土木学会論文集G
Online ISSN : 1880-6082
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63 巻, 4 号
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特集(3R(リデュース、リユース、リサイクル))
  • 武田 信生
    2007 年 63 巻 4 号 p. 284-285
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     公衆衛生の確保を命題としてスタートしたわが国近代の廃棄物処理は,経済社会の発展に伴って,環境保全,適正処理といったタームで表されるような役割を担ってきたが,廃棄物,資源を巡る地球環境問題によって持続可能社会,循環型社会の実現に向けた取り組みが重視されるように変貌してきた.リデュース,リユース,リサイクルという,優先順位をもった3Rの取り組みである.循環型社会実現のためには,廃棄物に対する3Rだけではなく,資源の保全を視野に入れて,製品の設計や用途にまで情報をフィードバックしていくことが必要である.
  • 森口 祐一
    2007 年 63 巻 4 号 p. 286-293
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     循環型社会という語には,経済社会における物質循環に主眼をおき,廃棄物の適正管理と資源の有効利用の両立をめざす基本理念を示すことに加え,持続可能な発展に向けた長期の社会ビジョンとしての期待も寄せられている.循環型社会形成への取り組みは全般には進みつつあるが,個別分野では,関係主体間でのコスト負担やアジアの近隣諸国の資源需要増の影響など,さまざまな課題に直面している.こうした問題点を改善し,循環型社会の理念と実践との距離を縮めるための調査研究·技術開発上の課題についても展望した.とりわけ土木分野はストックが重要であり,長期的視点に立ってフローをストックとの関係性においてとらえることが必要である.
  • 石井 一英, 古市 徹, 寺山 健, 谷川 昇, 稲葉 陸太
    2007 年 63 巻 4 号 p. 294-303
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     本研究では,住民が望ましいと思う生ごみリサイクル方式(収集回数,収集方法,生ごみ中の異物除去方法,処理手数料及びリサイクル方法を属性としてもつ)の検討を,従来のアンケート調査による各属性の個別評価ではなく,多属性評価手法であるコンジョイント分析により行った.特に,地域特性(現行の生ごみの処理方法や有料化実施の有無,都市形態,住居形態)による生ごみリサイクル方式の望ましさの違いを明らかにするために,地域特性の異なる 3つの自治体の解析を行った.その結果,集合住宅居住者の収集回数の限界評価額が特に高いこと,そして大都市では,需要の少ない堆肥化よりもエネルギー回収可能なバイオガス化を望む傾向にあることを明らかにした.
  • 山本 祐吾, 吉田 登, 盛岡 通, 森口 祐一
    2007 年 63 巻 4 号 p. 304-312
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     本研究では,廃棄物産業連関表を援用して,技術−物質フローを連結した分析モデルを構築した上で,鉄鋼生産インフラでの技術変化に着目した事例分析を実施し,埋立地面積およびCO2排出の誘発負荷量,資源生産性の改善効果を定量的に評価した.その結果,鉄鋼生産における先導技術の導入と産業コンプレックスの形成によって,銑鉄生産部門の天然資源投入量では約10.2%の削減効果,資源生産性で約15.0% の改善効果がもたらされることが明らかになった.一方,先導技術の導入に伴って追加的な資源投入等が生じ,国内全体で誘発される埋立量およびCO2排出量がそれぞれ約2.7%,0.41%増加することがわかった.しかし,さらに投入資源を廃棄物から回収する複数の技術と組み合わせることで,誘発量の増加を抑えうることも定量的に確認された.
  • 鳥居 和之, 杉山 彰徳, 酒井 賢太
    2007 年 63 巻 4 号 p. 313-325
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     鹿島橋では,アルカリシリカ反応 (ASR) により鉄筋破断をともなう,大きな損傷が発生し,2005年に橋脚の梁部がすべて打替えられた.この際に,再生骨材のアルカリシリカ反応性を評価することを目的にして,安山岩を含有する解体コンクリート塊より再生骨材を製造した.一連の試験より,再生骨材のアルカリシリカ反応性は化学法やモルタルバー法による判定が困難であり,再生骨材コンクリートの促進養生条件下での膨張率の測定により評価することが適当であった.また,再生骨材コンクリートは骨材周囲の反応環の影響で膨張の開始が遅れるが,その後の膨張挙動は原骨材のものとほぼ同様となった.さらに,フライアッシュ15%の添加または高炉セメントB種の使用による抑制対策は必ずしも有効ではなかった.
