土木学会論文集B1(水工学)
Online ISSN : 2185-467X
ISSN-L : 2185-467X
74 巻 , 5 号
選択された号の論文の257件中1~50を表示しています
水工学論文集第63巻
  • 時岡 真治, 池内 幸司, 大塚 健太, 魚波 勝彦, 石井 光太郎
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1-I_6
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     我が国の気候変動への適応策はソフト対策に重点がおかれ,気候変動に備えることを目的とした治水計画の見直しは検討段階にとどまっている.本研究では,北海道に位置する一級河川を対象に実施された「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF)」の力学的ダウンスケーリング結果を用いて,治水計画を見直す際の評価手法について検討を行った.まず,d4PDFの将来実験の流出計算結果と,観測降雨に基づく計画降雨を引き伸ばし算定した流出計算結果を比較し,気候変動後の洪水量の算定に計画降雨の引き伸ばしを用いることの妥当性を示した.次に,気候変動後の降雨量を現在気候での超過降雨として扱い,治水対策の違いによる被害軽減効果を経済的に評価することにより,定量的に治水対策の評価が可能であることを示した.

  • 阿部 紫織, 若月 泰孝, 中村 要介, 佐山 敬洋
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_7-I_12
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     地球温暖化の進行による河川災害リスクを評価するため,領域気候モデルによる2km解像度の数値シミュレーションの降雨データをRRIモデルに与え,流出・氾濫シミュレーションを行った.鬼怒川・小貝川流域を対象として水位・流量・浸水区域を評価した.その結果,特に低い基準水位の超過頻度が顕著に増加することがわかったが,高い基準水位の超過頻度の変化は不明瞭であった.また,豊平低渇流量は増加傾向にあるものの,渇水流量の変化は不明瞭であった.さらに,浸水区域が顕著に拡大する頻度が増加する傾向にあり,地域への氾濫リスクの増大が示唆された.しかしながら,本研究における31年間の実験のみでは不確実性が大きいため,今後,さらにケースを増やして検討する必要がある.

  • 星野 剛, 山田 朋人, 稲津 將, 佐藤 友徳, 川瀬 宏明, 杉本 志織
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_13-I_18
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     気候変動は大雨の激甚化,高頻度化のみならず,降雨の時空間特性の変化をも引き起こすことが懸念される.降雨の時空間特性の変化は洪水ピーク流量の増大や洪水被害の形態を変えうることから,将来の洪水外力に対する効果的な対策の実現のためにはその特徴がどのように変化するかを予測する必要がある.本研究ではアンサンブル気候予測データから得られる大雨の時空間分布を用い,従来の気候条件と温暖化進行後の気候条件での十勝川流域,常呂川流域における降雨の時空間特性を分析した.また,数十年の観測結果からだけでは評価が困難な台風がもたらす大雨の特性を定量的に評価し,温暖化進行後においても台風由来の大雨の相対的な危険性が高いことを示した.

  • 小坂田 ゆかり, 中北 英一
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_19-I_24
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     気象庁気象研究所の5km解像度非静力学領域気候モデル(RCM05)の現在と将来気候で表現された梅雨豪雨事例,及び過去に実際発生した梅雨豪雨事例を用いて,梅雨豪雨の強雨継続時間と積算雨量の将来変化予測を試みた.その結果,将来は現在よりも,強雨継続時間当たりの積算雨量が大きい梅雨豪雨が発生し始めることが明らかになった.また,偏波気象レーダ情報から算出した過去事例の強雨継続時間と積算雨量の分布は,RCM05の現在における事例の分布と良く一致しており,RCM05による梅雨豪雨表現が妥当であることを確認した.さらに,2017年に発生した九州北部豪雨は,RCM05の現在気候で発生した事例及び過去事例と比較して,強雨継続時間と積算雨量という観点から極端な事例であったことを示した.

  • 中北 英一, 橋本 郷志, 森元 啓太朗, 小坂田 ゆかり
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_25-I_30
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     本研究では,近畿地方で 8 月のゲリラ豪雨生起頻度が将来変化するメカニズムを,5km解像度領域気候モデル(RCM05)を用いて,気温減率と南方からの水蒸気流入の将来変化に着目して解析した.

     解析の結果,近畿地方でゲリラ豪雨が増加する8月下旬において,気温減率が減少する(大気が安定化する)にも関わらず,大気の静的な不安定度指標であるショワルター安定度指数(SSI)が不安定化する日の頻度が増加することを示した.また,SSIが不安定化する要因は下層水蒸気量の増加であることを示した.さらに,クラスター分類法である自己組織化マップ手法(SOM)を用いて,8月下旬における下層水蒸気量増加の大きな要因は,太平洋から近畿地方陸域へ向かう地上風系,すなわち豊富な水蒸気フラックスが南方から近畿地方陸域に供給される大気場の頻度が増加することであることを明らかにした.

  • 井田 寛子, 芳村 圭, 沖 大幹
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_31-I_36
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     気象条件と生物季節には密接なつながりがあり,特に気温と大きく関係していることについては,これまで多数の論文に示されている.近年,地球温暖化が進むなか,気温の上昇による影響が様々な生物季節の変化として発現していることも報告されている.サクラの開花も同様で,気温の上昇と共に開花時期は年々早くなっている.サクラの開花時期については特に春先の平均気温に大きく影響することが分かっており,青野らによって1960年代から1990年代に観測されたデータを用いた経験式が提案された.

     本論文では,気象台でサクラ開花の観測が始まった50~60年前当時よりも温暖化が進んだ昨今の状況において,当時に提案された経験式による誤差が大きくなってきていることを確認し,近年においても精度が担保できるよう経験式の係数を更新した.

