土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
75 巻, 5 号
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土木計画学研究・論文集 第36巻(特集)
  • 織田澤 利守, 大平 悠季
    原稿種別: 招待論文
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_1-I_15
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    社会資本整備のマネジメントサイクルの確立に向けて,事後評価の充実が重要な課題の 1 つに挙げられる.事後評価では,ストック効果の発現状況を多面的に捉え,統計データを有効に活用しながら,可能な限り定量的・客観的に効果を把握することが求められる.インフラ整備によってもたらされるストック効果を適切に評価するためには,実務で一般的に行われている単純な前後比較では十分とは言えない.本稿では,昨今,様々な分野で広く活用されるようになった統計的因果推論について,その手法を概説したのち,交通基盤整備効果の推定を行う既往研究をレビューする.その上で,交通基盤整備評価への適用に向けた論点整理を行うとともに展望について述べる.
  • 小池 淳司, 向山 潤
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_17-I_24
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    技術水準を表す指標であるTFPの成長率が,建設業では減少傾向にあるという指摘がある.しかし,建設業においては技術の蓄積があるため,少なくとも技術水準の急な低下は考えにくい.本研究の目的は, この推論と観察されるTFPの減少傾向との不一致の原因を考察することにある.本研究では投入コスト型 デフレーターに注目した.一般競争入札の拡大に伴うマークアップの減少は投入コスト型デフレーターで は捉えられない.このため,TFPが減少したという仮説を立て,その検証を行った.一般競争入札と都道府県別の建設業のTFPとの関係を調べる回帰分析を行った結果,多くの地域で一般競争入札の導入が有意な負の影響を与えたことを確認した.建設業のTFPの低下はマークアップの変化を捉えられないことに起因し,技術水準の低下ではないと考えた.
  • 小池 淳司, 伊原 一輝
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_25-I_32
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    詳細地域で SCGE モデルを適用する場合,基準均衡データである地域間産業連関表は限られた公表データから推定する必要がある.具体的には,詳細地域で産業別の付加価値額,ある程度集計された地域レベルでの投入係数行列及び最終消費シェア,地域間交易係数である.詳細地域では,地域を超えた通勤や資本の移動が考えられ,付加価値額と最終需要額の差として計算される地域間所得移転額が必要となるが,公表されておらず推計も困難である.本研究では,地域間所得移転額を公表データから推計する手法を提案し精度の検証をした.その結果,9 地域区分では多少の差異はあるが,中部地方を除いて所得移転額の実測値と推計値の符号は一致し,都道府県区分においても同定可能であることを示した.これらは基準均衡データとして有用な情報であると考えられる.
  • 北川 夏樹, 山本 俊行
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_33-I_43
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    過去,地震災害の発生時には家屋建物やライフラインの被災によって自宅で入浴ができない「入浴困難者」が発生し,彼らに対する入浴支援が実施されてきた.南海トラフ巨大地震のような広域災害時においては,かつてないほどの広範囲に多数の入浴困難者が生まれることも考えられる.入浴支援の効果的な実施を検討するためには,発生しうる入浴困難者数と必要な支援量のオーダーを把握しておくことが重要である.本研究では愛知県岡崎市を対象にケーススタディを実施し,南海トラフ巨大地震の発災時に発生しうる入浴困難者数を推定したほか,避難所への入浴支援拠点の開設を施設配置問題としてとらえ,その必要数について推定した.
  • 山中 英生, 奥嶋 政嗣, 井若 和久, 渡辺 公次郎
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_45-I_52
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    近年,多様な災害の激甚化の傾向が見られる中,災害に“しなやか”な都市・地域づくりとして,防災・避難・復旧施策に加えて,災害後の生活再建を速やかに進められる地域づくりへの関心が高まっている.しかも,人口減少にさらされる地方では,次世代へと地域を継承することが,地域創生・国土管理の面からも重要と言える.著者らは,こうした地域づくりのための土地利用の一案として,災害時の支援,生活再建の迅速化とともに,日常の交流や地域活動への参加などの地域継承へとつなげる形態であり,家族が同時被災しない形で近居するリスク分散型近居を提案し,津波災害における効果を明らかにしてきた.本研究ではWEBによる意識調査によって,津波に加えて水害,土砂災害からの生活再建へのリスク分散型近居形態の寄与を明らかにした.
  • 石神 孝裕, 屋井 鉄雄, 近藤 和宏, 蘆田 哲也
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_53-I_60
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    市民が地域計画を受け入れるかどうかの判断には,「計画内容の納得」と「計画プロセスの納得」の2つの要因が影響するため,計画内容が納得できたとしても,プロセスが納得できないがために計画が受け入れられないという状況が生じることが考えられる.本論では地域計画の計画プロセスが市民による地域計画の受け入れ度合いに与える影響を定量的に検証した.回答者を2群に分けて,計画プロセスの情報量が異なる2種類のアンケートを作成し,いずれかを熟読した上で計画の受け入れ度合いを回答させた.その結果,「3つの並行する計画プロセス」を導入した方が計画の実現に向けて協力したいとの意向や行政を信頼する回答者が多く,計画の受け入れやすさが高まることを明らかにした.
