土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
81 巻, 26 号
特集号(環境システム)
選択された号の論文の31件中1~31を表示しています
特集号(環境システム)論文
  • 中河原 大樹, 中山 裕文, 清野 聡子
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26001
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
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     本研究は,長崎県対馬地域における漁業者による海洋ごみの回収活動の実態とその貢献を明らかにすることを試みた.さらに,2020年から2050年における対馬市の海洋ごみ回収事業の持続可能性を評価するための環境・経済モデルをシステム・ダイナミクスにより構築し,BAUを含む4つのシナリオにより評価した.その結果,対馬では海洋ごみの回収量の97.0%を漁業者が担っており,さらに回収効率は全国平均を上回る高い値であることを明らかにした.システム・ダイナミクスによる環境経済シミュレーションの結果,現状のまま漁業者数が減少した場合,海洋ごみ回収量が現状の7,968m³から2050年には4,172m³へ減少することを明らかにした.また,対策シナリオとして,漁業者の回収負担の増加,産業廃棄物処理業者への委託,経済的誘引による漁業者数維持の3つを評価した.その結果,今後も持続的に対馬市における海洋ごみ回収事業を継続するには,経済的誘引による漁業者数維持が最も効果的であることが示唆された.

  • 大河内 恵子, 大城 温, 橋本 浩良
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26002
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     沿道のSPM,CO及びSO2の濃度の予測評価で使用する年間2%除外値換算式のパラメータ推定では,自排局の値から一般局の値を差し引いて道路寄与相当濃度を算定している.近年,測定局が減少する一方,一般局の値が自排局の値を上回る場合も生じ,道路寄与相当濃度の算定が困難となる場合がある.そこで,道路寄与相当濃度を用いた換算式でパラメータ推定可能な有効データ数の確認と,道路寄与相当濃度を用いない式の検討を行った.有効データ数の確認では,2012年度から2021年度の自排局の測定値のうちSPMは55.6%,COは88.6%,SO2は85.4%がパラメータ推定に使用できないことがわかった.道路寄与相当濃度を用いない式の検討では,SPM,CO及びSO2の全てにおいて決定係数は道路寄与相当濃度を用いる式よりも道路寄与相当濃度を用いない式の方が高く,説明力が高いと考える.

  • 竹中 颯太郎, 栗栖 聖, 柳原 駿太, 風間 聡, 福士 謙介
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26003
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     地球温暖化の進行を背景に,緩和と滴応のコベネフィットを活用した気候変動対策の璽要性が増大している.河道植生伐採は主に洪水被害軽減を目的に実施されるが,伐採した植生をバイオマス発電および熱供給に利用することで温室効果ガス(GHG)排出削減効果が得られる可能性があるため,一連のプロセスは気候変動への緩和と涸応の両側面の便益が期待される.本研究では,一連のプロセスのインベントリ作成や植生量量推計に基づき,ライフサイクルアセスメントによってGHG排出削減量を推計し,その結果を洪水氾濫解析によって評価された年期待洪水被害軽減額と比較した.その結果,洪水被害軽減効果に加えて緩和効果が得られることが定量的に示された.また,河道植生伐採が従来の治水事業にとどまらず,緩和策としての位置付けも可能であることが示唆された

  • 岡田 大翔, 長谷川 正利, 白川 博章, 谷川 寛樹
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26004
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     気候変動の影響による極端現象の頻発化を背景として,流域治水の重要性が高まっている.本研究では,日本全国を対象に,洪水による家屋被害額,河道掘削量,木造戸建住宅の建て替え割合の推計と空間分析を行うとともに適応策の実現可能性を検討した.推計の結果,洪水による家屋被害額は基準気候において約180兆円,将来気候においてSSP1-2.6では約194兆円,SSP5-8.5では約212兆円と見積もられ,将来的な被害の増加傾向が示された.また,木造戸建住宅の建て替えに際してピロティ構造を導入する適応策については,2050年においてSSP1の場合で約24%,SSP5の場合で約26%の導入可能性があることが分かった.都市部では被害額が大きいものの建て替えが進むため,対策を実施しやすい一方,都市部以外では被害が大きい場合にも建て替えが進まず,対策の実施が遅れる可能性がある.

