土木学会論文集D2(土木史)
Online ISSN : 2185-6532
69 巻 , 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
和文論文
  • 神代 方雅, 神代 順平, 長内 戦治, 田中 実, 戸巻 昭三
    2013 年 69 巻 1 号 p. 1-15
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
     小樽港の港湾荷役に活用された運河沿いの倉庫群は,明治から大正にかけて北海道の物資需要を制する巨大な流通センターを形成した.しかし,このかげには過酷な労働条件に耐えた港湾労働者の汗と,その生活に支えられて現在に至っていることを,世間一般にはその実態があまり知られていない.
     そこで本論文は,小樽港における港湾労働の歴史的な過程を,小樽運河における倉庫と艀荷役を通して考察するものである.
  • 伊東 孝祐, 大沢 昌玄, 伊東 孝
    2013 年 69 巻 1 号 p. 16-30
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
     本研究は,帝都復興事業における執行体制の変遷過程を組織および職員の観点から明らかにするとともに,復興事業に関わった技術者の特徴を考察することを目的としたものである.『帝都復興事業誌』,『職員録』,国立公文書館所蔵の帝都復興事業に関する公文書等を整理・分析した結果,1) 進捗に合わせた所掌事務の見直し・行政整理により組織再編が行われていたこと,2) 復興局および復興事務局の官吏職員は1,366人おり,うち技術職員は864人(うち技監1人,技師163人,技手700人)いたこと,3) 中央は内務省・鉄道省から,地方は44庁府県9市から技術者が集められていたこと(特に耕地整理実務者),等が明らかとなった.
  • 永村 景子, 小林 一郎, 星野 裕司
    2013 年 69 巻 1 号 p. 31-49
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
     土木遺産利活用には,所管主体による運用が必然である.基礎自治体は,所管主体である場合が多く,その役割は大きい.鉄道土木遺産は多くの場合,鉄道跡地とともに基礎自治体に移管されてきた.つまり基礎自治体は,鉄道という用途を失った構造物の管理を引き受けることとなる.ところが新たな用途を得られず,機能を失ったまま放置された鉄道土木遺産は,なお存在している.
     本研究は,鉄道土木遺産利活用に向けた基礎自治体の役割について考察するものである.鉄道土木遺産の運用は,地域住民による利活用の前提である.本研究は基礎自治体の行政運営の特性である計画行政に着目する.基礎自治体による土木遺産運用の視点から,鉄道土木遺産利活用方法の一般化に向けた考察を行うことを目的とし,研究の遅れている本分野の研究の端緒とする.
  • 難波 匡甫
    2013 年 69 巻 1 号 p. 50-60
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/19
    ジャーナル フリー
     地盤沈下を背景に,東京と大阪では防潮堤,防潮水門等による高潮対策が講じられてきた.東北地方太平洋沖地震以降は,津波への対応強化が進められている.また,東京や大阪では近年の水質改善等にともない,河川や臨海部での水辺利用による地域活性化が積極的に図られている.
     こうした新たな社会状況下において,今後の高潮対策では防潮方式の多角的かつ抜本的な検討が必要であると考える.東京と大阪では,高潮対策における防潮方式に違いがあり,東京では陸地を防潮堤で囲い込む「輪中方式」が,大阪では河川本川に大型防潮水門を設置する「防潮水門方式」がそれぞれ採用されている.本研究は,高潮対策事業の経緯等から東京と大阪における防潮方式に違いが生じた要因を探ることにより,今後の防潮方式の抜本的な検討に寄与することが目的である.
  • 小方 武雄
    2013 年 69 巻 1 号 p. 61-71
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/20
    ジャーナル フリー
     7世紀後半~11世紀初頭にかけて,律令体制の整備に伴い駅伝制が行われ,駅路が全国展開することとなる.神奈川の地においても,駅路が整備されたが,具体的に何処を通っていたかについては従来様々な説がある.今回はそれらの視点に加え,古墳や地域の豪族,「延喜式」に掲載された式内社,直線道路のさらなる活用などの視点を加えて検討を行い,各時代における駅路のルートを求めた.ルートの検討に当たっては明治迅速図を使用したが,この地図には等高線が細かく入っているので縦断の比較も行うことが出来た.さらに,駅家の位置についても比定を行い,駅家間の距離について調査を行ってその妥当性について検討を行った.他の府県において,駅路のルートがはっきりしていないものがある場合には,今回のような視点が参考になればと思う.
  • 馬場 俊介, 樋口 輝久
    2013 年 69 巻 1 号 p. 72-81
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/20
    ジャーナル フリー
     岡山県旧建部町(現・岡山市)で町の重要文化財に指定されていた農業用取水堰の建部井堰(一ノ口井堰)は,岡山市に合併された段階で指定が解除された.この井堰は,現存する数少ない近世の総石張の取水堰の中では,群を抜いて規模が大きく,一級河川である旭川に位置するにもかかわらず,保存状態の良好な唯一の施設である.本論文では,この建部井堰について,池田家文庫を中心とした一次史料をもとに建設年代を特定するとともに,総石張の取水堰の全国調査をもとに土木・農業遺産としての価値を検証し,写真測量によって現時点における石組みの状況を把握しようとするものである.
  • 井上 敏孝
    2013 年 69 巻 1 号 p. 82-89
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/19
    ジャーナル フリー
     本研究は日本統治時代台湾の花蓮港で実施された築港事業の概要と意義を明らかにするものである.花蓮港築港事業は,台湾では基隆港・高雄港に次いで3番目に実施された近代港湾建設であった.また花蓮港は地理的要因により,日本で初めての近代的掘込式港湾として竣工した.しかしこの点は従来の研究で指摘されていない.以上の点を明らかにするため本研究では掘込式港湾の特徴と日本内外の建設事例と花蓮港築港計画及び工事内容の比較分析を行う.さらに掘込式工事が採用された背景について,同港の地理的要因と築港事業に先立って実施された同港港湾調査の報告書分析を通して解明することを試みる.
  • 安井 雅彦
    2013 年 69 巻 1 号 p. 90-103
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/19
    ジャーナル フリー
     愛知県尾張地方西部の低平地を流れる日光川では,下流部における高潮災害および湛水被害への対応が長年の課題であったが,この解決のための河口締切が実現したのは1962(昭和37)年であった.この研究ではこれに至る経過をとりまとめ,対策の長期化に影響した要因を明らかにする.
  • 宮下 秀樹
    2013 年 69 巻 1 号 p. 104-115
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
     裾花川末流部は,近世初頭に松平忠輝と家臣団により大規模な河川改修が行われているが,これは口碑伝承のみで確かな史料が存在しない.近年の都市開発により,現在の裾花川流域には慶長期の河川構造を確認できる痕跡は少ない.本稿では,地元に存在する江戸時代の古文書と,大正末期の長野市全図で確認できる河道の姿に明治初期の行政文書を加味して,帰納法的に慶長期における煤鼻川開発初期の形態の同定を試みた.その結果,煤鼻川は二線堤構造や霞堤を配置した甲州流の治水技術の流れを汲む工法が用いられていて,甲州系代官衆らにより進められた開発であったと推定できる.同時に旧煤鼻川氾濫地帯に北国街道丹波島・善光寺宿ルートが開設されるともに窪寺堰が開鑿されていることから,これらは治水・利水・街道整備を含めた総合開発であった.
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