  • 藤村 幸大, 藤見 俊夫, 田中 歩夢, Mohamad F. N. AULADY
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_61-I_68
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    避難は災害リスクを回避するために非常に効果的かつ最適な措置だと言える.しかしながら,多くの人は災害発生リスクが高まっても避難しない傾向にある.これは,危険な状況に曝された時,危険を認識しないようにし,現状を維持することを好む「現状維持バイアス」の影響を受けている可能性が考えられる.この現状維持バイアスを克服し避難を促す存在として「率先避難者」という概念が片田らによって提唱されている.本研究では,仮想現実(VR)を用いた実験を行い,率先避難者の有効性を検討した.氾濫のリスクが高まっている 3 つのシナリオを提示し,被験者が避難を開始する時間を計測した.分析の結果,率先避難者が避難を促していることが確認された.また,率先避難者には河川が見えることと同程度の避難促進効果が有るという新たな知見が得られた避難は災害リスクを回避するために非常に効果的かつ最適な措置だと言える.しかしながら,多くの人は災害発生リスクが高まっても避難しない傾向にある.これは,危険な状況に曝された時,危険を認識しないようにし,現状を維持することを好む「現状維持バイアス」の影響を受けている可能性が考えられる.この現状維持バイアスを克服し避難を促す存在として「率先避難者」という概念が片田らによって提唱されている.本研究では,仮想現実(VR)を用いた実験を行い,率先避難者の有効性を検討した.氾濫のリスクが高まっている 3 つのシナリオを提示し,被験者が避難を開始する時間を計測した.分析の結果,率先避難者が避難を促していることが確認された.また,率先避難者には河川が見えることと同程度の避難促進効果が有るという新たな知見が得られた.
  • 坂田 美和, 秀島 栄三
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_69-I_81
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    「幸福度」を地域政策に活用することを目指した取組みが進められている.また,近年注目されているワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)においては,子育てに関しての男女意識差の存在が明らかとなっている.本研究の目的は,子育て意識の中で,幸福度に影響を及ぼす要因を明らかにすることである.これにより,女性にみられる子育てと幸福度の負の関係を改善し得る方策を考察することをねらい としている.2016年に行われた安城市の市民幸福度に関するアンケート調査を基に,統計分析を行った.その結果,男女の意識に有意な差のある要因は「近くに頼れる存在」「自分の役割がある」であり,最も幸福度に影響のある要因は,女性では「家族関係良好」,男性では「家族の子育ての理解協力」であることが明らかになった.
  • 奥田 隆明
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_83-I_91
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,観光地のネットワーク化が外国人の観光消費に与える影響を分析する周遊型観光消費モデ ルを開発した.また,このモデルのパラメータ推定法を提案し,47 都道府県データを用いて実際にパラメ ータ推定を行った.そして,この周遊型観光消費モデルを用いて,リニア中央新幹線の開業が訪日外国人の観光消費に与える影響について分析を行った.分析の結果,訪日外国人の周遊行動の変化によってリニア中央新幹線の沿線だけでなく,東北南部や中国,四国の各地域でも観光消費が増加すること,また,リニア中央新幹線の開業は成田空港,羽田空港,中部空港,関西空港からの入国者の効用を増加させること,特に,関西空港や中部空港からの入国者は首都圏を含めた観光地へのアクセスが向上するため,その効用が大きく増加することが明らかになった.
  • 滝澤 恭平, 清野 聡子
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_93-I_108
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    東日本大震災以後の海岸災害復旧事業において合意形成を行うことが課題となっている.合意形成プロ セスを達成するためには,適切にステークホルダーのインタレスト分析を行うことが必要である.東北の沿岸三地域において調査を行い,各ステークホルダーのインタレスト構造を分析し「インタレストマップ」として空間構造を把握した.三地域のインタレストに共通の要素として,(1)インタレスト固有の空間領域,(2)海岸から離れた空間に潜在するインタレスト,(3)災害危険区域境界で多様化するインタレスト,(4)境界をまたぐインタレストをもつステークホルダー,(5)海岸における利用と風景の共有の5点を抽出した上で,海岸災害復旧事業における地域空間のインタレスト構造を空間特性,事業課題と併せて整理し,模式図として示した.
  • 増田 祐太郎, 甲斐田 直子
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_109-I_116
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    近年,記録的大雨による大水害を背景に,個人や地域で水害に備える重要性が指摘されている.一方,防災行動にともなう面倒さや費用感覚といった負担感が防災行動を阻害していると考えられる.本研究は,防災行動の負担感を網羅的に把握するための尺度項目を作成し,負担感が行動に与える影響を明らかにす ることを目的として,首都圏在住成人男女を対象に質問紙調査を実施し,統計解析を行った(n = 487).因子分析の結果,自助の非金銭的負担感,自助の金銭的負担感,共助の非金銭的負担感が負担感因子として抽出された.重回帰分析および共分散構造分析より,非金銭的負担感が自助・共助実践に負の影響を与えることが明らかとなった.特に,備え方を調べる面倒さ,日常生活の時間を割いて備える面倒さが主な阻害要因であることが示唆された.
  • 柿本 竜治, 黒肥地 雄太
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_117-I_127
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,熊本県が実施した熊本地震の災害対応に係る調査の「課題が生じた点」のテキストデータを分析し,熊本県庁で生じた課題を整理分類するとともに,時系列的に災害対応状況を整理し,どの段階で課題が生じているかを把握する.包括的に課題を把握した後に,災害の応急復旧に深く関わった土木部の動きに着目し,初動の災害対応活動に生じた課題を把握する.さらに,災害応急復旧の現場が直面した課題の把握にあたり,実際に業務にあたった行政技術職員および建設業者にヒアリング調査を実施し課題を抽出する.本研究では,階層的に課題を把握していくことで,災害時の応急対応に生じた共通の課題を探り出し,迅速な災害対応を可能にする応急復旧体制の構築に寄与する知見を得ることを目的とする.
