土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
71 巻, 7 号
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環境工学研究論文集 第52巻
  • 押部 洋, 大坂 典子, 西川 向一, 李 玉友
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_1-III_10
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     飲食店等から発生する1t/日以下の食品残渣を対象に,メタン発酵による分散型エネルギー回収の課題抽出と改善提案を行った.従来のメタン発酵システムでは,食品残渣が少量であるため回収電力以上に自家消費電力を消費し,余剰電力が生じない.複数の槽を一体化し, 発酵槽に無動力撹拌機構を適用した新規のメタン発酵システムによって自家消費電力を低減し,余剰電力が回収可能であることを示した.油脂との混合発酵を適用することでバイオガス量増加による回収電力の増加によって,さらに効率性が改善されることを示した.改善案を適用した分散型メタン発酵システムでエネルギー回収を行った場合と集約型処理を行った場合との温室効果ガス排出量を比較し,分散型メタン発酵システムの低炭素効果を示した.
  • 蒋 紅与 , 叢 鳴 , 北條 俊昌, 李 玉友
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_11-III_18
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,セルロース系廃棄物からバイオエネルギーを生成することを目的として,トイレットペーパーを主炭素源として,グルコースを補助炭素源とした完全混合型反応槽を用いて水素発酵の長期連続実験を行った.超高温条件(65±1℃)で,栄養塩添加量を変化させて,バイオガス生成量と組成,基質の分解や代謝物としての揮発性脂肪酸(VFAs)の生成などに関して検討を行った.本研究により栄養塩量の増加はトイレットペーパーの水素発酵における加水分解・酸生成・水素生成の各反応に促進影響を与えることが明らかになった.特に,栄養塩を十分添加(細胞増殖率Yを30%とした)した条件では水素生成細菌の増殖が促進されたとともに最大水素収率は1.82molH2/mol Hexoseとなり,栄養塩不足条件での0.611H2/mol Hexoseの約3倍程度であった.
  • 竹田 悠人, 栗田 雄佑, 小松 俊哉, 姫野 修司
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_19-III_26
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     河川敷の除草の際に排出される刈草に着目し,下水汚泥と刈草の混合嫌気性消化技術の開発を目的として大学内実験およびパイロットスケール実証実験を行った.回分実験結果より刈草は破砕のみの前処理で高い分解性を示した.次に,2か所の処理方式の異なる下水処理場の汚泥を用いて混合消化の連続実験を行った結果,刈草の消化特性は概ね等しかった.パイロットスケール実証実験は下水処理場内で行い,下水汚泥と刈草の固形分混合比を1:0.5の条件で投入した.刈草からの正味のガス発生量は384NL/kg-VSとなり,学内連続実験および過去の酵素水浸漬による前処理を行った稲わらと同等のガス発生量を示した.
  • 日高 平, 對馬 育夫, 津森 ジュン, 南山 瑞彦
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_27-III_37
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     下水汚泥の有効利用方策として脱水汚泥を含む集約型混合嫌気性消化を想定し,設計・操作因子の検討に資する基礎的知見の収集を目的に,異なる下水処理場の各種下水汚泥を対象とした嫌気性消化実験を行った.標準活性汚泥法(循環式硝化脱窒法等の場合も含めて)の混合汚泥および脱水汚泥については0.4~0.5NL/gVS-投入程度の,オキシデーションディッチ法の脱水汚泥については 0.1~0.2NL/gVS-投入程度のバイオガス転換率が得られた.投入汚泥の高濃度化で懸念されるアンモニア阻害や撹拌影響に対して,投入汚泥条件から消化汚泥のアンモニア性窒素濃度および粘度を推測する知見を整理した.消化汚泥に含まれる微生物の遺伝子解析を行ったところ,処理場毎に傾向が異なっており,従来の維持管理指標である固形物濃度では区別できない微生物の状況を把握できる可能性が示された.
  • 外内 和輝, 東森 敦嗣, 北條 俊昌, 李 玉友
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_39-III_46
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本研究では食品卸売業・小売業から発生する混合食品廃棄物について, メタン発酵による処理特性とメタン発酵導入によるエネルギー回収・温室効果ガス削減効果等について検討を行った. 単槽メタン発酵及び二相循環式メタン発酵ともに良好な運転性能が得られ, CODとVSの分解率はそれぞれ81.7%~86.3%, 72.6%~79.1%と高い値であった. メタン発酵及び発電を行うことにより多くの電力と熱エネルギーの利用が可能になるだけでなく, 補助燃料・焼却量・最終処分量の削減に伴い約78%の温室効果ガス排出量の削減が可能になることが示され, 食品廃棄物のメタン発酵を積極的に行うことの有用性が示された.
  • 古崎 康哲, 石川 宗孝
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_47-III_55
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本研究では食品廃棄物のメタン発酵において,廃棄物中の炭水化物成分を糖化・エタノール化処理によりエタノールに変換させる前処理を加えたプロセスを提案し,その効果を検討した.模擬厨芥を用いて回分実験と半連続実験を行い,次のような知見を得た.(1)エタノール化処理された基質は,処理を行わない場合と較べて同量以上のバイオガス生成が可能であるとともに,分解速度の高い成分が増加したことが示唆された.(2)バイオガス中メタン濃度は回分実験では最大約20%,半連続実験では約15%向上した.(3)エタノール濃度2.0g/L以上では分解阻害が認められた.(4)初発濃度が高い条件でもVFAの生成が抑えられることで安定したメタン発酵が可能であった.(5)50日間安定した半連続運転が可能であり,その時のメタン生成量は対照系と同じであった.
  • 牧 誠也, 中谷 隼, 栗栖 聖, 花木 啓祐
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_57-III_68
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     水利用システムには様々な利害関係者が関与するため,多様な選好に対応する代替案を提示する必要がある.多面的な評価指標を目的関数とした多目的最適化によってパレート最適解を導出することで,こうした代替案が網羅的に生成されると考えられる.本研究では,コストや水系汚濁物質量,地球温暖化といった目的関数と,水需要量や取水可能量の制約条件のもとで,水利用システムを構成する上下水道および再生水に関わる処理施設や管路の建設・運用の諸元を設計変数とした最適化モデルを開発した.荒川流域圏を対象地域として,各目的関数のみを対象とした単目的最適化と目的関数をランダムに重みづけした多目的最適化,合計1,012回の最適化計算を実行した.重複解を除外した結果,71個のパレート最適解が抽出され,目的関数間のバランスや処理方式や施設数といった設計変数の両面から多様な代替案が得られた.
