土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
70 巻 , 5 号
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地球環境研究論文集 第22巻
  • 長谷川 知子, 藤森 真一郎, 高橋 潔, 増井 利彦
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_1-I_12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     分野横断的な排出削減・影響評価を行うため,国際的に共通社会経済シナリオ(Shared Socioeconomic Pathways, SSP)が開発されている.SSPは気候変化に対する緩和策と適応策への困難性を軸に描かれた 5つのシナリオである.このうち3つのSSPについて,定性的な社会像に整合する飢餓リスクに関する将来シナリオを定量化し,飢餓リスクに影響をもたらす因子を明らかにした.この結果,1)将来の飢餓リスクは,将来の社会状況により大きく異なること,2)SSP間で飢餓リスクに大きな違いをもたらす因子は,人口,食料分配の公平性,平均一人一日当たりの食料消費であること,3)食料分配の公平性は,長期的な飢餓リスク評価において,飢餓リスクを左右する重要な因子の一つであることが明らかとなった.
  • 國光 洋二
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_13-I_19
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     日本の動学地域応用一般均衡モデルを用いて、将来の気候変動による稲作生産の変化が地域経済や日本経済に及ぶ影響を分析した。シミュレーション分析の結果から、将来の気候変動による気温上昇は、北東日本のコメ生産の増加、西日本の生産低下、日本全体では生産増加が予測された。生産量の増加は、米価と地代等の生産要素価格を低下させ、農業所得の減少につながる。一方、価格低下により消費者の厚生水準が増加し、他産業の生産向上によりGDPの増加効果が発現する。将来の気候変動は、日本のような中緯度地域の農業生産に有利に働くと言われているが、市場を介することにより、気候変動による生産増加が農業者の不利益となる場合があること、日本の北東と西で影響が異なることが示唆される。
  • 大田原 望海, 大西 暁生, 佐藤 嘉展, 佐尾 博志, 森杉 雅史
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_21-I_29
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     地球温暖化はもはや避けることのできない深刻な問題である.特に寒冷地域では将来の雪の状況(降雪,積雪,融雪)が現状と比べ大きく変化することが指摘されている.そこで本研究では,将来の地球温暖化に伴う積雪量変化がスキー場の営業に及ぼす影響の分析を試みた.まず,富山県にあるスキー場来客数と観測積雪量との関係を回帰分析によって推定する.次に,観測積雪量とGCM(Global Climate Model,全球気候モデル)並びにSVAT(Soil Vegetation Atmosphere Transfer,地表面熱収支モデル)によって推計された積雪量データを用いて,観測積雪量と整合性のとれた将来積雪量の予測データを作成した.さらに,現在の来客数と積雪量の関係ならびに将来の積雪量予測データ(2075~2099年)を用いることによって,将来の積雪量変化が来客数や営業利益に与える影響を算出した.その結果,来客数と営業利益は現状と比較して半分程度に減少することが分かった.最後に実際のスキー場経営者に,本研究で得られた結果を踏まえた温暖化適応策についてのアンケート調査を実施し,より適切な対応方法について考察した.
  • 森 龍太, 今井 海里, 大野 栄治, 森杉 雅史
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_31-I_41
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     日本では,1992年にUNESCOの世界遺産条約を締約した後,2013年末までに17件が世界遺産リストに登録されている.そのうち,白神山地はそこに広がるブナの原生的自然林およびそれに付随する公益的機能によって世界自然遺産に登録されているが,そのブナが温暖化の進行により衰退の危機に瀕している.もし世界遺産登録後のモニタリングにより顕著な普遍的価値を失っていると判断されると,世界遺産リストから抹消されることとなる.本研究では,温暖化による世界自然遺産への影響として白神山地の世界遺産登録抹消を想定し,それによる白神山地観光訪問への影響を分析した.その際,旅行費用法に基づく仮想行動法を用いて,白神山地のレクリエーション価値の変化を推計した.
