土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
71 巻 , 6 号
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環境システム研究論文集 第43巻
  • HAK Mao, Yuzuru MATSUOKA
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_1-II_12
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     Cambodia fully supports the global efforts to reduce Greenhouse Gas (GHG) emissions, although the country's emissions are regionally and globally insignificant. The country has counted the Low-Carbon Development as a win-win approach to help Cambodia avoid pervasive economic growth models by increasing energy efficiency, promoting renewable energy, and reducing environmental pollution and GHG emissions, while sustaining social and economic development. This study proposed a scenario for a quantitative and systematic design of low-carbon development in Cambodia towards 2030 with a focus on energy policy. The Extended Snapshot Tool (ExSS) was used to project quantitative future activities and CO2 emissions and reduction potentials, and to identify low-carbon measures to be implemented to achieve the above-mentioned goal. The results of this study yield that CO2 emissions are projected to increase to about 23.28MtCO2/year (5.5 times) in 2030BaU compared to around 4.22MtCO2/year in 2010. The effective implementations of low carbon measures, CO2 emissions are expected to reduce by about 12.83MtCO2/year (about 55.10%) in 2030CM. Given the limited research in Cambodia, the results of this study are expected to be used to formulate a low-carbon development policy of this country.
  • 岩見 麻子, 宮下 知己, 井手 慎司
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_13-II_21
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本研究では,国家戦略室が2012年に実施した「エネルギー・環境に関する選択肢に対する御意見の募集」を事例として,大規模パブリックコメントに提出された意見から主要な論点を把握し,論点間の関係性を可視化するための分析手法としてテキストマイニングの有用性を検討するとともに,問題点や課題を明らかにすることを試みた.その結果,提出された意見から「エネルギー政策の転換」や「放射性廃棄物の処理」など17の論点を特定,論点間の関係性を可視化することができ,手法として有用である可能性を示すことができた.また,極端に類似した大量な意見群がある可能性や,比較的言及の少ない論点を特定できる対象語を客観的に抽出する手法を検討する必要性などの課題も明らかにすることができた.
  • 長谷川 知子, 藤森 真一郎, 横畠 徳太, 高橋 潔, 増井 利彦
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_23-II_34
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     健康への影響は気候変化による大きな影響の一つである.本研究では,気候変化がもたらす低栄養に起因する健康負荷を経済的に評価することを目的とする.低栄養に起因する5歳未満の低体重により発症する9種の健康負荷を対象とした.次の2つの経済指標を用いて負荷の大きさを評価した.第一に,疾病による医療サービス費用の増加と死亡により失われる人口および労働力の減少によってもたらされるGDPおよび消費の損失.第二に,失われる生命の経済的価値である.影響評価には世界経済応用一般均衡モデルを用いた.複数の作物モデルと気候モデルによって推計された作物収量を用いることでこれらによる不確実性幅を考慮した.次の結果が得られた.i) 気候変化による低栄養起因の死亡・疾病がもたらす医療費および人口,労働人口の変化を通じたGDPおよび消費への影響は,地域的ばらつきがあるものの,微小である.一方,ii) 低栄養により失われる生命の経済価値は2050年時点で世界全体では-0.4~-+ 0.1%,地域によって-6.0~+ 1.0% のGDP損失に相当する.既往研究で考慮されていなかった低栄養起因の死亡による影響が大きいことが明らかとなった.
  • 夏 吾太, 田中 勝也
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_35-II_42
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,中国の退耕還林政策を事例として,生態系サービス支払(PES)におけるスリップ効果(PESへの参加面積の増加により新たな農地開墾が生じてしまう現象)の存在について統計的に検証した.同政策が開始された2000年から2012年までの期間について,農業生産の比較的盛んな24省・直轄市・自治区のパネルデータを構築し,退耕還林政策の参加面積や経済的・地理的諸要因が,新規開墾面積に与える影響を定量的に分析した.分析に際しては省レベル・年レベルの観測されない異質性を考慮するため,Pooled OLSに加え固定効果モデルにより推計をおこなった.
     条件の異なる複数のモデルで分析した結果,退耕還林政策の参加面積は新規開墾面積に対して一貫して正で有意な影響を与えており,スリップ効果の存在が示された.ただし,海外の先行研究と比較してもスリップ効果は小さく,その影響は限定的であることが示された.とはいえスリップ効果による新規開墾面積は全体の約5%を占めると考えられ,政策の運用に際しては同効果の抑制に十分留意する必要があるといえる.
  • 堀川 拳, 古市 徹, 翁 御棋, 石井 一英, 藤山 淳史
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_43-II_52
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     近年,エネルギーの安定供給の観点から,電力や熱として利活用可能な水素が注目されている.特に,水素を車の燃料として利用できるFCV(燃料電池自動車:Fuel Cell Vehicle)では,災害時には地域へ電力を供給することも可能であるという特性を有していることから,FCVへ水素を供給する水素ステーションの普及が求められている.本研究では,下水処理施設に水素ステーションを導入した場合を想定し,バイオガスから水素を製造した際のエネルギー供給可能量を推計し,事業性を試算した.その結果,対象とした下水処理施設で水素を供給した場合,年間約2,100台のFCVに水素を供給でき,災害時には地域の約1.11日分の電力需要を賄うことができることが示唆されたが,水素ステーションの普及が発展途上であるため,事業性の確保については難しいことが示された.
  • 尾﨑 平, 野田 圭祐, 盛岡 通
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_53-II_64
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     長寿社会のまちづくりを進めるにあたり都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)の市街地集約の機能として,高齢者向け集合住宅や介護老人福祉施設等を位置づける動きが生まれている.これらの施設は都市内における新たなエネルギー需要であるためスマートなエネルギーマネジメントが求められる.本研究では既に構築した家庭およびその集合体である街区・街区群の電力需要を再現するモデルを基に,家庭の熱需要と福祉施設の電力・熱(エネルギー)需要を再現するモデルを構築した.神戸市東灘区を対象に集合住宅と福祉施設の隣接立地による電力の一括受電,福祉施設にコージェネレーションを導入し,自家消費および集合住宅に電力融通することで,最大電力消費と1次エネルギー消費量を共に15~25%程度削減できる可能性があることを示した.また,2030年に向けて高齢化,世帯分離に伴うエネルギー需要の増大を,集住化の促進により2010年と同程度以下にできることを示した.
