土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
74 巻, 1 号
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和文論文
  • 黄 毅, 宮内 啓介, 水戸 光昭, 中村 真理子, 成瀬 美樹, 遠藤 司, 井上 千弘, 遠藤 銀朗
    2018 年 74 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/01/20
    ジャーナル フリー
     建設発生土処理において,ヒ素を含む浸出水が排出され環境問題を引き起こす事例が見られる.本研究では,建設発生土盛土処理地の浸出水から,ヒ素高蓄積植物として知られているモエジマシダを用いた水耕栽培処理によるヒ素除去の検討を行った.仙台市の地下鉄東西線建設発生土処理地にモエジマシダの水耕栽培処理のパイロットプラントを設置し,水質環境基準値を超えるヒ素を含みかつpH 9前後のアルカリ性の浸出水からヒ素を除去する現地実験を行い,処理水のヒ素濃度を水質環境基準値である10 μg/L以下に浄化でき,またpHも水質環境基準値範囲である8.3程度まで低下させることを確認した.モエジマシダによるヒ素の蓄積は主に羽片で生じ,1株あたりのヒ素吸収量は2.4 mgとなった.以上からモエジマシダを用いた水質浄化法の有効性を明らかにした.
  • 斎藤 健志, 濱本 昌一郎, 竹村 貴人, 上島 雅人, 川本 健, 小松 登志子
    2018 年 74 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー
     温度変化が堆積物からのホウ素とヒ素の溶出量と存在形態に及ぼす影響を解明することを目的に,荒川低地中部で深度50 mまでのボーリングにより採取した4試料を用い,嫌気的条件および異なる温度条件下(15℃,25℃,40℃)で溶出試験(水溶性を分画)を行った.溶出試験後の試料に対し,逐次抽出法試験(イオン交換態,炭酸塩態,鉄・マンガン酸化物態,有機物態,残渣に分画)を適用した.溶出試験でホウ素とヒ素の水溶性画分に温度効果が顕著であった堆積物について,水溶性,イオン交換態,炭酸塩態の量を足し合わせた最大溶出可能量は,温度上昇とともに増加する傾向が確認された.一方,鉄・マンガン酸化物態は減少傾向にあり,この画分から溶出しやすい存在形態(水溶性,イオン交換態,炭酸塩態)へと温度上昇により移行した可能性が考えられた.
  • 山崎 祐二, 古川 靖英, 田邉 康太, 奥田 信康, 井上 大介, 清 和成
    2018 年 74 巻 1 号 p. 16-24
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
     Loop-Mediated Isothermal Amplification法(LAMP法)を用いたDehalococcoides属細菌の定量検出法を開発し,実汚染地下水のバイオスティミュレーションにおいてDehalococcoides属細菌の推移を調査した.開発したLAMP法は1×103copies/μL以上の濃度で対象遺伝子を定量可能であり,既往のReal-time PCR法の定量結果との相関が確認された.また,バイオスティミュレーションにおいて物理化学的指標に加えてLAMP法による分析を行い,栄養剤到達,嫌気環境創出,分解菌増加に連動してVOCs分解が進行する様子の一端を捉えることができた.本研究の結果から,LAMP法による分解菌モニタリングが原位置浄化の施工管理に有用であることが示された.
  • 武田 文彦, 真野 浩行, 南山 瑞彦, 岡本 誠一郎
    2018 年 74 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
     本研究では化学物質排出移動量届出制度で対象とする第一種指定化学物質について沖縄県での下水処理水中濃度を推計し,健康リスク及び生態リスク初期評価を実施した.健康リスク初期評価では,下水処理水で育てた根菜類の摂食を想定した場合に情報収集に努める必要がある(ハザード比HQが0.1≦HQ<1)と考えられる化学物質はポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテルのみであった.生食用野菜摂食や親水,修景利用,散水利用,トイレ水洗利用,農業利用(間接経口摂取)を想定した場合のHQは評価した物質全てで0.1を下回り,特段の対応は要しないと判断された.下水処理水に対する水生生物の直接ばく露を仮定した生態リスク初期評価では,ヒドラジンなど8物質は下水処理水中の実濃度測定などの詳細な評価(HQ≧1)を行うべき化学物質と判断された.
  • 西田 修三, 中谷 祐介, 河内 陽介
    2018 年 74 巻 1 号 p. 35-47
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
     上下水道システムが発達した流域圏の物質動態は,自然系と人工系からなる複合水循環系によって決定されている.本研究では大阪市を対象に現地調査と資料の収集・分析を行い,人工水循環系における窒素,リン,ケイ素の動態を定量的に明らかにするとともに,将来の施策シナリオが水・物質フローに及ぼす影響を評価した.
     その結果,窒素とリンについては生活系負荷が人工水循環系内で突出して大きな負荷要因である一方,ケイ素は浄水・下水処理によって除去されず,水源からの取り込みや下水道に浸入する不明水による負荷も無視できないことが示された.また,工業用水道への地下水利用や不明水の浸入防止策が将来進められた場合には,下水処理場から排出される窒素,リン,ケイ素のバランスが大きく変化し,河川水質に影響を及ぼす可能性が示唆された.
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