土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
72 巻, 7 号
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環境工学研究論文集 第53巻
  • 段下 剛志, Hoang T. N. DAO, 幡本 将史, 高橋 優信, 牧 慎也, 山口 隆司
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_1-III_8
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     本研究は,400 mgN/L程度のアンモニア態窒素を含有するメタン発酵脱水ろ液の部分硝化を目的とし,DHSリアクターを用いて連続処理実験を行った.廃水のpHは8.4程度であったが,初期の運転条件では硝化の進行に伴い処理水のpHが6.0程度まで低下し,亜硝酸酸化が抑制できなかった.pHの低下を抑制することを意図して廃水の2段および4段ステップ流入を適用し,初期の運転条件との処理性能を比較した.4段ステップ流入では流下水のpHが7.5~8.0程度に維持されており,生成された亜硝酸・硝酸態窒素のうち,約90%を亜硝酸態窒素として蓄積させることができた.運転終了時に保持汚泥の脱窒活性を測定したところ,26~49 mg-N/g-VSS/dayであり,流下に伴い活性値が上昇したことから,ステップ流入の適用はDHSリアクターを用いた脱窒の促進にも効果的であると考えられた.
  • 張 彦隆, 馬 海元, 北條 俊昌, 李 玉友
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_9-III_17
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     本研究では,Anammox付着膜膨張床が高窒素負荷に適用する可能性を明らかにするために,流入窒素負荷を段階的に上昇させて35℃で連続実験を行い,各段階の運転状況,また比Anammox活性変化,汚泥特性を検討した.その結果,窒素負荷が40 gN/L/dの条件においても,TN(Total nitrogen)除去率は87.97±1.00% に達した.また,窒素負荷が30gN/L/dの条件で,最大比Anammox活性は0.68±0.07gN/gVSS/dに達した.反応槽内形成したAnammoxグラニュールは良好な沈降性能を持ち,沈降速度は263.1±26.9m/h以上に維持できた.Anammox付着膜膨張床は高窒素負荷に適するAnammoxプロセスと考えられた.
  • 北條 俊昌, 劉 媛, 王 少坡, 牛 啓桂, 紀 佳淵, 李 玉友
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_19-III_27
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     完全混合反応槽に担体を添加して一槽式Anammoxの連続実験を行い,装置の立ち上がり状況や脱窒特性,担体に付着した微生物の状況などについて検討を行った.曝気量を適切に制御しアンモニア酸化細菌(AOB)とAnammox細菌を共存させることで80日程度で装置のスタートアップができることが示唆された.25℃,容積負荷0.5kg-N/m3/dの条件下において平均69.6%,最大81.1%の窒素除去率が得られた.活性実験の結果,リアクター内におけるAOBとAnammox細菌の棲み分け状況を確認でき,亜硝酸化反応は浮遊汚泥と担体汚泥の両方により,Anammox反応は主に担体に付着した微生物により行われていることが示された.また担体にはAnammox細菌の増殖空間を提供する役割があり,AOBとAnammox細菌が共存していることとが明らかとなった.回分実験による解析結果から本研究の担体添加型一槽式Anammoxプロセスの脱窒ポテンシャルは2.56kg-NH4+-N/m3/dであることが推定された.
  • 山田 登志夫, 西村 文武, 田中 基博, 葛西 博文, 松枝 直人, 逸見 彰男
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_29-III_36
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     河川や水路での自浄作用促進のために,ポーラスコンクリートの活用がなされてきている.さらに,水質改善能力を増加させるため,陽イオン交換・吸着機能を持つゼオライトなどの物質をポーラスコンクリートに含有させる方法が開発されている.しかし,含有したゼオライトによる効果のメカニズムについて,詳細には分かっていない.本研究では,硝化反応に着目し,微生物付着量や反応速度について,ポーラスコンクリートの空隙およびゼオライトの含有率やゼオライト種(担持陽イオン種)による影響を明らかにすることを目的とした.コンクリートをポーラス状にすることで,比表面積が増大し生物付着量が増加し,結果としてアンモニア除去速度を2倍近く上げうることが示された.またゼオライトによるアンモニア吸着効果も生物処理効果と同程度に有効となることもわかった.ゼオライト種(担持陽イオン種)により硝化促進効果も変化するものの,硝化細菌群数からその現象を説明をすることは出来なかった.
  • 林 誠二, 辻 英樹, 伊藤 祥子, 錦織 達啓, 保高 徹生
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_37-III_43
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     平成27年関東・東北豪雨による福島第一原発事故を由来とする放射性Csの移動実態把握を目的として,福島県浜通り地方河川の宇多川水系の森林渓流(森林小流域),ダム放流水(ダム湖流域),本川下流(流域全体)を対象に放射性Cs動態調査を実施した.観測結果から算定された豪雨時のSSならびにCs-137総流出量は,いずれの流域でも前年の2014年の年間総流出量を大きく上回ったが(SS:1.6~9.5倍,Cs-137:1.4~5.3倍),ダム放流水や流域全体で,SSに比べCs-137の流出規模は下回り,流域内の農地等における面的な除染の影響が示唆された.また,豪雨時におけるダム湖への流入Cs-137の90%以上が沈降,堆積したと推定され,ダム湖による下流域への放射性Cs移動・拡散防止機能が確認された.
  • 鈴木 裕識, 田中 周平, 北尾 亮太, 雪岡 聖, 中田 典秀, 藤井 滋穂, 齋藤 憲光
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_45-III_53
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     本研究グループでは,前駆体から生成するPFCAs量をPFCAs生成ポテンシャル(PFCA-FPs)と定義してその評価手法を検討し,適用を進めてきた.本研究では,下水処理水が水源のほぼ100%を占める都市河川を対象に,流下過程におけるPFCAsとPFCA-FPsの挙動の把握を主目的とし調査を行った.その結果,1) 生成ポテンシャルとして評価された前駆体が下水処理放流水中に残留し,2) 河川流下過程でPFOAとPFHxAの負荷量が増加していた.3)また,PFPeA-FPやPFHxA-FP等の生成ポテンシャルとして評価された前駆体が底質に移行しやすい傾向が確認され,4)さらに,LC-MS/MSによるMRM測定を用いて未知物質の探索を試みた結果,河川試料から5:3FTCAや5:2ketonとみられるピークが検出され,5:3FTCAとみられる化合物の底質中の蓄積が示唆された.