  • 上野 裕介, 長谷川 啓一, 大城 温, 神田 真由美, 井上 隆司, 栗原 正夫
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_65-II_72
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     開発を伴う様々な事業において,しばしば猛禽類に対する環境保全措置が求められる.一方,それら保全措置の効果は,十分に検証されていない.本研究では,平成21年~24年度に全国の国直轄道路事業において実施された環境保全措置事例を網羅的に収集し,全国のオオタカ,サシバ,クマタカの計787巣の繁殖成否(雛の巣立ち有無)を基に,メタ解析による効果検証を行った.その結果,いずれの種も道路工事の有無(工事前/着工後)で繁殖成功率に統計的に有意な差はなく,着工後の繁殖成功率も事業箇所と巣の距離が近いほど低下する傾向もなかった.また保全措置は,オオタカの繁殖成功率を有意に向上させていた.したがって猛禽類に対する環境保全措置は,既に工事前と同水準まで繁殖成功率を高めており,今後は保全技術の効率化が重要だろう.
  • 越川 義功, 高山 晴夫, 竹内 康秀, 真崎 達也, 大城戸 博文, 藤井 暁彦, 林 健二, 渡邉 洋
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_73-II_81
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     ダム建設工事では,工事区域での樹木伐採や剥土に伴い,昆虫類の生息場が短期間で広範囲に減少する.施工者による自然環境保全の取り組みのひとつとして,伐採材を活用した木柵(エコスタック)設置により,昆虫類の代替生息場の確保を実施した.設置からわずか1カ月後の調査において,木材に依存するカミキリムシ類、オサムシ類等をはじめとした56種の昆虫類がエコスタックで確認された.その後も季節による変動はあるものの,多くの昆虫類がエコスタックを利用しており,伐採材を利用したエコスタック設置は昆虫類の代替生息場の提供として有効に機能することが確認できた.
  • 立花 潤三, 田中 渉太
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_83-II_90
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     電気自動車(EV)等の次世代自動車の将来普及状況を定量的に分析するには,その自動車購入行動を正しく解析する必要がある.本研究の主目的はEVの航続距離への不安の有無が自動車購入行動にどう影響するのかを定量的に解析することである.具体的には,EV用急速充電スポットの整備状況及び自動車購入用途により4つの場面想定を行い,それぞれアンケート調査及びコンジョイント分析を通して自動車購入における各要因(初期費用,維持費用,車種,クラス)のユーティリティスコア及び平均相対重要度を算出し比較検討を行った.その結果,回答者の所得階層を考慮しない分析では,充電スポットが整備されていない場合,ガソリン自動車(GV)は自動車購入においてプラス要因,EVはマイナス要因となり,充電スポットが整備されている場合はEVがプラス要因,GVがマイナス要因となった.また,充電スポットが整備された場合の方が車種の平均相対重要度が低下すること等が明らかとなった.所得階層別の分析では,充電スポットが整備されていない場合では高所得者の方が車種の平均相対重要度が高く,充電スポットが整備された場合では低所得者の方が高くなった.また,低所得者の方が初期・維持費用を重要視していることなどがわかった.
  • 栗島 英明, 佐藤 峻, 倉阪 秀史, 松橋 啓介
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_91-II_98
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     地域再生の鍵として,ソーシャル・キャピタル(SC)が注目されている.しかしながら,地域のSCと個人のSCとを混同している事例も少なくない.そこで本稿では,地域のSCと個人のSCの測定方法の違いを整理した上で,Resource generatorを用いて地域住民のSCの測定を行い,住民の地域評価や主観的な幸福度などとの関連について共分散構造分析を用いて分析した.測定の結果,情報提供や共有,特殊技能を必要としない物理的なサポートについては高い獲得率が示される一方で,特殊技術を必要とする物理的サポートや専門的な知識・技術へのアクセスについては獲得率が低かった.また,性別や年齢による獲得率の差が見られた.さらに,共分散構造分析により,リソースの獲得数の背景にあるSCは,個人の主観的な幸福度を高めるほか,地域への愛着を高め,それが定住意思や地域への高評価につながっていることが示された.
  • 白井 浩介, 栗栖 聖, 花木 啓祐
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_99-II_107
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     個人の多様性による食品に対する不安感の大きさの違いを検討するために,個人属性,生活習慣,パーソナリティ(個人特性)に着目し,不安感に影響を与える因子を評価した.食品の種類による違いについて検討するため,6産地4品目の全24種類を対象に,アンケート調査を行ない,16,650の回答を得た.また,個人特性を把握するため14の下位尺度を基本とする60問の設問を設けた.不安感は,中国産の食品で最も高く,途上国産,先進国産,福島県産と続いた.個人特性については9つの因子が抽出された.これらの変数を組み込んだ重回帰分析結果では,品目別では大きな差は見られず,産地により違いが見られた.全ての産地で最も標準偏回帰係数の大きかった変数は「産地確認の有無」であり,この他に,福島県産食品では「一般的信頼性」,中国産食品では「規律主義」といった個人特性の影響が大きいことが明らかとなった.
  • 大塚 佳臣, 中谷 隼, 荒巻 俊也
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_109-II_116
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     荒川流域をモデルとして,流域圏全体を対象とした水利用システムに対する環境・社会・経済面にわたる様々な属性を網羅的に扱い,それらに対する住民の個人別選好をACBC(Adaptive Choice Based Conjoint Analysis)を用いて計測した上で,その多様性を評価するのと同時に,それらの選好を持つようになった背景について考察を行なった.その結果,属性間のバランス(41%),事業コスト(23%),地盤沈下(24%),水道水安全性(12%)をそれぞれ重視する4つの住民グループの存在が認められた.これらのグループは,性別,年齢層,居住地との関連はなく,環境問題全般,身近な水辺,水道水に関する意識といった心理的側面の特性を背景にそれぞれの選好を形成していることが明らかになった.
