土木学会論文集F
Online ISSN : 1880-6074
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65 巻, 4 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
招待論文
  • 松本 徳久
    2009 年 65 巻 4 号 p. 394-413
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/20
    ジャーナル フリー
     我が国でフィルダムは1,400年の歴史を持つ最も古い社会基盤施設の一つで,農業用水と都市用水の供給,水力発電,洪水調節に使われてきた.1960年以降,我が国の経済成長とともにスケールメリットの追求からダムの堤高と堤体積は大型化した.本論ではまず施工面について,ダム規模と施工能力の推移を辿り,施工能力向上の要因を分析し,フィルダム堤体の強度と変形に深く関係する締固め技術の変遷を論ずる.次いで設計面については,安全に最も関与するすべりに対する安定性,浸透水に対する安定性,堤体越流を避ける洪水吐き放流能力の3点の設計思想の変遷を記述する.さらに以上の議論を踏まえ,今後発展させるべき設計,施工技術および研究課題を提案する.
技術展望
  • 古田 均, 白木 渡, 本城 勇介, 佐藤 尚次
    2009 年 65 巻 4 号 p. 473-484
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/20
    ジャーナル フリー
     技術基準の性能規定化と国際標準への整合化の潮流の中で,「性能設計における土木構造物に対する作用の指針」(作用指針)が2008年3月に発刊された.この作用指針は,土木構造物荷重指針連合小委員会が,性能設計実現の基本となる設計荷重設定への基礎資料を与えることを目的に策定したもので,Code PLATFORM ver.1に定める性能設計の考え方に基づき,各種設計基準における作用に関する記述の体系化と標準化をはかったものである.この作用指針は,今後の性能設計体系確立のための一翼をになうものとして期待されている.本報は,作用指針を策定した背景,作用指針の概要,今後の展望について概説するものである.
和文報告
  • 有泉 毅, 竹内 友章, 江森 吉洋
    2009 年 65 巻 4 号 p. 414-433
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/20
    ジャーナル フリー
     ボルト締結を伴わないシールド工事用セグメントの設計において,はり-ばねモデル解析に必要な継手剛性を求めるために,実物大継手曲げ試験,継手せん断試験,継手引張試験の継手挙動について3次元非線形有限要素解析でフィッティングし,この解析を用いて数値実験によってセグメント間継手の回転ばね定数,リング継手のせん断ばね定数,ならびにリング継手の引張ばね定数を求める設計法を検討した.その結果,既往の設計と比較し,コンクリートや継手鋼材の物性や寸法の変化や継手面に生じる軸力の影響を反映させられる合理的な設計法であることを示した.
  • 永島 三雄, 土屋 雅徳, 浅田 素之
    2009 年 65 巻 4 号 p. 434-447
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/20
    ジャーナル フリー
     LNG地下式タンク(以下地下タンクと略記)について,これまで数多くの研究と莫大な建設投資がなされ,わが国独自の形式が開発された.現在の厳しい社会経済状況のもと,今後も継続して地下タンクの建設を円滑に進めるために,さらなる施工の最適化を図る必要がある.そこで,地下タンクの既存技術を整理し,施工の管理項目(QCDSE)から,最適化のために優先順位の高い重点工種およびその課題を抽出し考察した.また,建設中の地下タンクの施工について,新たに定義した最適化指数を用いて定量的に評価した.本稿では,著者のこれまでの現場施工経験をもとに,地下タンクの施工の最適化を定量的に評価する指標を提案する.
  • 河邉 信之, 長﨑 義美, 河原田 寿紀, 西村 和夫
    2009 年 65 巻 4 号 p. 461-472
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/20
    ジャーナル フリー
     地下式発電所,LPGガス備蓄空洞などの地下空洞盤下げ掘削において,大規模発破を適用することが掘削の効率化を図る一手法であると考えられるが,空洞の安定性上,地山条件等に制約を受ける.一方で,最近,石灰石鉱山等の明かり発破では,発破後ずりを存置したまま次回以降の発破を行う緩め発破により,効率化が図られている.筆者らは,標準的な盤下げ掘削工法である中割先進側壁切拡工法のうち,中割部に緩め発破の適用を図り,地山条件等の制約により大規模発破が適用できない場合における効率的な施工方法の確立を図った.本研究では,ずりを存置したことによる空洞の安定性に対する影響を検証し,緩め発破の適用範囲を明らかにするとともに,従来より工程,コストに優れている施工法であることを示した.