  • 工藤 啓介, 中津川 誠, 千田 侑磨
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_37-I_42
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     地球温暖化に伴う気候変動の影響は,北海道等の積雪寒冷地で既に顕在化しつつあるが,市町村等の地域レベルで気候変動による生態系への影響がどの程度生じるのか,十分解明されていない状況にある.本報告では,気候変動に対する適応策を立案するための基礎研究として,気象庁が公開している気候変動予測データを用いて,積雪寒冷地の地域レベルにおける気象水文分布特性を推定し,熱・水収支解析モデル,流出モデルによりダム流域における河川水温の将来変化を定量的に評価した.フラックスの河道追跡によるシミュレーション結果から,ダム流域の環境基準地点において気候変動により4~10月で水温上昇が顕著となり,5月では現在気候に比べて最大6.6℃水温が上昇することが把握された.

  • 大沼 友貴彦, 金 炯俊, 芳村 圭, 新田 友子, 大石 龍太, 高田 久美子
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_43-I_48
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     第6次結合モデル相互比較プロジェクトCMIP6の陸域過程に着目した新しいプロジェクトとして,LS3MIP(The Land Surface, Snow and Soil moisuture Model Intercomparison Project)があり,2018年5月の時点で各陸域モデルグループがモデル実験の準備を行っている.本研究では,LS3MIPの概要およびLS3MIPの必須実験の一つである20世紀陸域シミュレーションの実験設定について説明する.加えて,20世紀陸域シミュレーションのテスト実験を陸面過程モデルMATSIROを用いて行い,その初期解析結果からみられるMATSIROが計算する流出量,積雪被覆率,土壌水分,蒸発散量の20世紀の変化傾向とその要因について報告する.トレンド解析の結果,北半球の大半の地域で水収支は増加傾向にあったが,ヒマラヤ山脈の周辺では減少傾向にあり,これは同地域で特徴的な降水量の減少傾向によるものと考えられた.

  • 庄司 悟, 岡﨑 淳史, 芳村 圭
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_49-I_54
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     気候復元により長期間にわたって気候変動の解析が可能になる.将来の気候予測のためにも過去の気候変動を捉えることは重要である.本研究ではOkazaki and Yoshimura (2017)の手法に基づき,アイスコア,サンゴ殻,樹木年輪セルロースの酸素同位体比データを用い,データ同化により過去千年の気候場を算出した.プロキシの同位体比の同化により他の気候要素が拘束されることを確認した.気候場の年々変動の再現にはプロキシデータの数量による影響がある.ただ,プロキシデータ量が多い程,解析値に与える影響が大きいわけではなく,用いるプロキシデータが全体の約20%程度でも全てのプロキシデータを用いた場合と同様に地上気温などの年々変動を再現できる可能性が示唆された.ただ,プロキシによる解析値への影響は時空間的に異なる.特に,中部太平洋熱帯域のサンゴ殻による影響が大きいことが分かった.

  • 細井 遵敬, 山田 朋人
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_55-I_60
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     地球の気候は数万年から十数万年の周期で氷河期-間氷期サイクルを繰り返していることがわかっている.このサイクノレにおいて,気温の上昇時と下降時に要する時間は異なっている.

     本研究ではBudykoやSellersが指摘した多重平衡解に着目し,地球が温暖化する場合と寒冷化する場合の気温変動の仕方を海域・陸域を考慮したエネルギーバランスモデルを用いることで調べた.その結果,陸域を考慮することは多重平衡解を助長し,南北方向の熱拡散と太陽放射の季節性の存在は多重平衡解を抑制することがわかった.

  • 神谷 秀明, 沖 一雄, Hyungjun KIM , 小林 秀樹
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_61-I_66
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     水・エネルギー・炭素循環を解くための全球モデルの多くは,平板近似を用いた放射伝達スキームを導入している.人間活動に伴う森林の増減や北方域での植生―気候フィードバックを精度よく解くために,放射伝達スキームにおける森林構造をより適切に表現することが求められる.本研究では,高解像度3次元放射伝達モデルを用いた感度実験を通して,森林構造を表現する 5 つのパラメータについて放射伝達パラメータとの関連性を考察した.

     その結果,放射伝達パラメータと樹冠被覆率との非線形性を適切に表現すること,樹冠長さを新たなパラメータとして導入することの意義を示した.本研究は,今後ますます集積が期待される森林構造情報を放射伝達スキームに取り入れるための重要な知見を提供する.

  • 瀬戸 心太, 峯 浩然
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_67-I_72
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     マイクロ波放射計GMIとAMSR2から,地表水指標Normalized Differential Frequency Index(NDFI)を算出し,0.1°格子・日単位での全球地表水マップを2013~2017年の5年間分作成した.作成にあたり,NDFIの日内変動やセンサ間バイアスについての補正を行った.作成した地表水マップについて,グローバルデータを用いた基礎的な検証を行った.日本付近で,NDFIの5年平均と,Global Surface Waterによる冠水率の空間分布には,高い正の相関がみられた.NDFIと,Yesterday’s Earth at EORCによる氾濫面積率の月変動は,大河川の河道沿いなどに正の相関を示す地域が広くみられた.日単位のNDFIが突然上昇する現象は,乾燥地域を中心にみられる.それらの地域の多くでは,NDFIと先行降雨指数の日変動が,正の相関を示していることから,外水よりも内水の増加を表しているとみられる.

  • 尾田 茂彦, 松浦 拓哉, 下坂 将史, 手計 太一
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_73-I_78
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,富山県内64観測所における1973~2015年まで43年間の降雪量と積雪深の長期的な時空間分布特性を明らかにすることである.降雪期間に相当する12月1日から翌年3月31日の期間(冬期間)を対象に,気温,降雪量,積雪深データを利用し,Mann-Kendall検定を用いてトレンド解析を行った.

