土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
72 巻, 5 号
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土木計画学研究・論文集 第33巻(特集)
  • 浅田 拓海, 谷下 雅義
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_585-I_593
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    生活道路における夜間の自転車走行について,速度,注視挙動,路上障害物の回避時間の計測を行い,これらと平均路面照度との関係について分析した.その結果,平均路面照度が8.6lxから3.5lxに低下すると,走行速度には大きな変化がない一方,視線が手前路面部に低下すること,障害物の回避時間が0.5秒以下となること,そして「明るさが不足している」「路面障害物が気になる」などの回答者の割合が6割を超え,安心感が低下することがわかった.さらに,路上障害物に対する意識が高い被験者ほど,平均路面照度の低下に伴う視線の低下が見られ,個人の安全意識が実際の走行挙動に影響を与えることが示された.
  • 力石 真, 西川 文人, 瀬谷 創, 藤原 章正, 張 峻屹
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_595-I_605
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    本研究では,まず,非市場的相互作用により発生する近隣小売店の魅力度を内生的に表現した地区住民の買物目的地選択モデルを構築する.次に,広島市を対象とした実証分析を通じて,非市場的相互作用が買物目的地選択に及ぼす影響を定量的に示す.実証分析の結果,非市場的魅力度が買物目的地選択に有意な影響を及ぼすことが確認された.一方,対象地区においては,相互作用の影響がある閾値より大きい場合に発現する,「類似した居住者・交通環境にも関わらず,異なった均衡状態に至る」ことを示唆する複数均衡の存在は確認されず,非市場的魅力度の影響は,特定地区の買物目的地選択割合を劇的に変えるほどに大きいわけではないことが示唆された.
  • 坂井 勝哉, 日下部 貴彦, 朝倉 康夫
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_607-I_616
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    時間帯別ボトルネック通行権取引制度は一般ネットワークにおいて社会的費用最小化の観点から最も効率的な状態を達成できる.しかし,料金抵抗の大きい利用者は希望時刻の通行権が高価格の場合に買うことができず,渋滞による待ち時間はなくなったとしても,結果的に厚生が低下することが懸念される.本研究では,スケジュール制約と料金抵抗が利用者ごとに異なる場合に,通行権取引制度が利用者のパレート改善に及ぼす影響を分析した.その結果,ボトルネック容量全てに対して通行権取引制度を導入した場合にはパレート改善が必ずしも達成されないのに対して,通行権取引制度をボトルネック容量の一部のみに導入する場合には料金抵抗の小さな利用者のみが通行権を買っていれば均衡状態でパレート改善が達成されることがわかった.
  • 藤田 素弘, 村上 慎太朗
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_617-I_625
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    本研究では,時間帯ごとの交通運用対策に用いることが可能な時間帯別均衡配分の精度を向上させるものとして,時間変動係数に基づく観測交通量からの時間帯別OD交通量逆推定モデルの実用化研究を行った.先行研究で開発された基本モデルの精度や操作性をさらに向上するものとして,都市圏域内の詳細なゾーニング方法や都市圏域外の域外ODの逆推定などを段階的に適用する方法について開発した.これより,域外ODの逆推定をいくつかのゾーニングのもとで行った結果,特に大型車の精度向上を確認でき,域外ODの時間変動パターンも方向別に特徴のあるものが確認できた.次に域外ODを固定して域内の詳細なゾーニング方法を検討した結果,16変数の方向別モデルが全段階の逆推定を通して最も精度がよく,時間帯別変動パターンも良好な特徴を把握できた.
  • 西堀 泰英, 土井 勉, 石塚 裕子, 白水 靖郎, 中矢 昌希
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_627-I_639
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    交通計画を行う際の基礎指標である生成原単位は,将来にわたって大きく変動しないことを前提とされてきた.しかし,複数の都市圏で生成原単位が減少していることが報告されている.この背景を把握することを目的に,特に生成原単位の減少が大きな30歳代前半の人々に絞り,アンケート調査結果や近畿圏PT調査データを用いて,様々な個人属性別の移動実態の変化を分析した.
    その結果,外出状況の違いは年収や運転免許証の保有と関係があること,かつて生成原単位が大きかった免許ありの人や無職等の女性で,生成原単位が大きく減少していること,それらは,1日に複数回のトリップを行う人たちや外出者の減少が影響していることが明らかになった.これらの影響を受けて生成原単位が減少している実態を,定量的に把握することができた.
  • 須永 大介, 青野 貞康, 松本 浩和, 寺村 泰昭, 久保田 尚
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_641-I_651
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    近年,地域の手軽な足となる1人~2人乗り程度でエネルギー消費量が通常の自動車の1/6程度である超小型モビリティの導入促進に向けた取り組みが全国で展開されている.
    本稿では,さいたま市において平成26年度に実施された超小型モビリティの実証実験結果に基づき,大都市圏郊外部における超小型モビリティの活用可能性について検証を行った.その結果,高齢化が進む市周辺部の住宅団地においては,高齢者による買い物や通院等の短距離移動を中心に超小型モビリティが活用される可能性があること,都心部においては,超小型モビリティを用いたワンウェイ型カーシェアリングを導入した際に,平休日ともに都心部内移動において活用される可能性があることを明らかにした.
  • 近藤 篤史, 嶋本 寛
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_653-I_660
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    近年公共交通におけるICカードの普及によって柔軟な運賃設定が可能になり,多くの公共交通で多様な運賃制度が導入されている.運賃制度の違いにより,公共交通事業者の歳入だけでなく乗客行動にも影響すると考えられる.一方,ICカードの利用者数の増加により,ICカードの利用履歴データが公共交通の分析手段として注目を集めている.