  • 増井 利彦, 日比野 剛, 大城 賢
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_43-I_51
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     本研究では,日本を対象とした応用一般均衡モデルに簡易化した技術選択モデルのモジュールを組み込んで,2013年11月に報告された2020年を対象としたわが国の新しい温室効果ガス排出削減目標について評価した.その結果,短期的な費用対効果のみの視点から,省エネ技術の導入を検討することで,2020年のGDPへの影響は,なりゆきケースと比較して1%を超える可能性があるが,省エネ技術の導入を促進するための補助の導入や,対策導入の前倒し等を通じて,その影響を同1%以下に抑えることが可能となることを明らかにした.また,省エネ技術の導入量によっては,投資を維持することで,2020年のGDPがなりゆきケースよりも高くなることを示した.
  • 高 揚, 黄 佳虎, 松本 亨, 薛 咏海, 左 健
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_53-I_58
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     循環型社会への取り組みは,工場,産業団地,都市等,様々な階層で行われる必要があるが,近年「産業共生モデル」が注目されている.その理念に基づいて天津市において構想されている「裕川循環経済産業園」の産業共生モデルは,天津市とその周辺の建築廃棄物,下水処理場の汚泥及び火力発電所の石炭灰などの廃棄物を回収して,それぞれモルタル代替,コンクリート発泡剤,肥料代替として再利用する.また,各企業間に共生ネットワークを構築し,火力発電所の余熱を下水処理場と建材製造工場で,下水処理水を火力発電所の冷却水として利用することより,産業団地全体の資源・エネルギー消費の効率向上を図るものである.建築廃棄物,下水処理場からの汚泥の再利用はすでに実施されているが,火力発電所との連携(石炭灰,余熱利用)については計画中である.本研究では,天津市内に立地する裕川循環経済産業園を事例とし,産業共生モデルの環境負荷削減効果の定量評価を行った.天津市における現在の廃棄物処理の実態を参照ケースとし,産業共生モデルの環境負荷削減効果を明らかにした.手法としては,ライフサイクルアセスメント(LCA)を用いて,モデル構想全体のライフサイクルにおける温室効果ガス排出削減量を評価指標として評価した. 算定の結果はCO2排出量において産業共生ケースの方が環境負荷は小さいことがわかった.
  • 大西 暁生, 前崎 隆一
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_59-I_69
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     都市部では,郊外と比べ熱環境が悪化するヒートアイランド現象が問題となっている.その一つの要因として,都市内部の土地被覆が大きく関わっている.とりわけ,コンクリートやアスファルトといった人工的な被覆が増加することによって熱環境が悪化している.そのため本研究では,近年注目されているオブジェクト分類手法を用いて詳細土地被覆情報を取得するとともに,その精度の検証を現地の情報と照らし合わせて行い,従来のピクセルベースの分類手法によって得られた結果と比較することでその精度の高さを示す.さらに,熱環境が悪化する夏季の昼間を対象に,土地被覆割合が地表面温度に与える影響を通常の回帰分析(OLS: Ordinary Least Squares)とGWR(Geographically Weighted Regression,地理的加重回帰法)によって明らかにする.そしてここで得られた関係式を用いて地表面温度を推計することによって,その再現性をASTER衛星画像の地表面温度と比較することで検証する.
  • 三原 幸恵, 市川 陽一
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_71-I_77
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     滋賀県ではこれまで微小粒子状物質PM2.5のデータの公表が進んでおらず、実態が把握されていない。本研究では滋賀県瀬田丘陵において、PM2.5の連続測定を行い、金属と無機イオンの成分分析ならびに空気塊の輸送解析を行った。瀬田丘陵の高濃度の主な原因の1つは黄砂であるといえる。黄砂観測日のPM2.5からは黄砂の元素成分であるAl、Ca、Fe、Mg、Siが検出された。無機イオン分析結果から、年間を通じてNO3-よりもSO42-が卓越していること、SO42-は主に微小粒子側に(NH4)2SO4の形で存在することがわかった。成分分析と流跡線解析の結果から、黄砂観測日以外の高濃度日には中国や韓国からの越境汚染や、国内都市部の人為起源や火山からのSO2の影響が見られた。
  • 杉本 賢二, 奥岡 桂次郎, 谷川 寛樹
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_79-I_85
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     循環型社会の構築に向けて,人間の社会経済活動による資源投入から廃棄に至る物質利用を定量化する必要があり,そのためには利用可能性や精度にかかわらず,世界全体で詳細なスケールかつ普遍的で均質なデータを用いた推計手法が必要とされている.本研究では,人工衛星による観測データを用いたマテリアルストック・フロー分析の有効性を検証することを目的として,関東地方を対象に,建築物面積と合成開口レーダにより観測されたPALSARデータとの相関性を,メッシュサイズと土地利用土地被覆の組み合わせにより推定した.その結果,先行研究と同様に,PALSARデータの空間分解能である50mよりもメッシュサイズを大きくすることでセンサ固有のノイズが平均化され,強い相関を得られることが明らかとなった.また,森林地域を除外することにより,建物密集度合いが小さい栃木県や群馬県においても中程度の相関があることが示された.
