土木学会論文集F
Online ISSN : 1880-6074
ISSN-L : 1880-6074
65 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
招待論文
  • 高野 伸栄, 倉内 公嘉, 荒木 正芳
    2009 年 65 巻 3 号 p. 284-298
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    ジャーナル フリー
     本研究は公共工事の入札制度が抱える問題点を踏まえ,住民が当事者意識を持ちつつ,内容を理解しやすい公共工事に対して,住民参加型入札制度の導入を提唱し,模擬入札実験を通して,その可能性を検証したものである.
     まず,アンケート調査の結果,住民は工事を行うにふさわしい業者として,価格以上に質を重視し,発注者が求めるものと大差がない一方,公共工事の入札に対する印象は不信感が強いことを明らかにした.次にその解決にあたり,住民参加型入札制度を提唱し,その効果と課題を考察した上で,模擬入札実験を行い,住民は一定条件の下では建設業者を合理的に評価することが可能である,本制度の適用により,入札制度に対する意識が変化する可能性がある等の結論を得,住民参加型入札方式が入札制度の改善に有効な方法である可能性を示した.
和文報告
  • 酒井 悠, 大津 宏康, 長谷川 信介
    2009 年 65 巻 3 号 p. 299-312
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    ジャーナル フリー
     本研究は,山岳トンネル建設プロジェクトに内在する地盤リスクが建設コスト変動に与える影響を事後評価の観点から定量的に評価し,事前地質調査が地盤リスクを低減するためにどのような価値を有しているかについて検討を行った.具体的には,実際の山岳トンネル建設プロジェクト事例をもとに,地盤統計学手法を用いて確率論的に推定されたコストと実際のコストとの乖離量を建設コスト変動リスクとし,乖離の改善量を指標として地質調査の定量的な価値の評価を試みた.その結果,地質調査の進展に伴う乖離量の推移を定量的に評価し,限られた事前地質調査を効率的に実施するための意思決定に関する指標を示すことができた.
  • 稲積 真哉, 大津 宏康, 勝見 武, 有薗 大樹
    2009 年 65 巻 3 号 p. 313-325
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    ジャーナル フリー
     本研究は社会基盤構造物の整備事業が与える環境影響を定量的に予測し,環境影響を考慮した整備事業評価に貢献し得る環境負荷・便益評価手法を検討するものである.また,当該手法はタイ王国・バンコク地下鉄建設事業に対して適用しており,バンコク地下鉄の建設・運用段階における環境負荷および環境便益の定量化を試みている.さらに,本適用例では定量化された環境負荷および環境便益に関する社会負担を貨幣価値に換算し,環境コストとして経済的内部収益率(EIRR)に組み込むことによって,当該建設事業が及ぼす環境影響を環境経済学的な観点から評価することができた.
  • 和泉 公比古, 藤野 陽三
    2009 年 65 巻 3 号 p. 326-345
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/20
    ジャーナル フリー
     道路構造物のストックの増大と急激な老齢化に対し,計画的で効率的な維持管理をいかにして実践するかが道路管理者にとって重要な課題となっている.首都圏の大動脈として1日に平均115万台の利用がある首都高速道路においても,当初開通した区間は40年以上を経過し,維持管理の重要性が増す中で,同時に維持管理の更なる効率化が必要となってきている.本稿ではまず,首都高速道路ネットワークにおける舗装,塗装,橋梁の過去5年間の点検データを用いて劣化状態を定量評価するとともに,それらの個別事業において補修の優先順位付けを行う個別マネジメントシステムを構築した.そして,それらの結果を用いて維持管理目標の達成度評価,次年度の補修計画の作成,劣化予測に基づいた中期計画作成を行うための統合マネジメントについて提案を行った.
  • 増成 友宏, 武地 美明, 船津 貴弘, 清水 則一
    2009 年 65 巻 3 号 p. 356-363
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/18
    ジャーナル フリー
     GPSによる地盤変位計測における誤差のうち,気象条件による電波遅延に対し,これまでに筆者らは最寄りの測候所で得られる地表の気象データを用いて,Modified Hopfield モデルによる補正法を適用することによって,年間を通じての誤差を効果的に補正できることを示した.本報告では,変位計測現場における気象データを直接用いれば,課題であった日変化に対しても有効に補正できることを実証するとともに,先進的なGPS気象学の分野で一般的に適用されている補正法との比較も併せて行う.
  • 平野 宏幸, 臼田 芳彦, 神澤 幸治, 宮田 和, 清水 則一
    2009 年 65 巻 3 号 p. 364-380
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/18
    ジャーナル フリー
     地すべり地におけるトンネル施工においてはトンネル安定のみならず地すべり安定が問題となるが,地すべりに対応したトンネルの施工法は未だ確立されていない.そこで,地すべり地におけるトンネルの施工法として,切羽補強工と早期断面閉合による変位制御に基づく情報化施工法を提案する.本研究は,この情報化施工法を地すべり地におけるトンネル建設に適用し,各計測結果から対策工の変位抑制効果を考察し,提案する情報化施工法の有効性を検証するものである.
  • 山本 泰幹, 半野 久光, 山田 均, 平瀬 亘, 早川 亨
    2009 年 65 巻 3 号 p. 381-393
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/18
    ジャーナル フリー
     横浜ベイブリッジの供用後,下層に一般国道357号の桁が架設された.その直後の定期点検において,ケーブル定着部のケーブルの角折れを防止する緩衝装置の付近に,ポリエチレン被覆の融解した損傷が発見された.この原因を究明するため,損傷部の詳細点検に加えて,実橋のケーブル振動,気象データ,および緩衝装置付近のポリエチレン被覆の温度変化について,約1年間の観測を実施し,損傷原因の考察を行った.その結果,下層の桁の載荷により,緩衝装置付近のケーブル上面に接触面圧が作用した状態で,風速限定型振動のレインバイブレーション現象が発現し,緩衝装置の緩衝ゴムとの接触部に摩擦による発熱が生じて,ポリエチレン被覆の融解損傷が生じた可能性のあることが明らかとなった.
和文論文
  • 太田 直之, 杉山 友康, 岡田 勝也, 布川 修, 鳥井原 誠, 山本 彰, 山田 祐樹
    2009 年 65 巻 3 号 p. 346-355
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/18
    ジャーナル フリー
     鉄道沿線には,間知石を用いた石積壁により防護された切土のり面が多く存在している.このような石積壁のなかでも自立性地山の前面に構築された石積壁については,地震時における挙動が明かにされていなかったために,石積壁そのものが倒壊することが懸念されていた.そこで,模型を用いた振動台実験で明らかにした石積壁の変形挙動を基にして,自立性地山前面に施工された石積壁が正弦波で加振された場合の変形挙動に対する静的解析法の適用性について検討した.簡易な解析モデルを提案し,この解析モデルを用いた静的解析法によって実験結果の再現を試みて,その解析手法の適用性を検討した.石積壁が構造体として機能している段階においては,提案する解析手法により得られた石積壁の残留変位は,実験結果とよく一致することを明らかにした.
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