土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
80 巻, 13 号
特集号(地震工学)
選択された号の論文の54件中1~50を表示しています
特集号(地震工学)論文
  • 友田 諒也, 安田 誠宏, 幸左 賢二, 田中 晴規
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13092
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     南海トラフ沿岸道路における橋梁の効率的な津波対策には,上部構造の流出リスク評価が必要である.本研究では,ランダムフェーズ津波モデルとcoRaL法を組み合わせた確率論的ハザード評価手法を用いて,津波ハザード予測における不確定性を考慮した橋梁上部構造の流出リスクの確率評価を行う.南海トラフ巨大地震津波に対する和歌山県沿岸道路の橋梁の安全性照査の結果,三連動地震モデルの場合と比べて,作用力・耐力比について16橋で流出リスクが高まることがわかった.確率論的津波ハザード評価手法を用いて,橋梁上部構造の流出リスクを再現期間によって定量的に評価することができた.また,対策工としての支承アンカーや変位制限構造による効果は,限界津波高および再現期間の増加により表現することができた.

  • 有賀 義明, 市山 誠, 渡辺 高志, 西本 安志
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13093
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     沿岸域の構造物の防災・減災に役立てるため,緩衝材を活用した地震・津波対策技術について研究した.ここでは,津波対策に着目し,緩衝材による波圧の低減効果が構造物に発生する応力にどのような影響を及ぼすかについて検討した.波圧の低減効果は模型実験により検討し,応力の低減効果は三次元FEM解析により検討した.模型実験では,構造物表面に緩衝材を配置することによって,波圧の鉛直分布形状を変化させることが可能なことを示す結果を得ることができた.そこで,三次元FEM解析を行い構造物に発生する応力を評価した.その結果,構造物内に発生する応力は波圧の大きさと鉛直分布形状の設定によって大きく変化することを確認することができた.構造物の安全性を適切に評価するためには波圧の大きさと共に分布形状を正確に設定することが必要である.

  • 木佐貫 康貴, 劉 ウェン , 丸山 喜久, 猪股 渉
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13096
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     兵庫県南部地震によるガス導管の被害の多くは,ねじ継手鋼管の継手部の破断が原因であった.一方,耐震管であるポリエチレン(PE)管の被害は見られなかった.このため,兵庫県南部地震以降,PE管の敷設割合が高まっている.このような背景から,低圧ガス導管網は鋼管やPE管などの複数の管種から構成されるネットワークとなるため,地震被害を詳細に分析するには耐震管であるPE管の敷設状況を考慮する必要がある.そこで本研究では,様々なPE管の敷設割合(PE管率)の1次元配管系の数値モデルを構築し,PE管率とねじ継手鋼管の破断状況の関係性を評価した.その後,既往地震における被災地域の管路の敷設状況を踏まえた管路数値モデルを作成し,実際のSI値に基づく地盤変位を用いて本検討の妥当性を議論した.

  • 清水 智, 山崎 雅人, 井出 修, 劉 歓 , 梶谷 義雄, 多々納 裕一
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13097
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     本研究では2022年福島県沖の地震における企業の被災実態に関するアンケート調査結果を利用し,地震対策の実施が操業能力の復旧過程に与えた影響を検討した.具体的には,調査データを対策有群と対策無群の2群に分類し,傾向スコアマッチングを利用して共変量を調整したデータセットを作成した.この2群のデータセットからセミ・マルコフ過程を利用してリカバリーカーブを作成し,その復旧速度の違いから対策の実施効果について検討した.その結果,災害対応マニュアル・BCP策定や非常用電源・燃料の確保といった早期復旧を主目的とした対策で,完全復旧までの復旧日数の期待値が1~47%減少するとの結果が得られた.本結果は,地震対策の実施が復旧過程に及ぼす影響を定量的に示しており,効果的な地震リスクマネジメントへの適用が期待される.

  • 保田 真理, 原田 賢治, 邑本 俊亮
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13099
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     防災教育の効果検証は介入直後の効果のみならず,その持続性にまで踏み込んだ検討が必要である.専門家が学校に出向いて実施する防災出前授業では,子どもたちの防災意識が一時的には上昇するものの,必ずしも持続しないことが明らかとなっている.そこで本研究では,科学館での親子を対象とするワークショップを実践し,参加者の防災意識が持続するのかどうかを検証した.その結果,ワークショップによって上昇した参加者の防災意識は1か月後も持続していることが明らかとなった.学習者の防災意識の持続性に関与する要因として,科学館という学校とは異なる学習環境の存在と,家族と一緒に学習することの重要性が示唆された.

  • 荻野 律, 劉 ウェン , 丸山 喜久
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13100
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     本研究では,地震による木造建物の被害状況を効率的かつ迅速に把握する手法として,建物に取り付けた加速度センサから得られる応答加速度の時刻歴波形を機械学習することによって,損傷状況を判別する被害判別モデルの構築を試みた.まず,実地震における地表面の加速度データを用いて木造建物モデルの地震応答解析を多数実行し,それから得られる応答加速度の時刻歴波形と応答塑性率を機械学習の学習用データとした.その後,機械学習のアルゴリズムのうちLong Short-term Memory(LSTM)ネットワークと,一次元畳み込みニューラルネットワーク(1D CNN)を適用し,建物の損傷状態を推定する被害判別モデルを構築した.

