土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
81 巻, 25 号
特集号(環境工学)
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特集号(環境工学)論文
  • 高橋 尚暉, 山本 達也, 釜口 洋尚, 端本 蓉, 高橋 克幸, 石川 奈緒, 伊藤 歩
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25001
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
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     プラズマ単独処理でのAsを除く重金属類溶解率は,20%以下であった.酸性化処理後にプラズマ処理を行う併用処理でAsとCdの溶解率が約100%となり,酸性化処理よりも高い溶解率となった.プラズマ処理時間を15minに短縮してもAsやCd,Ni,Znは60%程度の溶解率であった.プラズマ処理後の汚泥表面は粗面化し,FT-IRスペクトルの吸光度はアミド基で減少した.酸性化およびO3処理ではCdの溶解率は10%以下であった.プラズマ併用処理から生じるH2O2量を酸性化汚泥に添加して30min処理すると,30minのプラズマ併用処理と比較してCdの溶解率は低いことから,プラズマ併用処理でのCdの溶解はH2O2に加えてプラズマから生じるラジカルや局所的な温度上昇によるものと考えられる.

  • 孫 逸竹, 叶 敏, 夏 偉哲, 王 郁, 李 玉友
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25002
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,エネルギー回収および資源循環型の下水処理システムを開発するために,短いSRT条件下で運転可能な高負荷A/O-MBRシステムを構築し,その処理性能と資源回収ポテンシャルを評価した.その結果,生物学的リン除去機能を維持できる最短SRTが1.5日であることを明確にした.また,COD回収率が最大66.6%に達し,従来の高負荷システムを上回るエネルギー回収ポテンシャルが示された.さらに,全リンの78%以上が余剰汚泥中に濃縮され,リン資源としての回収可能性も示唆された.本研究はエネルギー自立型下水処理の実現に向けた資源濃縮ユニットについて実験的評価を行ったものである.

  • 細島 悠介, Zhao Guang-yao , 藤田 昌史
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25004
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     下水処理のリアルタイム運転管理に向けて,数理モデルの活用は有用である.生物学的窒素除去においては,硝化細菌の動態の再現性が鍵となるため,それを随時検証できる手法が求められる.そこで本研究では,循環式硝化脱窒法の好気槽の流下方向に2基のアンモニアセンサーを設置し,水理学的滞留時間等を考慮してアンモニア減少速度を求めた.これには従属栄養細菌による窒素消費も含まれることから,別途酸素消費速度試験から窒素同化速度を評価し,硝化速度を算出した.これを最大硝化速度に換算し,回分試験により求めた最大硝化速度と比較したところ,両者には概ね対応が見られたことから,硝化細菌濃度をリアルタイムで推定できる可能性が示された.

  • 渡邊 美紀, 松永 隼汰朗, 中村 槙吾, 今井 剛
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25005
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     下水道管渠では硫酸塩還元菌が生成する硫化水素に起因する腐食問題が発生しており,下水道関連インフラの劣化促進や道路陥没などの社会問題を引き起こしている.本研究では,導電性コンクリートにより下水道管に新たな電子伝達経路を提供し,問題となる硫酸塩還元菌が生成する硫化物の発生を抑制する実験を行った.新たな電子伝達経路である導電材物質毎のライニングの厚さを変化させ,水質モニタリングと硫化水素発生傾向を基に最適な厚さを決定した.各供試体の最底部と水面付近の汚泥を採取し,16S rRNA の微生物菌叢解析を行った.その結果,好気性硫黄酸化菌のThiobacillus sp.と細胞外電子取込み代謝能力を持つ窒素固定菌Azoarcus sp.が嫌気的な環境下で確認された.

  • 山本 孝幸, 酒井 宏治
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25006
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
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     上下水道事業は日常生活において,欠かすことが出来ない重要なインフラである.両事業体とも共通する課題に直面しており,その対策の一つとして上下水道事業の統合が挙げられる.統合を行うことにより施設の共用や業務の連携による組織の効率化が期待できるが,日本における研究事例に乏しい.そこで本研究では,日本における上下水道事業体の一体運営の効果を検討した.その結果,項目として上下水道の総費用と全職員を一体運営する場合,多様化の経済性が確認できることが分かった.また,費目ごとの検討では,営業外費用や動力費・修繕費・薬品費では多様化の経済性が確認された一方で,人件費および営業費用では明確な効果が認められなかった.さらに,大規模事業体ほど一体運営による効果が得られやすい傾向があることが示唆された.

  • 安藤 直哉
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25007
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,紫外線(UV)処理技術を活用した光触媒反応による上水処理技術の実用化を目指し,焼結時に造孔剤を用い酸化チタン表面に微細凹凸構造を付与する光触媒反応の効率化技術の開発を行った.造孔剤により酸化チタン表面の孔径0.003から0.5μmの細孔表面積が増加し,UV領域の拡散反射率が低下したことから酸化力の増加は光触媒反応に利用可能な面積と光の散乱の増加によるもと考えられた.また,酸化処理が天然有機物の除去性に与える影響をサイズ分画を行い調査し,酸化処理により波長260nm付近のUVに吸光を持つ有機物は減少し,分子量1,000Da以下が分解され300から500Daが増加し,バイオポリマーは僅かに減少し,溶存有機物量としては僅かな減少に留まり,塩素消費量が増加することが示唆された.

  • 嘉屋 秀大, 鳥居 将太郎, Benyapa SAWANGJANG , Aunnop WONGRUENG , 小熊 久美子, 滝沢 智
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25008
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     タイ王国チェンマイ県では,地下水のフッ素汚染対策としてRO膜ろ過施設,家庭用浄水器,水販売機が使われている.本研究は,これらの処理法によるフッ素と指標微生物の除去性能と,処理水の貯蔵に再利用されているボトル中の指標微生物濃度を評価した.その結果,RO膜ろ過施設やRO膜を備えた家庭用浄水器のフッ素除去率は高いが,多くの家庭はフッ素除去率が低いRO膜以外の浄水器を利用していた.村落水道水の94%(17/18)は全塩素濃度が0.3mg/L未満と低く,家庭用浄水器の処理水の36%(5/14)から大腸菌が検出された.また,RO膜処理水の貯蔵用のボトルから高濃度の大腸菌群が検出された.本研究により,水中のフッ素除去,微生物学的な安全性および水処理技術に関する住民への情報提供の重要性が示された.