     トレンド解析の結果,降雪と積雪現象に大きく影響する冬期間の最低気温が上昇している観測所は45か所あり,そのうち,有意水準5%で上昇しているのは14か所あった.さらに平均日降雪量,平均積雪深が減少している観測所はそれぞれ50か所,47か所あり,そのうち有意水準5%で減少しているのはそれぞれ25か所,18か所あった.特に平野部において,降雪量と積雪深の減少傾向が顕著であった.一方,山岳域においては,有意性のある増減傾向は認められなかった.

  • 野田 洋二, 皆川 朋子, 一柳 英隆, 小山 彰彦
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_79-I_84
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     本論文では,九州地方における河川水温の経年変化の実態を把握し,その要因を考察した.水文水質データベースの1971~2016年の水温データを用いて水温上昇率(℃/年)を算出した結果,平均値は0.034℃/年であり,有意な上昇傾向は132地点中35地点で検出され,最大値は0.109℃/年であった.水温上昇率は人口密度が高い水系や年平均流量が小さい水系において大きい傾向が見られた.また,水温上昇率と堰の位置との関係を分析した結果,観測点から上流2000m以内の堰が下流の水温上昇に影響を及ぼしていることが示され,これらの地点では特に5~11月における水温上昇率が高く,各月の平均値が0.060〜0.087℃/年であった.

  • 野原 大督, 鈴木 俊亮, 佐藤 嘉展
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_85-I_90
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     吉野川流域を対象に,将来の河川流量の変化がダム利水操作に及ぼす影響を分析した上で,将来気候下での適応策の方向性の分析を行った.気象研究所MRI-AGCM3.2Sの現在気候実験と21世紀末気候実験の気候推計データを入力値としたダム群の利水操作モデルを組み込んだ流出計算により,両気候における河川流量を推定し,流況の変化がダム利水操作に与える影響を分析した.その結果,吉野川流域では,特に夏季の流量の低下に伴い早明浦ダムの平均貯水量が低下するとともに,年渇水被害値が増大する可能性が示された.適応策の方向性を検討した結果,ダム貯水池の容量再配分や弾力的操作の導入による利水操作の増大によっても渇水被害値は多少減少するが,水需要を抑制する効果の方が大きい可能性が示唆された.

  • 中村 みゆき, 渡部 哲史, 川崎 昭如
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_91-I_96
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     気候変動を考慮した洪水氾濫シミュレーションと人口減少を反映した複数の資産分布変化シナリオを組み合わせることによって洪水被害の将来変化を推定した.気候変動と人口減少が及ぼす影響を比較するとその傾向は流域によって異なり,流域特性に応じた治水が必要であることが示唆された.また降水量の時間的・空間的分布も洪水被害に大きな影響を及ぼすことが示され,日合計降水量のみを基準として治水を行うことの危険性が明らかになった.資産分布変化シナリオ間で比較すると,中心市街地への資産集中が洪水リスクを増加させる可能性や,対象とする洪水の規模によって治水効率が異なる可能性があることが示され,都市計画において治水を考慮する必要性が示唆された.

  • 玉川 勝徳, 長谷川 聡, Maksym GUSYEV , 牛山 朋来, Bhuwneshwar SAH , 伊藤 弘之, 小池 俊雄
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_97-I_102
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     本研究は気候変動による将来の降雨予測のモデル間での不確定性と要因理解のための方法論を検討した.対象地域は,全国に長期間の均質な53地点の地上観測雨量データを持ち,北部と中部で異なる気候特性を持つベトナム国とした.CMIP5のモデルセレクション,バイアス補正,統計的ダウンスケーリングをし,気温と降雨量のモデル間の不確定性に対する定性的,定量的な評価をした.季節降雨特性の異なる北部と中部を対象にモデル間での影響を考察し,気温では将来モデル間での不確定性が低いこと,北部の降雨は将来の気圧場の影響,中部の降雨は将来の北東モンスーンの北成分の強弱の影響と考察した.

  • 原田 守啓, 丸谷 靖幸, 伊東 瑠衣, 石崎 紀子, 川瀬 宏明, 大楽 浩司, 佐々木 秀孝
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_103-I_108
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     本研究は,水平解像度20kmの領域気候モデルから段階的な力学ダウンスケーリングを行う際に,地形モデルの選択が,降水の空間分布や豪雨による洪水流出に与える影響を検討することを目的とする.気象庁55年長期再解析(JRA-55)をもとに水平格子間隔20km,5kmの2段階のネスティングを行った.5km実験においてはGrid mean地形モデルとEnvelope Mountain地形モデルを用い,中部地域における降水量の分布傾向の違い及び長良川流域における洪水流出解析結果に与える影響を検討した.その結果,山地地形がより強調されるEnvelope Mountain地形モデルでは,平野から山地に移行するエリアに多くの降水が集中し,内陸部での降水量が減少する傾向があること,長良川流域においては降水イベントの降水量がやや過大評価傾向となり,洪水ピーク流量では,過大評価傾向がより強調されることが確認された.

  • 丸谷 靖幸, 原田 守啓, 伊東 瑠衣, 川瀬 宏明, 大楽 浩司, 佐々木 秀孝
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_109-I_114
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     本論文は,地域スケールで気候変動影響評価研究の実施に必要となる,気候モデルの非線形性応答による不確実性および影響評価モデルの不確実性を明らかにすることを目的とする.そこで本研究では,長良川流域を研究対象流域とし,過去に発生した洪水事例を対象に,再解析データJRA-55を基に力学ダウンスケーリング実験(力学DS実験)を行うことで空間解像度をJRA-55 DS20 km,DS5 km,DS2 km,DS1 kmと変化させ,分布型流出モデルと貯留関数法流出モデルのインプットデータとすることで,気候モデルおよび流出モデルの不確実性を評価した.その結果,JRA-55 DS5 kmを除き,その他の力学DS実験結果をインプットデータとした流出解析では,流出モデル間でピーク流量に大きな差が見られなかった.DS5 kmでは,流域周辺や流域の一部分で降雨が発生していたため,流域平均雨量を用いる貯留関数法流出モデルでは分布型流出モデルよりも過大評価したことが分かった.

