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安間 匡明
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_1-I_16
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
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PFI・PPP 案件では,プロジェクトファイナンス(PF)を供与する金融機関によって事前の事業審査とSPC 財務状況モニタリングが行われ,政府・自治体もそれを活用できることから,事業の安定的な実施に寄与できるとされる.しかし,我が国でこの機能が具体的に有効に作用したとの報告はほとんど聞かれない.本稿では,海外の PPP では類例をみない特異なプロジェクト契約の実態と PF の態様に焦点をあてたうえで,社会厚生的により望ましいファイナンスおよび PPP そのものの設計の在り方について併せて考察する.
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満岡 愛来, 井上 聰史, 稲村 肇
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_17-I_27
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
公共土木事業に対する世論に関する研究は,土木工学,建築学,経済学,社会学,心理学など幅広い学問分野でなされてきた.これら研究の変遷や動向を俯瞰的に把握することは重要であるが,研究テーマが広範で論文数が膨大なため俯瞰的把握は容易ではない.そこで本研究では,キーワード群により学術誌を検索して論文を抽出・分類し,分類した論文の引用文献をシステマティックに遡ることで研究分野及び論文の系譜を明らかにする手法を開発し適用した.この結果,2003年から2018年までの15年間における研究論文を対象として52の論文集を特定し,公共土木事業に対する市民の態度や事業者の信頼性及び双方向性向上等の分野の広がりと動向を分析した.さらに事業評価分野について,研究分野及び論文の系譜を明らかにした.
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小池 淳司, 森 真太朗
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_29-I_36
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
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本研究の目的は,日本における公共投資が民間投資に与える影響についてマクロ計量経済モデルを用いた分析を行い,全国での公共投資による民間投資誘発効果と,地域別の効果の違いについて明らかにすることにある.分析には民間資本と社会資本の長期ストック均衡を仮定した誤差修正モデルによる民間投資関数の推定を用いて,日本全国および都道府県別のクラウディングイン・アウト効果の計量を行う.その結果より,日本全国では,クラウディングイン効果はいまだに期待でき,特に地方部においてその効果は大きいことが確認できた.
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柿本 竜治, 吉田 護
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_37-I_42
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
自然災害リスクの認知が高くても,適切な防護行動を取らない自然災害リスク認知のパラドックスが存在する.リスク認知のパラドックスの存在は,避難遅れが頻繁に発生している豪雨時の避難行動を慎重な思考による行動として取り扱うことに疑問を投げ掛けるものである.そこで,本研究では,状況認識を重要視している自然主義的意思決定モデルを援用し,豪雨時の避難行動の意思決定過程をモデル化する.豪雨時に周辺状況は時々刻々と変化するが,その周辺状況の認知とともに水害発生への意識も変化するだろう.避難実行までの意識変化をモデル化するその際に,説明変数に状況認識を取り入れる.具体的には,平成24年7月の九州北部豪雨の際に熊本市内で浸水被害を受けた龍田地区の住民を対象に避難実行までの意識変化を表現できるモデルを構築する.
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越智 健吾, 関 信郎, 大塚 賢太, 石井 良治, 加藤 桃子, 原田 知可子, 石神 孝裕
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_43-I_55
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
高齢者が容易に社会参加が可能な外出環境を整備することは,都市施策における重要な課題であり,その際,財政的な制約にも配慮して,効率的かつ効果的な施設配置や交通施策を考える必要がある.本研究は,市区町村による立地適正化計画策定を支援するため国土交通省で進めるスマート・プランニングの新たな手法として,行動データに基づいて,高齢者の活動を支援する施策の実務的評価手法の開発を目指すものである.本研究では,GPSと紙調査票を併用した詳細な高齢者行動調査を実施することで,私事活動の頻度や活動場所等に関する基礎的な知見を得た.さらに,分析結果を踏まえ,公共施設等の施設配置や公共交通,歩行環境の整備等の交通施策を評価する実務的手法の枠組みを提案した.
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青木 駿太, 尾崎 拍夢, 織田澤 利守, 喜多 秀行
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_57-I_68
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
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地域公共交通計画の策定では,意見表明者が対象地域の実情について十分かつ正確な認識に基づき意見を表明する必要がある.それを実現するために,「対象地域の全住民の生活状況を何人かごとに分割し,意見表明者全員に分配する」手法が存在するが,先行研究ではそこで提供される情報や表明される意見の収集は全数調査で行うことが前提であった.本研究ではそれを標本調査で行った場合でもこの手法が適用可能かをモデル分析及び数値分析で確かめた.その結果,情報を標本調査で収集する場合には,意見表明者に提供される情報の総数が全数調査のときと同じであるならばこの手法が適用可能であることが明らかとなった.また意見を標本調査により収集する場合には,意見表明者に含まれる対象地域の住民の割合をより高くする必要があることが明らかとなった.
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尾崎 拍夢, 織田澤 利守, 喜多 秀行
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_69-I_82
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
公共交通サービスなど社会資本の整備計画に対して表明される意見は「公共的判断」に基づいたものであることが要請されるが,そのためには対象となる地域住民の生活状況に関する十分かつ正確な情報が提示されている必要がある.著者らは「全地域住民の情報を何人か毎に分割し,意見表明者に分配する」手法(分権的調査手法)を提案しているが,その有用性について実証的には確かめられていなかった.そこで本研究では,地域住民の移動環境に関する情報と計画代替案を提示して計画に対するWTP を問うアンケート調査を本手法を用いて実施し,実証分析を行った.設定した条件の下ではWTP を3~7%の誤差精度をもって推定することができることなど,一定の範囲においてこの手法が有用であることが明らかとなった.