  • 瀧口 博明, 竹本 和彦, 堀田 康彦
    2007 年 63 巻 4 号 p. 326-331
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     3Rsの推進を通じた天然資源の節約と環境負荷の低減は,世界的な課題となっている.3Rsの推進においては,リサイクル原料の受け皿となる製造業が存在するかなど各国の国情を踏まえる必要があるが,どの国においても適正な廃棄物処理が3Rs推進の第一歩である.アジアにおいて,政策担当者を対象に実施したアンケート調査の結果によれば,アジアの各国は医療廃棄物や容器包装廃棄物などの問題に直面している.また,廃棄物処理やリサイクルの過程における水質汚濁や大気汚染といった問題や,制度面,財政面,技術面での課題を抱えている.こうした問題の解決や課題の克服に向けて,日本は各国の現状を踏まえた国際協力の実施や,廃棄物発生量の抑制などにおいて,一定の役割を果たしうる.
  • 尹 鍾進
    2007 年 63 巻 4 号 p. 332-344
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     廃棄物のリサイクル推進においては高い輸送コストが課題となっており静脈物流の効率化を進めることが求められている.本研究では,静脈物流の特性や現状を定量的に分析し,輸送コスト削減及び静脈物流の効率化のための課題を明確化する.また,廃棄物が大量に発生する大都市圏と臨海部に位置するエコタウン等を結ぶ静脈物流システムの構築の必要性を主張し,その施策として共同輸送及びモーダルシフトによる大量輸送を提案する.そして,構築したモデルを利用して施策の効果を検討し,提案する施策が輸送コストの削減及び環境負荷の低減等,静脈物流の効率化に大きく寄与できることを示した.
  • 荒金 光弘, 今井 剛, 村上 定瞭, 竹内 正美, 関根 雅彦, 樋口 隆哉, 浮田 正夫
    2007 年 63 巻 4 号 p. 345-350
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     本研究グループは,亜臨界状態にした水の中で余剰汚泥を可溶化させ,これにより溶出したPO43--PをMAP法を用いて回収する研究を行ってきた.しかし,余剰汚泥を亜臨界状態にした水の中で高効率に可溶化しても,MAP法の操作時にMg2+を過剰に添加した場合に,PO43--P,NH4+-NならびにMg2+が同じモル数で回収できない状況があった.そこで本研究では,可溶化液に存在しているPO43--Pに対して,異なるモル比でMg2+を添加した.そして,PO43--P,NH4+-NならびにMg2+の回収量について検討した.実験結果から,余剰汚泥から液相に溶出するMg2+も考慮して,モル比1.0となるようにMg2+を添加することで可溶化液から高品質MAPを回収させ得ることがわかった.
  • 今井 剛, 荒金 光弘, 関根 雅彦, 樋口 隆哉, 浮田 正夫
    2007 年 63 巻 4 号 p. 351-359
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     下水処理にともない発生する余剰汚泥の可溶化法の一つである高速回転ディスク法を用いて,汚泥を可溶化·減量化する実験を行った.実験結果より,可溶化された汚泥を嫌気性処理することで,汚泥の消化期間を約10日まで短縮できた.さらに,可溶化された汚泥を好気性処理した場合に沈殿槽からの余剰汚泥の引抜量を60%程度削減でき,処理水質も良好に維持できた.加えて,高速回転ディスク法,超音波処理法,亜臨界水処理法をそれぞれ用いた場合の可溶化に要する消費エネルギーを可溶化された汚泥1gあたりに換算して比較した.解析結果から高速回転ディスク法が他の可溶化技術より優れていることが明らかとなった.
  • 栖原 秀郎, 新井 洋一, 増岡 宏高, 加藤 孝之
    2007 年 63 巻 4 号 p. 360-365
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     愛知県は,天然珪砂の全国生産量の約70%を占める日本最大の産出地であるとともに,大量の窯業副産物が排出する.現在,この副産物の処分の問題が顕在化するとともに,窯業生産への影響も年々大きくなっており,窯業副産物のリサイクルに対するニーズが高まっている.本文の実施事例では,愛知万博藤岡駐車場工事において,駐車場予定地に埋められていた微粒珪砂通称キラと同区域に廃棄されていた豆砂利を破砕·拡散混合技術により100%有効利用した.また,キラと骨材およびセメントを破砕·拡散混合することにより,都市のヒートアイランド現象対策としての「保水性舗装」と地下水の涵養,交通事故の低減の観点からの「透水性舗装」という相反する機能を同時に有するハイブリッド舗装材料を創出し,バスターミナル歩道部に採用した.