  • 荒木 静遥, 市木 敦之, 榊 将也, 財津 実歩
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25009
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,面源負荷の中で生態毒性が高いと考えられる雨天時道路排水について,実態調査を行い毒性を明らかにするとともに,室内実験によりそれら毒性の再現を試みたものである.実態調査では,雨天時道路排水を採水し,水質の測定と魚類短期毒性試験,ミジンコ繁殖試験および藻類生長阻害試験を行った.その結果,魚類とミジンコでは顕著な特徴がみられなかったが,藻類では冬季に採水した雨天時道路排水について有意な毒性が認められた.再現実験では,自動車交通由来のPAHsが凍結防止剤と触媒を介した光変換により塩素化して高い毒性を発現することを想定した模擬道路排水を作成し,実排水と同様の生態毒性試験を行った.その結果,魚類とミジンコに対して模擬道路排水が複合毒性を表し,冬季に顕在化する毒性をある程度再現することができた.

  • 藤井 暁彦, 青栁 瑞希, 池田 愛梨, 田口 萌禾, 刀根 佳子, 林 あい, 山下 優, 副島 英子
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25010
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     近年の気候変動に伴う温暖化や短期間降水量の増加が,干潟の高温化や低塩分化につながり,アサリの生残に影響を及ぼしている可能性がある.この高温条件による低塩分の耐性を実験的に検証した.実験水槽において,温度を平温と高温の2ケース,塩分を6~30psuの5ケースとして,7日間の曝露実験を行った.実験の結果,低塩分に順応できる限界濃度は10~15psu付近と推定され,これよりも低塩分の場合には高温条件のほうが短期間に斃死した.塩分18psuの中程度の場合,平温であれば生存するが,高温になると個体の疲弊や代謝機能に障害が生じる可能性があり,斃死すると推察された.また,高温の影響は稚貝の小型な個体ほど顕著になると考えられた.

  • 鬼束 幸樹, 吉田 瑞矢, 飯隈 公大
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25011
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     ニホンウナギの遡上率向上のため,魚道底面への桟粗度の設置が提案されてきた.魚道斜面方向に桟粗度を投影した場合の桟粗度重複長と魚道幅との比を桟粗度重複率と定義する.重複率が1の場合,ウナギは遡上中に桟粗度を乗り越える必要がある.本研究ではウナギが桟粗度を乗り越えることなく遡上できるよう,ウナギ用魚道において重複率を2/3に固定した.その上で交互桟粗度の設置角度を-30,-15,0,15および30°に変化させ,平均全長200±20mm(平均値±標準偏差)のニホンウナギが遡上し易い設置角度を探索した.その結果,遡上に適した設置角度は0°であった.設置角度が0°以外の場合,0°の場合と比較して,ウナギに働く遡上抗力に自重の桟粗度方向成分の増分が生じる.その結果,ウナギは桟粗度に沿って蛇行しながら遡上し難くなると推測される.

  • 鬼束 幸樹, 渡邊 杏咲, 高丸 幹
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25012
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     我が国におけるニホンウナギの個体数は減少の一途を辿っている.近年,魚類の休息・避難場所として人工魚巣が注目されており,その一種である円管の有用性が注目されている.ところが,適切な材質・内径等は未解明である.本研究では円管の材質(竹,塩化ビニル,コンクリート,アルミニウム,アクリル),内径(25,30,40,50,65mm),色の明度(N1/0~N9/0),流水に対する設置方向(平行,直角)および開口部の有無(片側開口,両側開口)を変化させ,ニホンウナギの挙動に与える影響を調査した.その結果,全長300±20mm,体高19±2mmのニホンウナギの休息には,材質は塩化ビニルまたはコンクリート,内径は体高の約1.6倍の30mm,色は黒,両端開口の円管を流れに直角に設置した状態が適していた.このような状況を河川に創設することで,ニホンウナギの保全効果が期待される.

  • 福嶋 俊貴, 西村 文武
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25013
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     二つの中核市の実下水処理場4ヶ所を対象に省エネ施策・創エネ施策による使用電力量とGHG排出量の削減効果を下水処理場シミュレータにより評価した.省エネ施策の導入では高効率散気装置と低動力送風機の効果が大きく,2割以上の使用電力量の削減が期待された.一方,創エネ施策では余剰汚泥可溶化の効果が大きく,電力自給率は約40%に向上すると計算された.省エネ施策と創エネ施策を同時実施することにより電力自給率は50%まで向上すると計算された,GHG排出量削減効果をCO2オフセット率で評価すると,省エネ施策では電力消費CO2が2割以上削減され,CO2オフセット率は27%へと12ポイント向上していたが.創エネ施策では汚泥可溶化による電力消費CO2が増加し,CO2オフセット率は21%に留まっていた.省エネ・創エネ施策を同時実施するとCO2オフセット率は34%まで上昇した.更なるGHG排出量削減施策を検討すると,CO2オフセット率は二つの中核市ともに64%まで向上すると計算された.

  • 石井 淑大, 重村 浩之
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25014
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     下水処理に伴い排出される一酸化二窒素(N2O)について,排出量の推定方法を改善させることを目的に,日本国温室効果ガスインベントリ報告書で用いられているN2O排出係数に関する情報の整理を行った.過去20年間のN2O排出量の推移を整理した結果,高度処理への転換により近年の排出量は減少傾向であったが,大幅な排出量削減に向けては更なる対策が必要と考えられた.日本で用いられている処理水量当たりのN2O排出係数から,下水道統計から推計した流入窒素負荷量に対するN2O転換率を試算した結果,諸外国で排出係数として使用されているN2O転換率と同オーダーであった.また,標準活性汚泥法の下水処理場における硝化状況を推定した結果,約3分の1の下水処理場で硝化促進または硝化抑制運転を実施していると推定された.