  • 小杉 素子, 馬場 健司
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26005
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,太陽光・風力発電施設の立地地域住民に対するWeb質問紙調査(N=3,400)を通じて,発電施設に対する評価,不安・期待の変容,および立地プロセスへの関与意向の構造を明らかにした.発電施設の評価は種類によって異なり,太陽光発電に対する否定的評価が相対的に強いこと,施設建設前後で不安・期待ともに減少傾向にあることが示された.生活圏内の発電施設の有無により立地プロセスに対する一般的な関与機会の望ましさや自分自身関与意向に差が見られ,自分自身の関与意向は一般論に比べて限定的であった.一般論と個人的関与意向により回答者を4種類(活動的参加層,潜在的参加層,観察層,無関心層)に分類し,層により立地プロセスにおける合意形成手続について評価が異なることが示された.

  • 豊田 知世, 三浦 秀一, 鶴間 らいか, 馬場 健司
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26006
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,中止された風力発電事業を題材に,反対団体の主張内容と政治活動の特徴を明らかにした.島根県と山形県の市民団体や全国的なNGOのウェブサイトを中心に分析した結果,以下の知見が得られた.第一に,島根県の事例では,騒音や景観への懸念から始まり,土砂災害や生態系へと論点が拡大し,要求水準が高まっていく反対運動のパターンが確認された.第二に,団体はウェブサイトでの情報発信に加え,行政や議員への直接的なロビイングを積極的に行い,請願書や署名を提出し,地元メディアも活用して影響力を高めている.第三に,全国的なNGOは,専門家による科学的根拠を提示したり,審議会の委員になったりなど,より専門的な手法で政策決定に影響を及ぼしていることが特徴として挙げられる.

  • 土井 浩平, 古崎 晃司, 木村 道徳, 馬場 健司
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26007
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究では, 気候変動に関する議論を支援するため, 知識グラフによる因果構造可視化のためのオントロジーの構築手法を提案する. 提案手法では, 気候変動に関する文書を基に, 議論の支援で必要と考える「原因」「影響」「影響予測」「対策法」の4種類の因果関係に焦点を当て, 1353の概念と1715の関係から成るオントロジーを構築した. このオントロジーを用いることで,1) 従来よりも広範囲の知識グラフが生成できること, 2) 可視化された因果構造が適切であること, 3) ワークショップでの試験的な利用で専門知識を持たない人への理解促進に寄与することが確認され, 提案手法の有用性が示された. 一方で多様な視点を含む文書の収集が必要であることも確認された. 今後,本成果を用いたオントロジーのさらなる拡充や, オントロジー自動構築手法の基礎情報としての活用が期待される.

  • 喜古 響, 長谷川 正利, 白川 博章, 谷川 寛樹
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26008
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     循環型社会の構築に向けた取り組みや法制定により,建設副産物であるコンクリート塊やアスファルト・コンクリート塊の再生利用率は着実に向上してきた.しかし,再生材の主な受け皿である道路インフラへの投入実態は自治体単位での推計にとどまっている.今後人口減少が加速する日本において,再生材の需給バランスは大きく変動する可能性があり,再生材の需給バランスを空間的に検討することは,循環型社会を維持する上で非常に重要である.本研究では同一性判定手法を開発し,道路インフラの建設資材投入量を推計することで,空間的需給バランス解明の足掛かりとした.同一性判定結果は統計資料と整合しており,本手法が資材分布や動向を空間的に把握する上で有効であることが示された.一方,推計対象の限定性や妥当性評価の限界が今後の課題である.

  • 河上 秀太, 中山 裕文, 柴田 徹, 井上 繁則, 大迫 政浩
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26009
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     現在の廃棄物処理システムでは,多様な材質の混合や,汚れの付着等がある低品位なプラスチックの一部が環境的・経済的に最適な方法で処理されていない.このような低品位プラスチックの有効利用方法の1つとして,一般廃棄物焼却残渣,不燃残渣の溶融分離プロセスの熱源としての有効利用が挙げられる.そこで,本研究では,福岡県を対象として焼却残渣,不燃残渣の溶融分離プロセスにおいて,低品位プラスチックの有効利用を想定し,処理コスト,温室効果ガス排出量,最終処分量への影響を評価するためのLCAを実施した.その結果,現状の処理システムから,低品位プラスチックを溶融分離に有効利用するシステムに変更すると,CO2排出量は38.2%増加するものの,処理コストを34.5%,最終処分量を99.3%削減できると試算された.