  • 服部 啓太, 中村 由行, 比嘉 紘士, 鈴木 崇之, 内藤 了二, 小椋 進
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_55-III_65
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     名古屋港において測定された既往の底質データを統計的な手法を用いて解析し,港湾域における底質の物理基本指標や重金属類ならびに多環芳香族炭化水素類(PAHs)等の平面分布の特徴を明らかにした.港内の36地点、35項目のデータをクラスター分析により分類したところ,3つの分布パターンに分類できた.それらは底質の物理指標と有機汚濁指標からなる第1パターン,重金属類を中心とする第2パターン,PAHsの第3パターンである.これらパターン毎の分布の特徴を物理的な性質,化学的な性質を踏まえて考察した.第1パターンに含まれる因子は含水比と強い相関関係があり,岡田らが見出した東京湾での関係と定量的にも近い関係であった.第2パターンには重金属類が含まれ,特に砒素を除く5物質については港奥側での最大値で規格化すると,同一の指数関数的な分布で整理できた.第3パターンはPAHsから構成され,これらを更にクラスター分析で細分すると,環数や分子量,オクタノール・水分配係数の大小に沿って4つに細分類できた.それぞれの分布形状を,CV, 歪度,尖度といった統計量で整理すると,オクタノール・水分配係数とで良い相関関係が得られ,特にオクタノール・水分配係数の小さい物質ほど局所的に堆積していることが示された.これらのことから,港湾域における化学物質の分布は汚染の負荷源の違いや,それぞれの物質が吸着する物質の違いとともに,それらが港湾内で輸送される物理過程に強く依存していることが示唆された.
  • 玉井 昌宏, 國枝 桂子
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_67-III_78
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     火山ガスの簡易なリスク評価法を開発することを目標として,ここでは九州の阿蘇山から放出される二酸化硫黄SO2を対象として,外輪山西側の熊本平野における濃度変動特性と気象状況との関係を検討した.1日程度の時間スケールの変動成分が支配的であることから,24時間分の濃度時系列にクラスター分析を適用し,高濃度となった日を抽出し,各種気象観測データを分析した.その結果,東寄りの強い地衡風で地上風も昼間東寄りの強風となる東風連吹パターン,東寄りの比較的強い地衡風の下で,昼間の地上風が阿蘇山周辺では東寄り,熊本平野では西寄りになる地衡風補償流パターン,地衡風が弱く,広域海風が出現していると推測される海陸風パターンなど,SO2の高濃度状況を発現させるいくつかの典型的な気象パターンを明らかにした.
  • Hideki OSAWA, Jenyuk LOHWACHARIN, Satoshi TAKIZAWA
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_79-III_86
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     This study aimed to compare the removal rates of precursors of disinfection byproducts (DBPs) by ferrihydrite (FH) and powdered activated carbon (PAC) in the hybrid adsorption-microfiltration (MF) processes. The formation potentials of trihalomethanes and haloacetonitriles (DBPFPs) and characteristics of dissolved organic matter (DOM) from drinking water sources having different contents of aromatic DOM and bromide, were evaluated before and after the FH+MF or PAC+MF treatments. It was found that the DOM characteristics influenced significantly on their removal rates; namely, the FH+MF process lowered DBPFP in waters containing aromatic DOM by mainly removing precursors of chlorinated DBPs, whereas brominated DBPs increased after FH+MF due to higher Br/DOC ratios caused by residual bromide. The PAC+MF process was more effective than the FH+MF process in removal of low molecular weight (MW) hydrophilic DOM, which was a precursor of dichloroacetonitrile. In addition to DOM characteristic (i.e. MW, aromaticity), an inorganic precursor (i.e. bromide) also had significant effects on DBP yields and bromine substitution. When bromide was abundant in water, bromine appeared to be more effectively incorporated into low UV-absorbing (i.e. less aromatic) DOM fractions and simple structural DBPs.
  • 雪岡 聖, 田中 周平, 鈴木 裕識, 藤井 滋穂, 清水 尚登, 齋藤 憲光
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_87-III_94
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     本研究では,化粧品中のペルフルオロ化合物類(PFCs)の前駆体の把握を主目的とし,一定条件下で酸化分解を行うことで,種々の前駆体をPFCsに変換し,生成ポテンシャルを評価した.さらに精密質量分析により前駆体の化学構造の探索を行った.30製品中の15種のPFCsの総含有量は146~8,170 ng/g-wetであり,PFCs生成ポテンシャルは75~93,200 ng/g-wetであった.一部のファンデーションと化粧下地にPFCsの11~199倍のPFCs生成ポテンシャルが存在した.化粧品成分として「フルオロ(C9-15)アルコールリン酸」を含むファンデーションを精密質量分析した結果,7種のポリフルオロアルキルリン酸エステル類(PAPs)が検出され,それらはPFCsを生成する前駆体である可能性が示唆された.
  • 中田 典秀, 板井 周平, 楊 永奎, 鈴木 裕識, 田中 周平
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_95-III_106
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     現行の化学物質の管理に関する法令では,化学物質が使用・排出後に上・下水道を含む都市の水循環の中で受けうる化学的処理により生成する副生成物の生成能については考慮されていない.そこで,オゾン,遊離塩素,クロラミンによる有害化学物質の生成能試験法を確立することを目的に検討を行った.8種のN-ニトロサミン,4種のアルデヒド,4種のトリハロメタンを対象物質とし,これらを生成する化学物質の生成能試験,試験結果の評価方法を検討した.PRTR情報および下水処理水量等の情報を基に下水中濃度を推定し,比較的高濃度かつ前駆物質となると予想される構造を有する物質を選出し,確立した生成能試験に供した.選出した6物質について合計15の定量的な生成率データを得た.
  • 真野 浩行, 武田 文彦, 南山 瑞彦
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_107-III_115
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     溶存態の金属濃度が高い二次処理水に対してニセネコゼミジンコとオオミジンコの生物応答を用いた排水試験を実施した.試験結果から対象の二次処理水によるニセネコゼミジンコへの影響が確認された.オオミジンコへの影響は確認されなかったことから,調査対象の二次処理水に対するニセネコゼミジンコの感受性はオオミジンコよりも高いことが示された.次に,二次処理水に含まれる生物影響の原因物質を推定するために毒性同定評価試験を実施したところ,陽イオン金属とアンモニアが原因物質として推定された.推定された原因物質の生物影響を水質分析結果から検討したところ,ニッケルの生物影響が示された.本研究で用いた二次処理水では,毒性同定評価試験により下水処理水の溶存態の陽イオン金属の生物影響を検出できた.