  • 神谷 大介, 赤松 良久, 渡邊 学歩, 大槻 順朗, 二瓶 泰雄, 上鶴 翔悟
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_87-I_94
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     本論文では近年増加してきている局地的豪雨災害に対し,小規模集落での課題と適切な支援方策を検討するため,2013年に発生した山口・島根豪雨災害における萩市須佐川を対象として,調査・分析を行った.この結果,避難勧告の発令基準は雨量と水位によって規定されているが,実際には水位のみで判断されていた.雨量を基に判断すれば,1時間以上早く避難勧告が発令出来たことを示した.住民は周囲の状況を見て避難を判断しており,膝上以上の水位の中,危険な避難行動を行っていた.安全な避難を促すためには,事前のリスクコミュニケーションと雨量を基にした避難準備情報の発表が必要であることを示した.
  • 三澤 公希, 風間 聡, 鈴木 武, 有働 恵子, 手塚 翔也
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_95-I_100
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     洪水氾濫と高潮の水災害に注目し,複合水災害の被害を定量的に地図情報の形により示した.気候変動の影響を考慮し,現在気候,2050年気候,2100年気候の被害額を算出した.高潮と洪水氾濫は同地点で生起する可能性があるため,同年生起被害額と同日生起被害額を算出した.同日生起確率を気圧と降水量,潮位偏差の関係性をもとに算出した.気圧の再現確率における降水量と潮位偏差を二次元不定流モデルに代入し,同日生起被害額を算出した.同日生起被害額と同年生起被害額を比較し,被害額の大きい方を被害額算出手法として採用した.三種類の全球気候モデル(GCM)出力値を入力し,被害額を推定した.現在気候における複合被害額は7800億円となり,水害統計被害額の約1.4倍となった.2050年,2100年頃の4災害による複合災害年期待被害額は,気候シナリオによって1.1兆円から1.2兆円,1.2兆円から1.4兆円となった.
  • 有働 恵子, 武田 百合子
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_101-I_110
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     本研究では,海面上昇による砂浜消失の予測手法がその結果に及ぼす影響について,予測時に使用する砂浜データの違いや予測方法による不確実性に着目して評価するとともに,予測された全国の砂浜消失率を既存の予測結果と比較した.全国の砂浜消失率は,IPCC第5次評価報告書の海面上昇量予測結果の下限値0.26mであっても46%で,上限値0.82mでは91%に達すると予測され,既存の予測結果と概ね一致した.本研究で着目した上記の不確実性を考慮しても,気候変動による大規模な砂浜消失は避けられず,現実的な適応策を考えていく必要性を示唆した.
  • 眞﨑 良光, 花崎 直太, 高橋 潔, 肱岡 靖明
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_111-I_120
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     4種類の異なる温室効果ガス排出シナリオに基づき,全球規模での理論包蔵水力とその将来変化を推定した.河川流量は,5つの全球気候モデルからバイアス補正した気象データセットを入力気象データとし,全球水文モデルH08を用いて計算した.1960~1989年における全球の理論包蔵水力は43,890TWhであり,将来,温暖化が進む気候シナリオほど大きな増加傾向を示した.また,流況曲線に基づく水力発電所の設計仕様の仮定の下で,河川流量の季節変動から水力発電量を推定した.この水力発電量も,将来増加傾向を示したが,その増加量は理論包蔵水力に比べると小さかった.流量設備利用率の将来変化の地理的分布は,概ね理論包蔵水力のそれと一致するが,河水利用率の将来変化の地理的分布は,理論包蔵水力のそれとは大きく異なる.流量設備利用率と河水利用率の将来変化傾向から世界各地域を4つに類型化し,それぞれの類型化した地域に特徴的な,将来の気候変動による水資源量と発電量への影響を論じた.