  • 松原 康一, An Thuan DO, 黒田 啓介, Tran NGA, 滝沢 智
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_69-III_78
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     ミレニアム開発目標(MDGs)における安全な飲料水源へのアクセス率は,必ずしも水質的な安全性を反映していないため,途上国の水供給の安全性をより正確に把握し,安全性向上に向けた現実的な対策を講じる必要がある.本研究ではベトナム国ハノイ市において,アンケート調査(5地域)および水質調査(12地域)を実施し,「改善された水源」を利用している世帯における安全な飲料水源へのアクセス率を推定し,さらに近年普及が進む家庭内での処理(Household Water Treatment, HWT)による安全性の改善効果を評価した.その結果,安全な飲料水源へのアクセス率は都市・郊外・農村部でそれぞれ60%,15%,52%と郊外で低く,HWTを考慮するとそれぞれ13%,20%,8%改善することから,今後HWTの役割が重要となることが明らかとなった.
  • 亀田 一平, 高部 祐剛, 西村 文武, 鈴木 亮介, Suphia RAHMAWATI, 伊藤 禎彦
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_79-III_89
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,再生水飲用を目的とした短い水理学的滞留時間(HRT)での土壌浸透処理(SAT)における水質浄化作用および有機物の生分解特性について,実験的考察を行ったものである.HRT3.5日および7日のSATによる下水処理水中溶存有機炭素の除去率は70.7および74.3%であり,3.5日以内の短いHRTでのSATが高い有機物除去性能を有することが提示され,また,消毒副生成物生成能低減の観点からも短いHRTでのSATの有効性が示された.Biolog EcoPlatesTMを用いた有機物の生分解特性解析により,微生物活性が高い夏季において,HRT1日程度のSATでの浸透過程において生分解特性が変化することが明らかとなり,短いHRTでのSATにおける多様な有機物群の生分解が期待された.
  • 山本 浩一, 小野 文也, Sulmin GUMIRI, Maria CAROLINE
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_91-III_98
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     家庭の生活用水のアンケート調査および戸別水質調査をインドネシアの中規模都市である中部カリマンタン州パランカラヤ市で行った.浄水場の処理水からは大腸菌が検出されなかったが,戸別調査を行った結果水道水中から大腸菌群が検出された.水中のイオン組成から水道水に地下水が混入していることが明らかになった.また,濁質の不十分な除去が原因の汚染も発生していた.浄水場では浄水過程におけるpH調整が不適切であり,このことも不十分な濁質除去につながっていると考えられた.
  • 福嶋 俊貴
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_99-III_106
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     下水処理場を地域における物質・エネルギー循環の拠点として捉え,第二ステップとして流入下水中有機物の活用法として消化ガス発電と汚泥焼却発電をその組合せ(複合発電)も含めて検討した.一方,物質循環拠点としてはリン回収を取り上げ,灰アルカリ法とMAP法でリン回収量を試算した.さらに,地域バイオマス活用として生ごみやし尿・浄化槽汚泥を受入れた場合の効果も試算した.下水処理量48,000m3/日のモデル処理場を対象として,固形性有機物回収技術として高効率固液分離を導入することにより,通常の消化ガス発電による電力自給率6.2%が13.0%まで増加し複合発電では18.6%と3倍に増加した.リン回収では水処理工程でリンを汚泥に移行させるAO法の採用により灰アルカリ法では標準法の1割から3割まで回収量が増加した.地域バイオマスの嫌気性消化槽への受入では消化ガス発生量の増加により発電量の増加や返流水からのMAP法によるリン回収量の増加が期待された.各種施策を下水処理場における環境性能という観点から水環境効率で評価するとベンチマークとした消化ガス発電の1.62kg/kWhに対し,汚泥焼却発電は1.96kg/kWh,リン回収は2.08kg/kWhであった.各種施策の組合せによる水環境効率3kg/kWhが目標となるのではと考えられた.
  • 道財 健斗, 久場 隆広
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_107-III_113
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     近年のリン鉱石の輸入価格高騰や輸入量減少により,下水処理場からのリン資源回収に注目が集まっている.その技術の一つであるMAP法は,リンを高効率に回収し,その回収物を化成肥料として販売できる優れた方法であるが,多量のマグネシウム薬剤の添加が必要となることから,コストの高さが問題となっている.本研究では,HEATPHOS法を適用し,ポリリン酸からMAPを形成することによるマグネシウム添加量削減の可能性を評価した.活性汚泥を70℃80分加熱することにより抽出させたポリリン酸を多量に含有する溶液にMAP法を適用した結果,ポリリン酸からMAPを形成することが可能であることが確認された.その形成に要したMg量はリン酸イオンを多量に含有する溶液に比べ,約1/2となり,ポリリン酸によるマグネシウム薬剤添加量削減が可能であることが明らかとなった.また,両溶液のリン回収率について比較したところ,ポリリン酸多量の溶液が7.4%大きい値を示した.
  • 八重樫 咲子, 不破 直人, 山崎 久美子, 三宅 洋, 渡辺 幸三
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_115-III_121
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本研究では,愛媛県重信川のエルモンヒラタカゲロウ(Epeorus latifolium)の流域内遺伝子流動を明らかにした.重信川は流域中で貯水ダム,堰・砂防ダム,自然環境下で存在する瀬切れによる河川分断化が発生している河川である.遺伝子流動の解析にはミトコンドリアDNAのCytochrome Oxidase subunit I領域を対象としたDNA多型分析を用いた.その結果,貯水ダム,瀬切れによって分断された集団間では有意な遺伝的分化は認められなかった.一方で堰・砂防ダム分断区間では有意な遺伝的分化が認められた(遺伝距離=0.311-0.841,P<0.001-0.01).これは短距離に多数存在している堰・砂防ダムによってエルモンヒラタカゲロウの移動が阻害された可能性を示す.ただし,堰・砂防ダムで分断された地点間は標高差が大きいことから,地点間の水温差が成長速度の違いを生み,生殖分離が発生していた可能性もある.また,本研究で対象とした貯水ダムは湛水面積0.5km2と比較的規模が小さいため,エルモンヒラタカゲロウの移動阻害が発生しなかったと考えられる.さらに,瀬切れ区間で遺伝的分化が見られなかったことは,重信川で恒常的に自然発生する瀬切れに適応して移動する生活史を地域個体群が有している可能性を示唆している.
