土木学会論文集C(地圏工学)
Online ISSN : 2185-6516
ISSN-L : 2185-6516
69 巻, 1 号
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和文論文
  • 冨澤 幸一, 西本 聡, 渡邉 忠朋, 三浦 清一
    2013 年 69 巻 1 号 p. 1-19
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
     主として泥炭性軟弱地盤に施工する杭の周辺に主に固結工法による地盤改良を併用し,杭の水平抵抗の増加と耐震性の向上を図る手法を研究した.ただし,本手法では杭の要求性能の確保と固化改良体の健全性評価のため,内的および外的安定が技術的懸案となる.そこで,固化改良体の諸元を変化させた大規模模型実験を実施し,非線形有限要素法解析でシミュレーションすることで基礎の力学挙動および限界状態を照査した.その結果,杭の複合地盤的設計法の成立のためには,固化改良体の深さを杭特性長1/βを基本とし,改良強度を工学的根拠に基づき所要の基準値内とする必要があることを確認した.また,固化改良体の健全性を確保させ同時に杭の設計法を適応するための照査指標として,水平地盤反力度照査や杭許容水平変位量の低減設定の必要性を検証した.
  • 岸田 潔, 立田 安礼, 澤村 康生, 木村 亮
    2013 年 69 巻 1 号 p. 20-30
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
     プレキャストアーチカルバートを盛土の縦断方向に複数連続的に設置させた構造は,アーチカルバートによる空洞空間を含んでいるため地盤に作用する荷重が一様ではなく,軟弱地盤上に設置されると不同沈下が発生する可能性がある.構造物の安定性や供用後の走行性等を考慮すると,軟弱地盤では沈下対策が必要となる.本研究では,軟弱地盤上に多ユニットアーチカルバートを設置した場合の盛土および地盤の挙動と地盤改良による沈下対策効果について,遠心模型実験と数値解析を通して検討を行った.多ユニットアーチカルバートの設置により,地盤内には一様でない応力状態生じ,不同沈下が発生する.また,一定の地盤改良を行うことで,軟弱地盤上に本構造を設置しても不同沈下を解消できることを確認した.
  • 江戸 孝昭, 松原 仁, 原 久夫
    2013 年 69 巻 1 号 p. 31-45
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
     砕屑性の等方性堆積岩を対象に,岩の微細構造(粒子)を多角形で近似し,き裂は各粒子の界面で発生すると仮定した節点ベースの新しい離散き裂進展解析法を提案する.本手法は,弾性問題において高精度な解を得ることのできるEnriched Free Mesh Methodと,任意の位置において高精度な近似関数を得ることができる付帯条件付き多次元移動最小自乗法を組み合わせて構築している.本手法の特徴は,先在き裂を有する脆性材料において,弾性状態から破壊に至る過程をロバストに解析することができる点にある.本論文では,実験により得られた試験体のき裂進展挙動との比較解析を含めた検証例題で本手法の妥当性を示し,その応用例として,先在き裂を有する岩石のき裂進展過程の多様性について議論する.
  • 小泉 圭吾, 藤田 行茂, 平田 研二, 小田 和広, 上出 定幸
    2013 年 69 巻 1 号 p. 46-57
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
     近年,局地的かつ突発的な集中豪雨による土砂災害が頻発している.本研究は緊急時のライフラインとして重要な役割を果たす高速道路に焦点をあて,豪雨による表層崩壊を対象とした土砂災害監視システムの構築を目的とする.特長は,電池で長期運用が可能であること,フルメッシュネットワークと呼ばれる無線通信技術により,対象範囲を限定せず,多点で面的な計測が行える点が挙げられる.また,崩壊検知だけでなく,崩壊に至るまでの地盤の性状を段階的に診断できるシステムの構築を目指している.ここでは,本システムの無線通信機能に焦点を絞り,その性能評価および実証実験を行った.その結果,基地局とセンサノード間の無線通信距離に依存することなくセンサを配置でき,少なくとも129日間の連続稼働時間が確認できた.