  • 神田 佑亮, 大室 ひな, 助永 雅紀
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_129-I_134
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    近年,全国的に地域活性化への取り組みが進められている.その一つとして観光地の活性化が挙げられる.各地域でアンケートなどによって,マーケティングが行われた上で活性化の取り組みが推進されるべきであるが,基礎であるマーケティングが十分行われているとは言い難い.その課題として,マーケティングへの認識不足,アンケート等の労力に対する負担感などが挙げられる.一方で,観光に対し,人々の行動や印象の記述が,SNSにより自ら発信されるようになり,これらのデータがビッグデータとして蓄積されつつある.また,印象を写真で投稿するSNSも登場している.本研究ではこれらのデータを活用した観光マーケティング分析の手法開発や活用可能性について論じる.
  • 田中 皓介, 外村 健太, 寺部 慎太郎, 栁沼 秀樹, 康 楠
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_135-I_142
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    近年の日本では,国民が持つ土木への否定的な印象が指摘されている.既往研究では新聞報道の公共事業に対する批判的な傾向が明らかにされてきた一方で,例えば,殺人等の報道においては容疑者が,「会社員」ではなくあえて「土木作業員」と表記される事例も散見されるが,こうした報道も土木に対して間接的に否定的な印象を与えることが懸念される.そこで本研究は,土木に対する否定的な世論の形成要因を探るに当たり,犯罪報道の中でも特に凶悪犯罪報道における容疑者の職業表示を対象に報道状況を分析した.その結果,土木建設業関係者による犯罪の報道は,他の職業と比べても高頻度で見られた.しかしそれは土木建設業従事者がそもそも多く,犯罪者数もまた多いことによるもので,報道が偏向していることを示す結果ではなかった.
  • 上原 一輝, 川野 倫輝, 円山 琢也
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_143-I_152
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    社会調査において,調査対象者本人以外が回答することで生じる代理回答バイアスについては,広く認識されているのにも関わらず,それを体系的に分析する方法の構築や検討は十分ではない.本研究では自由回答データに着目し代理回答バイアスを分析する方法論の構築と実証分析を行うことを目的とする.具 体的には,2012 年熊本 PT 調査の付帯調査の自由回答を,世帯の調査回答行動を集団意思決定として表現した離散選択モデルとトピックモデルを用いて分析する.分析の結果,代理回答される確率が大きくなるほど自由回答中の文字数が少なくなることを示した.また,代理回答者が記入しやすい内容は,実体験に基づくものより,一般的に考えやすいものが多くなることを示した.
  • 田浦 扶充子, 島谷 幸宏, 小笠原 洋平, 山下 三平, 福永 真弓 , 渡辺 亮一, 皆川 朋子, 森山 聡之, 吉冨 友恭, 伊豫岡 ...
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_153-I_168
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,都市の流域すべての場所で雨水の貯留・浸透を,良質な緑を増やしながら多世代が協力し,分散型水管理が実現される持続的な都市ビジョン「あまみず社会」を提案し,その有効性や実現可能性を検証するものである.そのため,都市の空間構成要素である個人住宅と中学校を取り上げ,安価で魅力的な貯留浸透の方法を考案,計画し,実装を試みた.「あまみず社会」の概念に基づいた魅力的な実装や要素技術は,治水・利水機能に加え,環境面,防災面,活動の広がりなど多面的な価値があることが明らかとなった.加えて,「あまみず社会」の実社会への普及に向け,多面的で重層的な働きかけを網羅的に試みることが有効であり,想定以上の広がりが得られることが確認された.
  • 中嶌 一憲, 生川 雅紀
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_169-I_180
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    ウツタイン統計データから救命曲線を推定するために,これまで標準的にLogitモデルやProbitモデルが採用されているものの,必ずしもこれらが最も望ましいとは限らない.本研究はBurr II分布に基づくScobitモデルやHermite多項式展開を用いたセミノンパラメトリックモデルのアプローチから救命曲線を推定し,予測に関する適合度指標の比較により,より適切な救命曲線の推定方法の提示を試みる.病院外傷病者の救命率を高めるためには,適切かつ迅速な救急医療処置を施すとともに,救急搬送時間を可能な限り短縮することが望まれる.この搬送時間を短縮するために,道路整備が重要であることから,救命曲線の推定精度の向上は,公共事業評価において道路整備による救急搬送時間の短縮がもたらす死亡リスク削減便益を計測することに大いに資するものである.
  • 井形 康太郎, 田中 尚人
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_181-I_189
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    現代の地域コミュニティには,地域住民の地域に対する関心の低さという課題がある.解決には,地域に対する愛着と誇りという意味のシビックプライドの考え方が必要である.この考え方の醸成のきっかけとして,小学校で取り組まれる地域学習が位置づけられる.本研究では,熊本市内にある向山小学校を対象に,地域学習によって児童に起きる,地域に対する意識の変化の構造とその行程を明らかにすることが目的である.児童の好きな風景の絵や理由と10年後の校区をこうしたいという設問の回答を,共起ネットワークなどを用いて分析した.その結果,地域学習を通じた他者との関わりが地域に対する意識の変化を生むことが分かった.