  • 藤森 琢, 大石 哲也, 小野田 幸生, 尾崎 正樹, 萱場 祐一
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_117-II_124
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     緑化ブロックが景観に及ぼす影響を評価するために,3つの要素(植被率,護岸の形状[景観パターン],草丈)によって景観との調和や目立ちにくさが異なるかを,アンケート調査によって得点化し解析した.調和の得点は植被率が高いほど高く,穴や千鳥-穴より階段タイプで高く,草丈が低い,高低混合の条件で高かった.目立ちにくさの得点も,草丈が高低混合の時に高かった以外は,同様の結果だった.事実,調和の得点は目立ちにくさの得点と正の相関関係にあった.両得点が平均値を越えたのは植被率が70%以上の条件でのみだった.以上の結果より,緑化ブロックの景観評価は主に植被率によって変化し,護岸の形状や草丈によっても影響されることが明らかとなった.よって,緑化ブロック単体での景観評価は過小評価になることに注意が必要である.
  • 中谷 隼, 田原 聖隆, 田中 浩二, 松本 真哉, 水野 建樹
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_125-II_131
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本稿では,選択型コンジョイント分析を用いて,電力供給のビジョンに対する一般市民の選好を評価した.特に,再生可能エネルギーや原子力を含む電源構成に対する選好について分析し,節電行動の必要性や意識が電力供給ビジョンへの選好に与える影響について考察した.分析結果から,原発再稼働に対して否定的な意見を持つ回答者グループは,電源構成などの評価属性への特徴的な選好を持ち,電源構成が提示されると,電力由来のCO2排出量も電力供給ビジョンの判断基準としての優先度が下がることが示された.居住する電力管轄地域によっても,節電行動への意識や原子力発電への選好に関して異なる傾向があり,需給ギャップの可能性があった地域については共通する傾向が見られた.
  • 木下 卓大, 奥岡 桂次郎, 谷川 寛樹
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_133-II_138
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     循環型社会の実現にあたり,地域の特性や循環圏の性質を考慮し,最適な地域循環圏を形成することは不可欠である.東日本大震災以降,日本の電力供給源は原子力から火力へシフトしており,大量に発生する石炭灰の有効利用が今後の課題である.本研究では,福島県北部沿岸地域を対象とし.福島県相馬共同火力発電所から排出される年間50万トンのフライアッシュ(FA)を再資源化し,建設資材へ循環利用することによる投入ポテンシャルの検討を行った.震災の復興建築,既存の建物の更新,海岸保全施設へのFA投入ポテンシャルは,発電所から到達圏域50kmに循環圏を設定することで,1~40km圏内のおよそ3倍に増加することが明らかとなった.しかし,圏域内の建築物への年間FA投入ポテンシャルと比べ,発電所から1年間に発生するFAは5倍以上存在した.
  • 戸川 卓哉, 藤田 壮, 芦名 秀一, 藤井 実, Dong Liang
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_139-II_149
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     限りある資源・エネルギーの効率的利用の観点から,地域資源の活用促進や,需給の近接性を活かし電熱双方の効率的利用が可能となる分散型の地域エネルギーシステムが注目されている.大規模集中型のシステムと比較して,それぞれの地域・地区条件に適したシステムの計画・運営が重要となるが,これまでの取り組みの多くは,個別の経験に依存して設計・運営されている部分が大きく,その知見についても十分な一般化はなされていない.そこで本研究では,定量的な方法で分散型エネルギーシステムの設計を支援するためのフレームワークを構築し,東日本大震災の復興自治体における実際の地区整備事業を対象としたケーススタディにより,その有効性を確認する.
  • 五味 馨, 芦名 秀一, 藤田 壮, 増井 利彦
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_151-II_162
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     地方自治体が地域の活力を維持しようと考えるとき,地域の産業と人口の動態を個別に考えるのみならず,雇用や消費を通じたそれらの相互作用を定量的に把握し,施策を検討することが必要と考えられる.本研究ではそれに周辺地域との通勤関係を加えて産業・雇用・通勤・人口の関係を記述し,基礎自治体レベルで入手可能な情報で構築できるモデルを開発した.同モデルは定義的に定式化され,各分野の政策上の課題とパラメータとの関係を整理した.これを福島県相馬地域に適用し,特に新地町において産業立地や人口維持等の地域の課題に対応した4つの将来シナリオを構築しその例を示した.
  • 林 博徳, 稲熊 祐介, 大坪 寛征, 劉佳 , 島谷 幸宏
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_163-II_169
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     イシガイ目二枚貝は,タナゴ亜科魚類に産卵母貝として利用されるなど他の生物と共生関係にあり,河川生態系の重要なキーストン種とされる.しかし河川環境の劣化に伴い,二枚貝類はその生息数を減少させており,生息場の再生技術の確立は,河川環境管理上重要な課題である.本研究では,二枚貝生息場再生技術の確立に資する知見を得ることを目的として,イシガイ目二枚貝の主な生息環境であるワンドの物理的特徴と二枚貝生息分布の関係について調査するとともに,洪水流により二枚貝が流失するという仮説の検証実験を行った.その結果,ワンドの地形的形状によって二枚貝の生息分布状況が異なっていること,一部のワンド(特に洪水時の攪乱を受けやすい形状のワンド)では二枚貝が洪水時に流失することが明らかとなった.
  • 溝口 裕太, 戸田 祐嗣, 辻本 哲郎
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_171-II_181
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     これまで,河川生態系シミュレーションにおける底生動物のモデル化は,各々の餌資源と対応させた摂食型をベースとしていた.本研究では,これに加えて,生息環境の物理特性による類型である生息型に基づく底生動物動態モデルを開発するとともに,底生動物の微生息場を解析可能な礫床河川における浮遊砂動態モデルを構築した.木曽川水系の阿木川ダム下流区間を参考に設定したモデル河川での解析結果と,現地河川における底生動物の調査結果との比較から,本モデルは各ケースにおいて摂食型および生息型の構成割合を概ね再現できた.また,上流端からの浮遊砂供給を遮断したケースでは,河床材料の粗粒化に伴って礫上面および礫下砂生息型の減少と,礫間生息型の増加が確認された.これより,底生動物群集の主体が最大の生息ポテンシャルを有する礫間生息型へ遷り変わると推察された.
