土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
76 巻, 5 号
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土木計画学研究・論文集 第38巻(特集)
  • 水谷 大二郎
    原稿種別: 招待論文
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_1-I_19
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    社会基盤施設の公共性を考えると,管理者はその価値を最大化するようなアセットマネジメントを行うことが求められる.老朽化の進行した社会基盤施設の増加や維持管理のための予算の縮減,人材不足も相まって,2000 年代以降,社会基盤施設のアセットマネジメントに関する研究が盛んに行われてきた.本稿では,それらの研究の中で,点検データを用いた統計的劣化予測と劣化予測結果に基づく維持管理施策の最適化に関する先端的な研究をその数理的手法に着目して整理するとともに,今後の研究課題と展望を述べる.

  • 和田 健太郎
    原稿種別: 招待論文
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_21-I_39
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    本稿では,動的交通均衡配分モデルの解析理論の近年の進展について解説する.渋滞の時空間進展と利用者行動の相互作用から生じる,複雑な交通ネットワーク流の見通しのよい解析を可能とする移動座標系アプローチに対象を限定し,車両を流体近似する伝統的なモデルと最近進展している粒子型のモデルを対比的に紹介する.その中で得られる,それぞれのモデルの特徴や関係,均衡解の数理特性に関する成果を踏まえ,双方の優位性を活かした今後の発展の方向性について述べる.

  • 浅田 拓海, 居駒 薫樹, 有村 幹治, 亀山 修一
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_41-I_49
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    膨大な生活道路を管理する市町村において,効果的な舗装メンテナンス・マネジメントを実現させるためには,まず,定量的かつ網羅的な舗装点検を実施し,そのデータベースを活用することが重要となる.本研究では,車載カメラと深層学習モデル(CNN:Convolutional Neural Network)を用いた舗装点検システムを開発し,室蘭市の管理道路815kmを対象とした点検を単年度で実現させた.まず,既存の目視点検や路面性状調査との比較を行い,本システムによるひび割れ評価が十分な精度を有することを示した.次に,室蘭市管理道路の点検データを用いて,舗装劣化箇所のスクリーニングや舗装維持修繕のLCC推計を試み,これらの結果から,本システムおよび舗装点検の全数調査データの有効性を示した.

  • 管野 貴文, 安藤 慎悟, 谷口 守
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_51-I_59
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    近年,地方の地域づくりに地方の外から貢献する「関係人口」という概念が注目を集めている.関係人口における関わりの深さは,訪問や活動の有無などによって大まかに定義されてきた.しかしながら,活動内容や実施する者によって関わりの深化しやすさは異なると考えられる.本研究では,関係人口の中でも訪問型関係人口に焦点を当て,彼らが行う活動を関わり方から4タイプに分類した後,それぞれにおける活動実態の把握を行なった.その結果,1)地域への寄与度が高い活動を行う者ほど地域へ訪問する頻度の高い者が多く存在すること,2)個人のライフスタイルを考慮した12の主成分軸によって構成される8グループ間において,各タイプの活動の存立に違いがあることが明らかとなった.

  • 安間 匡明, 鈴木 文彦
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_61-I_73
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    PFI・PPP(以下「PPP」)では,PPP 契約が政府・自治体と特別目的会社(SPC)の間で締結され,その SPC が金融機関からプロジェクトファイナンス(PF)の資金を借りていることにも鑑みれば,出資企業の有限責任性や資金調達におけるノンリコースの原則を前提に PPP 契約が作成されていると考えられる.しかしながら我が国の PPP 契約をみると,かかる原則と必ずしも相容れない契約条項が規定されている.本稿においては,事業者の有責事由に基づく契約義務不履行に伴う公共主体への賠償責任に関する条項を海外事例とも比較し分析したうえで,PPP 契約の適切な在り方を考察する.

  • 柿本 竜治, 吉田 護
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_75-I_83
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    「平成30年7月豪雨」では,西日本を中心に多くの地域で河川の氾濫や浸水害,土砂災害が発生し,死者・行方不明者245人の甚大な災害となった.本研究では,中でも被害の大きかった岡山県,広島県,愛媛県の市町村の住民を対象に状況認識に着目したアンケート調査を実施し,当時の避難行動の特徴を明らかにする.結果として,被害を受けた住民の中で,気象情報や避難情報の状況認識に成功し能動的避難をした人は15%弱,呼びかけや災害の脅威が切迫したことにより避難を迫られた受動的避難をした人は20%,それ以外の人は避難していなかったことが明らかとなった.気象情報や避難情報の状況認識の改善を促すことに加えて,状況認識の失敗を補うため住民間で呼びかけあうことが重要であることが示唆された.

  • 浅田 拓海, 可知 宏太, 有村 幹治
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_85-I_92
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    本研究では,生活道路を対象として,近隣住民や修繕効率化を考慮した舗装劣化箇所の面的な抽出手法を構築した.具体的には,舗装点検や住宅立地のデータを用い,舗装ひび割れ率と住宅の空間分布に基づいて修繕対象の優先順位付けを行う.まず,舗装点検データを用いて,ひび割れ率が正の空間的自己相関を有することを明らかにした.次に,住宅近接性を考慮した修繕必要度を導入し,ひび割れ率の空間ラグとの関係から優先順位の診断基準を構築した.これを実道路に適用し,舗装劣化箇所がまとまっているエリアが優先的となり,近隣住宅の延床面積が大きいほど優先箇所が一体化することを示した.このように優先箇所を面的に抽出できれば,住民へのサービス水準向上や修繕の効率化と費用削減が期待できる.