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西脇 文哉, 畑山 満則, 大西 正光, 伊藤 秀行
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_83-I_100
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
緊急物資支援に関する諸問題の解決のために,様々な研究や提言で民間の力の活用が推奨されている.それを受け,多くの自治体が関連企業や団体と災害協定を締結している.しかし,広範囲に甚大な被害を及ぼすような災害では,交通ネットワークの損傷や大量の支援要請が発生し,外部からの支援を早期に受けられない可能性が高く,地域内に残された資源のみで応急対応を行う必要が生じる.本研究では,このような時期を想定してトラックの確保と荷役を地域内の企業と地域住民に協力を得て行う物資支援計画を提案した.さらに,高知県四万十町におけるシミュレーションを行い,資源量を確保できることを明らかにした.そこでこのような合意を発災前から地域内の企業や住民と行政の間で行うことで,より効果的な支援物資輸送を実現できる.
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小池 則満, 森田 匡俊, 橋本 操
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_101-I_108
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
大河川近傍に位置する小学校では,素早い意思決定を可能とする実効性のあるタイムライン作成が求められている.本研究では,洪水予報河川の直近にある小学校を対象に新たに開業した大型商業施設への避難を組み込んだタイムラインの構築を検討した.避難訓練を繰り返し行うことで,より迅速な避難方法を考えるとともに,保護者へのアンケートでお迎え時間や避難場所に関する意見を集約した.地域の変化に対応したタイムライン改善を考えるためのひとつの実践結果を示すとともに,小学校における洪水タイムライン作成のための課題について整理した.
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坂井 琳太郎, 田中 皓介, 柳沼 秀樹, 寺部 慎太郎, 康 楠
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_109-I_116
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
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一般的な交通行動モデルは,必ずしも現実的とは言い難い人間観の前提を置くと考えられるが,このモデルの学習により,前提とされる人間観の強化が想定される.その理由として先行研究においては,人間が利己的であるという前提を置く経済学の専攻や学習により,学習者自身の利己性や,人間は利己的な存在であるという人間観が強化されることが示唆されている.そこで本研究では,モデルに関する講義が選択科目として開講されている東京理科大学理工学部土木工学科3年生を対象にアンケート調査を実施し,分散分析により比較することで,モデル学習の影響を検証した.その結果,交通行動モデルに関する講義の履修により,人間は単純な目的のために単純な動機に基づいて行動をしている,と考える傾向である単純人間観が高まることが実証的に示唆された.
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辻 貴大, 日比野 直彦, 森地 茂
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_117-I_126
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
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近年の高齢化社会の進展,身体障害者の外出機会増加および東京オリンピック・パラリンピック競技大会を2020年に控えていることから,改めて公共交通機関におけるバリアフリーとしてのエレベーターが注目されている.これら設備の整備は各種法令に基づき補助制度等により着実に進捗しており,近年では利用者ニーズの多様化から受益者負担を視野に入れた設備整備も検討されている.一方で,エレベーターの増加に付随して,維持管理費用の増大が課題となる.これまで,点検に基づく維持管理は期間により画一的に実施され,利用実態が反映されていないのが現状である.本研究では,地下鉄駅におけるエレベーターを対象に利用実態,維持管理費用等の関係を明らかにし,これらの実態を把握するとともに,今後の維持管理費用抑制に向けた方策を提案する.
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藤田 翔乃, 畑山 満則
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_127-I_135
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
被災者支援策の判断材料として用いられる罹災証明書の発行は迅速性と正確性を必要とするが,過去の地震災害では多くの時間を要しており,行政は更なる効率的な仕組みを必要としている.本研究では,航空写真から深層学習を用いて地震被害の大まかな規模と全体像を把握する屋根損傷家屋把握システムを開発した.このシステムはGISの建物ポリゴンの位置情報により判別のための画像データを自動で作るアルゴリズムにより迅速な予測が可能である.ブルーシート判別は正解率約93%,直接被害判別は正解率約81%の精度で予測ができた.深層学習では高画質で大量の画像データが必要である一方,現状では画像データ数が乏しいという問題点があるため,画像認識アルゴリズムなどの改良に加え,データの収集方法の工夫が必要であることがわかった.
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守田 賢司, 中村 一樹
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_137-I_143
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
歩行空間には,通行や車両利用に関する利便・安全,路上の滞留活動に関する快適・楽しさなど様々な歩行ニーズに関する機能があり,これらは歩道の車道や建物との境界空間で多く見られる.しかし,歩行空間整備は個別の機能に注目し,ある機能のデザイン要素の整備が他の機能に有効かは十分に検討されているとは言い難い.そこで,本研究では,国際的に多様な歩行空間をVRで評価し,歩道の境界空間デザインが歩行空間評価に与える影響を分析する.まず,国内外のケーススタディ地区におけるデザインの違いを把握する.そして,VRツールを用いてこれらの歩行ニーズの評価の実験調査を行い,デザインとの関係を分析する.この結果,境界空間デザインは複数の歩行ニーズに大きく関係し,建物側と車道側でそれらの関係が異なることが明らかになった.