  • WANG Zilin, 谷口 綾子, ENOCH Marcus, IEROMONACHOU Petros, 森川 高行
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_191-I_200
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究では今後の自動運転システムの社会的実装に向け,人々が自動運転システムをどのように受け入れるかという社会的受容性に着目し,共に島国で自動車メーカーを有する日本と英国の一般市民の賛否意識をリスク認知に着目して比較することを目的に,両国にてWEBアンケート調査を実施した.その結果, 1) AVsへの賛否意識はレベルによって異なり日英ともにレベル3の方が賛成傾向にあること,2) 日本では,男性,送迎時間の高い人,英国では,男性,若者,London在住の人,がAVsに賛成する傾向があること,3) 自動運転に関するリスク認知は日英で同様の傾向である一方,他のハザードへのリスク認知には大きな差があることが示された.
  • 波床 正敏
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_201-I_212
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    地域に関する多様性の研究は前例が少なく,極めて多数の研究課題が存在するが,本研究では全国的な都道府県間の交流量および交流先の多様性と各地域の機能の多様性との関係に絞って,時間軸に関しても単年度に限って分析した.Shannon-Wiener関数を使って情報量相当の多様度を計算し,都道府県に関する基礎的な考察を行った後, 地域機能や交流に関する多様度を含めて重回帰分析を行って分析した.その結果,地域の就業者数は交流量と密接な関係にあるとともに交流先が多様な地域では就業者数はより多いという関係があることがわかった.また,地域の高次産業が多様であることと,交流量が多いことや交流先が多様であることとは関係がある,ということもわかった.
  • 河合 一輝, 加藤 博和, 朴 秀日, 清水 大夢, 秋山 祐樹
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_213-I_222
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    地球温暖化が課題となっている一方,東日本大震災によってエネルギー供給の脆弱性が露わになり,低炭素性と災害への強靭性とを両立できるよう都市域を更新していくことが求められる.そこで,平常時の CO2 削減と災害時のエネルギー供給の両方に着目し,街区群の更新を評価する手法を構築する.これをオ ールドニュータウン地区に適用した結果,立地集約する地区に医療・福祉施設を誘致すると,CO2 排出量は増加するものの,用途混合の効果に加え,導入要素技術の組み合わせによって,増加量を上回る CO2 排出量削減が可能であること,エネルギーセキュリティ向上には電気の融通や熱供給が有効であることが分かった.また,この手法を活用することで新しいエネルギー施設の最適規模導出も可能になった.
  • 須ヶ間 淳, 奥村 誠
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_223-I_232
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    高度経済成長期に建設された多数の公共施設が寿命を迎えるが,社会情勢の変化から統廃合される施設も多い.一方,我が国の人口は平地部に集中しており,近年の気象変動を踏まえると洪水災害対策もまた重要であるため,公共施設が洪水避難場所の機能を持つことも考慮する必要がある.本研究では,自治体支出を抑えながら平常時の住民の利便性を最大化するように施設削減シナリオを設定するモデルと,施設 の立地・床面積に対して避難場所の確保状況を確認するモデルの2つを用いて,施設の削減方針が洪水避難場所に与える影響を分析した.施設を大きく削減して集約化すると,同様の施設数でも避難への影響が大きく異なる場合があり,適切な施設配置と床面積配分を行なえばむしろ避難条件を好転できる可能性があることを明らかにした.
  • 西鶴 誠希, 武藤 慎一
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_233-I_249
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    近年甚大な被害をもたらす洪水が頻発している.平成27年関東・東北豪雨を受けて水防法の一部が改正され,洪水浸水想定区域が見直された.本研究では,まず最適経済成長モデルに基づく復興投資を考慮した洪水の経済被害評価手法を開発し,見直された洪水浸水想定区域を対象に,資産の復興とともに生産が回復することを踏まえた洪水被害評価を行った.その結果,従来の資産損失額による洪水被害計測は過小評価になっている可能性のあることを示唆した.次に,甲府都市圏において,洪水被害を防ぐために立地適正化計画制度を活用した立地誘導による洪水被害対策を検討した.そこでは,洪水被害地区から安全な地区への立地誘導は,従来型の堤防建設による洪水対策と比較して有効となり得るのかを検討した.
  • 吉田 護, 梶谷 義雄
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_251-I_258
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,2016年熊本地震で被災した熊本市健軍商店街を対象として,通行量調査,タクシー利用者数データ,インタビュー調査を用いて,核店舗の被災が地域住民及び周辺店舗へ及ぼした影響を明らかにする.結果として,核店舗の営業再開は商店街の通行量や買い物タクシー利用者数の回復に大きく寄与したが,震災以前の水準までは回復しきれず,核店舗の営業休止中に住民の買い物行動が変化,営業再開後もそれが維持されている可能性が示唆された.また,コミュニティ活動を目的とした商店街訪問者は震災前後で維持されており,コミュニティ機能が震災及び核店舗の営業休止による商店街の賑わいの低下を軽減させることに寄与したことが示された.
  • 藤井 達哉, 一井 啓介, 谷口 航太郎, 谷口 守
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_259-I_268
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    我が国では,若年者の地方から都市への人口流出が,量の観点から問題視されているが,質に関して議論が行われていない.海外への頭脳流出は問題視されても,それより身近な国内における地方からの頭脳流出は看過されているのである.本稿では,大学入試偏差値を用いて地方からの頭脳流出の実態を分析し,その累積的影響を推計する方法を提案した.まず,大学進学者と大卒就職者を都道府県間移動の有無で集計し,地方別に各偏差値の学生が占める割合を分析した.次に,地方別・偏差値別の大卒残留者数を推計した.分析から,高偏差値の大卒者が地方から首都圏へ流出する構造を定量的に明らかにした.また,現在の大学進学者と大卒就職者の人口移動が将来にわたり続いた場合,地方から高偏差値の大卒残留者が累積的に減少していくことを示した.
