土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
68 巻, 5 号
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土木計画学研究・論文集 第29巻(特集)
  • 谷口 綾子, 今井 唯, 原 文宏, 石田 東生
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_551-I_562
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    観光がわが国の重要政策とされ久しいが,その効果については,地域経済等への量的効果のみならず,地域愛着の向上といった質的効果についても,検討していく必要がある.本研究では,ニセコ地域を事例とし,地域の観光が観光客・地域住民の地域愛着に与える影響について分析を行った.その結果,来訪地域の住民との交流が観光客の当該地域愛着に影響を与えるほか,地域住民の地域愛着は近隣住民との交流や地域活動への参加が多いほど高いことが示された.また,地域住民の観光への態度は「景観・治安」「文化・伝統」「公共施設・サービス」「経済・商業活動」の4つの側面への評価から構成されており,観光への態度が肯定的であるほど,地域が好き等の選好の愛着は高まるが,変わって欲しくないという持続願望の地域愛着は低減する可能性が示された.
  • 笈田 翔平, 佐藤 慎祐, 白水 靖郎, 松島 敏和, 藤井 聡
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_563-I_572
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,現行のPT調査データと商業統計調査データを横断的に活用し,それらの関連分析を実施した上で,「目的別・交通手段別集中交通量」と「小売業業態別店舗面積」に基づいて「ゾーン毎・業態別年間販売額」を算定する「商業売上予測モデル」の構築を試みた.そして,それらの関連分析及びモデル構築の結果,「商業売上」と「集中交通量」の間には明確に正の相関があり,加えて,交通目的や手段の相違によっても商業売上への影響度合いが異なることが明らかとなった.さらに,構築した商業売上予測モデルの感度分析を実施した結果,手段分担率の変化は商業売上の増減に大きく影響することが確認され,とりわけ,買物活動を企図としたトリップの交通手段を公共交通へとシフトさせることは商業の活力向上にとって重要な要件であることが分かった.
  • 塩見 康博, 嶋本 寛, 宇野 伸宏, 太田 修平, 安 健
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_573-I_582
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,身体的疲労という従来の交通計画では十分に考慮されていない要因に着目して移動者の交通機関選好意識構造を明確化し,公共交通のサービス水準の向上,及び利用促進に資する施策を講じるための基礎的な知見を得ることを目的とした.具体的には,交通機関選好に関するAHP分析を通して,身体疲労の交通機関選好における重要度を特定すると共に,移動時の身体疲労認知特性を把握するための実証実験を実施した.その結果,時間,料金と並び,身体疲労に関する項目も交通機関選好には影響を与え,その傾向は年齢が高くなるにつれ顕著になること,身体への負担が大きい上り階段には大きな身体疲労を感じるものの,主観的な身体疲労度は,客観的な身体負荷指標のみだけではなく,乗り物や移動方法に固有の特性によって影響される傾向が示された.
  • 辰巳 浩, 堤 香代子, 香口 恵美
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_583-I_588
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,交通の視点からみた少子化対策を模索するため,乳幼児を持つ女性の交通行動特性を把握することを目的とする.分析には第4回北部九州圏パーソントリップ調査データを使用し,1)乳児を持つ女性,2)幼児を持つ女性,3)小学生以上の子供を持つ女性または子供を持たない女性の3グループに分類し,外出率,生成原単位,代表交通手段,トリップ長,トリップ時間について比較を行った.その結果,3グループ間には統計的に有意な差があることが明らかとなり,特に乳幼児を持つ女性は公共交通機関の分担率が低く,マイカーへの依存度が高いことがわかった.さらに,交通手段選択について,非集計ロジットモデルによるパラメータ推定を行い,ここでも乳幼児を持つ女性がその他の女性に比してマイカーに依存する傾向が強いことを明らかにした.
  • 溝上 章志, 梶原 康至, 円山 琢也
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_589-I_597
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    バス事業者と利用者が新たなサービス改善の取組による採算ラインを予め設定し,それを下回った場合には事業者はその取組を止めるという契約に基づき,バス料金の値下げや路線新設などを行うバストリガー制が注目されている.本研究では,バストリガー制を維持するために利用者の間で働くと考えられる他者の行動結果を考慮した交通手段選択モデルを構築する.そのために,利用者が契約維持に協力しなければトリガーが引かれるというバストリガー制を想定した手段選択SP調査を設計・実施した.さらに,トリガー制導入前の料金収入という従来の目標ラインに代わって,利用者増に対応した費用増をも考慮した収支比に基づく契約方式の提案を行う.
  • 李 昂, 安藤 良輔, 西堀 泰英, 加知 範康, 加藤 秀樹
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_599-I_605
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿はパーソナルモビリティ・ビークル(PMV)の実社会への導入に向け,立ち乗り型PMVの受容性について分析することを目的とした.まず,立ち乗り型PMVに期待される利用場面として「観光地での周遊」,「中心市街地内での短距離移動」及び「建物内の移動」が挙げられ,利用方法の仕組みとしてはレンタルより個人購入の意向が多いこと,立ち乗り型PMVへの搭乗経験によって購入意欲と操作の自信が増加し受容性を向上させることを明らかにした.具体的には,車体のデザインとサイズ,利用の調和感及び街中利用の利便性に対して肯定的な評価を与えた.さらに,心理学的な観点から,受容性は信念に基づく態度によって表現されるという評価メカニズムを導入し,適合性の高い意識構造モデルを構築することができた.