  • 穴水 俊太朗, 中村 佳太郎, 大門 創, 森本 章倫
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_93-I_100
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    近年,利用者数の減少によって厳しい経営状況にある地方鉄道路線において,観光列車の運行など鉄道自体を観光資源として活用するといった鉄道への本源的需要を喚起する施策が数多く行われている.このような施策を考えていく上では,交通にかかる時間が負の効用をもたらすという考え方だけでなく,交通機関がもたらす正の効用の効果についても考慮する必要がある.そこで,本研究では交通機関の選択要因のうち,正の効用をもたらす要素を「本源的要素」と定義した上で,本源的要素に対する支払意思額を調査する.また,本源的要素による効用は乗車する時間によって変動する可能性があることを踏まえ,時間による効用の大きさの変化についても把握し,鉄道利用がもたらす正の効用を定量的に評価する.

  • 長曽我部 まどか, 桑野 将司, 谷本 圭志
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_101-I_111
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    人口減少,高齢化,自然災害リスクといった課題を抱える地域社会において,市民組織の重要性が高まっている.しかし,市民組織自体が人材不足などの課題を抱えている場合も多い.組織の構成員や活動への参加者を継続的に確保し,組織を維持するためには,組織の種類や参加の実態,参加動機の関係を明らかにする必要がある.そこで本研究は,複数の市民組織に対しアンケート調査を行い,因子分析によって参加動機に共通する特性を明らかにした.さらに,自己組織化マップとクラスター分析を用いて,参加動機の特性を二次元マップ上に示した.分析の結果,組織別の特徴的な動機とその関係が明らかになった.

  • 佐伯 智士, 小嶋 文
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_113-I_126
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    歩行者優先の道路整備を推進していくためには,そのような道路整備が利用者である歩行者や沿道住民にもたらす効果を提示することが重要であると考えられる.本研究では,歩行者優先の道路整備の効果として主観的幸福感の向上に着目し,楽しさや快さから得られるへドニアと,自己実現や望ましい生き方から得られるユウダイモニアへの影響について検討した.アンケート調査の結果から,歩行者にとって日常的に利用する生活道路の質があがることは,ヘドニアとユウダイモニアの双方を向上させることが示唆された.また,そのような歩行者を優先する道路整備の計画に積極的に関わる経験は,沿道住民にとってのユウダイモニアの向上につながる可能性が見られ,計画づくりに沿道住民が関わる場づくりの重要性が示された.

  • 水谷 大二郎, 川崎 洋輔, 佐津川 功季, 中川 岳士, 梅田 祥吾, 生嶋 理恵, 桑原 雅夫
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_127-I_139
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    本研究では,高速道路情報板の故障による利用者の経済損失を考慮して維持管理施策の評価を行うための簡易的方法論を提案した.情報板のような交通補助施設に対しては,ある程度の件数の故障を許容しながら維持管理を行うことが現実的であり,そのためには故障時の利用者の経済損失を適切に評価する必要がある.本研究では,点検データに基づき情報板の故障過程を推定するとともに,情報板の故障により非効率的な経路選択がなされると仮定し,利用者の経済損失をデータから簡易的に評価した.その上で,維持管理費用と利用者の経済損失によりライフサイクル費用を定義し,情報板の維持管理施策を評価した.それらの結果から,情報板周辺の交通条件ごとの利用者の経済損失が定量化され,更新費用単価に応じて予防保全施策が有用となる可能性が示唆された.

  • 吉田 京香, 安田 誠宏, 河野 達仁
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_141-I_153
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    東北地方太平洋沖地震後,防潮堤への信頼や安心感という防災施設に対する住民の認識や過信が,津波からの避難意思決定に影響を与えた可能性についての指摘があった.本研究では,南海トラフ巨大地震に備えた防潮堤整備が進む静岡県浜松市沿岸域における住民を対象として実施したアンケート調査データを用いて,防災教育の受講有無によるクロス集計を行った.さらに,構造方程式モデリング(共分散構造分析)により防潮堤に対する認識を考慮した住民の避難意思決定プロセスを分析した.その結果,防災教育受講の有無による避難決定メカニズムの違いをみることで,防災教育が避難を促すいくつかのルートの中で最も有効的なルートは,防災への関心や理解を直接高めるルートであることが示された.

  • 白柳 博章, 北村 幸定
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_155-I_163
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    大阪府寝屋川市は第二次世界大戦後,大阪のベットタウンとして急速に発展し,人口が急増した.そのために地震時等に著しく危険な密集市街地が形成され,地震時において建物が倒壊し,消防車が目的地に到着できない地区が多数ある.最悪の場合,避難所へ避難できずに孤立してしまう恐れもある.そこで本研究では,地震時における細街路単位,区画単位で細かく脆弱性を定量化するための指標として車両ならびに人のリンク通行確率・ノード到達確率を提案した.さらに寝屋川市内の木造住宅密集地域を対象として,リンク通行確率・ノード到達確率・所要時間の期待値を定量的に評価した.その結果,連続立体交差化事業による側道整備によりノード到達確率は最大で98.2%増加し,所要時間の期待値は最大で73.6%減少することがわかった.