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木村 直人, 宇那木 啓二, 有村 幹治, 浅田 拓海
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_145-I_152
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
本研究は,2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震時における室蘭市民の防災意識と減災行動をアンケート調査から明らかにするものである.アンケート調査は,発災後の約3週間後に実施し,住民基本台帳(18歳以上)から無作為に抽出した5,000世帯に配布し,有効回答数は2,187部となった.これを集計したところ,年代や居住地区で防災意識や地震後の行動に差異が見られた.次に,クラスター分析により,回答パターンの類似性で回答者を類型化した.これらの特徴を整理し,GIS上に可視化し,今後の防災・減災計画とそれに伴う教育のありかたについて考察した.今後は災害に対して備蓄などの自助の意識を持たせると共に,災害時に必要な情報を世代間で隔たりなく発信する共助力を育てる施策が重要となる.
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長木 雄大, 森崎 裕磨, 藤生 慎, 高山 純一, 柳原 清子, 西野 辰哉, 寒河江 雅彦, 佐無田 光, 平子 紘平
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_153-I_161
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
近年,日本で頻発する大規模災害において,避難行動要支援者の被害が甚大である.水害は災害の進行速度が比較的緩やかであるため,被害が拡大する前の早期避難が実現すれば人的被害を大幅に軽減することが可能である.そこで本分析では,避難により多くの時間を必要とする避難行動要支援者を考慮した身体状況や地域特性に着目し,町字ごとに細分化された新たな避難情報提供法による人的被害の軽減を目的とする.その基礎的把握として,時間経過を考慮した被災可能性人口の推計を行った.その結果,石川県小松市を流れる梯川の一破堤点が氾濫した際の避難行動要支援者がいつ,どのような浸水想定に,何人程度見舞われるのかを町字単位での推計を行い,被災危険性を明らかにすることができた.
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森崎 裕磨, 藤生 慎, 上田 ますみ, 西多 由貴江, 和田 紀子, 島崎 聡子, 草場 勇介, 岩田 潤治, 木林 晴美, 高山 純一
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_163-I_170
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
昼間において,災害時要配慮者に分類される乳幼児が増加する幼稚園・保育園では,大規模な地震災害を想定し,園児の非常食を備蓄する動きが見られる.園が非常食を用意するケースも存在するが,保護者が園児の嗜好やアレルギーなどを考慮して準備するケースも存在している.筆者らは,金沢大学附属幼稚園との連携のもと,平成 28 年度より,保護者が園児の食料を自ら調達する「防災リュック」の提案を行ってきた.本研究では,防災リュックの中身に関して,質・量について 3 年間の変化を追い,また,防災リュックを準備する際の不安点などの意識構造を明らかにした.本研究における分析から,防災リュックの中身を通した保護者の防災意識の変化,準備意識を把握し,防災リュックの実装に向けた有用性の検討を行うことができた.
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奥嶋 政嗣, 豊田 晃太朗, 渡辺 公次郎, 山中 英生
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_171-I_180
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
本研究では,津波災害が懸念される徳島東部都市圏で,東日本大震災前後に新築された戸建住宅の居住世帯を対象としたアンケート調査結果を用いて,新築戸建住宅立地の実態を把握するとともに,立地要因を特定し,津波災害などの災害リスクに加えて,家族との近居およびまちへの想い(地域心象)に着目し,その影響を明確にすることを目的としている.対象都市圏での新築戸建住宅立地では,近隣公示地価,居室数,交通利便性だけでなく,地域への愛着が影響していること明確となった.また,東日本大震災前後での意思決定時期による立地の差異として,震災前には徒歩圏での近居および自動車アクセスを前提とした近居が考慮されていたが,震災後では最大想定津波浸水深などの災害リスクの回避を重視する傾向が明確であることがわかった.
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大庭 哲治
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_181-I_190
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
本研究は,2000年度から2018年度までの地価公示データと,京都市と連携して収集・整理した2017年度までの京都市電線類地中化実績データを用いて,独自の空間パネルデータを構築した上で,着手・完了・抜柱時点を考慮した,無電柱化事業が周辺地価に及ぼす因果的影響を差分の差分推定法で推計した. その結果,2010-2018年度の分析期間での無電柱化事業(地中線埋設に係る本体工事)完了後の因果的影響は,処置群の空間的範囲が50mの場合は12.5%の価格プレミアム,処置群の空間的範囲が200mの場合は7.5%の価格プレミアムがあることを明らかにした.また,影響が発現するタイミングの違いを考慮するため,着手・完了・抜柱後の因果的影響を検証した結果,抜柱後の影響が特に大きいことを明らかにした.
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白柳 洋俊, 倉内 慎也, 坪田 隆宏
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_191-I_197
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
本研究は,街並の視覚性ワーキングメモリが注意捕捉を促進するとの仮説を措定し,室内実験により同仮説を検証した.和風型街並を回遊する際,一定時間歩行すると同街並を構成する和風建築要素に対して注意捕捉が促進されることがある.注意捕捉は視覚性ワーキングメモリに保持された視覚的な記憶と類似した要素に対して促進される.そこで本研究は和風型街並を対象に,事前に保持した和風型街並の視覚性ワーキングメモリが駆動することで,事後の和風型街並の和風建築要素に対して注意捕捉の促進が生じるとの仮説を措定し,同仮説を視覚探索課題により検討した.実験の結果,和風型街並を事前に認知することで,事後の和風建築要素に対する注意捕捉が促進すること,すなわち仮説を支持する結果が得られた.
