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鷲尾 卓, 藤山 淳史, 石井 一英, 佐藤 昌宏
2017 年73 巻6 号 p.
II_1-II_10
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
多くの主体が意思決定に関与する多目的問題は複雑であるため,行政などの最終意思決定者の意思決定を支援し,かつ委員会などでの議論の場を解決に向けて円滑に進めするための有効なツールの開発が求められている.そこで本研究では,多主体多目的問題である不法投棄の汚染修復対策における中間確認時を事例として,修復目標と代替案を選択するための評価構造モデルを構築し,Analytic Network Processを用いて各主体の考え方を表現するとともに,Compatibility Quotient値とクラスター分析を用いてヒアリング対象者のグルーピングを行うことで大勢としての意見の把握を行った.更に,ヒアリング対象者へ追加情報を与えることで,ヒアリング対象者の態度変容を明らかにするとともに,集約度という指標を導入し,全体としての集約の変容を定量的に可視化できる手法を開発した.
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インドリヤニ ラフマン , 野澤 佳奈子, 松本 亨
2017 年73 巻6 号 p.
II_11-II_21
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
インドネシアでは近年,政府による都市生活廃棄物の収集・処理体制の整備とともに,「ごみ銀行」と呼ばれるコミュニティベースの資源ごみ収集システムが注目されている.本研究では,インドネシアのごみ銀行の成立要件について,ごみ銀行がもたらすごみ問題の改善や資源循環といった公益の面と,ごみ銀行の活動に参加することによってお金を貯めることができるといった私益の両面から,参加・協力に関する意識構造を明らかにすることを目的とした.複数のごみ銀行を対象に,会員と周辺住民に対してアンケート調査を行い,参加形態,参加頻度による意識の差を分析した.さらに,共分散構造分析を用いた意識構造分析を行った.参加者は「費用対私益評価」が「行動意図」へ強い影響を及ぼし,非参加者は「社会規範評価」が「行動意図」へ強い影響を及ぼすことが明らかになった.また,参加者は「行動意図」が「行動」へ繋がるのに対し,非参加者は繋がらないことから,非参加者へは参加者やごみ銀行のスタッフ,地方政府が参加を促すことが重要であると考えられる.
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大塚 佳臣
2017 年73 巻6 号 p.
II_23-II_34
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
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東京圏の住民を対象として,アンケート調査によって中期的な電源構成の選好の多様性およびその要因の評価を行った.20年後の理想的な電源構成について,C1:安全性,地球温暖化防止の観点から再生可能エネルギー優先,C2:安全性,安定供給の観点から火力発電優先,C3:安定供給,電力コストの観点から原子力発電優先,C4:安定供給,安全性の観点からバランス優先の4つのクラスターの存在が認められた.現実的な電源構成については,再生可能エネルギーの割合を下げて火力に振り分けており,住民に電源構成のベストミックスを受け入れる素地はあるものと考えられた.一方で,各発電方式に関する住民の理解度は「他人に説明できる」水準に至っておらず,電源構成の合意形成を図る上では,その理解を深めるための情報の作成,提供方法の検討が不可欠である.
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牧 誠也, 芦名 秀一, 藤井 実, 内田 賢志, 相沢 研吾, 藤田 壮, Remi CHANDRAN
2017 年73 巻6 号 p.
II_35-II_43
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
低炭素社会の実現には,各建物の対策だけでなく,都市全体や地域レベルでの省エネ化施策や低炭素化も進める必要がある.都市全体での低炭素化策として,デマンドレスポンス等の対策が有力視されているが,その検討には,詳細なエネルギーデータが必要となる.本研究では,インドネシアでも民生部門の建物が多いボゴール市を対象に,機器単位での電力消費量を観測し,将来の低炭素化計画策定の一助になる電力消費量予測式を作成することを目的とした.インドネシアの通信環境を考慮した電力消費量観測システムを開発し,ARXモデルを用いて電力消費量予測式を作成した.その結果,高い決定係数を持ち,各日のピークを表現できる,低炭素計画における施策を検討する際の基礎データとなる予測モデルを開発することができた.
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石河 正寛, 松橋 啓介, 堀 星至, 有賀 敏典
2017 年73 巻6 号 p.
II_45-II_52
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
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住宅の高断熱化と空き家対策を両立させることを念頭に置き,新設住宅着工数を空き家率が増加しない範囲におさえる想定で,断熱性能向上による世帯あたりのエネルギー消費量の削減見込み量を推計した.建築年別の断熱性能基準適合率を踏まえた地域別建て方別の断熱性能の変化と将来世帯数の市町村別推計を踏まえた必要住宅数の2点を考慮した.多くの自治体において世帯数が急速に減少し,新設着工数が累積で10%程度にとどまる結果,新設住宅による世帯あたりエネルギー消費量の全国における削減見込みが2030年には2010年比で1%弱しか得られないおそれがあることが分かった.機器効率の改善や創エネの導入等の対策を組み合わせるとともに,既存住宅の改修や断熱性能の低い住宅からの転換を大規模かつ着実に実施することが重要である.