  • 植村 郁彦, 舛屋 繁和, 吉田 隆年, 大村 宣明, 千葉 学, 戸村 翔, 山本 太郎, 時岡 真治, 佐々木 博文, 濱田 悠貴, 星 ...
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_115-I_120
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     2016年8月北海道豪雨激甚災害では,連続した台風の上陸や観測記録を上回る降雨が発生した.近年,このような気候変動の影響の顕在化が懸念され,気候変動を考慮した治水対策が必要とされている.これまでの治水対策は過去の観測データに基づき整備目標を定めてきたが,将来の気候変動下で発生する事象への対応には,気候予測データの活用が必要不可欠である.本研究では,気候予測データの治水対策への活用に向け,水平解像度の異なる2つの大量アンサンブル気候予測データから年最大流域平均雨量を算出し,実績降雨との累積相対度数の比較により再現性を評価した.気候予測データは実績降雨を高い精度で再現していることを確認した.また,対象流域では将来気候下において年最大流域平均雨量が約1.4倍に増加することを確認した.

  • 舛屋 繁和, 植村 郁彦, 吉田 隆年, 大村 宣明, 千葉 学, 戸村 翔, 山本 太郎, 時岡 真治, 佐々木 博文, 濱田 悠貴, 星 ...
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_121-I_126
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     近年,我が国においては気候変動の影響と思われる大災害が頻発している.そのため,気候変動の影響を考慮した治水計画の立案は喫緊の課題である.現在の我が国の治水計画は,実績降雨から求めた確率雨量を基に立案されているが,気候変動を考慮した治水計画を立案するためには,気候モデルの出力降雨から確率雨量を算出する必要がある.

     本研究では,大量アンサンブル気候予測データであるd4PDFを用いて,各アンサンブルメンバーから得られる確率雨量を実際に起こる可能性があった確率雨量の一つと捉え,取り得る幅を考慮した確率雨量の算定手法を示した.同手法で現在気候および気候変動後の確率雨量を算定した結果,Gumbel分布による将来の確率雨量は十勝川帯広地点で1.33倍,常呂川北見地点で1.33倍,GEV分布による将来の確率雨量は十勝川帯広地点で1.37倍,常呂川北見地点で1.41倍となった.

  • 渡部 哲史, 中村 みゆき, 内海 信幸
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_127-I_132
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     本研究では大規模アンサンブルデータに適したバイアス補正手法として,バイアス保存とトレンド保存を両立する手法を提案し,既往の手法との比較を行った.全国の降雨特性が異なる複数地点で手法の検証を行ったが,概ねどの地点においても提案した手法が従来の手法よりも良好な補正結果を示した.特に,従来の手法では補正結果が顕著に過大になる地点があったが,提案した手法ではそのような過大推定は見られなかった.また,時間単位補正と日単位補正を比較した結果からは,対象とする時間単位以外には誤差が大きく,特に時間単位の補正結果を集計した日単位は非現実的な値となることがあることが示された.流域を対象とした補正結果からは,大規模アンサンブル実験結果の補正により各流域で設定された計画降雨が良好に再現されることが示された.

  • 児島 利治, 丸谷 靖幸, 原田 守啓
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_133-I_138
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     本研究では岐阜県を対象に,アンサンブル気候予測データベース(d4PDF)現在気候データと地上雨量計による実観測データの極値を比較し,降雨継続時間t毎の簡易補正式を提案する.降雨継続時間tにおけるd4PDFのT年確率降雨量をDt’,地上雨量計のT年確率降雨量をGt’Tとすると,1時間降雨に対してはG1’T = 1.74 D1’T,168時間降雨に対しては G168’T = 0.74 D168’Tというバイアス補正値が得られた。RMSEはそれぞれ18.1mmと平均値の22%,168mmと平均値の30%程度であった.短期降雨に対しては十分,長期降雨に対しても斜面災害の予測目的には十分対応可能な精度が得られたと考えられる.

  • 田中 裕士, 立川 康人, 萬 和明, 市川 温
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_139-I_144
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     粒子フィルタを用いて,時々刻々,貯留量を更新しつつ河川流量を予測する実時間流出予測システムを構築し,多地点の観測情報を導入する効果を分析した.5つの流量観測地点がある利根川上流域の岩鼻上流域(1221km2)を対象として貯留関数法による降雨流出モデルをCommonMPを用いて作成し,最下流端の観測流量のみを用いてすべての流出モデルの貯留量をデータ同化する手法,5地点の観測流量を用いてすべての流出モデルの貯留量をデータ同化する手法,5地点の観測流量を用いて各地点の直上流の流出モデルの貯留量をデータ同化する手法の3つの観測情報の導入手法について,予測精度の違いを分析した.その結果,予測精度および計算量の観点から,各観測地点の直上流の貯留量をデータ同化する手法が適切であることがわかった.

  • 小田 航平, 入江 政安, 戸井 博彬, 石塚 正秀, 田中 耕司
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_145-I_150
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     流域における物質輸送の定量的把握のためのモデルの高精度化は気候変動への適応策の検討において喫緊の課題である.分布型流出モデルはその検討に有用であるが,パラメータ数も多く,値に幅もあるため,設定には多くの労力を要する.そこで,本研究では分布型流出モデルのアジョイントコードを作成し,アジョイント法によるパラメータ推定法を構築した.構築したモデルを揖保川に適用し,粗度係数,透水係数,貯留定数等の空間分布を推定した.その結果,主に総降雨量が多い中流部から下流部の同化地点にかけてパラメータが大きく修正されるとともに,各パラメータの特性に応じた空間分布となった.本手法による観測流量の同化によって,空間的にばらつきを持ったパラメータ推定が可能であることが示された.