  • 今井 陽平, 奥嶋 政嗣, 近藤 光男
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_607-I_614
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,自動車依存型社会となっている地方都市を対象として,環境意識とその社会的相互作用を考慮し,環境負荷の少ない通勤交通手段への転換行動に関する意思決定構造を表現することを目的とする.このため,郊外従業者へのアンケート調査に基づいて,通勤交通手段転換に関する分析を行った.ここから,代替交通手段のサービス水準の低い現状では,環境意識は交通手段選択に影響を与えていないものの,サービス水準の向上により「地球温暖化防止のための自己犠牲意向」および利用状況が交通手段転換に関わる要因となることが示された.一方,個人の環境意識については「地球温暖化防止のための自己犠牲意向」と「環境問題に関する意識」に強い関係があるとともに,単なる社会的な趨勢ではなく,個々のつながりの影響が大きいことが示された.
  • 安藤 正幸, 高山 純一, 中山 晶一朗, 桑原 雅夫, 埒 正浩
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_615-I_623
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    市街地内において,渋滞緩和や交通需要マネジメントを行うためには,各時間帯の交通需要(OD交通量)を把握する必要がある.これまで交通需要を把握するためには主にナンバープレート調査が行われてきたが調査員の安全管理が課題であった.本研究では,現地での調査員を必要としないヘリコプターの空撮によるOD交通量調査を行い,当該調査法の特徴を整理した.
    また,これまでに時間帯OD交通量の推定手法が多く研究されてきているが,本研究では,既存のOD交通量推計手法により時間帯OD交通量を静的に推定し,近年,様々な検討に利用されている動的な解析である交通ミクロシミュレーションを用いて,動的な解析に対する静的に推定されたOD交通量の適用性を検証するものである.
  • 奥嶋 政嗣, 秋山 孝正
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_625-I_634
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    地球温暖化問題が深刻化しており,運輸部門においても環境的に持続可能な交通システムの構築は喫緊の課題となっている.エコ通勤の促進のためには,自動車利用を除く交通手段のサービス水準向上だけでなく,交通行動者の環境問題に対する意識(エコ意識)が重要となる.このエコ意識は,他者の影響により変動するものと考えられる.本研究では,エコ意識に関する局所的相互作用を考慮し,エコ通勤促進策を検討するためのマルチエージェントシミュレーションモデルを構築する.ここでエコ通勤促進のための交通社会実験結果を参考として,交通手段転換をモデル化する.このシミュレータを用いて各種エコ通勤促進策の効果を計測し,その影響について分析する.これよりエコ通勤促進策の検討に関して,エコ意識とその局所的相互作用を考慮する重要性を示す.
  • 谷下 雅義
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_635-I_640
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    人口密度が自動車の保有・利用に影響を及ぼすことはよく知られているが,その程度は十分明らかでない.本研究は,過少定式化バイアスを避けるため,個人単位の環境態度にかかわる変数,具体的には公共交通,インフラ整備や自動車利用に関する政府の政策に対する人々の反応を環境態度としてモデルに取り込み,自動車の保有・利用に影響分析を行った.環境態度は,自動車の保有・利用に影響を与えているとともに,環境態度を考慮すると,保有台数・走行量ともに人口密度の弾性値が小さくなることを明らかにした.
  • 奥畑 悠樹, 内田 敬
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_641-I_648
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    歩行者ITSの一つに街中観光ナビシステムがある.全国各地で多種多様なものが試行導入されているが,その多くは実験段階に止まって,長期継続的に運営される事例は少ない.本研究では著名な観光地の無い街中においても有用かつ長期運用可能なシステムの在り方について,システム運営主体へのヒアリングを元に,既存システムの課題,及び街中観光のためのコンテンツ作成・観光スポット推奨システムの必要性を明らかにする.そして,観光スポット群の自動推奨を将来目標として,観光情報誌のテキスト解析によって個人が訪問スポット選択に必要な情報属性を明らかにするとともに,個人嗜好に適ったスポット候補提案のためのモデル例を提示する.
  • 横田 孝義
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_649-I_657
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    度の関係を明確にする.特に,都市高速道路の利用有無の実態をトリップの終端の方向別に評価したり,道路のサービスレベルの不均一性,方向依存性を明確にすることを志向して新たな分析手法を考案した.実際に収集した貨物車両のプローブ情報を元に,具体例を挙げて議論を行う.この手法を展開することにより,貨物車両に対する道路網のサービス水準が可視化,定量化されることで課題が明確化され,さらには新規供用予定の道路の効果の推察,あるいは新たな路線のニーズ把握などが可能になると考えられる.
  • 松永 千晶, 田嶋 龍, 吾郷 太寿, 角 知憲
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_659-I_666
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,防犯環境設計に基づいた通学路設計を考察するための基礎段階として,登下校時の児童対象犯罪および不審行為とその影響要因の関係を表現する数学モデルを作成する.モデルは,これらの犯罪や不審行為の多くが,ターゲットに適した人や物,犯行に適した環境要因が時間的・空間的に揃った場合に遂行されやすい機会犯罪と呼ばれるものであり,現場周辺でのターゲットとの遭遇機会と環境要因が犯行企図者に影響を与えるという仮説に基づくものである.
