土木学会論文集G
Online ISSN : 1880-6082
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63 巻, 2 号
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和文論文
  • ―BTEXおよび脂肪族TPHの懸念レベルの推定―
    川辺 能成, 原 淳子, 坂本 靖英, 駒井 武
    2007 年 63 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/21
    ジャーナル フリー
     本研究では油分としてベンゼン,トルエン,エチルベンゼン,キシレンおよび脂肪族TPHを対象として,著者らが開発した地圏環境リスク評価システム(GERAS-1)を用いて暴露・リスク評価を行った.
     油分中の各化学物質の暴露経路は異なっており,ベンゼンなど揮発性の高いものでは大気経由,炭素数の大きいTPHなど,土壌への残留性が高い物質では土壌摂食というように,各化学物質で異なっていた.懸念レベル値としては,ベンゼン0.03mg/dm3,トルエン1mg/dm3,キシレン1mg/dm3,エチルベンゼン0.4mg/dm3と算出された.一方,脂肪族TPHの懸念レベル値としては,TPH(C6-C16)200-2000mg/kg程度, TPH(C16-C34)で30000-40000mg/kgと算出された.
  • 渡辺 幸三, 大村 達夫
    2007 年 63 巻 2 号 p. 93-101
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/21
    ジャーナル フリー
     ダム放流水が河川底生動物群集に及ぼす影響の季節特性を把握するため,宮城県大倉ダムの上下流河川区間で底生動物と河川環境の経月調査を2000年5月から2001年4月まで行った.調査の結果,ダム下流地点では,ダム湖から高濃度の微粒状態有機物(FPOM)が供給された9-11月期に濾過摂食者のウルマーシマトビケラが大量出現したため,総個体群密度が増加し,Shannon-Wiener 多様性指数H’ が低下する季節限定的な影響が見られた.ダム下流地点の分類群数はクロロフィル a 濃度が高い月ほど低下する傾向があった.また,ダム上下流地点間のSorenson 類似度指数を調べた結果,地点間の種の類似性は7-9月期に高いが,11-12月期に大きく低下し,1-3月期にかけて回復する季節的消長を示した.
  • ―中学校における地理の学習指導要領と教科書記述を通して―
    蘇 立, 山中 英生, 上月 康則
    2007 年 63 巻 2 号 p. 102-111
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/21
    ジャーナル フリー
     世界の持続可能な発展に環境教育の充実は急務となっており,国際的な経験や情報の共有,比較を通した改善が重要と考えられる.特に日本と中国における協力は,今後,重要性をもつと言える.このため,中国における環境教育の現状を把握し,相互理解を進めることが必要と考えられる.本研究は,こうした問題意識に基づいて,環境教育において重要な役割を果たしている教科である中学校の地理に焦点を当てて,学習指導要領における環境教育に関する教育目標の変遷,教科書での環境教育記述の変遷を分析した.この結果,中国の環境教育が産業的な項目を中心しており,環境配慮教育の内容が日本に比べて少ないことを明らかにした.
  • 平山 修久, 河田 惠昭
    2007 年 63 巻 2 号 p. 112-119
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/18
    ジャーナル フリー
     平常時の一般廃棄物排出量からみた災害廃棄物発生量である災害廃棄物量相対値を用いて,東海地震,東南海・南海地震,首都直下地震に係る災害廃棄物に対する我が国の災害対応力を明らかにした.また,行政の災害対応力を考慮した災害廃棄物処理期間推定モデルを構築した.
     災害廃棄物の広域連携シミュレーションモデルを構築し,首都直下地震における災害廃棄物処理に関する数値シミュレーションを行った.その結果,サテライト方式あるいはバックヤード方式での全国連携による災害廃棄物処理に必要な処理期間は,それぞれ1.95年,1.80年と推定された.また,広域災害時における災害廃棄物対策では,都道府県間を越えた広域的な連携が重要となることを示しえた.
