土木学会論文集F
Online ISSN : 1880-6074
ISSN-L : 1880-6074
62 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
招待論文
  • 牧角 龍憲
    2006 年 62 巻 1 号 p. 162-180
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/30
    ジャーナル フリー
     借入金残高が200兆円を超え財政が逼迫する地方においては,社会資本整備のあり方を真剣に議論せねばならない時になっている.そして,学界がその知恵を出して,地方と協働してあらたな社会資本整備に取組むことが求められている.本報では,都道府県および市町村における社会資本整備の状況について道路整備と人口密度の観点から分析砺社会資本を住民の資産として説明する必要性について財務の観点から整理し,品確法の総合評価における位置づけと地方への普及において学界が考慮すべき点を自治体の実態に基づいて述べ,学界の役割と課題を抽出した.また,取り組む視点として,全ての地方を一律とみなすのではなく,自治体規模やレベルにより差があること,財務の観点が不可欠であること,学界と実務との落差が大きいこと,などの考慮が必要であることについても述べる.
和文報告
  • 井上 義之, 中園 眞人, 望月 秀次, 坂手 道明, 中川 浩二
    2006 年 62 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/17
    ジャーナル フリー
     本報告は,都市近郊における連続高架橋を計画するにあたり,コンセプトに基づいて景観的観点から設計することの有効性を論じたものである.まず設計にあたり,基本方針となるコンセプト(基本理念・基本設計コンセプト・設計手法コンセプト)を設定し,その方針により施工した路線を対象に,アンケート調査とその分析を行い,基本方針及び基本方針を設計に活かすための表現方法の妥当性,さらに基本方針と実構造物の実現度を評価した.そして,景観的に「良い構造物」とはどのような点に配慮されたものであるかについて考察し,コンセプト先行型景観設計法の有効性を示すとともに,今後の適用にあたっての検討事項を明らかにした.
  • 佐藤 郁, 渡邉 英一, 古田 均, 宮口 智樹
    2006 年 62 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/17
    ジャーナル フリー
     寿命が長い土木構造物を適切に維持管理するためには,拠点ごとに分散して保管された情報を有効活用していかなければならない.しかし,データベースの統合には多大な時間と労力が必要なだけでなく,ユーザの利便性も低下させる可能性があるため,新たな手法が求められている.そこで本研究では,まず,長期保存された建設情報が言葉の意味や仕様の変化など,外的環境の変化によって利用できなくなる可能性を指摘した.次に統合化の問題点を解決するために,マルチエージェント技術による建設情報統合エージェントシステムを提案した.最後に,運用中の業務システムを利用し,WANを介した分散環境で建設情報統合エージェントシステムの実装実験により有効性を確認した.
  • 寺内 伸, 谷口 裕史, 宮地 明彦, 中田 雅博, 吉武 勇, 中川 浩二
    2006 年 62 巻 1 号 p. 41-52
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/17
    ジャーナル フリー
     切削即時充填式プレライニング工法(New PLS工法)は,都市部における新しいトンネル構築工法として注目されつつある.本論文では,New PLS工法の技術開発において,「基本的機構確認段階」「実用性確認段階」「適用性拡大段階」の各実証(現場適用)段階での成果整理~課題抽出~対策立案を一連の流れとして示し,今後の本工法を用いたトンネル施工の基礎資料とすべく,プレライニング機の仕様や特殊急硬性コンクリートの配合などに関する知見を述べる.また,本開発プロセスを土木施工技術開発の一典型例として,現場適用からの知見の重要性を示す.
  • 廖 金孫, 田中 正明, 原 直人, 柴崎 剛, 藤野 陽三
    2006 年 62 巻 1 号 p. 67-78
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/17
    ジャーナル フリー
     都市高速道路の化粧板付きの鋼桁における塗装塗り替えの省略可能性を検討するため,阪神高速道路の鋼桁を対象に,温度・湿度と不純物の測定,大気腐食センサを用いた腐食モニタリングおよび各種暴露試験などを実施し,化粧板内外部の環境腐食性を調査した.その結果,現状の化粧板のパネル間連結部に隙間が存在し,その隙間から侵入してきた不純物と雨水が化粧板内部の鋼桁の腐食発生要因であることが判明した.これらの計測・調査結果を基に,鋼桁外面の塗装塗り替えの省略には,化粧板の密閉性の向上による化粧板内部の防食性の改善を提案した.