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北島 弘, 石井 一英, 藤山 淳史, 佐藤 昌宏
2017 年73 巻6 号 p.
II_53-II_61
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
近年,北海道酪農地域では,家畜ふん尿を主要な原料としたバイオガスプラント(以下,BGP)の導入が進んでいる.BGPは,家畜ふん尿の適正処理やバイオガスのエネルギー利用,発酵残渣の液肥利用を通して,窒素汚染や温室効果ガス排出の削減,肥料やエネルギーの外部購入の節約など,地域における物質循環に影響を与え,資源や資金を地域内で循環させる経済的役割を果たす.本研究では,2つの北海道酪農地域を対象に,産業連関や農林水産統計などの各種統計,土壌における炭素と窒素の動態を扱うモデルなどを用い,BGP導入による物質循環及び経済の変化を解析した.その結果,BGP導入により,液肥利用が進むことで地域の循環利用率が上昇することを示し,そして経済効果は地域の農業・畜産部門生産額の3.6~6.8%であることを示した.
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矢田谷 健一, 泉 完, 東 信行, 丸居 篤, 杉本 亜理沙
2017 年73 巻6 号 p.
II_63-II_68
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
魚道設計に資する小型通し回遊魚の遊泳能力を調べることを目的に,産卵遡上期のワカサギを対象とし,スタミナトンネルによる遊泳実験を行った.本実験から得られた知見を以下に示す.1)流速79~128cm/sの際の体長6,7cm台のワカサギの平均遊泳速度は107~141cm/sであった.2)体長6,7cm台のワカサギの,遊泳速度と遊泳時間の関係を表す実験式を得た.3)ワカサギが前進可能な距離と流速の関係を表す近似曲線を遊泳距離曲線と称して整理した.遊泳距離曲線から,例えば体長6,7cm台のワカサギが120cm前進可能な流速は,約87cm/sであると読み取ることができ,遊泳距離曲線は,今後の魚道設計にあたって高流速域の距離設定等の一指標になることが期待される.
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目崎 文崇, 三宅 洋, 泉 哲平
2017 年73 巻6 号 p.
II_69-II_75
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
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本研究は都市河川の「子供の川遊び場」としての機能を生物に注目して評価することを目的とした.愛媛県松山市の都市域を流れる河川に設定した24地点の調査地にて,子供が実施可能な方法により生物調査を行い,子供にとって魅力的な生物(魅力種)の生息状況を把握した.この結果,25種,1391個体の魅力種が松山市都市域の河川に広く生息していた.水質が良好な小規模河川で魅力種の生息密度が高く,種数も多かった.魅力種の生息状況には,河川形状,水質劣化,さらには構成種の生態的特性が影響していることが示唆された.魅力種が多く生息する地点において,河川へのアプローチの改善や近隣住民への生物情報の周知などの方策を採ることにより,都市河川における子供にとっての親水性の向上が可能になるものと考えられた.
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池田 裕一, 飯村 耕介, 木原 健貴, 阿部 瑛太
2017 年73 巻6 号 p.
II_77-II_83
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
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礫河原保全事業後に特に維持管理をしなければ,上流側に開いたU字型の植生領域が形成され,その周辺に細かな砂礫が堆積して外来種が侵入し,礫河原固有種の生息域が損なわれていく.室内実験で出水時の流況を検討したところ,礫河原上を主水路側へ集中していく流れが分岐して,U字型領域の中空部にも入り込み,U字型領域周辺に砂礫の堆積を促していること,群落背後では流速が極めて遅く細砂が堆積しやすいことを明らかにした.さらに,労力をあまりかけない維持管理法として,U字型領域を部分的に伐採した場合の流況を実験で検討したところ,U字型領域の後方部分を伐採するのが細粒土砂の堆積抑制には適切であることを示した.
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坂間 睦美, 青木 宗之
2017 年73 巻6 号 p.
II_85-II_91
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
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本研究では,水制の透過度の違いに着目し,水制周辺の流れや河床変動がウグイの遊泳行動に及ぼす影響を明確にすることを目的とし,水理実験,移動床実験および実魚を用いた挙動実験を行った.
その結果,透過度の違いによって水制前後で流速低減効果に差が生じた.また,透過水制1基のとき,流れに及ぼす影響が少なかった.不透過水制では,水制前後の流速低減が顕著であり,ウグイは水制下流側で滞留し続けた.一方,透過水制ではウグイが水制内を通過し,水制設置区間を縦断的に移動し,水制周辺で滞留した.ウグイは,水制周辺の15(cm/s)(2
BL(cm/s))以下の箇所で滞留し,滞留時間は渦度ω
zの大きさが増加すると長くなった.また,不透過水制は水制先端部で砂の局所洗掘が生じたが,透過水制は河床に与える影響が少なかった.
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川村 和湖, 荒井 康裕, 小泉 明, 稲員 とよの, 加治 克宏, 鈴木 賢一, 有吉 寛記, 森山 慎一
2017 年73 巻6 号 p.