  • 石田 武志
    2007 年 63 巻 4 号 p. 366-375
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     業務建物の運用時の環境負荷低減対策は,建物内部の対策,建物単位の対策,さらに地域冷暖房や廃棄物再資源化などのように地域レベルの対策など,様々な階層の対策が存在する.さらにこれらの対策導入量は,建物の新築,建替え数により変動し,建築·廃棄時における環境負荷とのトレードオフの関係を有するものもある.本研究は,業務建物において複数の対策の重複効果などの相互関係を評価する方法を検討するとともに,国内業務部門の対策導入効果を様々な条件で容易に評価するための解析モデルを構築したものである.特に本報ではCO2排出量についてモデルを構築し,建物長寿命化に伴う建築·廃棄時のCO2排出量と,運用時省エネルギー対策によるCO2削減効果の相互効果の評価を行ったものである.
  • 鈴木 慎也, 山下 雅史, 松藤 康司, 山本 和夫
    2007 年 63 巻 4 号 p. 376-390
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     従量制有料指定袋を導入している福岡市南区A町の戸別収集世帯を対象に,搬出ごみ袋の容量·搬出数の調査とばねばかりによる重量の実測を行い,ごみ袋の使用方法と,ごみ搬出原単位の分布から搬出行動特性を明らかにした.
     その結果,全体の7割程度の世帯では使用するごみ袋を決めており,45L入りごみ袋が最も多く使用されていた.多くの世帯が0.10-0.12 (kg/L) のごみ袋を満杯と捉え,それ以上になると追加の袋を使用し搬出している.また毎回搬出する世帯は全体の57%に限られることが明らかになったが,搬出しない日のある世帯との比較では,ごみ排出量に大きな違いが見られず,あくまでも各搬出日におけるごみの「堆積状況」でごみ袋を搬出するかどうかが決まる.なお,本調査におけるごみ搬出原単位は,1.61 (kg/世帯·日),0.78 (kg/人·日) であった.
  • 天野 耕二, 曽和 朋弘
    2007 年 63 巻 4 号 p. 391-402
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     本研究では,滋賀県草津市の一般廃棄物処理を対象として,中間処理方法の異なる複数の一般廃棄物処理シナリオにおける環境負荷(温室効果ガス (GHG) 排出量,最終処分量)と処理コストについてライフサイクルインベントリ分析に基づく包括的な評価を試みた.基本シナリオ(平成16年度実績)に対するGHG 排出量の増減率は,プラスチックごみをマテリアルリサイクルするシナリオで−10%,厨芥類を堆肥化するシナリオで−7%,ごみ発電とバイオガス発電を組み合わせたシナリオで+9%,一括収集によるごみ発電徹底シナリオで+12%となり,ごみ発電による削減分を考慮してもマテリアルリサイクルシナリオが最もGHG 排出量が少ない結果となった.最終処分量および処理コストについては,ごみ発電を含むシナリオについて優位な結果が得られた.
  • 谷口 庄一, 森川 高行
    2007 年 63 巻 4 号 p. 403-412
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     国家や企業レベルでは3R(リデュース,リユース,リサイクル)の対応は具体化しつつあるが,生活レベルでの3Rに関する対応は遅れている.これは3Rが,個人レベルで環境に配慮した利他的な行動を行うことが基本になっていることに起因している.
     2005年に開催された愛知万博で導入したEXPOエコマネーに多くの市民が参加し,生活に密着した環境配慮行動を誘引するきっかけとなった.本稿ではEXPOエコマネー事業の報告を行うとともに,EXPOエコマネーセンターに来場したアンケート調査を基に,環境配慮行動を促すための要因を分析した.
  • 加藤 文隆, 高岡 昌輝, 大下 和徹, 武田 信生
    2007 年 63 巻 4 号 p. 413-424
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     リン資源は世界的に枯渇が予想され,その確保が急務である.特に日本は国内生産が無く,輸入に依存しているため,大量かつ高濃度にリンが流入する下水処理システムからのリン回収は非常に重要である.本報告では現在研究,実用化されている,下水·返流水,下水汚泥,下水汚泥焼却灰等からのリン回収技術についてまとめ,それぞれのリン回収技術の特徴についてまとめた.今後の展望として,1)リン回収技術を導入する際の,他のプロセスを考慮した下水処理システム全体の開発,2)リン回収メカニズムの解明に基づいた,技術の高度化および効率的な技術開発,3)リン回収物を肥料利用するための需要調査,回収物の調製や,リン鉱石の代替,工業用途への適用性を検討した,リンのリサイクル経路の開拓が必要と考えられる.