  • 髙島 正信, 中尾 総一
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_117-III_124
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     下水汚泥TS9~15%の超高濃度消化(中温約35℃,HRT 20~30日),および消化汚泥からのアンモニア除去/回収と阻害軽減について実験的に検討した.流入TS9~11%では,VS分解率51.3%,ガス発生率0.483NL/gVSと良好に嫌気性消化された.流入TS12~15%では,4,000mg/Lに達したアンモニア性窒素による阻害が観察されたが,アンモニアストリッピングと組み合わせてその消化槽内濃度を低減すると回復した.ストリッピング装置は回分式で運転し,流入TS9~11%,12~15%の消化汚泥についてそれぞれ約83,60%の平均アンモニア除去率が得られ,除去されたとほぼ同量が硫酸溶液中に回収された.よって,アンモニア制御を行えば,流入TS12~15%まで嫌気性消化が可能なことが示された.
  • 水野 忠雄, 菊池 保宏, 津野 洋, 日高 平, 西村 文武
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_125-III_133
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     濃縮余剰汚泥のメタン転換率や嫌気性消化効率の向上を目的として,亜臨界水処理を組み込んだ超高温・高温二段式嫌気性消化法の適用について検討した.まず回分式実験を行い,180℃,1MPaによる60分間の亜臨界水処理により,濃縮余剰汚泥のCODCr可溶化率が50%に達し,タンパク質は60から70%,全糖も70%が溶解することがわかった.可溶化と酸生成が促進された結果,続くメタン発酵プロセスにおいても初期段階におけるガス生成ピーク時の生成量も増加することを明らかにした.この結果を踏まえ,140日間の連続式実験を行い,亜臨界水処理を嫌気性消化の前段に組み込むことでCODCr,TSおよびVS除去率が向上し汚泥処理の効率化が可能になること,亜臨界水処理汚泥を単独で用いるよりも,生ごみを少量添加することにより,より安定した処理が可能になることを明らかにした.
  • 日高 平, 佐野 修司, 西村 文武, 藤原 雅人
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_135-III_144
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     小規模下水処理場での簡易運転型集約嫌気性消化導入を想定して,オキシデーションディッチ法からの脱水汚泥および模擬生ごみ試料を対象とした連続式および回分式嫌気性消化実験を行った.その結果,脱水汚泥では0.1~0.2 NL/gVS-投入程度の,模擬生ごみでは0.7NL/gVS-投入程度のバイオガス転換率が得られた.脱水汚泥および模擬生ごみを混合消化することで,単独の場合よりもバイオガス生成量が増加する相乗効果が確認された.脱水汚泥を投入することで消化汚泥の粘度は高まるものの,汚泥引き抜きや撹拌などの操作を簡易化することで対応しうると考えられた.栽培試験により,消化汚泥は液肥として活用可能であり,肥料効果は速効性であることが示された.
  • 窪田 恵一, 玉谷 守, 渡邉 智秀
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_145-III_152
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     本研究では,微生物燃料電池(MFC)の有機物組成変化による性能への影響調査を目的として,実排水および乳酸と酢酸をそれぞれ単一基質として安定的に運転されているMFCに供給する有機物組成を変更し,COD除去や発電性能,微生物菌相への影響を把握した.その結果,有機酸組成変更によりMFCの性能は影響を受け,酢酸から乳酸へと変更した際に大きい一方で,実排水から酢酸に変更した際は最大電力密度が変更前後で共に約270 mW/m2を発揮し影響が小さかった.また,アノードの菌相解析によりAcetobacterium属がMFCの乳酸分解過程で重要な役割を担っていることが示唆され,乳酸が主体の実排水処理におけるMFCの性能維持や安定化には,発電に寄与する微生物のみならず共生微生物群の保持も重要であることがわかった.
  • 賀須井 直規, 春日 郁朗, 栗栖 太, 片山 浩之, 古米 弘明
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_153-III_160
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     雨天時越流水による汚濁負荷の起源として管内堆積物の重要性が指摘されているが,その排水区レベルでの動態に関する知見は不十分である.本研究では,Ackers & Whiteによる懸濁物質輸送堆積理論を採用した分布型モデルによって排水区単位(面積42.2 km2)で堆積物の蓄積・掃流・輸送について解析し,その結果をもとに貯留雨水投入による堆積物除去による越流負荷削減効果について評価した.管内堆積物は,晴天時の蓄積,雨天時の掃流ともに空間的差異が大きく,越流負荷の起源の特定には空間的な蓄積・掃流特性の両面を考慮する必要があることが推察された.選定した上流部3地点からの清掃水投入時の流出解析により,32400 m3の清掃水投入によって18.3 %の年間越流負荷削減効果が推定された.越流負荷削減手法としての管渠清掃の効果をモデル解析で検討することは有意義である.
  • 金 相曄, 多田 彰秀, 田井 明, 鈴木 誠二
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_161-III_168
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     諫早湾北部海域で頻繁に発生している貧酸素水塊の発生機構を解明するため,現地で計測した水質指標および潮流流速のデータを用いて検討を加えた.観測櫓で取得されたデータから水温,塩分およびChl-aと底層のDOに関する重回帰分析を行った結果,底層のDOは,表層と底層との水温差,底層と表層との塩分差および12時間前の表層でのChl-a値と負の相関関係を有し,それらの中でも特に,水温差が底層のDOの動態に大きく影響を及ぼしていることが分かった.さらに,観測櫓B4の底層のDOの動態は,水温躍層が形成される水深によって制約を受けていることが明らかとなった.また,潮流流速のデータに基づけば,諫早湾北部海域の釜地区地先で発生する貧酸素水塊は,観測櫓B4から移流される低酸素水塊のDOが消費されたためと判断される.
  • 永野 雄一, Nguyen Bac GIANG, Pham Khac LIEU, 古米 弘明
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_169-III_177
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     感潮域に位置するフエ旧市街地の運河は,未処理汚水の流入先となっており深刻な糞便汚染が推定される.採水調査を行った結果,全地点で大腸菌数が環境基準を超過し,旧市街地中央部(中央運河)において,河川と通じ外周を流れる運河(外周運河)よりもECとNH4-N濃度が高いことが明らかとなった.中央運河は上下流端で外周運河と接続しているが,水位とECの連続観測により,下流端において干潮時のEC上昇及び満潮時の低下と,中央運河の中心付近における高いECを示す汚染水塊の停滞が確認された.1次元水理水質解析によって,中央運河で汚染水塊が形成されること,下流端において干満に伴い汚染水塊と外周運河からの流入水が行き来することを再現するとともに,上流端における狭窄部の拡幅により汚染水塊の停滞が消失することを示した.