  • 高橋 佑介, 奥村 与志弘
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13101
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     あらかじめ決めていた情報を受け取って避難を開始する「論理判断型住民」は,地域に醸成される切迫感を感じ取って避難を開始する「直感判断型住民」に対して大きな影響を与えていると考えられる.本研究では,行動開始の判断に論理性がある住民を「論理判断型住民」として,従来の定義を拡張した上で,直感判断型住民との関係性について検討した.東日本大震の証言記録532件を分析した結果,(1)全体としては,論理判断型と直感判断型の住民の比が2対8であこと,(2)災害経験の有無や防災教育によって増減する潜在的な論理判断型住民の割合と,災害時に彼らの判断条件がどの程度満たされるのかによって,その比に若干の地域差が生じること,(3)高台避難か建物避難かという点に関しては両者に差がないことが分かった.

  • 有賀 義明, 鈴木 隼人, 坂下 克之, 市山 誠, 渡辺 高志, 西本 安志, 佐藤 優乃
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13102
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     沿岸域の構造物では,強震動と津波の双方に対して有効な対策技術の実現が求められている.津波に対する構造物の安全性を評価する際には,解析条件として津波荷重の設定が重要になる.ここでは,これまでに実施してきたSPH法による津波衝突解析,緩衝材を用いた波圧低減に関する模型実験等の研究結果を踏まえ,津波による構造物の変位・応力を評価する際に,波圧の設定が評価結果にどのような影響を及ぼすかについて,三次元FEM解析により検討した.その結果,構造物に発生する変位,応力は,波圧の大きさによって大きく変化すると共に,波圧の鉛直分布形状の設定によって大きな影響を受けることを確認することができた.構造物の安全性を適確に評価するためには,構造物に作用させる波圧の大きさと分布形状を正確に設定することが必要である.

  • 西 愛歩, 木原 直人, 木村 達人, 藤井 直樹, 庄司 学
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13103
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     本研究では津波フラジリティ評価の入力となる津波シナリオ作成手法を提案し,検証する.プラントの事故シナリオを把握するためには,多様な浸水シナリオを網羅する必要があるが,1つの原子力サイトでの想定津波波源数は数百~数千にも及び,全てに対する敷地応答評価の実施は困難である.本提案手法では,原子力サイトでの平均ハザード曲線に対する寄与度から,サイトに対し有意な値を持つ波源を抽出し,抽出波源を増幅させ敷地内浸水解析を実施することで,津波シナリオを作成する.さらに抽出波源の特徴量をもとに類似波源群をグループ化することでグループの代表津波シナリオを選定する.類似波源群の特徴量および敷地内浸水解析結果のばらつきを統計的に考察することにより,手法の妥当性を検証し,津波波源と浸水特性との関係を考察する.

  • 杉山 佑樹, 佐藤 忠信, 坂井 公俊, 室野 剛隆
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13104
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     地震観測記録がある震源・伝播経路・サイト特性を有する地震動群の中の1サンプル過程であると考え,その不確定性を確率過程としてモデル化し,加速度時刻歴を算定する手法を検討する.まず,ウェーブレット変換により得られる各成分の時刻歴を対象として,そのフーリエ変換実数部を対象にして非定常性の影響を除いた「標準化実数部」が定常過程であることを確認するとともに,自己回帰過程として模擬する.模擬した標準化実数部から算定した実数部をHilbert変換することで虚数部を算定し,フーリエ逆変換により加速度時刻歴を算定する.最後に,算定した加速度時刻歴が元の観測加速度時刻歴を適切に表現できることを確認する.

  • 大塚 悠一, 溜 幸生, 藤田 航平, 市村 強
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13107
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     液状化のハザードマップ作成における地盤の液状化の予測の高度化として,3次元FEMによる地震応答解析の活用が期待されるが,解析モデルの作成コストと計算コストが高いことが課題である.これらの課題を解決するために,著者らは過剰間隙水圧の上昇を考慮した土の構成則を組み込んだ大規模非線形有限要素法プログラムT-STRIKEを開発した.開発したプログラムによる液状化のハザードマップの妥当性を検証するために,スーパーコンピュータ「富岳」を用いて実地盤を対象とした液状化を考慮した地震応答解析を実施し,実務で実績のある他のプログラムによる解析結果の比較を行い,一定の整合性があることを確認した.また1次元水平成層地盤モデルでは考慮できない地盤の3次元構造を反映した応答を確認し,本手法の有用性を示した.

  • 栗田 哲史
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13108
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     地震動予測モデルは,地震規模や震源距離などをパラメータとして,地震動強さを評価するものである.本研究では,ノンパラメトリック手法の一つであるガウス過程回帰を用いて,地表最大加速度の予測モデルを構築した.解析例として,K-NETとKiK-netで観測された2016年熊本地震群のデータセットを適用した.その結果,震源近傍においてガウス過程回帰モデルによる推定値は観測値に対して過小評価となることが分かった.この原因は,遠地と近地とで観測値の密度が異なるためと考えられる.そこで,本論では震源近傍における地震動特性を反映しやすくするカーネル関数を提案した.提案手法を用いることにより,近地から遠地までの全域で地震動強さの分布を再現できる地震動予測モデルの構築が可能となった.