  • 丹羽 倫太郎, 長谷川 正利, 白川 博章, 山末 英嗣, 谷川 寛樹
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26010
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     近年,都市人口の増加に伴い進行する都市化の過程において,生産地と都市のような消費地の空間的距離が拡大しつつあり,その結果として,生産地における環境影響が過小評価される傾向にある.本研究では,採掘から製造までの全てを採掘活動量で換算したTMR(Total Material Requirement,関与物質総量)を用いてこれを評価する.1970年から2020年の名古屋市中心部の建築物を対象とした経年データベース(4d-GIS)を構築し,TMRを評価するとともに,都市の成長にともなうTMRの変化を検討した.その結果,対象期間内でマテリアルストックは3.5倍,TMRは約3.0倍となっていた.また,全量がリサイクルされたと仮定すると,最大79%のTMRが削減でき,資源投入のまちづくりと連動した時間的,空間的な偏りを把握し,リサイクルに寄与することの必要性が示された.

  • 山田 希, 和田 有朗
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26011
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     市民の現在の菜食の取り組みの実施状況の把握や,菜食導入方法の探索について,アンケート調査とその結果の分析に基づいた考察を行った.その結果,代替肉を取り入れる菜食行動や肉を減らす菜食行動は,菜食が身近になることが重要で,イメージしやすい具体的な行動の提案をすることが効果的であると考えられた.菜食を普段から好む人は,菜食行動を受け入れやすい傾向にあり,菜食を推進するには,ベジタリアン食・ヴィーガン食の試食を行うことで,菜食を身近に感じてもらうことが重要だと考えられた.さらに,外食時に植物由来商品・メニューを選択することにつながるポジティブな情報提供が重要だと考えられた.

  • 渡部 守義
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26012
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     融雪剤や農薬などは土壌に直接散布されることで,生態系に悪影響を及ぼす可能性がある.化学物質に対する毒性については水生生物に関する毒性情報が中心であり,土壌生物に関する情報は不足している.そこで本研究ではOECD TG207に準拠して人工土壌を用いたシマミミズ(Eisenia fetida)の14日間の急性毒性試験を行い融雪剤・凍結防止剤7種類,地盤改良材1種類,農薬2種類の半数致死濃度LC50を調べた.融雪剤・凍結防止剤は1g/kg以上で影響が見られ,毒性は同程度であった.地盤改良剤(ポルトランドセメント)は高濃度でpHが上昇し,それに伴う死亡率の増加が確認された.農薬は他の薬剤と比較し毒性が高くLC50は殺虫剤で0.11g/kg,除草剤で0.03~0.2g/kgであった.本研究では,既存の水生生物中心のリスク評価体系を補完し,多様な生物を用いた生態影響評価のための知見を示すことができた.

  • 梶谷 義雄, 今村 正裕, 中野 大助
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26013
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,水力発電が有する需給調整力,再生可能性,リクリエーション効果などの多様な価値を評価するために仮想市場評価法(CVM)を用いた分析を行った.特に,化石燃料を用いる発電方式との比較で発生する便益を水力プレミアムと定義し,その推計を行った.この際,再生可能性が貢献するプレミアムは明確に分離するとともに,調整力やブラックアウトスタートに関する説明などのナラティブを被験者毎に変更することで,それらが水力プレミアムに与える影響を分析した.2021年度は4397人,2023年度は5271人を対象に調査を行った結果,水力プレミアムはそれぞれ平均3.5%,2.5%(中央値3.4%,2.4%)となり,他の再生可能エネルギープレミアムよりも,約0.6%(中央値では0.4~0.5%)高くなった.ナラティブの影響についても,水力のレクリエーション効果や希少動物保護に関するナラティブを導入したケースが最も高くなるなどの傾向が得られた.この種の検討を継続することで,水力エネルギーの保全・開発・再開発のための便益評価や,水力の価値を適切に理解するために市民が獲得すべき知識やその情報提供方法の検討に役立つことが期待される.

