土木学会論文集C(地圏工学)
Online ISSN : 2185-6516
ISSN-L : 2185-6516
67 巻, 1 号
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和文論文
  • 西田 博文, 長江 剛志, 佐藤 毅, 林 健二
    2011 年 67 巻 1 号 p. 16-25
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル フリー
     最近,わが国でも地盤構造物に対して性能設計の概念が導入されてきた.性能設計を行う上で一般的に用いられる設計法として信頼性設計法が挙げられる.現在実用化されている信頼性設計法にはレベル1~3の手法があり,これらは破壊確率をベースとしている.しかし,破壊確率の許容値は,構造物の種別や構造物の要求性能に応じて設定されるものであるが,実験や実例などから経験的に設定せざるを得ない.また,限られた試験データから地盤定数の確率分布を推計し,それを基に設計せざるを得ない. 本研究では,上記のような入力の不確かさに対して頑健な意思決定を可能にするため,ロバスト制御アプローチを導入した信頼性設計法を提案した.簡単な例題でその適用性を検証した結果,本設計手法は地盤改良工等の設計に対して有用であることが確認できた.
  • 伊藤 文樹, 國生 剛治, 長尾 洋太
    2011 年 67 巻 1 号 p. 26-35
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル フリー
     同一供試体において小型コーン貫入試験と液状化試験を行える三軸試験機を用いて,短時間で年代効果を再現するためにセメントを試料に少量加えた加速試験を行い,年代効果が非塑性細粒分を含む砂の貫入抵抗qtと液状化強度RLの関係に与える影響を調べた.セメントを加えない再構成試料では細粒分含有率Fcや相対密度の違いに関わらず一意的なqtRL関係が得られるが,セメントを加えた試料では,Fcの増大とともに同じqtに対するRLが大きくなる傾向が現れた.これは原位置コーン貫入試験と凍結サンプリング試料によって得られたqtRL関係と整合している.つまり,FcによりRLが増大する理由はFcそのものによるのではなく,年代効果(固結作用)がFcの増大とともに顕著になるためであることが明らかとなった.
  • 高橋 直樹, 土居 洋一, 今泉 繁良, 渡 昌純, 吉直 卓也
    2011 年 67 巻 1 号 p. 50-60
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル フリー
     本論文では,4種類の母材を用いて,ベントナイト添加率を変化させたベントナイト混合土に関して,締固め試験,透水試験および吸水膨潤試験を行い,ベントナイトの膨潤と土粒子内の空隙(微細空隙比γ)を考慮した修正マクロ間隙比に基づく限界添加率の簡易決定法の妥当性を検証した.さらに,修正マクロ間隙比が限界添加率以上の添加率に対して負値をとることについて,ベントナイト混合土の締固め中および吸水中の膨潤を考慮して検討した.
  • 杉本 光隆, SRAMOON Aphichat, 岡崎 麻里
    2011 年 67 巻 1 号 p. 61-77
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル フリー
     日本の大都市部の大深度地下を構成する洪積層,新第三紀層の地盤には,NATM,シールド工法どちらも適用可能である.しかし,両工法の設計法は大きく異なっており,その違いの統一的な解釈が課題となっている.本論文では,掘削面のトンネル内側への変位による主働側の土圧や覆工設置までの掘削面変位を評価できる地盤反力曲線を,既存の骨組み構造解析モデルに適用し,トンネル覆工を設計するための解析法を開発した.さらに,同解析法を実現場に適用し,地盤反力係数と裏込注入率を変数とするパラメータスタディを行うとともに,覆工作用土水圧の計測値と解析値を比較した.その結果,本解析法は,軟弱地盤から硬質地盤にわたり,覆工作用土水圧,覆工の変位・断面力を合理的に表現できることがわかった.
  • 仁平 達也, 西岡 英俊, 川村 力, 西村 昌宏, 枝松 正幸, 神田 政幸
    2011 年 67 巻 1 号 p. 78-97
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル フリー
     杭の鉛直ばね定数は重要な設計指標であるが,供用時の杭の変位自体は微小な値であるため実際の変位挙動は十分に明らかになっていない.特に使用性を議論する上では杭の鉛直ばね定数の変位レベル依存性を評価する必要があるが,列車通過時の微小な変位レベルから鉛直載荷試験での大きな変位レベルまでの連続的に検討した例はこれまでほとんどなかった.そこで,本研究では杭基礎を有する鉄道ラーメン高架橋を対象に,同一箇所において建設段階での実杭の鉛直載荷試験と開業後の列車通過時の高架橋柱下端の動的変位計測により,鉛直ばね定数を実測し両者の関係を比較・考察した.その結果,列車通過時の鉛直ばね定数と変位増分の関係は,鉛直載荷試験での鉛直ばね定数の変位レベル依存性を外挿して連続的に評価可能であることを確認した.
  • 川端 伸一郎, 林 啓二, 亀山 修一
    2011 年 67 巻 1 号 p. 98-106
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル フリー
     本論文は,凍上災害記録や凍上対策工法の変遷などを取りまとめ,国内の寒冷地域(401地点)で求めた凍結指数からn年確率凍結指数の決定法について考察したものである.北海道,東北,東北以南にエリアを分け,過去50年分の寒冬(平均気温が平年値以下の厳冬年)の記録を調べた結果,寒冬の規模は南北の位置関係で規則性があることが分かった.また,エリアごとに寒冬の確率年数を求めると明らかな地域特性がみられ,北海道では軽度な寒冬になる機会は少ないものの,一旦寒冬になるとその規模が極めて大きいことが明らかとなった.このような地域特性から,北海道では20年確率,東北では15年確率,東北以南では10年確率を目安にn年確率凍結指数を求めるのが有効であることが分かった.