  • 久世 益充, 能島 暢呂, 加藤 有人
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13109
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     地震動の特徴抽出と波形類似性評価を目的に,地震動の工学的特性(振幅・周期・経時特性)を表現可能な地震動特徴量について検討した.筆者らが提案した周期別特徴ベクトルを用いて算出した,時間-周期上の振幅特性分布である密度分布を算出し,波形の特徴について比較した.次に,周期別特徴ベクトルより算出した密度分布に特異値分解に基づくモード分解手法を適用し,より次元縮約された地震動特徴量を提案した.2011年東北地方太平洋沖地震の観測波形に適用した結果,モード9程度で波形の特徴を捉えることが可能であることを確認できた.さらに,モード分解より得られる特徴量を用いて非類似度を算出し,波形類似性を評価可能であることを示した.

  • 小林 巧, 河村 太紀, 石井 洋輔, 大住 道生
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13111
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     道路橋示方書の耐震設計では,レベル2地震動を考慮する設計状況において,橋の非線形応答が大きくなる位相特性を持つ加速度波形を複数選択し,少なくとも3波形入力することで,地震動が持つ様々な位相特性の影響を考慮している.しかし,あらゆる構造に対して3波形程度を入力することで,位相特性が構造に及ぼす影響を考慮できるとみなしてよいかは必ずしも明確となっていない.本研究では3種類の1橋脚モデルを例に,その適切な入力地震動数について検討した.その結果,本研究で対象とした3種類の1橋脚モデルでは,少なくとも3波形入力し,その応答値の平均値を求めることで,20波程度の多数の波を入力した場合と同等の信頼性の応答値が得られることを統計的に確認した.

  • 石井 洋輔, 上仙 靖, 庄司 学
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13112
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     道路橋は,交通振動や風および地盤の常時微動のような定常的な作用や,地震のような非定常的な作用に起因して動的な振動が生成される.その中でも,定常的な作用は地震時でも道路橋に作用しており,振動特性を詳細に分析するためには,定常的な作用の影響を明らかにする必要がある.本研究では,強震モニタリングシステムで観測した1か月間以上の連続加速度記録を用いて,振動特性の時系列の変化を算出するとともに,道路橋の動的な振動に影響があると考えられる外的要因との関係性を分析した.外的要因として,交通量,温度,風などに着目し,各観測点の振動特性の時系列の変化との相関を求めた.さらに,振動特性の時系列の変化より,道路橋の地震時と地震時以外の振動特性の違いを示した.

  • 土井 達也, 月岡 桂吾, 井澤 淳
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13113
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     著者らは橋脚を対象に,く体や杭断面の合理化のために,杭と土のうを併用した基礎を提案している.これまで新設構造物に対して,杭基礎に対する優位性を実験的,解析的に検証してきた.本検討では,杭と土のうを併用した既設構造物の基礎補強工法として,増し杭と土のうと増しフーチングを併用する手法を提案し,補強前構造物,通常の増し杭補強とともに試算した.その結果,補強後の基礎幅8m程度,橋脚高さ10m~15m程度,上部工荷重6730kNの条件では,杭と土のうを併用した基礎補強では通常の増し杭補強に比べて,慣性力作用を過度に増加させずにフーチングの回転角を抑制できることがわかった.本工法は既設の木杭基礎や直接基礎など,補強前の状態でく体の慣性力負担が小さい基礎の補強法として活用できる可能性がある.

  • 山口 和英, 高田 祐希, 永井 秀樹, 堀見 慎吾
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13114
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     原子力発電所の耐震設計上重要な施設に適用される地震動は増大する趨勢であり,密な地盤であっても液状化が生じる可能性が懸念されている.また近年採用が増えているRC円形立坑については,液状化による損傷評価手法が確立されていない.本論文では密な砂地盤中に構築されたRC円形立坑を対象として密な砂地盤の液状化による損傷評価手法を確立するため,遠心30G場で加振実験を行い,RC円形立坑の損傷や作用荷重等を把握するとともに損傷評価手法の妥当性検証用の実験データを取得した.次に2次元有効応力解析による構造物・地盤の応答評価と,3次元静的非線形解析による構造物の損傷評価とを組み合わせた2段階の損傷評価手法を提案するとともに実験の再現解析を行い,提案手法でRC円形立坑の地震時損傷を概ね再現できることを確認した.

  • 田中 仁規, 坂井 公俊
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13119
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     杭基礎構造物の地震応答値を応答変位法によって算出する際の慣性力と地盤変位の組合せ係数の高精度推定に向けた検討を行った.具体的には,多様な地盤・構造物を対象とした線形動的解析を網羅的に実施するとともに,両者の周期比に対する組合せ係数を算出した.その結果,地盤の固有周期Tgが長くなると,補正係数が徐々に低下することを確認した.この傾向を考慮した組合せ係数の簡易推定式を提案するとともに,従来法と比較してより適切に動的解析の結果を表現できることを確認した.提案手法を用いることで作用の組合せ係数の高精度化,構造物の地震応答値の合理化が可能となる.

  • 坂井 公俊, 伊藤 公二, 高橋 良和
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13120
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     地盤のサイト非線形性が杭基礎橋脚の地震時挙動に与える影響を把握するため,過去に実施された地盤-杭基礎RC橋脚の振動台実験を対象とした再現解析とサイト非線形性の考慮に伴う構造物挙動の変化を確認した.その結果,自由地盤を模擬した地盤-構造物の動的実験を実施する場合,対象とした実験に対してより地盤の寄与が大きくなるような条件とする必要があることを確認した.またこれを基本として地盤の条件を変化させた解析的な検討を実施した結果,杭の特性値までの地盤の強度が低く,地震時の非線形挙動の影響が顕著な場合には,サイト非線形性が構造物挙動に多少の影響を与えるが,耐震設計における性能という観点ではその影響程度は限定的であることを確認した.