  • 外川 弘典, 石井 淑大, 安倉 直希, 重村 浩之
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25015
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     下水道事業の脱炭素化のため,下水処理工程から排出される一酸化二窒素(N2O)の削減が求められているが,その排出量の変動は実態解明が進んでいない.本研究では,生物反応槽が覆蓋であり,硝化促進運転を実施している下水処理場の2種類の処理系列において,排気経路に自動測定器を設置しての連続モニタリング及び生物反応槽から直接気体を採取する定期サンプリングによって下水処理工程からのN2O排出量の調査を実施した.調査の結果,生物反応槽からのN2O排出量の時空間変動や処理方式による違いを明らかにするとともに,N2O排出量の大小とその時の硝化及び脱窒の状況との関係を明らかとした.これらの結果をもとに,N2O排出係数の見直しや,N2O排出量を低減する運転方法の検討が必要である.

  • 陳 芸澤, 上野 孝司, 髙橋 真澄, 田村 一郎, 田中 宏明
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25016
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     下水処理場での能動的運転管理は海藻類の成長を促進する栄養塩類供給手法として注目されている.副次的効果であるCO2の貯留・削減への寄与を明らかにするために,能動的運転管理を実施している全国67箇所の下水処理場放流先に生育する藻場の貯留量と下水処理場内の削減量の定量化手法を検討した.その結果,栄養塩類影響範囲のなかで過去の生育面積に海藻類が復元すると仮定した場合,海藻類成長促進効果が寄与するCO2貯留量と,下水処理場の電力削減によるCO2削減量を算出する方法を提案し,海藻類によるCO2貯留量は年間約2,500t-CO2,下水処理場のCO2削減量は年間約24,000t-CO2と試算した.これらは2030年以降に削減する必要がある下水道分野のCO2排出量192万t-CO2の1.4%に相当する.

  • 坂牧 祐佳, Bikash Malla , 原本 英司
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25017
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,下水中の薬剤耐性遺伝子(ARGs)を定量することを目的に,最大5波長の同時測定が可能なデジタルPCR(dPCR)装置QIAcuity dPCRシステム(QIAGEN)を用いたMultiplex dPCRを開発した.標準試料を用いた検討により,Singleplex dPCRと5-plex dPCRで同程度の定量結果が得られることが確認された.リアルタイムPCRによる測定結果に基づき,9種類のARGsと3種類の指標遺伝子を3種類の検出セットに分類し,それぞれの検出条件を最適化した.1年間にわたる下水流入水(n = 24)のモニタリングの結果,vanAを除くARGsが83~100%の試料から検出され,下水中のARGsの汚染実態の把握にMultiplex dPCRが活用できることが示された.

  • 荒木 秀祐, Vu Duc Canh , 岩本 遼, 安藤 良徳, 片山 浩之, 北島 正章
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25018
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     感染症の流入監視のために実施されている空港での入国時感染症ゲノムサーベイランスは, 発症前や無症状の患者を検知できない点が課題である. 本研究では, 計31種の病原微生物遺伝子を対象に, 3国際空港から下水試料を採取しEPISENS-M法を用いて検出調査を実施した.検出率は対象遺伝子によって大きく異なるが, 28種の病原微生物遺伝子が検出され, そのうちの2種は同期間の感染症ゲノムサーベイランスでは検出報告がなかった. また, パッシブサンプリングではグラブサンプリングよりも1試料あたり平均1.8種多く検出され, 網羅性においてより優れたサンプリング方法であることが示された. 本論文では, 空港での臨床検査を補完する新たな感染症越境流入監視技術としての空港下水疫学調査の検討結果を報告する.

  • 平井 聡一郎, 原本 英司
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25019
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,最大5波長の測定が可能なデジタルPCR(dPCR)を用いた,新型コロナウイルスとインフルエンザウイルス,ノロウイルスGI・GII,タバコモザイクウイルスの同時検出技術(5-plex dPCR)の開発を試みた.dPCRの条件検討の結果,cDNA溶液の添加率を20%としたTwo-step dPCRが最適であると判断された.開発した手法を1年間にわたり採取した下水流入水63試料に適用した結果,各ウイルスの検出率は63~100%を示し,57%の試料から全5種類のウイルスが同時検出された.下水中のウイルス濃度と感染報告者数との間には正の相関が得られた.本研究で開発した5-plex dPCRは,複数の感染症を対象とした下水疫学調査の実施において有効となることが示唆された.

  • 鹿内 靖成, 米田 一路, 西山 正晃, 渡部 徹
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25020
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     大腸菌は,温血動物の腸管内に多数存在し,水環境中では長期間生存できないため,水環境のふん便汚染の指標細菌として利用されている.その一方で,水環境で長期間生存できる菌株の存在も報告されている.本研究は,河川水を最大42日間に渡って静置する実験を行い,そこに生息する大腸菌選択培地で陽性となる菌株の消長を観察した.その結果,実験最終日まで生存した菌株の割合は,基本的に2.0%程度であったが,条件次第では36.7%にも達した.この実験後の河川水から選択培地を用いて分離された陽性コロニー(全97株)のうち,87.6%が大腸菌と同定された.さらに,生理食塩水中での消長を観察した結果,河川水中で生き残った菌株の生存能力は菌株間で大きく異なり,同菌の指標細菌としての有効性を議論する上で重要な知見が得られた.

