土木学会論文集C(地圏工学)
Online ISSN : 2185-6516
ISSN-L : 2185-6516
69 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
和文論文
  • 平田 昌史, 飯塚 敦, 太田 秀樹
    2013 年 69 巻 4 号 p. 404-416
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
     粘土の二次圧密やクリープ,ひずみ速度依存性といった時間依存性挙動を表現するため,これまで数多くの弾・粘塑性構成モデルが提案されている.しかしながら,塑性や粘性による非可逆変形を単一の物理量として評価する粘塑性論を基本とした弾・粘塑性構成モデルでは,関連流動則の適用を正当化することができず,時間経過に伴う先行効果(擬似的な過圧密挙動)も定量的に評価することができないという問題が指摘されている.そこで本研究では,飯塚・太田が提案する“塑性論的粘塑性論”を基に,時間経過に伴う先行効果を評価することが可能な拡張型の弾・粘塑性構成モデルを提案し,各種室内試験の要素シミュレーションを実施することで,提案する構成モデルの有効性および適用性について検討を行った.
  • 古川 全太郎, 安福 規之, 大嶺 聖, 丸居 篤
    2013 年 69 巻 4 号 p. 417-431
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
     筆者らは砂漠化の進行を抑止するため,乾燥地地盤に薬用植物「カンゾウ」を定植させ,持続的かつ現地のコミュニティと共同で行う地盤環境保護を目指した技術開発に取り組んでいる.このような技術を開発するため,モンゴルのカンゾウ自生地,非自生地で地盤環境調査を行っている.本論文では,乾燥地地盤の物理的環境と化学的環境を把握し,それらの関連性に関する考察を行った.その結果,乾燥地地盤は深さ1~2m程度では自生地・非自生地ともに砂~シルト質の不均質な層を有し,カンゾウが生育できる地盤内の含水比は最低でも5%程度であり,地盤内水分の確保が重要であることが示唆された.また,粒度の細かいシルト質土壌を多く含む層の有効水分量が高く,シルト質層に炭酸カルシウムが蓄積し,その結果pHやECが高まることが示唆された.
  • 篠田 昌弘
    2013 年 69 巻 4 号 p. 432-443
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
     斜面の安定解析は,地盤工学において古典的問題である一方で,数学的には多峰性関数の最適化問題に帰着し,現在でも研究開発が進められている.特に,自然斜面の安定解析では,その規模の大きさや地層構成が複雑なため,安全率を求める関数は容易に多峰性関数となり得る.本研究では,盛土または自然斜面を対象として,Spencer法による力の釣り合いに基づいた効率的な非円弧すべり線探索法を用いた安全率算定法を示す.提案法の妥当性の検証のため,安全率が既知のモデルに対して提案手法を適用し,計算精度と収束性の観点から比較し,提案法の有効性を示した.
  • 焼田 真司, 仲山 貴司, 津野 究, 高橋 博樹, 小宮 一仁, 赤木 寛一
    2013 年 69 巻 4 号 p. 457-468
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル フリー
     軟弱な粘性土地盤中に建設されたシールドトンネルでは,周辺地盤の圧密によって変形が緩慢ながらも長期的に進行する場合がある.これを予測するには土水連成解析が有効な手法であるが,変形の進行を精度良く予測するためには,ひび割れによる覆工剛性の非線形性を考慮することが必要である.しかし,土水連成解析で広域的に地盤をモデル化して変形挙動を求める際に,材料のひび割れによる精緻な非線形挙動を考慮することは計算コストの面などから現実的ではない.そこで本研究では,室内実験と実計測結果との比較から,ひび割れ発生による影響を簡易なリング一様の剛性低下で表現する手法を考案し,その妥当性を確認した.
  • 原 弘行, 末次 大輔, 林 重徳, 松田 博
    2013 年 69 巻 4 号 p. 469-479
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル フリー
     本論文は,海水に曝露したセメント処理土の劣化機構について溶出試験結果および海水浸漬試験結果をもとに考察したものである.セメント処理土のカルシウムの溶出は,海水中のマグネシウムを含む塩が間隙水のpHを低下させ,溶解度が増加することによって生じることを示した.さらに,海水に最長1年間浸漬したセメント処理土の内部性状を経時的に調べ,マグネシウムの影響によるカルシウムの溶出現象を確認し,処理土のカルシウム濃度の減少がセメンテーション物質の崩壊を招き,力学的に劣化することを推定した.
  • 古河 幸雄, 川又 聡史
    2013 年 69 巻 4 号 p. 480-490
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
     気泡混合軽量土の原料土に火山灰質粘性土を用いた場合の適合性を検討した.火山灰質粘性土の性質はアロフェン含有量により影響されるので,粒度分布が近似してアロフェン含有量が広範囲のもの,アロフェン含有量の大小に関わらず粒度分布が広範囲のものを対象に8種類で実施し,それが流動性や軽量性,一軸圧縮強さに及ぼす影響について定量的に検討した.その結果,流動性や軽量性は,ほぼ目標値を満足することが明らかになった.一軸圧縮強さは,アロフェン含有量や砂セメント比,泡セメント率の影響を受け,割増し一軸圧縮強さを考慮した目安の最低強度を450 kN/m2とした場合,それを満足する範囲は概ね砂セメント比≦1,かつアロフェン含有率≦40%であり,そのときの一軸圧縮強さの推定式を提案した.
  • 篠田 昌弘
    2013 年 69 巻 4 号 p. 491-503
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
     複雑なすべり線を呈する自然斜面の地震時安定性評価を行うにあたり,実務的な地震時残留変位量の算定法は確立されていない現状がある.また,取り扱う入力地震動は主に水平成分のみを考慮し,鉛直成分はほとんど考慮されていない.そこで,本論文では複雑なすべり線を呈する斜面の地震時残留変位量の算定方法を提案し,入力地震動の水平成分と鉛直成分の位相を変化させて地震時残留変位量に与える影響を検討した.提案法の妥当性の確認のため,単純な斜面モデルを用いて検証を行った.検討の結果,入力地震動の水平成分と鉛直成分の位相の組み合わせによっては,すべり線方向に慣性力が最大となる組み合わせが存在し,地震時残留変位量が増加する可能性があることが分かった.
和文報告
  • 野間 康隆, 山本 浩之, 西村 毅, 笠 博義, 西形 達明, 西田 一彦
    2013 年 69 巻 4 号 p. 444-456
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル フリー
     城郭石垣の維持管理においては地震時の安定性評価手法の確立が課題となっている.本研究では,城郭石垣を対象として地震時の変形を予測し,なおかつ,その結果を用いて動的安定性評価を行う手法について検討を行った.具体的には,粒状体の解析手法の一つである個別要素法を用いて城郭石垣の地震時変形予測を考え,各石垣構成材(築石,栗石,地盤)の物性値と入力物性値との関係を明確にした上で実物大城郭石垣モデルの振動台実験結果の再現を試みた.この結果,地震力が作用した場合の築石の変形量や変形モードを的確に再現できることが確認された.さらに,文化財である城郭石垣を対象として地震時の安定性を評価することを目的として,上記の解析結果を「孕み出し指数」により評価する手法についての提案を行った.
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