  • 芹川 由布子, 青木 宏樹, 谷口 かれん, 中村 文哉, 宮島 昌克
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13121
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     熊本地震および北海道胆振東部地震の際には,家屋の倒壊や液状化現象など甚大な被害が生じた.液状化被害は広い範囲で発生し,道路の変状,家屋の傾斜被害が深刻な問題となった.家屋が傾斜していることで住人に健康障害が生じ,住宅としての使用性や機能性の損失に繋がった.

     本研究では,液状化被害が報告された札幌市清田区を対象とし,家屋傾斜量の計測および健康状態に関するアンケート等の現地調査を実施した.傾斜した家屋に住み続けていることで,めまいや頭痛・食欲不振といった健康障害を発症しており,引っ越しをせざるを得ない状況となっていた.さらに,傾斜空間での滞在が,健康状態に及ぼす影響の評価を行うため,重心動揺測定を取り入れた被験者実験を実施し,傾斜空間滞在前後で重心の動揺が大きくなることを明らかにした.

  • 渡部 龍正, 松尾 豊史, 加藤 一紀, 堀見 慎吾
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13122
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     本研究では,密な砂地盤(上部不飽和層,下部飽和層)に埋設されたRC立坑の遠心模型実験の地盤・構造物連成系の有効応力解析による再現解析を実施した.二次元有効応力解析では,地盤を排水条件とすること等により,過剰間隙水圧の上昇に伴う地盤の軟化挙動を実験結果と概ね整合的に再現可能であることを示すとともに,三次元地盤・構造物連成解析では,RC立坑の損傷状況や地盤と構造物の最大応答変位を概ね良好に評価可能であることを確認した.また,下部飽和層の過剰間隙水圧の上昇に伴う軟化により,地盤の剛性が保持された上部不飽和層が下部飽和層と共に変形することよって,その境界部付近において,RC立坑にせん断変形が生じる状況を明らかにした.

  • 三橋 祐太, 永井 秀樹, 堤内 隆広, 庄司 正弘, 山口 和英
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13123
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     近年地震時の地震動に加えて,断層変位に伴う地殻変動が構造物に与える影響が注目されている.その際には,両者の重畳も問題となるが,これまで多く用いられている評価手法では動的な影響評価は難しかった.本検討では,地震動と断層変位を動的に評価可能な動力学的破壊シミュレーション解析を用いて主断層の活動に起因する地震動および副断層変位について検討を行い,副断層の活動が主断層に遅れて発生するという結果を得た.さらにRC非線形材料によりモデル化したカルバートを追加し,逆断層および正断層的な副断層変位を受けるカルバートの動的な影響評価を合わせて実施した.静的な解析結果と比較することで,動的な影響は限定的であるという結果を得た.

  • 若槻 直暉, 千田 知弘, 中沢 正利, 馬越 一也, 渡邊 浩佑
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13125
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     ワーレントラス橋供用位置において,逆断層に起因する地盤変動が生じた場合,アバットが滑動し,下弦材に衝突後も滑動し続けることが想定される.その際生じるパラペットを介した強制変位が両方の下弦材に同時に作用する条件下で実施されたFEM解析においては,わずか数cmオーダーの強制変位でも甚大な損傷が生じることが示されている.そこで本研究では,より安全側となる片方の下弦材にのみ強制変位が作用する条件下の弾塑性静的解析と地震応答解析を実施すると供に,径間数の違いが各種応答に影響し得るのかの検討も行った.片方の下弦材にのみ強制変位が作用した場合,両方の下弦材に作用した場合に比べ,強制変位量が約1/4程度であってもより甚大な損傷が生じ得ることが示される一方,径間数の違いによる損傷挙動には大きな差は見られなかった.

  • 阿部 慶太, 仙頭 紀明, 中島 進
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13126
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     本研究は,地山補強材で壁体下部を補強したもたれ壁を対象とし,地震時における挙動について検討し考察したものである.はじめに,既往の小型模型実験で元となったもたれ壁に対し,地山補強材による補強前後の地震時挙動を対象とした解析的検討を実施した.その後,地山補強材で壁体下部を補強したもたれ壁の地震時挙動について,鉄道設計標準で想定されているL2地震動を用いた解析的検討と小型模型実験による実験的検討を実施した.その結果,無補強時に比べて変形は抑制されるものの,土圧,地山補強材の抵抗が変形形態に及ぼす影響と地山補強材の損傷度合いについて検証することの重要性が示唆された.

  • 野本 将太, 池本 宏文, 阿部 慶太
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13127
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     筆者らは,摩擦材による増し杭の接合方法(以下,摩擦接合杭)を検討してきた.摩擦接合杭は,摩擦接合面に滑動が生じることで履歴減衰を期待する構造である.既往の模型実験では,摩擦接合面に作用するせん断力を直接計測できておらず,履歴減衰メカニズムの検証に課題があった.本研究では,摩擦接合面の履歴減衰メカニズムの把握を目的として,数値解析により実験の再現解析を行うとともに,摩擦接合面の挙動を詳細に検証した.模型実験の再現解析の結果,摩擦接合面には滑動に伴う履歴減衰が発揮されていることが明らかとなった.また,履歴減衰が最も大きくなる導入摩擦力を設定することにより,振動卓越周期,最大応答加速度PSASI値を低下させることができ,列車走行安全性を損なうことなく補強可能であることが示唆された.