    そこで本研究では英国・ロンドンで導入されているOyster Cardの4週間分の利用履歴データを用いて,運賃制度のうち特にPrice Capに着目して,運賃制度と乗客行動の関係性を分析した.トリップ単位で移動時間と滞在時間の比較を行った結果,Price Cap該当者の移動時間は有意に長く,滞在時間は有意に短いことを確認した.さらに,Price Capが活動パターンに及ぼす影響を分析したところ,Price Capは行動パターンの多様化に寄与することも確認した.
  • 平井 章一, XING Jian, 堀口 良太, 宇野 伸宏
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_661-I_671
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    休憩施設改良による魅力度向上,休憩施設混雑情報の提供など休憩施設を活用した交通関連施策の評価のためには,高速道路利用者の行動変容の分析が必要であるが,そのうち,休憩行動の研究事例は少なく,実態は明らかではない.本研究では,都市間高速道路における休憩行動のモデル化,交通流シミュレーションへの実装,及び,休憩施設を活用した交通関連施策の評価への適用を目指している.もし,休憩行動モデルを交通シミュレーションに実装できれば,高速道路上での情報提供等により早めの休憩取得を促進する施策や,交通集中時に休憩施設を活用する交通円滑施策の評価等が可能になると期待される.
    本稿では,休憩行動モデル構築の基礎段階として,ETCデータによる推定休憩時間の実態分析,及び,マクロ休憩行動モデルの構築を行った結果を報告する.
  • 中西 航, 布施 孝志
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_673-I_681
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    本研究では,GPS測位値のような誤差を有する時系列観測を得たときに,その測位精度を表すモデルのパラメータをデータ適応的に推定する手法の有用性を示す.まず,測位精度を既往研究を援用してモデル化する.つぎに,一般状態空間モデルの枠組みにこのモデルを統合する.具体的には,ネットワーク上を移動する歩行者から取得される測位値に基づき,測位精度を歩行者位置,経路選択および移動速度と同時に逐次ベイズ推定する定式化を行った.仮想ネットワーク上から生起した擬似的な測位値への適用により推定精度を検証するとともに,従来手法との比較を通して提案手法の利点を示した.さらに,実空間上のデータにおいても,提案手法が機能することを確認した.
  • 安藤 宏恵, 倉内 文孝, 杉浦 聡志
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_683-I_694
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    わが国では,来たるべき津波災害への備えとして避難計画の見直しが求められている.そのような中,避難完了時間を最小にするための最適避難計画問題を定式化し解くことは,周到な避難計画を策定する上で重要な参考情報になると考えられる.筆者らは,津波災害を対象とし,時空間拡張ネットワークを用いた避難完了時間を最小とする最適避難計画モデルを開発してきた.本研究では,Jarvis and Ratliff (1982)が示した,「many-to-one動的ネットワークにおける避難完了時間の最小化と総避難時間最小化の等価性」を援用し,リンクベースで最適避難計画を立案するモデルを提案する.構築したモデルを先行研究モデルと比較し,有意性を確認した.また,避難所の増築,コントラフローの実施などによる避難完了時間の短縮を本モデルで検討可能であることを示した.
  • 小池 淳司, 友國 純志, 山本 浩道
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_695-I_705
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    都市政策の分析・評価に用いられる応用都市経済モデル(CUEモデル)は,代表家計の間接効用関数と地域の魅力度を介してロジットモデルにより立地選択行動を表現しているが,ロジットモデルの分散パラメータの設定と調整項の設定に関する統計的検証が十分にされていない.そこで,本研究ではロジットモデルを用いた立地選択行動推定の妥当性・時間安定性の検証を目的に,神戸市を対象とした事後評価を実施した.結果,立地選択行動の推定結果は理論的意味合いが不明瞭な調整項に大きく依存する事,短期的な推定は一定の推定精度を有する事,長期的な推定において推定精度を維持するには時間移転可能性を考慮する必要がある事が示された.これらの分析結果を通じ,立地選択行動推定手法に関する改善案を3種類提示し,CUEモデルの発展の方向性を示す.
  • 安藤 正幸, 高山 純一, 中山 晶一朗, 喜多 敏春
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_707-I_719
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    地震やゲリラ豪雨など災害の多い我が国において,道路ネットワークの連結を確保することは急務である.また,財政難のため効果的かつ計画的な道路整備が求められている.このため,道路整備費用と道路ネットワークの連結信頼性向上を総合的に評価する必要がある.
    本研究は,道路ネットワークの連結信頼性算出にあたり,厳密解を求めることで近似解による曖昧さを回避するとともに,ネットワーク全体の評価となる多点間における連結信頼性をトポロジー変換を用いて計算コストの低減を図るものである.
  • 倉嶋 祐介, 内田 敬
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_721-I_729
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    コミュニティバスでは,新規利用者の獲得や利用者数の増加を目的として,様々な利用促進施策が実施されており,バスへの愛着や支援の意識を育むことを目的とした施策も取組まれてきている.このような状況のなか,実施された施策を横断的に評価し施策間の評価の差異を明らかにするとともに,バス利用や利用促進施策の評価状況と,バスへの愛着や支援意識との関係性についての解明が重要となっている.本研究では,事例として兵庫県明石市のコミュニティバス“たこバス”を取り上げ,様々な利用促進施策に対する評価,及びバスの利用や移動制約状況などコミュニティバスとの関わりが事業の支援意識に及ぼす影響について明らかとし,支援意識の醸成に向けての考察を示した.