  • 渡邊 保貴, 小峯 秀雄, 村上 哲, 安原 一哉, 豊田 和弘
    2013 年 69 巻 1 号 p. 58-69
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
     水道事業から排出される浄水汚泥には多くの有機物が含まれている.浄水汚泥は一般的な土とは異なる生成過程を経て排出されるため,有機物の組成や分解特性に関して未知の部分が多く,地盤材料として有効利用する上で,工学的性質に及ぼす有機物の分解に関する経験的な解釈が通用するとは限らない.本研究では,浄水汚泥に含まれる有機物の組成および好気環境下における分解特性を明らかにすると共に,有機物分解後の浄水汚泥の三軸せん断特性を調査した.浄水汚泥にはフミン酸が多く含まれており,フミン酸の約44%は約6ヵ月間で好気分解されることを明らかにした.また,浄水汚泥の有機物が約1.38%分解されることにより,内部摩擦角は39.7°~40.4°の範囲から37.9°付近まで減少することを示した.
  • 金 佑泰, 兵動 正幸, 中田 幸男, 吉本 憲正, 野田 翔兵
    2013 年 69 巻 1 号 p. 70-79
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
     2地点から採取したまさ土を対象に一連の非排水繰返し三軸試験を行った.試験結果から得られたまさ土の液状化強度は,相対密度80%以下ではほぼ一定であり,相対密度が100%以上で急上昇することが観察された.これは,JISで規定された最小,最大密度試験が乾燥状態の試料を対象としているのに対し,まさ土は細粒分を有し,水中ではコラプスを起こし,さらに圧密により体積収縮するため,緩いまさ土は結果的にほぼ一様の密度になってしまったためと考えられる.そこで,本研究では湿潤試料を対象に最小,最大密度試験を行い,新しい相対密度を再定義した.この相対密度と液状化強度との関係をまとめると,相対密度の変化に対しまさ土も豊浦砂と同様な挙動を示し,細粒分を有するまさ土の液状化強度を相対密度との関係で説明できることが明らかとなった.
  • 日下 拓哉, 國生 剛治, 新井 良太郎
    2013 年 69 巻 1 号 p. 80-90
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
     斜面や構造物近傍などの地盤の液状化において,初期せん断応力の影響は重要である.本研究は,中空ねじりせん断試験機により初期せん断応力を水平面または45°傾いた面に排水条件で加え相対密度30~50%で非塑性細粒分を0~30%混ぜた砂の液状化試験を行った.その結果,液状化破壊を4種類(水平地盤での繰返し破壊CF,初期せん断応力比αが小さい範囲での繰返し破壊CBF,αが大きな範囲での延性的破壊BGFと脆性的破壊BSF)に分類できることを示した.特に非塑性細粒分を含む緩い砂では,繰返しせん断による水圧上昇の途中で初期せん断応力によりひずみが急増する脆性的破壊BSFの重要性を指摘した.そして,初期せん断応力下での体積圧縮性の違いから脆性的破壊と延性的破壊に分かれるメカニズムを非排水単調せん断試験との比較より明らかにした.
  • 金子 崇, 兵動 正幸, 中田 幸男, 吉本 憲正, Hemanta HAZARIKA
    2013 年 69 巻 1 号 p. 91-107
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
     本研究では,砂とタイヤチップを様々な割合で混合した土に対し,中空ねじりせん断試験機による動的変形試験を行った.その結果,タイヤチップを混合した場合,せん断弾性係数は非常に小さくなるが,大きなひずみ域においても弾性的性質を示し,履歴減衰率は微小ひずみ域においても高い値を示すことが明らかとなった.また,その結果を用いて,タイヤチップを地盤材料として用いた地盤を想定し,全応力解析であるSHAKEと有効応力解析であるオンライン地震応答解析を行った結果,両解析において,タイヤチップの存在による応答加速度波形の減衰・長周期化の傾向や最大応答加速度・最大応答変位の深度分布の形状が比較的よく対応することが確認された.