    モデルを実際の小学校区での事例に適用したところ,モデルは学校からの距離に応じたエリアごとの犯罪・不審者の発生しやすさの分布を再現できた.また,ターゲットとの遭遇頻度と,沿道からの監視性に関する物理的環境要因が犯罪・不審者発生に与える影響を定量化できた.
  • 菱田 のぞみ, 日比野 直彦, 森地 茂
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_667-I_677
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    インバウンド観光振興は我が国の観光政策における重要な課題の一つであり,観光庁は訪日外国人旅行者数を2013年までに1,500万人に増やすことを目標に,様々な施策を行っている.近年における訪日中国人旅行者の増加は目覚ましく,訪日旅行者誘致の主なターゲットである.しかしながら,訪日中国人旅行者の観光行動に対する定量的な分析,研究は少なく,観光統計データに基づく分析,居住地域別分析等は行われてはいるものの,近年の変化を定量的に捉えるには至っていない.本研究は最新(2010年)の観光統計データを使用し,訪日中国人旅行者の日本における観光行動の違いを居住地域別,訪日経験別に時系列で分析し,それぞれに異なる目的地選択の傾向および個人間における目的地選択多様性の近年における変化を数量的に示したものである.
  • 瀬尾 亨, 柳沼 秀樹, 福田 大輔
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_679-I_690
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,歩行者流動の把握を念頭に置いた歩行者挙動モデルの構築である.歩行者挙動の研究は既に多数行われているが,幾つかの課題が残されている.まず,実データの裏付けがないことが多い.これに対し,本研究では駅構内における実際の歩行者流動のデータを取得し,それに基づいてモデルパラメータの同定を行う.次に,歩行者の目的地選択の考慮が難しいという問題がある.本研究では,Plan-Action Modelという新たな行動モデルを用いて,歩行者の動的な目的地選択と経路選択を同時にモデル化する.実証分析においては,通勤時間帯における混雑がみられる駅改札付近の空間を対象とし,歩行者の改札選択を目的地選択と見立て,経路選択と統合したモデルを構築した.最後に,構築したモデルに基づいた簡易な歩行者挙動シミュレータを開発した.
  • 松原 司, 桑野 将司, 塚井 誠人
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_691-I_699
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    CO2排出原単位の小さい電気自動車は,車両性能や価格面で普及に関する課題を抱えている.本研究では,電気自動車の普及要因を,実証分析によって明らかにすることを目的とする.電気自動車購入意識に関するアンケート調査に基づいて,自動車の購入に至るまでの選択肢集合形成と選択の多段階性,他者の行動結果が意思決定に及ぼす社会的同調効果の存在,およびそれらの選好の異質性を同時に考慮した車種選択モデルを開発した.モデル推定の結果,選択肢集合形成段階と車種選択段階の両方において,社会的同調効果が存在すること,およびそれら両段階において選好の異質性が存在することを明らかにした.また,推定したモデルを用いた感度分析によって,電気自動車の普及要因を明らかにし,電気自動車の普及促進施策の提案を行った.
  • 嶋本 寛, 倉内 文孝, Jan-Dirk SCHMÖCKER
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_701-I_707
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,容量制約と車両到着に関する相関を考慮した乗客配分モデルを用いて,公共交通ネットワークの所要時間信頼性を評価する手法を提案する.評価に用いる乗客配分モデルにおいて混雑の影響は「有効頻度」を用いて,需要が増加するにしたがって駅における期待待ち時間が増加することにより表現する.したがって,本研究で用いる乗客配分モデルを用いて評価できる所要時間のバラツキの要因は,車両到着の相関と乗客需要の増加による混雑の2点である.本研究では,すべての乗客は期待所要時間最小化を行動規範としていると仮定してネットワークに配分し,配分の結果得られる期待所要時間をもとに信頼性を評価する手法を提案する.提案する手法を仮想ネットワークに適用し,容量超過と車両到着の相関が所要時間信頼性に及ぼす影響を評価する.
  • 橋本 成仁, 山本 和生
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_709-I_717
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,岡山県において免許返納者へ行ったアンケート調査の結果をもとに,居住地域に着目して,返納して良かったと感じる要因や生活に困る要因について分析を行った.その結果,もともと運転していた人では,返納後自由に移動することが難しいと考えられる場合に,運転していなかった人では,身分証がなくなり困っている場合に良くなかったと感じる傾向があることを示した.また,都市部に比べて郊外部,中山間地域では生活に困っている人が多いこと,また,生活に困る要因は地域によって特徴が異なり,都市部では通院距離が遠いこと,郊外部と中山間地域では,買物に行けなくなったことや送迎を利用できる環境にないことが大きく影響していることを示した.
  • Tran Vu TU, Kazushi SANO, Nguyen Cao Y
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_719-I_729
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    This research firstly proposes a model to predict bus arrival time based on signal database and image processing sensor. Applying the prediction model to specific scenarios with different bus priority levels, the research makes a comparison among bus priority strategies. These priority strategies include bus signal priority strategy with timing techniques of early green or green extension; bus preemption strategy with exclusive lanes; and bus preemption strategy without exclusive lanes. The comparison's results show that the increases of bus priority level can improve the service level of buses significantly, which can make the bus turn-delays at the intersection reduce by up to 100% compared with that of the normal base case. However, high priority levels for buses may negatively affect non-bus vehicles at the intersection, causing an increase in the turn delay of non-bus vehicles, by up to 94.2% for the preemption strategy with exclusive lanes. The bus priority level not only shapes the specific characteristics of bus trajectory as well as impacts on vehicle travel times in the main and side streets but also figures out the role of bus occupancy in the intersection performance.