II_93-II_100
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
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水道管路の漏水調査は,高度な技術と豊富な経験を有する調査員が漏水音を聞き分ける方法で実施され,近年は調査の効率化の観点から機械化が進んでいる.従来手法として,音の強さの指標である音圧データをしきい値により判定する手法が知られているが,単一の変数による判定では様々な擬似音(機械音や下水流水音など)が生じている実フィールドで漏水音を判別することは難しく,漏水箇所の特定には技術者の耳による判定が不可欠である.そこで本研究では,漏水音の音圧データをヒストグラム化した際に得られる形状特性に着目して,漏水あり・擬似音・漏水なしの3群の判別に寄与する要因に関する検討から多変数の判別モデルを構築し,従来手法との比較を行った.その結果,提案手法では3変数の判別モデルが得られ,「漏水なし」と「それ以外(漏水あり・擬似音)」を判別する際の判別的中率は従来手法と提案手法に大差はないが,「漏水あり」と「擬似音」の判別への有効性が確認された.
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荒井 康裕, 大谷 真也, 稲員 とよの, 小泉 明
2017 年73 巻6 号 p.
II_101-II_108
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
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筆者らは過去の研究において,地下に埋設される水道管路とそこで発生する漏水に着目し,所与の個数(
k個)の漏水監視センサーをどの仕切弁・消火栓に設置するのが最も望ましいかという施設配置問題(
k-メディアン問題)の最適化を試みている.提案した最適配置計画モデルには,「標準型」と「改良型」の2種類の定式化方法があった.ケーススタディの結果,標準型モデルに比べ,改良型モデルの方が,センサーがバランス良く配置された計画代替案になると結論づけた.しかし,対象とした管路ネットワークは仮想かつ単純なシステムであったため,改良型モデルの有効性を十分に検証できたとは言い難い.そこで本研究では,第一に,実存する管路ネットワークを対象に,その水道GISから抽出した管路・弁栓類の情報を最適配置計画モデルに適用した.第二に,モデルの適用によって得られる計画代替案の評価方法に関しては,ネットワーク上に配置された各センサーの分担管路延長の標準偏差によって定量化した.その結果,より複雑な管路システムを対象とした場合にも,最適配置計画モデルは十分な有効性があることを明らかにした.
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長谷川 高平, 荒井 康裕, 小泉 明, 寺井 達也, 飯出 淳, 篠永 通英
2017 年73 巻6 号 p.
II_109-II_120
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
老朽化や地震によって多発する送配水システムの断水事故などを背景に水道事業体は管路システムの冗長化を進めている.一方,送水管路は大口径で交通量の多い幹線道路に敷設される事が多く,人口減少に合わせて非開削で口径のダウンサイジングが行えるPipe In Pipe(PIP)工法が注目を集めている.しかし,PIP工法を用いて断水を伴わずに冗長化を達成する管路更新計画の策定手法はこれまで検討されてこなかった.そこで,本研究では老朽化した送水システムを仮想し,更新案として二重化と系統連絡という2つの冗長化案,その比較として単純更新案の3つを対象に費用対効果分析を行なった.結果として,(1)管路システム冗長化の主便益は断水事故低減にある,(2)現行の社会的割引率やPIP工法の単価では,B/Cで比較した場合の冗長化の優位性が確保できないものの,実勢の経済状況を反映した社会的割引率の引き下げによって冗長化の優位性が得られる,(3)特定の距離以内に浄水場が隣接する場合,その浄水場規模の余裕を用いることで断水を必要としない冗長化管路更新が有効になる,の3点を明らかにした.
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崔 文竹, 片山 茜, 谷口 綾子, 谷口 守
2017 年73 巻6 号 p.
II_121-II_129
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
高齢化社会の到来に際し健康寿命の延伸に関心が高まっている.健康寿命の延伸には主観的健康状態を高めることも不可欠であることが指摘されている.本研究では個人の「食環境」と「食行動に関する意図」を統計的に解析することを通じ,主観的健康状態(本研究では全体的健康感,心の健康,活力,食欲の四指標と定義)を高めるための影響要因を構造的に明らかにした.分析の結果,1)中高齢者,及び夫婦世帯の方が相対的に主観的健康状態に対する評価が高いこと,2)壮年女性が「食べる時間がない」「朝食を食べる習慣がない」「ダイエットしている」という傾向が強く,三食の規則性を確保できず,主観的に不健康であると認識する傾向にあること,3)食材購入施設がよく整備されている地域における居住者は主観的健康状態が良いと判断しやすいこと,などが明らかとなった.
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秋山 孝正, 井ノ口 弘昭
2017 年73 巻6 号 p.
II_131-II_137
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
本研究では,健康まちづくりを実現するため,交通行動変化を促す政策の有効性を評価する.このとき,市民の健康度を表す主要な指標として健康寿命を用いる.健康寿命は,人が心身ともに健康で自立して活動し生活できる期間を意味している.本研究では,市町村単位の環境要因に基づく健康度の推計モデルを提案する.このとき,環境要因と健康度との関係は複雑であると考えられるため,知的情報処理手法であるNN(ニューラルネットワーク)を導入する.これにより,推計精度の高いモデルの構築が可能となった.つぎに,交通行動変化として,徒歩時間及び外出時間に着目し,健康寿命との関係を分析した.これらの結果より,市町村および性別ごとの健康まちづくり政策を検討することが可能となった.
