土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
75 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
和文論文
  • 山崎 創史, 橋本 崇史, 小熊 久美子, 滝沢 智
    2019 年 75 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/20
    ジャーナル フリー
     開発途上国でのpoint-of-use型浄水装置への応用を想定し,重力式膜ろ過における膜透過流束のファウリング層形成への影響を実験的に評価した.ポリエーテルスルホン(PES)及びポリアクリロニトリル(PAN)製限外ろ過膜を用い,河川水の定圧ろ過を行ったところ,膜透過流束が大きいPES膜では,PAN膜に比べてろ過抵抗の増加率は約1/3と小さかった.膜閉塞モデルを適用したところ,PES膜ではケーキ層抵抗が卓越していたが,PAN膜では卓越した抵抗が得られずモデル適用の限界があった.
     共焦点レーザー顕微鏡によるファウリング層の解析から,PES膜では,PAN膜に比べて比表面積と空隙率が大きいファウリング層が形成されており,ファウリング層構造の違いがファウリング抵抗に大きく影響することが示された.
  • 陳 鶴, 松橋 啓介
    2019 年 75 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/20
    ジャーナル フリー
     環境配慮行動の実施には,心理的要因が大きな影響を与えている.既存の研究では,環境への態度に着目しているが,より広く個人・社会・経済などを含めた態度の影響は分析されていない.そこで,本研究では,環境に負荷が少ないライフスタイルを想定し,持続可能な発展に関する価値観との関連性を明らかにすることを目的とする.価値観の指標は,「より良い暮らし指標(BLI)」を使用した.その結果,持続可能な発展に関する価値観に応じて,取り組みやすい見直しが異なることを明らかにした.環境面を重視する人は,価格差が小さくても,さまざまな見直し行動を取りやすいこと,価格差が大きい場合は経済面を重視する人が節約に取り組みやすいこと,社会面を重視する人や住居を重視する人は太陽光発電設備の導入に積極的な傾向があることを示した.
  • 京井 尋佑, 田中 勝也
    2019 年 75 巻 1 号 p. 20-29
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/20
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,環境直接支払における農家の採択行動に影響する要因を明らかにすることである.集落レベルでの採択行動には空間的な集積が認められるが,既存研究では十分に考慮されていない.本研究では空間プロビットモデルにより空間的自己相関を明示的に考慮した分析をおこなった.分析により,環境直接支払の対象である5種類の取組(IPM,緩効性肥料,有機農業,カバークロップ,炭の投入)のいずれにも正の空間的自己相関が示された.また,集落の環境条件と内部条件も採択行動に影響する要因として示された.結果より,環境直接支払のターゲティング,農業者間の情報交換の場の創成,農地集積促進による大規模農家率上昇の3点の重要性が示唆された.環境直接支払の更なる普及のため,より柔軟な支払体系や支援体制の構築が必要といえる.
  • 小野寺 弘展, 石関 拓実, 石川 奈緒, 伊藤 歩, 海田 輝之
    2019 年 75 巻 1 号 p. 34-41
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/20
    ジャーナル フリー
     抗菌性物質は家畜に対し世界中で広く使用されている.家畜に投与された抗菌性物質の一部は糞や尿として体外に排出されるため,その排せつ物を堆肥として使用した場合,農地土壌や周辺環境へ悪影響を及ぼす恐れがある.本研究では,土壌中での抗菌性物質の挙動を明らかにするため,マクロライド系抗菌性物質であるタイロシンについて,3種類の土壌への収着動態および分解性を検討した.その結果,有機物が比較的多い黒ボク土と褐色森林土では,微生物によりタイロシンが分解する可能性が示唆された.また,灰色低地土ではどの温度条件でもタイロシンの残留率が顕著に低く,これは土壌に含まれる粘土鉱物の物理化学的な作用によることが示唆された.
  • 岩月 輝希, 柴田 真仁, 村上 裕晃, 渡辺 勇輔, 福田 健二
    2019 年 75 巻 1 号 p. 42-54
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/20
    ジャーナル フリー
     地下施設における吹付けコンクリート支保工が地下水水質に与える影響を明らかにするため,深度500mの花崗岩に掘削した坑道(容積約900 m3)を閉鎖する実規模原位置試験を行った.閉鎖坑道内の水質観察,吹付けコンクリートの分析,それらに基づく水質再現解析の結果,portlandite, ettringite, amorphous silica, calcite, gibbsite, K2CO3, natron, bruciteもしくはnesquehoniteの溶解・沈殿反応が水質に影響する主要反応であると推察された.更に,坑道内に施工された吹付けコンクリートはportlanditeに飽和した地下水(pH12.4)を約570 m3生成する反応量を持つと見積もることができた.これにより坑道閉鎖後の長期的なセメント材料の化学影響の予測解析確度が向上すると考えられた.
和文報告
  • 浅利 裕伸, 洲鎌 有里
    2019 年 75 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/20
    ジャーナル フリー
     帯広広尾自動車道建設による野生動物の生息地分断化を解消するため,野生動物用オーバーパスが設置された.この効果を検証するため,自動撮影カメラを用いて2017年5月~11月に利用種のモニタリングを実施した.野生動物用オーバーパス周辺の森林に生息する種とオーバーパスの利用種に大きな違いはなく,撮影頻度も有意に異ならなかったことから,周辺に生息する哺乳類が構造物を十分に認識および利用していることが明らかになった.また,ニホンジカとアカギツネでは継続的に多数の利用がみられた.特にニホンジカでは,定着個体による利用のほか,季節移動による利用もみられた.これらのことから,帯広広尾自動車道の野生動物用オーバーパスは,中大型哺乳類にとっては有効に機能していると考えられた.
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