土木学会論文集C(地圏工学)
Online ISSN : 2185-6516
ISSN-L : 2185-6516
76 巻, 1 号
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和文論文
  • 川崎 始, Hla AUNG , 仙頭 紀明, 久保 幹男
    2020 年 76 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/20
    ジャーナル フリー

     ふとんかごを壁面に用いる補強土壁は,鋼製枠壁面の補強土壁より粘り強い安定した構造と考える.既往研究では,補強材を敷設した土やふとんかごと補強材効果が類似する土のうは,見掛けの粘着力を評価する研究がされているが,壁面材の違いに着目した多段積み補強土壁の評価はされていない.そこで本研究は,壁面材と補強材を一体とした構造の鋼製枠タイプとふとんかごタイプを多段に積んだ補強土壁模型の載荷試験を実施した.その結果,ふとんかごタイプは鋼製枠タイプより水平土圧に抵抗する剛性の高い構造であること及び,鉛直と水平土圧を用いたモール円の評価から,補強材敷設土が見掛けの粘着力を有すること(これらを「粘り強さ」と言う)を確認した.FEM解析を実施し,実験の再現には解析パラメータの設定に課題があることを示した.

  • 佐原 邦朋, 鈴木 素之, 藤田 義成
    2020 年 76 巻 1 号 p. 12-25
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/20
    ジャーナル フリー

     鋼製帯状補強材を用いる補強土壁工法は補強材と盛土材料の摩擦力を構造原理としているため,その摩擦特性の把握が重要である.しかし,盛土材料の使用可否を細粒分含有率で判断する間接的な方法が用いられているため,現場ごとに異なる盛土材料の摩擦特性は評価されていない.そこで,現場に持ち込んで,その場で盛土材料の摩擦特性の評価に使用可能な小型の引抜き試験機を開発し,その試験方法ならびに摩擦特性を評価・検討した.また,現場引抜き試験との比較によって,得られる結果の妥当性を検証した.さらに,現場ごとに違う盛土材料の摩擦特性を施工前に評価することによって,要求される品質を確保する活用方法を提案した.

  • 渡邊 保貴, 横山 信吾
    2020 年 76 巻 1 号 p. 26-39
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/20
    ジャーナル フリー

     メチレンブルー吸着量を用いてベントナイトのモンモリロナイト含有率を評価するため,メチレンブルー吸着試験の測定精度を確かめた上で,分散性の劣るCa型ベントナイトを用い,これから抽出したモンモリロナイトのメチレンブルー吸着量を測定した.メチレンブルー吸着試験にはスポット法と比色法がある.ブラインドプリディクションによりスポット法の標準誤差は2mmol/100g未満であることが分かった.また,比色法と試験後試料の粉末X線回折分析により,スポット法による測定値を飽和吸着量とみなせることが分かった.モンモリロナイトの抽出は粒径0.2µm以下の回収により行った.このメチレンブルー飽和吸着量を使用することがモンモリロナイト含有率の評価,及び,有効モンモリロナイト密度を用いた透水性・膨潤性評価の精度を高める上で重要である.

  • 藤原 優, 酒井 俊典, 尾鍋 哲也, 大石 新之介
    2020 年 76 巻 1 号 p. 40-51
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/02/20
    ジャーナル フリー

     道路盛土は,地下水の流入等により盛土材料が高含水状態にある場合,降雨時や地震時における安定性の低下が懸念される.このような盛土は,一般に法尻部を浸透性の高いかご枠工等を用いて強化するとともに,水抜きパイプにより盛土内の浸透水を排除する対策が行われている.しかし,盛土内の地下水分布は複雑であり,水抜きパイプが水ミチを的確に捉えてないと,十分な対策効果が得られない可能性がある.本論は,盛土内に砕石改良体を構築し排水パイプと連結して浸透水を排除する工法について,適用箇所で盛土内水位の変化を分析するとともに,対策効果の検証を行った.