  • 鈴木 雄, 保坂 亜沙希, 日野 智
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_731-I_742
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    本研究は,秋田県横手市増田町狙半内の買い物送迎バスを対象とした.狙半内の買い物送迎バスは,狙半内共助運営体と地域のスーパーマーケットとの協定により運行されている.スーパーマーケットが自社バスと運転手を提供し,狙半内地区とスーパー間を無料で送迎している.停留所や運行時間などは狙半内共助運営体との協議により決められ,1便平均で15人程度乗車している.限界集落に対し,地域の商店が送迎バスを運行する事例は他にみられない.本研究では,買い物送迎バスを利用することによるQOLの向上効果と,「普段の会話が増えた」や「趣味の時間が増えた」などの買い物における多様な価値の達成についての分析を行った.その結果,買い物送迎バスの利用者は「運行日が楽しみ」や「普段の会話が増えた」など生活の質の向上がみられた.
  • 南 亮太朗, 佐野 可寸志, 西内 裕晶
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_743-I_750
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    本研究では,新潟県三条市で導入されている乗合タクシー「ひめさゆり」を対象として,知らない人との相乗り行為に対する利用者の意識を明らかにするために利用者実態調査を実施した.調査の結果,知らない人同士で相乗りをすること自体に抵抗がある利用者は少ないが,異性との相乗りや,予約した時刻にズレが生じることには抵抗があることがわかった.相乗りの可否を外的基準とし,数量化2類を用いて分析した結果,現在の運賃に不満がある利用者や通院目的の利用者は相乗りに肯定的であった.また,知らない人との相乗りサービスに関する支払意思額を,コンジョイント分析を用いて算出した結果,同乗する利用者の性別の重要度が男性と女性では大きく異なることが明らかになった.
  • Hasina IASMIN, Aya KOJIMA, Hisashi KUBOTA
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_751-I_758
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    It is very common practice for turning vehicle to share the crosswalk with pedestrian to complete their turning maneuver at signalized intersection. During this sharing it is expected that turning vehicle will yield pedestrian first. But accident data reveals that pedestrian are not yielded properly by turning vehicle at signalized intersection. This study objectives to analyze the likelihood of left and right turning vehicles accepting gaps towards pedestrian considering difference on pavement using logistic regression. Speed of turning vehicle on conflict area during accepting gap is also analyzed to address the severity of interaction occurred by accepting gap. The results show that driver on crosswalk with brick pavement shows more yielding behavior by rejecting smaller gap compared to baseline condition and red colored pavement.
  • 神谷 啓太, 布施 孝志
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_759-I_769
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    近年,流動的な人口の把握が多分野から注目されており,GPSにより収集した大量の位置情報を用いたメッシュ人口のモニタリングが期待される.モニタリングでは異常状態の検知が重要だが,統計的異常検知手法の開発は扱うデータに応じてアドホックに行われている.本研究では異常検知問題を特徴付ける要因を整理し,メッシュ人口データのモニタリングを,半教師学習した統計モデルにより時系列データ中の文脈型異常を検知する問題と設定した.そして,時系列データの潜在状態数を推定可能な階層ディリクレ過程隠れマルコフモデルを援用した異常検知手法を提案した.シミュレーション実験では潜在状態の事後分布を比較する手法を用いることで高い性能を確認し,実データへの適用では列車運転見合わせが発生した時刻での高い異常スコアの検知を確認した.
  • 河岡 英明, 円山 琢也
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_771-I_780
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    本研究は,ブートストラップ法によりOD交通量・リンク交通量や政策評価指標の信頼区間と確率分布形を推定する方法を提示する.2012年熊本PT調査データを利用した試算を行い,次の知見を得た.1) OD交通量の確率分布形について,全目的では正規分布に従うが,買い物目的では正規分布とは限らない.2) リンク交通量の確率分布は,交通量が少ないリンクや,交通容量に近いリンクでは,分布形に歪みが生じ,正規分布とは異なる形状になる.3) 新たな環状道路による利用者便益は裾が右に長い分布となる.
  • 杉下 佳辰, 日下部 貴彦, 朝倉 康夫
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_781-I_792
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    局所的な障害が要因となり,連鎖的障害がシステム全体へ波及する現象をカスケード故障(cascading failure)と呼ぶ.ネットワークとして表現できる現実の社会システムでは,ごく少数のノードやリンクで発生した障害がネットワーク全体に壊滅的な損害をもたらし得ることが確認されている.本研究では,カスケード故障による壊滅的損害を回避することを目的とした損害抑制策を提案する.具体的には,局所的障害の発生直後に,Collective-Influenceと呼ばれる指標値の低いノードを意図的に除去することでネットワークにかかる負荷を軽減し,障害の波及を抑制する策を提案する.数値計算によって耐久性の低いネットワークに対しても提案策が効果的に働くことを示すとともに,提案策によって既存の方策を上回る損害抑制効果が発揮される可能性を示唆する.
  • 小山 真弘, 岩倉 成志, 柳下 浩
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_793-I_799
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    路線バスは,道路混雑の影響を受けダイヤ通りの運行が難しい.旅行時間信頼性評価の研究は,道路交通において多く行われているが,公共交通を対象とした研究は少ない.また,旅行時間信頼性評価は多くの研究で平均分散アプローチにより分析が行われているが,同じ平均,分散でも分布形状が異なることが考えられる.