  • Saritha Gopalan PADIYEDATH, Akira KAWAMURA, Hideo AMAGUCHI, Gubash AZH ...
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_151-I_156
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     Parameter uncertainty analysis of rainfall-runoff models is very important especially in urban watersheds due to the high flood risk in these areas. Among the different methods available for uncertainty analysis, bootstrap method gained popularity in view of its flexibility. Hence, this study aims to conduct the parameter uncertainty analysis of the urban storage function (USF) model, a storage function model specifically developed for the urban watersheds, using the model-based bootstrap method. We successfully evaluated the uncertainty of USF model parameters and the results exhibited that the 95% confidence interval of all parameters is wide compared with the search range during parameter estimation except for two parameters. Moreover, the parameters with the highest and least uncertainties were identified. Further, model simulation efficiency using the estimated parameters was found to be high with a Nash-Sutcliffe Efficiency value of 97%. Lastly, the effect of parameter uncertainty on model simulation uncertainty was analysed and found that the SCE-UA method along with the model-based bootstrap method can predict, on an average, 68% of observed data within the simulation uncertainty range of USF model.

  • Menaka REVEL, Dai YAMAZAKI, Shinjiro KANAE
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_157-I_162
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     Data assimilation techniques are becoming popular in estimating hydraulic variables in ungauged basins with the recent advancements in the satellite technology. The Local Ensemble Transformation Kalman Filter (LETKF), which limits the assimilation domain by a “local patch”, is an efficient method for a global-scale data assimilation, but the optimization of the size and weighting function of the local patch is still challenging especially for river hydrodynamic models. Here we propose a method to estimate a reasonable local patch parameters, by fitting a Gaussian semi-variogram to the transformed Water Surface Elevation (WSE) data and defining the autocorrelation length for each river pixel. WSE simulated by CaMa-Flood hydrodynamic model was de-trended, seasonality removed and standardized to make the data suitable for semi-variogram analysis. A case study over the Amazon mainstem suggested that the auto-correlation lengths for upstream and downstream of Obidos GRDC location were derived respectively as 1886.69 km and 688.66 km. The semi-variogram analysis indicated that the river pixels of entire mainstream of the Amazon are correlated together. The estimated auto-correlation length and weighing function could be useful to determine the optimum parameters of the LETKF local patch.

  • 山崎 大, 冨樫 冴佳, 竹島 滉, 佐山 敬洋
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_163-I_168
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     基盤地図情報 標高データと国土数値情報 水域データを用い,日本全域1秒(約30m)解像度で各ピクセルにおける地表水流下方向を表す表面流向データを整備した.標高データに含まれる誤差などのために広域での表面流向データ開発は困難と考えられていたが,最急勾配法で算定した表面流向を必要に応じて逆転させるアルゴリズムの開発によって効率的な表面流向計算を実現した.入力データの高精度化と計算手法の改良により,開発した日本域表面流向データは既存のHydroSHEDSなどと比較して正確かつ詳細な河道ネットワークを表現することを確かめた.また,表面流向に加えて上流集水面積・水文補正標高・河道幅などの付加的データも,変数間の整合性が取れるように整備した.開発した表面流向データは Web で公開予定であり,水工学に限らず多様な地球科学分野への応用が期待できる.

  • 徳田 大輔, Eunho KOO , 金 炯俊
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_169-I_174
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     近年深層学習モデルを洪水予測に適用した事例が報告されている.本研究では,平成27年9月関東・東北豪雨における鬼怒川の水位を予測する実験によって,この深層学習モデルが学習期間を超える規模の洪水イベントの予測にも適用可能であることを示した上で,モデル構造の決定方法と入力データの選択方法について議論を行う.モデル構造の決定には期間全体の誤差のみならず洪水イベントの最高水位を考慮する必要があること,予測精度の向上に寄与する水位,雨量観測所の数は予測対象流域,観測所によって異なることを示す.

  • 清水 啓太, 山田 正, 山田 朋人
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_175-I_180
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     総合確率法は,計画規模相当の確率流量を統計的に推定する手法として,利根川を始めとした我が国のいくつかの河川流域において適用されている.一方,統計的推定は,使用するデータの総数に応じて不確実性を内包する.このため,著者らは,水文統計量に内在する不確実性を定量化するために,確率限界法検定に基づく信頼区間を導入した水文頻度解析手法を提示した.本研究では,同手法の応用として,総合確率法の拡張を行い,年最大洪水ピーク流量の確率分布に関する信頼区間を構成するとともに当該信頼区間を用いた確率洪水ピーク流量の不確実性評価手法を示す.

  • Mohamad Basel ALSAWAF, Kiyosi KAWANISI
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_181-I_186
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     In this study, we provide a contribution toward monitoring the unsteady behavior of discharge-stage hysteresis in a mountainous river. In order to monitor the unsteady patterns of river discharge hysteresis estimated by means of a novel fluvial acoustic tomography system (FATS), we therefore observed the corresponding river water surface slopes hysteresis during different rainfall events. We found that the temporal variations in water surface slope-stage during different scales of rainfall events resulted in different patterns of hysteresis loops which can be classified into three main categorizes: (i) no hysteresis, (ii) clockwise hysteresis, and (iii) counterclockwise hysteresis. In the case of low intensity rainfall events, no hysteresis behavior was detected. Meanwhile, for medium and high intensity rainfall events resulted in either clockwise or counter clockwise (WS-WL) hysteresis patterns. Finally, for medium and high intense hydrological events, water surface slope become almost constant after passing a certain level.