  • 堀 啓子, 松村 悠子, 芳賀 智宏, 齋藤 智美
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26014
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     環境問題の深刻化に伴い,地球環境が危機的状況にあることに対して慢性的に強い心理的苦痛を抱くストレス状態,エコ不安(eco-anxiety)が人々の間に広がっている.本研究はHogg Eco-Anxiety Scaleを用いて複数の環境問題に対する日本のエコ不安の実態を調査し,エコ不安の要因分析と,エコ不安の人生への影響や対処行動との相関分析を行うことで,エコ不安の要因と有効な対策を探索することを目的とした.結果として,日本においてエコ不安を少なからず感じる人々が多数派である実態や,世代によって異なるエコ不安の要因や対処行動が明らかとなり,人々のエコ不安を緩和するための方策が提案された.

  • 安田 希亜良, 石澤 沙耶香, 瀧 健太郎
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26015
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,旧川湖沼の連続性回復がもたらす「流域治水(洪水リスク低減)×自然再生(生物多様性向上)」の統合的な効果(Eco-DRR効果)の評価法を提案した.具体的には,旧川湖沼の貯留機能が治水にどの程度寄与するのかを氾濫解析により定量化し,同時に,湿地性鳥類(タンチョウ Grus japonensis)を指標とした生息適地評価を行うことで,治水と生態系保全の両立を目指した施策の検討を行った.内外水同時考慮可能な氾濫モデルを用いた結果,旧川湖沼群では浸水深が増加し,下流域の住宅地では浸水深が減少することが確認され,治水機能の向上が示された.また,営巣適地モデルでは,容易に取得可能な地形データを用いるモデルと,水理諸量を加えたモデルの両方で高い再現性が得られ,具体的な適地が特定された.西沼・東沼を対象に高解像度の氾濫解析を行い,微高地造成などの施策を提案した.

  • 山本 直輝, 溝口 冬音, 馬場 健司
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26016
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,メガソーラー開発におけるコンフリクトについて,新聞記事や環境影響評価プロセスに関する行政情報,SNSのポストのデータベースを構築して横断的な分析を行い,対照的な結果に至りつつある事例を対象として文献調査により詳細な事例分析を行った.得られた知見は以下のとおりである.第1に,主な論点として,土砂災害・水害リスクに対する懸念が突出して多く,景観破壊への懸念,水質・水資源・漁業環境への懸念と生態系への懸念が続く.第2に,多くの場合,反対組織は地元住民が形成したものであるが,一部には必ずしもそうではない可能性もある.第3に,ネット世論が現実の世論にどのような影響を及ぼしたかは判然としないが,一般的にマイノリティのマジョリティ化を生む可能性に留意する必要がある.

  • 鬼束 幸樹, 夏山 健斗
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26017
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     ニホンウナギの個体数減少の一因としてダムや堰の取水口への迷入が挙げられる.迷入防止対策の一つに,魚の忌避行動を誘発させる気泡膜の設置が挙げられる.数魚種の気泡に対する忌避特性がある程度解明されつつあるが,ウナギ属ついてはほぼ未解明である.本研究では気泡量を0~25(l/m2·s),開水路流の全長倍流速を0.5~3.5(1/s)の範囲で変化させ,平均全長300±23mmの養殖ニホンウナギの気泡に対する行動を観察した.その結果,気泡量が2.5(l/m2·s)以上の領域を忌避し,全長倍流速が持続速度未満と推定される0.5~1.0(1/s)の場合にその傾向が顕著となった.今後,他の全長のニホンウナギに実験対象を拡張し,本研究で得られた知見が全長の異なる銀ウナギにも適用可能か否かを検証する必要がある.

  • 矢田谷 健一, 伊藤 和磨, 成田 朝登, 丸居 篤, 東 信行
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26018
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     青森県内の既設アイスハーバー型魚道を対象とした現地調査を実施した.この結果,プール間水位差Δh=10cm程度の条件では,隔壁を遡上できず下流側に滞留する個体は確認されなかった.また,調査においてカジカ大卵型の隔壁遡上行動の水中撮影に成功し,以下のことが明らかになった.1) カジカは,底面または壁面に沿って越流部に近づき,定位と前進を繰り返しながら越流部を遡上すること,2) 潜孔下流の下部両脇の静穏域で待機後に潜孔内に進入すること.さらに,潜孔内の速い流れ場を通過する際,カジカの多くが高さ2cm以下のわずかな突起物の背面等の相対的に流速が遅い空間で定位しながら前進すること.これらの結果から,速い流れ場においてカジカの遡上を容易にするためには,底面に起伏を設けて局所的な減勢空間を創出することが重要であると考えられた.