  • 高野 大樹, 大谷 順, 伊達 健介, 横田 泰宏, 永谷 英基
    2011 年 67 巻 1 号 p. 107-118
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     経済性や断面形状の自由度といった理由から,都市部においても山岳トンネル工法が採用されるケースが増加している.また近年では,主に切羽の安定のみを目的に採用されてきた鏡ボルトを長尺化し,地表面沈下にも効果を持たせるなど山岳トンネル工法に注目が集まっている.このように山岳トンネル工法の適用範囲が拡大しているのは,各種補助工法の発達によるところが大きいと言える.しかし,これらの補助工法は,その補強メカニズムが十分に解明されておらず,設計法も確立されていない現状にある.本論文では,補助工法の1つとして鏡ボルト工法を取り上げ,その切羽面補強効果についてX線CTと模型実験を連携させた実験システムを用いて検討を行うものである.またその結果の妥当性と現象の定量的評価について遠心模型実験結果を用いて検証した.
  • 片岡 範夫, 笠間 清伸, 善 功企, 陳 光斉
    2011 年 67 巻 1 号 p. 119-129
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     地盤内に固化材を混合することで,液状化強度を向上させる液状化対策工法が開発されており,様々な要因により,せん断弾性係数や液状化強度などの地盤諸係数に空間的な不均質性が生じることが報告されている.この地盤物性の空間的な不均質性に起因して,地震時に局所的な液状化やせん断破壊が生じ,地盤の支持力や破壊モードが影響を受けると予想される.本論文では,固化処理地盤の地盤物性の不均質性を考慮した非線形地震応答解析によるモンテカルロ・シミュレーションから得られた液状化確率をもとに,地震外力の地域特性や不確定性,ならびに局所的な液状化に起因する経済損失を考慮した固化処理地盤の液状化リスク分析手法の提案を行った.さらに提案手法を用いて,液状化リスク指標に基づき福岡地域を想定した固化処理地盤の性能評価を行った.
  • 池野 勝哉, 三藤 正明, 善 功企, 菅野 高弘, 中澤 博志
    2011 年 67 巻 1 号 p. 130-144
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     地表面勾配が0.5~3%前後の工学的に水平な地盤において,数mオーダーの水平変位を伴う流動現象が報告されている.本論文は,滑走路地盤の部分改良に関する流動対策として,改良層の両端部を非液状化層に着底させる門型着底構造を提案するものである.本文では,流動現象を改良層の滑動問題として帰着させた着底幅に関する基本検討を示し,1G場の模型実験から門型着底構造の流動対策効果を考察する.さらに,模型実験を概ね再現しうる解析手法を用いて,モデル滑走路地盤によるパラメトリックスタディを実施した.その結果,本研究で対象とする滑走路地盤では,地表面勾配の影響が大きいものの,部分改良75%で未改良ケースの水平変位を8割程度低減することや,提案した門型着底構造で水平変位の発生をほぼ抑止できる可能性が示唆された.
  • 菊池 喜昭, 中島 研司, 木村 淳治, 水谷 崇亮
    2011 年 67 巻 1 号 p. 145-159
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     これまでの研究で,港湾工事でケーソンの裏込めに用いた高炉水砕スラグは時間の経過とともに硬化していくことがわかっている.ただし,非常に時間がかかることが知られている.そこで,室内において高炉水砕スラグを硬化させるための条件について検討したところ,海水条件下では,高炉スラグ微粉末を添加することが高炉水砕スラグの硬化促進に有効であることがわかった.また,硬化した高炉水砕スラグのせん断強さはcとφで表せられること,残留せん断強さはφで表すことができることがわかった.また,それらの強度定数は,低拘束圧の排水もしくは非排水三軸圧縮試験から求めればよいことを示した.
  • 布川 修, 杉山 友康, 森 泰樹, 畑 明仁
    2011 年 67 巻 1 号 p. 160-173
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     鉄道沿線に数多く存在する斜面を対象として,降雨時に発生する土砂災害を防止する対策を効果的に実施するためには,各斜面の耐雨性のみならず災害発生時の営業損失や復旧費なども考慮して,各斜面の災害に対する危険度を定量的に評価し,この結果を用いて防災対策の優先順位や方法を決定するのが望ましい.そこで,本研究では,鉄道沿線斜面において降雨時に発生が懸念される土砂災害やそれが鉄道運行に与える影響をリスクとして定量的に評価する方法について論じた.具体的には,鉄道で実施されている運転規制を考慮して斜面の崩壊発生確率分布や年間降雨頻度期待値分布を作成し,これらをもとにリスクを算出する方法を提案した.さらに,リスク算出結果を利用した防災対策の意思決定方法を計算事例により示した.
和文報告
  • 石丸 真, 河井 正
    2011 年 67 巻 1 号 p. 36-49
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル フリー
     本報告では,岩盤斜面の地震時崩壊挙動を対象とした遠心力模型実験を行い,等価線形解析によるすべり安全率に基づく地震時安定性評価手法の適用性に関して検討を行った.
    セメント系の模擬岩盤材料とテフロンシートによる模擬不連続面を用いて流れ盤斜面模型を作製し,遠心加速度30Gのもとで,入力波(正弦波)の加速度振幅をステップ毎に増大させた加振実験を実施した.その結果,斜面模型は実規模換算3.5m/s2入力時に脆性的な破壊により崩壊し,その崩壊形態は模擬不連続面が大きく関与した平面すべり崩壊であった.また,本検討で実施した遠心力模型実験と等価線形解析の条件のもとでは,すべり安全率に基づく地震時安定性評価手法は安全側であることが確認された.
英文論文
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