  • Magfira SYARIFUDDIN, Satoru OISHI, Haruhisa NAKAMICHI, Masato IGUCHI
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_187-I_192
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     Mount Sakurajima is one of the most active volcanoes in the world, where its frequent eruption causes the occurrence of debris flows every year. This paper discusses the fundamental aspect of spatial and temporal rainfall variability in Mt. Sakurajima by using X-band polarimetric (multi parameter) RAdar Information Network (XRAIN) related to debris flow occurrence. The analysis used XRAIN data from May 2015 to April 2016. The Meiyu-baiu rainfall phenomenon strongly affects the seasonal variability of rainfall in Mt. Sakurajima, which increases the precipitation in June to July. There are the possibilities of the beam blockage and the Vertical Profile Reflectivity problems to underestimate the XRAIN rainfall in Arimura and northern area of Sakurajima for a total of more than 1000 mm depth annually. However, there is no debris flow event reported in northern part during 2015 despite thicker accumulated volcanic ash, which may indicate that this area indeed receives less rain throughout a year. Most of the debris flows happen because of more than 9 hours long rainfall events, which validates the importance of rainfall on debris flow occurrence in Sakurajima.

  • 永島 崇, 木内 豪
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_193-I_198
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     プノンペン市街地における浸水被害を軽減するために,現状の短時間降雨の特性を解析した.現在プノンペン市で排水機構設計に用いられている計画降雨強度式と比べると,実際の降雨現象はより短時間に集中し,強い雨の頻度も多いことが分かった.次に,全球気候モデルを用いて将来降雨の予測を行った.将来的な日降雨量に増加,減少の傾向は見られなかったが,1時間降雨では明らかな増加傾向を示し,現在の計画降雨量の20~80%の増加が見込まれると推定された.また,日単位以下の降雨データの不足を受け,高解像度のデータセットMSWEPが利用できるかを検討した.MSWEPは他の再解析データに比べて再現性は高いが,メッシュサイズによる降雨量減衰と降雨継続時間の関係が不明確であるため,短時間降雨量の定量化に利用することは難しいと結論づけられた.

  • 宇都宮 好博, 野中 浩一, 山口 正隆, 井内 国光, 畑田 佳男, 日野 幹雄
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_199-I_204
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     本研究では,歴史資料を含む290年間の琵琶湖における湖水位と328年間の肱川大洲地点における洪水位および146年間のVeniceにおける潮位偏差・潮位の各年最大値資料の4事例に対する傾向変動解析の結果,潮位資料を除き,有意な傾向変動が確認されない3事例に対する極値統計解析(LSMモデル)に基づいて,つぎの知見を得た.1) 歴史資料を含む年最大湖水位資料から推定した琵琶湖の確率湖水位とその標準偏差のうち,とくに標準偏差は近年資料(134年間)の場合より減少し,推定値の統計的信頼性が向上する.2) ダム建設により肱川大洲地点において100年確率洪水位が約2m低下したと推測される.3) Veniceにおける再現期間500年の確率潮位偏差の推定値は過去約1200年間の異常潮位の生起状況からみても,おおむね妥当と考えられる.

  • 北野 利一, 田中 耕司, 上野 玄太
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_205-I_210
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     点推定を土台に理論構築されている最尤法とは異なり,ベイズ手法は,推定誤差に対して中心極限定理の仮定をすることがなく,したがって,母数推定は,確率分布で与えられるところに最大のメリットがある.また,母数分布は,サンプリングされた乱数による集合で表現されることも,MCMC等を用いたベイズ推定の特徴となっている.しかしながら,母数が確率分布で与えられることは,代表値が欲しい技術者にとって,悩ましい問題になる.本研究では,降水量の極大値の予測分布を検討するとともに,母数の代表値の決め方も提案する.

  • 篠田 昌弘, 宮田 喜壽
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_211-I_216
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     盛土等の土構造物や自然斜面は,降雨によって崩壊する可能性が高い.そのため,土構造物の設計ではある再現期間における確率降水量を設定して安定性を照査する.この確率降水量は観測データの蓄積により増減する可能性があるが,その影響は設計上考慮されていない.本研究では,地域気象観測所と地上気象観測所の観測データを用いて,観測データの蓄積に伴うある再現期間における確率降水量の変化を調べた.地域気象観測所の観測データを用いた統計解析から,確率降水量が増減する地域が推定できた.さらに,地上気象観測所データを用いた統計解析から,特定の地点における確率降水量の増加が判明した.

  • 葛葉 泰久, 千田 眞喜子
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_217-I_222
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     水文データ,特に極値的な時系列データのモデル化について検討した.まず,年最大1時間降水量がフラクタルではなく,ホワイトノイズであることを確認し,それを生成するための確率分布として,何が適当かを検討した.結果として,裾の厚い分布が好ましいのではあるが,極値を表現する分布としてよく使われるLévy分布は裾が厚すぎ,GEVやGumbel分布が適当であることを確認した.次に,水質データ時系列データがフラクタルであることを確認し,非整数ブラウンモーションなどのフラクタルモデルの適用を検討した.結果として,乱数発生時にLévy分布を用いる非整数Lévyモーション(fLm)でも構わないのではあるが,GEVやGumbel分布を用いる方が好ましいことを示した.

  • 越田 智喜, 竹森 史郎, 吉田 一全, 三浦 裕司
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_223-I_228
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     寒候期のレーダ観測において 0℃付近に出現するブライトバンドは,降水量の過大評価域として知られる.本研究では,Xバンド MPレーダ雨量計の降水観測精度を向上させるため,ブライトバンド領域のレーダ反射因子の補正を実施した.補正方法は,反射強度因子でブライトバンド領域を判定し,周辺のレーダ反射因子による線形内挿を用いた.2014年11月から2015年4月の東京の降水について補正を実施したところ,1分雨量観測で評価した場合ブライトバンドが検出された時間について,Xバンド MPレーダ雨量計による計測雨量の過大傾向は解消され,降雨の観測精度が向上した.10分雨量で評価した場合はレーダサイトの近傍において観測精度向上が確認できた.