  • 伊藤 和磨, 矢田谷 健一, 高橋 直己, 田原 大輔, 丸居 篤, 東 信行
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26019
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     通し回遊型のカジカ類は,河川遡上期の体サイズが小さいことから,河川横断構造物や魚道の遡上が困難となる事例が報告されている.一方,カジカ類の魚道内の遡上行動に関する知見は極めて少ない.そこで本研究では,我が国において最も一般的な魚道形式である越流式魚道の実寸大相当の越流部模型を用いて,河川遡上期のカジカ小卵型当歳魚(平均標準体長2.3cm)の遡上実験を行った.実験の結果,プール間水位差Δh=10cm以上の条件では,供試魚は越流部を全く遡上できず,流速1.0m/s程度の越流水脈進入時に流下した.一方,Δh=5cmの条件では,遡上を試みた供試魚のうち半数以上が遡上に成功した.また,遡上行動時に流速0.5~0.7m/s程度の流れ場で定位する個体が観察された.

  • 河口 洋一, 平松 隼人, 安達 直之, 山城 明日香, 佐藤 雄大
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26020
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,徳島県鳴門市の水田地帯において,コウノトリが繁殖するのに必要な餌生物量が存在するかを明らかにすること,稲田と蓮田という環境の違いが,コウノトリの餌生物量や群集組成に与える影響を明らかにすることを目的とした.調査は2015年と2016年の6~7月の間に,たも網によるすくい採り調査を行った.解析の結果,稲田と蓮田における水生生物の生物量には有意差が認められなかった.一方で,それぞれの水田景観における種組成には違いが見られた.このことから,稲田と蓮田という水田景観の違いはコウノトリの餌生物量に影響は及ぼさないが,種組成には影響を及ぼす可能性が明らかとなった.

  • 平井 雄理, 中島 拓未, 大森 涼太, 末次 優花, 鈴木 真理子, 伊東 英幸
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26021
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     奄美大島では第4次環境省レッドリストで絶滅危惧IB類に分類されているアマミノクロウサギ(Pentalagus furnessi)のロードキルが急激に増加しており,今後,有効なロードキル対策を検討するうえでロードキル発生要因を明らかにしていく必要がある.既往研究では,アマミノクロウサギのロードキル多発区間におけるロードキル発生要因に着目した研究が進められているが,奄美大島全域を対象としてロードキルが発生しやすい環境要因やエリアを分析した研究は行われていない.そこで本研究では,MaxEnt(Maximum Entropy Modeling)を用いて,ロードキルリスクが高いエリアや環境要因を特定することを目的とした.その結果,ロードキルリスクが高いエリアは山間部から沿岸部にかけて増大し,沿岸部に幹線道路があるエリアにおいて特にロードキルリスクが高くなることが明らかとなった.

  • 小野寺 亮太, 田島 洋輔, 岡田 智秀
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26022
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     わが国では,第5次環境基本計画を契機に,地域資源を活用した循環型地域づくりが注目されている.特に,森林が国土の3分の2を占めるわが国では,木質バイオマスの活用が積極的に展開されているが,少子高齢化や税収減少が進行する中山間地域では,高額な初期投資を負担してでも施設導入に踏み切ることの意義を見出すことが困難な状況にある.そこで本研究では,中山間地域への木質バイオマス発電施設の導入促進を図るため,同施設を中心としたエネルギー地産地消モデルを提案し,物質循環性や経済性,環境性の3つの視点で評価した.その結果,中山間地域の平均規模製材所を対象としたモデルの実現可能性として,①物質循環の年間収支が確保可能,②二酸化炭素の排出抑制および廃棄物の有効活用に寄与,③経済性改善の必要性の3つの示唆を得た.