  • 久保田 恵都子
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_269-I_276
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    わが国の離島地域の振興は,1953(S28)年に成立した離島振興法に始まる.本研究は,今後の離島振興政策の検討に資するために,立法措置の必要性と後進性というキーワードに着目し当時の離島の経済社会状況について検討した.その結果,法制定当時,国と離島関係都県の地域振興の方針にスタンスの違いがあり,離島開発の優先順位はきわめて低かったこと,また半数以上が第一次産業従事者で,その一人当たりの所得は低く,資本力・行財政力が乏しかったこと等を明らかにし,離島振興事業の課題を考察した.
  • 白柳 洋俊, 倉内 慎也, 坪田 隆宏
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_277-I_284
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,街並の反復認知が虚偽記憶を生じさせるとの仮定を措定し,同仮説を室内実験により検証した.街並を想起する際,想起する内容に虚偽記憶が含まれることで街並の印象が向上することがある.虚偽記憶は記憶対象を要旨痕跡として記銘することにより,記銘した項目と未記銘の項目の区別が困難になることで生じ,また要旨痕跡は記憶対象を反復認知することで形成される.そこで本研究は和風型街並に対象を絞り,街並の反復認知が要旨痕跡としての記銘を促進することを通じて和風建築要素の虚偽記憶を増大し,街並の和風印象価を高めるとの仮説を措定し,同仮説をDRM パラダイムに基づく再認課題により検討した.実験の結果,反復認知は和風建築要素の虚偽記憶を増大させ,和風印象価を高めること,すなわち仮説を支持する結果が得られた.
  • 崔 文竹, 御手洗 陽, 谷口 綾子, 谷口 守
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_285-I_294
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    近年,国民の健康増進のため,よい生活習慣を継続しやすい健康まちづくり政策の策定が求められている.そこで,個人の認識から生活環境に及ぶ複数の階層を包括した上で,逆戻りの現象を含めた生活習慣の行動変容ステージに関連する阻害要因を明らかにすることを本研究の目的とする.本研究では,主観的健康状態を個人の健康状態の代理指標として,阻害要因の構成に関する仮説を提案したのち,大規模なwebアンケート(n=20,000s)を実施した.その結果,1)逆戻り現象は多く存在し,また「中断」ステージに属する者は主観的健康状態が「良くない」と認識する傾向にあることが明らかとなった.また,2)身体活動の「中断」ステージに属する者は生活環境からの阻害を感じやすいことが明らかとなった.
  • 建川 未帆, 森本 章倫
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_295-I_303
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    我が国における人口減少や環境悪化等の課題を解決し持続可能な社会を形成するために,今後コンパクト+ネットワークの都市形態が望ましいとされている.しかしながら,立地適正化計画や都市マスタープラン等の計画内容は文章や簡単な図のみで表されており,かつ,市街化区域における記載がほとんどである.このため,具体的な郊外の非集約エリアにおける将来像が市民に認知されにくいという課題がある.そこで本研究では,合意形成を図る際に効果的だとされる 3DVR を用いて,特に人々の関心が強いと考えられる居住地に着目して非集約エリアの可視化を行う.また,人々の居住意向がコンパクトシティに対する個人の見解に影響を及ぼすかを明らかにする.
  • 寺口 敬秀, 桜井 慎一, 國井 樹, 野口 翔
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_305-I_314
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,三陸地方の観光訪問率の増加,および水産物輸送の新たな手段として,水上飛行機の導入を目指し,就航地に適する港の選定を行うものである.三陸地方220漁港を対象に,観光施設数やアクセス性から就航魅力度を算出することで就航候補地を抽出し,三陸地方42漁協に対して水上飛行機の導入に対するアンケート調査を行った結果,14漁協(42.4%)より「何かしらの取決めを行えば水上飛行機の離着水を許容できる」と回答があったほか,8漁協(24.2%)が「水上飛行機で水産物を運びたい」と回答し,導入に前向きな意見も見られた.さらに,各漁港の地形・水域特性の分析を行い,最終的に小石浜漁港,砂子浜漁港,野野前漁港が三陸地方における水上飛行機の就航候補地として適することがわかった.
  • 松本 茂
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_315-I_325
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    昨今,耳にするインフラツーリズムは,土木施設を観光スポットとして巡るツアーであり,地域経済の活性化に寄与するものと期待されている.土木施設の観光資源としての活用は,施設を所管する土木行政において,公共事業に対する国民の理解を深める機会であり,更に既存ストックの有効活用の観点からも大きな可能性を秘めている.本研究は,主に地方公共団体の土木行政の視点から,観光資源としての土木施設の活用に向けた課題を整理し,方策を提案することを目的とする.本研究では,事例と土木行政の現状から,土木施設を観光資源として活用する上での土木行政の課題を「組織」と「仕組み」の2 点から考察した.そして「行政の部署を越えた連携」と「施設の目的の見直しと費用対効果分析の実施」を提案し,その効果と導入にあたっての課題を示した.
  • 宮本 史夫, 青木 達也
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_327-I_346
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究は「足尾鉱業所跡」を足尾銅山の世界遺産登録に資する遺産の一つとして光り輝かせようとするものである.その歴史的背景と価値を明らかにするため,当時の法律や鉱業所に関する一次史料にあたり,これに加えて発掘調査を行った.さらに遺産の価値の検証のため,国内の類似鉱山である小坂鉱山の旧鉱山事務所との比較も行った.その結果,鉱業所という施設が全国の鉱業人に明治政府が望む規模の開発を継続的に計画,管理させていくための施設および組織として登場し,足尾では経営の中枢を担うものとして機能し変貌を遂げてきたことがわかった.また,図面と写真と発掘調査の結果から,鉱業所には食堂と書庫が附属しており,現存の書庫がそれに該当することが確認され,さらに旧小坂鉱山事務所との類似部分や相違部分を捉えることが出来た.