  • 鈴木 準平, 今村 正裕, 中野 大助, 山本 亮介
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_123-III_129
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     生物影響ベースのモニタリング手法開発のため生物体内で応答するバイオマーカーのうち総抗酸化活性(TOSC)に着目し,底生昆虫(ヒゲナガカワトビケラ)に適用した.その結果,一定以上の成長度を持つ個体については,湿重量が大きいほどTOSCが高かったことから個体の湿重量に応じた補正を要することが示された.さらに,室内実験により短期的な水温変動を与えたところ,水温上昇により発生した酸化ストレスに対しTOSCの低下が見られた.その後,曝露時間とともに生残率の減少するものの生存個体のTOSCが増加することがわかった.一方,濁水に対しては,生残率には影響がないものの一定以上の濃度でTOSCの応答が見られた.したがって,TOSCを用いることで水温や濁りの急激な環境変化に伴う影響について検出可能であることが示された.
  • 伊豫岡 宏樹, 浜田 晃規, 渡辺 亮一, 山崎 惟義
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_131-III_136
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     高精度な干潟ハビタット評価を行うために,詳細な環境情報を面的に得られる手法として UAVによる低空航空写真撮影および複数の平面写真から三次元モデルを構築するSfMを用いた地形モデリングを行い,微地形の再現と地形モデルの鉛直精度検証および画像解析によるハビタット区分を行った.SfMは相対的な標高の変化については敏感で微地形をよく再現できており,RTK-VRS測量による標高と地形モデルから抽出した標高を比較すると標準偏差が2.7cmから5.2cmほどであった.適切な地表基準点(GCP)を設置してキャリブレーションを行う必要があるが,UAV-SfMにより作成された地形モデルは,河口域のハビタットや土砂輸送評価を行うのに十分な数cm程度の精度を持っており,航空写真と同程度の解像度を持つ地形モデルを用いることで微地形に依存する生物のハビタットを高精度に評価可能であると考えられた.
  • 増田 貴則, 大竹 智子
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_137-III_143
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     いくつかの湖沼において水草の異常繁茂によって流れ藻が発生している.湖沼の生物の食物連鎖に着目し,本研究ではヌマエビを用いた水草摂食実験を実施して流れ藻の削減効果があるか考察した.さらに,ヌマエビによる水質変化を把握するための水質分析も実施した.水草摂食実験の結果,ヌマエビはマツモを0.404g-wet/g・日,エビモを0.506g-wet/g・日,ホザキノフサモを0.557g-wet/g・日摂食した.この摂食量は魚類よりも大きいことが判明した.また,摂食量は18℃の低温や28℃の高温時に少なくなり,25℃のときに最大となった.このことから,水温が25℃前後になる時期にヌマエビを用いることによって流れ藻の削減ができる可能性がある.水草摂食実験の結果,ヌマエビによる水質の悪化は少なかった.
  • 長濱 祐美, 山西 博幸
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_145-III_150
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     有明海湾奥部に流入する感潮河川の河岸にはヨシが繁茂し,流下阻害などの観点から問題視されている.ヨシ繁茂を抑制する手法として貯水トレンチの造成が提案されているが,生態系へ与える影響については不明な点が多い.本研究ではトレンチ内部の生物相を明らかにし,また形状との関係について考察した.その結果,季節を問わずシラタエビを主とする甲殻類(エビ目)が優占する生物相が形成されていることが明らかとなり,夏季にはシモフリシマハゼとアベハゼを主とする魚類(ハゼ科)の優占率も高くなっていた.また,これらの生物相には貯水トレンチの形状による差は見られなかったが,トビハゼやアリアケガニは浅いトレンチと連続した構造に多く,種レベルでの選好性が示唆された.また,ミナミメダカや水生昆虫の生息場を担っていることが示唆された.
  • 尾崎 則篤, 小島 啓輔, 金田一 智規, 福島 武彦
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_151-III_159
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     異なる発生源と環境フィールドで5つのPAHの異性体比を用い発生源と大気から水系へのPAHsの流出の過程を検討した.異なるフィールドでそれぞれの異性体比の違いを効果量dにより算定し,その平均値を取ることで発生源と環境フィールド,またはフィールド同士の類似性を評価した.解析により,多くのフィールドでディーゼルまたはバイオマス燃焼の寄与が大きいと評価された.広島湾底質への負荷源と経路を考察し,西部はディーゼルとバイオマスの両方が,東部はバイオマスの影響が大きいと考えられた.
  • 北村 友一, 真野 浩行, 小森 行也, 岡本 誠一郎, 鈴木 穣
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_161-III_169
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     魚類繁殖に関係する有性生殖,成長関連遺伝子群を選出し,メダカを試験魚とする96時間の曝露実験から,活性汚泥処理,微生物保持担体処理での各遺伝子群の発現変動抑制効果の定量的評価を試みた.さらに,遺伝子発現レベルと産卵の関係解明のため,両処理水についてメダカ成魚による産卵実験を行った.その結果,下水試料に曝露された試験魚の有性生殖,成長関連遺伝子群へ及ぼす影響は,曝露区と対照区の試験魚の遺伝子発現強度の違いをユークリッド距離で示すことにより定量的に評価でき,流入下水でみられた有性生殖,成長関連遺伝子群への影響は,活性汚泥処理,後段の微生物保持担体処理により,水生生物の保全に係る水質環境基準の生物A類型の河川レベルまで低減された.産卵実験からは両処理水の産卵への悪影響は認められなかった.