  • Nontachai TITHIPONGTRAKUL , 石川 良文, 仲条 仁
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_165-I_172
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    2011年の東日本大震災は主に東北地域において甚大な被害をもたらした.政府および地方自治体は,これまで様々な復旧・復興事業を行ってきたが,それらの事業は被災地域にどれほどの効果をもたらしたであろうか.本研究では,著者らが開発した生活圏間産業連関表を用いて復興交付金等による復旧・復興事業費の被災地及び他地域への経済波及効果を分析した.本研究の分析期間は,2011年度から2017年度であるが,2017年度の被災地における生産誘発額は,被災地計で2.7兆円,その他全国で1.3兆円であり,波及効果の約3分の1がその他全国への漏出したことが明らかになった.また,復旧・復興事業のフロー効果による域内総生産への寄与を分析し,復旧・復興投資の寄与が大きい地域とそうでない地域が存在することが明らかになった.

  • 田中 尚人, 竹長 健斗
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_173-I_183
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    平時から防災意識を醸成するためや未災地に災害の教訓を伝えるために,災害時に被災者が抱えたジレンマを共有することが有効である.クロスロードゲームは,災害時に個人が経験したジレンマを追体験するだけでなく,そのジレンマを共有し継承していく機能もある.本研究の目的は,防災学習教材である「クロスロード」を通じて,被災者が体験したジレンマの構造とその共有過程を明らかにすることである.具体的には,熊本地震とその復興過程におけるジレンマを問題にしたクロスロード熊本編の制作過程及びプレイした結果を分析し,ジレンマの構造とその共有過程について考察した.研究の成果として,ジレンマは「選択のジレンマ」「立場によるジレンマ」「潜在的ジレンマ」の3つに大別され,ジレンマの共有にはそれぞれの特徴があることが分かった.

  • 長曽我部 まどか, 谷本 圭志, 横山 敦一, 桑野 将司
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_185-I_192
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    地方では生活を支えているサービスの廃止や縮小に伴い,住民自らが地域の暮らしを維持するための新たな共助活動を行う必要性が高まっている.地域には寄合や清掃活動といった集落活動が存在していることが一般であり,これらは新たな共助活動への潜在的な協力意向を育む場と考えられる.しかし,様々な集落活動があるなかで,どの活動が共助活動への協力意向を育んでいるのかは不明である.そこで本研究では,集落における活動を基礎的な活動と副次的な活動に階層化したうえで,どの階層の活動への参加が新たな共助活動への協力意向に寄与しているのかを定量的に分析した.その結果,寄合や清掃活動といった基礎的な集落活動が,地域の生活支援に関する共助活動へ寄与する可能性が明らかになった.

  • 渡邊 芳樹, 神田 佑亮, 重光 裕介, 藤原 章正
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_193-I_208
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    本研究は,交通施策の早急な展開が課題である大規模災害発生時に「交通サービス」を対象としたSNS投稿特性を,交通施策の展開・進展に応じて分析したものである.Twitterにて,平成30年7月豪雨災害により広域的に道路交通インフラが被災した広島県内の公共交通輸送確保策に関するキーワードで検索した投稿を分析した.結果として,災害時のSNS上では役立つ情報や信頼性の高い情報は発信者の注目度に関係なく拡散され,交通状況に応じ現況を伝える投稿,施策に関する投稿が多数確認された.更に,投稿本文を構成する単語の共起関係を俯瞰することで当時の交通状況を読み取った.併せて,投稿は信憑性が高いことが示唆され,共助の精神で情報共有されていった.総じて,災害時に行政等がSNSを判断材料として交通施策を展開する上で有用な知見を得た.

  • 橋本 成仁, 山下 壮太, 海野 遥香
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_209-I_220
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    我が国では,老後の不安として「生きがいの問題」が挙げられており,会話の頻度や近所づきあいの少ない人が生きがいを感じていないことが明らかになっている.そこで本研究では,生きがい意識尺度(Ikigai-9)を用い,コミュニケーションの中でも特にSNS利用に着目し生きがいとの関連性の把握を行った.生きがい得点を目的変数としたモデルを作成した結果,対面コミュニケーションに満足しているかがSNSの利用の有無にかかわらず生きがいを構成する重要な要素であることが示された.また,対面コミュニケーションの頻度が週1日以上の人で,最も意欲的に利用しているSNSに満足しているかが生きがい得点に与える影響が大きいことから,SNSの利用が対面コミュニケーションの補完的な役割を果たし,生きがいの構成要素となる可能性が示唆された.

  • 朴 秀日, 加藤 博和, 長尾 和哉
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_221-I_232
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    低炭素社会の実現が求められる一方,巨大自然災害に対するエネルギー供給システムの脆弱性が露わになり,非常時におけるエネルギー供給を可能とすることの必要性が認識されるようになった.本研究では既成市街地を対象に,平常時の低炭素化と非常時のエネルギー供給を両立する地域に更新するために,立地誘導とエネルギーシステム導入を同時に実施していくことの有効性を検討するモデルを開発した.構築したモデルを地方都市に適用し,施策シナリオを設定し導入効果を評価した.その結果,立地誘導が 2 つの目標に与える効果は,通常はトレードオフの関係にある一方,立地誘導の際は,適切な土地利用の用途混合を考慮した分散型エネルギーシステムを導入することによって,非常時エネルギー供給率と CO2 排出量への効果がより高まることが明らかになった.