  • 佐々木 智大, 今井 隆太, 山川 優樹, 伊藤 浩二, 高田 祐希, 樋口 匡輝
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13129
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     地盤材料の複雑な挙動を精度よく予測するためには高度な構成則を用いた複雑な計算が必要となることが多い.そのため,数値計算で必要となる整合接線係数テンソルの導出は困難であり,微小な変形の摂動を加えたときの応力の変化から勾配を計算する,数値微分で求めることが多い.しかし,数値微分による方法は,複数回の応力計算が必要で計算負荷が高い.本論文では,弾塑性構成則の応力積分手法であるリターンマッピングの方程式のJacobi行列を用いて解析的に導出した整合接線係数テンソルを定式化し,これによる計算速度を数値微分の場合と比較した.その結果,解析的に導出した整合接線係数テンソルを用いた場合の材料構成則の計算時間は,数値微分の場合の約1/5~1/8に抑えることができ,計算速度が大きく向上した.

  • 坂下 克之, 畑 明仁, 小野 祐輔
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13132
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     地中線状構造物の耐震性能照査は,地盤-構造物連成系の二次元地震応答解析により横断面方向に対して部材の破壊に対する照査が行われることが多い.一方,構造物単体の耐震性能を照査する方法として,プッシュオーバー解析が挙げられる.プッシュオーバー解析では,支持点や載荷点等の境界条件は離散点で簡易的に設定されることが多いため,周囲を連続的に地盤に囲まれた状態とは力の作用状態が異なる懸念がある.そこで本検討では,RCボックスカルバートの横断面を対象とし,ファイバーモデルを用いた部材非線形解析によりプッシュオーバー解析を実施する場合の合理的な境界条件について検討・提案した.

  • 佐々木 萌絵, 小野 祐輔
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13133
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     地震時の斜面の安全性を合理的に評価するためには,斜面の崩壊しやすさに対して地震波が持つ種々の特性がどのように影響するのかを知ることが重要である.本研究では,地震波を特徴付ける指標として振幅と卓越振動数に着目し,これらの組み合わせからなる多数の正弦波を用いて二次元弾塑性有限要素解析による検討を行った.まず,斜面の絶対加速度応答及び残留変位の分布は,入力波の振幅と振動数に依存して現れる特徴的な変化を整理した.さらに,法肩に生じる残留変位は,入力波の振動数が斜面の固有振動数に近くて共振により応答が大きく生じる振動数帯だけでなく,入力波の振幅が十分に大きい場合には振動数が小さい帯域でも大きくなり得ることを示した.

  • 張 広鋒 , 石原 陽介, 副島 直史, 矢部 正明, 朝倉 康信
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13136
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     本研究では,建設時にレベル1地震動で設計された既設PC橋の耐震性能検討の一つとして,支承と上部構造の接続部である上部アンカーボルトを対象に載荷実験を実施した.載荷実験では,地震時に生じると考えられる5つの地震力の組合せを想定した.終局に至るまでのアンカーボルトの耐荷性能と損傷形態を確認した上で,アンカーボルトの耐震性能の検討を行った.抵抗できる最大震度に相当する最大荷重と死荷重の比は,鉛直荷重だけのケースは1.05,鉛直荷重+水平荷重の4ケースは1.16~2.06であることを確認した.実験対象とした支承部の上部アンカーボルトは,レベル1地震動だけではなく,現行の設計基準に規定されるレベル2地震動に対しても抵抗できると考えられる.

  • 井澤 亮介, 井上 和真, 藤倉 修一
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13138
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     近年,積層ゴム系支承と異なる新たな機構の免震支承として,球面すべり支承が注目され,耐震補強への適用が期待されている.球面すべり支承を耐震補強として既設橋梁へ適用する際には,過去の被災事例を鑑みると地盤を含めたモデル化を行い,地盤種別の影響を検討する必要がある.本研究では,地盤種別の違いが球面すべり支承によって耐震補強された既設橋梁の動的応答に及ぼす影響を明らかにするため,球面すべり支承を有する橋梁モデルに対して非線形動的解析を実施した.その結果,地盤種別の違いが球面すべり支承の動的応答に影響することが確認され,堅固な地盤は応答値の差異が小さいことから,球面すべり支承を耐震補強として既設橋梁に適用する際には,堅固な地盤の方が好ましい可能性が示唆された.

  • 谷本 靖斗, 藤倉 修一, 勝目 進之介, 大藪 宏文, Visal THAY
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13139
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     球面すべり支承は,凹型球面上をスライダーが摺動する免震支承である.すべり系支承は,速度・温度・面圧依存性を有しているが,特に,温度依存性が摩擦係数や動的挙動に与える影響については,十分明らかになっていない.そこで,本研究では,摩擦係数が異なる中摩擦型と低摩擦型の2種類のスライダーを用いて,異なる外気温において振動台実験を行った.その結果,中摩擦型では外気温の上昇とともに摩擦係数が減少する温度依存性が確認されたが,低摩擦型では明確な温度依存性は確認されなかった.さらに,摩擦係数の各種依存性を考慮した再現解析を行い,基準となる摩擦係数を温度によって変化させることで,実験結果を比較的精度良く再現することができた.