  • 島﨑 大, 榎本 圭佑, 春日 郁朗, 小沼 晋, 齋藤 利晃, 秋葉 道宏
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_171-III_177
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     医療用水中の従属栄養細菌およびエンドトキシン(ET)の増大に対する銅製水道管による抑制効果を連続通水実験により検証した.アニュラーリアクター3台にポリカーボネート(PC),ステンレス(SUS),銅(Cu)の試験片を装着し49日間通水,各試験片上の従属栄養細菌数とET活性値を定期的に測定し,最終日には各試験片から細菌を単離,ET産生能力を算出し,遺伝子解析により菌種を同定した.Cu試験片は銅の酸化に伴う残留塩素消費のため従属栄養細菌が著しく増殖したが,ET活性値は他の試験片よりも低かった.Cu試験片はET産生能力が極めて高い特定のグラム陰性菌(Pelomonas puraquae等)の増殖を抑制できる可能性が示された.
  • 真野 浩行, 武田 文彦, 北村 友一, 岡本 誠一郎, 小林 憲太郎, 高畠 寛生, 山下 尚之, 田中 宏明
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_179-III_187
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     下水再生水を河川維持や修景に利用するために,処理による生物への毒性の低減効果を把握する必要がある.本研究では,マイクロプレートを用いた藻類生長阻害試験とメダカを用いた胚・仔魚期短期毒性試験によりNF膜とRO膜による毒性の低減効果を調査した.その結果,NF膜およびRO膜処理により,藻類生長に対する毒性の低減が確認された.また,RO膜処理による胚・仔魚期のメダカに対する毒性の低減が確認されたが,アンモニア濃度が高い今回の実験条件においてはNF膜処理による胚・仔魚期のメダカに対する毒性の低減は確認されなかった.
  • 真嶋 遊, 松村 直人, 伊藤 歩, 石川 奈緒, 海田 輝之
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_189-III_197
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     鉄(VI)酸カリウム(K2FeO4)を用いた場合での水試料中および下水消化汚泥中のノニルフェノール(NP)の分解除去と,汚泥からの重金属の溶出除去を検討した.NP分解において水試料では初期pHを6にすることでpH 2の条件でのFe(VI)添加量の1/200程度でNPの90%程度を除去できた.汚泥試料では初期pH 2の条件においてNPの除去に対してフェントン反応試薬と同程度のFe添加量が必要であった.また,初期pHを2.5~3.5とした場合ではpH 2あるいは7の条件に比べてFe(VI)酸イオンによるNP除去量が向上し,Pの溶出を抑えることができた.汚泥からのAs,Cd,CuおよびZnのpH低下による除去率は,K2FeO4溶液を予め添加することによって向上した.以上の結果から,下水消化汚泥にK2FeO4溶液を添加した後に汚泥を酸性化する2段階の処理によってNPと重金属類の双方を除去できる可能性を示した.
  • 大西 史豊, 養父 志乃夫
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_199-III_204
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     1960年代の燃料革命以降,里山の管理放棄,マツノザイセンチュウ被害等により,アカマツ林は衰退,消滅した。現在,里山の衰退による生物多様性の悪化,水源涵養機能,国土保全機能の低下が問題視されている。
     よって里山におけるアカマツ二次林の再生を目指し,マツ枯れ被害地においてアカマツ林の実生定着特性,樹高の初期成長について調査した。結果,Ao層が薄い急斜面においてアカマツ実生本数,生存率が有意に高い事が確認された。また,樹高成長曲線は最も誤差平方和の少ないロジスティック曲線を選び,過去の文献と比較して十分な成長が確認された。
  • 田中 周平, 水谷 沙織, 田淵 智弥, 辻 直亨, 西川 博章, 藤井 滋穂
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_205-III_213
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本研究では2008~2011年に琵琶湖岸のヨシ群落165群落において単独測位携帯型GPS植生調査および地盤高測量を行い,絶滅の恐れのある植物種の地域別・群落形状別の生育環境特性を検討した.主な成果を以下に記す.1)環境省RDB記載13種,滋賀県RDB記載25種が確認された.2)最も貴重植物が出現した群落は針江であり,5種の貴重植物(ミズネコノオ, ナガバノウナギツカミ, ヒメナミキ, ハナムグラ, ウスゲチョウジタデ)が出現した.3)貴重植物種の出現群落の中心地盤高と地盤高高低差との関係を検討し,群落の地盤高高低差45cm以上で貴重植物評価値が高くなる傾向が見られた.4)琵琶湖岸で絶滅の恐れがある植物種が多く生育する植物群落は,針江,延勝寺,小野,塩津浜であり,地域別・群落形状別に多様な生育環境特性を示した.
  • 齋藤 幸, 野村 宗弘, 西村 修
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_215-III_220
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     干潟の造成土壌資材として製鋼スラグ混合土の利用が注目されている.本研究では,底質土壌に製鋼スラグ混合土を使用した場合に,添加する製鋼スラグの粒径が海草コアマモの生育に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし,室内生育実験を行った.その結果,2mm以上の製鋼スラグを混合した系では,製鋼スラグを混合しない対照系と同程度に生長したが,2mm以下のスラグを混合した系ではコアマモの生長は制限された.また,2mm以下のスラグを混合した系では他の系よりも底質強度の上昇量・上昇速度ともに大きく,かつコアマモに利用可能なリンの欠乏の傾向がみられ,それらがコアマモの生長を阻害したと考えられた.したがって,製鋼スラグを土壌資材として使用する場合には,混合割合だけでなく,混合する製鋼スラグの粒径についても検討することが重要である.
  • 山西 博幸, 木塚 綾, 大峯 貴裕, 高致晟 , 長濱 祐美
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_221-III_228
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     大きな干満を有する有明海に面した六角川水系では,粘着性を有する微細粒子からなるガタ土堆積及びヨシを主体とした植生管理に苦慮している.これらは河道断面の狭小化や流水能の低下を引き起こし,常に河川管理者の課題となっている.また,近年,河川由来の浮遊ゴミとしてのヨシ流出も問題化している.