  • 日下部 貴彦, 社領 沢, 朝倉 康夫
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_731-I_740
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    都市高速道路での突発事象の発生は,道路利用者に対して旅行時間の著しくかつ突発的な増大を引き起こすため,影響をできるだけ小さくするための交通運用施策が求められている.本研究では,プローブパーソン調査とWeb上のアンケートシステムを統合し,道路利用者の日常の高速道路利用区間で,突発事象を想定した行動データを得るための調査を実施した.突発事象時のランプ選択行動のモデル化を行い,調査によって得られたデータから,突発事象による渋滞情報の内容と高速道路利用の関係を分析した.その結果,渋滞距離の情報を提供した場合には,利用者は20km/h以下でその区間を通過することを想定していることがわかり,この速度が実勢より過大又は過小の場合には,何らかの施策を行う必要性があることが示された.
  • 中山 晶一朗, 道下 健二, 高山 純一
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_741-I_749
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    大規模ネットワークでの経路選択では,経路選択肢数が多数存在し,経路選択肢間の重複が多く,そのパラメータ推定には困難が伴う.経路選択肢集合が大きいため,全ての選択肢を列挙することが出来ない.これらの問題に対処するため,本研究では,経路選択行動パラメータ推定であるものの,経路重複の考慮が可能なパスサイズロジットを用いて,さらにリンクベースで取り扱い可能な最尤法によるパラメータ推定法を提案する.
  • 後藤 梓, 中村 英樹, 浅野 美帆
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_751-I_764
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    道路の機能に応じたサービスを提供する階層型ネットワークの概念は,国内外を問わずその重要性が認識されてきた.特にわが国では,幹線道路の混雑や生活道路における通過交通といった課題解消のため,実用展開に向けた議論がおこなわれている.しかし,階層型ネットワーク実現の鍵となる交差形式の設定が,個別の道路やネットワーク全体の性能に及ぼす影響については,計画段階においては定量的に検証されてこなかった.本論文では,利用者均衡配分に交差点遅れを組み込むことでこれを明示的に評価可能な手法を構築し,格子状の仮想ネットワークを用いて検証した.その結果,機能的階層化の実現には幹線道路における交差点遅れの軽減が重要であることと,これが実現した場合,生活道路における交通静穏化対策も有効的に機能することが示された.
  • Thakonlaphat JENJIWATTANAKUL, Kazushi SANO
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_765-I_771
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    U-turn movement at the midblock median opening is primarily based on gap acceptance process. This research investigated the factors affecting the u-turn decision of the drivers and evaluated the statistical significance and influence levels of each factor. The u-turn decision prediction model had been developed after finalizing the significant factors. The field data was collected at 3 u-turn locations on an urban arterial in Bangkok, Thailand. The u-turning vehicles in the study included car, taxi, and pick-up, which the passenger car equivalent (PCE) equal to 1. The binary logistic regression technique was employed in the data analysis and model development. From the considered eight factors, gap size, speed of conflicting vehicle, and wait time at the front position of the queue were statistically significant at the confidence interval of 95%. In this study, the effects of wait time and queue time were separately examined. It was interesting to found that the queue time did not significantly affect the u-turn decision. The developed decision model, which explanatory variables included gap size, conflicting speed, and wait time, could predict the u-turn decision well with the percentage correctness of more than 85%.
  • 長谷川 裕修, 内藤 利幸, 有村 幹治, 田村 亨
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_773-I_780
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    近年,人工知能や機械学習等の知的情報処理分野においてアンサンブル学習というモデル構築手法に注目が集まっている.アンサンブル学習とは,複数の単純なモデルを構築し,それらを用いた分類結果を統合して最終的な分類結果を得る手法であり,高精度だが計算コストが高いニューラルネットワークやサポートベクターマシン等の機械学習手法に劣らない精度を発揮することが知られている.交通機関選択モデルは多種多様な意思決定主体の総体としての判断を表現するものであり,アンサンブル学習によるモデル化が有効であると考えられる.本研究では,平成18年に実施された道央都市圏パーソントリップ調査結果を用いてアンサンブル学習による交通機関選択モデル構築を行い,他手法との比較分析によって有用性と課題を検討した.
  • 日下部 貴彦, 辻本 洋平, 朝倉 康夫
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_781-I_792
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    道路ネットワークに関する情報提供は,道路利用者が出発時刻や経路を決定する上で重要な要素である.とりわけ,時々刻々の交通状態に依存して,ばらつきをもって変動する旅行時間に関する情報は重要である.旅行時間信頼性情報は,道路利用者がより旅行時間の不確実性に対応した行動するために有用な指標となると考えられる.本研究では,旅行時間信頼性情報の提供時に着目し,道路利用者の出発時刻選択行動モデルを構築した.都市高速道路利用者に対して,旅行時間信頼性情報に関するSP (Stated Preference)調査を実施し,旅行時間信頼性情報の影響を分析した.その結果,旅行時間のばらつきが大きい場合には,旅行時間信頼性の情報が道路利用者のスケジュールコストの改善に寄与することが定量的に示された.