  • 菊池 裕太, 青木 宗之, 福井 吉孝, 村野 昭人
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_183-II_190
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     実験水路で実小河川での魚の挙動を再現する条件を明確にすることを目的とし,実魚(平均体長BL=5.5(cm)のウグイ(Toribolodon hakonesis))を用いた挙動実験を行った.実小河川では,魚は定位と停留をしながら蛇行流れに対し走流性のみを発揮し,5BL~7BL(cm/s)程度の流速域を遡上した.実験水路では,模擬水制を設置し,実小河川の蛇行流れに似た流れを生じさせた.魚は,その流れに対し遡上した.さらに,水路中に澪筋を設け実小河川の流れを模した場合も,魚は蛇行流れに対して遡上した.魚の遡上箇所の流速域も実小河川と同様であり,2BL~4BL(cm/s)程度の流速域で定位,2BL(cm/s)以下の流速域で停留した.結果,現地の流速,流向を考慮すれば実験水路で魚の挙動を近似できる.
  • 矢野 雅昭, 渡邊 康玄, 杉原 幸樹, 渡邉 和好, 平井 康幸
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_191-II_197
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     石狩川上流部の礫厚が薄い区間(薄礫区間),上流から下流へ礫厚が減少している区間(礫厚遷移区間),礫厚が厚い区間(厚礫区間)において,横断測量,浸透流速,浸透流の溶存酸素,水温の調査を行い,産卵床の位置を調査した.その結果,薄礫区間では全体的に浸透流速が小さく,浸透流の水温は低く,溶存酸素が高かった.厚礫区間では傾向が異なり,浸透流の溶存酸素量が他の半分以下の地点や,浸透流の水温が河川水温より2℃以上高い地点が確認された.このため厚礫区間には滞留時間が長い浸透流の混入が考えられた.また礫厚遷移区間においても,浸透流の水温に同様の傾向が確認された.産卵床は薄礫区間ではほとんど確認されず,厚礫区間と礫厚遷移区間では確認され,礫厚が厚く様々な滞留時間の浸透流が混在することが産卵環境に寄与すると考えられた.
  • 伊東 英幸, 林 希一郎
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_199-II_205
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     近年,生物多様性の保全や生態系サービスの重要性が再認識され,生態系サービスの主観的価値や経済価値などを推計した研究が多く見られるようになった.しかし,生態系サービスを網羅的に対象とし,各生態系サービスの主観的価値の決定に影響を与える要因を詳細に分析した研究は筆者の知る限りない.
     そこで本研究は,愛知県の一色干潟を対象とし,愛知県民を対象としたWEBアンケート調査を実施し,各生態系サービスの主観的価値を推計するとともに,主観的価値に影響する様々な要因を順序ロジットモデルにより分析した.その結果,関連する小項目の生態系サービスの主観的な価値や,生態系サービス自体の好み,生態系サービスの利用や消費の経験,自然保全に対する意識レベルなどが影響している可能性を示した.
  • 山田 宏之, 柳田 加奈子
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_207-II_215
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,新しく開発した建築用保水性コンクリート板を建物屋上に2年間に渡って敷設し,3種の敷設方法について,自然降雨条件下での純放射量,伝導熱量,顕熱量等の実測と解析を行い,敷設方法および水分量の違いによる差異について検証することを目的とした.伝導熱の遮蔽に関しては,2層中空型にすることで,建物への伝導熱量が平均で93.2%減り,顕著な効果を発揮した.この効果に乾湿はあまり影響を及ぼさなかった.表面温度低減に関しては1層でも十分に効果を発揮したが,乾湿の影響があり,効果を高めるためには定期的な散水が必要と考えられる.顕熱量に関しては,1層,2層共に,1日の積算顕熱量が60%以上低減された.乾湿いずれの場合でも効果があるが,低減効果は気象条件に強く影響を受けた.
  • 藤森 真一郎, 長谷川 知子, 増井 利彦, 高橋 潔, シィルバ エラン ディエゴ , 戴 瀚程 , 肱岡 靖明, 甲斐沼 美紀子
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_217-II_228
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     Special Report on Emissions Scenarios(SRES)が公表されて以降,気候変動関連研究は主としてSRESを用いて行われてきた.一方,2007年以降に新シナリオプロセスが開始され,新しい社会経済シナリオ Shared Socioeconomic Pathways(SSPs)は気候モデル,影響評価モデル,統合評価モデルで使われ,中核的なシナリオとなることが期待される.また,近年統合評価モデルが提示するシナリオはパラメータの設定等が明瞭に示されずブラックボックスとなっているという批判が存在し,統合評価モデルが抱える大きな問題の一つとなっている.このような背景を踏まえ,本論文は以下の二つの目的を有する.第一にSSPの定量化プロセスについて詳細に記述し,シナリオ定量化作業をオープンにすることである.第二にその結果を既存のシナリオであるSRESとRCP(Representative Concentration Pathways)と比較し,シナリオの特徴を明らかにすることで,今後SSPの主たるユーザーとなる気候モデルや影響評価モデルに対して有用な情報を提供することである.本研究で得た主要な結論は以下のとおりである.第一に大気汚染物質の排出量はRCPで一貫して減少していたが,SSPの一部は増加するシナリオが含まれ,気候モデルにとってエアロゾルの違いの影響を明らかにすることができる.第二に耕作地面積はいずれのシナリオでも21世紀で拡大し,水資源,森林生態系など土地利用に影響される影響評価モデルにとっては土地利用シナリオを考慮することが重要であることが示唆された.