     本研究は,六角川水系牛津川の感潮区間にヨシ植生管理のための貯水トレンチを考案・設置し,長期にわたる調査を通して,その効果を明らかにした.その結果,植生管理としてのトレンチの有効性を示すとともに,貯水トレンチの水位を0.3m以上維持することでヨシ発芽抑制が可能であること,遮蔽板の地上部突起により高濃度の浮泥流入が抑制されること,および貯留水の排出が河川本川に与える影響はほとんどないことなどを示した.
  • 山内 正仁, 池田 匠児, 山田 真義, 八木 史郎, 渡 慶彦, 山口 昭弘, 山口 隆司
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_229-III_237
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
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     本研究では,奄美諸島の食品廃棄物であるバガス(発酵バガス),黒糖焼酎粕を用いてきのこ培地を調製し,アラゲキクラゲの栽培試験を実施した.その結果,これらの材料はきのこ培地に利用可能であり,両材料の相乗効果により,従来培地よりも効率的にアラゲキクラゲを栽培できることがわかった.また,発酵バガス・黒糖焼酎粕培地の最適配合率は,発酵バガス85%,黒糖焼酎粕10%(何れも乾物重量%)であることが明らかになった.さらに,発酵バガス・黒糖焼酎粕培地で栽培したアラゲキクラゲは従来培地で栽培したものと比較して食物繊維,β-グルカンが多く,地域特産品としての付加価値を有するものと考えられた.また,きのこはカリウムを多量に吸収する特性があることから,黒糖焼酎粕由来のカリウムを培地から41.8%削減できた.このことから,黒糖焼酎粕の農地還元による土壌の高カリウム化を抑制できることが示唆された.さらに廃培地の飼料特性を調査した結果,発酵バガス・黒糖焼酎粕廃培地は,従来の廃培地よりもリグニン,ADF,NDF含有量が少ないことから,家畜消化性は高いものと推察された.
  • 北村 洋樹, 高橋 史武
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_239-III_245
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
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     一般廃棄物焼却飛灰のキレート処理において、有害性重金属の不溶化における鉱物学的および物理的不溶化の影響について検討した。単純な湿潤化やキレート処理によってettringiteが飛灰粒子上に二次生成されるが、500回の分析を経てもettringiteへの重金属濃集は観察されなかった。同一の飛灰粒子を湿潤処理の前後で観察したところ、不溶性鉱物であるgypsum等が粒子表面に二次生成された場合のみ、可溶性成分の移動が抑制されていた。よって、短期間で二次生成される鉱物による鉱物学的な不溶化効果はほぼゼロであり、水分浸透防止による物理的な不溶化効果も限定的なものに留まる可能性が示唆された。よって、キレート処理による有害性重金属の不溶化効果とその持続性は、キレート剤と有害性重金属の錯体安定性に支配されると考えられる。
  • Tahereh MALMIR, Hiroshi NOMURA, Yasumasa TOJO
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_247-III_258
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
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     In wet climates, leachate formation is inevitable and continues over a long period. However, in arid climates, evaporation considerably exceeds precipitation so that the source of leachate is mainly limited to the water derived from the waste in the landfill. This also implies that leachate generation will eventually cease, and that the waste inside the landfill will gradually dry out. However, to date, this has not been shown quantitatively. In this study, a simple water balance model was created and applied to estimate the time period for which leachate was generated using meteorological data obtained in an arid climate. Several meteorological stations located in arid climates were selected according to the Köppen-Geiger climate classification (in Iran, USA, and Australia), and their climate data from 2000-2013 were used in the model. The configuration of a small trench that exists in landfills in Iran was taken as the landfill form in each location. The results showed that leachate was generated only for the period in which municipal solid waste (MSW) was disposed of because most of the source of leachate was formed by the moisture derived from the waste, and the greater part of the precipitation was consumed by evaporation. Almost no leachate was generated after the end of the disposal operation. This scenario applied for all of the modeled regions. The quantity of water inside the landfill was also calculated. The results from all locations indicated that the quantity of water in the landfill started to decrease after the completion of the waste disposal operation, which implies that the waste inside the landfill will subsequently dry out.
  • 湯谷 賢太郎, 兼子 大明, 福地 健一
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_259-III_266
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
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     干潟における福島第一原発事故由来の放射性セシウムの堆積・残留傾向を調べるため,千葉県木更津市の盤洲干潟において土壌放射性セシウム濃度の測定を行った.得られた土壌放射性セシウム濃度の最大値は70Bq/kg-乾土であり,周辺自治体が2011年当時に測定した土壌放射性セシウム濃度と半減期補正後に比較して同程度の値であった.また,134Cs/137Csの値は0.40~0.79となり,原発事故以前の放射性セシウムが残留していることが示唆された.放射性セシウム濃度に影響を及ぼす要因について,測定により得られた実測放射性セシウム濃度,原発事故由来と仮定した濃度,原発事故以前から存在したと仮定した濃度のそれぞれを目的変数としてステップワイズ法による重回帰分析を行ったところ,それぞれ異なる組み合わせの変数が選択されたが,強熱減量は全てのケースで選択された.
  • 有田 康一, 芦澤 淳, 藤本 泰文, 嶋田 哲郎, 林 誠二, 玉置 雅紀, 矢部 徹
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_267-III_276
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     淡水魚は海水魚よりも放射性セシウムを蓄積しやすいと考えられている.しかし成長段階に応じた蓄積については,十分に明らかになってはいない.そこで本研究では,オオクチバスMicropterus salmoidesによる放射性セシウムの蓄積様を明らかにすることを目的として,成長段階ごとの放射性セシウム濃度を測定し,セシウム137/カリウム40比についても検討した.セシウム137濃度は孵化により低下し,摂餌開始により上昇した.1個体あたりのセシウム137蓄積量は,孵化後6ヶ月間で8.6×102倍となり,成長に伴う摂餌の開始と食性の変化が放射性セシウムの蓄積に寄与している可能性が示唆された.