  • 中里 悠人, 水谷 大二郎, 奥村 誠
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_233-I_240
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    道路舗装を規制し補修を行う場合,空間的に近接する複数の舗装区間に対する補修を単一の連続規制で行うことにより,連続規制あたりの固定規制・補修費用の削減が期待できる.さらに,補修すべき舗装区間の近隣に,ある程度劣化の進展した舗装区間が存在する場合,それらの舗装区間を単一の連続規制で補修することにより,複数時刻での規制が単一の連続規制に集約できる.本研究では,このような時空間的な補修の同期化施策の最適化手法を,小規模な道路舗装を対象に定式化する.その上で,数値計算事例において,独立施策,空間的同期化施策,時空間的同期化施策の 3 種類の施策を比較し,補修の時空間的同期化施策の有用性を議論する.さらに,当該数値計算事例において,固定規制・補修費用を変動させ,時空間的同期化施策の効果の変動を分析する.

  • 青木 駿太, 瀬谷 創, 喜多 秀行
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_241-I_248
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    社会的選択のために各個人は,私的選好に基づく自己利益の追求ではなく「社会としてどうあるべきか」という視点に立つ公共的判断を行うことが望ましい.しかし,公共的判断がどのように形成されるかについては不明な点が多い.そこで本研究では,地域公共交通の文脈において,公共的判断の形成要因をSP調査を通して実験的に明らかにし,公共的判断を促すための実証知見を得ることを目的とする.具体的には,仮想状況下での社会的選択に対する各個人の意見を取得し,潜在クラスロジットモデルの推定を通して,私的関心・公共的判断を重視するグループの特定化を試みた.また,他者へのシンパシーやコミットメントの程度が高い回答者は公共的判断を行いやすいこと,他者についてのナラティブな情報提供が公共的判断を誘発する可能性があることを示した.

  • 守田 賢司, 中村 一樹, 森嶋 裕太, 加藤 暉登
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_249-I_258
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    車依存都市におけるWalkable Cityの実現には,道路空間整備のあり方を大きく転換する必要があり,この議論を行うためにはその将来ビジョンの可視化が必要となる.主な可視化技術であるCGでは,コンピューターやソフトウェアの性能向上,デザイン要素のクラウド化から,低コストで高質な3D空間の作成が可能となっている.また,空間を疑似体験するVR技術も発展し,空間の没入感を高めるツールが一般的に利用可能になっている.しかし,CGやVRツールの特徴が歩行空間評価にどのように影響するかは明らかでない.そこで本研究では, VRの視点自由度を考慮して,街路空間CGのデザイン要素が空間評価へ与える影響を分析した.この結果,静的デザイン要素は滞留空間の評価への影響が大きく,VRは安全性や楽しさの評価の感度を高めることが示された.

  • 森崎 裕磨, 藤生 慎, 古田 竜一, 高山 純一
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_259-I_266
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    突発的に発生する地震災害は規模が広域化するほど被災者が持つニーズを収集することが難しくなり,同時にきめ細やかな被災者支援の実現も困難を極める.また,地震災害が甚大化するほど,携帯電話,防災アプリ等の使用が困難になることが知られている.特に災害時要配慮者については,発災後,迅速に位置,ニーズの把握を行い,迅速かつ細やかな支援が実行可能な仕組みの構築が求められている.本研究は,SAR衛星が観測可能かつ後方散乱係数が異なる複数のリフレクタを開発し,大規模地震災害が発生した直後に被災者に設置していただき,その存在位置・ニーズを把握する仕組みの提案を行った.分析の結果,本研究では底面が直径50cm,高さ25cmのリフレクタが望ましくリフレクタの種類によって後方散乱係数に差が生じることが明らかとなった.

  • 田中 皓介, 坂本 大河, 柳沼 秀樹, 寺部 慎太郎
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_267-I_279
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    自然災害や老朽化対策に不可欠な公共事業費は,先進国の中で日本のみが減少傾向にある.この要因として,公共事業に対して否定的な世論が挙げられる.本研究では日本と米国において,公共事業に関連して人々がどのような事象に関心があるのかを明らかにすることを目的とした.その際,個人が自由に情報を発信できるSNSの中でも,日米両国で利用者の多いTwitterを対象とし,公共事業やインフラなどに関連する2018年7月上旬からの約1年間のツイートを分析した.ツイート数及びいいね数に着目し,分析した結果,日本では公共事業やインフラ整備への関心が,災害や不正,予算編成などで高まる一方で,米国では急激に関心を集めることが少なく,日本における土木バッシングのような批判は皆無であった.

  • 大澤 脩司, 藤生 慎, 高山 純一
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_281-I_296
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    近年の自然災害における道路被害を踏まえて,多様な道路被害を考慮した道路ネットワーク評価手法の必要性が指摘されている.このような背景のもとで提案された大澤ら(2018)の手法の枠組みを発展させ,本研究では全体の災害危険箇所を大きく低減できるようなリンクを対策上の注目リンクとみなす評価指標と,重要な拠点ペア間を結ぶ経路が多数通過するリンクを対策上の注目リンクとみなす評価指標の 2 指標を新たに構築した.さらに石川県の緊急輸送道路網を対象としたケーススタディを行い,提案指標の妥当性を確認した.また,対策注目度の考え方によって対策候補となるリンクは大きく変化する可能性があることを確認し,道路防災対策に対する方針・考え方によって適切な手法選択が必要であることを指摘した.