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長崎 滉大, 中西 航, 朝倉 康夫
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_199-I_205
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
道路網を構成するリンクやノードの接続関係を用いて道路網の形態を分析する研究は行われてきたが,特定の都市施設周辺の道路網に焦点を当て,各道路の実延長や偏角などから道路網の評価を行う研究はほとんど存在しない.本研究では,角度データを扱う方向統計学を用いた新たな道路網の評価手法を構築した.まず,駅周辺の各道路の偏角に着目したグラフを作成した.次に,偏角の確率分布のパラメータを推定する方法を開発するとともに,推定パラメータを用いて駅周辺空間の道路網をクラスタリングする方法を提案した.東京圏一都三県の駅に適用し,一連の手法の適用可能性を実証的に示した.
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寺口 敬秀, 桜井 慎一, 池ヶ谷 典宏
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_207-I_217
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
本研究は,海を見渡せるという砲台跡の立地特性に着目し,遺産を残しつつ市民へ砲台跡を開放していくための利活用方法を考究するものである.砲台跡を管理する全国27市町村へのアンケート調査では,公開していない砲台跡が約3割あり,公開している砲台跡でも遺跡劣化や草木伐採に関して課題となっていることがわかった.また,既に利活用されている全国45砲台跡を対象に,用途を公園・展望台・キャンプ場・学習施設の4種類に分け,それぞれの立地・環境特性を把握した.さらに,東京湾沿岸の19砲台跡を対象に,立地や環境特性を現地調査にて把握し,全国で活用されている45砲台跡の特性と比較したところ,観音崎第一砲台跡がキャンプ場や学習施設,腰越砲台跡が公園や展望台に適していることがわかった.
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中野 一慶, 吉田 護, 多々納 裕一
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_219-I_229
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
本研究は,環境統合評価モデリングの分野で広く共有されて利用されている Shared Socioeconomic Pathways (SSPs) のシナリオと整合的な形で,我が国の市区町村別人口を予測する手法を提案する.地域人口の代表的な推計手法である純移動率モデルの課題を解決する手法の1つとして,プールモデルを採用した上で,SSPsの複数のシナリオと整合する我が国の地域間人口移動の姿を整理し,それに従う転出率等の諸元の考え方を提示する.構築したモデルを用いて我が国の2050年までの市区町村別人口を予測し,シナリオの違いが結果に及ぼす影響について考察する.
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一井 啓介, 高原 勇, 谷口 守
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_231-I_238
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
近年,再生可能エネルギーの普及が加速しており,分散型電源を有効活用するためスマートグリッドの導入に向けた検討がなされている.しかし,スマートグリッドの重要な要素である太陽光発電や電気自動車に利用される電力は直流であり,現在の電力網に利用される交流電力に変換する過程でロスが発生してしまうが,この点に着目してスマートグリッドの効果を検証した研究蓄積はない.そこで本研究では,スマートグリッドの普及を想定した住宅街区の電力需給を分析し,直流と交流の場合のスマートグリッド内で生じる電力ロスや電力自給率を算出することで,直流化効果を検証した.その結果,1)直流化によって最大 74.8%の電力ロスが削減できること,2)自動車保有台数が多く戸建住宅の占める割合が大きい住宅街区ほど直流化効果が大きいことなどが示された.
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松中 亮治, 大庭 哲治, 植村 洋史
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_239-I_247
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
近年,地方鉄道の存廃に関する議論が活発に行われ,地方鉄道の存在意義が問われていることを背景に,本研究では全国の地方鉄道を対象として,地方鉄道の存廃と駅勢圏における年齢階層別人口の社会増減との関連および廃止直前の交通分担率と廃止後の人口動向との関連について分析した.その結果,地方鉄道の存廃で比較すると,10 年以内に高校を卒業する年齢を含む若年層の社会減で長期的に有意な差があることを明らかにした.また廃止直前の鉄道および自動車分担率に着目し,分担率の大小に関わらず廃止路線と存続路線で特定の年齢階層の社会増減に差のある傾向があること,廃止路線において鉄道分担率の大小によっては社会増減にあまり違いは見られないものの,自動車分担率の大小によって社会増減に違いが見られることを明らかにした.
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田中 尚人, 光永 和可, 園田 晃大
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_249-I_257
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
近年,治水・利水だけでなく,自然環境や地域文化を育む河川整備が求められており,川づくりとまちづくりを多様な主体が協働して同時に考え,かわとまちをつなぐ賑わいのある水辺空間の形成を目指す「かわまちづくり」が注目されている.本研究の目的は,かわまちづくりにおける多様なステークホルダーの参加状況を明らかにし,協働の過程・構造を分析することである.そのために,熊本県の菊池川流域を対象に,文献・資料と新聞データベースを分析し,流域の川づくりとまちづくり活動の変遷を整理し,ケーススタディとして菊池市かわまちづくり事業について分析した.研究の結果,多様なステークホルダーが川とまちをつなぐ具体的な空間整備を意識し,日常と非日常をつなぐ地域活動を,無理なく持続可能とする仕組みが重要であることが理解できた.
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松中 亮治, 大庭 哲治, 鎌田 佑太郎, 土生 健太郎
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_259-I_266
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
フリー
本研究は,中心市街地の来街者の歩数・滞在時間について,来街者の属性や付帯情報による違いを分析し,回遊行動の基礎的な特性を定量的に明らかにすることを目的とする.富山市の中心市街地を訪れた来街者を対象に,スマートウォッチ端末を配布し,位置情報・歩数データを取得する回遊行動調査を行った. 公共交通の利用者や,食事や社交・娯楽を目的とした来街,中心市街地内での地域をまたいだ多様な店舗への訪問を行う場合,滞在時間が長く,歩数が多いことを示した.加えて,被験者を滞在時間および歩数の高低で区分し,各区分の属性・付帯情報の構成比率に見られる特性をそれぞれ明らかにした.公共交通による来街の促進,購買行動に限定しない多様な目的を果たしうる中心市街地の構築が歩数の増加,滞在時間の延長に繋がることが示唆された.