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尾﨑 平, 木下 朋大, 盛岡 通
2017 年73 巻6 号 p.
II_139-II_146
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
現代社会において人々が健やかで心豊かに過ごせる環境づくりが求められている.「環境に配慮した行動」と「健やかさを得る行動」を心理学的,行動科学的に支援する枠組みには共通項が多い.本研究では,環境配慮行動を支援する枠組みを健康行動支援に援用することで得られる行動変容の効果を約50名の従業員を対象に検討した.結果,12週間にわたり健やかな歩きが継続され,健康行動として通勤の機会を活用した取り組みを選択する人が多いことや,通勤時の交通手段の違いによる活動量の違いをを明らかにした.また,職場仲間と活動量の情報を共有しながら取り組むことで新たな会話と競争意識が生まれ,やる気の維持と心的なリフレッシュを実感し,メンタルヘルスケアにも繋がることが示唆された.
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前川 知士, 山田 宏之
2017 年73 巻6 号 p.
II_147-II_156
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
保水性コンクリートで作製した板を建物屋上に敷設した際の,熱遮蔽性および保温性の評価を,2016年夏季から冬季にかけて行った.夏季の測定結果から,伝導熱フラックスおよび屋上表面温度の低減に関しては,2層にして中空層を設けた敷設方法が最も効果が高いことが示された.散水後6日経過した時点であっても伝導熱量の建物内流入成分の積算値は無処理区の13.7%であった.冬季の測定結果からは,伝導熱フラックスの日積算値は敷設方法の違いによる顕著な差異は確認されなかったが,屋上面温度の最低値は2層中空が最も高くなった.夏季冬季共に,建物屋上に敷設する方法としては,2層中空型が最も効果的な敷設形態であることが示されたが,1層のみで使用する場合,屋上面との間に隙間を設けて敷設する工法が効果が高かった.
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小泉 裕靖, 中谷 隼, 森口 祐一
2017 年73 巻6 号 p.
II_157-II_167
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
東京都には高度経済成長期に整備された建築物や社会資本が,膨大なストックとして蓄積されている.今後,これらが,一斉に耐用年数を迎えることから,老朽化ストックとして急増することが危惧されている.本研究では,東京都の木造建築物を事例として,人口減に伴う建築物の需要減少と長期使用進展による影響を考慮したシナリオを設定し,ストック推計を行った.そこから,管理されない空き家化に伴う老朽化ストック量予測を行い,その放置問題の防止に向けた管理方策として,建築物版リサイクル券の導入,建材や工法選定の義務化,建築物カルテの導入,既存ストック活用による新築選好抑制,災害など有事に備えた基金の設立を提案した.
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越川 知紘, 谷口 守
2017 年73 巻6 号 p.
II_169-II_178
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
炭素税や立地適正化計画制度の導入等,環境関連政策を巡る重要な局面で都市構造と自動車CO
2排出量の関係が注目されてきた.特にNewman-Kenworthyタイプの散布図はその最も基礎をなす情報である.わが国では同図を作成する上で,全国都市交通特性調査(旧名称は全国パーソントリップ調査)が活用されてきた.しかし算定過程での年次別の燃費の扱いや調査項目の違いは,検討期間が長期に及ぶと結果に少なからぬ影響を及ぼす.本研究では2015年に6回目の調査がなされ,関連する指標値も過去に遡って改められていることも踏まえ,都市別自動車CO
2排出量を28年に渡って精査する.その結果,28年前の都市別一人当たり自動車CO
2排出量は先行研究よりも実際は低い数値であった.また近年になるに従って一人当たり自動車CO
2排出量の都市間格差が拡大していることが改めて確認された.
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飯野 成憲, 荒井 康裕, 岡田 万由子, 稲員 とよの, 小泉 明
2017 年73 巻6 号 p.
II_179-II_188
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
本研究では,最終処分場の延命化のため脱塩処理を考慮した都市ごみ焼却灰のセメント資源化モデルを構築した.まず,脱塩後の都市ごみ焼却灰を含むセメント原料の化学成分を考慮し,既存セメント工場の焼却灰受入余力を推計した.次に,受入余力を変化させ,清掃工場,既存セメント工場,リサイクルポート,エコセメント工場で脱塩処理する4パターンにおいて,コスト最小化を目的とするセメント資源化モデルを提案した.モデルによる分析の結果,清掃工場,既存セメント工場,リサイクルポートで脱塩処理する場合,総コストの大小関係は,受入余力の上限に影響を受けることがわかった.また,受入余力の上限にかかわらず,エコセメント工場を利用する場合,他の3パターンに比べ総コストを抑えられることがわかった.
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靏巻 峰夫, 川﨑 聡太, 中垣 和登, 山本 祐吾, 吉田 登, 吉田 綾子, 森田 弘昭
2017 年73 巻6 号 p.