  • 石川 奈緒, 松橋 波生, 藤齊 知希, 竹花 和浩, 鳴海 貴之, 笹本 誠, 金澤 清光, 高橋 敏文, 伊藤 歩
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25021
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     下水からの液肥製造を目的として,下水処理場の余剰汚泥からリン等の有用元素類を液相へ溶出させた後,機械濃縮により回収された機械濃縮分離液を電気透析処理し,有用元素類を濃縮した液肥原料(濃縮液)を得た.一方,電気透析では有用元素だけでなく重金属類や抗菌薬,有機フッ素化合物(PFAS)等の有害成分も濃縮する可能性がある.本研究では,電気透析による有害成分の濃縮の程度や安全性を評価した.重金属類は電気透析により濃縮していたが,その濃度は菌体りん酸肥料での基準値の1/1,000程度であった.またPFASは濃縮されず,濃縮液中濃度は水道水質目標値以下であることから液肥として問題ないと考えられる.抗菌薬はほとんど濃縮されず,環境リスク評価から薬剤耐性および水域生態系への影響は少ないことが示唆された.

  • 佐藤 岳哉, 山内 優大, 米田 一路, 西山 正晃, 渡部 徹
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25022
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     魚介類の養殖飼料として価値の高い微細藻類を,下水処理水を基質に用いて安価に生産することを目指し,藻類収量の増加と珪藻類の増殖を実現する培養方法を検討した.培養には,水平に設置した平板の上に下水処理水を深さ5cmで穏やかに流す方法(平板区)と,ポリカーボネート製の波板に処理水を掛け流す水槽に沈める方法(波板区)を試した.波板区では遮光シートを用いて光量の調整も行った.その結果,波板区では藻類を食べる巻貝が発生し,その収量は平板区を下回った.また,両区とも緑藻類が盛んに増殖し,珪藻類を優占させることはできなかった.一方,カビ臭発生につながる藍藻類の増殖は限定的であった.下水処理水の水質は安定していた中で,両区とも平均気温が主に珪藻類の増殖に寄与しており,珪藻類の選択培養につながる知見が得られた.

  • 米田 一路, 山内 優大, 佐藤 岳哉, Dung Viet PHAM , 西山 正晃, 渡部 徹
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25023
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     天然アユは,摂食した藻類の分解を通じてキュウリやスイカのような香りを発する.これに対して養殖アユは,飼料に藻類を含まないため,この香りが少ない.本研究では,下水処理水を基質として培養した藻類(珪藻が68.6%を占める)を20%混合した人工飼料を,養殖アユに最大15日間給餌する試験を行った.その結果,藻類混合飼料を与えても,養殖アユ体内のキュウリやスイカの香り成分(3, 6-Nonadien-1-olと2, 6-Nonadienal)の濃度に明確な上昇は見られなかった.一方で,藻類混合飼料を10日以上給餌すると,2つの香り成分の濃度比が天然アユに類似した値となった.このときのアユ1尾は珪藻を3.1g以上摂食しており,これは養殖アユに好ましい香りを付けるために与えるべき珪藻量の目安となるだろう.

  • 丁 含含, 古崎 康哲
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25024
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     バイオメタネーションはガス燃料の脱炭素化や「Power-to-X」の一手段として注目されている.本手法の技術的な課題は基質ガスである水素を液中へ効率的に溶解させることであり,その手段として気相と液相を泡沫状態で保持するリアクタを提案し,一般的な手法であるトリクルベッド型を対照系として連続実験を行った.基質ガスの投入負荷を段階的に上げて実験を行ったところ,泡沫充填型リアクタはトリクルベッド型(35 L/L/d)より高負荷での運転が可能であり,水素負荷58 L/L/dでメタン濃度90%を得ながら,1ヶ月間安定した運転を行うことができた(MER13 L/L/d).リアクタ周りの炭素収支から,泡沫充填型メタネーションにおいて,種汚泥からのメタン生成や微生物の増殖に由来する基質ガス消費の影響は小さいことがわかった.

  • 鵜飼 展行, 藤原 拓, 日髙 平
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25025
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     セルロース主体の都市廃棄物の水熱処理メタン発酵プロセスの運転コスト低減を目的に,立上方法と窒素濃度制御方法を検討した.模擬廃棄物の水熱処理物を原料に高温メタン発酵を行い,負荷増加率+55%/週でpHを調整しながら運転することで,28日間で8.7倍の負荷増加を達成すると共に,メタン発生量230Nm3/t-TS以上を得られる安定運転を達成した.メタン発生には窒素の外部供給が必要であったが,メタン発酵液の遠心分離液を循環利用することで窒素添加コストを約1/4まで削減するとともに,NH4-N 230mgN/Lにおいても安定運転を維持できた.本研究により,立上期間の短縮,安定運転とコスト削減を実現する運転手法を確立し,セルロース系バイオマス水熱処理物を対象としたメタン発酵の可能性を示した.

  • 根津 拓福, 山口 隆司, 渡利 高大, 幡本 将史
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25026
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     高温メタン発酵において律速となるプロピオン酸分解の迅速化と安定化を目指し,導電性物質であるマグネタイト,活性炭,緑色凝灰岩を混合したpolyvinyl alcohol (PVA)ゲルビーズを開発しその効果を検証した.導電性物質を混合したPVAゲルビーズを用いることで,ブランクの PVA ゲルビーズと比較しメタン生成までのラグタイムが60−71%短縮し,最大メタン生成速度は5.4−6.2倍となった.これは導電性物質を混合したPVAゲルビーズの保持汚泥量が5−7倍に増加し,さらにメタン生成古細菌やプロピオン酸の酸化に関与すると考えられる微生物の存在割合が2.2−3.3倍に増加していたことが要因だと考えられた.これらの結果より,導電性物質を含有したPVAゲルビーズを用いることで高温メタン発酵の迅速化と安定化が可能であることが示唆された.