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弓場 雅斗, 川端 祐一郎, 藤井 聡
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_267-I_276
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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余暇における都市娯楽活動は人々の幸福感に一定の影響を及ぼすと考えられる.活動場所への移動が必要な娯楽活動も考えられるが,交通手段の利便性が都市娯楽活動を通じて幸福感に与える影響は殆ど明らかにされていない.本研究は,余暇における都市娯楽活動に着目し,活動場所へのアクセシビリティ,活動の頻度,そして主観的幸福感の関係を分析し,検証することを目的とする.また,アクセシビリティ指標としては,移動費や移動時間といった客観的指標のみではなく,場所への行きやすさや交通手段の満足度といった主観的指標を考慮した.分析の結果,主観的アクセシビリティや活動頻度の高さが人々の主観的幸福感を高め得ることが一部の余暇活動で示唆された.また,主観的アクセシビリティが高いほど余暇活動の頻度が多くなる傾向も示唆された.
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御手洗 陽, 東 達志, 谷口 守
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_277-I_285
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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非都市部において,日常生活に最低限必要な都市機能を集約させる「小さな拠点」の整備が目指されているが,人口減少等により,それらの維持・形成が困難なケースが存在する.そこで本研究は自動運転車に都市機能を搭載し,無人で移動・営業を行う機能搭載型自動運転車 “ADVUS” の導入による小さな拠点での都市機能の供給手段を提案し,医療サービスを対象に住民の小さな拠点の実行動と利用意向の比較を通じて,ADVUSの小さな拠点への配置によって顕在化する利用意向を分析した.その結果,1)実行動以上に小さな拠点への利用意向が存在し,ADVUSによる都市機能の一時配置により小さな拠点が利用される可能性を示した.また,2)住民の医療サービスの利用頻度から,一台のADVUSで複数の小さな拠点間を移動しサービスを供給できる可能性を示した.
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筒井 正幸, 石橋 知也
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_287-I_297
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
ジャーナル
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本研究では,1962-65年に都市系の専門家の協力のもと西日本新聞社によって実施された「西日本都市診断」の内容に着目し,診断された21都市のうち9都市を事例に,各都市の診断の要点を整理したうえで,往時の都市診断の議論やその後の都市政策に及ぼした影響について考察することを目的とする.その結果,1960年代の計画にかかわる議論における西日本都市診断の位置づけとして全総や総合計画における論点を補完する役割を担ったこと,都市診断が「広域的視野」「多層スケールにおける各市の位置づけ」の2つの特徴を有すること,を指摘した.診断委員と総合計画審議委員の重複や内容の類似点等についての分析から往時の新聞という媒体のもつ都市政策への影響を指摘した.都市診断が総合計画を策定するための「参考資料」の役割を担ったことも指摘した.
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下山 悠, 森本 瑛士, 森尾 淳, 谷口 守
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_299-I_307
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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市町村が主体となって拠点の形成が目指されている.拠点には階層性があり,都市部の都市型拠点と中山間地域の小さな拠点は別々に計画されている.今後,市町村域を超える広域での拠点間連携が考えられるが,広域的観点から一体的な拠点階層の整理がされていない.そこで本研究は,各市町村計画における拠点について広域的な観点から施設数や集中トリップ数を把握する.これら拠点に関する計画と実態の乖離分析等を通じて広域的な拠点階層設定に寄与することを目的とする.分析の結果,計画で都市型拠点であっても小さな拠点に判別されるケースがあることや,小さな拠点でも公共交通を有する拠点によっては中心拠点に判別されることが明らかとなった.以上より,計画と実態の間で乖離が生じており,広域的観点での拠点階層の見直しの必要性が示唆された.
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谷本 大樹, 田中 尚人
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_309-I_316
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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文化的景観制度の誕生により,全国各地で地域特有の生活環境を含めた景観まちづくりが進められている.そのため,景観を凍結的に保全せず,適切な変化を許容した保全方策を定める必要がある.本研究の対象地である阿蘇地域では,草地を基盤に重要文化的景観として評価を受け,その保全活用の検討が進められている.そこで本研究の目的は,阿蘇地域における重要文化的景観の保全方策検討の特徴と今後の運用における課題について明らかにすることである.そのために,保全方策の検討の流れと段階,およびその段階ごとの論点について明らかにするため,ヒアリングや文献,また学術委員会の活動や議論から整理し,分析した.その結果,阿蘇地域ならではの重要文化的景観の保全方策検討の在り方を明らかにすることができた.
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大平 悠季, 中村 茉樹, 福山 敬, 桑野 将司
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_317-I_327
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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少子高齢化社会における持続可能な都市経営の観点から,多くの地方都市で中心市街地活性化に関わる各種の施策が推進されている.本研究は,中心市街地の多様な施設の立地状況や街路ネットワーク構造,交通利便性といった空間特性と歩行者通行量の関連性を分析する.街路沿道に立地する施設が,当該街路のみならず周辺の街路の歩行者数とも関連を持つ可能性を明示的に考慮した点が本研究の特徴である.分析の結果,施設の充実した街路では,その施設の種類に関わらず歩行者が多いこと,また,周辺街路にも商業施設が多いと歩行者が多い一方で,隣接街路に文化施設が存在すると歩行者が少ないことが明らかとなり,商業機能の連なりの形成や文化施設の利用者動線を意識した面的整備等の施策が中心市街地の賑わい創出に対して有用である可能性が示された.