  • 後藤 源太, 飛田 一彬, 高原 良太, 植村 佳大, 高橋 良和
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13140
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     中空断面RC橋脚の耐震補強では,軸耐荷力の喪失防止できるようにすることが求められているが,既往研究では,この“軸耐荷力の喪失”に着目した耐震補強工法を検討した事例は少ない.また,現場での施工性や基礎への負担軽減の観点も加えた工法は現状見られない.そこで,本研究では,基部をエアモルタルで充填し,かつ,巻立てた中空断面RC橋脚の耐震補強工法を提案し,大型中空断面RC供試体を用いた正負交番載荷実験により補強効果を検証した.実験の結果,基部をエアモルタルで充填し,かつ,鋼板巻立てすることで,軸沈下が抑制できることが分かった.

  • 北島 佑, 庄司 学
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13142
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     本研究では橋梁―添架管路―地盤系おいて,2016年の熊本地震での被害を基に,地盤の非線形挙動を考慮した際の添架管路の応答を地震応答解析により明らかにした.その結果,1) 橋台背面盛土の非線形挙動が橋台近傍の添架管路における応答を増大させること,2) 橋梁―添架管路―地盤系において,橋軸方向の地震波を受ける際に軸方向応力の増加が強く助長されること,が明らかとなった.さらに,3) 橋台近傍の留め具および添架管路に耐震化を施すことで,卓越した橋台近傍の添架管路の応答を大幅に抑制できることが確認できた.

  • 植村 佳大, 白井 洵, 高橋 良和
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13144
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     著者らは一連の研究で,軸力支持下での耐震性能の改変や地震後の早期復旧が可能なメタボリズム柱構造の開発を行ってきた.メタボリズム柱構造とは,柱基部を二重構造とし,地震エネルギー吸収能を期待する可換部を外殻に,常時の軸力・せん断力を支持する永続部を柱内部に配置した構造である.本研究では,地震後の橋梁構造の復旧性向上を目的に,橋脚が有する機能を整理しつつ,メタボリズム鋼製柱構造の改良を行った.具体的には,永続部の軸剛性を高めることが柱の耐震性能ならびに地震後の復旧性に与える影響について,正負交番載荷実験により検討した.その結果,永続部の軸剛性の向上により,柱の耐震性能が向上することに加え,支点の位置が保持された状態で地震後の復旧性作業が可能となり,復旧性向上に寄与することが示された.

  • 相良 翔, 庄司 学
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13145
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     2011年東北地方太平洋沖地震においては,長周期地震動による長周期のインフラ・ライフラインへの被害が問題となった.本研究では,長周期のインフラ・ライフラインの代表例である吊形式橋梁の鶴見つばさ橋に焦点を当て,系の振動モード特性を踏まえ,構造パラメータを変化させた場合の東北地方太平洋沖地震本震相当の地震動に対する地震応答の感度を明らかにした.その結果,弾性拘束ケーブルのパラメータに対する感度については,橋軸方向の主塔―主桁間の拘束を緩め,軸剛性を変化させた場合に,主桁遊動円木モードの固有周期が変化しモードの連成が生じ,主桁中央径間での鉛直方向の応答が増大した.

  • 室田 亮馬, 川崎 佑磨, 井上 和真, 姫野 岳彦, 後 智貴, 井澤 亮介
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13146
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     本研究では,ゴム支承の残存耐震性能とAE法による非破壊評価について実験的に比較検討した.ゴム支承供試体に地震波形を模擬したせん断試験を実施し,その後に繰返し圧縮載荷試験・AE計測を実施した.このAE計測で得られたデータと性能確認試験から得られた残存耐震性能の相関について検討した.その結果,AE波形のRMSと等価減衰定数に相関があることが確認でき,AE法を用いて残存耐震性能を評価できる可能性があることを示した.

  • 森屋 圭浩, 高畦 武志, 高橋 徹, 姫野 岳彦
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13147
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     本研究は,橋梁上部構造端支点部等に生じる大きな水平変位に追随することを可能とした積層ゴム支承構造を開発することを目的とし,著者らは機能分離型水平ゴム支承構造を基に縦方向に積層ゴムを複数段重ねた構造を提案した.ならびに,その構造において地震時に必要な水平方向支持機能をせん断変形試験の結果から確認した.

     結果,積層ゴムを2段に重ねた1体×2段試験体では,せん断ひずみ±175%の等価せん断剛性,等価減衰定数はおおむね個々の積層ゴム支承から推定した推定結果(推定値)と一致する結果となった.続けて,大反力型を想定した積層ゴムを平面に4体,縦列を2段となる試験体では,所定のせん断変形能を得られたとともに,等価せん断剛性についても推定値とおおむね一致する結果となった.

  • 和田 一範, 小野寺 周, 宇佐美 敦浩, 坂井 公俊
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13148
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     橋りょう・高架橋の上部工重量は,橋りょう・高架橋の地震時挙動に影響するが,上部工重量を把握するためには詳細な荷重計算が必要となる.本稿では,既往の文献から桁種別に応じた単位長さあたりの桁重量,軌道形式に応じた軌道重量等を整理し,鉄道橋りょう・高架橋の上部工重量の推定式を作成した.上部工重量が詳細に計算されている桁に関して,推定式と詳細計算の結果を比較したところ,最大でも10%程度の相対誤差で上部工重量を推定可能であることを確認した.また,この誤差が構造物の地震応答に与える影響を分析し,振動特性や地震動の組合せによって影響程度が異なることを示した.本成果は,膨大な鉄道橋りょう・高架橋群の地震応答解析モデルの効率的な構築や,それを用いた路線全体の地震時挙動評価等への活用が期待できる.