  • 岡﨑 健治, 山崎 秀策, 倉橋 稔幸, 榊原 正幸
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_179-III_185
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     重金属等を吸収する植物(カヤツリグサ科マツバイ)を用いて,セレンを含むトンネル掘削ズリからの浸出水,ヒ素を含む河川水の浄化実験を行った.浸出水の実験では,現場の貯水槽へ植物を浮かべ,浸出水のセレン濃度と植物のセレン含有量の経時変化を測定した.河川水の実験では,植物を敷設した人工水路へ2日間で300 L流入させ,流出後のヒ素濃度,植物のヒ素含有量及び流出水量を測定した.実験の結果,貯水槽の浸出水のセレン濃度は0.039 mg/Lから90日で0.002 mg/Lに減少,植物のセレン含有量は7.2 mg/kgに増加した.河川水のヒ素濃度は200 L流下後に初期値の約60 %,ヒ素含有量は4.16 mg/kgに増加した.また,流出量は,平均気温に応じて流入量の41~64 %に低減し,人工水路で蒸発散させる効果を確認した.
  • 長町 晃宏, 井口 晃徳, 瀬戸 雄太, 久保田 健吾, 押木 守, 荒木 信夫, 大久保 努, 上村 繁樹, 高橋 優信, 原田 秀樹, ...
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_187-III_195
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     活性汚泥法の代替下水処理技術として一次沈殿処理の後段処理にDown-flow Hanging Sponge (DHS)を組み合わせた低コスト・低エネルギー消費型下水処理システム(一次沈殿+DHSシステム)を考案し,1,000日以上に及ぶ連続通水実験を実施した.その結果,衛生指標微生物としての大腸菌群及び糞便性大腸菌群の対数除去率は,DHSのHRTが0.8時間の時にはそれぞれ1.45 log,1.88 logと低かった.この時のBOD,SSの除去率は80%以下で,硝化反応も見られなかった.しかしDHSのHRTを3.2時間とすることで,大腸菌群及び糞便性大腸菌群の対数除去率は,2.73 log,3.15 logを示し,BOD,SSの除去率もそれぞれ90%以上を達成した.同一下水を処理している活性汚泥法による大腸菌群及び糞便性大腸菌群の対数除去率がそれぞれ2.55 log,2.19 logであり,BOD,SS除去率もほぼ同等だった.以上より,一次沈殿+DHSシステムは,HRTを管理することで活性汚泥法とほぼ同等の衛生指標微生物除去性能を得ることができる.
  • 榊原 崇, 浅田 安廣, 國本 啓太, 伊藤 禎彦
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_197-III_205
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     高人口密度地域において短い滞留時間の土壌浸透処理を想定する場合, 土壌浸透処理表層でのウイルス除去効果把握がウイルスリスク低減効果の把握につながると予想される.そこで, 土壌浸透表層において不飽和と飽和層を想定し,土壌浸透リアクター試験によりアデノウイルスとロタウイルスの除去効果について検討した.その結果,土壌浸透表層での平均対数除去効率はそれぞれ1.09 log10, 0.47 log10, 下部の浸透層ではそれぞれ0.88 log10,-0.38 log10となり, 表層で両ウイルスの除去効果が高いことが示された。同時に,不飽和層がアデノウイルスの除去効果を向上させる可能性が示唆された.また両ウイルスの除去効果が異なることを示し,病原ウイルスの除去性を個々に把握する必要性を指摘した.
  • 安井 宣仁, 諏訪 守, 南山 瑞彦, 植松 龍二
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_207-III_216
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     本研究では,低圧・中圧紫外線ランプ照射後に可視光ランプ照射により,抗生物質耐性大腸菌の不活化と光回復の影響を評価した.その結果,アンピシリン,セフジニル,カナマイシン,テトラサイクリン,スルファメトキサゾ-ル・トリメトプリム,ゲンタマイシンの6種類の抗生物質に耐性を持つ大腸菌(6剤耐性大腸菌)および,これらの抗生物質とイミペネム,レボフロキサシンの8種類に耐性を持たない大腸菌(0剤耐性大腸菌)の最大光回復を考慮し,3Log(生残率=0.001)の不活化を見込む場合,0剤耐性大腸菌は,低圧・中圧紫外線ランプ照射で総相対殺菌有効放射線量(総相対殺菌有効放射照度(mW/cm2)×照射時間(s))が15mJ/cm2以上,6剤耐性大腸菌の場合,低圧紫外線ランプ照射時では15mJ/cm2以上,中圧紫外線ランプ照射時では20mJ/cm2以上の紫外線の照射が必要であることが分かった.
  • 板倉 舞, 重村 浩之, 小越 眞佐司, 南山 瑞彦, 吉澤 正宏, 山縣 弘樹, 山中 大輔, 山下 洋正
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_217-III_226
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     ノロウイルスを対象に,再生水利用用途ごとの年間感染確率に応じたウイルス除去率の試算,設定した除去率を満たす処理・消毒フローの選定,フロー毎のコスト・エネルギー消費量の試算を行った.1回あたりの摂取水量が大きい親水用水利用で最も高いノロウイルス除去率が必要であった.建設費・電力量は,塩素消毒<紫外線消毒<オゾン消毒を含むフローの順で大きくなり,維持管理費は塩素消毒と紫外線消毒を含むフローで同程度であった.リスク制御レベルが高くなると,ライフサイクルコストおよびエネルギー消費量(電力量)が大きくなる傾向が見られた.上記の結果を踏まえ,衛生学的リスク,コスト,エネルギーを考慮した再生水処理・消毒プロセス選定方法を提案した.