  • 東 祐樹, 古市 徹, 石井 一英, 藤山 淳史, 翁 御棋
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_229-II_239
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     酪農地域では家庭系食品廃棄物等のウエット系バイオマスの賦存量が少ないため,単位廃棄物あたりの処理コストやGHG排出量が多くなる傾向にある.その解決方策の一つとして,ウエット系バイオマスを混合処理(集約化)し,効率的な処理を行う方法が考えられる.本研究では酪農地帯において家畜ふん尿バイオガス化プラントを導入し,同時にウエット系バイオマスを一括処理することを想定し,メタンガス発生量の原単位や発酵の安定性,消化液の成分を実験的に明らかにした.さらに,実験で得られたデータを用いて,A行政事務組合を対象にウエット系バイオマスの処理を対象として,トータルのコストとGHG排出量の試算を行った.その結果,バイオガス化プラントの導入により現状の処理方法と比較して,ウエット系バイオマスの処理コストは36.4 %削減され,GHG排出量も124 %削減されることが試算され,事業として成立する可能性があることを示した.
  • 靏巻 峰夫, 山本 祐吾, 吉田 登
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_241-II_251
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     2011年の東日本大震災では大規模災害時における災害廃棄物処理が社会的問題として取りあげられた.また,近年の地球温暖化との関連が指摘される異常気象によって地域的に甚大な被害を伴う災害が増加傾向にあるといわれており,その災害廃棄物への対応も必要がある.災害廃棄物の迅速で適切な処理及びリサイクルの推進のためには正確で詳細な廃棄物量の予測が重要である.本研究では,GISを活用して地域の資材ストック量から災害廃棄物を種類と地域分布を考慮して予測する手法を検討した.ケーススタディとして和歌山県日高川町を対象地域とし,2011年の台風12号による水害での災害廃棄物量について検討を行った.検討の結果,発生量の実績値12.7千tに対して被災範囲資材ストック量97.2千t,予測廃棄物発生量22.0~25.1千t,収集率0.2~0.7という予測値を得た.この数値は,さらなる精度向上が必要であるが,今後の手法確立に向けて有効なデータであると考えられる.
  • 伊川 純慶, 中久保 豊彦, 東海 明宏
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_253-II_262
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     災害廃棄物の焼却(減容・減量化)の迅速化に向け一般廃棄物処理事業,産業廃棄物処理事業の広域連携が着目されており,本研究では近畿圏を対象として将来の処理能力や地域特性を踏まえた広域連携効果の分析,災害に備えごみ焼却炉の処理能力に10%の余剰性を持たせる設計指針改定の効果を分析した.結果,阪神直下型地震を対象とし,予備容量0%・連携ケース4で処理完了期間は2.8年と推計され,広域連携による処理期間の短縮効果を定量化した.連携ケース4の条件下での予備容量0%と10%の比較では,余剰能力確保のための建設費・補修費の増分840億円に対し,仮設焼却炉整備費の減少分は生駒地震で359億円,上町地震で367億円に留まり,仮設焼却炉による処理がより費用対効果の高い施策である結果となった.
  • 荒井 康裕, 池田 有斗, 稲員 とよの, 小泉 明, 茂木 敏, 吉田 慎太朗, 飯野 成憲
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_263-II_271
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     2011年3月に発生した東日本大震災は,我が国に甚大な被害をもたらした.発生した震災廃棄物の処理は発災から4年を過ぎた今日まで行われ,重要な課題となっている.近い将来には都市圏でも大震災が発生すると予測されており,膨大な量の震災廃棄物の発生が懸念される.廃棄物の発生地点から仮置場への運搬は,住民の公衆衛生の確保のため迅速かつ効率的な対応が求められるため,震災廃棄物を集積させるスペース(仮置場)を確保できるかどうかを事前に把握する必要がある.そこで本研究では,首都直下型地震が起こった際に発生する東京都23区内の震災廃棄物を対象に,線形計画法に基づいた輸送計画モデルを提案し,仮置場の受入可能量に関する制約条件の有無に着目した多角的な輸送計画を検討した.
  • 松橋 啓介, 永野 亜紀
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_273-II_278
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     国連を中心に持続可能な発展目標が議論されている.持続可能な発展を実現するためには,その目標を総合計画に位置付け,戦略的に取り組むことが効果的である.本研究は,環境面で先進的な23の環境モデル都市を例に,総合計画の基本目標を分解し,別に設定した包括的な目標の項目と対応付け,持続可能な発展に関する目標の4分野が各々占める割合を評価した.その結果,環境面の項目の割合が少ないこと,見出し語を分析対象とした場合に特に少ないことが分かった.今後,地域の上位ビジョンに持続可能な発展の目標をバランスよく示すことが望ましい.
  • 塚田 伸也, 森田 哲夫, 湯沢 昭
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_279-II_286
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,未整備の都市計画道路や都市計画公園が多く現存する前橋市総社地区を対象に,生活環境と地域コミュニティといった生活質の満足度,天狗岩用水の現状を評価し,まちづくりの方向との関係を定量的に把握することを目的とした.結果は以下のとおりである.(1)インフラ整備よりも社会福祉や家庭ごみの満足度が生活環境の満足度に強い影響を与える傾向,行政のつながりよりも資源リサイクル,伝統文化行事,自治活動の満足度が地域コミュニティの満足度に強い影響を与える傾向を把握した.(2)天狗岩用水の施設の満足度と,整備,利用,管理との強い影響を把握することができた一方で,天狗岩用水の施設,景観及び自然の満足度とまちづくりの方向との強い関係性の把握については今後の課題とした.
  • 杉村 佳寿, 青木 渉一郎, 村上 進亮
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_287-II_296
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     世界各国の経済成熟度が異なるままにグローバル化が進んだ現在,資源生産性の最大化のためには国際資源循環は重要な鍵となる.静脈資源は経済成熟度や工業発展度により各国内での供給量や需要量が変化するため,それらを調整する形で世界全体の貿易需給バランスが決定されるほか,低い運賃負担力により価格と輸送コスト次第では経済的に優位となる埋立処分が選択される可能性もある.すなわち,世界全体の需給バランスと輸出可能相手国次第では,我が国の国際資源循環は進展しなくなる可能性もある.