  • 伊藤 真一, 小田 和広, 小泉 圭吾, 西村 美紀, 檀上 徹, 酒匂 一成
    2020 年 76 巻 1 号 p. 52-66
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/02/20
    ジャーナル フリー

     筆者らはこれまでに,体積含水率の現地計測データに基づく浸透解析モデルのデータ同化を行ってきた.既往の研究では,1次元解析モデルを仮定して,モデル底面の境界条件を自由排水境界とすることで不飽和状態における浸透挙動の再現を試みてきた.しかし,激しい豪雨が降った場合には,自由排水境界では土中の水分状態を解析的に再現できないことが分かった.本研究では,1次元解析モデルにおける底面の境界条件に関するパラメータとして浸透係数βを導入したデータ同化手法を提案し,その妥当性について検証した.その結果,提案手法を用いると,数値実験による擬似的な計測データを高精度に再現できただけでなく,現地斜面において計測されたデータも良好に再現することができ,地下水位の上昇から下降までの挙動も表現できることが明らかになった.

  • 重松 宏明
    2020 年 76 巻 1 号 p. 67-76
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/02/20
    ジャーナル フリー

     ガラス質を主成分とした珪質凝灰岩の廃材を母材とした三和土の地盤材料としての適用可能性を力学的に評価するため,一連の室内実験を実施した.所定の条件・方法で作製し養生させた三和土の一軸圧縮試験の結果から,乾燥密度や養生期間,母材(種土)の物性の違いが三和土の強度・変形特性に多大な影響を及ぼすことを明らかにした.また,曲げ試験の結果から,三和土は普通ポルトランドセメントモルタルほどの曲げ強度が得られないことを確認した.さらに,凍結・乾燥・水浸の繰返し履歴を受けた三和土の一軸圧縮試験の結果から,過酷な環境下に置いた場合の三和土の耐久性についても検証した.

  • 安達 隆征, 中村 大, 川口 貴之, 川尻 峻三, 渡邊 達也, 山下 聡, 佐藤 厚子
    2020 年 76 巻 1 号 p. 77-87
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/02/20
    ジャーナル フリー

     積雪寒冷地の切土のり面に設置された小段排水溝は,古くから凍上現象で変状することが報告されている.本研究では凍上による小段排水溝の回転メカニズムを解明することを目的として,実際の1/10のスケールで作製した小段を凍結融解させて排水溝の凍上・融解沈下挙動を再現する室内模型実験と,供用中の道路のり面の小段に設置したU形排水溝の周辺地盤の温度や鉛直変位量を実測する現地計測を行った.その結果,小段排水溝は小段平坦部の極表層で発生する凍着凍上によって持ち上げられ,横断方向で発生する不等凍上によって山側へ回転することが明らかとなった.また,簡易的な通水性能試験を実施して,設置から3年経過した排水溝の通水性能が,回転に伴う接合部の段差によって土砂や落ち葉の堆積が助長され,大きく低下していることを確認した.

  • 澤田 亮, 太田 直之, 杉山 友康
    2020 年 76 巻 1 号 p. 88-98
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,盛土などの土構造物の防災対策を実施する場合における投資の優先順位の決定や補修・補強を効率的に行う手法を構築することを目的とし,数量化理論を用いた事例分析による盛土の崩壊形状予測に関する検討を実施した.その結果,盛土本体のすべり破壊には地形条件と経過年数,のり面流出には地形条件,盛土高さ,盛土材料が予測値に与える影響が大きいことがわかった.また,検討の結果得られたカテゴリースコアを用いて盛土情報から得られるスコアによる盛土の崩壊形状の判別基準を提案した.さらに,東北地方太平洋沖地震における盛土の被害事例を用いた検証の結果,提案した崩壊形状予測手法は被害の実態をよく説明していることが確認できた.

  • 笠間 清伸, 浜崎 智洋, 伊藤 裕孝, 古川 全太郎, 松方 健治
    2020 年 76 巻 1 号 p. 99-109
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/20
    ジャーナル フリー

     本論文では,排水機能を有するスパイラル羽根付き鋼管(以下,SDPRとよぶ)を試験施工した高速道路盛土を対象に,飽和・不飽和浸透流解析を用いて盛土の地下水位変動の再現を行い,降雨・地震時における安全率改善効果を数値解析的に調査し,適切な打設条件を検討した.得られた結論を以下に示す.(1) 比較的透水性の低い盛土では,長さ6mのSDPRを水平間隔3mで打設することで,無補強の場合と比較して降雨による安全率の低下を約40%に抑えることができ,降雨後3日において無降雨状態の安全率にまで急速に回復できる.(2) 降雨時に地下水位が上昇する高さである盛土の中段と下段にSDPRを打設することで高い安全率改善効果が得られる.(3) 降雨・地震時において最も効果的に盛土の安定性を改善するSDPRの長さは6~9m,水平間隔は3~5mとなる.

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