  • 大屋 祐太, 山田 朋人
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_229-I_234
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     2015年9月に鬼怒川流域に大きな洪水氾濫をもたらした関東・東北豪雨を対象に,ドップラーレーダを用いた対流雲の空間分布に関する分析を行った.具体的には複数のX-MPレーダによる観測データを基に,MUSCAT法と呼ばれる変分法による3次元風速場の推定を行った.得られた結果を用いて時々刻々と生成・移動する対流雲とその内部および周囲の3次元風速場の特徴を整理した.さらには,線状降水帯が存在する時間帯内で対流雲の空間的な間隔の時間発展について分析を行ったところ,約10km間隔での活発な対流雲と50km程度まで広がる対流雲が存在していた.

  • Hanggar Ganara MAWANDHA, Satoru OISHI
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_235-I_240
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     Radar-based Quantitative Precipitation Estimation (QPE) is primarily stated as techniques representing the best-fit rain rate measured at the ground. The current QPE method relies on either CAPPI maximum value or lowest radar tilt value. In fact, some discrepancies due to lag time and spatial variance remain found which cause the errors systematically propagated over a period. Furthermore, uncertainty factors on a void interspace due to the existence of a gap between available radar beams and ground have caused misleading in determining the actual rain rate. The real-time QPE model in this study is intended to improve the nowcasting rainfall predictor system. The multivariate projection model is used to predict the actual rain rate through the entanglement of physically precipitation factors such as wind shear, relative humidity, evaporation rate, and vertical moisture flux obtained from atmospheric sounding data. The vertical profiles of rainfall at various CAPPIs are collected and used as the response variable by the use of physical factors as a predictor variable to obtain the parameter coefficient value. This value interprets the signature of rainfall at the observed CAPPIs which then could be used for actual rainfall projection at the lower altitudes by real-time. Finally, the validation is taken through radar-gauge cross-correlation representing the actual rain rate. The model is performing well when it has a high correlation, least bias, and zero lag time.

  • 下妻 達也, 瀬戸 心太
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_241-I_246
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     過去の強雨の再現期間計算や降水イベント解析のため高精度な面的降水量データが必要である.著者らは既往研究で国土交通省のXバンド MPレーダネットワーク(XRAIN)に着目して豪雨イベント解析を行ったが,その際にXRAIN降水強度の過大評価についてGPM主衛星二周波降水レーダDPRデータを使った補正を行っている.山岳部やレーダサイト付近にて降水量の低下が確認されたが,結果検証が十分で無い問題がある.そこで,本研究ではXRAINの過大評価補正を行ったデータについて,気象庁雨量計及び気象庁全国合成レーダGPVデータによる検証を行った.結果,XRAIN過大評価補正の効果が確認された.

  • 若月 泰孝, 因幡 直希, 山口 弘誠, 中北 英一
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_247-I_252
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     Xバンドマルチパラメータレーダから雨滴粒径分布(DSD)と降雨量を精度よく推定するために,山口他が提案した方法(山口法)を元に,より高度化したアルゴリズムを開発した.山口法では,レーダ反射因子(Zh)と伝搬位相差変化率(KDP)からDSDパラメータを推定するが,降雨減衰が強い場合にZhが過小評価される.本研究では,KDPと反射因子差(ZDP)からDSDパラメータを推定するアルゴリズムを導入した.擬似観測実験の結果,強い降雨減衰下では,新手法の方がDSDパラメータや降雨量を山口法よりも精度よく推定した.これは,ZDPと比べてZhが強い降雨減衰の影響を大きく受けることによる.Xバンドマルチパラメータレーダと雨滴粒径分布計の観測データに適用した検証でも,より高精度での推定が確認された.

  • 勝山 翔生, 谷口 健司, 中村 和幸
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_253-I_258
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     観測史上最大規模の降雨の発生や,地球温暖化に伴う大雨の強大化が懸念されるなか,実効性のあるソフト対策の実現のため,高精度な降雨予測情報が求められている.一方,決定論的な数値気象予測の精度は十分ではなく,気象庁はメソアンサンブル予報システムの試験運用を実施中である.本研究では,データ同化の一手法である粒子フィルタを応用したアンサンブル数値予測情報の改善のための基礎的な知見の獲得に取り組んだ.分散共分散行列を変化させた粒子フィルタによる予測値の修正では,適切な分散共分散行列の選定がアンサンブルの退化の回避に重要であるとの知見を得た.また,複数時刻の観測値の活用により改善度が高まる傾向がみられた.複数地点を対象とした修正では,単一地点を対象とした場合よりもスレットスコアに顕著な改善がみられた.

  • 佐野 哲也, 佐藤 晋介
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_259-I_264
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     局地的大雨の現況監視の高度化と形成過程の解明を目的として,全地球測位航法衛星システム(GNSS),ひまわり8号,X-バンドマルチパラメータレーダー,フェーズドアレイ気象レーダーといった複数のリモートセンシング観測データを用いて,夏季の大阪平野で発生する局地的大雨の形成過程を調べた.湿潤な環境場において,南側山地からの雲の移流および平野上に発生した積乱雲に伴って12個の孤立した降水域が形成された.それぞれの降水域の寿命は17~103分と大きな幅を持ち,地上付近にもたらされた時間積算降雨量も2.3~57.7mmと大きく異なっていた.降水域の寿命については,その近傍のGNSS可降水量の時間変化と関係性が見られた.そして,高時間分解能の複数の観測データの時間変化に基づいた,局地的大雨の発生ポテンシャルの推定と地上降雨発生の事前の検知の可能性が示唆された.

