土木学会論文集C(地圏工学)
Online ISSN : 2185-6516
ISSN-L : 2185-6516
76 巻, 4 号
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和文論文
  • 望月 美登志
    2020 年 76 巻 4 号 p. 331-339
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     河川湖沼,排水機場や漁港に堆積する底泥は,有機物の腐敗成分を多く含有するため,浚渫して陸揚げすると硫化水素等による強い悪臭を放ち,これを石灰系やセメント系の高アルカリ改良材で改良した場合,アンモニア臭による悪臭に変化する.有機汚泥改良時の臭気特性は,pH値と強い相関性があり,臭気抑制の最適pH範囲が弱アルカリ範囲にあるPS灰改質泥土では,臭気抑制を図りながら泥の物理的改質が可能となることが判明した.PS灰改質材の必要添加量が増えるような場合,硫酸第一鉄の添加が有効になること,施工上の対応策として養生期間の設定によるPS灰改質材の添加量削減評価方法によって効率的なPS灰改質添加による臭気抑制型PS灰改質工事が適用可能となった.

  • 竹下 祐二, 鳥越 友輔
    2020 年 76 巻 4 号 p. 340-349
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     河川堤防における浸透破壊の状態をリアルタイムに把握するためには,堤防内での浸透挙動の精度良い計測と計測値に基づいた予測方法が必要である.本文では,深層学習を用いたニューラルネットワークによる堤防内水位の予測方法を提案した.本法では,対象堤防において過去の出水時に計測された河川水位と堤防基礎地盤の水位変動状況をニューラルネットワークに学習させておき,学習済のニューラルネットワークを用いて,出水時に計測された河川水位と堤防基礎地盤の水位の変動状況により,任意時間経過後の堤防基礎地盤の水位の準リアルタイム予測を行う.提案する水位予測方法の有用性と妥当性は,2箇所の一級河川堤防において実際に計測された4回の出水時における計測水位を用いて検証した.

  • 伊藤 真一, 酒匂 一成, 北村 良介, 金丸 善輝, 金丸 和生, 川島 満成
    2020 年 76 巻 4 号 p. 350-362
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

     土柱法による保水性試験を行なって得られた体積含水率の計測データと融合粒子フィルタによるデータ同化を組み合わせて不飽和浸透特性を推定し,推定された不飽和浸透特性を用いた浸透解析モデルの予測性能について議論した.その結果,粒径の異なる二種類の試料を用いた保水性試験によって得られた計測データに基づいて不飽和浸透特性をそれぞれ推定したが,いずれの試験においても,30日分の計測データを学習させることで,数ヶ月先までの土中水分状態を概ね予測できることがわかった.このことから,土柱法における平衡状態に至るまでの将来の水分状態を予測するための手法として,融合粒子フィルタを用いた浸透解析モデルのデータ同化は有効であることが明らかになった.

  • 佐々木 隆光, 末政 直晃, 島田 俊介
    2020 年 76 巻 4 号 p. 374-393
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

     薬液注入材による改良土の強度特性には,注入材のタイプやシリカ濃度,砂の密度や粒径が影響を及ぼすことは知られているが,それらの影響度合いは試験結果から経験的に定められている.しかしながら,改良土の固化強度は注入材単体のそれに比較して非常に大きく,この強度発現機構に関して定量的な評価がなされていないのが現状である.本論文では,新たな強度発現機構として,注入材のゲル化反応に伴う体積収縮が砂の骨格を拘束することにより,改良強度が発揮されるモデルを提案している.そして,骨格の拘束効果を弾性波試験により定量的に評価することを試みた他,注入材単体および改良土の一軸圧縮試験,割裂引張試験を実施し,提案モデルの妥当性について検証を行った.

  • 吉津 洋一, 井関 恭輔, 井関 宏崇, 中島 伸一郎, 岸田 潔
    2020 年 76 巻 4 号 p. 394-404
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

     GIN工法をベースに注入材料の配合,注入圧力の設定,注入量制限を再考し,安全性・確実性に配慮したModified GIN工法が提案され,実際に施工された.本研究では,Modified GIN工法によるグラウトの充填状況を確認するため,実施地点よりグラウト充填ボーリングコアを採取し,医療用X線CTとμフォーカスX線CTによりCT画像の撮影および画像解析を行った.CT画像の分析により,割れ目内にグラウト材が充填されていること,割れ目の幅が大きくなれば,グラウト材が層をなして充填していることが確認された.割れ目幅の広いところは,先行して注入された濃度の薄いグラウト材に濃度の濃いグラウト材が繰り返し注入された結果である考えられ,このことは,実際の施工状況と一致することになる.