  • 津田葉 涼太, 植村 佳大, 高橋 良和
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13150
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     載荷実験と数値解析を同時に行う実時間ハイブリッド実験(RTHS)は大型構造物の動的性能評価法として有効な手法の一つである.一方,計算負荷の増加は,RTHSの試験機制御の連続性を保証するContinuous Hybrid Simulation Algorithmに影響を及ぼし,試験精度を低下させる可能性がある.本研究は,計算負荷の増加がRTHSの試験精度に与える影響に関して,理論式を用いた誤差評価と仮想RTHSによる試験精度評価を行い,Continuous Hybrid Simulation AlgorithmのRTHSへの適用性について考察した.その結果,計算負荷に起因する誤差の許容限界の事前評価により,数値計算モデルの解析規模の最適化につながる可能性があることが示された.

  • 鍋島 信幸, 党 紀 , 濱田 由記, 姫野 岳彦, 新名 裕, 五十嵐 晃, 沈 捷
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13151
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     HDR-S支承とSPR-S支承を対象に,低温環境下が免震支承の履歴特性に及ぼす影響を,実時間/仮動的ハイブリッド実験を用いて検討した.結果の考察は,載荷速度の影響や設定温度が初期載荷挙動や履歴ループ,等価剛性/減衰に及ぼす影響に着目した.載荷速度の影響は両支承で異なる傾向が現れ,初期載荷挙動は設定温度によらず現れた.また,SPR-S支承における内部温度の上昇と等価せん断剛性の増減の関係では既往の研究と異なる傾向がみられた.いずれの支承においても設定温度の低下に伴い等価剛性の増加が確認でき,設定温度が等価減衰へ及ぼす影響は比較的小さいことが確認できた.

  • 上田 知弥, 植村 佳大, 高橋 良和
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13152
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     実時間ハイブリッド実験(RTHS)は試験中に逐次指令変位を計算するため,事前に入力を規定する通常の載荷試験と異なり,動的試験機の速度性能を超える入力がなされる可能性がある.その際,コントローラが速度低減を行うと指令変位と計測変位間の遅延が増大する.その結果,過剰な遅延補償が行われることで指令変位に高次振動が含まれることとなり,試験精度が低下する恐れがある.そこで本研究では,動的試験機の速度制約を考慮したRTHS用遅延補償アルゴリズムを提案する.速度制約に応じた速度低減を行う指令信号の生成アルゴリズムを提案し,その検証実験を行った.その結果,提案アルゴリズムが設計通り作動すること,コントローラによる速度制御に比べ提案手法が遅延補償法による指令変位の高次振動を抑制できる可能性を示した.

  • 大越 靖広, 庄司 学
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13153
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     2016年熊本地震のように震度7の地震が同一地点で2回観測されるのは我が国の地震観測史上例がなく,耐震設計された構造物が複数回の大きな地震動を経験しうる可能性を認識させた.橋梁についても複数回の大きな地震荷重を受ける可能性を踏まえ,著者らは一度地震荷重相当の載荷履歴を受けた後の単柱式RC橋脚の履歴特性について正負交番載荷実験にて検討を行ってきた.これまでの実験結果より,1回目の載荷時の等価剛性に対する2回目の等価剛性の低減の割合は1回目の載荷範囲と線形の関係があることを示したが,本論文では新たに行った載荷実験の結果より,等価剛性の低減の割合が1回目の載荷範囲が限界状態2までの範囲に限り1回目の載荷範囲と線形の関係があることが明らかになったことから,その詳細について報告する.

  • 谷口 惺, 五十嵐 晃
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13154
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     1995年に発生した兵庫県南部地震において転倒等の被害が発生したテレビ支柱は,死荷重,活荷重および風荷重に対して設計を行っており,地震荷重を考慮していないのが実情である.そこで,本検討では,柱状付属構造物の耐震性評価手法の確立と必要に応じた対策検討に向けた基礎資料として,兵庫県南部地震で被災した橋梁上に設置されたテレビ支柱を例に,再現解析に基づき被災メカニズムを分析した結果,支柱基部の曲げモーメントが設計許容値等を超過し,テレビ支柱が転倒した被災状況と整合することが分かった.さらに,鋼製橋脚の塑性化や地盤の不確実性がテレビ支柱の応答に及ぼす影響を分析し,橋脚とテレビ支柱の共振が生じやすい場合に,テレビ支柱の応答が大きくなる傾向を確認した.

  • 寺澤 貴裕, 佐藤 京, 徳江 良, 畠山 乃
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13155
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     道路橋の地震に対するレジリエンス対策として,あらかじめ想定した損傷誘導シナリオを実現するためのRC橋脚柱部構造の検討を実施している.その柱部構造は,通常設計された柱部主鉄筋の他に,柱の降伏耐力と最大耐力に階層を設けるため,耐力階層化鉄筋と称する鉄筋を柱軸方向に配置したものである.損傷誘導設計を具現化するためには,耐力階層化鉄筋を有するRC橋脚柱部の終局限界までの挙動を把握し,設計方法について検討する必要がある.本稿では,耐力階層化鉄筋を有するRC橋脚模型に対して終局までの正負交番載荷試験を行い,その結果から損傷誘導および耐力階層化の検証,耐力階層化鉄筋を配筋しても平面保持の仮定は成立すること,さらにそれによりファイバー要素を用いた数値計算により損傷誘導設計が可能であることを報告する.