  • 中田 沙羅, 松本 健一
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_121-I_128
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     本研究では,パネルデータ分析を用いて,住宅用太陽光発電(PV)システムに対する補助金制度のPVシステム導入促進効果を実証分析した.分析対象は47都道府県・2002~2011年度であり,これには補助金の非実施期間が含まれている.分析の結果,補助金制度はPVシステムの導入に対して統計的に有意な効果があることが示された.その一方で,住宅用PVシステムの導入にはシステム平均価格の直接的な低下による効果が最も大きく,補助金制度よりも寄与度が大きいことが同時に明らかとなった.両者が同じユーザ支払価格の低下効果をもたらすにもかかわらずこのような結果となった要因として,ユーザが補助金を受けるために要する手続きの手間や時間が影響しているものと考えられる.
  • 長田 健吾, 天羽 貴大, 大森 孝, 尾名 利幸, 遠野 竜翁, 川田 健人
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_129-I_135
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     山間地集落では,地震や大雨などの災害により外部からのライフラインが絶たれた場合,長期に渡り困難な避難生活を強いられることが想定される.この状況を少しでも緩和するためには,住民が避難する施設に対し,その近郊から必要最低限の非常用電力を供給できる仕組みを構築する必要がある.本研究では,山間地に多く設置されている砂防ダムの流砂エネルギーを活用するために,流砂も発電に利用できる適切な水車形状と流水・流砂を制御する導水管構造を検討し,堆積防止用スロープの効果も明らかにした.また,適切に流砂をコントロールすることが出来れば,水車の回転に大きな力を与え,発電に有効活用できることを明らかにした.
  • 藤森 真一郎, 甲斐沼 美紀子, 増井 利彦, 長谷川 知子, 戴 瀚程
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_137-I_146
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     本論文はエネルギーサービス需要を低減する施策の価値を温室効果ガス排出削減費用の低減量で計測した.解析には世界応用一般均衡モデルを用い,エネルギーサービス需要低減がないケースとあるケースについて,気候緩和策を実施した時のGDP損失を比較し,エネルギーサービス需要低減の価値とした.その結果,以下の事が明らかになった.第一に,民生,交通,産業のエネルギーサービス需要を25%低減することは,450ppm,550ppm安定化に相当する気候緩和策を取る場合,2050年でGDPの1.0%,0.5%の価値があった.第二に,部門別では民生部門のエネルギーサービス需要低減効果が大きかった.これは民生部門の排出量が大きいこと,および家計消費支出がGDPに対して直接的な影響力を持つことが要因と考えられた.
  • 野田 圭祐, 盛岡 通, 尾﨑 平
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_147-I_156
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     家庭の電力需要を再現するモデルを,都市部で得られる汎用性の高い調査の結果から構築することを試みた.それは4つの調査を利用して電力を消費する行動を再現し,さらに行動が電気機器を使うことを経て電力消費につながるモデルである.すなわち,外出と帰宅の時刻を示す交通行動調査,生活時間の配分を示す社会生活基本調査,家計支出を示す家計調査,および人口や世帯の町丁目別の量と空間分布を示す国勢調査である.地区や街区の典型的な行動はそれに対応した時間別エネルギ消費のパターンを伴う.言い換えると,多様な生活行動が展開されている街区や地区では,異なった電力消費パターンを伴う形で需要が生まれ運用されるので,デマンド・レスポンスを含むエネルギマネジメントによってピーク電力を削減することを検討し支援する需要モデルとして活用しうる.
  • 長谷川 正利, 大西 暁生, 戸川 卓哉, 奥岡 桂次郎, 谷川 寛樹
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_157-I_165
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     持続的な発展を目指して行くうえで地球温暖化問題は大きな障壁となる.この問題を解決するためには低炭素社会への転換が必要である.都市構造物の環境負荷を検討するのであれば,その対策による効果を分かりやすくするために,各段階別でライフサイクルを考慮した分析を行うことが望ましい.そこで,本研究では日本全国のCO2排出量の将来推計をシナリオ別で行った.そして,太陽光発電や都市の集約化などの省エネ対策がCO2排出量に与える影響の比較を行った.