  • 手塚 公裕, 長林 久夫, 平山 和雄, 古河 幸雄, 中野 和典, 高井 則之
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_277-III_286
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     福島第一原子力発電所事故以降,公園内湖沼の放射性セシウムが利用者等に及ぼす影響が懸念されている。本研究は底質や水生植物の放射性セシウムの分布特性とそれらの規定要因を明らかにするため福島県の公園内湖沼の調査を行い,以下の知見を得た。1)2013年と2014年では底質表層平均Cs-137濃度は共に約3kBq/kgで有意差はない。2)底質表層Cs-137濃度は,Si含量と負の相関,K含量と正の相関がみられた。3)底質Cs-137濃度の鉛直分布は表層で高いが,地点により最大値を示す深さは異なる。4)水生植物表面の付着物由来のCs-137濃度は全体(植物体+付着物)の33~80%を占める。5)底質から水生植物(植物体のみ)へのCs-137移行係数は0.03~0.18であり,陸上の植物と同程度である。
  • 櫻庭 敬之, 伊藤 紘晃, 藤井 学, LEE Ying Ping, 梶原 晶彦, 吉村 千洋, 渡部 徹
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_287-III_295
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     宮城県南三陸町志津川流域にて,土地利用や植生と沿岸域への有機鉄供給の関連を知るため,各種土壌から雨水により溶出する鉄と有機物の濃度及び有機物の物理化学的特性を調べた.有機鉄の錯形成に関する官能基含有量の指標である吸光と蛍光を調べ,針葉樹林から官能基に富む有機物が溶出することが分かった.また,農耕地からも官能基に富む有機物が溶出した.錯形成容量との関連が想定された溶出液中の単位有機物量あたりの鉄の量については,森林土壌にて上層よりも下層が大きい傾向があり,母材由来の鉄の供給の重要性が示唆された.官能基には鉄の酸化を生じる種があるため,有機物による鉄の酸化速度定数を調べたところ,芳香族性に富む試料ほど酸化速度定数が高く,環境水中にて溶解性の高い第一鉄を比較的生じにくい特徴が示唆された.
  • 荒井 重行, 中野 和典, 西村 修, 相川 良雄
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_297-III_307
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     鉱山水中の亜鉛の除去を目的とし,湿地の還元性維持と硫酸還元細菌の活性化を狙い,固形有機物の代わりに液体である乳酸を植栽人工湿地に供給するシステムを開発した.本システムの有効性を評価するため,亜鉛(2.4±0.9mg/l)を含む鉱山水を0.2m3/m2/dayで通水して連続処理する野外実験を行った.湿地内の酸化還元電位(Eh)を指標として乳酸供給のオンオフ制御を手動で行った期間のEhは-22±268mVであったが,自動で行った期間では-165±118mVとなり,自動制御によってより安定した還元状態が維持され,亜鉛除去率も88%から93%に向上した.ろ過層の亜鉛含有量は原水流入口に近い底層で高く,逐次抽出法の交換性分画で亜鉛の多くが除去された.処理水の亜鉛濃度に及ぼす低温,高Eh及び弱酸性pH条件の影響は有意であったが亜鉛除去率の低下は僅かで安定した処理が可能であった.
  • 小松 一弘, 今井 章雄, 冨岡 典子, 高村 典子, 中川 惠, 佐藤 貴之, 霜鳥 孝一, 高津 文人, 篠原 隆一郎
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_309-III_314
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     数μ秒で測定可能なFast Repetition Rate Fluorometry (FRRF)法による一次生産速度の測定手法を確立するため,まず暗条件におけるパラメーターの取得方法を検討した。その結果,霞ヶ浦の様な浅い湖ではPAR=0となる深度での蛍光強度(FmF0)値を暗条件パラメーターとして利用する事の妥当性が示された。次に従前法である13C法とFRRF法による一次生産速度の結果を比較した。高い相関性が認められたものの,概ねFRRF法<13C法となった。回帰直線の傾きについて解析したところ,優占藻類種によってFRR蛍光光度計の感度が変化していることが分かった。最後にアオコ発生前後でのFRRF法の測定結果から,アオコ発生時に一次生産速度が必ずしも高いわけではないことが明らかになった。
  • Hongjie GUI, Haixia DU, Fusheng LI, Yongfen WEI, Toshiro YAMADA
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_315-III_322
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     The characteristics of natural organic matter (NOM) released from a representative forest soil under acidic, neutral and basic conditions were investigated based on their physicochemical properties and activated carbon adsorbability. For physicochemical properties, it was found that as the releasing condition changed from acidic to basic, NOM components possessing larger UV absorbing capability and larger molecular weight were released into water. The DOC concentration of NOM released under basic condition was tens of times larger than that under either acidic or neutral condition. On the other hand, based on the batch adsorption experiments and isotherm data analysis with a modified Freundlich isotherm model, the differences in the adsorbability of the released NOM were also demonstrated. Compared to the NOM released under either neutral or basic condition, the NOM released under acidic condition was less adsorbable, and NOM components with larger molecular weight seemed to be more preferentially adsorbed.
  • 永禮 英明
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_323-III_328
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     畜産廃水は一般に都市下水よりも濃度が高く処理が困難である.本論文では,放流水域への負荷削減を目的に養豚場の生物処理放流水中リン濃度低減策として,リン酸カルシウム沈殿生成による濃度低減について検討している.生物処理過程で原水中リンの96%が除去されリン濃度は大きく減少していたものの,処理水リン濃度は17 mgP/Lにとどまっていた.この処理水に対しカルシウムを添加することで最大67%の除去が可能であることを示す.また,沈殿生成に関し化学平衡計算にる解析を行った結果,代表的な化学平衡計算ソフトにおけるリン酸カルシウム沈殿の熱力学的パラメータ登録状況と使用上の注意点についても述べる.