  • 小峯 秀雄, 長田 徹, 高尾 肇, 植田 浩義
    2013 年 69 巻 1 号 p. 108-117
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
     高レベル放射性廃棄物の地層処分施設におけるベントナイト系緩衝材の自己シール性を定量的に評価するため,第一著者は「ベントナイト系緩衝材・埋戻し材の膨潤特性理論評価式」を提案している.本研究では,上記の評価式の適用性・有効性を確認することを目的に,高レベル放射性廃棄物処分施設の縦置き孔における隙間部分と緩衝材の関係を,軸対称に縮尺・模擬した模型実験を行い,ベントナイト系緩衝材の隙間充填過程の発生圧力を経時的に測定した.その結果,ベンナイト系緩衝材の膨潤変形により隙間部分が充填されることを確認した.また,隙間充填後の最大発生圧力は,先の理論評価式により比較的良好な精度で予測できることを明らかにした.
  • 中房 悟, 小林 薫, 松元 和伸, 森井 俊広
    2013 年 69 巻 1 号 p. 126-139
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
     キャピラリーバリアの構造は,砂層とその下部に礫層を重ねた土層である.そのため,砂材が礫層の間隙に混入しやすく,長期供用時にキャピラリーバリアの性能低下が懸念される.この課題に対し,筆者らは礫代替材として破砕貝殻を用いることで課題を解決できる可能性を見出した.
     本論文は,礫代替材として破砕貝殻を再利用したキャピラリーバリアの機能を検証するため,室内実験により限界長を実測し,Steenhuisらの推定式により算定した限界長と比較した.加えて,砂礫材で構成されるキャピラリーバリアの限界長とも比較検討した.その結果,破砕貝殻を用いたキャピラリーバリアの限界長は,砂礫材で構成されるキャピラリーバリアの限界長と同程度であると共に,Steenhuisらの推定式は破砕貝殻を用いた場合でも十分な精度で適用できることを明らかにした.
  • 深田 隆弘, 谷口 達彦, 澁谷 啓
    2013 年 69 巻 1 号 p. 140-151
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
     発生源における落石危険度評価方法は,これまで斜面を管理する機関や事業者などにより研究・改良が進められてきた.しかしながら落石の発生メカニズムが十分に解明されていないこともあり,過去の落石事例の統計分析等に基づく経験的な評価方法が現在でもその主流となっている.鉄道の現場においても客観的・定量的な落石危険度評価のニーズがあり,これに応えるために転石タイプの落石について新しい危険度評価方法を検討した.提案する方法は振動計測により斜面上転石の根入れ状態を推定し,それを基に力学的安定度を直接的に算定するものである.なお提案方法を鉄道沿線の実斜面において適用し,その有用性を確認した.
  • 清原 雄康, 風間 基樹
    2013 年 69 巻 1 号 p. 152-161
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
     不飽和状態下における圧密時,せん断時の土粒子間隙の変化挙動を把握するために, 火山灰質土である撹乱,不撹乱八戸ローム土を用いて,初期サクションを0,50,90kPa,拘束圧を100kPaとした排気・非排水および排気・排水の不飽和三軸試験を行った.その際の水分特性曲線の変化を把握し,毛管径分布と水分特性曲線の関係を表わす毛管モデルを利用して,せん断時の間隙比の変化に対する間隙径分布の変化を推定する方法を示した.その計算結果は,実測値と良好な整合性が得られた.また,撹乱,不撹乱といった土構造の違いと毛管径の変化特性を考察した.
和文報告
  • 宇津木 慎司, 水戸 義忠, 小山 倫史
    2013 年 69 巻 1 号 p. 118-125
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
     ダム基礎岩盤における岩盤の遮水性と力学的特性の改良を目的として実施されるグラウチングについては,平成15年に技術指針が改訂されたことにより,必要最小限の数量で所要の品質を確保する設計手法が採用されている.これに対して本論文においては,(1)割れ目密度ダイアグラムを用いて最も割れ目と交差しやすい削孔方向を評価するための検討,(2)地球統計学的解析を用いて水みちの分布性状を評価するための検討を実施することにより,地質状況を考慮した注入方法で対策を講じることを目的とした品質管理支援システム(特許出願済:特願2012-92884)を開発した.
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