    本研究ではこの現状を踏まえ,路線バスのダイヤからの遅延時間変動の分布形に着目して時間信頼性評価を行う.路線バスの実績所要時間データから遅延時間変動の分布形が多様であることを示し,独自に実施したアンケート調査から得られた選好意識データを用いて遅延時間分布に関するSPモデルを構築するとともに,交通手段選択に関する利用者行動のデータからRPモデル構築し,遅延時間分布の形状の時間信頼性評価への影響を検証した.
  • Pattamaporn WONGWIRIYA, Fumihiko NAKAMURA, Shinji TANAKA, Shino MIURA, ...
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_801-I_807
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    In Thailand, paratransit plays a role as the dominant transport mode in many urban areas. Specially, Songtaew or a modified pick-up truck taking passengers on the back with an overhead cage and two row seats in the back that can accommodate up to 20 passengers, operates as a main public transport mode in many medium-sized cities of Thailand. This mode is popular because it is more flexible and cheaper than other transport modes particular for students who have limitation on mode choice selection. However, the study on school trip have not yet well understood. Therefore, the main objective of this paper is to investigate user perception of Songtaew service focusing on examining the journey to school of the high school students in Khon Kaen City, the capital of the Northeast region. In the absence of statistics regarding school trip making in the city, a questionnaire survey has been undertaken to determine demographics, mode of travel to school, travel cost and duration, factors influencing transport modes of school travel and the student satisfaction with Songtaew service. Based on the analysis, the most of senior high school students who already have motorcycle license going to school by motorcycle. On the other hand, the junior high school students travel to school by taking Songtaew more than the other modes. For the student satisfaction with Songtaew service, the overall satisfaction reflects that generally all students who use Songtaew going to school are satisfied with Songtaew service. This study also recommend the future study more about the improvement of Songtaew regarding impact factors on their satisfaction, in order to maintain existing student users and attract new passengers. This improvement will make Khon Kaen City more sustainable and reduce the use of private vehicle especially motorcycle in the future.
  • 波床 正敏
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_809-I_820
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    フランスでは1981年にTGVが運行開始され,現在までに多くの主要都市に対してTGVサービスが提供されている.本研究では,フランスの幹線鉄道政策を振り返るとともに,近年の高速鉄道整備に伴う影響などについて分析するため,TGV導入前の1963年,導入直後の1985年,全国展開期の2005年の3年次について,主要都市間の各種所要時間指標を計測し,その特徴を考察した.
    その結果,最初のTGVが開通した直後の1985年以前では速度向上と乗り継ぎ利便の改善が図られることで総合的な利便性が大きく向上したが,1985年以後のTGVネットワークの全国展開期においては速度は向上したものの乗り継ぎ利便が悪化することが多く,総合的な利便性の改善は小さいことがわかった.
  • 紀伊 雅敦, 永野 雄貴, 中村 一樹, 清水 裕康
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_821-I_832
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    本研究では,新たな航空ネットワーク分析手法を作成し,アフリカでの航空ネットワークの効率改善可能性を分析した.その結果,搭乗率向上,運賃低下,待ち時間短縮を図りうることが示された.改善ネットワークでは,路線数は減少する一方,総便数が増加している.また,長距離路線は集約され多頻度の短距離路線と接続するハブ&スポーク型に近い形状が得られた.特に,北アフリカの都市を欧州とアフリカを結ぶハブとして位置づけることで,ネットワーク効率が高まる可能性が示された.2030年を想定した需要増加ケースでは,長距離ダイレクト路線の採算性が向上し,その結果,アフリカ域内の乗り継ぎ需要を減少させ,アフリカの都市はハブとしての順位を下げる一方,ロンドン,パリ等の欧州での乗り継ぎ需要を増加させると推計された.
  • 柿田 公孝, 秀島 栄三
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_833-I_843
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    荷主は自らの生産・出荷・入荷スケジュールを前提に早く・安く・確実な物流を実現できる最適な港湾を選択するのが理想である.一方で「取引のある商社が指示するから」といった慣習的な選択理由も見受けられる.慣習的な港湾選択の場合,例えば遠方の国際コンテナ戦略港湾を選択する傾向が強い.このような選択行動の特質を解明することが荷主の港湾への要請を的確に把握することに寄与すると考えた.
    本研究では他圏域に比べて利用港湾の選択肢が広く,かつ実態として阪神港・京浜港利用が顕在する中部圏を取り上げ荷主の港湾選択要因を探ることとした.結論として阪神港や京浜港を選択することには効率性を追求する選択と今後近隣港利用にシフト可能な選択が混在し,さらに阪神港・京浜港選択には歴史に裏付けられた必然性があることが明らかとなった.
  • 原澤 拓也, 山中 英生, 西本 拓弥
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_845-I_852
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    安全で快適な自転車利用環境の創出に向けたガイドラインは,自転車専用通行帯や,車道混在による通行空間を中心として,ネットワークを形成する方針を示している.一方,多くの自転車利用者は,車道部を通行することに不安を感じているのが現実と思われる.車道部自転車通行空間の普及には“安全感”を確保するための交通条件や街路要素を明らかにすることが肝要と言える.本研究では,自転車が自動車に追い越される現象に着目して,追い越され時の安全感評価モデルを開発することで,追い越した自動車の速度,自転車との離隔幅,車種といった特性に加えて,自転車専用通行帯,カラー舗装,矢羽根,ピクトグラムなどの車道での通行空間表示が安全感に与える影響を定量的に明らかにした .