     本研究では,1992年と2012年の静脈資源貿易ネットワークからその構造的な特徴や中心性の高い国の変化を明らかにし,得られる指標から我が国の国際資源循環の状況・特徴を相対的に評価する.さらに,得られる指標等を踏まえ,静脈資源貿易に係る社会システムの課題を明らかにする.
  • 舘林 香菜, 松井 孝典, 大場 真, 町村 尚, 谷 佑亮, 中尾 彰文, 山本 祐吾
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_297-II_308
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     地球温暖化緩和のための炭素排出量削減には,森林管理による生態系炭素固定量を増加させるとともに,家具や建材などの用材に貯蔵することで炭素を固定し,さらに木材をバイオエネルギー利用することで化石燃料代替することが有効である.本研究では,森林施業による森林生態系炭素固定量の増加と社会での木質バイオマス利用による炭素固定量と化石燃料代替効果の増加を統合することで,木材生産・利用システムの全体最適化を支援するためのシミュレーションモデルの開発を目的とする.有田川流域および日高川流域を分析対象地域とし,森林施業ケースは主伐期と年間間伐面積率の組み合わせ66ケースで森林管理モデルBGC-ES Version1.1を用いて,2010年を基準として2100年までの生態系炭素固定量と累積の木材生産量を分析した.対象地域の用材出荷量,温浴施設の燃料消費量,園芸施設の作付面積から,用材需要量と各施設の熱需要を算出し,毎年の木材生産量と需給バランスを比較した上で,木質バイオマスのエネルギー利用による化石燃料代替効果や用材による炭素固定量を複数の森林施業ケースで分析した.2010年比の2100年の炭素収支が最大となるケースは,主伐期が90 [y],年間間伐面積率が6 [%・y-1]の森林施業ケースであった.生態系炭素固定,用材利用による炭素固定,木質パウダーとペレットによる化石燃料代替の合計が,2100年で約2.7 [Mt-C]まで期待できるという結果になった.
  • 松井 健吾, 長谷川 正利, 高木 重定, 奥岡 桂次郎, 谷川 寛樹
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_309-II_317
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本研究は土石系資源出荷量とストックの増加量から原単位を作成し,土石系資源ストックフローの将来推計を行った.また,推計結果より,混合セメント導入による二酸化炭素排出量の推計,再生骨材としての循環利用ポテンシャルの評価を行った.資材投入量は建築において約1億トン,道路においては約1億2000万トン,その他土木においては約8700万トンと推計された,混合セメント導入による二酸化炭素排出量は2015年と比べ,2050年では約390万トン,現状維持の2050年に比べると約80万トンの二酸化炭素排出量の削減が推計された.また,再生骨材は2050年において4700万トンとなるのに対して,建築から廃棄されるコンクリート塊は約1億4000万トンにのぼり,高い循環利用ポテンシャルが明らかとなった.
  • 山下 剛弥, 奥岡 桂次郎, 谷川 寛樹
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_319-II_327
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本研究では,都市に投入,蓄積,廃棄される物質のメタボリズムの把握の為,日本の社会基盤の中で大きな割合を占めていると考えられる港湾・漁港・海岸保全施設を対象としてマテリアルストックのデータベースを拡充し,既往の研究と比較した.また,推計したマテリアルストックを用い,MSPS(Material Stock Per unit of Service)指標を用いることによってストック利用効率を検討した.その結果,港湾・漁港・海岸保全施設の2005年におけるマテリアルストックはそれぞれ,783Mton,1,714Mton,472Mtonであると把握した.運輸関係におけるストック利用効率について,空港はストック利用効率上昇,道路・鉄道では輸送量,港湾では輸送客についてストック利用効率の低下がみられた.
  • 徳永 翔大, 後藤 尚弘, 九里 徳泰
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_329-II_337
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本研究では,地産野菜と旬野菜を購入することを野菜購入における環境配慮行動とし,その行動要因を明らかにすることで環境配慮行動を促進させる方法を提案する.また環境配慮行動によるCO2排出量削減の情報を提示することで,環境情報の環境配慮行動への有効性を検討する.既往研究をもとに仮説モデルと環境情報を作成し,インターネットアンケートを行った.調査範囲は全国,調査期間は2013年11月で有効回答数は1042であった.調査結果から因子分析,共分散構造分析を実施した.因子分析の結果より,「実行可能性評価」,「性能評価」,「有効性評価」,「社会規範評価」の4つの因子が抽出された.また,共分散構造分析の結果より,因子の中で「実行可能性評価」が「実践度」に最も影響を与えていたため,「実行可能性評価」を高めることで行動の実践が向上すると考えられる.
  • 康井 洵之介, 棟居 洋介, 増井 利彦
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_339-II_348
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     富士山は,2013年に世界文化遺産登録を果たしたが,近年の登山者増加により持続的に利用していく上での許容量を超えているということが指摘されている.本研究では,屎尿処理問題と安全性の確保の視点から,登山者数の上限をルート別に推計した.また,富士山への訪問需要関数を求めることによって,現状の登山者数を推計した上限以下に抑えるための入山料の金額を推計した.結果としては,現状の登山者数はルートによっては上限を大きく上回っていることが明らかになった.登山者数を上限以下に抑えるための入山料を訪問需要関数をもとに推計したところ,登山シーズン全期間の登山者数を対象とした場合にはルート別に0円~3,000円という結果が得られたが,土日等の集中利用時期の混雑解消のためには,2,500円~8,000円の入山料が必要になることを明らかにした.