和文論文
  • 大谷 壮介, 上月 康則, 倉田 健悟, 仲井 薫史, 村上 仁士
    2007 年 63 巻 4 号 p. 195-205
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
     粒度組成と地盤高さの2つの物理的な底質環境項目で,徳島県の2つの河口干潟環境を7つのグループに分類することができ,それぞれの底質グループには概ね特徴のある底生生物相が形成されていることを確かめることができた.また,その底質環境の形成過程については,干潟の地形変化や植生群落との相互作用などから説明し,最後に底質環境と底生生物の多様性の間には正の相関があることを具体的に示すことができた.
  • 池川 洋二郎
    2007 年 63 巻 4 号 p. 206-215
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
     海洋堆積層や永久凍土層に存在するメタンハイドレート(MH)は新たな天然ガス資源として期待されている.しかし,MHは固体で流動性がないため,加温などによりMHをメタンガスと水に分解して採掘する必要がある.このMHの加温に化石燃料を用いず二酸化炭素(CO2)が使えれば,エネルギー資源の確保と地球温暖化問題への対応を経済的にできる可能性がある.そこで本報告では,CO2ハイドレートの生成が発熱反応であることに着目するとともに,地層内に液体CO2を均質に分散するためにCO2/水エマルジョンを注入する方法を新たに提案し,室内実験と数値解析の結果からCO2がMHを分解するための加温材として利用できる可能性を示した.
  • 田 庚昊, 野村 宗弘, 中野 和典, 西村 修
    2007 年 63 巻 4 号 p. 216-223
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
     豚舎廃棄物の高温好気処理法に用いる担体としてのヨシチップの利用可能性について従来からよく用いられている杉チップと比較評価した.ヨシチップ(2-3mm)の保水性は杉チップより約34%低い反面,通気性は約17%高い特性を持ち,両者を1:1で混合することによって,杉チップ単独の場合より保水性は約6%減少するが,通気性が約12%改善されることが分かった.高温好気処理性能を比較したところ杉チップとヨシチップ(2-3mm)を混合することによって,杉チップを単独で使用した場合より平均温度は約10℃以上高く,その結果,重量減少率は7%高くなり,リアクター内の蓄積物量は50%まで減少した.従って,杉チップとヨシチップ(2-3mm)を混合することで従来の杉チップを単独で用いた高温好気処理よりも優れた処理性能が期待できることが確認できた.
  • 都筑 良明
    2007 年 63 巻 4 号 p. 224-232
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
     生活排水の1人あたり汚濁負荷排出量(PDC)と経済関連指標との関係を検討した.地域レベルの経時的関係は,宍道湖・中海流域における1人あたり県内総生産等についてCOD, TN, TPの全てで逆U字型の環境クズネッツ曲線(EKC)の関係が見られた.ある時期の空間的関係は,都道府県別の2004年度のPDCと1人あたり県民所得について,CODは有意な1次の相関が見られ,TN, TPは有意な相関はなかった.途上国沿岸域におけるPDC-BODは,地域でまとまりがある傾向が見られた.諸条件が類似しているアジア,太平洋,アフリカ地域に限定すると,PDC-BODと1人あたりPPP-GNIおよび新しく導入した水衛生経済指標(WSEI)は,クズネッツが当初提唱した所得レベルと所得較差に類似した関係にあり,遷移域はそれぞれUS$3,000-4,000,1.0であった.
  • 長濱 祐美, 野村 宗弘, 中野 和典, 木村 賢史, 西村 修
    2007 年 63 巻 4 号 p. 233-240
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
     コアマモの生育環境特性とコアマモ群落が各底生動物群に与える影響について検討した.コアマモ地上部バイオマスは季節変動が大きいが地下部バイオマスは安定していることが示された.コアマモの生息条件として底質粒径に既往研究と異なる知見が得られ,コアマモは多様な底質環境下で生育可能であることが示唆された.裸地と藻場では底生動物相が異なり,藻場では多毛類と甲殻類,二枚貝類の個体数増加が確認され,腹足類の増加は確認されなかったことから,各底生動物群に対し影響が異なることが示唆された.底生動物豊富化メカニズムは各動物群によって異なり,多毛類に対しては夏季から冬季にかけての安定かつ豊富な餌料供給が,二枚貝に対しては稚貝の付着基盤としての機能が示唆された.