  • 松下 岳史, 木附 晃実, 馬奈木 俊介
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_347-I_352
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    近年日本では,地方からの人口流出・東京一極集中が著しく,地方では生活利便性や経済面において様々な負の影響が生じている.政府は「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」の中で,高齢者の地方移住を支援するとし,高齢者が健康な生活を送れるまちづくりを目指す「日本版CCRC」に取り組む自治体がある.そこで本研究では,過去10年間に引越経験を有する回答者のアンケートデータの結果を用いて,65歳以上と他の年代で居住地選択の理由に違いがあるかを分析した.その結果,65歳以上では他の年代と比較して,自然環境を重視していることを明らかにした.また年代に関わらず,利便性や住宅事情に関する項目が重視されていることも明らかにした.地方自治体は豊かな自然環境の整備とアピールによって,高齢者の移住を促すことができると考えられる.
  • 鎌谷 崇史, 中尾 聡史, 樋野 誠一, 毛利 雄一, 片山 慎太朗, 東 徹, 川端 祐一郎, 藤井 聡
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_353-I_363
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    我が国は巨大な自然災害のリスクが高く,近年では国土の強靭性(レジリエンス)確保が重要な政策目標とされている.そのためには,どのような災害に対してどのインフラがどの程度脆弱であるかを把握し,優先度や対策効果を定量的に明らかにする必要があるが,現在のところそのような知見は十分ではない.そこで本研究では道路ネットワークに注目し,過去の震災時に得られたプローブデータから推定された道路リンクの破断率および速度低下率を用いて,災害発生時の地域間移動の所要時間変化を推計し,地域ごとの道路ネットワークの強靭性評価を行った.その結果,南海トラフ巨大地震の被災想定エリア内の広い範囲において,道路ネットワークの強靭性の地域間格差の存在が示唆された.また,新規道路整備等の強靭化施策による改善効果も明らかになった.
  • 鈴木 雄, 日野 智, 藤田 有佳
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_365-I_373
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,灯油難民についての実態把握を行った.その結果,灯油缶が重いために購入を控えている高齢者や,灯油の値段が高いために購入を控えている高齢者の存在が明らかとなった.このことから,灯 油購入者のうち29.0%の灯油難民が確認された.灯油難民は,入浴回数を減らしたり,暖房をつける部屋を制限するなどの状況もみられた.宅配利用者以外の灯油難民要因は,自家用車で灯油を購入できないこ と,単身世帯,木造住宅,3階以上に居住,年収200万円未満,歩行可能距離500m未満であることが挙げられた.宅配利用者では,集合住宅の高層に住む人で灯油難民が発生する可能性が示された.灯油の宅配にあたり,エリアが限定されていることや,高層階までの宅配が行われていない場合が多いこと,高層階への宅配は割高になることの問題が示された.
  • 片岡 将, 柳川 篤志, 田中 皓介, 川端 祐一郎, 藤井 聡
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_375-I_386
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,交通インフラ整備がもたらすマクロ経済上の効果及び各地域の人口や経済力の分布の変動をシミュレーションするため既往研究で提案されているモデル(MasRAC)を用いて,新幹線の新規整備効果を推計した.その結果,新幹線の新規整備が我が国の実質GDPの向上に寄与し,一定のマクロ経済改善効果があることが確認された.地方別の生産額及び人口の変化に着目した分析では,現状整備との比較 においてリニア中央新幹線の整備や新幹線の全国整備を進めた場合,関東地方の人口が最大4.2%,GRPは最大5.3%の水準で少ない一方,各地方においては人口等が多く,「分散化」効果があることがわかった.これらの結果は,新幹線の新規整備が我が国全体の成長力向上に寄与し,また人口と経済力の偏在状況を改善する効果を持つことを示すと言える.
  • 大平 悠季, 桑野 将司, 中川 貴裕
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_387-I_397
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    我が国の地方都市では,人口減少や郊外化に伴って中心市街地の空洞化が進行しており,効果的な賑わいの形成につながるような活性化のための方法論が求められている.本研究は,賑わいを路線価,歩行者通行量,空き家・空き店舗率といった多様な側面から捉え,中心市街地の賑わいの形成要因を解明することを目的とする.鳥取市中心市街地を対象に,街路ネットワーク構造および沿道の土地利用,交通利便性等に着目し,これら空間構造と賑わいの関連性を,共分散構造分析を用いて定量的に明らかにした.分析の結果,賑わい向上の観点からは,沿道の土地利用において商業・サービス系の用途と住宅系の用途を混在させないことや,次数中心性や媒介中心性といった街路ネットワーク構造上の特性等が重要であることが示唆された.
  • 山口 菜乃, 中村 文彦, 有吉 亮, 田中 伸治, 三浦 詩乃
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_399-I_406
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    近年,交通と土地利用を統合的に開発し自家用車依存抑制を目指す「公共交通指向型開発(TOD)」が注目を集めている.多摩田園都市は先進事例の一つとされるが,鉄道駅周辺では自家用車での送迎や商業施設へのアクセスによる道路混雑がみられ,自家用車依存の抑制に課題があるといえる.本研究では, TOD の意図する自家用車依存の抑制という概念に着目し,多摩田園都市の鉄道駅周辺における自家用車依存を評価することを目的とする.結果として,通勤・通学目的では TOD における自家用車依存抑制の様子が見られるが,私用目的では課題があることが明らかになった.私用目的での自家用車依存促進の要因は,移動距離,登坂距離,高齢者が多い場合の道路率の高さであることが得られた.これらへの対策として,交通手段のバスへの転換方策を検討した.