  • 伊藤 竜生, 藤岡 みなみ, 船水 尚行
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_227-III_233
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     日本はリン肥料の全量を輸入に頼っており、その価格は国際価格に依存する。安定的に供給するためにはリン鉱石以外のリン資源が求められており、牛尿は排水として処理されることが多いため、未利用のリン資源と考えられる。本研究では、牛舎で発生する尿を主体とした排水からリン回収を行うために、尿中に自発的に生成する沈澱のシミュレーションモデルの妥当性の確認及び生成する化学種の確認を行い、尿の希釈がリン回収率に与える影響について検討を行った。その結果、溶液中の各成分濃度がほとんど変化せずに平衡に達している状態では、phreeqcを用いた計算結果は溶液中及び沈殿物の成分組成が実値を良く再現した。沈殿物のXRD解析と組成分析から炭酸カルシウムと、マグネシウム、リンを含む物質があることが分かり、計算からこのリンを含む物質はリン酸マグネシウムアンモニウムであることが予測された。尿が希釈されるとリン回収率が下がることが示され、リン濃度が高い場合には回収率は比較的低下しにくかった。このことから、尿を希釈しないような工夫が必要である。計算から回収率を予測できることが分かった。
  • 伊藤 歩, 川上 北斗, 石川 奈緒, 用山 徳美, 落 修一, 海田 輝之
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_235-III_242
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     電気透析装置を用いて下水汚泥焼却灰の硫酸抽出ろ液に含まれるAlやその他の金属の除去を試験した結果,抽出ろ液のpHを0.5に維持し,電気透析時間を10時間とすることで,AlやZn,Cu,Cd,Niの85~95%程度を除去でき,Pの60%程度を保持できた.電気透析後の硫酸抽出ろ液をNH3水で中和した後,乾燥させて得られた粉末試料の水溶性Pの含有率は,90%程度であり,Pの大部分を速効性のP化合物として回収できた.粉末試料をXRDとFE-SEMでそれぞれ分析した結果,(NH4)2SO4,NH4H2PO4およびP2O5の回折パターンと類似したピークが観察され,元素マッピングではNの分布とは重ならないPの分布も確認されたことから,粉末試料中のSとPの大部分は上記の化合物として存在していると推察された.
  • 若山 聖, 貫上 佳則, 太田 雅文, 白井 麻結, 水谷 聡
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_243-III_248
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     リンが原因とみられる下水汚泥焼却処理工程でのトラブルを回避し, 下水汚泥からリンを除去・回収するための合理的な処理法を検討するため, 下水汚泥中のリンの組成分析と酸を用いた可溶化処理を実施した. 11箇所の都市下水処理場の消化汚泥に含まれるリンの組成分析の結果から, 消化汚泥中のリンは他の汚泥と異なり, 全リンの73~89%がリン酸態リンで, 浮遊性リン酸態リンは全リンの24~62%と多く含まれることがわかった. また, 消化汚泥に酸を添加すると浮遊性リン酸態リンを可溶化することができ, 硫酸, クエン酸, 酢酸を用いた場合, それぞれpHが2, 5, または4でほぼすべての浮遊性リン酸態リンが可溶化できることがわかった. これらの結果から, 消化汚泥を酸処理することで, 全リンに対する溶解性リンの割合を2倍以上に増やすことが可能であることがわかった.
  • 永禮 英明, 渡辺 諒, 藤原 拓, 赤尾 聡史, 前田 守弘
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_249-III_254
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     湖沼等で採取された大型水生植物(水草)からリンを抽出しリン酸カルシウム沈殿として回収する方法について検討した.ヒシ(Trapa natans L.),センニンモ(Potamogeton maackianus),オオカナダモ(Egeria densa)を乾燥させたのち破砕し,蒸留水を用いてリンを抽出した.E. densaでは81%と高いリン抽出率が得られたが,その他2種では56%(P. maackianus),50%(T. natans L.)にとどまった.抽出液中のリンの形態,有機物の特性(吸光スペクトル,分子量分布)は植物ごとに異なっていた.バイオマスから抽出されたフィチン酸および有機物によるリン酸カルシウム沈殿の生成阻害が懸念されたものの,本実験の条件では89%以上の抽出リンが沈殿として回収され,大きな阻害は確認されなかった.抽出過程を含めたバイオマスからのリン回収率は41~76%であった.
  • 石黒 泰, Yenni TRIANDA, 藤澤 智成, 安福 克人, 奥村 信哉, 玉川 貴文, Joni Aldilla FAJRI, 李 ...
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_255-III_265
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     人員比(実使用人数/設計処理対象人数)が0.8,0.14,0.29と異なる3基の浄化槽に対して処理水の循環運転を行い,処理水循環が処理水質へ与える影響をクラスター分析と主成分分析を用いて解析した.浄化槽の処理水循環を行うことより,脱窒が促進され,全窒素の減少がみられた.いっぽうで,処理水循環によるBODの変化はみられなかった.クラスター分析と主成分分析による解析により,有機性の負荷に関連する測定項目と硝化・脱窒に関連する測定項目をグループ化することができた.それらのグループは関連性が低く,処理水質の向上を目指す場合,窒素負荷には処理水循環が有効であるが,有機性の負荷には他の対策が必要であることが示唆された.
  • 山崎 宏史, 蛯江 美孝, 西村 修
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_267-III_273
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     本研究では,戸建住宅の給排水設備に節水機器を導入し,生活排水の質的量的変化および浄化槽の処理性能に及ぼす影響を評価した.節水機器の導入により使用水量が削減され,浄化槽流入水は高濃度化した.この流入水性状の変化に伴い,浄化槽からの処理水BOD濃度は14.8 mg/Lから21.4 mg/Lへと44.6%増加し,浄化槽は所期の性能を確保できなくなった.しかし,処理水量が削減されたことにより,処理水BOD濃度と水量の積で示される水環境へのBOD汚濁負荷量は,ほとんど変わらないことが明らかとなった.さらに,節水機器導入後に,浄化槽の嫌気好気循環運転を試みた結果,処理水BOD濃度は14.2 mg/Lまで減少し,水量の減少と相まって,水環境へのBOD汚濁負荷量を24.8%削減できた.
  • 中村 寛治, 渡辺 健幸
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_275-III_283
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     地下水汚染物質であるトリクロロエチレン(TCE)は,フェノールヒドロキシラーゼ(PH)によって好気的に分解されることが知られている.これまでに単離された種々のフェノール資化細菌は,そのTCE分解能力が異なっているが,複数の要因があり,原因は明らかでない.本研究では,PH遺伝子の比較解析を行うため,1株のCupriavidus属細菌を共通の宿主とし,PH遺伝子と共に,構成的に発現するtacプロモーターと発現量を評価する緑色蛍光遺伝子を,トランスポゾンによって染色体上に挿入し,TCE分解能を評価した.その結果,PH遺伝子の塩基配列が異なると,発現量やTCE分解活性に著しい差が生じ,それが最終的なTCE分解能に影響していることが明らかとなった.
