土木学会論文集G
Online ISSN : 1880-6082
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62 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
和文論文
  • 小川 葉子, 坂巻 隆史, 野村 宗弘, 中野 和典, 西村 修
    2006 年 62 巻 3 号 p. 278-286
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/18
    ジャーナル フリー
     底質性状に応じた干潟生態系の機能の特徴付けを目的とし,一次生産を担う底生微細藻類および分解・無機化を担う微生物の代謝活性と底質性状を示すパラメータとして特に有機物含有率との関係について調査した.その結果,干潟堆積物のTCによって生産,無機化および炭素固定量の特徴を4つに分類することができた.0.05% < TC < 1.2%の底質の干潟で生産・無機化が大きく,炭素を固定する傾向がみられた.また,150μm < D50 < 300μmの底質で藻類の生産量および現存量がともに大きく,この範囲が生産能の高い干潟に分類できた.さらに藻類由来の有機物が干潟堆積物中の易分解性有機物,微生物の代謝基質として重要な役割を果たしていると考えられた.
  • 山崎 智弘, 中村 由行, 益永 茂樹
    2006 年 62 巻 3 号 p. 287-296
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/18
    ジャーナル フリー
     有機スズ化合物のトリブチルスズ(TBT)は難分解性,高疎水性のため,海水中の懸濁粒子に吸着,沈降し港湾堆積物に蓄積している.本研究では名古屋港の海水と堆積物のTBTとジブチルスズ(DBT),モノブチルスズ(MBT)の濃度分布を調査した.その結果,TBTは港奥の堆積物に高濃度で存在し,港湾面積約83km2あたりの溶出フラックスは約2~13 g-Sn/dayと推定した.TBTおよびDBTの堆積物粒子含有濃度 q と間隙水中濃度 Cp の比である分配係数 Kd(=q/Cp)と,TOC含有量との相関式を示した.Kd は粒子のC/N比により異なり,有機物の成分構成に影響を受ける可能性を指摘した.さらに各物質の移動フラックスを算定し,TBTは堆積物から海水へ,逆にDBTは海水から堆積物へ移行していることが推定された.
  • 前野 祐二, 三原 めぐみ, 森 寛, 長山 昭夫
    2006 年 62 巻 3 号 p. 297-307
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/18
    ジャーナル フリー
     焼却灰の有効利用は,埋立処分場の建設が困難なことから,益々重要性が増してきている.そのため,焼却灰の溶融処理,エコセメントなどが普及しつつある.しかし,これらの施設は,建設費,維持費が高額で中小の自治体では建設が困難である.そこで,本研究は都市ごみ焼却灰(飛灰を含まない)の安価な有効利用を試みた.焼却灰は有害物質の溶出が少ないことと,2mm以下の焼却灰は,ごみの燃えた灰分がほとんどであることから,焼却灰の中でも2mm以下を対象に研究した.これを粉砕したものと石炭灰,生石灰などを添加した混合物が,セメントと同様に水と混合,型枠への打設により,任意の形状を有する高強度固化体を製造できる可能性がある.さらに,この固化体の鉛の溶出量は,土壌環境基準以下となった.
  • 楠田 哲也, 伊豫岡 宏樹, 呉 一權, 早田 勇治
    2006 年 62 巻 3 号 p. 325-331
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/18
    ジャーナル フリー
     生物の保全のためには生活史を通してその特性を知る必要がある.本研究では,宮崎県の北川に生息するカワスナガニを対象にし,室内で孵化させたゾエア幼生を用いてその移動特性を明らかにした.さらに,現地調査によりカニ類の幼生の分布特性を把握し,これらの結果と北川の水理モデルにより数種の条件を設定し幼生の移動過程を検討した.その結果,ゾエア幼生の走光性による移動能力は齢を追って増す傾向にあること,生息には海水と同程度の塩分が適しており,塩水楔内に多く分布することを明らかにし,移動追跡計算にてこれらの選好性故に塩水楔内の上流向きの流れに乗って成体の生息域への回帰が容易に行われることを示した.これらの結果に基づき,保全に適した河川管理方法を提案した.
  • 今岡 務, 林 香代子, 上田 徹也, 吉村 友宏
    2006 年 62 巻 3 号 p. 332-339
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/18
    ジャーナル フリー
     ビスフェノールA(BPA)はプラスチック製品の原材料として使用される有機化学物質であり,内分泌攪乱作用が疑われている.本研究では,このBPAに関して住宅団地の家庭排水を経路とした排出源と排出経路を明らかにすることを目的とした.広島県A住宅団地の汚水処理場における24時間連続調査と1週間継続調査で得られた流入汚水の平均BPA濃度は0.12-0.22 μg/Lの範囲にあり,BPAの約50%は,懸濁態として検出された.A住宅団地からBPAの排出負荷量は,189-333mg/日と算出された.一方,洗濯機や食器洗浄機からの排水など数種類の家庭排水およびトイレットペーパーなどからのBPA排出負荷を調査,検討した結果,個々のBPA負荷の合計は汚水処理場への流入負荷の約15%に相当すると算定され,排水管の内面などその他のBPAの排出源の調査が必要であることが示唆された.
  • 傳田 正利, 天野 邦彦, 辻本 哲郎
    2006 年 62 巻 3 号 p. 340-358
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/18
    ジャーナル フリー
     本研究では,一時的水域(ワンド・タマリ,Temporary Water Area,以下,TWAと略記)が有する魚類群集多様性向上機能とそれを支える物理的環境を,詳細な魚類調査,水理計算,GISによる水理計算結果の解析を併用することで評価した.その結果,TWA及びその周辺には,出水時でも魚類が利用可能な低流速空間が出現し,魚類はその空間を利用しながら下流への流下を回避する.すなわち,本流とTWA間の移動を行うことで生存可能性を高めていると考えられた.これは,既往研究がTWAの特徴的な魚類群集を形成する上で,接続頻度,面積,干上がり等が重要であると指摘していたのに加え,出水時の物理的環境,特に流速の面的かつ時間的変化がTWAの魚類群集形成に影響を及ぼしうる興味深い結果である.
  • 赤木 寛一, 毛利 光男, 田中 仁志, 石田 聖一
    2006 年 62 巻 3 号 p. 359-368
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/20
    ジャーナル フリー
     土壌洗浄技術の基本はフルイ,サイクロン,フローテーション等の分級・洗浄プロセスによって重金属や油の汚染物質を,細粒分を主体とした濃縮残渣に分離,濃縮することである.分級・洗浄プロセスによって分離された細粒分は,凝集沈殿・脱水プロセスを経て脱水ケーキ(濃縮残渣)として場外処分される.高品質かつ経済的な土壌洗浄を行うためには,効率的な凝集沈殿と脱水操作を行い,濃縮残渣の重量をできるだけ低減することが必要である.このためには,細粒分の物性に応じた凝集剤(無機系,有機高分子系)を選定するだけではなく,使用する凝集剤の最適注入条件を把握することが重要である.本研究は,凝集沈殿プロセスの管理指標として土の塑性指数と懸濁液のpHに着目し,細粒分懸濁液に対する凝集剤の最適注入量について実験的検討を行った.
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