土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
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72 巻, 7 号
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環境工学研究論文集 第53巻
  • 平山 修久, 山田 武史, 越後 信哉, 伊藤 禎彦
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_467-III_474
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     現在,我が国の水道事業体は人口減少等による水需要の減少などを考慮して,老朽化した施設更新を行うことが求められており,中長期的な視点から配水管網の再構築後のあり方について検討する必要がある.本研究は,濁水発生を予防するという管路の自己洗浄機能,地震時における耐震機能,および配水管網の消火機能の3つの観点から,管路の縮径と配水管網の一部に対して枝状化による配水管網の再構成による将来の配水管網のあり方について,神戸市を解析対象とした管網解析を行うことにより検討した.その結果,配水管網の縮径においては,自己洗浄機能と耐震機能,自己洗浄機能と消火機能がトレードオフ関係にあることを示しえた.
  • 鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 宍戸 陽, 定地 憲人
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_475-III_479
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     魚にとって休憩場所を確保することは重要である.魚は疲労が蓄積する普通筋と疲労が蓄積しない血合筋を有している.魚が普通筋を使用した場合は疲労が蓄積するため,休憩場所が必要となる.本研究は,開水路の植生密度を変化させて,オイカワの遊泳特性の変化を検討したものである.その結果,オイカワは流速の遅い区域を休憩場として活用していることが判明した.また,オイカワは植生密度が高くなるに伴い,植生域内での停滞が確認された.さらに,進入した魚の遡上率は植生密度との明確な関係性は観察されなかったが,植生密度が高くなるにつれて植生域への進入率は増加することが確認できた.
  • 関根 雅彦, 金本 裕史, 神野 有生, 山本 浩一, 今井 剛, 樋口 隆哉
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_481-III_487
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     既往の研究で,複数の遡上経路のある魚道では入口の選択が遡上率に影響を与える可能性が示唆された.本研究ではまず,現地放流実験により,魚道入口選択が遡上率に影響を与えることを実証した.次に,室内実験より,魚道入口の気泡状況に対するSI (Suitable Index, 0=不適,1=最適)は,気泡なし=0.27,表層のみ気泡あり=0.88, 中層まで気泡あり=1.00, 底層まで気泡あり=0.14であり,既往の研究とは逆にある程度の気泡の存在が選好されること,気泡そのものが選好されているのではなく,アユの頭上に気泡があることが選好されていることを明らかにした.最後に,魚道入口選択現地実験により,椹野川水辺の小わざ魚道では,アユが魚道入口を選択する要因は主に気泡状況であり,次いで流速であること,水深と音圧はほとんど寄与していないことを明らかにした.
  • 八重樫 咲子, 泉 昴佑, 三宅 洋, 渡辺 幸三
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_489-III_496
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     本研究では,一度に大量のDNA塩基配列解析を実現した次世代DNAシーケンス解析技術と,DNA配列のみを用いて由来となった種の種名を検索するDNAバーコーディングを活用し,従来は1種毎に行われていた水生昆虫の流域内交流解析を,ユスリカ科12種とカゲロウ目3種の計15種に対して,同時並行に行った.解析対象地域は瀬切れが頻発する愛媛県重信川とし,解析領域はミトコンドリアDNAのCytochrome Oxidase I領域を用いた.その結果,多くの種は瀬切れによる流域内交流への影響が小さかった一方,Baetis sp. MK-2015dとChironomus kiiensisは瀬切れによる移動分散阻害が発生していた.また,移動分散能力が低いことが予想されたユスリカ科の種は,流域内での活発な交流が行われていたことが判明した.本研究では解析対象は15種に限られたが,今後,NGS解析手法の改善およびDNAデータベースの拡充により,解析可能な種が増えると考えられる.さらにNGS解析による多数種の移動分散パターン解析技術が実現することで,生態系に配慮した河川管理へ応用されることが期待される.
  • 高見 徹, 渡部 守義
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_497-III_503
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     神戸市建設局西水環境センター垂水処理場では,場内に建設された修景池において藻類の大量発生が問題となっている.本研究では簡易で低費用な藻類増殖の抑制策を提案するため,修景池の水質と藻類種を調査するとともに処理水の消毒に用いられる次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)と入手が容易な海水による藻類増殖の抑制効果を実験的に検証した.その結果,主要な藻類種は珪藻綱Fragilaria neoproducta(オビケイソウ属)であり,修景池の浅い水深と遅い流速,高い栄養塩濃度が大量発生を引き起こすこと,NaOClは藻類増殖の抑制効果が認められるものの放流先のノリ養殖に悪影響を及ぼす可能性があること,海水は抑制効果は乏しいが,藻類の帯状群体の形成を阻害する効果があることが明らかになった.