  • 南 貴大, 藤生 慎, 福岡 知隆, 高山 純一
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_297-I_304
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    高度経済成長期に建設された橋梁が多く,一斉に高齢化が進んでいる中.近接目視による定期点検が行われている.しかし,財源・人材の不足により,近接目視点検を継続的に行うことは困難である.そのような中,効率化に向けて画像データの活用が期待されており,損傷の自動検出に関する研究がなされている.しかし,損傷の自動検出までに留まっており,維持管理計画を立てる上で必要な損傷度・損傷の発生要因の診断の自動化までは行われていない.本研究では,過去の点検結果における損傷図からパターンマッチングなどの画像解析を用いて損傷の特徴量を抽出する手法の提案を行った.また抽出した損傷の特徴量を説明変数とし,損傷度・発生要因の診断結果を目的変数とした決定木分析を行うことで,診断に影響を与えている損傷を明らかにした.

  • 金山 洋一
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_305-I_316
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    我が国は,大都市圏では国際競争力の強化等に資する鉄道整備が,地方都市ではコンパクトシティ政策に資する鉄軌道の再生整備が極めて重要となっている.鉄道の整備・運営スキームは,民間等事業者主導型が基本とされ,大都市では成功を収めてきたが整備に限界が現れ,地方都市では運行頻度等のサービスレベルは低く,路線存続のための補助手法としての上下分離も行われるようになった.本稿では,都市鉄道等利便増進法の制定に寄与した公益性と経営効率性の両立を図る官民分担型上下分離の基本的な考え方を,公的事業に係る知見を加え再整理し,大都市圏での整備の課題への対応可能性を包括的に示すとともに,考え方にパラダイムシフトを伴うがゆえの参入インセンティブの課題を明らかにする.次いで,地方都市に適用する場合の対応可能性について示す.

  • 松村 暢彦, 金藤 百華, 片岡 由香
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_317-I_325
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    本研究では,宿泊施設の防災とこれまでの災害対応の意識と行動の実態を明らかにすることを目的とした.愛媛県下の宿泊施設に平成 30 年 7 月豪雨での対応と日頃の災害への備えについて,社会的学習理論の枠組みを用いて調査項目を設定し,アンケート調査を行った.その結果,災害時の支援に対する結果予期が高いほど,自己効力感が高いほど災害時の支援行動意図が高くなることが明らかになった.また,災害時に対応行動をとった施設ほど,結果予期,自己効力感が高いことから支援行動実績が支援行動の意図を高めることが示された.さらに,施設周辺の住民活動に参加している施設ほど災害対応をする傾向にあることから,ソーシャルキャピタルを高めていくことが非常時の行動に効果的であることが示唆された.

  • 岡野 圭吾, 高橋 諒, 谷口 守
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_327-I_338
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    様々な新技術の進歩に伴い買い物を取り巻く環境が大きく変化しつつある中で,人口減少に対応しながら購買環境を充実することが求められている.一方で,購買環境に対する評価は個人の価値観により異なる.そこで本研究では,一定程度価値観を共有するであろう「世代」に着目し,今後の購買環境を検討する参考情報を得るため,購買環境に対する満足度について「時代,年齢層,世代」の 3 つの軸から比較した.また,その要因を行動や意識から考察した.結果,購入する品目ごとに傾向が異なるうえ,年齢層はもちろん同一年齢層を追跡した場合と同一世代を追跡した場合とでも異なる傾向が示された.したがって,購買環境を把握するためには,定量的・客観的な要素だけでなく個人の価値観による定性的・主観的な要素まで把握する必要性が示唆された.

  • 田中 美帆, 佐藤 徹治
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_339-I_351
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    本稿では,高度経済成長期以降の日本の社会資本の生産力拡大効果(全要素生産性向上効果,民間資本限界生産性向上効果,労働限界生産性向上効果)を年代別,産業別,社会資本の部門別,社会資本ストックの定義別に,複数の関数型の生産関数を推定することにより検証した.生産関数の推定に際しては,産業別総生産,民間資本ストック,就業者数,第2次・3次産業の民間資本稼働率および労働時間,社会資本ストックについて統一基準での1955年度から2015年度までの都道府県パネルデータを推計し,これらを用いた.分析の結果,年代,産業,社会資本の部門,社会資本ストックの定義,関数型によって効果の有無が異なること,2000年代以降も第3次産業において社会資本の全要素生産性向上効果が存在し続けていることなどが明らかになった.

  • 松下 岳史, 木附 晃実, 馬奈木 俊介
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_353-I_358
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    地域の豊かさを評価する際,GDP のような経済的な生産・消費を表す指標を用いるだけでは不十分であると指摘されている.本研究では,余暇時間と地域内の経済格差を考慮に入れた効用関数を用いて既存のGDP を拡張し,その指標を日本の各都道府県と人口が 10 万人以上の地方都市にそれぞれ適用した.その結果,都道府県と地方都市を対象にした分析双方において,余暇時間と経済格差も考慮にいれた厚生指標は,消費のみを評価した厚生指標との正の相関が確認されたものの,消費のみによる厚生指標との乖離も大きく,この乖離の要因は主に格差よりも余暇で説明されることが明らかになった.地域の厚生水準を測る際には,地域住民の消費水準のみならず,格差やとりわけ余暇も考慮に入れるべきであることが示唆される.