  • 中山 晶一朗
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_793-I_803
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    交通ネットワークにおけるday-to-dayダイナミクスは,その安定性に直結する問題であり,制御・管理を考える上で,非常に重要である.これまでにも様々なアプローチのモデルが提案されるが,未だ解明されているとは言い難く,安定性にかかわる要因は何であるかという基本的な研究蓄積が必要である.本研究では,既存研究と対比可能なday-to-dayのダイナミクスを記述する差分方程式モデルを構築する.そして,構築したモデルでのday-to-dayダイナミクス及び均衡の安定性等を分析し,既存研究との対比を通じて考察することによって,交通ネットワークの安定性等についての一般的な理解の進展に資することを目指す.
  • Andie PRAMUDITA, Eiichi TANIGUCHI, Ali G. QURESHI
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_805-I_813
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    We study a variant of the undirected Capacitated Arc Routing Problem (CARP). This problem is motivated from debris collection operation after disaster. In this study, the sequences in visiting and servicing arcs are very important. It is because one section may block other sections. Only adjacent arcs can be connected with each other, while for distant arcs there may be no way to be connected before removing the blocked access first. The debris collection operation after disaster is a new CARP problem and not much research has been done in this topic. The uniqueness of this kind of CARP problem is due to the limited access from one section to the other, as a result of the blocked access by debris. Therefore a modification in classical CARP is required to solve this kind of problem. It is executed by adding a new constraint, which is mentioned in this study as possibility access constraint. This constraint sets whether a vehicle can possibly move from one node to another in a particular structure, or not. We tested our model on small problem instances and proposed a tabu search metaheuristics to solve the problem. In the problem instances, besides a single depot as the route starting point as well as the final destination point after all required arcs are completely serviced, intermediate depots can also be considered which serve as vehicles destination points to empty the load. Multi-vehicles operation is also applied in problem instances because operating more than one vehicle which starts simultaneously and with different routes can definitely decrease total required time, particularly in case of operation with time restriction.
  • 山本 俊行, 木方 千春, 鈴木 美緒
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_815-I_822
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    自転車対歩行者の事故は近年増加傾向であり,自転車運転者に高額な損害賠償が発生するケースも増えているため,より一層の安全対策が求められている.本研究では,自転車利用実態及び自転車の安全制度の現状を把握し,これからの保険・保障制度のあり方を検討するために,自転車に関連する交通事故の補償,すなわち,損害賠償保険制度の現状調査を実施した.さらに,損害賠償保険に対する自転車利用者の意識調査を実施した.調査結果より,自転車利用者の損害賠償保険加入率は低く,損害保険会社も自転車の損害賠償保険から撤退する傾向にあることが明らかとなった.また,加入率の低さは自転車利用者の損害賠償保険に対する知識不足や自転車事故に対するリスク認知バイアスが原因である可能性が示された.
  • 中村 一樹, 加藤 博和, 林 良嗣
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_823-I_830
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    モータリゼーションの進展は,恩恵をもたらす一方で,行き過ぎると様々な問題を引き起こす.その進展状況が都市ごとに違う要因の1つとして,鉄道に代表される代替的な交通手段の整備水準の違いが挙げられる.本研究では,アジア途上国大都市における早期鉄道整備によるモータリゼーション進展抑制効果を定量的に把握することを目的とする.まず,鉄道整備時期の違いがモータリゼーション進展に与える影響を明らかにするため,日本の大都市のデータを用いて,都市密度低下と乗用車保有増加の相乗効果についてマクロモデルを構築する.モデルをアジア大都市へ適用し,早期鉄道整備,成熟期鉄道整備,鉄道整備なしの3つのシナリオを設け,2050年までの将来推計を行う.その結果,各都市における早期鉄道整備のモータリゼーション進展抑制効果が示される.
  • 矢ヶ崎 真也, 塚口 博司, 麦谷 優太, 清水 康裕
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_831-I_840
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    環境負荷が少なく,かつ活力ある都市空間を実現するためには,自動車に過度に依存しない交通システムの構築が必要であり,歩行者交通施策の重要性は今後ますます高まると考えられる.安全・快適な歩行者交通システムには,連続性のある歩行者空間整備が重要である.本研究は,歩行者の回遊性ポテンシャルから歩行者空間を評価するものであり,船場建築後退線を研究対象とする.大阪船場地区において指定されている船場建築後退線は,本来,歩行者空間を拡充するために導入されたものではないが,歩行者の回遊性向上に資するところが大きいと考えられる.そこで,本研究は,船場建築後退線によって生み出された空間の効果を地区における回遊性の視点から評価し,セットバック空間の有効活用について検討することを目的とする.
  • 新谷 浩一, 今井 昭夫, 永岩 健一郎, 田中 康仁
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_841-I_849
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    近年,世界的規模でコンテナ貨物が急増する反面,貿易不均衡が拡大し,空コンテナの過不足問題が深刻化している.その緩和策の一つとして期待されるのが,折りたたみコンテナの導入である.しかし,折りたたみコンテナはすでに開発されているものの,未だ実用化されていない.その理由の一つは,折りたたみコンテナの経済性が必ずしも周知されていないことであろう.そこで本研究では,港湾背後地でのトレーラによる空コンテナの集配送に注目し,折りたたみコンテナの導入によるトレーラの使用台数と走行距離の削減における有用性を,数理計画モデルを用いて検討する.その結果,折りたたみコンテナの導入は一般のコンテナよりも,空コンテナの回送の効率化に対して,一定程度の効果があることがわかった.