  • 三浦 尚之, 風間 しのぶ, 今田 義光, 真砂 佳史, 当广 謙太郎, 真中 太佳史, 劉 暁芳, 斉藤 繭子, 押谷 仁, 大村 達夫
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_285-III_294
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     下水道が整備された都市域においては,感染者から排出されたノロウイルスは下水処理場に流入する.本研究では,感染性胃腸炎の流行を早期に検知するために下水中のノロウイルスをモニタリングすることの有用性を評価した.2013年4月から2015年10月までの期間,流入下水試料を毎週収集し,下水中ノロウイルス濃度と地域の感染性胃腸炎患者報告数の相互相関分析を行った.さらに,下水中に検出されたノロウイルスの遺伝子型をパイロシーケンサーを用いて網羅的に解析し,地域の感染性胃腸炎患者便試料から検出された遺伝子型及び株と比較した.その結果,下水中ノロウイルスGII濃度は患者報告数と遅れが±1週未満の範囲で有意に相関すること(R = 0.57~0.72),及び下水中には患者便試料と同一の遺伝子型及び株が含まれ,それらが経時的に変化することが実証された.患者報告数が集計・公表されるには1~2週間の時間を要することから,下水中のウイルス濃度をモニタリングすることで,医療機関の報告に基づく現行の監視システムよりも早期に流行を検知できる可能性が示された.
  • 伊藤 絵里香, 伊藤 紘晃, 浦 剣, Nguyen Thanh Gia , 渡部 徹
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_295-III_304
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     トウガラシ微斑ウイルスとアイチウイルスを養殖牡蠣から検出し,ノロウイルス汚染の指標として用いることが出来ないか検討した.トウガラシ微斑ウイルスは検出頻度がノロウイルスよりも高く,そのRNA量も多かったが,アイチウイルスは検出頻度,RNA量ともにノロウイルスと同程度であり,指標として適さないことが明らかになった.トウガラシ微斑ウイルスのRNA量を指標として,ノロウイルス陽性率を推定する方法を提案した.高い陽性率が推定される場合には,ノロウイルス検出を省略することで時間や費用を削減できる可能性がある.
  • 伊藤 寿宏, 押木 守, 小林 直央, 加藤 毅, 瀬川 高弘, 幡本 将史, 山口 隆司, 原田 秀樹, 北島 正章, 岡部 聡, 佐野 ...
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_305-III_313
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     本研究では、流入下水中のヒト腸管系ウイルス濃度分布、及びWHOが推奨する許容年間疾病負荷(10-6 disability-adjusted life years per person per year)に基づいて、定量的微生物リスク評価(quantitative microbial risk assessment: QMRA)の手法を用いて下水再生水の利用用途ごとにウイルス除去効率の目標値を算出する手法を構築・提案する。代表的なヒト腸管系ウイルスとしてノロウイルスに着目し、流入下水中のノロウイルス濃度モニタリングデータを使用することで、6種類の下水再生水利用シナリオにおけるノロウイルスの下水再生水中許容濃度及び除去効率の目標値を試算した。本研究で提案した方法により算出したヒト腸管系ウイルス除去効率目標値を使用する際には、下水再生システム稼動後においても未処理下水中のヒト腸管系ウイルス濃度をモニタリングすることが求められる。また、用量反応モデル情報の更新と、下水再生利用が行われる地域の状況に基づいた曝露シナリオとパラメータの更新についても継続して取り組むことが重要である。
  • 類家 渉, 山本 歩, 矢口 淳一, 久保田 健吾, 李 玉友
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_315-III_323
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     核酸染色試薬PMAとリアルタイムPCRを組み合わせたPMA-qPCR法において,PMAの光活性化に用いる光源にLED光源を使用して生存している大腸菌のみを計数するために最適処理条件を検討した.熱処理した大腸菌と無処理の菌体を用いて浮遊状態の大腸菌に対する白色LED光照射時間を検討した結果,PMA添加濃度100μMの場合,照射時間15分間が最適であった.次に,PMA-qPCR法の死菌分別効果をより発揮させるためにPMA試薬の吸収波長に近い青色LED光を用いて,フィルターにろ過濃縮した大腸菌のPMA処理条件を検討し,LED光照射によるPMA-qPCR法の水環境試料への適用可能性を評価した.その結果,青色LED光照射時間40分間,PMA濃度100μMで熱処理菌体に対するPMAとDNAの結合の効果は最大であったが,無処理菌体数と熱処理菌体数の差が得られなかった.LIVE/ DEAD BacLight Bacterial Viability Kitsによりフィルターにろ過濃縮した無処理菌体数を計数した結果,フィルターろ過によりほとんどの無処理菌体が死滅していることが明らかになり,メンプレンフィルターによるろ過濃縮とPMA-qPCR法を組み合わせる際には十分な検討が必要であることが示された.
  • 井口 晃徳, 佐々木 波輝, 長谷川 大地, 林 真由美, 原田 秀樹, 重松 亨
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_325-III_332
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     環境中に存在する特定微生物を回収するための技術の確立を目的に, 12-merのランダム配列のペプチドを提示するファージディスプレイペプチドライブラリを利用したファージディスプレイ法をShewanella algae菌体に供し, 本技術の適用可能性を検証した. S. algae菌体に対してバイオパンニングを2ラウンド行い, 得られた溶出ファージのプラークを形成させて単一のクローンを増やし, Tyramide Signal Amplification法による蛍光シグナル検出にて各種ファージクローンの標的菌体への結合特異性を網羅的に解析した. 溶出ファージのうち標的菌体への結合特異性が高いと判断したクローンを4種選抜し, 4種のファージクローンをそれぞれ使用した磁気ビーズ法による標的菌体の回収を行った. その結果, すべてのファージクローン回収系においてペプチド未提示ファージを使用した回収系より有意に標的菌体を回収することが可能であった. このことより, ファージディスプレイペプチドと磁気ビーズを併用することで特定の微生物を高濃度に回収可能な技術として適用できる可能性が示された.