  • 三輪 一弘, 荒木 義則, 竹本 大昭, 清家 礼雄, 尹 禮分, 中山 弘隆, 古川 浩平
    2009 年 65 巻 4 号 p. 485-494
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/20
    ジャーナル フリー
     国内の各旅客鉄道会社では,降雨に起因した土砂移動現象から列車を守るために災害警備基準や運転規制基準を設定している.近年ダイヤの改正に伴う列車の増発により,的確な災害対応が求められており,特に10分間隔の詳細な雨量を基準に反映させる等,局地的な集中豪雨への対応が早急の課題となっている.10分間隔の雨量は,データ数が毎正時1時間雨量の6倍になり,基準の設定には従来よりも労力を要する.本研究では,必要最低限のデータでパターン分類を実施できるサポートベクターマシンの特徴を活用し,膨大な10分間隔の雨量を効率的かつ高精度で処理することにより,列車運行規制基準の逐次更新方法を提案した.
  • 児玉 孝喜, 加形 護, 岡本 達也, 紀本 一郎, 柿崎 勉, 福手 勤
    2009 年 65 巻 4 号 p. 501-515
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/20
    ジャーナル フリー
     空港コンクリート舗装における付着オーバレイ工法は,不同沈下箇所の勾配修正等に用いる補修工法の1つである.エポキシ樹脂を用いた付着オーバレイ工法は,ウォータージェットを用いたものと比較してコストダウン・発生廃棄物量の減少・下地処理の迅速性等が期待できる.そこで本工法の高度化を図るため,機械散布方式の実用化について検討した.本報では,接着剤に関する基礎的検討を行い,接着剤の機械混合・機械散布可能な施工システムを開発し,羽田空港エプロン舗装への適用性を室内試験ならびに試験施工により評価したところ,良好な付着性能を確保できることが確認できたので,それら検討結果をまとめた.
  • 秦 吉弥, 一井 康二, 加納 誠二, 土田 孝, 柴尾 享, 今村 孝志
    2009 年 65 巻 4 号 p. 529-541
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/20
    ジャーナル フリー
     近年発生した2004年新潟県中越地震では関越自動車道,2007年能登半島地震では能登有料道路において盛土斜面の崩壊が発生し,高速道路が閉鎖され緊急対応や復旧の障害となった.防災上,このようなレベル2地震クラスの想定地震に対して,盛土の崩壊の範囲や程度を道路網全線にわたり把握することが重要である.そのためには,道路の各地点における地震動を適切に設定する必要がある.しかし,高速道路の延長は長大であるため,地盤条件や地震動条件が地点毎に異なる.そこで本稿では,常時微動計測結果を利用し,地点毎の特性を踏まえた高速道路盛土の入力地震動の設定法を検討した.また,国内の高速道路に適用した事例を示す.その結果,提案手法によって,地盤条件や地震動条件を考慮した想定地震による地震動を推定することが可能となった.
和文論文
  • 篠崎 嗣浩, 森田 真人, 大石 博之, 古川 浩平
    2009 年 65 巻 4 号 p. 448-460
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,1999年6月29日に起こった広島県の土石流災害を対象に,できるだけ集約された条件で多くの災害発生の有無を説明できるルールの作成手順を考案したものである.解析手法としてはパターン分類に優れたSVMと,ルールとして災害の要因を明確化できるラフ集合を組み合わせた.まずSVMによるパターン分類から各渓流の危険度評価を行い,その結果から特に危険な渓流と安全な渓流を“代表データ”として抽出する.次に,その代表データを対象にラフ集合を用いることで災害の発生・非発生ルールの作成を行う.この代表データからもたらされるルールは,少ないルールで多くの渓流における土石流災害の発生・非発生を説明することが可能なものであり,土石流災害の危険箇所を抽出する上で汎用性の高い基準として利用できることが明らかとなった.
