変化させ,水界バイオマスに影響をおよぼした.また,細菌を出発点とする微生物食物連鎖は,下位生産者への捕食圧,上位捕食者へのエネルギー伝達の面で重要な役割を果たし,食物網動態の適切なモデル化に寄与している.細菌を出発点とするインパクトは食物網全体に影響を与えるものであることを示した.
  • 田中 周平, 辻 直亨, 水谷 沙織, 西川 博章, 藤井 滋穂
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_403-III_411
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震により北上川河口部のヨシ群落はその姿を大きく変えた.本研究では2012年9月,2013年9月に単独測位携帯型GPS植生調査を実施し,さらに航空画像解析,横断測量データ解析を行い,ヨシ群落の減少要因および回復要因の検討を行った.主な成果を以下に記す.1)河口から9.0km地点までに2008年9月には102.3ha(左岸66.4ha, 中州21.0ha, 右岸14.9ha)のヨシ群落が存在したが,2012年7月には33.6ha(左岸27.8ha, 中州4.7ha, 右岸1.1ha)に減少した.2)T.P. -60cmより低地盤高では大部分のヨシが消失した.3)地震2年半後にはヨシ群落面積が33.6haから36.6haへと回復傾向にあり,残存した群落の根圏から根茎を伸ばしていることが推察された.特にT.P. 16cm以上の地盤高において顕著であった.4)地震後,全111種の植物種を確認し 9.0kmより上流で要注意外来植物種が多く観察された.
  • 藤林 恵, 長田 祐輝, 相川 良雄, 西村 修
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_413-III_418
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     宮城県柴田郡の水田において,淡水産巻貝である絶滅危惧種のマルタニシを対象として炭素安定同位体比および脂肪酸を指標にして同化している餌源を殻高サイズごとに検証した.炭素安定同位体比の結果からマルタニシは主に底泥や殻付着藻類を同化していることが示された.また,殻高サイズが小さいほど懸濁物質の餌としての寄与が大きくなる傾向が示された.さらに,脂肪酸バイオマーカーによる解析の結果,マルタニシは殻高サイズにかかわらず,緑藻・藍藻に由来する脂肪酸を多く含んでおり,これらの藻類を主に摂食・同化しているものと考えられた.
  • 金本 裕史, Rina FEBRINA, 関根 雅彦, 神野 有生, 山本 浩一, 今井 剛, 樋口 隆哉
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_419-III_423
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     斜路に石を埋め込んだ椹野川水辺の小わざ魚道は、出版物を通じ高く評価されているが、その有効性や設計法は明らかではない。当該魚道でアユの放流実験を行い、有効性を検証すると同時に、流速と気泡に対する選好性を用いて当該魚道の遡上率の説明を試みた。その結果、当該魚道は平水時には遡上可能であり、斜路中央部で最も遡上しやすいことが明らかになった。また、実験区画内の全遡上経路の選好性による評価値の平均値は、30分間遡上率の大小を説明できた。複数の遡上経路を持つ魚道の遡上効率向上のためには、選好性による評価値の高い遡上経路を確保するだけでなく、評価値の低い遡上経路を排除することが必要であると考えられる。
  • 戸苅 丈仁, 池本 良子, 古 婷婷, 小野 紘, 日高 平, 津森 ジュン, 柳井 敦, 木野下 裕茂, 清水 ...
    2014 年 70 巻 7 号 p. III_425-III_432
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
     小規模な市町村で発生する様々な有機性廃棄物を混合処理し,バイオマス資源を地域内で循環させることを目的として,小規模下水処理場に容積1m3のメタン発酵装置を設置し,高濃度混合嫌気性消化実験を行った.オキシデーションディッチ法から発生する汚泥(OD汚泥)と廃油揚げ(生タイプと乾燥タイプ)を主体とし,し尿,浄化槽汚泥,接触酸化汚泥,および給食残渣からなる混合基質(TS8.8%)を連続投入した結果,平均有機物負荷2.5kg-VS/m3/dの条件下で,投入混合基質VS1kgあたり0.29Nm3のガスを安定的に回収でき,VS分解率は37%であった.また,消化汚泥の脱水性は使用したOD汚泥と同程度であり,肥効分析の結果から消化汚泥の肥料としての有効性が高いことが示された.
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