  • 高野 穂泉, 森本 章倫
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_851-I_856
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    近年,公共交通の衰退により,効率的な生活交通の確保が求められている.そのような中,我が国ではデマンド交通が新たな生活交通として多くの地域で導入されている.本研究では,デマンド交通の利用者数の実測と予測を比較し,誤差を小さくするための具体的な知見を得ることを目的とする.需要予測の際に考慮すべき点について検討した結果,情報の周知によってデマンド交通の利用者数が増加することが確認された.また,デマンド交通の利用者の多数を占める70歳以上女性人口と利用者数との相関が高いことから,女性高齢者数のみを説明変数とする簡易的な需要予測式を提示した.
  • 中村 一樹, 林 良嗣, 加藤 博和, 福田 敦, 中村 文彦, 花岡 伸也
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_857-I_866
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    CO2排出量の急増が見込まれるアジア開発途上国において,経済成長を損なわずCO2増加を抑制できる低炭素交通システム実現へのロードマップが求められている.このような新システムには,先端技術や思い切った土地利用・交通施策の積極的な先取りによるリープフロッグ的な変化が必要となる.このため,必要となる戦略を構成する様々な施策の組み合わせとその実施手順を,バックキャスティングにより示すことが重要となる.本研究では,交通起源CO2排出削減目標を達成するためのアジア低炭素都市における交通システムを,3つの戦略シナリオ(交通需要の抑制,低炭素交通機関の促進,技術進歩)により設計するアプローチを提案する.
  • 鈴木 美緒, 吉田 長裕, 山中 英生, 金 利昭, 屋井 鉄雄
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_867-I_881
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    近年,世界的に自転車の環境にやさしい交通手段としての特性が見直され, わが国においても自転車の都市交通における位置付けが見直される好機にある.特に,わが国の自転車は歩道走行が常態化していることから,歩行者の安全性を確保するべく,道路に走行空間を創出する動きが急速に進んでいる.しかし,実際には実務主導型で整備されているのが現状であり,このような一過性の政策では,時間を要するネットワーク整備は完成し得ない.
    そこで本研究では,17自治体を対象に自治体へのヒアリング調査を行ない,自転車交通に関する政策目標,ネットワーク計画の策定やその走行空間の考え方の違いを明らかにし,継続的な自転車走行空間整備が行なわれるための計画推進体制および実施協議体制のありかたについて考察した.
  • 小川 圭一, 宮本 達弥
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_883-I_892
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    近年,都市交通手段としての自転車が見直されてきており,環境負荷の低減のため,自動車から自転車への交通手段転換の促進が期待されている.一般に,都市内においては5km程度以内の距離帯であれば自転車の所要時間がもっとも短いとされており,自転車利用の促進が期待される距離帯であるとされている.しかしながら,これは大都市都心部を想定した各交通手段のサービス水準にもとづいたものであり,地方都市や郊外地域においては各交通手段のサービス水準が異なることから,有効な距離帯は異なると考えられる.そこで本研究では,京都市中京区,京都府向日市,滋賀県草津市の3地域における各交通手段のサービス水準にもとづき,地方都市の実状に応じた自転車利用促進のための有効な距離帯の算定と比較をおこなう.
  • 金 利昭, 髙崎 祐哉
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_893-I_902
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    身近なハンドル形電動車いすや電動アシスト自転車に加えて,電動原動機付自転車や1人あるいは2人用超小型電気自動車さらにはモビリティロボットと呼ばれるパーソナルモビリティが登場し,歩行補助具から自動車までコンパクト交通手段の多様化が著しい.その背景はモビリティの向上と環境問題への対応であり,それを支える要素技術の開発である.これらのコンパクト交通手段は従来の交通手段に比べて形態や諸元が著しく異なるため交通工学上の挙動特性を把握することで適用性を検討し,予防的措置や普及促進策を講じる必要があると考える.そこで,まずコンパクト交通手段の動向を把握したうえで道路交通法と道路運送車両法における位置づけを整理し,次に諸元データを比較することで車両特性を把握し,最後に道路交通における共存性の問題を考察した.
  • 石川 瞬, 山本 俊行, 金森 亮
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_903-I_908
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    中京都市圏で東海・東南海・南海地震等の大規模災害が発生した際の,帰宅者の行動を交通シミュレーションにより分析した.現在,国の定める防災マニュアルでは,東京都と同様に,徒歩による帰宅を促している.しかし,東京都市圏と同様に,遠距離のため徒歩で帰宅できない者が多数発生することが予想される.東京都市圏に比べ自動車の分担率が高い中京都市圏では,自動車利用による影響をより慎重に考慮する必要がある.本研究は,帰宅手段に自動車利用を認めた場合の交通状況をシミュレーションすることにより,自動車利用がどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的とする.分析の結果,自動車利用により帰宅断念者数を大幅に減らす一方,大渋滞により救援活動に支障をきたす可能性が示された.