  • 千代 啓三, 田村 武
    2009 年 65 巻 4 号 p. 516-528
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/20
    ジャーナル フリー
     山岳工法とシールド工法の境界の地盤条件において,安定した進捗と安全性を確保し,かつ,経済性も向上させることができる工法として,場所打ちライニング工法が採用されるケースが見られる.場所打ちライニング工法はセグメントに代わって,シールドテール部で地山にコンクリートを直接打設するため,トンネル周辺の地山はコンクリート打設圧力の作用を受ける.本研究では,場所打ちライニング工法における打設圧力,打設量と地盤変位量の関係を施工時の計測データをもとに分析し,その挙動を弾性挙動範囲と塑性挙動範囲に分けてモデル化する.また,モデルの計算結果と施工結果を比較するとともに,施工管理のあり方を論じる.
  • 田口 靖朋, 小島 尚人
    2009 年 65 巻 4 号 p. 542-554
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
     本研究は,降雨や地震といった異なる誘因によって誘発される斜面崩壊の危険箇所評価支援を目的として,異種誘因広域逆推定の可能性について検討したものである.説明変量を地理情報と衛星データ(素因)とし,目的変量を,1)ケース 1:降雨に伴う崩壊地データ,2)ケース 2:地震に伴う崩壊地データ,といった2つのケースを設定した.2ケースの誘因を未観測情報(潜在変量)とし,共分散構造分析法を介して,これらを逆推定する.適合度検定の結果,2ケースともにパスモデルが成立し,異種誘因広域逆推定の可能性を見出した.さらに,降雨と地震の誘因逆推定図上の違いを抽出した「異種誘因影響分析図」を最終成果図として提示するとともに,異種誘因の影響を画像上に同時に表示・分析できる支援情報として有用となることを示した.
  • 桐山 久, 高畑 陽, 大石 雅也, 有山 元茂, 今村 聡, 佐藤 健
    2009 年 65 巻 4 号 p. 555-566
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
     バイオスパージング工法は,ベンゼンで汚染された深部の土壌を浄化する場合に有効な浄化技術である.本工法は,帯水層中に空気を供給することにより,ベンゼンの気化による物理的除去と微生物分解の促進を期待できる.しかし,これまで栄養塩の効率的な供給方法が存在しなかったため,継続的な微生物分解効果を得ることが困難であった.そこで,筆者らは栄養塩を地盤に効率的に供給できる揚水循環併用バイオスパージング工法を開発した.実汚染サイトにおいて実証試験を行い,当工法によるベンゼンの浄化効果と空気や栄養塩の供給能力について検討し,従来工法と比較した優位性を確認した.また,本試験の結果に基づき,当工法の井戸配置や浄化期間予測についての設計手法を確立した.
  • 飯村 正一, 山口 宏樹
    2009 年 65 巻 4 号 p. 567-575
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
     曲管に外力が作用すると曲管の断面は大きく扁平することから,曲管に接続されている袖官にも扁平が伝達することとなる.本研究では,他の埋設物などが存在し,曲管の断面扁平量の測定ができないことを前提として,曲管に接続される袖管に発生する扁平の大きさから曲管の扁平量を推定する手法を開発するために,外力が作用したときの曲管および袖管に生じる扁平量を明らかにする実験を行い,実験を説明することのできる薄肉シェル要素を用いた弾性FEM解析を行った.その結果,実験と解析とは良好な一致が見られたことから,使用頻度の高い90°よりも小さい開き角度の曲管に接続された袖管の扁平量と応力の関係をFEM解析から求め,袖管部断面扁平量から種々の開き角度を有す曲管の応力を推定する方法を提案した.
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