東北地方における被災自治体の復興計画では,震災直後の電源消失の経験を踏まえた自立・分散型エネルギーの導入など,環境にやさしく災害に強い「持続可能なまちづくり」が推進されてきた.その中でも被災地域に多く賦存する木質バイオマス資源の熱利用が有望視されていたが,施設導入費などの初期費用の高さが理由となり,木質バイオマスの利活用は進んでいない.
本研究では,全国に先駆けてスマートコミュニティの構築に取り組んできた釜石市の災害公営住宅を対象に,木質ボイラーによる地域熱供給システム導入可能性の検証を行い,LPガスシステムとの比較における環境面,経済面での効果と,木質という地域資源の活用がもたらす地域経済への波及効果の可能性を明らかにした.最後に,当該事業の実現上の課題や今後の展望について論考した.