II_189-II_200
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
我が国は全体として人口減少下に入っており地方域ではその傾向が顕著である.人口減少の著しい地域では,公共サービスの地域範囲に変化がないため,必要な作業量,役務費等の削減が容易には進まないことが考えられる.一方で,税収及び使用料収入の減少により,持続性に問題が生じることが予想される.本研究では,可燃ごみと生活排水処理の連携処理を考慮することによって,このような地域においても継続可能なシステムを提示することを目的とした.対策として,可燃ごみ収集の効率化のためにディスポーザー導入や,乾式メタン発酵等の適用によるエネルギー回収などを提案してGHG排出量及び処理費用の将来推計を行った.一人当たりに換算して効率性を評価したが,GHG排出量の面では向上が予測されたが,処理費用の面では同程度にとどまった.これには処理量が減少しても削減が難しい人件費,委託費が大きな要因となった.
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島野 侑加, 中尾 彰文, 山本 秀一, 吉田 登
2017 年73 巻6 号 p.
II_201-II_211
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
本研究では,食品リサイクル法の対象となっている食品循環資源の再生利用等実施率のさらなる向上を目指し,地方自治体が設置している既存一般廃棄物処理施設の熱回収施設としての再評価,既存処理施設や燃料化施設の処理余力の有効利用,現状で熱回収の基準を満たさない施設へのバイオガス化技術の導入,の各方策による食品循環資源の再生利用等実施率のさらなる向上の可能性について推計した.分析の結果,これらの方策により,食品産業の「卸売業,小売業,外食産業」全体の再生利用等実施率は86.4 [%]に向上する可能性を有することが明らかとなった.
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中山 裕文, 鎌野 剣士朗, 島岡 隆行
2017 年73 巻6 号 p.
II_213-II_220
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
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本研究では,一般廃棄物焼却灰中の金属Alと水が高アルカリ条件下で反応することにより発生する水素ガスに着目し,清掃工場に水素回収システムを導入した場合の環境経済評価を行った.福岡市クリーンパーク西部を対象とし,一般廃棄物処理における金属Alのマテリアルフロー分析および水素回収システムのLCC,LC-CO
2の推計を行った.その結果,焼却残渣のうち,焼却灰には4.5%,飛灰には3.2%の金属Alが含有されており,その由来は可燃ごみが90%,不燃ごみ破砕選別後の可燃残渣に由来するものが10%であった.水素回収システムを導入した場合,水素製造量は15,435Nm
3/年と計算され,LCCは291万円/年となった.水素製造単価は189円/Nm
3であり,現在の一般的な水素販売価格103~113円円/Nm
3の1.6~1.7倍であった.LC-CO
2は1.36kg-CO
2/Nm
3-H
2となり,一般的に環境負荷が小さいと言われている天然ガスからの水素製造(0.90kg-CO
2/Nm
3-H
2)と比較して1.51倍と計算された.
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道浦 貴大, 中尾 彰文, 吉田 登, 山本 秀一, 山本 祐吾, 中久保 豊彦
2017 年73 巻6 号 p.
II_221-II_231
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
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本研究では,福岡県北九州市をケーススタディの対象として,下水汚泥の燃料利用とそれに伴う乾燥熱源の違いを考慮し,静脈系インフラが連携したエネルギー回収システムのGHG削減効果を評価した.脱水汚泥を高温焼却・ごみと混焼・造粒乾燥,消化ガスをガス発電・造粒乾燥の乾燥熱源・都市ガス代替,ごみ焼却排熱を蒸気タービン発電・汚泥の乾燥熱源に分けた比較ケースを5つ設定した.分析の結果case2(脱水汚泥:造粒乾燥,消化ガス:造粒乾燥の乾燥熱源,ごみ焼却排熱:蒸気タービン発電)が最もGHG削減効果が高く,基準のcase0(脱水汚泥:高温焼却,消化ガス:ガス発電,ごみ焼却排熱:蒸気タービン発電)と比較してGHG排出量の38%が削減可能であり,近接する静脈系インフラや産業工場の連携を活かしたエネルギー回収の有効性が明らかとなった.
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中久保 豊彦
2017 年73 巻6 号 p.
II_233-II_244
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
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セメント工場が近距離に立地する地方都市の下水処理場では,脱水汚泥の処理をセメント工場に委託し,キルンで脱水汚泥を焼却する方式(直接セメント原料化)が採用されている.同方式は下水汚泥エネルギー化率の向上に貢献できない資源化方式であるため,見直しを求められる可能性を有している.しかしながら,直接セメント原料化は温室効果ガス排出量での評価が十分に行われておらず,その継続の可否について判断するための知見が不足している.そこで本研究では,群馬県,栃木県を対象とし,脱水汚泥の直接セメント原料化ケースと固形燃料化ケースを温室効果ガス排出量と事業コストにより比較評価した.結果,下水汚泥資源化に係る他の温暖化対策と比較し,直接セメント原料化から固形燃料化への転換は費用対効果が小さく,直接セメント原料化の継続も有用な判断であると結論づけた.
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荒木 浩太朗, 中尾 彰文, 山本 祐吾, 吉田 登, 中久保 豊彦
2017 年73 巻6 号 p.