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甲斐野 翼, 日比野 直彦
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_329-I_338
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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高速道路ではICとは異なる救急車専用の緊急入退出路を設置し,救命救急に貢献している.しかしながら,高速道路会社管理道路では緊急入退出路の設置は全国でわずか17箇所に留まっており,今後の更なる整備が望まれるが,整備に向けた実務的な面での検証は十分ではない.本研究では,緊急入退出路の整備経緯や利用実態を明らかにしたうえで,新規設置に向けた検討を行う.具体的には,整備に関する議事録等を基に,整備の動機や整備の流れを明らかにし,また,対象病院への搬送データ等を基に利用実態を明らかにする.それらの結果を基に新規設置のために必要な条件について言及するとともに,その条件を満たす効果的な新規設置検討箇所について明示する.
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葉 健人, 大場 啄椰, 猪井 博登, 土井 健司
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_339-I_349
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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訪日観光客の受け皿となる宿泊施設の不足が大都市圏を中心に深刻化している.都市施設としての機能を有する宿泊施設を多様なニーズに応じ,適切な場所へと政策的に立地誘導することが重要である.この誘導方策の提案に資する知見獲得のため,本研究では大阪府を例として,宿泊施設の空間データを整備し,立地の時間的・空間的特性を分析した.加えて,空間的自己相関を考慮した宿泊施設立地モデルを構築し,時系列的にモデルパラメータの推定を行うことで宿泊施設の立地特性の変化を定量的に明らかにした.この結果,特に2010年代になって多様化する宿泊ニーズに応じるように,宿泊施設立地の交通アクセス条件への依存傾向が低下し,立地が分散していく様子を捉えた.
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柳川 篤志, 川端 祐一郎, 藤井 聡
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_351-I_368
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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現在わが国の人口は東京へ一極集中しており,世界の先進諸国と比較しても東京への集中度合いは非常に高い.人口の一極集中には地方の衰退,首都における災害等への脆弱性という弊害が存在しており,東京一極集中は是正されるべきであると考えられる.一極集中の是正へ向けてはその要因を検証していくことがまずもって必要である.国内外の既往研究においては,一極集中の要因を巡る研究がなされてきたが,定量的な分析に基づく実証研究は十分になされていない.そこで本研究では,鉄道整備が人口の一極集中に与える影響を明らかにすることを目的とし,国内外のデータを利用し実証的な分析を行った.その結果,鉄道インフラの偏在が人口移動に影響をもたらし,鉄道整備の東京圏への一極集中が,人口の東京圏への 一極集中をもたらす可能性が示唆された.
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日下部 貴彦, 柳沼 秀樹, 福田 大輔, 高橋 哲, 今 健, 佐野 薫, 野村 紗希子
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_369-I_377
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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高速バスは,充実した道路ネットワークのもとでは比較的柔軟に路線を設定できるなどといった特徴を有しており,鉄道を補完する都市間交通手段である.しかし,実際には需要が比較的小さな起終点間を結んでおり運行頻度が少ないことから,利用者の到着希望時刻に合う便がないなどといった不便さも存在する.そこで,方面が異なるバス同士の乗継環境の整備により利用可能なバスの本数を増やすことで,その利便性を向上できると期待される.本研究では,環状道路に近接した高速道路サービスエリア等への乗継専用バス停の設置による高速バスサービスの改善状況を想定したアンケート結果の分析を通じて,利用者にとっての利便性向上の要因把握やバス路線選択行動規定要因の分析を行い,乗継路線及び乗継地点を設定する際に必要な路線特性を明らかにした.
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川上 陸, SCHMÖCKER Jan-Dirk, 宇野 伸宏, 中村 俊之
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_379-I_391
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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本研究では,モバイル空間統計データを利用し,観光地間流動に関したOD推計を行うことを目的としている.具体的には欠損トリップが含まれるデータに対して,欠損トリップを補完するようにODを推計する手法を提案する.提案するOD推計手法は,秘匿処理による欠損ケースと集計方法の特殊性による欠損ケースに対して,インプットデータであるOD量からのバッファを与えることによって欠損トリップを補完するというものである.仮想的なOD表に対してこれらの推計を実施したところ,概ね良好な推計結果が得られたが,いくつかのODに対しては過大・過少に推計されることが分かった.実際のOD表に関する推計では,各エリア人口に基づいた評価指標において,概ね値が改善されることが分かった.
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頓部 真大, 浜岡 秀勝
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_393-I_403
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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近年,技術発展により自動運転が可能となった.今後,自動運転が普及した場合,ドライバーの運転中の注意力が低下し,目的出口通過の増加が予想される.これは逆走発生要因の一つであるため,自動運転時にも機能する目的出口通過対策が必要と考える. そこで,IC付近だと分かるカラー舗装対策と,目的ICまでの距離を任意のタイミングで確認できる出口番号変更対策を考案した.これらの有効性を確認するため,ドライビングシミュレータを用いて被験者20人に走行実験を行った.運転行動に着目すると,標識確認率が向上する傾向が見られ,前方確認時間が有意に増加していた.加えて,アンケート調査から,約80%のドライバーに対策の効果が期待でき,対策によって有意に安心して走行できたことが明らかとなった.