  • 大津 宏康, 中澤 慶一郎, 安田 亨
    2006 年 62 巻 1 号 p. 79-88
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/17
    ジャーナル フリー
     本研究は,日本の円借款によるベトナムにおける新規建設道路を対象とした,道路アセットマネジメントの適用状況について調査した結果について示すものである.具体的には,ベトナムの道路事業者を対象とした,道路の維持管理に関するインタビューを実施すると共に,新規建設道路と同様に橋梁・盛土構造となる既設道路における車両走行性の阻害要因について現地調査した結果について示す.さらに,この調査結果に基づき,新規道路建設工事に対して,舗装に加えて舗装下部地盤をも含めたライフサイクルコストLCCを判断指標とする総合的な道路アセットマネジメント手法を提案すると共に,その道路アセットマネジメントの適用に関する教育訓練の重要性について提言した.
  • 三田村 浩, 坂田 昇, 閑田 徹志, 須田 久美子, 丸山 久一
    2006 年 62 巻 1 号 p. 128-143
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/30
    ジャーナル フリー
     近年,大型車交通量の増加や車両の大型化に伴い,鋼床版の疲労損傷が多く報告されており,合理的で経済性に優れる疲労損傷対策工法が求められている.そこで,著者らは,鋼床版の上面増厚材料として,大きな引張ひずみが作用した揚合でも引張力を保持しひび割れ幅の抑制効果に優れた高靭性繊維補強セメント複合材料 (Engineered Cementitious Composite) を用い,ECC と鋼床版を一体化させるためのずれ止めにFRP製のプレートジベルを用いることによって鋼床版の剛性を向上させ,鋼床版の応力低減によって疲労耐久性を確保させる工法を新たに考案した.新工法の概念とそれを構成する ECC およびその他の材料の基礎性能を実験的に把握し,工法の妥当性を検討した.
  • 南 邦明, 森 猛, 小沼 靖己
    2006 年 62 巻 1 号 p. 144-155
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/30
    ジャーナル フリー
     本報告は,高力ボルト摩擦接合継手に太径ボルトを使用した場合の経済性および製作の合理化の程度を明らかにすることを目的としたものである.そのため,形式の異なる4種類の橋梁モデルに対して,10T クラスの M22,M30,M36 を用いた試設計を行い,ボルト本数,孔数および連結板重量の違いを調べ,積算上での連結部工事費用を算出し,太径ボルトを用いた場合の経済性について検討する.さらに,孔明け作業時間およびボルト作業時間(組立て作業および解体作業)を計測し,試設計結果とあわせて,太径ボルトを用いた場合の作業時間を比較し,工場製作における合理化効果について検討する.
和文論文
  • 大津 宏康, Noppadol PHIENWEJ, Nutthapon SUPAWIWAT, 高橋 健二, 泉 裕昭
    2006 年 62 巻 1 号 p. 25-40
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/17
    ジャーナル フリー
     本書では,バンコク地区における過去の地下水揚水に伴う地盤沈下の発生状況について示すと共に,地下水揚水量の推移について経済成長を反映したモデル化手法を適用した地盤沈下予測手法について示した.また,本研究で提案するモデル化手法を用いてバンコク地区の各地域での代表箇所を対象とした地盤沈下の予測結果について示した.さらに,バンコク地区では,地下水揚水に伴う地盤沈下により,チャオプラヤ川の堤防高が河川の高水位レベルを下回ることが懸念されていることから,算定した地盤沈下の予測結果を用いた,洪水リスクに関する検討も加えた.この結果として,特定の領域では洪水リスクの増加が想定されることから,早急に地下水揚水に対する制限措置を講ずる必要があることを明らかにした.
  • 小島 芳之, 津野 究, 佐野 信夫, 伊藤 哲男, 馬場 弘二, 松岡 茂, 川島 義和
    2006 年 62 巻 1 号 p. 53-66
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/17
    ジャーナル フリー
     本研究は,トンネル覆工の三次元模型載荷実験を実施し,トンネル覆工の残存耐力を評価できる指標およびこの実験を再現できる三次元有限要素法について検討したものである.その結果,トンネル覆工に作用する荷重形態や断面欠損の状況によって荷重一変位の関係やひび割れの発生・進展が異なり,このようなトンネル覆工の三次元効果が残存耐力に大きく影響することを示した.また,トンネル覆工に作用する荷重を変位で除した剛性値という指標により残存耐力が表現できることを示した.さらに,ひび割れの発生・進展を考慮した三次元有限要素法は,模型載荷実験における破壊に至るまでの挙動やひび割れの進展を追跡できることを確認し,トンネル覆工の三次元効果による力学特性の評価が可能であることを示した.
