土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
77 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
和文論文
  • 牧野 浩志, 伊藤 哲朗, 藤井 健, 大口 敬
    2021 年 77 巻 3 号 p. 174-183
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/20
    ジャーナル フリー

     オリンピック・パラリンピックや国際博覧会などの大規模イベント時には,観客の集中による群集事故や,地震・テロ等の突発事象の発生時の避難誘導など人の誘導が大切となる.日本では,歩行者空間の通行方向の案内が場所によって左右で異なっており,歩行者を適切に誘導する上での課題がある.世界的には,歩行者の通行方法は,自動車の通行方法と同じであり,施設の設計もそれに基づいて行われるため,スムーズな通行や避難誘導が可能となっている.本稿では,文献調査と道路交通法制の変遷を踏まえ,日本では歩行者の通行方法が一部しか定まっていないことを明らかにする.その上で,群集の特性に応じ,左側通行を基本とした,平時の歩行者の安全確保とイベント時の適切な誘導に対応した歩行者空間づくりのポイントについて整理を行った.

  • 河瀬 理貴, 井料 隆雅, 浦田 淳司
    2021 年 77 巻 3 号 p. 184-200
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/20
    ジャーナル フリー

     災害の影響を緩和する上で救援物資輸送は重要な課題である.救援物資の迅速かつ的確な輸送のために,我が国ではプッシュ型とプル型の二種類の戦略を計画している.しかし過去の災害では,ラストワンマイル輸送や被災地からの情報伝達でボトルネックが発生し,これらの戦略は期待通り機能しなかった.この経験に基づき,被災地に直接輸送する体制やICTに依存しない情報伝達体制が提案されている.本研究では,提案されたプッシュ型とプル型の戦略を定量的に評価するために,直接輸送が可能な輸送ネットワークや継続的な通信が不可能な情報ネットワークにおける在庫輸送戦略を分析する.その結果,直接輸送が最適であることを証明し,情報伝達が断続的な場合にプル型がプッシュ型よりも性能が低下する可能性とそれを回避する方策を示した.

  • 宮崎 一貴, 溝上 章志
    2021 年 77 巻 3 号 p. 207-218
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/20
    ジャーナル フリー

     地方都市の公共交通機関にもスマートカードが導入され始めている.スマートカードは決済時の利便性向上に供するだけでなく,カードIDごとに乗車日時や乗降時刻,停留所などの利用履歴情報を大量に記録している.この情報を用いて,利用需要と各種要因との因果関係を集計的に分析した例はあるが,個々の利用者の時系列の選好特性の分析を行った例はない.本研究では,効用関数のパラメータを状態変数,乗車の有無を観測変数とした状態空間モデルを構築し,熊本市電のスマートカードデータを用いて状態変数を推定することによって市電利用者個人の時間的な選好特性の分析を行った.さらに得られた状態推定値を用いて利用者をクラスタリングし,個々人にとって最適な利用促進策を提案する公共交通マイクロマーケッティングの可能性について検討した.

  • 平井 紗夜子, 氏原 岳人
    2021 年 77 巻 3 号 p. 219-229
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,Jリーグファジアーノ岡山の試合観戦者を対象として,ブランディングを用いたMMの効果検証を行った.2019年のアンケート調査によると,79%のサポーターがプロジェクトを知っており,さらにそのうちの92%がプロジェクト名である「ファジウォーカー」を認知していた.また,11%の自家用車利用者が本プロジェクトによって交通手段の転換を行った.転換には「責任感のある」「魅力的な」といったプロジェクトへのポジティブなイメージが関連していることが明らかになった.イメージにはプロジェクト名やデザインを活用した施策の認知が関連しており,特にデザインと言葉によるアプローチを行ったJR・バス広告の寄与が大きいことが示された.