     この結果,現状維持型のシナリオでは2045~2049年の間のCO2排出量が1,985百万トン/5年となった.また,省エネ対策を導入した際のCO2排出量は1,250百万トン/5年となり,現状維持型のシナリオと比較して約4割のCO2排出量が削減された.その要因として,太陽光発電の導入が深く影響していることが示された.
  • 川越 清樹, 江坂 悠里, 伊藤 圭祐, 肱岡 靖明
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_167-I_175
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     温暖化による土砂災害影響と適応策を見積もるため,日本列島を対象に気候モデル(MIROC5.0, MRIC GCM3, GFDL CM3.0, HadGEM2-ES;4モデル),およびRCPシナリオ(RCP2.6, RCP4.5, RCP8.5;3シナリオ)を用いて2050年期,2100年期における土砂災害の一般資産被害額予測と適応策検討を試みた.一般資産被害額予測の結果として,RCPシナリオに関わらず2050年期の一般資産被害額は現在比で約15億から25億円増となることと,2100年期はRCP8.5シナリオのみ2050年期比で約5億円増(現在比約20億円から30億円増)と緩やかに被害額が増加する結果を得た.また,適応策検討の結果として,現在で明らかにされている土砂災害危険箇所に対策を講ずれば相応の抑制効果が認められ,現在比で上限20億増以内の一般資産被害額でおさめることのできる可能性が求められた.しかし,土砂災害危険箇所に強化策を講じても現在よりも被害額が大きくなることには留意しなければならないため,温暖化により見込まれる被害額の増加を解消するには土砂災害危険箇所以外の領域も更に効率的に対策整備することが必要である.
  • 荒木 功平, 鈴木 雄祐, 後藤 聡
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_177-I_182
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     2013年3月,富士山麓から5合目に続く山梨県営林道滝沢線(以下,滝沢林道)の標高1950mの地点でアスファルト舗装の路面が約300mにわたって大きく陥没しているのが発見され,メディア等で大きく取り上げられた.一方,2013年6月22日,富士山は関連する文化財群とともに「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の名で世界文化遺産に登録されている.滝沢林道陥没の要因を明らかにし,今後の維持管理に知見を加えることが求められている.本研究では滝沢林道陥没を発生させた要因について,気象や現地調査を基に地形の影響を考察している.その結果,2013年3月18日の夕方から19日未明にかけての降雨と同時に起こった急激な気温上昇,陥没地点上部の沢からの水の供給が要因に考えられることを述べている.
  • 井上 尚達, 風間 聡, 小森 大輔
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_183-I_188
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     タイ全土に適用可能な斜面崩壊危険度の将来予測手法を提案した.将来の降雨極値の予測値はCMIP5の3つの気候モデル(MIROC5,MRI-CGCM3,GFDL-ESM2G)と4つのRCPシナリオ(RCP2.6, RCP4.5, RCP6.0, RCP8.5)から将来のトレンドを算出し,月降雨量と日降雨極値との間に線形関係があるとして将来の降雨極値を予測した.緯度経度0.05度格子により示された斜面崩壊危険度の将来予測値はGCM,RCPシナリオ,解析期間(現在,近未来,中未来,遠未来)毎に地図化した.MIROC5のRCP8.5シナリオの中未来において降雨極値は現在気候と比べ最大18%の増加を示した.全てのモデル,解析期間,将来気候で発生確率70%以上が示された危険度の高い地域は,北部山岳域,中西部山岳域,マレー半島西部,マレー半島中央部である.
  • 長谷川 知子, 大沢 遼平, 五味 馨, 松岡 譲
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_189-I_199
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     インドネシア政府はコペンハーゲン合意に対する温室効果ガス排出削減目標として,2020年までに対策を取らない場合の排出量から自国による取組として26%削減とする目標を提出した.本論文では,農業・森林・土地利用変化部門における温室効果ガスの排出削減評価モデルを用いて,上記の目標の達成の可能性を評価した.さらに,達成可能な場合,排出緩和のための具体案と費用を明らかにした.その結果,森林・土地利用・農業部門における上記の目標は達成可能であること,そのときの2020年の削減費用は,森林・土地利用部門で147百万ドル/年,農業で13.9億ドル/年となることが明らかになった.