  • 清水 宏樹, 武田 陸, 奥村 蒼, 谷口 守
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_359-I_368
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    我が国では人口減少・少子高齢化の進行に伴って空き家問題や財政悪化,施設撤退など今までにない都市問題が進行している.これまで,こうした個々の問題に対しては様々な取り組みがなされてきたが,その全体像が横断的・俯瞰的に把握できているわけではない.本研究ではまず,各都市問題に関する代理指標を用いて,時系列横断的な都市類型化を行い同様の問題を抱える都市を類型化する.次に全国の都市の経年的な類型の変化を把握することで,人口減少・少子高齢化に伴う都市問題の進行過程を明らかにした.その結果,都市問題の進行には「街の老い」として総称できる人や建物の老いに従った問題進行パターンが存在することが明らかとなり,わが国のほとんどの都市がその進行パターン上にあることが示された.

  • 白柳 洋俊, 倉内 慎也, 坪田 隆宏
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_369-I_376
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    選好を判断する際に,その判断よりも時間的に先行して選好する対象へ無意図的に視線の偏りが生じ,こうした無意図的な視線の偏りが対象の選好を上昇させることが指摘されている.そこで本研究では,店舗ファサード画像を対象に,選好判断よりも時間的に先行して選好する店舗ファサードに無意図的に視線が偏る,ならびに無意図的な視線の偏りが店舗ファサード画像の選好に影響を与えるとの仮説を措定し,同仮説を二者択一強制選好判断課題に基づき検証した.実験の結果,選好判断よりも時間的に先行して好ましいと判断した店舗ファサード画像に対して無意図的に視線が偏ること,ならびに無意図的な視線の偏りにより選好判断の確信度が高まること,すなわち仮説を支持する結果が得られた.

  • 細江 美欧, 桑野 将司, 森山 卓
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_377-I_384
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    経路検索システムの検索履歴には,検索者の移動需要が含まれると考えられている.しかし,検索者の属性や移動目的の情報は記録されていないことから,どのような人のどのような移動目的による移動需要であるかは定量的に明らかにされていない.本研究では検索履歴に現れる移動需要と駅周辺環境の関連性から検索者像を推測した.具体的には,香川県で運行される鉄道路線「ことでん」を分析対象として,移動需要と駅周辺環境の関連性を表現するモデルをBayesian Adaptive Lasso Tobit分位点回帰モデルを用いて構築し,得られた推定結果から検索者の人物像と移動目的を推測した.その結果,検索履歴に現れる移動需要は,通院や不定期の買い物を移動目的とした住民および観光を移動目的とた来訪者による非定常的な移動需要と関連があることを明らかにした.

  • 吉城 秀治, 辰巳 浩, 堤 香代子, 坂井 康介, 永田 香織
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_385-I_396
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    様々な子育てに関わる施設の充実は,子育てしやすいまちづくりを実現する上でも重要なことである一方,人口減少社会にある我が国では,その維持が困難になりつつある.施設の維持においては様々な要因が関わってくるものである一方,人口規模は一つの重要な要因と考えられ,子育てに関わる施設がどの程度の人口規模で成り立ち得るかといった情報は,各自治体が少子化対策を念頭に置いた将来の都市像を描く上で重要な情報になるものと考えられる.そこで本研究では,全国における各自治体の人口規模と施設の立地状況を調査し,施設の違いによって,その施設が成立する人口規模が異なってくること,将来における廃業・撤退のリスクの高まりは施設によって大きく異なってくること等を明らかにしている.

  • 二井 昭佳, 岡田 一天
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_397-I_407
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    本稿は,まちづくり治水計画の実装化に向けた知見を得ることを目指し,川沿いの街路や建物群と一体的に洪水防御をおこなうことで治水と風景を両立した魅力的な空間を生み出しているヴュルツブルクの治水整備を対象に,関係者へのヒアリングや現地調査,文献調査により,1945 年から現在に至る治水整備の内容を明らかにし,その特徴について考察したものである.その結果,洪水防御と魅力的なかわまち空間創出の両立の大きな実現要因として,1) 後背地の特性を活かした堤防法線,2) 川とまちをつなぐ可搬式・可動式堤防,3) 水辺の賑わいを創出する建物連担型の堤防壁,4) 風景の質を高める堤防デザイン,5) 治水整備と連動した都市空間の再編,6) 河川管理者と基礎自治体の連携・協働体制の 6 点を指摘した.

  • 香川 恵, 白柳 洋俊, 倉内 慎也, 吉井 稔雄
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_409-I_416
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    洪水時における住民の迅速な避難行動を実現するため,河川災害に対する心構えを涵養する水防災意識社会の構築が求められている.防災意識の涵養には自然資本に対して愛着意識を有することが前提となり,愛着意識は当該資本と関わりを持った記憶によって醸成される.その記憶は,災害への恐怖によって想起が抑制されるものの,視認を確保する視覚的繋がりの担保により当該の抑制が軽減される.そこで,河川災害への恐怖を有した住民において河川に対する視覚的繋がりが河川の記憶の想起に及ぼす影響及び同想起が河川愛着に及ぼす影響を検証した.検証の結果,水害に恐怖を抱いている住民は,河川への視覚的繋がりが増すほど河川に関する記憶の想起量が多くなり,また河川の記憶想起量が多いほど河川愛着が高まる,すなわち仮説を支持する結果が得られた.