  • 山田 光陽, 渡利 高大, 山口 隆司, 幡本 将史
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25027
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     バイオメタネーションにDown-flow Hanging Sponge (DHS)リアクターを用い,水素・二酸化炭素混合ガスを基質とした連続実験により適用可能性を評価した.常温条件(25°C)では酢酸の蓄積とpH低下が見られたが,水素資化性メタン生成古細菌の相対存在量の増加とともにメタン生成が増加し,メタン生成速度は0.82 NLCH4 LVR−1d−1となった.中温条件(37°C)では,常温条件を上回る最大メタン生成速度5.76 NLCH4 LVR−1d−1を示し,メタン生成古細菌のMethanobacterium属,Methanobrevibacter属,Methanoculleus属が検出された.これらのことから,DHSリアクターがバイオメタネーションリアクターとして有望であることが示された.

  • 友井 幹太, 多田 悠人, 小坂 浩司, 越後 信哉
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25028
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     消毒副生成物(DBPs)の中でも含臭素DBPsは, 現在基準値が設けられている塩素系DBPsよりも毒性が高いことが懸念されているが, 含臭素DBPsの生成特性や制御に関する知見は不足している. 本研究では, 含臭素DBPsの中でも特に, 近年発がん性が認められた物質を含む含臭素ハロ酢酸に着目し, Br濃度や溶存態有機炭素(DOC)が極端に高い水道原水を用いて, その生成特性および制御可能性の検討を行った. DOCやBr濃度が極端に高い水道原水でも処理条件を適切に設定すれば凝集沈殿処理と粉末活性炭処理の組み合わせで, 含臭素ハロ酢酸生成能を目標値案(10µg/L)程度に抑制できること, 生成制御を困難にする要因としてはBr濃度よりもDOCに依存する可能性が高いことを示した.

  • 杉浦 洸, 多田 悠人, Klon D.C. Hinneh , 越後 信哉, 小坂 浩司
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25029
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     浄水処理過程における人為由来化学物質の塩素処理によるトリハロメタン(THMs)生成能(FP)の評価と予測手法の検討を行った.化学物質排出移動量届出制度(PRTR制度)対象物質のうち101物質を対象にFP試験を行ったところ,事故等の流出により利根川でのヘキサメチレンテトラミンの流出事故と同濃度まで対象物質濃度が上昇したと仮定した場合,THMsの水道水質基準値の1/10値である6µg/L以上のTHMFPを示した物質はクロロアニリン類,フェノール類,アセチルアセトンであった.また,既存のハロ酢酸FPデータを用いてTHMFP予測モデルを作成した.ジクロロ酢酸FPとトリクロロ酢酸FPの交互作用項およびジクロロ酢酸FPを説明変数とした重回帰分析モデルが最も高い予測精度(R² = 0.61)を示した.

  • 小坂 浩司, 川上 陽介, 吉田 伸江, 小島 邦恵, 東城 まゆみ, 越後 信哉, 増田 貴則
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25030
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     臭素化ハロ酢酸(HAA)は,一部に目標値案が提示され,関心の高い消毒副生成物である.臭化物イオン(Br-)が高い原水を含む全国の浄水場の給水栓水のHAA濃度を調査した.過去の研究での1臭素化HAA濃度の予測式は,Br-濃度が高い水を含め70%以上のデータで誤差率30%以内であった.1臭素化ジ,トリHAA濃度が高かったのは,必ずしも原水のBr-または全有機炭素(TOC)濃度が高い場合ではなかった.2臭素化,3臭素化HAA濃度は,原水のBr-濃度が高い場合に高い傾向で,原水のHAA生成能(HAA-FP)で顕著であった.凝集沈殿処理でのFP除去率は,塩素化,1臭素化,2臭素化,3臭素化HAAの順に高かった.原水のTOC濃度あたりのBr-濃度が大きい方がHAAの各成分のFP除去率が高い傾向にあった.

  • 山村 寛, 亀田 優夏, 奥田 啓司, 角田 貴之, 市川 学, 清塚 雅彦
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25031
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,LC-EEMとPARAFAC解析を用い,水源水中のフルボ酸(FA)等フミン質(HS)と消毒副生成物生成能(DBPs-FP)の関係解明を目的とした.湧水,湖沼水,河川水21試料を分析し,HSをFA様物質1種とHA様物質3~4種に詳細分離できた.分離成分の蛍光強度は,湖沼水でTHMs,HAAs,CH各FPと,河川水でTHMs-FPと強い相関を示した.高濃度臭化物イオン存在下ではTHMs-FP予測に影響が見られたが,本手法はDBPs管理高度化に資する可能性を持つ.

  • 長濱 祐美, 福田 聡, 福島 武彦
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25032
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     2024年に霞ヶ浦における底層溶存酸素量(底層DO)の環境基準値が4mg/L以上と定められたことを受け,霞ヶ浦全域における底層DOの低下頻度とその空間分布を明らかにした.検討には2005~23年度に実施された月1回調査結果を用いたほか,連続観測データを用いて月1回調査の代表性を評価し,また環境基準の評価方法に準じた連続観測評価値と比較したほか,低下要因についても検討した.その結果,底層DOの低下頻度には地点差があり,低下頻度の面的分布が明らかになった.連続観測の結果からは,月1回調査でも傾向把握は可能なものの,低下頻度の高い場所では連続観測による補完が重要であると示唆された.低下頻度は水深と強く関係したが,4m以深の地点では地形や水質,底質との明確な関係は認められなかった.

  • 北村 友一, 阿部 翔太, 岡安 祐司
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25033
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     河川流量減少時の水質変化特性を明らかにするため,多摩川をケーススタディとし水文水質DBを用いて流量と水質の関係を解析した.中流の日野橋から下流で流量減少時にCOD,TN,NO3-N,亜鉛,TP,PO4-P,BOD濃度が高くなった.L-Q式で近似しその係数を地点間で比較したところ,係数b値は日野橋で最も低下した.河川水に占める下水処理水の割合を求め,流量,下水処理水割合と各水質濃度との相関を主成分分析で解析した.その結果,上流と中下流域の水質観測地点間で異なった.日野橋から下流では第一主成分が流量と下水処理水割合と関連し,COD,TN,NO3-N,亜鉛,TP,PO4-P,BODは下水処理水割合の近くにプロットされた.流量減少時は下水処理水の割合が高くなるため,各水質濃度が上昇すると考えられた.