  • 松古 浩樹, 橋本 洋平, 佐藤 健
    2007 年 63 巻 2 号 p. 120-127
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/18
    ジャーナル フリー
     ファイトレメディエーション(Phytoremediation)は植物の生理機能と代謝機能を利用した環境修復技術である.本研究は,温室内でカラムを用いて植物栽培し,土中深度別の水分及び重金属の移動を計測して植生による排水抑制・緩和効果の実証試験結果をまとめたものである.植物を生育させることで,深度10cm及び深度30 cmの根圏で保水効果を示し,カラム下部への水分移動を抑制・緩和できたが,土中深度別の間隙水及びカラム下端排水中の鉛濃度に変化はなかった.積算排水量は無植生の657mlに対しギニアグラスが87mlであり,ギニアグラスの排水抑制効果は高く,87%排水量を抑制し,汚染拡散を抑制するPhytostabilization効果のあることが確認できた.
  • 藤井 実, 橋本 征二, 南齋 規介, 村上 進亮, 稲葉 陸太, 森口 祐一
    2007 年 63 巻 2 号 p. 128-137
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/18
    ジャーナル フリー
     リサイクルプロセスのライフサイクルインベントリ分析の結果を分かりやすく整理し表記する方法を提案し,プラスチックリサイクルにおけるCO2削減効果を求める場合を例としてその方法論を示した.CO2削減量は,代替される原料又は燃料の調達と,その酸化に伴うCO2排出量の他,歩留まり比,性能比,追加的CO2排出の4要素で表される.また,提案する表記方法を,使用済みプラスチック製容器包装をリサイクルする事例に適用し,その有効性を示した.
  • 早川 清, 中谷 郁夫, 緒方 広泰, 前 育弘
    2007 年 63 巻 2 号 p. 138-148
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/20
    ジャーナル フリー
     本論文では,地盤振動問題における伝播経路対策に関して,新たな地中振動遮断壁の遮断効果について検討している.すなわち,EPS(Expanded Poly Styrene)とコンクリートとの合成遮断壁について,実物大の合成遮断壁を実フィールドに埋設した.車両走行などで発生する振動を想定した加振実験を実施して,この合成遮断壁による振動低減効果を評価した.その結果,3Hz付近の低域の卓越振動数において,遮断壁背面からの距離4.5m~10.5mに着目すると平均で4.5dB程度の低減効果を確認した.これらの検討より,合成遮断壁による振動低減効果の推定法として簡便な方法を考案して実験値と比較したところ,本評価法により実験値の定量的な推定が可能であることが判明した.
  • 津野 洋, 新海 貴史, 中野 武, 永禮 英明, 松村 千里, 是枝 卓成
    2007 年 63 巻 2 号 p. 149-158
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/20
    ジャーナル フリー
     海水中PCB濃度は,0.5~4.0 ng/L(平均±標準偏差:1.8±0.6 ng/L)であり,ムラサキイガイ中のPCB濃度は,3.1~69.8 ng/g-wet (24.0±19.0 ng/g-wet)であった.PCBの濃縮において,2,4,5位に塩素置換の構造を持つ異性体が高濃度で濃縮されていることが分かった.また特異的に生物濃縮係数が低くなっている異性体は2,3,4,5位に塩素置換を持つという共通点があった.ムラサキイガイへのPCB濃縮におけるlogBCFとlogKowとの関係を示すQSAR式として,logKowが7.5を境界とする2つの一次式を提示できた.また,取り込み阻害が始まる分子量は360.88から395.32の間にあることを明らかとした.
  • 太田 裕之, 藤井 聡
    2007 年 63 巻 2 号 p. 159-167
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/20
    ジャーナル フリー
     現代社会において,CO2排出削減のための環境配慮行動は多様に存在し,そのような中で人々は優先的にいくつかの行動を選択し取り組んでいると考えられる.その行動の選択の際に影響する要因の一つとして考えられる「有効性知覚」は,様々な認知的バイアスの影響により,実際の有効性と必ずしも一致していない可能性があると考えられる.そこで本研究では,CO2排出削減量効果の情報を提供することで,人々の有効性知覚と客観的有効性との間の乖離が減少し,それに伴い行動の効率化がなされるとの仮説を措定し,アンケート調査形式の実験を行った.データ分析を行った結果,事実情報の提供により認知的ひずみは軽減し得るものの,行動意図は十分には効率化されない可能性があるとの結果が示唆された.
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