  • 猪井 博登, 藤本 隆史, 土井 健司
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_853-I_859
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    本研究では,事業者の事業実態や国・自治体による支援内容に着目することで,乗合事業に対するタクシー事業者の参入に対する態度や参入意向に関する知見を得た.具体的には,近畿圏の法人事業者を対象とした調査を実施し,その結果をもとに数量化II類およびコンジョイント分析を行った.その結果,1)事業の多角化・効率化を図っている事業者は積極的な参入態度を持つ傾向にあるが,2)中規模事業者は参入意向が低い傾向にあること,3)事業者の参入を促すためには欠損補助を中長期的に行うことが必要であり,4)国が推進している「ITシステム導入費の補助」を実施するだけでは不十分であることがわかった.
  • 中村 一樹, 紀伊 雅敦
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_861-I_870
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    中心市街地活性化施策の1つとして歩行空間整備への注目が高まっているが,従来の評価手法では,歩行空間デザインの個別の物理的要素に対して評価が行われており,歩行行動に影響する包括的な知覚的要素に対する評価が行われていない.本研究では,歩行行動の欲求段階に基づく知覚的要素を用いて中心市街地の歩行空間の質を評価することを目的とする.歩行空間の質を構成する知覚的要素を利便性・快適性・安全性に分類し,個人の価値観に基づく各要素項目の重要度と満足度から,歩行空間の質をアウトカム指標として評価するモデルを構築する.そして,高松市中央商店街周辺でケーススタディ分析を行った結果,重要度は年齢や来訪頻度により異なり,満足度が高い歩行空間では来訪頻度が高いと評価が高くなることが示された.
  • 山田 忠史, 福井 一彬
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_871-I_877
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    都市内の貨物交通に起因する諸問題の解決・緩和に有用な都市内共同配送に着目し,輸配送ネットワーク均衡モデルの枠組みで,輸配送量,運賃や共同配送運賃などを内生的に決定する共同配送モデルを提案する.モデル化に際しては,実際に行われている共同配送の形態を基にして,荷主,消費者(消費市場),共同配送を委託する物流業者と受託する物流業者を対象に,それらの分権的な意思決定や行動の相互作用を考慮して定式化する.現実の数値との整合性を検討することにより,提案したモデルの基本的性能を確認するとともに,モデルを用いた基礎的な数値計算を行い,配送デポの施設費用や都市内の運行費用に注目して,共同配送の成立要因について考察する.
  • 橋本 成仁, 西浦 哲哉
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_879-I_888
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    わが国では,平成27年度に,交通安全上有効だとされるハンプや狭さくなどの物理的デバイスの基準作りが行われ,地区交通安全対策は大きな転換点を迎えている.今後ますますハード面での対策が推進されていく一方で,カラー舗装などの視覚的な効果に期待される交通安全対策も普及している.
    本研究では,地域住民の参加が重要だとされる地区交通安全計画において,生活道路単路部の車道もしくは路側帯に連続的にカラー舗装する場合に着目し,カラー舗装の導入に対する地域住民の意識構造を把握し,その課題を検討した.結果として,カラー舗装の導入には,カラー舗装による速度抑制効果に対する意識が最も強く影響していることが明らかとなった.また,地域社会との関わり方や,生活道路に対する意識も影響していることが示唆された.
  • 菊池 雅彦, 矢島 隆, 神田 昌幸
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_889-I_901
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    近年自転車の通行空間について,自動車との混在通行への対応が課題となっているが,戦前から戦後においても荷車,自転車,自動車等の混合交通へ対応する幅員構成の変遷があり,これらの取り組みは今日においても参考になると考えられる.本研究では街路/道路構造令の幅員構成に焦点をあて,当時の政省令,改正案,解説書や教科書から設計思想の変遷を整理分析した.その結果,1)混在通行(広幅員車道を規定)と分離(高速/緩速車線)の設計思想があったこと,2)自動車の急増に従い設計思想が混在通行から分離になってきたこと,3)近年自転車については交通状況に応じて混在の通行空間も採用されていること,4)各時代の混合交通の実態を踏まえ分離か混在かの設計思想の選択をしてきたこと,を明らかにすることができた.
  • 渡邉 拓也, 柴田 宗典, 鈴木 崇正
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_903-I_916
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    都市間交通ネットワークのより効率的な利用を検討するにあたっては,その適切な評価が不可欠である.交通ネットワークには,利用者利便性の向上や環境負荷の低減など相反する複数の社会的な要請があるため,複数の目標を同時に考慮可能な,数理最適化に基づくネットワーク評価を可能とする手法を開発した.
    本研究では,日本全国の幹線旅客交通網を対象に,各区間の運行本数を決定変数として,多目的遺伝的アルゴリズムを用いて最適な運行本数の組み合わせを導出した.分析結果から,複数の交通モードで連携してサービス供給を行うことが,都市間交通ネットワーク全体の最適性のために効率的であること等が示唆された.
  • 金 利昭, 平井 隆大郎, 矢澤 拓也
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_917-I_926
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    本研究ではウォーカー・ランナー・サイクリストが混在するレジャー交通の問題点を明らかにするため水戸市千波湖周回路のレジャー交通を対象にビデオ観測調査と利用者アンケート調査を行った.ビデオ観測調査からレジャー交通の行動パターンを13個抽出したが,特に「並走」「追い越し」「距離が近い」「通行帯侵入」が目立った.利用者行動が他者に与える不快度をアンケート調査を用いて分析した結果,利用者の多くが「並走」「通行帯侵入」に問題意識を抱いていた.最も必要とされるルール・マナーは「歩行者・自転車の通行帯区分」である.並走やイヤホン装着は全ての利用者にルール・マナーの適用が求められたが,並走サイクリストには強い指導,追い越しはサイクリストに対してのみであるなど個別ルール・マナーの対応が望まれていることがわかった.