  • 渡部 徹, 倉島 須美子, Pham Duy Dong , 堀口 健一, 佐々木 貴史, 浦 剣
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_505-III_514
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     都市下水処理水の掛け流し灌漑により,天然の水資源を全く利用せず,窒素とカリウムの施肥なしで飼料用米「べこあおば」の栽培を行った.同じく下水処理水を循環灌漑して同品種を栽培した先行研究に比べて2倍以上の処理水を灌漑したものの,水稲の生長には顕著な変化は見られなかった.一方,収穫された玄米の栄養成分の分析では,粗タンパク質含有率(最大13.1%)が先行研究の結果や通常の水田での標準値を大きく上回っていた.粗脂肪と可溶無窒素物は標準値を若干下回ったが,処理水の連続灌漑により,高タンパクで飼料としての価値の高い米を十分な収量で収穫することができた.通常の水田の条件でも同程度の収量で栄養特性の近い米が収穫できることを示したが,それには多量の施肥が必要で収益性が低い.
  • 山内 正仁, 池田 匠児, 山崎 寛登, 山田 真義, 八木 史郎, 黒田 恭平, 原田 陽, 山口 隆司
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_515-III_522
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     本研究では,下水処理場由来のバイオマスの利用拡大を目指し,下水汚泥(脱水汚泥)をきのこ培地の栄養材とした培地でヒラタケの栽培試験を実施した.その結果,下水汚泥はきのこ培地の単独の栄養材としては利用できないが,甘藷焼酎粕乾燥固形物(甘藷焼酎粕)と併用することで,対照区と比較して菌糸伸長の促進と栽培期間の短縮が最大10日程度認められ,かつ培地10gあたりの収量性が20%高まることが明らかになった.また,本培地でヒラタケを栽培すると,対照区と比較して遊離アミノ酸を3.4倍多く含む高品質きのこを栽培できることがわかった.さらに本培地の重金属含有量は肥料取締法に基づく基準値以下であり,栽培した子実体からも重金属は未検出で子実体に移行しないことから,食品としての安全性を確認した.
  • 井上 美穂, 遊佐 大介, 長岡 裕
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_523-III_533
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     中空糸膜状浸漬型MBRにおいて曝気の気泡流によるモジュール内部の流動特性を検討するため,中空糸膜密度を変更した2条件に対し,モジュールの上部及び下部においてPTVを用いた液相流速の測定,気泡径の測定を行った.膜密度が小さい方が,モジュールとの接触による気泡の分裂が少ないため液相流速が大きく,散気口位置の影響を受けやすいことから空間変動も大きくなった.また,膜密度が大きい方が,気泡が膜面に接触して破砕するため液相流速が小さくなり,また破砕した気泡はモジュール内に均一に分布することから,液相流速の空間的分布が均一となることが示された.膜モジュール内の渦動粘性係数の値は膜密度が大きい条件で大きくなり,膜密度が大きいことによる気泡と膜との接触によってモジュール内部での乱流拡散が大きくなることが示唆された.