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城間 洋也, 福田 大輔, 岡 英紀, 和泉 範之
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_405-I_414
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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本研究では,首都圏高速道路利用者を対象としたアンケートデータを用いて交通時間節約価値(時間価値)の母集団分布の推計を行った.バイアスを小さくして信頼性の高い結果を得るために複数のデータソース(RP,SP-off-RP,SP の各データ)を用い,個人間異質性,状態依存性,誤差分散不均一性等を明示的に組み込んだ離散選択モデルを構築して分析を行った.実証分析の結果,時間価値分布の母集団平均の推計値は20~40(円/分)程度(トリップ時間1∼3 時間を想定した場合)となり,異質性を考慮しない通常のロジットモデルによる推計結果よりも小さくなることが示された.また,時間価値分布の形状に関しては,既往研究で多用される正規分布や対数正規分布よりも柔軟な Johnson SB 分布を適用することで適合度が向上することが確認された.
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松島 格也, 竹内 佑樹, 瀬木 俊輔, 小林 潔司
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_415-I_423
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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現在普及が進んでいるカーシェアリングサービス市場では,サービス供給者が拠点に車を配置し利用者がサービスを利用するためにサービス拠点を訪問する.このような市場では,サービス供給や需要が増加すれば,サービスを利用するための取引費用の減少を通じてさらに多くの潜在的利用者が市場参入し,それにあわせて供給者も車の配置を増加させるというポジティブなフィードバックメカニズムが働く.以上の問題意識の下に,本研究ではカーシェアリングサービスが取引される市場均衡モデルを構築してポジティブフィードバックメカニズムに起因する複数均衡解が存在する可能性を示すと共に,各種パラメータが市場均衡に及ぼす影響を分析する.
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海野 遥香, 三輪 倖代, 橋本 成仁
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_425-I_431
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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近年我が国では,一人ひとりの人生の内容の質や社会的に見た生活の質を指すQOL(Quality Of Life)が重要視されており,子どものQOLに関する研究も進んでいる.一方で,子どもの遊びが減少していることが問題視されており,本研究では,小学校高学年の子どもの遊び・学外活動とQOLの関連性を検討した.その結果,子どものQOLと遊び内容,時間,人数,遊び場に深い関連がみられ,QOLが高い子どもは遊び内容は外遊び,遊び人数は多人数,で遊ぶと答えた割合が高く,QOLが低い子どもは遊び内容が屋内での遊び,遊び人数が1人,遊び場は自宅と答える割合が高いことが明らかになった.また,数量化I類により子どものQOLを予測したところ,子どものQOLには遊び時間や遊び内容,生活習慣である睡眠時刻などの項目が関連性が強いことが把握された.
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菱川 貴之, 井料 美帆
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_433-I_443
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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街路における歩行者の滞留機能は中心市街地の賑わいを取り戻すために重要であるが,道路ネットワークとして効果的に滞留機能を充足する整備方法は未だ確立されていない.その検討の第一段階として,街路における歩行者の滞留地点の選択行動特性を明らかにすることが必要である.本研究では,まず,滞留地点選択の観点から滞留を分類し,その中の自発的な滞留目的を持って滞留地点を選択する「地点選択的滞留」に着目して,歩行者の滞留地点選択への影響要因を分析した.3つの滞留目的に関してアンケート調査を実施し,滞留継続時間別に個々の影響要因の影響度が異なることが明らかになった.比較的長時間の滞留の場合に,交通量の多い街路に隣接する街路において,滞留が増加するような施策が可能であることが示された.
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安藤 宏恵, 倉内 文孝
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_445-I_454
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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現在までに継続的に実施されている道路ネットワークの整備は今後も必要とされる重要な事業の一つで ある.整備に伴う道路ネットワーク整備効果の評価指標について,東日本大震災発生以降,従来の評価指標にくわえ,災害発生確率に依存しない判断基準や効率性以外の観点の指標化が求められている.このような背景のもと本研究では,確率に依存しないうえに需要を考慮せずネットワークそのものが持つ形状の観点から評価をおこなう Network Topology 指標により,長期的な視点における道路整備の影響を評価することを試みる.交通容量とリンク長を考慮した固有ベクトル中心性指標を活用し,岐阜県における1985年から2024年までの道路ネットワークを評価することで,道路整備による変化がもたらす供給能力への影響を検証し,提案した手法の有効性を確認した.
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小林 渉, 柳沼 秀樹, 岩倉 成志
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_455-I_462
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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首都圏における朝ラッシュ時間帯の慢性的な混雑・遅延問題解決に向け,企業の始業時刻を平準化する TDM 施策が検討されている.本研究では,TDM 施策評価を念頭に企業間の戦略的な相互関係を考慮した始業時刻選択モデルを構築した.具体的には,ゲーム理論の枠組みを基本として,各地域に立地する企業体が 30 分ごとに区切った 7 つの時間帯を選択するものとし,地域間の空間的・時間的な経済的近接性を表現した集積変数を導入した.提案モデルは選択確率が入れ子構造となる内生性を有しているため,疑似最尤法に基づく構造推定手法を適用した.その結果,集積を示すパラメータは都心部よりも郊外部で大きく,都心部の始業時刻決定には他地域の始業時刻が影響ないが,郊外部では都心部の始業時刻に影響される非対称な相互作用の構造が明らかになった.