  • 寺口 敬秀, 桜井 慎一, 斉藤 征大
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_417-I_423
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    現在の避難計画は各市町村が作成し,住民は自身が居住する市町村の避難所を利用することが前提だが,想定外の豪雨による水害発生時,河川と市町村境に挟まれた地域では,氾濫しそうな河川を横断しなければ自身の市町村の避難所に行けない避難困難地区も存在する.本研究は,西日本豪雨の被災地を対象に地図分析から避難困難地区の抽出を行い,中国地方および兵庫県の26市町33地区が該当することを明らかにした.このうち11地区は隣接する市町村の避難所が利用できれば河川を横断しなくとも避難が可能となる地区であったが,自治体へのアンケート調査では,実際に越境避難を促しているのは僅か3地区に留まったほか,避難困難地区と認知していながら特に対策を講じていない場所も複数存在した.

  • 阪田 知彦, 鈴木 温, 杉木 直, 正木 俊行, 田 寛之
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_425-I_435
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    本研究は,世帯マイクロシミュレーションに基づいた将来都市構造の予測技術の開発のうち,初期世帯マイクロデータ生成に関する実用化の一環として,水流ら(2019)の方法をベースとしつつ,誤差修正の計算時間を大幅に短縮するためのアルゴリズムを改良・追加し,かつ既存研究よりもさらに精度の高い推計が可能な初期世帯マイクロデータの推計方法を提案することを目的としている.また,この初期世帯マイクロデータ生成のための計算アルゴリズムの有効性を検証するため,富山県富山市を対象として,今回提案する計算アルゴリズムを実装し,オープンデータを用いたケーススタディを実施した.その結果,計算時間が大幅に減少できることを確認した.

  • 川嶋 優旗, 中尾 聡史, 谷口 綾子, 南手 健太郎
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_437-I_449
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    近年,自動運転システム(以下,AVs)の実用化に向けた課題の一つとして,社会的受容性の醸成が挙げられている.本研究では,新しい交通システムである AVs の社会的受容を模索するアプローチの一つとして,過去に新しい交通モードとして自動車が登場した際の受け入れプロセスを把握することを試みた.具体的には,高度経済成長期に NHK で放映された TV 番組を「交通事故」に着目して閲覧し,その内容について考察するとともに,法制度の変遷を辿ることで,当時の人々の自動車に対する態度を明らかにした.分析の結果,当時増え続ける交通違反への対応が社会的ジレンマの様相を帯びていたこと,ならびに日本人の交通法規軽視の傾向は当時の行政対応に端を発していた可能性が示された.

  • 石川 拓武, 奥村 誠
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_451-I_460
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    日本では,東京一極集中やそれに伴う地方都市の衰退が長年指摘され,新幹線整備にもその解決が期待されてきた.本研究では新幹線の整備を地方都市の活性化に結びつける上では,過去の影響を実証的に検討するよりも,むしろ演繹的に影響を理解することが重要であると考え,北陸新幹線の金沢開業,大阪開業が代表的な企業の業務構造にもたらす影響を企業の特性ごとに分析する.既存の最適企業組織配置モデルを用いた最適支社配置の計算結果から,企業の特性によって全国的な支社配置は大きく異なること,支社の業務集約能力が中間的な値をとる場合には,北陸地方により高い階層の支社が配置されること,今後のリニア中央新幹線の名古屋開業による交通コスト低下が全国的な支社階層の低下をもたらし,北陸地方にもその影響が及ぶことが明らかになった.

  • 髙木 朗義, 石川 良文, 安田 翔
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_461-I_471
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    近年,わが国では地域外への流出マネーを地域内で循環させることを目的に,地域通貨の導入が増えている.本研究では,岐阜県飛騨地域で運用中の地域通貨『さるぼぼコイン』を対象に,高山市にもたらす経済効果を,石川らが開発した所得消費の帰着構造を考慮した地域間産業連関モデルを用いて評価した.その結果,現状流通している地域通貨の200(百万円)相当に対して,高山市の域内生産額は313(百万円)の増加,うち所得は108(百万円)の増加となり,地域通貨の流通量の1.6倍の経済効果と試算された.また,全64部門の域内消費係数が現状の90%から95%へ上昇した場合,域内生産額は27,600(百万円)の増加,うち所得は10,201(百万円)の増加となり,現在の域内生産額の4.4%に相当する経済効果と試算された.

  • 藤原 昇汰, 鈴木 春菜
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_473-I_483
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    本研究では住民の「主観的な地域の活力(SRV)」の性質と効果について地域イメージ理論を用いて検討した.具体的には住民が地域に対して持つ地域イメージがSRVに,SRVが住民に影響を与える因果関係を想定した.まず新聞のテキスト分析により地域イメージ尺度候補項目を作成し,それらの項目と地域愛着等の尺度についてアンケート調査を行った.地域イメージ尺度候補項目に関しての因子分析では5つの因子が抽出された.SRVの性質の検討としてパス解析を行った結果「ソーシャルキャピタルイメージ」「地域アイデンティティ」「地域人口特性」の3つの因子がSRVに影響を与える可能性が示された.効果の検討として回帰分析行った結果,SRVが地域意識や住民の活力に影響を与える可能性が示された.

  • 鈴木 雄, 日野 智, 前田 優也
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_485-I_494
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    本研究では,免許返納に対するイメージについて運転免許の返納者と保有者を対象に比較を行った.その結果,保有者の方が悪いイメージを多く抱いていることが明らかとなった.免許返納後の生活は,返納前のイメージほど悪くない可能性が示された.このことから,一度免許返納後の生活を体験させることも免許返納の促進に有効と考えられる.免許保有者の免許返納意識に関する構造モデルを構築したところ,免許を返納することの正義感に対する良いイメージや,免許を返納することは自分が否定されているから嫌だと感じる悪いイメージが,免許返納意識に影響している結果となった.運転能力の低下や老いを否定するのではなく,免許返納後の生活や,良いイメージを見つけていくことが運転免許の自主返納につながることが考えられる.