  • 勝又 雅博, 真砂 佳史, 大村 達夫, 原田 秀樹
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_329-III_338
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     流入下水中の病原ウイルスの塩基配列解析は感染症流行状況の把握に有用であるとされている.しかし,既往の手法はごく限られた遺伝子領域にしか適用できないため,得た結果を用いてウイルス学的な解析を行うのは困難である.本研究ではそのような未知のウイルスの塩基配列をメタゲノム解析により効率的に解明するための手法として,ハイブリダイゼーション技術を用いて解析対象であるウイルスゲノムのみを回収する手法の開発を行った.その結果,最適な回収手法の確立に成功し,この手法を用いることで下水試料から回収対象であるウイルスゲノム(エンテロウイルス:71%)を,非回収対象のウイルスゲノム(マウスノロウイルス:0.18%,トウガラシ微斑ウイルス:0.19%)と比較し非常に高い回収率で回収することに成功した.
  • 風間 しのぶ, 真砂 佳史, 沼澤 聡, 大村 達夫
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_339-III_349
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     流入下水中の病原微生物の存在は地域における感染性胃腸炎の流行状況の指標として有用である.しかしながら,下水に存在するウイルスの多くがバクテリオファージでヒト病原ウイルスの相対的存在量は極めて少ないことから,下水中の全ウイルスを対象としたメタゲノム解析にてヒト病原ウイルスを検出することは非効率的である.本研究では,多くのヒト消化器系ウイルスが属する1本鎖(+)RNAウイルスのみを対象としたメタゲノム解析手法を考案し,流入下水試料に適用した.その結果,下水中のウイルスの多くを占めるバクテリオファージの排除と植物ウイルス由来の配列数の減少に成功し,下水中の全ウイルスを対象としたメタゲノム解析より10倍の効率でヒトに感染するウイルス(3科5属)を検出することができた.
  • 中西 智宏, 浅田 安廣, 越後 信哉, 伊藤 禎彦
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_351-III_359
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     水再生利用のための土壌浸透処理において下水処理水中の溶存有機物(DOM)の物理化学的性質がウイルス吸着除去性に及ぼす影響を評価した. 具体的にはまず3種類の下水処理水を対象として砂に対するアデノウイルスF群のバッチ式吸着実験を行い, その吸着性を比較した. さらに下水処理水中DOMを疎水性と分子量の違いによって分画し, 各画分の存在下で吸着実験を行うことで, ウイルスの吸着を阻害するDOMの性質を検討した. その結果, 対象とした全ての下水処理水でDOMの存在によりウイルスの吸着性が低下し, 特に疎水性画分と5000 Da以上の高分子画分において大きなウイルスの吸着阻害効果が確認された. これより, 土壌浸透過程でのウイルスの吸着除去特性はDOMの存在だけでなくDOMの特性によっても大きく依存することが明らかとなり, ウイルスの吸着挙動を理解する上では共存DOMの性質も考慮する必要性を示した.
  • 小坂 浩司, 福田 圭佑, 中村 怜奈, 浅見 真理, 越後 信哉, 秋葉 道宏
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_361-III_369
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     カルキ臭の主な原因物質の一つであるトリクロラミンについて,浄水場のオゾン/活性炭処理での生成能の挙動を検討した.その結果,トリクロラミン生成能は,オゾン処理後に増加する場合があること,しかし,その後の活性炭処理でオゾン処理前と同程度あるいはそれより低下することが示された.オゾン処理後にトリクロラミン生成能が増加する理由の一つとして,共存する天然有機物の構造が変化し,トリクロラミン生成能を低下させる構成部位が減少したためと考えられた.この反応に対し,フェノール性水酸基が重要な部位であると考えられた.遊離塩素濃度を低く設定したり,pHを8に上げることは,トリクロラミン生成能の低減に有効であることが示された.
  • 今井 剛, 西原 慧, 樋口 隆哉, 神野 有生, 山本 浩一, 関根 雅彦
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_371-III_378
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     近年、水道水の殺菌において塩素による処理方法ではさまざまな問題点が浮上してきている。そこで本研究では、塩素低減型殺菌技術として少量の塩素と高濃度気体溶解水とを併用した殺菌処理法の開発を行う。これは少量の塩素により微生物の細胞壁や細胞膜に損傷を与え、続いて高濃度気体溶解水を微生物の体内に取り込ませ、その後瞬時に除圧することで高濃度気体溶解水中の溶存気体が微生物の細胞内でガスとして発生・膨張し、微生物を内側から破裂させ殺菌する方法である。本研究では溶解する気体として空気を適用し、塩素添加量を低減させ殺菌できるか検討を行った。その結果、圧力を0.6MPaにすることで塩素添加量を9割低減し殺菌できた。さらに処理開始前に塩素との接触時間を10分間設けることで殺菌効果の向上が確認された。
  • Haixia DU, Fusheng LI, Chunhua FENG
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_379-III_387
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     Experiments of MFC for treating liquids of potato, tomato and lettuce as well as potato cubes with different edge lengths of 3, 5 and 7 mm were conducted, and the differences in the removal of organic matter and electricity generation were evaluated. For all three vegetable liquids, organic matter contained was effectively removed (the final removal for COD was 89.6-93.2 %), with slight differences being appeared only in the initial several days. The current density (72.2-100.2 mA/m2) followed the order of potato > tomato > lettuce, while the columbic efficiency varied slightly (15.6-17.3 %). For potato cubes with three different sizes, the obtained results showed the final removal for total COD could reach 88.0-91.8 %, with the cubes of 7 mm revealing a comparatively slower removal rate in the first half of the whole operation for 81 days. The corresponding current density was found to be in the range of 163.3-189.1 mA/m2 and the columbic efficiency in the range of 51.5-63.9 %, both following the order of 3 mm > 5 mm > 7 mm. The findings of this study are considered useful for optimization of the composition of vegetable waste, which is normally consisted of liquids and solids of different vegetable types, for treatment by MFCs.
  • 窪田 恵一, 玉谷 守, 幡本 将史, 山口 隆司, 渡邉 智秀
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_389-III_396
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     一槽式微生物燃料電池(MFC)を用いて乳酸が主要な有機物成分として含有されることを特徴とする食品製造系排水の処理特性を実験的に検討した.また,開回路系と酢酸模擬排水供給系を対照として,基本的な処理ならびに発電特性について比較を行った.その結果,実排水に対する有機物分解速度はMFCでは1.4 kgCOD/m3/dayに達し,開回路系の0.9 kgCOD/m3/dayに比べ約1.6倍に向上した.MFC内では乳酸の分解産物と考えられるプロピオン酸等の有機酸の分解速度が大きく上昇しており,このことが有機物分解速度向上に寄与した.また,MFC内では開回路系に比べGeobacter属の細菌群が高い割合で検出され,実排水処理においても発電のみならずプロピオン酸等の分解にも寄与していることが示唆された.