  • 相知 敏行, 山中 英生, 北澗 弘康, 神田 佑亮
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_909-I_916
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    自転車通行環境整備モデル地区等の整備が進む中で,自転車サインには多様な試みが見られるが,走行する自転車からの視認性への配慮が十分とは言えない状況にある.本研究では,走行中に計測が可能なアイマークレコーダーを用いて自転車運転中の多様なサインに対する注視特性を分析し,効果的な自転車通行空間でのサインの使い方を検討した.この結果,サイン種別毎の注視分析から,架空看板は注視している距離が長く,遠方からのみ注視されるため,交差点部での設置に適しており,看板柱は遠方で気づき,近くで内容を把握していることから文節部の設置に,路面表示は注視距離が近づくにつれて注視される割合が高くなり,視認性が比較的良好であり,路線内の連続設置が効果的であることが分かった.
  • 西内 裕晶, 塩見 康博
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_917-I_927
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,セグウェイをはじめとするパーソナルトランスポーターの交通手段としての工学的な位置づけを明確化するため,セグウェイの走行実験を行い,その走行挙動特性を整理する.具体的には,セグウェイの基本的な走行挙動特性(加速・減速・スラローム)を把握し,更に走行速度レベルが同程度と考えられる自転車との挙動(歩行者の追い抜きとすれ違い,急制動)を比較し,14名の被験者の乗車経験にも着目しながら,セグウェイの走行挙動特性を整理するものである.その結果,乗車経験による大きな挙動の違いは見られず,さらにその挙動性能は自転車と同様であることを確認した.
  • 小笹 俊成, 塚井 誠人, 藤原 章正
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_929-I_941
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    現在の道路整備事業の事業採択は,費用便益分析マニュアル等に基づいて,個々の事業区間に対する費用便益比(B/C)を最終ネットワークにおけるwith / withoutによって算出し判断している.しかしながら,事業区間ごとの静的な個別評価では,段階的に複数の箇所が整備されていく場合のネットワーク外部性が考慮できないため,段階整備を加味した動的評価が必要となる.また事業区間に関しては,区間設定によっては事業採択に差が出る可能性がある.本研究では,事業区間の設定を内生化した動的事業評価(事業採択と整備順序)モデルを提案する.提案モデルによるシミュレーション分析の結果,従来の静的評価に比べ,動的評価の方が評価地域全体の総純便益(B-C)が高く,更に事業区間を内生化した動的評価が最も高く,本方法の有効性が示された.
  • 谷島 賢, 大江 展之, 坂本 邦宏, 久保田 尚
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_943-I_949
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    埼玉県日高市を走る路線バスは,PDCAサイクルでの運行改善を6年間にわたって実践してきた.路線バス事業において明確なPDCAサイクルによる改善を複数回実施してきたという詳細報告は他になく,継続的な事業改善の効果や課題を明らかにすることは実務的に意義が高い.
    本研究では,路線バス事業においてPDCAサイクルによる運行改善を複数回実施してきた事例を通して,継続的実施の効果と課題を明らかにする事を目的とする.PDCAサイクルを継続することで,適切なダイヤ計画と運行により利用者数が維持・増加する可能性が確認されたが,同時にサイクルを効果的に実施するための工夫が必要である事も判明した.また路線バス事業が品質改善と運行コスト削減の限界を迎えた際,公共交通を地域でどのように維持するのかの方法論の重要性を指摘した.
  • 喜多 秀行, 岸野 啓一, 今井 正徳, 岡田 敬
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_951-I_960
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    2002年のいわゆる乗合バス事業の規制緩和以降,全国各地で地域公共交通計画が策定されている.その策定にあたっては,活動ニーズではなく活動機会に着目することが重要であるとともに,提供される公共交通サービスによって保障される活動機会とそれに対する負担の組合せを住民が選択することが重要である.筆者らは,その考えに基づき,地域公共交通計画の枠組みを提案してきたが,それが実践された計画はまだ少ない.
    そうした中で,奈良県生駒市で策定された地域公共交通計画は,筆者らの提案の趣旨に沿って立案されたものであり,高齢化が急速に進展する中で,今後の計画の指針ともなる内容を備えている.本稿は,その内容を示すとともに,立案された計画の意義や提案した枠組みの有用性について,実証的な視点から考察を行うものである.
  • 谷本 圭志, 梅本 貴弘, 谷 雅幸
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_961-I_971
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    近年,地方自治体が公共交通計画を策定することが求められている.その構想や基本計画段階では,公共交通サービスの持続可能性や供給するサービス水準,運行形態などの概略的な検討が必要となるが,そのためには潜在的な利用者数を把握することが有用である.その際,簡易な四則演算で潜在的な利用者数を導出できる手法があれば,地方自治体の担当者にとって実用的である.そこで本研究では,地方の定時定路線型の路線バスを対象とし,サービス圏内人口に原単位を乗じて潜在的な利用者数を算出できるようにするために,その原単位を推計する.その際,観測された乗降客数が推計した原単位でどれだけ再現できるかについて,様々な市町村を対象に実証的に検討する.
  • 永野 峻祐, 小根山 裕之, 大口 敬, 鹿田 成則
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_973-I_981
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,自由記述欄から得られるテキストデータについて,言語処理手法の一つである形態素解析手法を用いた解析を行うとともに,プリコードデータと自由記述欄の分析結果との比較検証を行い,アンケート自由記述欄の特性及び分析手法について考察したものである.路面電車利用意識調査のアンケート結果を事例として用い,テキストデータから単語の抽出を行い,抽出単語の出現頻度分析や,Jaccard係数を適用した共起ネットワーク分析により,自由記述欄の内容把握において形態素解析を適用することの有用性と課題を示した.また,プリコードデータの利用頻度別,性別,年齢別等によるグループ形成を行い,グループ毎に自由記述欄の定量化分析を行うことなどにより,プリコードデータと自由記述欄の記載事項の関係を分析し,その特性を明らかにした.