  • 大沢 遼平, 五味 馨, 松岡 譲
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_201-I_209
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     今後,人口増加と経済発展が見込まれる東南アジアの新興国のうち,特にインドネシアにおいてはその人口規模の大きさと森林面積の広さ,バイオ燃料の生産ポテンシャルを含む農業生産の高さなどから将来のGHG排出量増加とその抑制とが世界的な温暖化緩和において重要になると考えられている.このような人口・経済ともに成長中で今後の食料とエネルギー需要の増加が見込まれ,かつ,農林業・土地利用部門からのGHG排出量の割合が比較的高い地域で低炭素社会を構築するため,本研究では社会経済発展の想定を取り込み,エネルギー・農業・土地利用の各部門を統合的に考慮した低炭素社会シナリオの構築手法を開発した.これを2020年及び2050年のインドネシアに適用し,低炭素対策を導入しないBaU及び低炭素対策の違いにより三通りの対策(CM)シナリオを構築し,総合的な低炭素社会シナリオの中で、燃料作物栽培のための土地利用転換による排出も含むバイオ燃料の利用による正味の効果を考慮する例を示した.
  • 呉 修一, Muhammad FARID, 福谷 陽, Abdul MUHARI, Jeremy D. BRICKER, 有働 恵子, 真野 ...
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_211-I_217
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     近年インドネシア・ジャカルタでは,1996年,2002年,2007年,2013年および2014年1月に大規模な洪水氾濫が発生し,多くの死者,避難者や多大な経済的損失が生じている.このようなジャカルタ洪水は,地球温暖化や流域都市化等の影響で今後も規模や頻度の増加が懸念されている.本論文では,インドネシア・ジャカルタ洪水を引き起こす様々な人為・社会的問題を記述・整理するとともに,2013年1月に発生したジャカルタのチリウン川の洪水に対して降雨流出・氾濫解析モデルの適用を行った.解析結果より,2013年1月チリウン川の洪水氾濫を本論文で使用したモデルは再現出来る事を示すとともに,洪水氾濫はチリウン川下流の洪水流下能力の低い区間で生じていることを明らかにした.
  • 吉澤 一樹, 朝岡 良浩, Pablo FUCHS, 風間 聡
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_219-I_225
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     本研究ではボリビア多民族国のラパス首都圏の主要な水源となっているHuayna Potosi West氷河を対象として複数の気温上昇シナリオに対する今後30年間の氷河変動と融解量をシミュレーションした.氷河を標高50m毎に分割して質量収支の計算を行った.初期条件となる氷河の断面形状と氷厚は地形データから推定した.モデル計算の結果,現状の気候が続くと仮定する場合,8年後にほぼ平衡状態に達し,30年後の氷河面積は4%,総融解量は52%減少する.また,気候変動に伴い0.024~0.044℃/年の気温上昇が続くと仮定する場合も氷河は消失せず,30年後の氷河面積は21~44%の減少,総融解量は12%の増加から39%の減少と推定された.現在気候の平衡線高度付近における氷河面積が大きいため,平衡線高度の増加に伴い気温上昇に対する30年間の融解量の不確実性が大きいことも示された.
  • Evelin HUMEREZ, Makoto UMEDA
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_227-I_233
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     The objective of this research is to study the relationships between the biomass of the submerged aquatic vegetation, the nutrients, and the primary production in the Condoriri River. Field measurements were conducted to determine variations of physicochemical parameters, biomass, and nutrients in water and aquatic plants during dry and wet seasons. Macrophyte biomass had correlations of negative gradients with electric conductivity (EC) (R2=0.33, P<0.03) and phosphorus content (R2=0.47, P<0.01). Alkaline pH>7.5 and EC (132.5 μS·cm-1) affected the growth of the aquatic plants. The nutrient loads during the wet season were related to high macrophyte biomass. Submerged aquatic vegetation influenced the river metabolism in both seasons. Primary production and macrophyte biomass exhibited a good agreement (R2=0.79).
