土木学会論文集C(地圏工学)
Online ISSN : 2185-6516
ISSN-L : 2185-6516
75 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
和文論文
  • 藤原 優, 酒井 俊典
    2019 年 75 巻 4 号 p. 369-385
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/20
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     グラウンドアンカー(以下,アンカー)の緊張力計測機器には様々な種類のものがあるが,一般に歪ゲージの抵抗変化を電気信号に置き換えて緊張力を計測する歪ゲージ式荷重計が用いられている.歪ゲージ式荷重計の計測値は,アンカーへ外力が作用していない状態においても,温度による歪ゲージ自体の熱膨張や収縮などの影響により変化する.この荷重計の計測値と温度が示す特性は,法面の安定を評価するための判断材料となる.アンカーの緊張力は,設計アンカー力などに対する増減割合から状態の判定が行われているが,温度により連続的に変化する緊張力に対しての具体的な評価手法までは示されていない.本論は,荷重計の計測値と温度の相関関係に着目し,温度の影響を考慮したアンカーの緊張力変化について評価した.

  • 津田 涼汰, 廣瀬 孝三郎, 上原 盛久, 松原 仁
    2019 年 75 巻 4 号 p. 386-397
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

     沖縄島中南部に広がる島尻層群泥岩は,N値50以上を示す場合が多いことから良好な支持層としてみなされる反面,人工法面や自然斜面においては多くの崩壊・すべりが発生することで知られる.また,建設後約30年が経った本泥岩を主体とする道路法面では,法面保護工の損傷が多く見られ,経年に伴う岩石風化の可能性が指摘されている.本研究では,沖縄県中南部に位置する高速道路法面から得られた島尻層群泥岩の約30年間の強度変化を推定し,スレーキング試験,粉末X線回折分析及び微細構造観察によって,本法面の物理的・化学的な風化メカニズムについて検討した.結果として,法面保護工の損傷は,本泥岩に含まれる粘土鉱物の膨潤・溶解作用や黄鉄鉱の酸化作用等の物理的・化学的な風化作用に深く関わっていることが明らかとなった.

  • 新清 晃, 西村 聡, 藤澤 和謙, 竹下 祐二, 河井 克之, 佐古 俊介, 森 啓年, 山添 誠隆, 太田 雅之
    2019 年 75 巻 4 号 p. 398-414
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

     洪水時の河川堤防安定性照査には,事前降雨を想定し,不飽和浸透流解析により堤体内の水圧状態を予測する過程が含まれ,その結果は堤体の浸透破壊,堤体・基盤層のパイピング破壊,非洪水時の堤体変状に対する安定性評価などに適用される.本論文では,堤体への降雨浸透に対する不飽和浸透流解析の適用性と,適用時の実務上の注意点を抽出するため,土木学会地盤工学委員会堤防研究小委員会WG2で検討してきた内容と,その中でも特に一斉数値解析からの知見をまとめた.Richards式を適切にコーディングした不飽和浸透流解析は,非線形の強い問題でも,空間・時間離散化などユーザー側の判断には大きく依存せず,実務上問題のない精度で解を得られること,同一断面問題に対する解析結果の相違は断面・降雨入力等の解釈やモデル化に由来することが示された.

  • 藤原 優, 三塚 隆, 久田 裕史, 竹本 将
    2019 年 75 巻 4 号 p. 415-429
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

     道路沿線の斜面に不安定な岩塊が存在する場合,落石調査を実施し災害を防ぐための対応を図る必要がある.しかし,落石現象は素因が複雑かつ誘因が多様なため,岩塊の安定性を画一的に評価することが困難となる.このような背景から,岩塊に振動計を設置し,記録振動の卓越周波数や減数定数から岩塊の安定性を定量的に評価する「落石振動調査法」が開発されている.この調査では,計測の度に振動計を設置・撤去し,短期間の計測データを用いて安定性の評価が行われているが,岩塊振動は気象条件などの外的環境の影響を受けて変化している可能性がある.本研究は,不安定な岩塊を対象として岩塊振動をモニタリングする設備を構築するとともに,得られた計測データの分析により岩塊の安定性評価において留意すべき内容を明らかにした.

  • 佐野 博昭, 山田 幹雄, 小竹 望, 尾形 公一郎, 川原 秀夫
    2019 年 75 巻 4 号 p. 430-442
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,廃石膏ボード由来再生石膏を主に地盤改良材として利用する観点から,再生および試薬の石膏の熱的挙動を詳細に調べるとともに,加熱時の所定の温度における形態変化に着目し,再生石膏の簡易な品質判定法として「加熱法」を用いた半水石膏含有率を推定する方法について検討を行った.得られた結果より,24時間加熱を行った場合,二水石膏は90℃で半水石膏へ,120℃で無水石膏へと形態変化が生じることが明らかとなった.また,加熱温度70℃と90℃のときの質量差(減少量)を用いて二水石膏含有率と半水石膏含有率を計算により求めたところ,「加熱法」による推定法の有効性が示された.さらに,「加熱法」により求めた半水石膏含有率と「密度法」により求めた半水石膏含有率を比較したところ,両者はほぼ一致することが明らかとなった.

  • 兵頭 順一, 一井 康二
    2019 年 75 巻 4 号 p. 443-453
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/20
    ジャーナル フリー

     締固め砂杭工法の改良効果は,密度増加と静止土圧係数K0の増加による効果の両方を含んでいる.本研究では,耐震性能評価のための動的解析による,密度増加と静止土圧係数K0の増加の各々の効果を適切にモデル化する手法を提案する.まず,動的解析のパラメータはN値から算定することが多いため,N値で評価される地盤の貫入抵抗を模擬するために三次元解析を行い,N値に及ぼす密度増加と静止土圧係数K0の増加の効果の分離を行った.また,各々の効果の影響について,既往の実測例との整合性を確認した.そして,それぞれの効果に関して,数値解析におけるモデル化の提案と事例解析を行った.解析結果は,静止土圧係数K0を適切に設定あるいは計測することができれば,地盤改良効果を従来より大きく評価できることが示唆される結果となった.

  • 井澤 淳, 小島 謙一, 荒木 豪, 大西 高明, 林田 晃, 藤原 寅士良, 上田 恭平, 舘山 勝
    2019 年 75 巻 4 号 p. 454-468
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/20
    ジャーナル フリー

     筆者らは,小型の施工機械を用いて薬液を動的に注入することより脈状の改良体を液状化地盤内に割裂注入し,改良体周辺地盤を密実化させることで液状化抵抗を増大させ,効率的に液状化の程度を低減する低改良率の液状化対策工法(以降,脈状地盤改良工法)の開発を進めている.本稿では本工法の概念を示すと共に,脈状改良体を割裂注入するための動的注入諸元に関する検討や品質確認手法に関する検討,小型模型振動台実験による液状化対策効果の検討について報告する.これらの検討から,適切な薬液配合と動的注入条件により飽和砂層地盤内に多方向に脈状改良体を割裂注入できること,地盤定数の変化を各種の地盤調査から評価できる可能性があること,本工法により液状化程度を低減でき,地盤の沈下量を大幅に低減出来ることなどを確認した.

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