  • 齊藤 修, ヤルッコ・ハバス , 白井 浩介, 栗栖 聖, 荒巻 俊也, 花木 啓祐
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_349-II_357
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本土からの物流と人流の交流に制約がある離島においては,その資源消費の形態が物質フロー及びストックの両面で異なることが想定される.本研究では,離島としては比較的交通の便がよいとされる八丈島を対象として,資源消費のなかで特に食料に焦点を当てて離島特有の食料生産消費の流れ(フロー)とそれを支えるストック(備え)の実態を明らかすべく島民を対象とした聞き取り調査とアンケート調査を実施した.その結果,島内では食料の自家生産といただきもの(おすそわけ)が多い時期には,日常の食生活の約半分が市場を介さない食料によって支えられていること,またこうしたわかち合いで得た食料を長期的に保存するための専用の冷凍庫が家庭用に広く普及していることを定量的に明らかにした.得られた知見を踏まえて,こうした食のわかち合いのサブシステムが自然災害や社会経済変動に強い,レジリエントな島づくりで果たす役割,可能性と今後の課題について考察した.
  • 倉持 裕彌, 谷本 圭志
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_359-II_368
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     わが国では高齢者の健康寿命を促進することが社会的な課題となっている.その一つの方策として,外出しやすい居住環境を形成し,高齢者が日常的に外出する機会を確保することで健康を維持することが考えられる.中山間地域のように外出先が限られる地域では,買い物が貴重な外出の機会であり,他の地域と比べて買い物に着目することの意義が高い.そこで本研究は,介護予防の観点で自治体が実施しているデータを用いて,中山間地域の高齢者を対象に,買い物頻度がどのような側面での健康と関連があるのかについて実証的に分析した.分析の結果,買い物頻度は,閉じこもりや転倒防止などとの関連が認められた.このことから,買い物の機会を維持することが福祉的な効果をもたらしうることが示唆された.
  • 後藤 祐哉, 横山 佳裕, 内田 唯史, 中嶋 雅孝
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_369-II_376
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本研究では,夏季における内部生産の抑制による生物生息環境の保全,冬季におけるリン不足による色落ちが懸念されているノリやワカメをはじめとした生物生産の健全化を目的とした栄養塩管理手法を検討するため,博多湾における栄養塩類負荷量の変動に伴う海域濃度変動の試算を行った.その結果,夏季においては,T-P負荷量の削減により内部生産が抑制され,海域CODの低減に効果がみられた.また,冬季おいては,T-P流入負荷量を1.5倍にすることにより,内部生産由来のCODは増加するが,現状濃度で環境基準値を下回る西部海域や東部海域では環境基準値以下を維持し,ノリ,ワカメ養殖の生育環境改善の効果がみられた.
  • 荒井 康裕, 長谷川 高平, 阿部 翔, 小泉 明, 稲員 とよの
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_377-II_386
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本研究では,水道の送水ネットワークにおけるライフサイクルコスト(LCC)及びCO2(LCCO2)に着目し,管路・ポンプの供用期間の違いによる影響と人口減少社会を考慮に入れて分析した.まず,管路とポンプを20年毎に更新するケースを例にLCC及びLCCO2の基本的傾向を比較した.LCCO2では口径が大きいほど総排出量も低下するといった,単純な傾向が見られた.一方のLCCは,口径縮小(増大)による管路建設費の減少(増加)に反してポンプ運転費が悪化(改善)するという,LCCO2では見られなかったトレードオフ関係が生まれ,合計値を最小にする最適口径の存在が示唆された.そして,各更新年数(管路:20年/40年/80年,ポンプ:20年/40年/80年)を組み合わせた9ケースについて比較分析した.この結果,管路の更新間隔は長く,ポンプの更新間隔は短くすることで,LCC,LCCO2ともに有利になることが明らかになった.
  • 津田 守正, 岩見 洋一
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_387-II_395
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     渇水時の貯水池運用に資することを目的として,月単位で家庭用,業務用等に区分して集計されている上水道の用途別月調定水量から,用途別日使用水量を推計する手法を提案した.これまで経済データ等に適用されてきた,集計データを時間的に配分する手法を,調定水量の集計方法を踏まえて,上水道に拡張した.この手法を,愛媛県松山市に適用し,家庭用,業務用に区分して用途別日使用水量を推計し,給水制限時の水使用実態の把握のための有用性を検証した.提案した手法は,従来提案されている,日給水量に対して,調定水量から推計した用途比率を乗じることによる,用途別日使用水量の推計手法と比べて,日単位で調整される給水制限強度をより詳細に反映できる点や,結果の妥当性の検証が容易な点で優れていることを示した.
  • 厳島 怜, 真砂 祐貴, 池松 伸也, 島谷 幸宏
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_397-II_403
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     急流都市河川に自然再生の事例は少なく,環境に配慮した改修技術は確立されていない.本研究では,長崎市大井手川を対象に,①環境に配慮した親水性の高い河道設計,②エネルギー減勢効果及び河床変動の観点から,Step-Pool構造による最適な落差緩和構造を明らかにすることを目的として,縮尺1/33の移動床水理模型実験を行った.その結果,適切に水制工,護床工を設置し,断面の急縮を避け下流部と接続することで,急流河川においても護岸を用いずに河床の静的平衡を保てること,Step-Pool構造は落差緩和,エネルギー減勢に有効であり,本研究対象区間においてはStep高0.55m,Pool深0.55mのStep-Pool構造を4段配置することで河床変動が抑制され,高いエネルギー減勢効果が得られることが確認された.
  • 池田 勇太, 古市 徹, 石井 一英, 藤山 淳史
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_405-II_414
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     埋立廃棄物の廃止にむけた判断を数値的に行うために,本研究では,最終処分場をボックスとして捉え,マクロ的視点での汚濁物質収支モデルを,溶出しうる汚濁物質(COD成分と塩素イオン)の洗い出しと減衰を考慮して構築した.降雨や気温の影響を受けやすいオープン型(OS)処分場では物質収支をとることは困難であったが,覆蓋があるため人工散水により制御されたクローズドシステム(CS)処分場では,溶出しうる汚濁物質の約75%の収支を表現できた.またCS処分場では,液固比で散水量が設計されるが,微生物分解等の減衰も考慮する必要性が示唆された.また,構築したモデルを用いて浸出水濃度の将来予測を行ったところ,CS処分場では塩素イオン濃度の低下に時間がかかるため,散水量を増やすなどの安定化促進策が必要であることを示した.