  • 喜多 秀行, 小野 祐資, 岸野 啓一
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_983-I_990
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    交通は何らかの活動を行うための派生需要であり,公共交通サービスを評価する際,その利用によってどれだけ活動が行いやすいかを評価することが重要である.著者らはこれまでに,活動機会の獲得水準を表すアクセシビリティ指標を開発してきた.
    その指標は,誰もが公共交通を利用できることを前提としている.そのため,身体機能に制約のある人は,公共交通サービスが提供されていても利用が困難であり,活動機会が十分に得られないという事象を説明できない.そこで,公共交通の利用しやすさを評価する指標に,身体機能が坂道の歩行などに及ぼす影響を評価した研究を統合し,身体機能を加味して活動機会の獲得のしやすさを評価する新たな指標を構築した.そして傾斜の急な地区を対象としたケーススタディを行い,構築した指標の有用性を示した.
  • 野竹 壮一郎, 吉田 長裕, 日野 泰雄, 内田 敬, 木村 穣
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_991-I_1003
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    近年,諸外国では,自転車利用は健康に効果のあることが報告されており,わが国でも健康志向の高まりに伴って,適度な身体活動であり,環境負荷の小さい移動手段である自転車利用に注目が集まっている.わが国では自転車の歩道走行が常態化しており,低速の自転車利用では健康によいとは考えにくいが,車道を前提とした空間整備が進むことによって健康便益を得られる可能性がある.本研究では,低速の歩道走行から高速の車道走行に変わることによる消費エネルギーの違いに着目し,実験室実験と,実道路走行実験により,心拍数を用いて消費エネルギーを推計した.その結果,低速の歩道走行時よりも高速の車道走行時の方が単位時間当たりの消費エネルギーは大きくなる一方で,走行空間の違いによっても消費エネルギーは異なることがわかった.
  • 三室 碧人, 奥田 隆明
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_1005-I_1012
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    都市間旅客交通部門に固有の特性として,運航頻度と需要量の関係が存在する.とりわけ,航空市場では,昨今の規制緩和の進展によって収益性の高い大都市近郊空港は航空会社の積極的な参入によって航空市場が拡大傾向にあるが,地方路線では需要の低迷により市場の縮小が発生している.こうした状況において,今後の環境税導入は航空事業者の運航経費を増加させ市場を縮小させる要因となり,更なる市場縮小という悪循環へ陥ることが懸念される.したがって本研究では,規制緩和下にある日本の都市間旅客交通部門を対象に,運航頻度と需要量の関係から発生する悪循環をモデル化する手法として独占的競争理論を応用し,市場規模の変化による需要サイドと供給サイドの相互作用による影響を評価する新たな分析手法を開発した.
  • 大窪 和明, 奥村 誠
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_1013-I_1024
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    使用済み製品の排出量は製品寿命や消費者の消費行動によって決まるため,回収業者などのリサイクルする側が調整や予測をすることが困難な外生的回収量が存在する.また,企業によるリサイクルが普及し,多くの使用済み製品の回収量はリサイクル後の製品市場における需要変動の影響を受けやすくなっている.使用済み製品のリサイクルシステムが持続可能となるためには,外生的回収量や需要の変動に対して頑健な回収システムを構築する必要がある.本研究では,使用済み製品の集荷を行う中間処理業者が,市場を通じて回収する場合(市場回収システム)と直接回収する場合(直接回収システム)について,外生的回収量および中間処理業者の販売市場における需要変動が回収量にもたらす影響を明らかにする.
  • 和田 健太郎, 吉 相俊, 赤松 隆, 大澤 実
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_1025-I_1034
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,高密度鉄道ダイヤにおける列車の集群化を抑制する運行制御方策を提案する.そのために,まず,停車区間,走行区間における遅延伝播メカニズムを整合的に考慮した列車運行モデルを構築する.続いて,遅延の伝播を抑制するための自律分散的な運行制御方策を導入する.そして,この制御方策の下では,遅延は伝播せず,運行ダイヤに従う列車運行システムが安定化されることを証明する.
  • 栗栖 嵩, 高橋 清, 松久 浩, 井上 秀行, 大波 拓也
    2012 年 68 巻 5 号 p. I_1035-I_1044
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究の対象地域である,北海道東部地域(以下,道東地域とする)において,オホーツクEV推進協議会が主体となり,2度のEVモニタ実験が実施された.そして,EV利用促進のためのインフラ整備・運用の可能性検証と,今後の運用に向けた対応方針の検討が行われ,今後は,広域的な観光周遊行動に対応する充電施設配置の検討が重要な課題であることが明らかとなった.本研究では,EVの航続可能範囲を視覚化するとともに,観光客の行動パターンに基づく充電需要を分析することで,道東地域の観光流動に対応する充電施設配置について検討した.結果,EVユーザーが電欠を生じることのない,最低限の密度での急速充電施設配置,および急速充電施設密度を高める上での充電施設候補地の設置優先順位を明らかにした.
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