II_245-II_256
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
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本研究では,将来産業動向を見据えたうえで,全国規模での下水処理施設と産業工場,ごみ焼却場との連携によるGHG削減効果およびその要因について分析した.まず,下水処理施設における未利用汚泥量,産業工場における下水汚泥燃料の受入可能な容量,およびごみ焼却場での下水汚泥由来エネルギーの受入可能量を把握する.次に下水汚泥燃料化技術ごとにGHG収支を把握し,下水汚泥燃料を産業工場やごみ焼却場への配分ルールを設定し,GHG削減効果を分析した.その結果,2020~2030年において未利用汚泥の87.3%がエネルギー活用可能であり,最大GHG削減効果は3,320 [千t-CO
2]と推計された.製紙工場の供給達成率は約73%であった.また,産業工場の将来動向の変化や製紙工場での汚泥燃料混焼率の変化に伴う,各業種のGHG削減効果への影響を明らかにした.
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松田 雄太郎, 中尾 彰文, 山本 祐吾, 吉田 登
2017 年73 巻6 号 p.
II_257-II_268
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
本研究では,近畿,中国,四国地方をケーススタディの対象として,社会変化の影響を考慮し,紙・パルプ生産インフラを活用した下水汚泥燃料化システムの供給と受け入れポテンシャルを中長期で推計した.また,造粒乾燥,バイオオイル化,バイオガス精製技術を取り上げて,この連携システムにおける技術導入に伴う温室効果ガスの排出量も評価した.その結果,1) 10箇所の紙・パルプ生産インフラにおいて,37箇所の下水処理場で燃料化した汚泥や精製した消化ガスを受け入れることができること,2) 紙・パルプ生産インフラと連携して下水汚泥由来の代替燃料を有効活用するシステムのGHG削減ポテンシャルは高く,従来の汚泥処理が継続される場合と比べると,2020~2040年の総GHG削減量は1,745[千t-CO
2/年](GHG排出量39.7[%]削減)となること,が明らかになった.
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白井 信雄
2017 年73 巻6 号 p.
II_269-II_282
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
本研究では,WEBモニターによるインターネット調査によって,日本と韓国の国民の再生可能エネルギーへの関与の実施意向の規定構造を分析した.この結果,福島原発事故の前と現在で,日本では脱原子力発電,再生可能エネルギー導入の必要性支持が高まっているが,その必要性支持を高めた層は再生可能エネルギーへの関与の実施意向が弱いことが明らかになった.逆に,福島原発事故の前と現在で脱原子力発電,再生可能エネルギー導入の必要性支持を低めた層の方が,再生可能エネルギーへの関与の実施意向が強い傾向にある.脱原子力発電,再生可能エネルギー導入の必要性支持を高めた層は特に女性が多く,この層が再生可能エネルギーに関与する選択肢を充実させることが期待される.
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高倉 潤也, 藤森 真一郎, 高橋 潔, 本田 靖, 長谷川 知子, 肱岡 靖明, 増井 利彦
2017 年73 巻6 号 p.
II_283-II_291
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
気候変動にともなう暑熱ストレスへの曝露の増大により,特に屋外の労働現場において高強度の身体作業に従事可能な時間が減少し,大きな経済的損失が懸念されている.本研究は,暑熱ストレスによる屋外作業可能時間の短縮を軽減するための適応策として,作業時間帯のシフトと身体作業強度の軽減について仮想的なシナリオの下で検討した.温室効果ガス排出削減を行わず気温上昇が続く仮定の下では,身体作業強度が軽減できない作業では,21世紀末には約6時間作業時間帯をシフトさせることが必要であると予測された.一方で2℃目標に対応する気候変動緩和策が実現できた場合には,必要な作業時間帯シフト量は2時間以内に抑えられると予測された.適応策の困難度を現実的な範囲に抑えるという観点からも,気候変動緩和策の実行が不可欠である.
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杉本 賢二, 奥岡 桂次郎, 秋山 祐樹, 谷川 寛樹
2017 年73 巻6 号 p.
II_293-II_300
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
自然災害による被災地域の復旧・復興に向け,被災前の社会状況に回復するために必要となる資材投入量の把握や,効率的な災害廃棄物の処理計画が求められる.本研究では,空間・属性詳細なマイクロ建物データと,災害被害分布情報との重ね合わせにより「失った建築物ストック」を推計する手法の構築を目的とする.マイクロ建物データの建物情報より建築物ストック量の空間分布を推計し,それに平成28年熊本地震の計測震度分布による建物倒壊判定を行い推計した.その結果,熊本県における建築物ストックの約6割が震度6弱以上の強振動域に分布しており,全壊棟数の推計結果は被害調査報告に近しい値となることが示された.また,地震動による建物被害により260.7万トンの失った建築物ストックが発生し,その半分がコンクリートであることが明らかになった.
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平山 智樹, 藤原 和也, 日比野 剛, 花岡 達也, 増井 利彦
2017 年73 巻6 号 p.