  • 会田 裕一, 大沢 昌玄, 岸井 隆幸
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_927-I_938
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    人口密集,二輪車利用中心の交通特性が特徴の台湾・高雄市では2012年12月環状型LRTを整備する事業計画を承認し,2016年内の第一期開業に向けて建設が進められている.本研究では,高雄LRT計画の事業化プロセスを分析することにより事業推進要因・事業課題を抽出し,アジア諸都市でのLRT導入促進に向けた示唆を得ることを目的とする.
    その結果,高雄市LRT計画の事業化プロセスでは,計画変更,計画評価プロセスの長期化,認識のギャップ,投資環境の変化,住民との合意形成による事業化の遅延が主な課題であることが明らかとなった.一方,台湾鉄道の廃線空間を有効活用することで事業化が加速したことも明らかにした.高雄LRTにおけるこれらの課題や推進要因は,他のアジア地域でLRTを導入していく上でも教訓として活きていくものと考えられる.
  • 後藤 梓, 中村 英樹
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_939-I_954
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    今後わが国では,生活・都市機能の集約した拠点間を効率的に連絡するため,道路ネットワークを機能階層型に再編してゆくことが重要である.そこで本研究では,拠点間連絡性能として目標旅行時間が与えられた場合に,これを連絡する道路ネットワークの望ましい階層構成を検討することを目的とする.道路ネットワークの階層構成は階層数,階層別目標旅行速度,道路間隔,下位階層との接続間隔の組み合わせからなり,沿道出入や階層間接続で生じる遅れなどが旅行速度に及ぼす影響を考慮してその代替案が構築される.今回は東海道地域を対象に,階層構成代替案において達成される拠点間旅行時間を推定し,特に自専道の発達していない半島や山間部の集落から生活拠点・高次都市拠点への連絡に対して,高速の階層を設定することの重要性が定量的に示された.
  • 円山 琢也, 照屋 尚大, 日高 陸生
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_955-I_962
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    選挙に投票する政治意識の高い市民は,交通計画への関心が高く,交通調査への回答率が高い可能性がある.本研究では,投票率と交通調査参加率(回答率)との比較分析を行うことで,投票率データの交通調査手法論への活用可能性について検討することを目的とする.より具体的には,2012年度熊本PT調査の参加率と2013年参議院選挙などの投票率を比較する.まず,投票率も調査参加率も高齢者ほど高くなるという共通の傾向にあるが,65歳以下では男性より女性の値が高く,65歳以上では逆になるという傾向が共通していることが分かった.次に,投票所別の投票率とCゾーン単位の調査参加率を比較したところ,熊本市中央区では,この2つには強い相関があることが示された.また,調査参加選択モデルに投票率データを導入しモデルの説明力の向上を確認した.
  • 高橋 洋一, 中村 文彦, 早野 公敏, 田中 伸治, 三浦 詩乃, 有吉 亮
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_963-I_974
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    近年,途上国への導入が盛んなBRTは乗車定員の大きな連節バスを運行することで鉄軌道システムと同等の輸送力を安価な費用で実現可能とする.しかし,重量の大きな連節バスの運行によってバス専用道路が激しく損傷し,舗装維持費用が急増する恐れがある.本研究は,より大きな乗車定員を持つバス車両を前提に設計することで舗装維持費用が安価となる輸送量を明らかにした.また,交通需要と乗車定員がより多く想定される場合,通行負荷が激しい停車部へのコンクリート配置が修繕費用の削減に有効であることを明らかにした.そして,供用中の輸送量増加および大きな乗車定員を持つ車両への変更が想定される場合,乗車定員と舗装配置の組み合わせを考慮した舗装設計により輸送量増加と定員変更による修繕費用の増加が抑制されることを明らかにした.
  • 波床 正敏, 村上 悟
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_975-I_984
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    LRTは旧来の路面電車に比べて低騒音・低振動の軌道交通であるとされているが,繁華街の街路では,歩行者がLRVの接近に気付きにくくなる原因となる可能性がある.そこで,本研究では,海外のトランジットモールを走行するLRVの発する騒音レベルを実際に測定し,歩行者がトランジットモール上の軌道をどのようなタイミングで横断するのかについて音の面から分析を行った.
    分析の結果,接近するLRVの発する音が街路の静寂時の騒音レベルを超えるようになると軌道横断をやや控える傾向になり,定常的な暗騒音レベルと同程度になると大きく横断者が減ることがわかった.
  • 稲垣 具志, 小早川 悟, 寺内 義典, 青山 恵里
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_985-I_992
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    近年,子どもにとって安心で安全な道路環境の構築に向けた取り組みが活発化している.効果的な安全教育・対策の構築には,発達に応じて変化する子どもの交通社会における能力を的確に把握する必要がある.先行研究では道路横断時の判断特性に着目し,接近車両に対する小学生の判断能力について実験的に考察し,子どもは車両速度に対応した判断ができないこと等を明らかにしている.本稿では子どもの横断判断能力の特性について小学生保護者へ情報提供することによる影響をアンケート調査により把握した.これより,子どもの交通行動能力に関する保護者の認識が実態と乖離していることが明らかとなった.また,多くの保護者に対して強い危険認識が与えられ,自動車運転時の速度抑制や子どもへの指導に関する積極的な意識変化をもたらすこと等が示された.