  • 野村 一至, 渡辺 一也
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_235-I_240
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     香川県では流路長が短く,急勾配な2級河川がほとんどである.そのため,洪水が発生すると上流域の河床は洗掘され,流出した土砂が下流域で堆積し氾濫の危険性が高い状況となる.このような事態を回避し,河道を適切に管理するためには洪水時の河川の特性を把握することが重要である.しかし,県や市町村が管理している中小河川は測量データ等が少なく,効率的な河川維持管理が行えていない.そこで,簡易な測量と数値計算より河道特性を推定することができれは今後の河川管理に活用できると考えられる.本研究では,河道特性を把握するための河川横断測量を行った.また,過去に発生した洪水を再現しその精度を検証するため,一次元及び二次元モデルを用いた洪水流計算を行った.
  • Ya WANG, Wei-hua FANG, Ying LI, Tadashi YAMADA
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_241-I_248
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     Tropical Cyclone (TC) activity is an important feature of China's climate that can have important impacts on precipitation and cause extensive property damage. In particular, precipitation from TCs contributes a significant portion of overall precipitation in China. This study deals with TCs that influenced China and focus on TC precipitation's temporal and spatial regularity analysis. Surface TC precipitation datasets were generated by interpolation of precipitation contour maps based on station-observed precipitation from Typhoon Yearbook1) compiled by Shanghai Typhoon Institute of China Meteorological Administration (CMA_STI), and the interpolation results were verified by satellite-based derived precipitation data products from Fengyun(FY-2C)2) geostationary Meteorological Satellite. Based on the interpolated precipitation data (STI), two aspects were found in this research. Firstly, the TC precipitation gradually decreased from the southeast to the northwest of China, and the main area of TC precipitation concentrated in the southeast of China, including Hainan, Fujian, Zhejiang and Guangdong, while the most significant TC precipitation fluctuations arise in Shanxi, Henan and Hebei provinces. Secondly, there is no trend that was detected to pass 95% confidence level in annual TC precipitation and maximum TC precipitation from 1951 to 2008 in China, but a cycle of 5.43 years based on 95% confidence level was detected to be existing for annual maximum TC precipitation in China.
  • 松林 由里子, 渡辺 一也, 川越 清樹
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_249-I_256
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     近年増加する集中豪雨が社会基盤施設に与える影響と,今後の水管理および設計基準強化への提案を示すため,2013年8月9日に秋田,岩手県で発生した集中豪雨による鉄道盛土の流出と流木による河道閉塞の被害調査解析結果を示し,今後必要となる対策の検討を試みた.これらの被災事例は,小規模河川に接した保全重要度の高い社会基盤施設において,河積不足に関わり,被災地域の地形や土地被覆,河川上流域の土砂,斜面,樹林などの特徴によって複合的に生じた被害であり,小規模河川の整備優先度や河川改修率の低さに影響を受けていることが明らかとなった.また,今後の被害低減のためには,施設周辺の複合的要素に関する豪雨時の実績データの蓄積と,解析による知見の整備が必要であるという結論を得た.
  • 成 岱蔚, 山田 正
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_257-I_262
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     MPS(Moving Particle Semi-implicit)粒子法はラグランジュ解析手法であり,格子法と違い格子を設ける必要がない.それにより,自由表面流れや,混相流などの境界の大変形を伴う解析には有効である.しかし,MPS粒子法では粒子がお互いに任意に相対位置を変えることができるため,格子法と異なり粒子の空間分布に不均一性が生じ,圧力はが数値擾乱発生してしまう問題がある.粒子法の実用化に向けては,この数値擾乱を抑制することが,最も重要な課題の一つである.
     数値擾乱を抑制するために,様々な改良法が提案されている.これまでの改良法では,それぞれ抑制効果があるが,数値擾乱を根本的に消すことはできない.その原因はMPS粒子法の微分モデルが粒子の空間分布の不均一性を表現できないことであると考えられる.そのため玉井,越塚らは粒子の空間配置を正しく考慮できる高次精度微分モデルを提案している.本研究は高次精度微分モデルに適用するノイマン境界条件の与え方を提案し,その効果について考察する.