II_301-II_308
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
本研究では,積み上げ型技術選択モデルを用いて,インドの将来の温室効果ガスと一次生成の大気汚染物質,短寿命気候汚染物質(SLCP)の排出量と,対策導入コストを推計し,気候変動緩和策が大気汚染物質とSLCPの排出に及ぼす影響を評価した.その結果,125ドル/トンCO
2の炭素価格で導入可能な気候変動緩和策による副次効果として,SO
2,PM
2.5,BCの排出を基準年比横ばい以下まで抑制できること,2050年までの累積GDPの0.12%に相当する大気汚染対策コストを削減できること等が示された.一方で,気候変動緩和策の推進がもたらすバイオマス利用の拡大が,大気汚染物質やSLCPの排出増をもたらす可能性があることも示された.温室効果ガスだけでなく,大気汚染物質やSLCPも含めた最適な排出パスを検討するためには,低炭素化のみならず,健康被害や気候変動の要素にも留意して検討を進める必要がある.
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小島 直也, Xue Mianqiang , 町村 尚, Zhou Liang , 東海 明宏
2017 年73 巻6 号 p.
II_309-II_319
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
室内空気汚染いわゆるシックハウス問題に関して,この原因物質の室内濃度は,戸数の限られる実測調査により把握されている.一方で,実測調査では困難な,全住宅内の空気汚染状況や将来を含めた経年変化について把握するためのモデル評価手法は限られており,規制影響評価や将来予測に関する知見が不足している.本研究では,日本全国の合板製造量と合板用接着剤出荷量のマクロなマテリアル・フローに基づき,ホルムアルデヒドの室内濃度および室内濃度指針値超過確率を評価する手法を構築,および室内空気汚染に関する規制影響の考察を目的とした.2000~2010年の室内濃度の推計結果と,実測濃度とを比較した結果,1.0~2.1倍程度過大に推計されたものの,2003年の改正建築基準法施行の前後で,接着剤の代替が進行し,室内濃度が低減していく傾向が再現できた.
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吉永 弘志
2017 年73 巻6 号 p.
II_321-II_332
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
建設機械の排出ガスについては,エンジン単体の室内試験値により規制されているが,近年,自動車の動向をふまえ,建設機械として動作する際に排出するガスの測定事例が,国内外で報告されるようなった.今後, 排出量の多寡を議論する際には測定値の信頼性を明らかにすることが必要となり,多数の建設機械の測定値を得るためには測定の簡素化が必要になると考えている.本論文では構内における測定値を解析した結果に基づいて,「CO
2との質量比(g/kg-CO
2)」を評価量とすること,および測定する動作を「待機」と「ならし(模擬動作)」の二種類に設定することで,測定値の信頼性が向上すること,および測定が簡素化されることを明らかにした.さらに,NOxの測定値については, 「待機」は5分間の測定を3回行い, 「ならし(模擬動作)」は60サイクルを1回とした測定を異なる運転者で3回行うことで, 偶然誤差が95%の確率で10%以内となると推定した.
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芦名 秀一, 井上 剛, 中村 智志, 石島 清宏
2017 年73 巻6 号 p.
II_333-II_341
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
フリー
本研究では,高効率機器への転換等の技術的対策と都市機能の集約による再生可能エネルギーや地域エネルギー事業導入による低炭素効果を総合的に分析できる手法(地域エネルギー・低炭素街区モデル)を開発し,地方都市に適用して手法の有効性を確認するとともに,都市の低炭素化方策検討にあたって集約化効果を顕に取り入れることが肝要であることを示した.
開発したモデルを福島県郡山市へ適用して都市の集約化も含めた低炭素効果を分析した結果,2050年までに都市機能が郡山市の定める13の拠点地区に集約が進むと想定したシナリオでは,高効率機器への置き換え,太陽光発電の導入及び地域エネルギー事業導入等による合計の削減量は,郡山市の家庭部門及び業務部門のCO
2排出量118.7万tCO
2の22.7%に相当する27万tCO
2となることがわかった.
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五味 馨, 藤田 壮, 岡島 優人, 越智 雄輝, 文屋 信太郎, 牧 誠也, Dou Yi , 井上 剛, 古明地 哲夫, 大島 英幹
2017 年73 巻6 号 p.
II_343-II_352
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
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地域が気候変動への緩和と適応等の環境制約とともに,高齢化への対応や社会基盤の維持といった様々な課題の克服を目指すとき,その方法の一つとして居住地・従業地を拠点へ集約するコンパクトな土地利用への転換が議論されている.本研究では数十年にわたる土地利用の将来像を特に低炭素対策の観点から検討するため,人口及び経済のマクロ的な推計と居住地および従業地の空間分布を操作的に取り扱うモデルを組み合わせ,将来空間シナリオを分析する手法を開発した.これを仮想的なモデル都市及び福島県郡山市に適用し,拠点の数と集約強度の違いに応じた地域エネルギー事業と,地域交通事業としてカーシェアリング事業の対象範囲の変化を検討した.その結果,集約拠点を減らし集約の強度を高めることでエネルギー需要密度の増加により地域エネルギー事業の対象範囲は増加するが,カーシェアリング事業については過度の集約により対象人口が減る可能性が示唆された.
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Yi DOU, Minoru FUJII, Tsuyoshi FUJITA, Kei GOMI, Seiya MAKI, Hiroki TA ...
2017 年73 巻6 号 p.