  • 石橋 知也, 田中 成龍
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_495-I_505
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    長崎市の斜面市街地は都市基盤の整備の遅れや人口減少など多くの問題が指摘されている.一方,斜面地特有の夜景は長崎の景観資源として位置づけられるなど,今後の長崎市において斜面への対応は重要な課題であろう.そこで本研究では,これまでに策定されてきた一次から四次までの総合計画に着目し,長崎市の斜面に対する捉え方の変遷を整理することを通じて,地形的特徴が総合計画の記述に与えた影響について考察することを目的とする.具体的には,各計画内の斜面に関する記述を全て抽出したうえで,記述の定量的な分析ならびに年代ごとの記述内容の変遷について分析を行った.その結果,長崎市の斜面の記述を構造化でき,斜面の捉え方の変遷から長崎市の総合計画を3つの時期に分けることができた.

  • 小池 淳司, 高村 望, 山崎 雅人, 織田澤 利守
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_507-I_514
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    道路整備等の事業を評価する上で重要な指標が,事業による時間短縮の価値である.これまでの推計手法は時間短縮に伴い生じる資源節約等の経済現象の一部を捉えたものであった.本研究の問題意識は,道路整備等による貨物輸送の時間短縮の価値は,その道路整備等が経済状況に与えた影響を考慮し決められるべきであるという点と,経済状況が大規模災害により変化した場合には時間短縮の価値も変わるという点である.そこで本研究では道路整備が経済状況に与える影響を評価するため空間応用一般均衡モデルを利用し,貨物輸送の時間短縮価値を推計する手法を提案する.またモデル上で東日本大震災の経済状況を再現するようパラメータおよび外生変数の設定を行い,災害時の貨物輸送の時間短縮の価値を推計した.

  • 落合 正行, 岡田 智秀, 小林 侑輝
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_515-I_522
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    本研究は,わが国の港湾において地域活性化に資する港湾空間の再編成が求められる中,港の既存ストックである上屋や倉庫を有効活用した「倉庫リノベーション」による再編成手法の構築を目的としている.そこで,本稿では港湾空間における倉庫活用の全国的な傾向とその整備実態を把握するため,港を核とした地域活性化策であり既設の港湾施設等を活用する「みなとオアシス」に着目し,登録港湾106港を対象に資料調査および国土交通省への聞き取り調査を行った.その結果より,港湾の重要度を示す「港格」ごとに「みなとオアシス」の登録傾向と倉庫活用の実態を明らかにするとともに,中でも遊休倉庫の利活用が顕著にみられた大分港の遊休倉庫の活用実態を論考することで,「倉庫リノベーション」の整備プロセスとその留意点を明らかにするものである.

  • 西脇 千瀬, 奥村 誠
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_523-I_529
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    わが国の津波対策は,昭和35(1960)年チリ地震津波を受け構造物を主体とするものに変化したとされ,海岸保全施設の考え方が培われたことや築造のための経済力の蓄積などが理由とされている.しかし,当時の専門家には,高地移転や防災体制の重要性を指摘する者もあり,構造物による対策のみを重視していたわけではない.本研究では,宮城県を中心とする当時の専門家による報告や新聞記事等を調査し,宮城県では専門家を交えた津波対策の研究会を設置しながら,その意見が対策方針の策定に反映される余地がなかったことを明らかにした.その背景には,後進地域であった東北地方による,開発の促進の選択があったことがわかった.

  • 樋口 伊吹, 岡田 智秀, 田島 洋輔, 三溝 裕之, 横内 憲久
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_531-I_543
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    わが国のウォーターフロント開発は,1985年の長期港湾整備政策「21世紀への港湾」を契機に港湾空間に一般市民を呼び込むための港湾再開発として推進された.そして,その実現性を探るべくポートルネッサンス21やマリンタウンプロジェクト等の主要調査が全国展開され,その調査結果を踏まえて各地で開発事業が実現されたが,これら主要調査に関する当初計画の実現状況を分析した先行研究は極めて少ない.そこで本研究では,今後の望ましいウォーターフロント開発の留意点を導くため,2つの主要調査を対象に,当初計画と実現状況を比較・分析した.その結果,港格や都市規模が異なる2つの事業で同一項目・同一規模の施設が計画されたこと,マリンタウンプロジェクトではポートルネッサンス21と比して基盤施設が優先的に整備されたことなどを捉えた.

  • 松田 泰明, 笠間 聡, 田宮 敬士
    2021 年 76 巻 5 号 p. I_545-I_555
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

    魅力的な景観は重要な観光資源となる.なかでも道路利用中に体験する景観は,地域の印象に大きく影響する.このため,欧米を中心に観光資源としての道路景観を活かした施策も多い.しかし,日本では道路空間での景観配慮の不十分さから,魅力ある地域景観が十分に生かされていない.この原因の一つに行政計画に道路景観の重要性が考慮されていないことが考えられる.本研究では,景観法に基づく景観計画への景観重要道路の指定状況の全国調査および北海道の自治体へのアンケート調査から,観光資源としての道路景観の活用に関する課題について考察した.その結果,ルーラルエリアの沿道に魅力ある景観を有しながら,道路空間の景観配慮が十分位置づけられていないことや,景観重要道路の指定の有効性が十分理解されていないなどの課題を明らかにした.

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