  • 吉田 幸信, 安藤 幹也, 山本 雅貴, 長谷川 修一, 鈴木 昌次, 中川 浩二
    2006 年 62 巻 1 号 p. 89-100
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/30
    ジャーナル フリー
     本論文は,四国の地山を地質帯別に区分して,高速道路のトンネル建設で得られた現場計測データを用い,各地質帯の地山挙動特性について論じたものである,対象は,領家帯,和泉帯,中新世火山岩類,三波川帯,および秩父帯であり,地山挙動特性は最終変位量と収束過程により代表している,結論として,トンネル掘削時の地山挙動は岩種による分類レベルでは四国地域を対象とした場合と全国を対象とした場合に両者の乖離は小さいこと,しかし同一岩種であっても地山挙動は地質帯の成因によって差異を生じること,経時変位曲線は指数関数により近似できること,また指数関数式の性質を利用して挙動特性を説明できること,分析結果は四国のトンネル技術者の認識内容と概ね合致すること等を明らかにしている.
  • 二宮 仁志
    2006 年 62 巻 1 号 p. 101-116
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/30
    ジャーナル フリー
     公共インフラ整備に関与する主体のニーズや利害を調整するプロセスとして合意形成の必要性が指摘されているが,そのプロセスを支援する制度ないし技術は確立されていないのが現状である.本研究では,合意形成プロセスに内包する問題とその発生メカニズムの分析を目的とした理論モデルを提案し,その有効駐を検証した.ゲーム理論モデルを用いた事例研究から,(1)関与主体の不完全な合理性,(2)認識されたゲームの変更可能性,(3)段階的かつシステム的特性が要求性能として導出され,それらをモデルに実装化するためドラマ理論の援用を試みた.その理論モデルを用いて事例研究を行った結果,合意形成プロセスにおける特性や問題発生メカニズムが理論的に考察可能となり,分析ツールとしての有効性とその利用による問題解決アプローチへの可能性が示された.
  • 城間 博通, 益田 光雄, 進士 正人, 松井 幹雄, 西村 和夫
    2006 年 62 巻 1 号 p. 117-127
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/30
    ジャーナル フリー
     垂直縫地ボルトの地山補強機構を解明するため,地表面傾斜がゆるく,土被りの小さいトンネル坑口部で施工された垂直縫地ボルトの計測結果を詳細に分析し考察した.その結果,緩傾斜で土被りの小さい地形条件下における垂直縫地ボルトは,主にボルト軸方向の引張りや圧縮ひずみに抵抗する補強材として機能し,トンネル掘削による応力再配分によって生じた荷重を,地山を破壊することなく切羽前方やトンネル側部に伝える.また,トンネル側部では,縫地ボルトの根入れ先端部付近で,地表面沈下量を増加させる鉛直方向の地中変位が発生していることから,縫地ボルトの根入れ深さについて注意が必要であることがわかった.本研究では,トンネル周辺地山の挙動計測結果から新しい地山補強モデルを提案する.
和文ノート
  • 山口 邦彦, 吉川 紀, 栗田 章光, 中井 博
    2006 年 62 巻 1 号 p. 156-161
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/30
    ジャーナル フリー
     近年,過去の高度経済成長期に建設された多くの道路橋が,高齢化の時期を迎えている.したがって,これらの橋梁を,貴重な社会資本として,延命化させることが重要な課題である.既設鋼橋の補強工法としては,単なる添接補強材工法と外ケーブル工法とが挙げられるが,その補強効果に,長短がある.筆者らは,既設鋼橋の新しい補強・補修工法として,熱プレストレス工法を提案してきた.この工法は,耐荷力が不足している橋梁でも,B活荷重対応橋梁として,格上げすることができる,同時に,耐久陸も向上させることができる.本文では,この熱プレストレス工法による既設連続桁の補強・補修効果について検討した結果を報告する.
feedback
Top