  • 竹内 大輝, 山田 朋人, Murad Ahmed Farukh
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_263-I_269
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     2010年夏, パキスタンにて過去100年間で最も激しい豪雨が発生した.パキスタンを襲った同年の豪雨はロシア北西部におけるブロッキング現象とインドモンスーンの蛇行が主な原因と指摘されている.本研究ではモンスーンの蛇行パターンの分類を行い,パターンごとの大規模気象場の特徴を調べた.その結果,パキスタンに洪水をもたらしやすいモンスーンの蛇行パターンが存在し,その場合では中東全域における海面気圧の負の平年偏差及びロシア北西部広域での正の平年偏差が見られた.1982年から2012年の31年間では,パキスタン豪雨時に発生していたブロッキングの発生回数は6月から8月にかけて減少する一方,パキスタンに豪雨をもたらしやすいモンスーンの蛇行発生回数は増加する傾向にあった.
  • 糠澤 桂, 新井 涼允, 風間 聡, 竹門 康弘
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_271-I_276
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     地球温暖化に伴う底生動物群集の将来変化を推定するために,源流域において底生動物群集の採集と水温の測定を行った.対象地点を,類似した水深,集水面積を有し,人為影響の限りなく小さい100~850mの標高帯に位置する源流域に設定した.まず,8種類の全球気候モデル(GCM)から得た将来気温(近未来,遠未来)を入力値として,既存の分布型流出・水温モデルにより源流域の水温を計算した.この水温を,源流域において得られた生物・水温データに基づいて構築した単回帰モデルの説明変数として,将来の底生動物群集の個体数密度を推定した.結果として,GCM間の出力値の相違に起因する不確実性を考慮すると,近未来における放射強制力の低いシナリオにおいてカワゲラ目の個体数密度は平均にして64%減少し,高いシナリオにおいては消失する可能性が示された.
  • 中村 倫明, 川永 充人, 鈴木 真帆, 三浦 正一, 和田 明
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_277-I_283
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     本文は東京湾を対象として,河川から負荷される化学物質(ダイオキシン類)について,3つの式(溶存態,沈降速度を持つ小粒子及び大粒子吸着態)を組み立て,それぞれの間で吸着・脱着,無機化やスキャベンジングの作用を考慮して海水の濃度解析手法の展開を図った.
     海底堆積層については,境界層(海水層と粒子層),生物擾乱層,拡散層の3層に分けて,海水中と海底境界層の物質のカップリングによる解析を実施した.
     モデルにより海底堆積層の濃度分布を算出し,既往の現地観測結果との比較によりモデルの適応性を検討した.その結果,濃度解析による拡散分布は,公共用水域の観測値と類似した傾向を示した.
     計算結果によるマスバランスは,流入負荷量の約80%が海底へ堆積し,湾外へ約16%流出した.このことから,東京湾におけるダイオキシン類は大半が海底に堆積していることが示唆された.
  • 宮良 工, 神谷 大介, 赤松 良久, 乾 隆帝, 上鶴 翔悟
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_285-I_291
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     沖縄島において河川構造の改善による自然再生事業は,河川・汽水域生態系の再生のために不可欠であるが,実施に当たっては全体の優先順位を明らかにして計画を立案する必要がある.このため,沖縄島全二級河川に主要な普通河川を加えた全61河川において水質汚濁の指標としてのDO,濁度,T-N,T-Pの現地調査を実施し,この結果と既往の河川魚生息状況調査結果,地域の環境再生活動創始ポテンシャルの評価結果を用いて,自然再生計画のための河川の分類・評価を行った.この結果,沖縄島中部地域の河川群で自然再生に関する優先順位が高くなることが明らかとなった.
  • 田中 健二, 吉田 貢士, 前田 滋哉, 黒田 久雄
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_293-I_298
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
     メコン川流域では,人口増加と急激な開発に伴う人間活動の様々な変化から,将来的な水質汚濁問題が懸念されている.そこで本研究では,メコン川本流・支流の水質環境を空間的に評価することを目的とし,水質観測データと空間統計データから栄養塩排出原単位を推定する線形モデルおよび河川流量を出力する水循環モデルを構築した.また,それらの出力を用いてメコン川の栄養塩濃度を推定した.栄養塩排出原単位については,メコン川流域の汚濁排水処理形態や営農状態などの特徴を表した値が推定された.また,河川流量の計算値は観測値の流況を良好に再現し,年平均の栄養塩濃度も実測値とよく一致した.
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