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倉内 慎也, 西内 裕晶, 吉井 稔雄, 大藤 武彦, 小澤 友記子
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_463-I_473
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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交通事故統計によれば,生活道路の死傷事故率は幹線道路の2.4倍である.しかし,多くのドライバーが同情報を知らず,むしろ幹線道路のほうが死傷事故率が高いと誤って知覚し,それが生活道路の抜け道利用につながっている可能性がある.本研究では,そのような認識のもと,アンケート調査等を実施し,知覚状況の把握や事故リスクコミュニケーションによる同バイアスの補正効果を検証した.その結果,約半数のドライバーが正しい知覚をなしているものの,幹線道路の事故リスクを過大に評価している人が約3割存在することが判明した.また,事故リスクコミュニケーションによって同バイアスが補正され,幹線道路の利用意図が向上し,特にカーナビゲーションによるコミュニケーションでは同効果が一層大きくなることを確認した.
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波床 正敏, 下 京介, 祐代 浩希
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_475-I_489
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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イタリアは高速新線の着工が比較的早く,1970年には着工され,1977年以降に工事完了区間から順に営業を始め,近年までにTorino-Milano-Roma-Napoliを結ぶ高速幹線軸が完成している.在来線でも曲線を高速走行できる車両を開発し,都市間の列車速度は向上してきている.本研究では1963年以降概ね10年ごとに2015年までの6年次について,主要都市間の各種所要時間指標を計測し,その特徴を考察した. その結果,都市間の列車は確実に速度向上(乗車時間が短縮)してきたことが確認できた.だが,運行頻度の低さや,乗り継ぎが便利で無いなど,速度面以外での利便向上が不十分なため,路線網全体では総合的な所要時間指標である期待所要時間が必ずしも改善していない都市間が少なからず存在することがわかった.
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松本 浩子, 内田 敬, 楊川 優太
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_491-I_500
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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視覚障碍者の街歩き支援として「ことばの地図」を用いた音声ARアプリの実用化研究を進めてきた.しかし,歩行時は危険との隣り合わせで,初めて訪れる街で安全に使用し,正しく情報を理解することは困難である.そこで屋内で,音声ARアプリと実都市の臨場感を再現した環境音を用いたバーチャル散歩システムによる予習環境を試行している.将来的には,バーチャル散歩システムを改善し,晴眼者がガイドマップや Google「ストリート・ビュー」などで享受している疑似旅行・外出体験と同様の経験機会を,視覚障碍者に対して聴覚情報として提供する「ことばの観光地マップ」の作成を目指す. 本論文では,まずことばの観光地マップについて概説する.次に,実験計画・内容を示し,実験結果をまとめ,今後の展開を示す.
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桑野 将司, 秋元 美穂奈, 細江 美欧, 古川 ゆり, 菅原 一孔
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_501-I_511
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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経路検索システムには時刻表にとらわれない検索者のいつ,どこから,どこへ移動したいかという希望に関するデータが蓄積されている.本研究では,山陰両県に導入されている経路検索システム「バスネット」の検索ログデータを用いて,検索者の移動希望に応じたバスの時刻表設計方法を検討した.具体的には,検索ログデータから同一検索者の検索を抽出し,各検索者の移動がシステム上で入力した指定時刻に対して遅れを許すか否かを判定した.そして,検索者の外出希望時刻と実際のバスの運行時刻との差として定義される損失時間を算出し,乗車時間を加えた総所要時間を最小にするようなバス時刻表の設計方法を提案した.さらに,提案手法を用いてバスの便数が削減された場合の時刻表を作成し,便数削減の損失時間に及ぼす影響を明らかにした.
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鈴木 雄, 日野 智, 三上 晃平
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_513-I_522
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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本研究では,路線バス運転手の接客について,好感を持つものと,不快に感じるものの具体的な内容の把握を行った.良い接客が高い頻度で行われている一方で,「しっかりとした挨拶がない」ことや「愛想や態度が悪い」など,基本的な接客が出来ていない運転手の存在が明らかとなった.これらの悪い接客について1度でも経験した場合に,利用を減少させたい人が存在することが明らかとなった.多くの運転手が良い接客を続けても,一部の悪い接客をする運転手によりバス利用者が減少する可能性がある.都市間の接客の比較では,三大都市圏の方が良い接客の頻度が高く,良い接客を受けた際の利用増加意識も高い結果であった.一方で,悪い接客の頻度や,悪い接客を受けた際の利用減少意識は,三大都市圏とそれ以外の都市とで差がみられない結果であった.
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上田 大貴, 片岡 将, 柳川 篤志, 川端 祐一郎, 藤井 聡
2020 年 75 巻 6 号 p.
I_523-I_535
発行日: 2020年
公開日: 2020/04/08
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本研究では,交通インフラ網整備がもたらすマクロ経済への効果及び各地域の人口や経済力分布への影響を推計するため,既往研究で提案されているモデルシステム(MasRAC)を用いて,既に利用されている高速道路がもたらしてきた効果の評価を行った.その結果,今日までの我が国における高速道路整備は,国全体に対しては多大な豊かさをもたらしてきた一方で,整備によって人口や経済力の地方部から三大都市圏への集中を促し,より成長した地域と成長が阻害された地域を生み出す,すなわち国土の不均衡のあ拡大を招くものであった可能性が示唆された.これらから,地方の高速道路整備をより一層十分に行うことで,マクロ経済のさらなる底上げとともに,地方からの経済力の流出が軽減され,より豊かでバランスのとれた国土が形成され得ると考えられる.
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