  • 中川 勝広, 片山 勝之, 増田 有俊, 是津 耕司, 中北 英一
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_265-I_270
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     近年多発する都市部での集中豪雨は,数十分~1時間の短時間で内水氾濫を引き起こし,都市機能を麻痺させることから,大きな社会問題となっている.このような災害を防止するため,大阪と神戸に設置されているフェーズドアレイ気象レーダを用いて,渦管による局地的豪雨探知手法を検討した.フェーズドアレイ気象レーダは,30秒ごとに3次元の降雨観測およびドップラー観測を行うため,急発達する積乱雲内部に形成される正負ペアの渦度をもった渦管を検出することができる.本研究では,フェーズドアレイ気象レーダの観測値から30秒ごとに250mメッシュのCAPPIデータを作成し,渦管の検出方法を検討した.また,降雨強度50mm/h以上の豪雨が10分以上継続する組織化積乱雲を探知することを目的に,渦管の時空間密度を用いた局地的豪雨探知手法を検討した.

  • 若月 泰孝, 五十嵐 大地, 吉田 翔, 高田 望
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_271-I_276
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     気象庁高解像度降水ナウキャストは,最先端の現業の短時間降水予測である.しかし,予測誤差の変化に追従して対応する修正や予測の不確実性の考慮が十分でない.そこで本研究では,補外予測をベースとした直近の過去の複数の予測結果を分析し,「経験上最も確からしい予測」を選択する方法を検討した.さらに,過去の予測の不確かさの情報をもとに,予測を補正するスキームも導入した.本研究では,非常に簡便な予測手法をとっているが,気象庁高解像度降水ナウキャストと同等程度の予測精度を示した.線状降水帯事例に対しては60分後予測の期間積算雨量の最大値の形状をより的確に表現し,降水の変化が激しい事例に対して降水の発生に対する高い応答性を示した.

  • 山口 弘誠, 堀池 洋祐, 中北 英一
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_277-I_282
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     平成29年7月九州北部豪雨の線状降水帯に対して,アンサンブル予測実験およびデータ同化実験を行った.アンサンブル予測実験において,アンサンブル予測平均では約半量程度の過小予測であったが,30メンバー中2メンバーは高い予測精度を有していた.その2メンバーを解析したところ,背振山地の南側と北側から回り込む風の収束によって,背振山地を乗り越えてきた高湿気塊が持ち上げられて豪雨をもたらしたことが明らかになった.データ同化実験では,2本の並列する線状降水帯の時間帯においてXRAINのデータを同化し,一方の線状降水帯からもたらされる外出流がもう一方の線状降水帯を強化している機構が確認された.

  • Wendi HARJUPA, Eiichi NAKAKITA, Yasuhiko SUMIDA, Aritoshi MASUDA
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_283-I_288
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     The objective of this study is to verify the capability of Rapid Scan Observation (RSO) of Himawari-8 data for a deeper understanding of the development of cumulus cloud, which can generate Guerilla-heavy rainfall (GHR). The first approach in this verification is utilizing the Rapid Development Cumulus Area (RDCA) index, which is generated by RSO, for estimating cumulus life stage. The estimation of cumulus life stage will be approached by comparing between RDCA index and cumulus life stage estimated by radar. Based on the first trial of the comparison, we found the possibility of RDCA index to estimate the cumulus life stage, as we discovered that there is a good correlation between RDCA index and cumulus life stage in our study case. In the second approach, we compare the radar-estimated hydrometeor type with cloud top conditions retrieved from RSO in the earliest stage of rain. The three types of brightness temperature difference (BTD) using band no. 11, 13 and 15 of RSO data are used to know the cloud condition by distinguishing water and ice phases in a cloud in the baby-rain stage. In this first trial of one case analysis, we found a potential of utilization of RSO to estimate cloud phase in the early stage of cumulus cloud since there is a good spatial correlation between them.

  • Rocky TALCHABHADEL, Hajime NAKAGAWA, Kenji KAWAIKE
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_289-I_294
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     A study of the variability of precipitation in space and time has been carried in southwestern Bangladesh. Quality controlled homogenous daily precipitation data of 9 stations for the period of 1981-2010 are used for the study. A total of 9 indices and monthly mean are examined. Mann−Kendall test in conjunction with Theil−Sen’s slope method has been used to reveal the significance of trends and quantify their magnitudes. A significant increasing trend in consecutive dry days is observed. An increasing trend of annual maximum consecutive 5-day precipitation is also observed. A projected trend in near future (2020-2050) is analysed using three general circulation models under two representative concentration pathway scenarios. In coming days, it is anticipated to have wetter monsoon and drier winter.

  • 鈴木 紹晟, キム スンミン, 立川 康人, 市川 温, 萬 和明
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_295-I_300
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     豪雨の発生予測に対するニューラルネットワークの活用を検討するため,複数の観測地点の時系列情報から作成した時空間2次元データに対して畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network: CNN)を応用した降雨予測モデルを考案した.降雨予測モデルでは,降雨判定の基準とする降水量の閾値と予測リードタイムを対象として,予測対象時間の降水量が閾値以上の値かどうかの予測精度を複数の予測設定で評価した.入力データには複数の気象変数を使用し,降水量を入力データとしない降雨予測モデルについても検討した.予測精度の違いとして,リードタイムが長いほど予測精度が下がること,降水量の閾値が高いほど,それ以上の値となるかどうかの降雨の予測が難しくなることが分かった.降水量の情報を用いない予測モデルとの比較検討からは,降水量の情報が降雨予測の精度に対し影響を持っていることが判明し,他の気象変数にも降雨の予測に関連する情報が含まれていることが示唆された.

feedback
Top