  • 橋本 泰行, 福本 潤也
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_993-I_1007
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    東日本大震災では全国から膨大な量の物資が被災地へと届けられ被災者の生活を支えた.ただし,その輸送過程では多くの問題が発生した.これらの問題は情報共有の難しさと有効なマッチング・メカニズムが欠如していたことが主な原因である.土生・福本1)は効率的な物資供給のためのマッチングシステムを提案した.同システムは,入力された供給可能量と必要物資量の情報から,効率的な割当計画や経路計画を出力するシステムである.しかし,先行研究では単純化のために車両の整数性や利用制約を考慮していない.本研究ではYi and Ozdamar2)の手法を先行研究のモデルに組合せ,車両経路計画を同時に決定するマッチングシステムへと拡張する.仮想データを用いた数値実験により,提案システムの特性と有効性を検証する.
  • 松村 暢彦, 近藤 慎
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_1009-I_1016
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    小学生の児童を持つ子育て中の親世代は壮年期,中年期にあたるため,仕事で忙しく家族や自分の時間の確保が難しい.まして,地域活動に参画する時間を確保することは難しいため,地域活動や参加型まちづくりに参加するのは高齢者に偏っている傾向にある.そのようななか,子どもが小学校に通っている間は,小学校の保護者活動を通じて保護者と知り合うことができる.そこで小学校の保護者活動は自分の子どもや小学校のためだけにあるという認知的バリアを解消し,地縁ネットワークの形成の場として機能していることを検証することを目的としている.小学校の保護者活動を保護者同士の接触度合いから分類し,要因分析を行った結果,小学校の保護者活動によるネットワーク形成が地域参画意識向上へ大きく寄与していることが明らかになった.
  • 四辻 裕文, 松本 猛秀, 米村 圭一郎, 喜多 秀行
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_1017-I_1028
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    自動車専用道路のカーブでの速度超過事故の予防のために路面標示の高度化を図る目的で,カーブ緩和区間手前の直線区間に設置した路面側面表示の配列パターンがもたらす減速効果に着目した.ドライビングシミュレータを用いた室内走行実験と走行動画を用いた速度知覚実験を通じて,4種類の配列パターンの効果を検証した.運転者が認識した地点速度の推移を車速の推移に基づいて隠れマルコフモデルで推計し,知覚速度の推移と車速の推移との乖離を道路曲線半径別に見積もった.本実験結果に限れば,道路曲線半径の変化に従って車速の過小認識をもたらす配列パターンが存在するという点,車速の過小認識という危険を考慮すると表示設置区間の後半もしくは前半の区間で残りの区間よりも大きな間隔減少率とした配列パターンが望ましいという点,が判明した.
  • 明渡 隆浩, 長野 博一, 庄子 美優紀, 伊東 英幸, 藤井 敬宏
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_1029-I_1036
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    わが国では,子育てと仕事の両立支援や女性が出産・育児のしやすい環境づくりに向けた検討が順次進められているが,子ども連れ世帯は就業状況・世帯状況・子どもの発育状況により,外出活動そのものが多様化しており,移動負担要因についても明らかにされていない部分が多い.そのため,これらを支援する内容もより複雑化することが今後予測される.本研究は,保育園および幼稚園通園世帯におけるご両親にそれぞれアンケート調査を実施し,移動時の負担と行動意識,世帯状況等の子育て環境,立地状況の整理を行ったうえで,共分散構造分析を用いて移動負担要因との関係性を定量的に示した.また,移動支援策の利用要因を数量化II類を実施し,共分散構造分析から得られた結果と同等の要因が影響していることが明らかになった.
  • 平田 輝満, 二見 康友, 蒔田 良知
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_1037-I_1045
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    滑走路を使用する連続した航空機間の最低間隔は,離陸と着陸,後方乱気流区分からみた機種の組み合わせ毎に異なるため,離着陸の順序付けが滑走路の処理容量に影響する.本研究では成田空港と羽田空港を対象に飛行軌跡データを用いて航空機の離着陸順序の実態と滑走路容量算定方式の離着陸順序の前提(ランダム発生)との乖離について分析を行った.その結果,成田空港においては1本の滑走路を離着陸共用で使用する場合に,処理効率の高い離着陸交互運用の発生確率がランダム仮定よりも有意に高く,羽田空港においても交差する滑走路において後方乱気流区分を考慮した離陸順序が処理効率の高い順序付けの発生確率がランダム値よりも同様に有意に高いことが分かった.最後に,これら乖離の実態を考慮した滑走路処理容量について考察を行った.
  • 大庭 哲治, 松中 亮治, 中川 大, 工藤 文也
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_1047-I_1056
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    厳しい経営状態にある地域鉄道を維持するにあたっては,むやみに運行費用の削減をするのではなく,事業者ごとに路線特性を考慮し,運行費用の適正化を目指すことが必要である.そこで本研究は,平成23年度に運行されていた日本全国の地域鉄道事業者を対象に,運行費用の相違が生じる要因を明らかにすることを目的として,運行費用と路線特性の関連性について分析した.その際,従来から作業量の指標として用いられている鉄道車両の走行距離に加え,時刻表に基づいて算出した鉄道車両の走行時間を新たに分析指標として加えた.