  • 須永 大介, 青野 貞康, 高砂子 浩司, 原田 昇
    2021 年 77 巻 3 号 p. 230-244
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル フリー

     本論文は,既往研究に基づきコミュニティバス等の計画策定・運営管理に3つの視点が必要であることを示し,コミュニティバス等導入手引書策定自治体は3つの視点を重視していることを明らかにした.次に担当者アンケートより,手引書には計画策定・運営管理時の地域市民の直接的な参加,運行継続基準の事前提示,需要規模に合った複数の選択肢を含める必要があることが明らかにした.さらに,先進的取組であるさいたま市の手引書に関して,市の公共交通ネットワークの概念に沿った新規導入/既存改編が実現されたこと,地域市民の直接的な参加により,新しい乗合タクシーが多くの低需要地域に導入され,既存改編で収入/支出が改善されたこと,運行見直し基準に関する事前合意の下,サービスの継続的改善が図られたことなど,有用性を明らかにした.

  • 中山 晶一朗, 小林 俊一, 山口 裕通
    2021 年 77 巻 3 号 p. 245-259
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル フリー

     道路ネットワークの連結性を評価するためには様々な要因を考慮する必要があるものの,最も基本的な連結性評価は道路どうしのつながりの定量化であろう.本研究では,道路リンクどうしのつながりを定量化するために,まず,道路ネットワーク内の各ノードへ物資を均等に輸送するという均等輸送問題を定義し,この問題を基礎として道路ネットワークの連結性指標を導出する.そして,道路ネットワーク内の連結性の弱い部分を抽出する方法を提案する.さらに,道路ネットワーク内の連結性の弱い部分を補強する最適補強問題を定式化し,その問題には凸性があり,解の取り扱いが容易であるとともに,線形計画問題を拡張した半正定値計画問題として定式化可能であることなどを明らかにする.最後に,いくつかの例題を通して提案手法の有効性を示す.

  • 三和 雅史, 西島 悠太, 矢坂 健太, 松本 麻美, 山田 文昭, 大山 達雄
    2021 年 77 巻 3 号 p. 260-279
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル フリー

     鉄道線路(軌道)の保守に使用される保守用車は高価であるため,複数の保線区で共用し,広範囲に用いられている.特に,バラスト(砕石等)で構成された有道床軌道(バラスト軌道)では,列車の繰り返し通過や経年によりバラストが劣化し,適切な軌道形状を維持できなると,道床交換が行われる.この作業には道床交換機,道床安定作業車といった保守用車が用いられるが,その運用計画の作成に多くの手間と時間を要し,また作成した計画の妥当性が不明確であるという問題があった.そこで,これらの保守用車を効率的に運用して道床交換を行うための計画モデルを構築し,実線区データを用いた試算により妥当性を検証した.その結果,従来の計画に比べて保守用車の移動距離を減らせる計画を短時間で作成できる等,保守の効率化に有効であることを確認した.

  • 馮 文浩, 谷本 圭志, 丹呉 允
    2021 年 77 巻 3 号 p. 280-290
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル フリー

     中山間地域では,路線バスからタクシーへの転換を模索する自治体が増えている.しかし,多くのタクシー事業者では運転手が減少する傾向にある.このため,所定の顧客に対して継続的にサービスが提供できるか,すなわち,供給能力が大きな懸念となる.加えて,供給能力がどれほどかを明示的に知る術がないことから,タクシーへの転換に躊躇する場合が生じうる.そこで本研究では,中山間地域の特性を踏まえてタクシー事業の供給能力を評価するための分析手法を混合整数計画法に基づいて構築する.その上で,実際のタクシーの運行履歴データを用いて,事業の供給能力の導出を試みる.

和文ノート
  • 後藤 浩
    2021 年 77 巻 3 号 p. 201-206
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,総合設計制度を利用した建築物周辺に設置される公開空地の平面形状について考察を行った.公開空地は,都市域では,日常的には公園利用という人々の憩いの場として役立ち,災害などの非常時には,一時的な避難者の滞留先として役立つと考えられ,その平面形状は複雑ではなく利用しやすいように設計されることが重要と考える.本研究では,全域がほぼ都市化された東京都23区内において,総合設計制度物件を複数抽出し,その平面形状についてフラクタル次元の概念を用いて特徴を示した.さらに,その結果を踏まえ,都市空間内での公開空地等の空地の平面形状について一考察を行った.

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