  • 杉原 幸樹, 管原 庄吾
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25034
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     自然光条件で硫化水素を含む無酸素塩水800Lに溶存酸素の供給処理を行った後,30日間の水質変化を追跡した.6日目に緑藻のクロレラが優占し,溶存態の炭酸84%,アンモニウム態窒素75%,オルトリン酸態リン60%がバイオマスとして固定された.この場合,窒素制限となりリンが残存すると示唆された.一方で無処理の場合は6日目まで硫化水素が残存し,硫化水素消失後に炭酸減少が確認され,細菌等の細胞形成で消費されると推察された.20日目にはクロレラが増殖したが,溶存酸素供給した場合よりも増殖量が少なかった.溶存酸素で初期処理すると,短時間で植物プランクトン増殖が起こり,水中の溶存栄養塩や炭酸の削減効果も高いことが確認された.これよりバイオマスの利用および処理水を環境用水として利用できる可能性が示唆された.

  • 藤井 大地, 小島 駿, 齋藤 利晃
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25035
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,微細藻類と硝化細菌の共生系による窒素処理を従来の活性汚泥法による下水処理に付加することで,曝気エネルギー削減及び亜酸化窒素(N2O)排出抑制に資するべく,微細藻類と硝化細菌の共生系における反応槽の設計や運転制御のための工学的指標を提案し,実験による基礎的検証を行った.生理学的な特性が異なることから安定的な培養・制御が難しいとされる微細藻類と硝化細菌の共生系について,相互の代謝や活性に与える影響が大きいとされる光強度と両者の混合比及び細胞密度に着目し,それらの指標が窒素除去速度やN2O排出特性に与える影響を室内実験により評価した.Chlorella sp. MK201株と硝化細菌優占汚泥の共生系による検証の結果,特に2000Luxの照度条件において硝化細菌単独に比べ2倍程度のアンモニア除去速度が観察されるとともに,24時間におけるN2O生成量は 80%以上抑制される結果を得た.

  • 堀之内 慎吾, 大下 和徹, 深堀 秀史, 高岡 昌輝, 蓮中 勇也, 坪井 博和
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25036
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,100°C以下の加温処理が下水汚泥脱水を促進するメカニズムを,種々の条件での加温脱水実験を行うことで明らかにするとともに,システムのエネルギー得失を試算して加温脱水の実機への導入可能性を検討した.その結果,下水汚泥の加温による脱水促進メカニズムは,主に初沈濃縮汚泥に含まれる繊維状物が,スケルトンビルダーとして作用して,汚泥中に流路を確保し,それを加温によって粘度が低下した汚泥中の難脱水性水分が通過することで,脱水性が向上したことが主要因であり,有機物の可溶化の影響は限定的であることを明らかにした.また,加温脱水熱源を汚泥焼却廃熱で補うことを想定すると,エネルギー得失の観点からは,前加温処理より,加温2次脱水が最も望ましい条件であり,システムとして成立する可能性が高いと考えられた.

  • 馬 澤華, 申 俊昊, 高橋 新, 陳 玉潔, 李 玉友
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25037
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,季節変動や温度変化により水質が大きく変動する養豚排水に対応するため,嫌気性消化(AD),部分亜硝化(PN),嫌気性アンモニア酸化(ANAMMOX),および凝集沈殿を組み合わせた統合処理システムを構築し,その処理性能と運転安定性を実験的に検討した.AD反応槽では,CODの約72%がCH₄としてエネルギー回収され,PN反応槽ではpHとアルカリ度の制御を通じてNO₂⁻-N/NH₄⁺-Nが1.32付近に維持され,ANAMMOX反応に最適な条件が整備され,最終的なTN除去率は92.7%を達成した.さらに,凝集剤として塩化鉄を使用した場合,pH4.5,添加量200mg-Fe/Lの条件下で,COD除去率は71.0%,色度除去率は92.2%であった.最終処理水のCODは331.5mg/L,Pt-Co色度は278.6であり,畜産排水の排出基準を満たした.これらの結果から,本統合システムは高濃度有機物およびアンモニア性窒素を含む養豚排水に対して高効率かつ省エネルギーな処理性能を有し,実用化に向けた有望な技術であることが示された.

  • 松元 大地, 羽深 昭, 木村 克輝
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25038
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,実都市下水を原水としてベンチスケールMBRの連続運転を行い,膜ファウリング発生の初期段階における膜面の変化を経時的に分析した.不可逆的膜ファウリングを引き起こす成分は溶解性微生物代謝産物(SMP)と,膜面堆積物は汚泥上澄み成分と化学的性質が類似していた.XDLVO理論に基づき,MBR膜ファウリングの初期段階における発生機序を考察した.SMPと新膜の間にはエネルギー障壁がほとんどないことが明らかになり,まずSMPが膜面に吸着することが推察された.SMPの吸着により膜表面特性が変化した結果膜と汚泥上澄みの間のエネルギー障壁が減少し,汚泥上澄み成分の膜面への付着が促進されてMBR初期ファウリングが進行するものと考えられる.これらのXDLVO理論に基づく考察はファウリング成分の化学分析結果とも整合していた.