    その結果,線路保存費,電路保存費,車両保存費,運転費,運輸費の5費用項目において路線特性と運行費用の関連性について統計的に明らかにし,また鉄道車両の走行時間が運行費用を分析するにあたって有効であることを示した.
  • 平田 輝満, 笠原 徳文, 豊崎 祐司
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_1057-I_1065
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    今後の労働力不足も背景に益々物流効率化が求められている現状にある.各自治体においては都市の競争力強化や地域活性化という側面で物流拠点や工場の誘致施策を展開してきており,物流施設の立地特性や各地域の立地ポテンシャルの分析結果が施策検討に役立っている.一方で,我が国の国土の中でも産業の立地が時代に応じて変化しており,物流施設の立地傾向や輸送効率の高い立地分布もそれに応じて変化すると考えらえる.そこで,本研究では,搬出搬入条件を考慮した物流施設の立地選択モデルの構築が必要であると考え,第5回東京都市圏物資流動調査結果を用いて,各物流施設ごとの輸送データから搬出搬入指標を定義し,搬出搬入特性を考慮した立地選択モデルを構築した.
  • 小林 渉, 岩倉 成志
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_1067-I_1074
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    筆者らが開発を進めてきた遅延の発生や波及を高精度に再現する列車遅延連鎖シミュレーションシステムは,信号保安システムの改良や輸送力増強に伴うオペレーションの変更など広範な遅延対策の効果を計測することができるが,遅延対策として有効な階段やコンコース増設などの駅構造の改良の効果を計測することはできなかった.
    このため本研究では,駅構造の違いによって乗車位置が変化し,それが列車遅延に与える影響を予測可能にする乗車駅ホーム上の旅客の乗車位置選択モデルを構築する.ケーススタディとして階段を増設をした場合の遅延予測を行う.結果として乗車位置選択モデルは乗車分布と降車分布を概ね再現できた.シミュレーションシステムでの再現性もおおむね良好であり,また駅改良による遅延削減の例も示すことができた.
  • 吉城 秀治, 辰巳 浩, 堤 香代子, 川浪 晃
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_1075-I_1083
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    少子化対策の一つとして,子連れであっても安全に安心して外出できる都市環境,交通環境を整備していく必要があるものと考えられる.しかしながら,最も基本的な移動手段である徒歩についてはこれまでにあまり着目されておらず,歩行環境を具体的にどう整備していくかについては検討が進んでいない.
    そこで本研究では,保護者が子どもを自立的・自発的に歩かせても安心できるような歩行環境の創出が重要であるとの問題意識のもと,幼児を持つ保護者を対象にアンケート調査を実施しそのような歩行環境について検討した.特に子連れの歩き方,子の歩かせ方に着目し,保護者による子どもの歩行制限の実態の把握と,子どもを安心して歩かせられるための歩行環境の要因について検討した.
  • 高橋 咲衣, 内田 敬
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_1085-I_1094
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    視覚障碍者は,晴眼者と異なり,歩行支援ナビを利用できない.そのため,視覚障碍者は,歩行経験のない場所には晴眼者に連れて行ってもらわねばならず,日常生活で歩行し慣れている道でも,周辺施設について知れず,街歩きを楽しめない状況にある.本研究の目的は,視覚障碍者が日常生活で利用している街情報を把握し,目的地を目指すだけでなく,街歩きを楽しむという観点から,街情報を記述する際のルールを示した既往ガイドラインを改訂することである.
    本研究では,音声ARアプリを実装したスマートフォンを用いて,視覚障碍者を対象としたフィールド実験を行い,そのヒアリング結果からガイドラインを改訂した.これにより,日常生活モビリティニーズを考慮した視覚障碍者向け歩行支援ナビの早期実用化,拡充可能性を示せた.
  • 横関 俊也, 萩田 賢司, 矢野 伸裕, 森 健二
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_1095-I_1104
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    本研究では,千葉県東葛地域を対象として,通行方法別に分類した自転車の遭遇台数調査のデータと自動車と自転車間で発生した事故の統計データを用い,自転車の通行方法別に事故率の比較を行った.その結果,進行サイドでの比較では,車道における自転車の右側通行の危険性は左側通行の2.8倍高くなった.歩道においても同様に自転車の右側通行の危険性は左側通行の2.7倍高いという結果になった.また,通行位置による比較では,自転車の歩道走行(左側通行・右側通行)と比較した車道走行(左側通行)の危険性は3.0倍となり,車道走行の危険性が高くなっていた.以上により,自転車に通行方法を遵守させるためにも,より安全な自転車の車道走行環境を形成していく必要性が示唆された.
  • 大森 清博, 柳原 崇男, 北川 博巳, 池田 典弘
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_1105-I_1113
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー
    近年,公共交通施設や建築物のバリアフリー化が進められているが,一部の誘導サインは視覚障害者や高齢者にとって利用困難な場合がある.本研究では視線計測装置を用いて鉄道駅周辺で歩行実験を行い,高齢者の視覚探索特性の観点から路面誘導サインの効果を検証した.実験の結果,路面誘導サインは吊り下げ型サインに比べて,発見率,発見距離,誘目性に関する聞き取りの評価が低い一方で,注視時間が短く,可読性および自分にとっての有効性に関する聞き取りについて高い評価が得られた.また,一度発見するとそれ以降路面を意識して歩行する傾向が見られた.さらに,著者らの先行研究と比較した結果,高齢者群は非高齢者群に比べて路面誘導サインの発見距離が短く注視時間も短いが,誘導に必要な情報を読み取れていることが示唆された.
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