  • 木村 克輝, 大木 康充
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_535-III_541
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     浄水処理への膜処理適用が進んでいるが、自然水中の有機物(Natural Organic Matter, NOM)が引き起こす膜ファウリングが広範な普及の障害となっている。本研究では、NOMの中でも近年膜ファウリングへの関与が重要視されているバイオポリマー(親水性高分子量成分)に着目し、バイオポリマーのサイズとMF/UF膜細孔径の関係が膜ファウリング発生に及ぼす影響について考察した。ポリ塩化アルミニウムによる凝集処理と、帯磁性陰イオン交換樹脂処理を用いた前処理について検討し、これらの処理では除去されるバイオポリマーの画分が異なっていることを明らかにした。凝集処理では分子量100万以上の超高分子量バイオポリマーの除去が行われる一方でイオン交換樹脂処理では分子量数万付近の低分子量バイオポリマーの除去が行われた。MF膜ファウリングの抑制効果は凝集処理を用いた場合に高まることから、超高分子量バイオポリマーのMF膜ファウリングへの重大な関与が示された。前処理におけるバイオポリマーの除去率はイオン交換樹脂処理と凝集処理を組み合わせた場合に著しく高まり、連動して膜ファウリングの抑制効果も高くなった。これは、イオン交換樹脂処理によりフミン質が極めて良好に除去され、バイオポリマーと反応しうる凝集剤量が相対的に大きくなったことによるものと考えられた。バイオポリマーが細孔内に侵入できないUF膜を用いた場合には、不可逆的ファウリングの発生が著しく抑制されたが、UF膜により抑止された微細粒子が可逆的ファウリングの発生を促進させるようになった。
  • 兼澤 真吾, 橋本 崇史, 滝沢 智
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_543-III_551
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     本研究では,ろ過膜の洗浄後に膜内部に残留するファウリング物質を原位置で観察する手法を開発するため,BSAをモデル物質としてUF膜ろ過と膜洗浄を行い,膜に残留するBSAを共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)及び確率的光学再構築顕微鏡(STORM)を用いて観察する手法を検討した.STORMによる観察では,無標識のBSAをろ過及び洗浄後に蛍光標識した場合,洗浄薬品の影響を受けず高い蛍光を得られるが,標識後の洗浄が不十分だと誤差を生じることがわかった.CLSMでは膜表面近傍に残留するBSAを定量的に把握できるが,膜内部に残留する微量なBSAの観察には適さず,一方,STORMは定量性は低いが膜内部の微量のBSAの分布を従来より高い解像度で可視化できた.このことから,これらの顕微鏡を組み合わせた観察手法が膜表面と膜内部のファウリング現象の解析に有効であることが示された.
  • 糠澤 桂, 林 達也, 風間 聡, 高橋 真司
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_553-III_558
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     山形県赤川水系早田川を対象に砂防堰堤のスリット化による生息場と底生動物への経年的な影響を評価した.早田川の2基の砂防堰堤の直上・直下(4地点,下流からst.1~st.4)を対象に2009年から2015年にかけて年1回以上(2012年を除く)底生動物の定量採集と河道形状の調査をした.なお,下流の堰堤は2010年8月にスリット化されている.河道形状は高精度GPS(Global Positioning System)を用いて計測し,生息場を7種に分類(e.g., 早瀬,砂州頭ワンド)して生息場多様性を計算した.結果として,st.2における生息場多様性はスリット工事後に上昇した一方,底生動物群集の種多様性には経年的な変化は見られなかった.また,種多様性と止水性生息場割合は既往の報告と反対に負の有意な相関(R2=0.35,P<0.05)を示した.以上より,局所的な生息場の多様化が種多様性を高める作用は限定的である可能性が示唆された.
  • 渡辺 幸三, 近藤 俊介, 泉 昂佑, 八重樫 咲子
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_559-III_566
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     南東スイスアルプスにおいて,排砂バイパストンネルが設置されたダムを有する河川(バイパスダム河川),バイパスが無いダムを有する河川(ダムあり河川),ダムなし河川,の3タイプを対象に,河川内地点間の底生動物の群集構造の違い(Bray-Curtis非類似度指数)をメタバーコーディングで評価した.調査した3つのバイパスダム河川のうち,2つではダムあり河川よりも群集構造の地点間の乖離が緩和されたが,残り1つでは緩和されなかった.緩和が見られないバイパスの運用年数(2年)は,他の2つ(39,93年)よりも短く,今後の継続的観測が必要である.本研究のメタバーコーディングでは大量標本(7,369個体)の群集構造が迅速に評価されたが,少個体数の分類群が検出されにくい等の技術的課題も明らかにされた.
  • 藤林 恵, 橋戸 駿, 田中 伸幸, 野村 宗弘, 西村 修
    2016 年 72 巻 7 号 p. III_567-III_572
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
     必須脂肪酸は動物の生存に不可欠な栄養素であり,水圏生態系では藻類によって生産された必須脂肪酸が動物に利用されている.しかし,藻類による生産が十分には期待できない環境でも水生動物が生息する事例が見られる.そこで,本研究では原生動物による必須脂肪酸合成の可能性に着目し,繊毛虫のCyclidium sp.とGlaucoma sp.を対象として,必須脂肪酸を含まない細菌Alcaligenes faecalisを餌として1ヶ月間培養した.その結果,これらの原生動物が細菌のみを餌としながら増殖・世代交代を重ね,Glaucoma sp.はリノール酸を,Cyclidium sp.はリノレン酸,エイコサペンタエン酸,ドコサヘキサエン酸を合成可能であることが明らかとなった.藻類の生産が不足するような生態系では原生動物が必須脂肪酸の供給源になり食物網を支える役割を果たしている可能性が示唆された.
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