  • 中尾 聡史, 小野寺 哲也, 片山 慎太朗, 東 徹, 川端 祐一郎, 藤井 聡
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_407-I_417
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    南海トラフ地震や首都直下地震の発生が予測される中,インフラの拡張や耐震化をはじめとする国土強靭化を推進することが喫緊の課題となっている.強靭化事業の妥当性や緊急性を判断するためには,発生の予想される災害によってインフラがどの程度毀損するのか,強靭化対策によってどの程度その被害を軽減できるのかといった定量的な予測が必要となるが,そうした知見の蓄積は不十分である.本研究では,東日本大震災におけるデータに基づき,大規模地震発生時の道路リンクの破断を予測するモデルを構築した.ただし,インフラ耐震化状況等のデータが不足しており推計精度に限界がある等の課題も明らかにな った.
  • 小橋 昭文, 北詰 恵一
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_419-I_427
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,南海トラフ巨大地震による被害想定地域の広域性・多様性に応じた地域別震災廃棄物処理対策の提案を目的としている.また,今後 30 年間で 70~80%とされている発生確率であっても実際に発生するまでの長期性にも配慮し,人口減少による地域状況の変化が引き起こす事前対策内容とのズレである社会リスクに柔軟に対応することを視野に入れる.そのため,震災廃棄物分野における既存指針や計画項目にレジリエンス概念を適用することで,市町村の施策を網羅的に整理した.また,震災廃棄物対策にと って重要となる行政・都市構造・産業ごとの指標を用いた類型化を行うことで,現在と将来における地域特性の違いを明らかにした.そして,地域特性別に分類された市町村から,事前対策事例を整理することで,地域別の重点対策領域を示した.
  • 光永 和可, 田中 尚人
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_429-I_439
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    地元住民のための温泉場が,多くの観光客から支持を得る観光地になるには,様々な組織が共通目的のもと協力して課題解決を行う「協働」が必要である.本研究では,熊本県の黒川温泉にてエピソード記述を用いた調査を行い,観光まちづくりにおける協働を解明することを目的とした.調査から得られた観光まちづくりにおける各時代の活動を,課題解決手法,協働に整理し分析した.研究の成果として,黒川温 泉では,5つの課題解決の場において多様な協働がみられ,時代に順応して変化していく協働と,一貫して継続されてきた手法があることが分かった.また,協働の変化の仕方は,組合を中心に観光地の発展とともに広範囲に進化してきたことが分かった.
  • 落合 慶亮, 牧村 雄 , 浅見 均
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_441-I_449
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    首都圏等の地域では,所要時間・運賃・乗換回数・アクセス・イグレス・混雑率等のサービス水準が,公共交通機関ネットワーク内のOD間トータルで比較されていることにより,居住地から地理的に最も近い鉄道駅にアクセスしないという利用者の選択行動が認められる.本研究では埼玉高速鉄道に着目し,同鉄道沿線の駅勢圏人口の分析を行った.具体的には,500mメッシュ人口データを100mメッシュ土地利用データに基づき配分し,100mメッシュ人口データを作成,分析対象駅およびバス停からの直線距離帯毎に捉え,駅勢圏人口時系列分析を行った.競合する鉄道・バス路線の駅勢圏人口・バス停勢圏人口の比較分析は,首都圏では初めての成果である.この比較分析では,バス停勢圏人口は伸びているが,鉄道駅勢圏人口の増加率は更に高いことが確かめられた.
  • 栗原 剛, 新庄 瑳やか
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_451-I_459
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    魅力ある観光地づくりのためには,観光地が抱える課題を発見し,必要な改善を続けなければならない.時宜性のある適切な観光施策を立案するためには,観光客のニーズをもとに地域の課題を設定することが 求められる.本研究は,毎年 7 月と 11 月の休日 1 日に富士河口湖町が実施している観光客を対象とした観光基礎調査から,観光客のニーズにかかるテキストデータをもちいて,観光施策立案に向けた情報を提供し得るかどうか検証することを目的とする. テキストマイニング分析の結果,富士山にかかる記述が最も多く,富士河口湖町の観光は天候に左右されることが示唆されている.他方,飲食施設の不足や交通に関する観光客の不満という,地域における今後の観光施策を検討する上で重要な観光客のニーズを確認することができた.