  • 大西 一馬, 梶野 友貴, 小宮 哲平, 島岡 隆行
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_333-III_340
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     廃棄物が海水に没し、有機物の分解や汚濁成分の洗い出しが緩慢である海面処分場では、早期安定化が懸案事項となっている。海面処分される廃棄物の多くは都市ごみ焼却灰であり、焼却灰は粒径が小さいほど汚濁成分を多く含むことが知られている。本研究では、海面処分場の早期安定化を図る手法として、焼却灰の細粒子区分の除去に着目し、海面処分場を模した大型二次元土槽実験を行い、細粒子区分の除去による埋立地盤の透水性及び浸出水の水質の改善効果について検討した。その結果、細粒子区分の除去により埋立地盤の透水係数は約3倍~1オーダ上昇し、浸出水の水質に改善が見られ、特に浸出水のpHは約1オーダ低下した。埋立地盤の透水性及び浸出水の水質の向上を図ることができる細粒子区分の除去は海面処分場の早期安定化技術として期待される。
  • 植浦 大樹, 高岡 昌輝, 大下 和徹, 藤森 崇, 塩田 憲司, 國松 俊佑, 前田 洋
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_341-III_350
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     本研究ではガスエンジン排ガスを用いた促進エージングによる焼却灰有効利用技術に注目した.これは灰温度が300-400℃になるように焼却灰をガスエンジン排ガスに曝し,重金属の溶出を抑制させる現象を指す.先行研究では,促進エージングに伴い重金属の中でも特に鉛の溶出量が低下することが確認されているが,その機構は明らかにされていない.そこで,処理条件による促進エージングの効果の違いを確認し,さらに焼却灰中鉛の不溶化機構を解明することを本研究の目的とした.実験の結果,焼却灰は300℃,気固比4kg-排ガス/kg-焼却灰の条件で促進エージングを行い処理後に1mm以上に分級することで溶出基準および土壌含有量基準を満たすことがわかった.また促進エージングに伴い焼却灰中鉛は炭酸塩だけでなく比較的難溶性の鉱物種に取り込まれ安定化している可能性が示された.
  • 高橋 史武, 坂井 仁, 島岡 隆行, 中居 直人, 北村 洋樹
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_351-III_359
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     電気炉スラグ含有フッ素のアパタイト処理による不溶化メカニズムを検討した。アパタイト処理によってフッ素の溶出濃度が低下し、ヒドロキシアパタイト(HAP)やフルオロアパタイト(FAP)の生成がXRD分析から示唆された。不溶化したフッ素の再溶出性は低かった。吸着実験および放射光XRD分析により、HAPへフッ素が吸着してからヒドロキシイオンとの置換反応によってFAPが生成する反応よりも、リン酸カルシウムからの直接的なFAP形成が主反応であった。HAPに吸着したフッ素は再溶出性が高いため、アパタイト処理によって不溶化したフッ素は、HAP等への物理的な吸着よりもFAP形成が主に寄与していると考えられる。アルギン酸ナトリウムを添加したアパタイト処理は層状の複合アパタイトを形成できるが、フッ素の不溶化効果を減少させる結果となった。
  • 大塚 佳臣, 中谷 隼, 牧 誠也, 荒巻 俊也, 古米 弘明
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_361-III_372
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     合意形成手法の1つであるプラーヌンクスツェレ(PZ)によって,荒川流域における2050年に望まれる水利用システムシナリオの検討を行い,PZにおける情報提供や討議が,参加者の水利用システムの属性選好やシナリオ選択に与える影響の評価を行った.併せて,インターネット調査会社の会場調査サービスを活用し,参加者の多様性を担保するPZ手法を検討した.参加者は,情報提供によって属性間のトレードオフを認識し,討議を通じて,水利用システムへの理解を深め,他者の選好を考慮することで,複数の属性が改善するシナリオ(汚濁負荷と高度浄水または取水制限の対応を優先するシナリオ)を支持するようになった.
  • 山本 俊輔, 酒井 宏治, 滝沢 智
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_373-III_385
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     我が国の都市では,人口減少に加えて今後の都市政策による人口移動により水需要が変動し,給配水システムに影響を与えることが考えられる.そこで本研究では,東京都内に位置する多摩ニュータウン(NT)を対象として5つの将来の都市構造シナリオに基づいて,給配水システムのダウンサイジングや直結直圧給水化等による効果と課題を検討した.その結果,コンパクト化は管路更新費用の削減では有利だが,水理学的滞留時間や給水ポンプでのエネルギー消費量の削減には繋がらないことが明らかとなった.また,給配水システムの再構築では,配水本管のダウンサイジングによって管路更新費用を大幅に削減できること,多摩NTの地形的特徴により高層ビルでも直結直圧式給水が可能なため,都市構造シナリオによらず直結化により88%以上のエネルギーを削減できることが示された.
  • 田中 周平, 今田 啓介, 濱島 健太朗, Tran Van QUANG , 藤井 滋穂
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_387-III_395
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     2011~2012年にベトナム国ダナン市において308世帯の水利用実態ヒアリング調査と97世帯の水利用量調査を行い,生活用水の利用構造を11の用途別に分析した.主な成果を以下に記す.1)用途別の水道水利用量(中央値)は風呂39.6 L, トイレ13.2 L, 洗濯10.8 L, 皿洗い10.6 L, 料理10.5 L, 洗面5.7 L, ガーデニング3.4 L, 床掃除3.3 L, 散水2.7 L, 飲用1.5 L, 洗車0.9 Lであり,合計102 Lであった.2)用途別の水利用量を重回帰分析により数式化し, 2020年, 2025年, 2030年の一人一日あたり水道利用量を予測した結果, 2020年に145 L, 2025年に161 L, 2030年には174 Lに増加することが分かった.3)収入の増加による水利用機器の変化,家族人数の減少による料理,皿洗い等の水量増加,地下水の利用率の低下等が,水道水利用量増加の主な要因であると考えられた.
  • 鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 宍戸 陽, 武田 知秀
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_397-III_402
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     魚類は洪水時にその遊泳挙動を変化させ,流速の低下する場所や上流へ移動することが解明されている.加速度および流速は魚の遊泳挙動に影響を及ぼす要因と考えられる.本研究は負の加速度および減速後の流速とカワムツの挙動との関係について検討したものである.ピーク流速を固定し,負の加速度と減速後の流速を変化させ,開水路内のカワムツの挙動をビデオカメラで撮影した.その結果,カワムツの移動方向を決定する負の加速度の閾値は-0.5(1/s2)程度であり,負の加速度が-0.5(1/s2)より小さいときは上流側へ,-0.5(1/s2)より大きいときは下流側へ移動方向が変化することが判明した.また,減速は遡上を誘発することが示唆された.一方,減速後の流速が変化してもカワムツの遊泳挙動に影響を及ぼさなかった.
  • 鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 白岡 敏, 鎹 敬介, 桃谷 和也
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_403-III_409
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     河川には魚がすめる条件の一つとして避難場所の確保が要求される.魚は血合筋と普通筋の二種類の筋肉をもち,平時は疲労が蓄積しない血合筋を使用する.遊泳速度が維持速度を超え,普通筋を使用すると疲労が蓄積されるため,避難場所での休憩が必要になる.