  • 小門 武, 須田 大作, 赤司 有三
    2020 年 76 巻 4 号 p. 405-410
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

     軟弱な浚渫土にカルシア改質材(転炉系製鋼スラグ)を混合して軟弱浚渫土の土質特性を改良するカルシア改質土の強度予測を目的として,浚渫土中のAmorphous Silicaおよびスラグ中のPortlanditeの溶解,さらに,溶出したH4SiO4(aq)とCa++によるC-S-Hの生成を化学反応式と化学平衡から解いてC-S-H生成量の算定式を導いた.そして,種々の浚渫土と転炉系製鋼スラグとを混合したカルシア改質土の強度試験を行い,算定式から求められるC-S-H生成量と材齢91日での一軸圧縮強さとの間には高い相関関係のあることが確認された.したがって,本論文で提案するC-S-H生成量の算定式からカルシア改質土の強度が予測可能であることが示された.

  • 山崎 充, 酒井 俊典
    2020 年 76 巻 4 号 p. 411-428
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

     グラウンドアンカー(以下,アンカー)の緊張力は,想定外の外力を受けない場合,一般に時間の経過とともに徐々に低下するとされ,維持管理においては,その残存率がアンカーの健全度を評価する一つの指標となっている.緊張力の低下は,アンカーが施工された法面などの地質条件の影響を受けると考えられるが,両者の関係について明らかにされていない.

     そこで本論では,複数の法面のアンカーにおける施工直後の荷重計測および施工後数年から最大で40年後に実施したリフトオフ試験から求められる緊張力の残存率と,自由長部の地盤の岩級区分との関係を比較し,地質条件が緊張力の低下に与える影響について検討した.その結果,岩級区分の順に緊張力の低下が大きく,残存率の最大値と最小値の差およびばらつきが大きくなることが明らかになった.

  • 末澤 理希, 木戸 隆之祐, 澤村 康生, 木村 亮
    2020 年 76 巻 4 号 p. 429-440
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

     杭先端以深の支持層厚が杭先端径に対して薄い支持層(薄層)に杭が支持された場合,支持層下部の軟弱層が杭の鉛直支持力に影響を及ぼすと考えられる.薄層に支持された杭の支持力メカニズムを解明するためには,支持層厚が杭の鉛直支持力特性および地盤の変形挙動に与える影響を把握することが重要である.本研究では,層厚の異なる支持層厚を含む模型地盤を作製し,等方拘束圧条件下で模型杭の押込み試験とX線CT撮影を行った.さらに画像相関法により地盤の変位やひずみ分布を調べ,支持層厚が地盤の変形挙動に与える影響を調べた.その結果,支持層厚が杭径の3倍の場合,杭の押込みによる地盤の変形はほぼ支持層内部に留まるが,支持層厚が杭径と同じ場合は載荷初期の段階から下部の軟弱層にまで変形が及び,鉛直支持力が低下することがわかった.

  • 稲積 真哉, 桑原 秀一, 宍戸 賢一
    2020 年 76 巻 4 号 p. 441-452
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

     近年では高度経済成長期に建設された大量の社会基盤構造物の高齢化,人口減少に伴う宅盤住宅・住居マンションを含む社会基盤構造物利用の減少,さらに防災基準に不適合な構造物の取壊しが増加している.そのため,既存杭の引抜き撤去が増加している.既存杭を引き抜く工程において,既存杭引抜孔上部から充填材の流し込み注入では,引抜孔の全深度にわたって均一な埋戻し処理を達成することが困難である.

     本研究では,MPS-CAEを活用してスパイラル撹拌工法の設計製作から既存杭引抜孔内における当該工法の撹拌メカニズムおよび性能まで一連の評価・検討を実施している.結果として,実施した解析条件において削孔泥水,削孔泥水+充填材,および充填材の3層がスパイラル撹拌工法では10分程度で均一な撹拌混合処理が可能であることが示された.

和文報告
  • 岡村 未対, 陣内 尚子, 小野 哲治, 大藪 剛士, 塚田 秀太郎
    2020 年 76 巻 4 号 p. 363-373
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

     2018年7月西日本豪雨の出水により肱川の堤内地で激しい噴砂が発生し,堤防裏法面が幅12mにわたって沈下した.堤体直下地盤にパイピングが生じたものと考えられ,被災のメカニズムとパイピングの進展度を把握することを目的とし,陥没領域を中心に中型動的コーン貫入試験,UAVによる地表面の形状測量,および開削調査を行った.その結果,堤体陥没の主な原因は基礎地盤中の砂層から砂が排出され層厚が減少したこと,パイピングは堤防裏法尻から川表側に向かって約10mの位置まで進展していることを明らかにした.現在までにパイピングの進展度を現場で調査する実用的方法が無い中,本報告では一つの有力な方法を提示した.パイピング現象の解明と予測点検法の向上には,被災した堤防についての詳細な調査事例を今後蓄積してゆくことが重要である.

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