  • 柴田 優作, 日比野 直彦, 森地 茂
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_461-I_474
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    わが国では,地方創生に資する重要施策の一つとして,訪日外国人旅行者の増加策が着目されている.訪日外国人旅行者数は近年顕著な増加を示すが,宿泊数に着目すると,民泊やクルージングの増加は宿泊 施設での宿泊数の増加にはあまり繋がらず,地域への経済効果は限定的となっている.観光消費の4分の1以上を占める宿泊費を増加させることは地域にとって重要であり,宿泊実態を定量的に把握することは,インバウンド観光による地域活性化を考える上では重要である.本研究では,宿泊旅行統計の施設データを用い,訪日外国人旅行者の宿泊実態を市町村別に把握することを試みる.公表された都道府県別のデー タではなく,約1600の市町村のデータを作成し,外国人宿泊者数,外国人比率,稼働率等より,各市町村の特徴を整理したことが本研究の特徴である
  • 遠藤 幹大 , 高橋 央亘, 浅田 拓海, 有村 幹治
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_475-I_483
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    近年の北海道の観光客数増加の傾向から,特に簡易な手法による観光客の行動把握の重要性が高いと考えられる.そこで本研究では「旭川富良野広域圏Wi-Fi調査」によって収集されたデータからスポットごとに基礎分析を行い取得したデータの有用性を示した.次に各スポット間の周遊パターンの分析を行い,観光客の周遊の特徴を考察した.分析には,マーケティング分野などのピックデータ解析で使われる「系列パターンマイニング」を用い,各スポット間の訪問順列を考慮した分析を行った.それにより検出された訪問順列パターンと三つの指標から考察と観光施策の提案などを行い,大規模周遊行動パターン把握におけるWi-Fiパケットセンサーと系列パターンマイニングの有用性を示した.
  • 小倉 秀斗, 田中 皓介, 寺部 慎太郎, 柳沼 秀樹 , 康 楠
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_485-I_492
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    昨今の日本では地方の衰退が問題となっている.先行研究では,大型チェーン店よりも地元商店で食品を購入した時の方が地域内に残るお金が 3 割多いことが示されており,現在の大型チェーン店に依存した買い物行動を,地元商店による買い物行動に変容させることが地域活性化に対して有効と考えられる.そのために効果的な情報提供の方法を検討することを本研究の目的とする.具体的には,フレーミング効果 に着目し,地元商店の利用で約3 割多くのお金が地元に残ることを強調した「残留情報数値あり群」と「残留情報数値なし群」,大型チェーン店の利用で約 3 割多くのお金が「流出」することを強調した「流出情報数値あり群」を設定し,情報提供の効果を比較した.結果,「流出」より「残留」を強調した情報が効果的であることが示唆された.
  • 萩田 賢司, 横関 俊也
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_493-I_506
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    平成29年の全国の交通事故統計により,自転車専用走行空間や歩道,横断歩道,路側帯等における通行方向別(右側通行/左側通行)の自転車事故発生割合を集計し,先行研究で調査された通行方向別自転車交通量と比較した.交差点では通行方向別の自転車事故件数に大きな差はなかったが,単路の歩道では,自転車交通量は左側通行がやや多い傾向にあったものの,自転車事故は右側通行の割合が非常に高かった.また,自転車の左側通行が原則である自転車専用通行帯や路側帯においても,右側通行自転車が関与した 事故が約40%であり,自転車専用通行帯等の通行方向別自転車交通量より高い割合であった.右側通行自転車は交差側自動車に見落とされやすいと推察され,自転車交通量と比較して自転車事故が多く発生している傾向にあることが窺えた.
  • 古屋 秀樹
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_507-I_517
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,訪日外国人旅行者の訪問パターンの抽出を都道府県区分よりも細かい地点レベルで行うことを目的としている.論文では,はじめに訪問地の組合せである訪問パターンの抽出に用いる手法として, Hierarical Pachinko Allocation Model (hPAM)を示すとともに,Latent Dirichlet Allocation Model (LDA)との差異を明らかにする.hPAMは教師データなしの機械学習の1つであり,各訪問パターンをトピックに区分す る確率的導出過程が明示でき,トピック間の関連性を階層構造として考慮できる特色を有する.分析では, 観光庁が実施した「訪日外国人消費動向調査(平成27,28年)」データを用いながら,hPAMによって訪問場所の組合せパターンを分類するとともに,国籍・地域や訪日回数とセグメントとの関連性を明らかにした.
  • 森本 瑛士, 下山 悠, 岡野 圭吾, 谷口 守
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_519-I_526
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    人口減少に伴い施設数が減少しており,特に地方都市ではその傾向が顕著である.そこで拠点に施設を集約しつつ,市町村を超えた拠点間で連携することで生活サービス水準を確保することが望まれている.拠点を維持するためには利用されることが重要であるが,拠点の利用実態は明らかになっていない.本研究は市町村内及び市町村を超えた広域の移動に着目し,拠点及び拠点間の利用実態を明らかにすることを目的とする.宇都宮都市圏を対象に分析した結果,1)全トリップの内,到着地が拠点の割合が約36.0%であること,2)拠点間移動の割合は約6.6%であること,3)買い物目的で2回以上の拠点間移動をする可能性は低いことがわかった.以上から現状の拠点とネットワークでは,拠点間連携を移動の観点からみると実際には多く移動されていないことが示唆された.
  • 大森 匠, 大沢 昌玄, 中村 英夫
    2019 年 75 巻 5 号 p. I_527-I_533
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
    近年,商業・公共機能などを生活拠点に集約,適切な再配置を施すことで移動に制約の多い高齢者の外出機会増加を促し,健康増進や地域交流の活発化へと繋げ,「歩いて暮らせるまちづくり」といった健康・医療・福祉に主眼をおいた地区レベルでの施策展開が盛んに検討されるようになってきた. そこで本研究では,日常生活圏での主要な移動手段である徒歩移動の活発化に主眼を置き,高齢者が日常的な買い物や社交といった私事的行動をより能動的に行えるような都市空間についての検討を行う.具 体的な評価指標として,平成27年に実施された全国パーソントリップ調査から得られる個々人の一日を通した移動データを用い,集計エリアごとの都市機能指標と対応させることで,連鎖的移動の多寡に対する都市施設の影響の程度を定量的に分析する.
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