II_353-II_363
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
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Urban sustainable development has been one of the most important issues in the global society, wherein industrial sector plays a critical role who not only contributes in mitigating global climate change but also promoting continuous economic growth so as to deal with the challenges of ageing and depopulation. The emerging methodology named Industrial Symbiosis (IS) provides a two-pronged approach to enhance the competitive advantages of products through exchanging byproducts and heat between nearby industries. However, geographic proximity and supply-demand matching are two critical factors affecting the benefits from implementing IS. This study aims to develop an assessment method to analyze the potential of waste heat exchange in an industrial park considering location changes of factories. The Shinchi-Soma region of Fukushima Prefecture, Japan, is selected as case area where was suffered from the Great East Japan Earthquake in 2011 and now is in revitalization so that positive industrial policy and land use adjustment is practicable. Results indicate that the preference on inducing high heat demand factories for using more waste heat can indeed enlarge the CO
2 emission reduction but job creation is quite limited, while locating employee intensive factories can create more jobs but limit the CO
2 emission reduction. Consequently, local policies for industrial development should carefully adapt with this trade-off. It is expected to conduct a wide-area intergovernmental cooperation on optimal industrial locations for gaining double benefit in economic growth and environmental improvements.
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渡部 守義, 高見 徹, 弓岡 大亮
2017 年73 巻6 号 p.
II_365-II_372
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
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人間は安全性や利便性を高めるために自然界において様々な薬剤を使用している.これらの薬剤が環境や生物に及ぼす影響を明らかにすることは,ヒトに対する潜在的な危険性を回避するためにも重要である.OECDではシマミミズ
Eisenia fetidaを用いる急性毒性試験のテストガイドラインTG 207を整備している.本研究では農薬のスミチオン乳剤,地盤改良材として用いられる普通ポルトランドセメント,融雪剤の塩化カルシウムの3種類の薬剤に対し人工土壌を用いたシマミミズの急性毒性試験を行い,その影響について調べた.その結果,シマミミズに対する半数致死濃度LC
50はスミチオン乳剤で0.418 mg/kg,普通ポルトランドセメントで19.6 g/kg,塩化カルシウムで22.1 g/kgと求めることができた.そして死亡要因の考察を行うとともに,実際の薬剤使用量から土壌内の薬剤濃度を推定し,試験結果との比較を行った.
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藤宗 朋樹, 河口 洋一, 竹川 有哉, 藪原 佑樹, 山城 明日香
2017 年73 巻6 号 p.
II_373-II_377
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
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徳島県吉野川市の川田川において,カワニナの密度と河川環境要因の関係およびカワニナの推定密度とゲンジボタルの飛翔数の相関について解析を行った.カワニナの密度調査の結果,カワニナの密度はワンドにおいて高い傾向が見られ,カワニナ密度は水深と岩盤の存在に正の相関が見られ,底層流速に負の相関が見られた.このことから水深が深く,底層流速が遅く,河床に岩盤が多い環境がカワニナの生息適地であると示された.モデルを用いて推定したカワニナの密度は,ゲンジボタルの飛翔数と正の相関を示し,ホタルの保全にはカワニナが安定して生息できる環境を保全することが有効であると考えられる.
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西川 慎一郎, 中尾 彰文, 山本 秀一, 山本 祐吾, 中久保 豊彦, 吉田 登
2017 年73 巻6 号 p.
II_379-II_390
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
ジャーナル
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本研究では,将来の社会変化の中で,焼却余力を有する高効率ごみ発電施設におけるエネルギー回収をめざした施設整備の方向性を得ることを目的とし,岸和田市における事例分析を行った.まず,モデル施設の熱収支解析をもとに,熱回収技術導入による発電効率向上と,ごみ処理量増加による発電増加量を分析した.つぎに,設定した整備シナリオに従って,周辺自治体からのごみ受け入れを想定し,施設整備方策ごとに事業性を分析した.分析の結果,熱回収技術の組み合わせによって,さらなる発電効率の向上が可能ということがわかった.また,費用削減の観点から,熱回収技術導入及び周辺自治体からのごみ受入れ拡大の組合せとして考えられる複数の選択肢からライフサイクルコストの変化を評価した.
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西鶴 誠希, 武藤 慎一
2017 年73 巻6 号 p.
II_391-II_402
発行日: 2017年
公開日: 2018/04/01
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現在の地球温暖化問題では,温室効果ガスを削減するという緩和策とともに,地球温暖化の影響を軽減するための適応策の検討も重要とされている.適応策では,地球温暖化被害の軽減額の減少分が便益となるが,例えば地球温暖化に伴う洪水被害の評価においては,現状の推計に問題があった.そこで,簡便なラムゼイモデルを用いて洪水被害が経済成長の水準にまで影響することをまず明らかにした.さらに,ラムゼイモデルを動学CGEモデルに拡張し,山梨県を対象に地球温暖化による洪水被害額の推計を行った.その結果,地球温暖化による洪水の深刻化により直接被害が740(億円/年)増加した場合,経済成長への影響まで含む家計の経済損失は1,210(億円/年)となり,その比率である乗数は1.692との結果となった.
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