  • 山本 光一, 宮田 将輝, Shanshan QING , 竹内 希, Bei ZHANG , 藤井 学
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25039
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究ではプラズマ処理によるPFASの分解挙動を異なる濃度条件下で比較した.高濃度条件(50-150μg/L)での分解挙動について,処理開始30分ではPFOSの方がPFOAに比べて分解速度が大きかったが,4時間後には両PFASで60-80%程度の分解率が確認された.低濃度条件(1μg/L)では,リアクター容器に付着したPFASをメタノールで洗浄し濃度補正を行った結果,PFOSとPFOAともにほとんど分解されないことが明らかとなった.これはPFAS濃度がサブμg/Lレベルになると,泡形成や気泡によるPFASの水表面への輸送が効率的に行われず,界面でのプラズマ分解が有意に生じていない可能性を示す結果であり,装置設計等の技術改善が今後の課題になる.

  • 松崎 文香, 太田 真帆, 春日 郁朗, 栗栖 太
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25040
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     標準物質による検量線を用いずに,LC/MSデータから濃度を推定する機械学習ツールが近年開発されてきている.本研究では,大容量直接注入LC/MSのデータを用いて,機械学習ツールの定量性を評価した.また,機械学習ツールによる推定結果を,検量線データベースを用いて定量するターゲットスクリーニング(TS)分析と比較した.真の値との推定誤差が10倍以内となったのは全データの75%で,全体の98%が10倍以内となったTS分析には及ばなかった.しかし,TSの定量値よりも推定濃度が真値に近かったものも全体の20%あった.全データの75%が10倍以内で推定可能なことから,機械学習ツールによる濃度推定は,初期のスクリーニング分析には一定程度利用可能といえる.

  • 矢野 涼介, 鈴木 裕識, 岩崎 雄一, 内田 典子, 木村 辰徳
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25041
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     フミン酸(HA)やフルボ酸(FA)を含むフミン質の環境中の存在実態(プロファイル)の把握を主目的として,LC-QTOF/MSと三次元蛍光分析法(EEM)を組み合わせて,既知の段戸フミン質標準試料や塩素処理前後の環境水試料の変化から,フミン質関連の物質情報Component(CP)の抽出手順を構築した.見出した17種CPを対象とした実環境水(n=24)のLC-QTOF/MSデータ解析の結果,塩素処理後において,FA関連CPは全て減少しやすく,HA関連CPは地点によっては残留性成分が多いなど,従来のフミン質指標と同様に各地点のプロファイルをよく表現した.同一データ測定手順で得られる共存の新興有機汚染物質の分析結果も同時解析可能であり,効率的かつ多機能な水質分析手法としての活用が期待される.

  • 佐藤 公亮, 菊田 大輔, 伊藤 来夢, 横田 拓海, 伊藤 朋子, 鳴海 貴之, 竹花 和浩, 笹本 誠, 石川 奈緒, 伊藤 歩
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25042
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究では下水処理水に含まれる6種類の抗菌薬を対象に,下水処理放流水および放流先河川における抗菌薬濃度の実態把握と,リスク指数に基づく環境リスク評価を行った.クラリスロマイシンは放流水中で単独でも高リスクと評価されたが,放流先河川との合流により希釈されることで,リスクは低減した.また,放流口より下流に自生する水生植物中の抗菌薬濃度の分析を行い,水生植物への吸収特性と水環境中での残留性との関係について検討した.その結果,レボフロキサシンは濃縮係数が最も高く水生植物中に吸収されやすく,サルファ剤は水生植物中に吸収されにくい可能性が示唆された.地点間の負荷量を比較することで河川流下中の抗菌薬の残留性を評価した.

  • 窪田 恵一, 浅井 靖史, 渡邉 智秀
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25043
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,CO2の資源化と底質改善の両立を目標として堆積物微生物燃料電池にカソード槽を設置し電位制御を行うことでカソード上でメタン生成を行う堆積物微生物電解槽を構築し,そのメタン生成能と底質改善性能の評価を行った.その結果,カソードでのメタン生成速度は,4.6NL-CH4/m3/dayを発揮し,発生した電流のうち約80%がメタン生成に利用されていた.底質改善性能は,堆積物微生物燃料電池に比べ,有機物分解が促進され,間隙水中の有機物濃度の大幅な低減が可能であった.また,間隙水中のリン酸濃度の低減は堆積物微生物燃料電池とほぼ同程度であり,カソード電位を制御する場合でも堆積物微生物燃料電池と同程度かそれ以上の底質改善効果を発揮することが可能であった.

  • 伊藤 司, 尾池 佑太, 石倉 岳, Chem Chanchao , 青井 透
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25044
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     計画堆砂量を超過したダムは国交省所管ダムの約1割(約50ダム)にも及ぶ状況であり,ダム堆砂の対策は喫緊の課題である.課題解決を困難にしている主要因は堆砂中のシルト・粘土の利用価値が認められていないことにある.本研究では,ダムから採取したシルト・粘土を農業利用することを想定し,ダム堆砂を混合した土壌を用いて植物生育試験を行った.ダム堆砂を混合した土壌あるいはダム堆砂を資材化したものを混合した土壌は,植物の生育促進に働くことが示され,土壌に対してダム堆砂を最大で約45%利用することができた.また,ダム堆砂から植物に有用な微生物が複数見つかった.ダム堆砂を用いると植物体内のカロテノイド量が上昇し,活性酸素(過酸化水素)の生成が抑制されたことから,このことが植物の成長促進をもたらしたと考えられた.

  • 赤尾 聡史, 小川 颯太
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25045
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     キトサンは多様な機能を有することから,中性の水に溶解する低分子キトサンの製造を目的にキトサン加水分解を検討した.ここでは,由来の異なる3種類のセルラーゼによるキトサン加水分解を行い,そのうちの1つのセルラーゼをガラスビーズに固定化してカラム型リアクターによるキトサン加水分解を試みた.いずれのセルラーゼにおいてもキトサン加水分解は可能であり,シランカップリング剤を用いてガラスビーズに固定化したセルラーゼのセルロースとキトサンの加水分解能を確認した.セルラーゼ固定化ガラスビーズを充填したカラムにキトサン溶液を循環させる操作では,循環回数の増加でキトサンの低分子化を確認した.生成した加水分解キトサンを単なるガラスビーズ充填カラムに流し,分子量の違いが溶出時間に影響を及ぼす分子ふるい効果を確認した.