  • 藤縄 克之, 青木 陽士, 伊庭 崇博, 守屋 やす子, 宮沢 清治, 荻上 宏
    2007 年 63 巻 4 号 p. 241-254
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     松本盆地南東部にある事業所敷地内の地下水から環境基準を超えるヒ素が検出された.そこで,敷地内外の地下水の水質調査を行ったところ,被圧地下水から高濃度のヒ素が検出され,ボアホールカメラを用いた現地調査よりマルチ·スクリーンおよび腐食の激しい井戸管の破損部が経路となって被圧地下水が不圧帯水層へ流出していることが判明した.また,有限要素法を用いた3次元非定常飽和·不飽和浸透流解析を実施したところ,計算水位と実測水位はよく一致し,被圧地下水が井戸管をとおして不圧帯水層へ流出している状況が再現できた.一方,地下水の水質分析結果に基づく相関図よりヒ素と鉄に強い正の相関があることが,またEh-pH ダイアグラムよりpH によらず低Eh のサンプルでヒ素濃度が高い傾向があることなどが判明した.
  • 小坂 浩司, 中島 典之, 国包 章一
    2007 年 63 巻 4 号 p. 255-262
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     2004年1∼9月,4浄水場についてフタル酸ジ-2-エチルヘキシル (Di-2 (ethylhexyl) phthalate, DEHP) の実態調査を行った.原水中のDEHP 濃度は,月変動は認められたが,その幅は大きくなく,特定の傾向が認められなかったことから,冬から夏にかけてあまり変わらないと考えられた.流入したDEHPは,多くの場合,浄水処理工程で高い割合で除去されていた.沈殿汚泥,スカム等の固形物中のDEHP含有率は,そのオーダーが103 ∼104 μg/kg-dry であり,DEHPは固形物に高濃度に蓄積していることがわかった.DEHPのマスフローから,流入したDEHP は,多くの場合,高い割合で水中から沈澱汚泥へと移行していること,スカム中のDEHPは沈澱汚泥中に比べて非常に少ないことが示された.DEHP の大気からの降下量は,原水由来の負荷量より非常に小さいことがわかった.
  • 内藤 了二, 浦瀬 太郎, 中村 由行
    2007 年 63 巻 4 号 p. 425-434
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/20
    ジャーナル フリー
     港湾域では,底泥中にダイオキシン類が高濃度に検出される箇所が存在している.ダイオキシン類の環境基準は含有量基準となっている一方,浚渫土砂の処分の際には,溶出量による管理が必要になる.本研究では,ダイオキシン類の含有量が,環境基準を超過した全国の5港湾で,含有量と溶出量を同時に測定し,両者の関係を明らかにした.ダイオキシン類の異性体組成の違いに着目し,含有量試験に対応する底泥中の固相濃度から平衡状態での水相濃度をlog Kow および強熱減量を用いて推定したところ,溶出量試験で得られた毒性等価濃度は,平衡計算で得られた水相の毒性等価濃度と同等もしくはそれよりも小さかった.低塩素の異性体の測定限界が溶出試験値を低くする原因と考えられた.
和文報告
  • 内野 英宏, 坂本 佳次郎, 府内 洋一, 中村 秀明, 宮本 文穂
    2007 年 63 巻 4 号 p. 263-277
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     アスベストによる健康被害が大きな社会問題となっている中,その飛散防止対策が喫緊の課題となっている.特に,これからピークを迎える建築物の改修·解体に伴い発生するアスベスト含有廃棄物の適正処理の確保が極めて重要である.本研究は,アスベスト含有廃棄物の処理に関して,吹付けアスベストの除去および封じ込め工事に用いる薬液を添加,加熱することでアスベストの無害化(非繊維化,非石綿化)を試みた.アスベストは,カルシウム化合物を主成分とする薬液と混合し,700°Cの低温で加熱することで,結晶構造が崩壊して非繊維化,非石綿化が可能であることがわかった.また,現場の吹付けアスベストやアスベスト成形板に対しても,同様の効果を確認することができた.
和文ノート
  • 内野 英宏, 府内 洋一, 北條 正裕, 中村 秀明, 宮本 文穂
    2007 年 63 巻 4 号 p. 278-283
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     アスベストによる健康被害が大きな社会問題となっている中,その飛散防止対策の徹底が喫緊の課題となっている.吹付けアスベストの処理では,アスベストを除去することが望ましいが,様々な状況のため,表面に薬液(固化剤)を吹き付けたり,内部に薬液を浸透させる「封じ込め」と呼ばれる処理が行われることが多い.封じ込めでは,薬液が隅々まで確実に吹き付けられているかどうかが非常に重要であるが,薬液の吹付け状況を簡易に確認する方法は確立されていない.そこで,本研究では,薬液に蛍光剤を混ぜ,それに紫外線(励起光)を照射することによって発光する蛍光を目視観測することにより,薬液の吹付け状況を確認する方法を提案する.さらに,現場での実験結果から,この方法の効果について述べる.
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