  • 鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 藏本 更織, 宍戸 陽, 角田 裕香
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_415-II_421
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     高い遡上率を有する魚道を建設するには,魚の休憩場所を確保することが重要である.本研究では,仕切り板を魚道内でさまざまな位置に変化させ,魚の休憩場所を制御したものである.オイカワの遡上率は二台のビデオカメラによって得られた.そこで,仕切り板を上流側切欠きと下流側切欠きの間に設置した場合にオイカワの遡上率が高い値を示した.これは,オイカワの休憩位置がプールの中央部から仕切り板の上流側に移動する,また,低速な流れの領域からの遡上が誘発される.
  • 中川 啓, 天野 弘基, 朝倉 宏, 河村 明
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_423-II_431
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     大学で環境科学やその他を専攻する学生の環境科学に関する用語の認知度についてアンケートを実施した.入学直後の1年生と2年生以上について実施しており,集計結果は14年前に九州大学で農学部学生を対象として実施された結果と比較した.その結果,全体的には知識は低下しているようであるが,自然エネルギーやハイブリッド車など最近の環境問題に関係するいくつかの用語については,現在の学生の方がよく知っている結果となった.さらに,アンケート結果を自己組織化マップにより8つのグループに分類し,マップとグループごとのレーダーチャートを描画してグループそれぞれの特徴を抽出した.それによると,環境科学部とその他の学部の学生の間の結果の違いが明らかになった.またアンケート結果の分類に自己組織化マップが有効であることが確認された.
  • 横川 勝也, 稲員 とよの, 小泉 明, 難波 諒, 杉野 寿治
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_433-II_440
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     配水区域入口に設置している流量計データの急激な上昇で管路破断の漏水事故検知は可能であるが,地上に現れない漏水の場合にはその位置を迅速に特定することは困難である.そこで本論文では,管路破断時に生じる周辺の水圧変化を秒周期で捉え,管網モデルといった配水管網のネットワーク構造のデータを用いることなく,複数水圧計間の反応時間差から漏水事故が発生した位置を推定する方法を提案する.
     提案手法の有効性を北九州市上下水道局の破断事故事例データで分析し,配水ブロック20km2の範囲内に4つの水圧計が設置されている場合には,事故位置を0.1km2まで限定できることを確認した.管網モデルを利用する必要が無く自動化も比較的容易であることから,今後システム化を見据えた検討を進める.
  • 田畑 智博, 張 欧 , 山中 優奈, 蔡 佩宜
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_441-II_449
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,統計・ウェブ情報を用いて,自然災害に伴う災害廃棄物発生量原単位を推計することを目的とする.特に本研究では,家庭の耐久消費財に由来する災害廃棄物に着目した.先ず,ウェブ調査により耐久消費財別の質量原単位を推計し,データベース化した.これに全国消費実態調査を組み合わせて1世帯あたり耐久消費財保有量を推計した結果,保有量は,全国平均では約1.5~約2.5tとなった.次に,南海トラフ巨大地震の被害想定地域における災害廃棄物発生量を推計するため,データベースと内閣府や地方公共団体による被害想定情報を組み合わせた.結果として,内閣府の被害想定(近畿地方で大きな被害が発生するケース)を用いた場合,東海・近畿地方では静岡県が最も多く,約630~約1,020千tとなった.
  • 國實 誉治, 稲員 とよの, 荒井 康裕, 小泉 明, 橋本 英樹, 吉澤 健太郎
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_451-II_458
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本論文では,水道施設の中でも配水管網の主要な構成管路である配水本管の維持管理計画に着目した.管路施設を健全な状態で保持するためには,定期的な維持管理が必要であるが,長大な管路施設の殆どが人目に付かない道路下等に埋設されているため,漏水事故は突発的に発生する.従って,これまでの事後対策では無く,事故を未然に防ぐ予防保全型の維持管理計画が望まれる.
     本研究では,東京都23区内で発生した過去の漏水修理データから漏水事故の分析を行った.更に,本管ネットワークモデルを用いて断水による水圧低下の影響を管網解析により定量化した.その結果,漏水事故の発生個所や配水管ネットワークの形状,水需要の分布状況により異なる事故の影響を定量的に評価できる新たな更新優先度評価手法を開発した.
  • 寺井 一弘, 河口 洋一, 田代 優秋, 武藤 裕則, 野村 一至
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_459-II_465
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     吉野川は,1950年代から1980年代にかけてアユ漁が盛んであり,アユの産卵は約50kmもの長い区間を持つことが報告されている.しかし,様々な自然的・人為的インパクトによって河川環境が変化し,アユの産卵場の消失が懸念されている.本研究では,アユの産卵場環境に影響を及ぼす河川環境要因について検討するため,吉野川の河口から14~20kmの区間を対象とし,漁業者へのヒアリングとアンケート,そして物理データの関係性について解析した.その結果,漁業者が指摘するアユ産卵場の減少や河川環境の変化といった情報は信頼性が高いことが示唆された.また,アユの産卵場に影響を及ぼす河川環境要因として年最大流量の減少,河床の固定化が影響していると考えられた.
  • 青柳 淳之介, 杉本 賢二, 奥岡 桂次郎, 谷川 寛樹
    2015 年 71 巻 6 号 p. II_467-II_474
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     建築物や道路などの社会基盤構造物を建設する際には大量の資材が投入されており,都市に蓄積された物質は構造物が取り壊される際に廃棄される.このように大量の物質が移動する際には投入や廃棄処理を効率的に行う必要があり,マテリアルフローを定量的に把握することは,循環型社会の形成を考える上で不可欠である.本研究では,名古屋市の中心部をケーススタディ対象地として,1970年,1980年,1990年,1997年,2003年,2009年の6年代で構築された4d-GISを用いて用途地域別や,大規模な建物更新があったエリアを対象にMSFA(Material Stock and Flow Analysis)を行った.その結果,対象エリア内のマテリアルストックは増加傾向にあり,特に商業地域において物質が高密度に分布していることが分かった.さらに,用途地域などの都市構造の変化が物質代謝に影響を与えていることを示した.
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