  • 馬 海元 , 張 彦隆 , 何 士龍 , 牛 啓桂 , 久保田 健吾, 李 玉友
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_397-III_404
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本研究では,UASB型Anammoxプロセス運転に及ぼす基質濃度の影響を明らかにするために,流入基質の全窒素(TN, total nitrogen)濃度を段階的に変化させて連続実験を行い,各段階の運転状況,また反応槽の高さによる水質・汚泥活性変化,阻害因子の影響を検討した.その結果,5.6kgN/m3/dの窒素負荷で,TN濃度を450 mg/L以下に維持することで,平均TN除去率は83.3%以上に達した.同窒素負荷条件下では,Anammox活性が反応槽の高さの13 cm以下の底部に集中し,中部と上部のAnammox活性は低下の傾向を示した.また,TN濃度が550 mg/Lと700 mg/Lの条件下では,遊離アンモニアと遊離亜硝酸が阻害を与えると考えられた.
  • 藤澤 宗一郎, 小林 ひかり, 吉田 愛里, 大平 勇一, M. Venkateswar Reddy, 張 傛喆, 菊池 慎太郎
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_405-III_411
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本稿では南極の非汚染土壌から単離された真菌Penicillium sp. CHY-2 株と Tween 80 の併用による4-ブチルフェノール(4-BP)及びアルキルフェノール類の低温分解を評価した. Tween 80 の添加により低温下での 4-BP の分解及び CHY-2 株の増殖は促進され, 4-BP の分解速度は Tween 80 非存在下に比べて約3倍増加した. さらに Tween 80 は CHY-2 株により炭素源として利用され, グルコースよりも 4-BP の分解及び CHY-2 株の増殖に対して優れた炭素源であることが示唆された. また, Tween 80 は炭素源となること以外にも, グルコースの菌体内への取り込みあるいはグルコースの代謝を促進する効果もあると推測された.
  • 菅原 豪人, 小山 大貴, 澤田 研, 張 傛喆, 菊池 慎太郎
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_413-III_419
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     Aquamicrobium sp. SK-2 株からビフェニル分解酵素2, 3-ジヒドロキシビフェニル-1, 2-ジオキシゲナーゼ(BphC)の精製を行い, BphC 酵素を精製した. この酵素の分子量は65kDaで二量体であった. 諸特性の検討を行った結果, 幅広い温度領域において活性を保持し, その最適温度は30°Cであった. 最適pHの検討に関しては, 中性からアルカリ性領域において高い活性を保持し, その最適pHは8.0であった. KmVmaxを算出した結果, Km=12.0 μM, Vmax=154 mM/min であり, SK-2 株由来 BphC は2, 3-DHBP と比較的高い親和性を有していることが判明した. 精製酵素のN 末端アミノ酸配列を解析したところ, Pseudomonas sp. KKS102 株由来 BphC と92%の高い相同性を示した. また, BphC による2, 3-ジヒドロキシビフェニルとカテコールの開環反応を確認した.
  • 石渡 恭之, 加藤 健, 藤田 昌史
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_421-III_425
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     懸濁物質は水道水質障害を招く場合があるため,配水管路における挙動の知見を得ることが重要である.本研究では,わが国で多く使われているモルタルライニング管の管路にみられる懸濁物質の特徴を解析するとともに,その数が懸濁態元素濃度と同様の挙動を示すことが報告されている細菌について存在状況を調査した.懸濁態元素濃度を定量し主成分分析により解析すると,第一主成分はAl,Caと強い相関を示す因子でありモルタルの影響を示していると考えられた.すなわち,ライニングのモルタルに由来するAlやCaを含む粒子の水中への混入が懸濁物質の組成への影響要因となっていることが示された.また,既報におけるキノンプロファイル分析に基づく細菌数の推定では,水道水質基準を上回ると報告されていたが,全ての地点で一般細菌はほとんど検出されず,死菌か標準寒天培地では培養できない細菌であると考えられた.
  • 西村 文武, 清家 太郎, 山田 登志夫
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_427-III_436
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     ポーラスコンクリートを河床に適用することで、生物膜の形成促進や付着生物量の増加を図り、自浄作用を強化する河川浄化法が検討されている。本研究では、アンモニア吸着を期待して開発されたゼオライト含有ポーラスコンクリートを取り上げ、河床に適応した際の生物膜形成や生物活性について評価するとともに河川水のコンクリート表面流速の影響について水路実験を行い検討した。表面流速は、生物付着特性や活性(硝化活性)に影響を与える因子であり、5~40cm/sの範囲において、流速が速い条件で生物膜付着性能や硝化活性が高まることがわかり、流速増加に伴い生じる河床近傍での乱流が、微生物の活性や付着増殖に関与することが示された。適切な水流条件下に生物膜形成の場を設定することが、微生物付着性および生物活性の保持能力を高め、比較的早期の硝化を発現させることに繋がることがわかった。
  • 井上 美穂, 長岡 裕, 酒井 駿治, 森田 優香子
    2015 年 71 巻 7 号 p. III_437-III_446
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
     本研究では,MBRにおいて曝気による平膜モジュールの振動がファウリング抑制効果に与える影響について検討するため,ろ板の厚さを変化させた3種類の平膜モジュールについて人工試料を用いて膜間差圧の上昇速度を測定するとともに,レーザー変位計を用いて振動変位を定量化した.ろ板厚さが大きい平膜モジュールほど振動の振幅が小さくなり,膜間差圧の上昇速度は小さくなることが示唆された.曝気により発生する膜面せん断応力は,平膜モジュールの厚さが大きくなるほど増加し,平膜モジュールの振動を抑制することによって膜間差圧の上昇を抑制する効果が促進されることが明らかになった.
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