  • 杉山 裕樹, 安積 恭子, 篠原 聖二, 吉澤 努, 吉岡 勉, 平山 博
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13157
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     本稿ではこれまでに事例のない規模の4主塔連続斜張橋に対して危機耐性を考慮した構造計画段階における耐震構造計画フローを提案し,それに基づいた検討内容を報告する.本橋の基本構造における最適な支持条件を検討し,それを踏まえた構造特性を明らかにするとともに,座屈固有値解析による破壊プロセスの評価から耐震戦略を設定し,それに基づく基本構造の見直しを行う.次に,見直した基本構造に対して,架橋条件を踏まえたシナリオ地震動を設定するとともに要求性能を提案し,それに基づく照査結果を示す.最後に,プッシュオーバー解析および漸増動的解析により損傷順序を確認し,望ましい破壊プロセスとなることを検証する.一連の検討結果から提案した耐震構造計画フローの有効性を示す.

  • 水野 剛規, 海老澤 健正, 後藤 芳顯
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13158
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     製造時の加工で残留塑性ひずみが大きく生じる電縫鋼管柱の繰り返し挙動を再現可能な解析法を検討した.その結果,精度の良い解析を実施するには,まず,大きな塑性ひずみ領域までを対象とした限界曲面拡大型3曲面モデルを鋼材の構成則に用いる必要があること,さらに,鋼管の製造工程を再現したシェル要素による解析で残留塑性ひずみを算定し,これを鋼管素材virgin材の構成則を導入したシェル要素による鋼管モデルに陽な形で考慮する必要があることがわかった.virgin材の構成則が不明な場合には,鋼管試験片の引張結果が製造工程を再現した解析で算定される残留塑性ひずみを導入した鋼管の引張試験片モデルで再現されるように,逆解析でvirgin材の構成則を推定する手法を提示した.なお,電縫鋼管製造時に生じる残留応力の影響は小さい.

  • 新名 裕, 田嶋 仁志, 藤倉 修一, 石川 義樹, 姫野 岳彦
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13159
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     道路橋支承便覧が平成30年に改訂され,設計履歴モデルや製品の特性検証試験の項目が変更された.また,現行の道路橋示方書・同解説 V 耐震設計編では,免震ゴム支承を適用した免震橋の動的照査において,免震ゴム支承の非線形特性はバイリニアでモデル化することが一般的となっている.しかし実製品の復元力特性には,Mullins効果による最大経験ひずみ依存性が確認されており,かつ,せん断ひずみが大きくなるとハードニング現象が生じることも確認されている.本研究は,2種類の免震ゴム支承の製品全218体のせん断変形性能試験の結果を基に,免震ゴム支承に発現するMullins効果及びハードニングを考慮した設計履歴モデルを用い,橋梁の耐震性に及ぼす影響を検討したものである.

  • 古川 柊哉, 葛 漢彬
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13161
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     前報の研究で提案した断面欠損の評価に要素破壊時変位を用いた解析手法の適用範囲を拡大するために,ランダムな繰り返し変位を受ける無補剛箱形断面鋼製橋脚の実験供試体対象に延性破壊解析を行った.その結果,き裂発生,き裂進展ともに実験の結果を概ね模擬することができた.また,小さいメッシュサイズでも同様の解析を行い,メッシュサイズによる違いを確認した.メッシュサイズを半分程度小さくすると解析時間は4から5倍ほど長くなったが,損傷開始パラメータの補正を行った1mm角のモデルと比べて,き裂発生およびき裂進展に大きな違いが見られなかった.

  • 服部 匡洋, 幸左 賢二, 本橋 英樹, 原田 隆典
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13163
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     2016年4月熊本地震では,阿蘇大橋周辺で斜面崩壊が発生し,それが落橋の一因になったと考えられている.高速道路をはじめ,広域ネットワークを形成する構造物群は,線形条件等の制約上橋梁が斜面に隣接して建設される場合も多く,斜面災害が橋梁に影響を及ぼす可能性が考えられるが,橋梁分野において斜面崩壊が橋梁に与える影響についてはこれまでそれほど研究されておらず,解析手法も十分に確立されていない.著者らはこれまで阿蘇大橋周辺の斜面を対象に,有限面積法を用いた再現解析を実施してきたが,二次崩壊の挙動の再現に課題を残していた.そこで,本検討ではこの斜面崩壊の特徴である連続的なすべりに着目し,一次崩壊が二次崩壊を引き起こす現象を評価する方法について検討した.

特集号(地震工学)報告
  • 井上 和真, 服部 孝生, 小野 祐輔, 庄司 学
    2024 年 80 巻 13 号 論文ID: 23-13110
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル フリー

     本研究は,2023年2月に発生したトルコ南部地震で落橋した斜橋について,現地調査と3次元地震応答解析によって,落橋の要因に関する分析を行った.現地調査から,落橋した斜橋の特徴として,パッド型ゴム支承が採用されていたこと,我が国で多く採用されるような上部構造と下部構造を繋ぐアンカーバーの存在が確認できなかったこと,上部構造の鋭角側に設置された横変位拘束構造が大きく損傷したことを確認した.これらの点から,強震動の作用に伴い,上部構造と橋台胸壁の衝突に起因する上部構造の回転挙動が落橋につながったと推察した.また,被災橋梁近傍の観測記録を入力とした地震応答解析を実施した.その結果,上部構造の衝突,回転の発生を再現するとともに,上部構造の鋭角側から落橋に至った可能性が高いことを示した.

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