  • 鵤 孝志郎, 小宮 哲平, 中山 裕文, 奴留湯 誉幸, 工藤 慶太, 福岡 大造
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25046
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     一般廃棄物の最終処分量は近年減少しつつあるものの,最終処分場の容量には限りがあるため,最終処分量の多くを占める一般廃棄物焼却灰の有効利用が望まれる.一般廃棄物焼却灰には土壌環境基準値を上回る重金属類が含まれている場合が多く,そのことが一般廃棄物焼却灰を路盤材等の土木資材として再資源化する上での阻害要因の一つとなっている.本研究では,貴金属等の金属含有量が高いことが知られている落じん灰を含まない焼却灰に着目し,その焼却灰ならびにその焼却灰を材料に作製した人工石の環境安全性を土壌環境基準への適合性により評価した.その結果,落じん灰を含まない焼却灰は土壌環境含有量基準を満たすこと,人工石は六価クロムを除き,土壌環境溶出量基準を満たすことを示した.

  • 王 旭, 田 豊, 覃 宇, 李 玉友
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25047
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究の目的は、下水汚泥のメタン発酵におけるアンモニア阻害問題に着目し、その発生過程を再現しながら、阻害現象を明らかにするとともに、阻害濃度、阻害影響およびモニタリング指標との相関関係を検討することで、今後の制御方法および自動監視システムの構築に関する基礎的知見を提供しようとするものである.中温と水理滞留時間(HRT)30日の完全混合型反応槽を用いて、炭酸水素アンモニウムを添加した下水汚泥を基質としたメタン発酵の長期連続実験を行い、阻害過程を再現するとともに各指標を連続的に監視してその関連性を解析した.その結果、アンモニア態窒素(TAN)濃度上昇に伴う阻害発生過程を、バイオガス生成、有機酸の蓄積およびpHとアルカリ度の変動などの指標で把握できた.またTANの阻害影響をモデルで表現し、阻害の発生濃度および異なる反応に対する影響を解析した上で、オンラインモニタリング指標である pH および電気伝導率からTAN濃度と阻害発生を推定する方法を検討した.

  • 真鍋 弘生, 日高 平, 中村 真人, 川口 康平, 野村 洋平, 藤原 拓
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25048
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     農村地域にて再生可能エネルギーの普及が期待される中,太陽光や風力による発電は気象条件などによる変動が課題である.廃棄物系バイオマスのメタン発酵への基質投入を制御することでバイオガス発電量を調整する技術の開発を目的として,乳牛ふんおよび乳酸のメタン発酵特性を評価した.回分式貯蔵実験により乳牛ふんのメタン発酵前の貯蔵中の分解特性を評価した結果,乳酸を添加することで,メタン生成を14日程度まで抑制できることが示された.乳牛ふんの連続式メタン発酵実験にて基質投入間隔を1日~7日で変化させた条件下でのバイオガス発生特性が,一次反応に基づく反応速度モデル式で再現された.モデル式を用いた試算により,基質投入間隔を調整することで,牧場での夏場の電力需要変動に応じたバイオガス生成を制御できる可能性が示された.

  • 秋元 真也, 日高 平, 藤原 拓
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25049
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     日本の2050年のカーボンニュートラル(CN)に向けては,電気のみならず熱のCN化が重要である.本研究では,都市ガスのCN化に貢献する技術であるin-situバイオメタネーションを下水処理場の消化槽に導入した場合の経済性・環境性を評価した.経済性について,同技術で得られるメタンを熱量調整・付臭処理して製造した都市ガス13Aの単価は248円/Nm3となり,日本ガス協会が示す2030年目標120円/Nm3を上回った.本技術によって得られるメタンを都市ガスとして利用するにあたり,目標単価の見直しが望まれる.環境性について,電力が完全に脱炭素化された場合,モデルとした処理水量13万m3/日の都市型下水処理場の二酸化炭素排出の28%相当量を削減可能なCN都市ガスを外部供給可能であることが示された.

  • 川田 滋久, 平賀 夕佳, 城田 昭彦, 大月 伸浩
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25050
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     下水中のウイルス検出は,下水中に含まれるウイルスが微量なため,濃縮を中心とした前処理が必要であり,人手がかかるという課題がある.その課題解決のため,遠心分離操作不要な分析手法を開発し,東芝・DC法とした.さらに,本手法を基にした前処理自動化装置を製作した.本論文では,東芝・DC法の開発から前処理自動化装置の製作過程,さらに前処理自動化装置の精度確認を行ったのち,下水中(都市下水・工場下水)のウイルスに対し,自動前処理分析と手動前処理分析のq-PCR測定結果の比較評価を行った.結果から,本装置が手動前処理分析と同等の感度で分析を行うことが可能であることが示された.

  • 吉本 龍晟, Sovannlaksmy SORN , 井原 賢
    2025 年81 巻25 号 論文ID: 25-25051
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
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     本研究では高知県の浦戸湾水域から単離した大腸菌の薬剤耐性の調査と起源推定を行った. 全302株の感受性試験の結果からアンピシリンとセフォタキシムに対する高い耐性率が確認され, ESBL産生大腸菌も検出された. 降雨時と晴天時の耐性率は多くの地点で同程度だが, 耐性パターンに違いがみられた. 浦戸湾の海水が遡上する廿代橋での詳細な調査から, 晴天時の満潮時と比べて降雨時の満潮時は耐性率が高いことが分かった. また, 系統解析の結果からA, B1およびB2が多く検出された. 大腸菌MSTマーカーの解析から鶏とヒトマーカーが多く検出された. これらの結果から浦戸湾周辺河川の大腸菌はヒトや畜産糞便, および路面排水や農地からの流出など面源に由来する可能性が示唆された.

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