     本研究は,横断方向幅を任意に変化させた遮蔽板を開水路に設置し,流速を系統的に変化させてアユの挙動について検討したものである.その結果,流速の増加に伴いアユの遊泳速度が増加することが判明した.これは,アユが下流に流されないように遊泳するためと考えられる.また,流速の増加に伴いアユの休憩エリアの利用回数および休憩時間が増加することが判明した.これは,アユが高速流を避けるためや休憩を目的として休憩可能エリアを使用したためと考えられる.
  • 松木 越, 青木 宗之, 福井 吉孝, 櫻井 龍太郎
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_411-III_417
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     横断勾配を有する粗石魚道で実魚(ウグイ)を用いた模型実験を行い,横断勾配のない模型の粗石魚道で行った既往の研究結果と比較した.4パターンの流量で実験を行った結果,横断面内で生起する流速の値の範囲が広いことや,実魚を用いた挙動実験における遡上率から,横断勾配を有する粗石魚道の優れた点が示された.既往の研究において,魚道全断面で高流速となり遡上率が非常に低かった流量Q=22.2(l/s)でも,魚道に横断勾配を設けることで横断方向に多様な流速場が形成され,水深が小さい水際部でウグイが休息できる場所を提供することができた.しかし,水深が小さい場所でウグイの停留時間が長くなることは,外敵に捕食される危険性が増す.
  • 野村 洋平, 深堀 秀史, 塩澤 靖, 藤原 拓
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_419-III_427
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     廃棄物処分場浸出水に含まれる1,4-ジオキサンの除去技術の開発を目指し,活性炭/酸化チタン複合触媒の合成を行った.複合触媒は,光触媒活性および材料とした木質系活性炭と同等の吸着容量を有し,純水中では1,4-ジオキサンの吸着と光触媒分解が同時に進行した.共存物質による阻害影響を評価した結果,塩化物イオンは光触媒反応を阻害すること,フミン酸は吸着速度の低下と光触媒反応への阻害をもたらすことが示された.複合触媒を実浸出水生物処理水に適用した結果,1,4-ジオキサンと溶存有機炭素の同時除去が可能であったが,共存物質による光触媒分解への阻害が生じた.そこで,吸着工程と触媒再生工程を分離した結果,排水基準値以下までの1,4-ジオキサンの除去と光触媒分解による複合触媒の再生が可能であることが示された.
  • 伊藤 美穂, 野呂田 将史, 石川 奈緒, 伊藤 歩, 海田 輝之
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_429-III_436
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     2011年に発生した福島第一原子力発電所の事故で環境中に放出された放射性Csを含む廃棄物の一部は,管理型最終処分場へ埋め立て処分されている.本研究では,処分場浸出水とともに放射性Csが管理型最終処分場から漏出することを防ぐ目的で,処分場内の放射性Cs保持材として鉱物の使用を検討した.実際の浸出水を用いたCsの収着試験から,ゼオライトはCsの収着能がCs濃度に依存しないのに対し,イライトとバーミキュライトは低Cs濃度で効率的にCsを収着することが示された.また,各鉱物の陽イオン交換容量とCs収着量は高い相関を示した.加えて,脱離試験より,実験に用いたどの鉱物もCsをよく固定し,特にゼオライトが高い保持能を示した.さらにCs固定画分とRadiocesium Interception Potential(RIP)とは高い相関が見られ,RIPからCs固定画分を推定出来ることが示唆された.
  • 杉田 創, 小熊 輝美, 張 銘, 原 淳子, 高橋 伸也
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_437-III_448
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     ヒ素汚染水の浄化に利用された吸着材は,それ自体が多量のヒ素を含有することになるため,非意図的あるいは不法投棄等により適切な処理が行われずに環境中に放出された場合,使用済吸着材からのヒ素溶出による二次的な環境汚染を引き起こす懸念がある.それゆえ,使用済吸着材の環境安定性を評価する必要がある.
     本研究ではマグネシウム系及びカルシウム系の使用済ヒ素吸着材を用いた土壌混合振とう試験を実施し,得られたデータに基づいて検討を行った.その結果,Mg系及びCa系酸化物及び水酸化物は非常に高い環境安定性を持つことが明らかにされ,それらの中でもMgO系吸着材が最も優れていることが示された.一方,MgCO3系使用済吸着材の環境安定性はかなり低く,特に砂質土壌共存下においてヒ素溶出による環境汚染を引き起こすリスクが高いことが示唆された.
  • 横川 勝也, 稲員 とよの, 小泉 明, 難波 諒, 杉野 寿治
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_449-III_455
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     漏水削減は水資源の有効利用の観点だけでなく,浄水にかかる薬品コストや水輸送に要するポンプの消費エネルギーを削減でき,環境負荷低減にも大きく寄与する.漏水を削減するには,老朽管更新や漏水管修繕といった予防保全的対策のほかに,配水管路網内の余剰圧力を抑制する運用制御的対策がある.予防保全的対策は漏水を生じる管孔そのものを塞ぐことができるため,その効果は大きいが更新や修繕に必要な費用が高い.一方で,運用制御的対策は配水ポンプや減圧できる電動弁の運転方法を改良することで成されるため,低い費用で大きな効果を期待することができる.
     本論文では運用制御的対策に着目し,自動制御を導入するのではなく,夜間に電動弁を操作することによって夜間最小流量を低減する対策事例を示す.具体的には,配水区域内における末端圧力の変化を時系列で推定し,余剰圧力が発生している時間帯を特定するとともに,余剰圧力を抑制できる電動弁の操作量をデータのみから明らかとした.また,その結果として得られる漏水削減効果の見込みを示した.
  • 國實 誉治, 稲員 とよの, 小泉 明, 荒井 康裕, 佐藤 清和, 柿沼 誠, 長谷川 進, 柳井 茂, 深瀬 閑太郎
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_457-III_465
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     東日本大震災では,水道管の破損により断水が多発し復旧までに長期間を要した.東京都では,震災時における断水等の被害軽減を目的として,経年管を中心に耐震継手管や鋼管への更新を進めている.しかし,管路の更新事業の完了には長い年月と膨大な費用を要する.効果的な更新を行うためには経年劣化のみならず,震災時の影響も考慮する必要がある.また,震災発生後には複数箇所で同時に管路破損の発生が予想されるが,その被害箇所と影響を予測することは困難であり,確率的な生起現象として捉えることが一般的である.
     そこで,本研究では震災時における管路被害に着目し,配水小管ネットワークモデル内での断水量(率)の推定をモンテカルロシミュレーション分析を用いて試みた.さらに,管路の耐震化による断水量の削減効果について検証を行った.
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