  • 山田 航慎, 宮本 善和
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26023
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     生物多様性の損失を食いとめ,自然を再興していくネイチャーポジティブの取組が世界で盛んになりつつある.近年では企業の環境保全への関心が高まっており,地域の生物多様性の保全に関わる企業も多く見られ,このような傾向を把握することが今後のネイチャーポジティブの取組に重要である.本稿では日本における民間企業のネイチャーポジティブの取組の傾向を明らかにすることを目的として,先進的な企業の取組を,活動対象,活動目的,ステークホルダーとの関係,活動内容,リソース,動機,活動規模において統計的に分析した.その結果,製造業を中心にCSV(共有価値の創造)を主な動機として,資材や製品など企業の多様なリソースを活かして活動する傾向が確認された.また,多変量解析によって企業の取組を5つのグループに類型化した.

  • 嶺岸 聖也, 大塚 佳臣, 平松 あい, 後藤 尚弘, 花岡 千草, 荒巻 俊也
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26024
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,地域における脱炭素施策の計画支援方策を構築することを目的として,1)脱炭素化の取り組みの特徴をもとに自己組織化マップを用いて「脱炭素先行地域」を類型化し,2)基本統計からみた脱炭素先行地域クラスターと全国自治体との類似性をコサイン類似度で評価し,3)脱炭素先行地域の取り組みの類似自治体への展開の可能性を考察した.脱炭素先行地域の類型化の結果,再生可能エネルギー導入政策や地域政策特性が類似したクラスターに分類されることを確認した.これらのクラスターと全国の市町村の類似度を評価した結果,地域の特性や政策の方向性が似通った自治体の抽出が可能であること,脱炭素先行地域の取り組みをベストプラクティスとして他の自治体への脱炭素政策を展開することが可能であることを示した.

  • 周 俊男, 田畑 智博
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26025
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,労働需要の観点に基づいて木質バイオマスの供給可能量を推計するためのシミュレーションモデルを開発した.兵庫県を対象地域として,2050年までの木質バイオマスの供給可能量と労働需要を推計した.結果として,兵庫県の林業労働者数は,2033年までは約750人程度で推移する見込みとなった.一方,その後は減少傾向に転じ,2050年には約500人まで減少すると予測された.林業現状の労働需要に基づくと,木質バイオマスの供給可能量は2020年の約10.3万絶乾トン(BDT)から2050年の約5.8万BDTに減少すると予測された.労働生産性の向上や森林施業を改善することで,供給可能量を大幅に増加させることが可能であるが,それでも兵庫県内の需要を完全に満たすことは難しいことがわかった.

  • 石松 一仁, 今西 純一, 木田 幸男, 和田 清栄, 森谷 一彦, 伊勢 紀, 平林 聡
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26026
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,東京都の目黒川流域を対象として,雨庭の導入可能性を費用便益分析の観点から評価した.想定した雨庭の大きさは,1ユニットあたり4.0m×5.0m(20m²)とし,タイプ A(高木型),タイプ B(低木型),タイプ C(石敷型)の3タイプを設定した.費用は建設費および年間維持管理費に基づいて算出し,便益は雨水処理費用の削減額として評価した.費用便益比は,タイプ Aが0.18,タイプ Bが0.24,タイプ Cが0.28となった.ただし,本分析では雨水貯留・浸透以外の生態系サービスについて金銭的評価を行っておらず,緑量の違いも考慮されていないため,費用便益比は低く算出されている.今後は,他の生態系サービスを金額換算し,便益に加えることで,雨庭の便益をより正確に評価することが課題として示唆された.

  • 井上 剛, 田中 良明, 平山 修久
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26027
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,地域メッシュ人口分布,水道統計等の公的データを用いて世帯レベルの空間解像度で水道管網ネットワークを推計する手法を構築した.ここでは,地域メッシュ内で需要家をランダムに配置し,管網ネットワーク形状を全域最小木法により求めることで,市区町村レベルの管路延長を推計できた.構築した手法による将来推計の結果から,国内の人口1万人未満の自治体では住民一人当りの水道管路延長が2040年に1.5倍となり,現状の水道インフラを維持することが困難となることを示した.また,2016年熊本地震,2024年能登半島地震を解析対象として,地震時の管路被害推計に適用した.その結果,管路延長あたりの被害率を1/2から2倍程度の精度で推計することができた.本手法により,水道管路のマッピングデータが入手困難な場合においても,水道管路被害推計を行うことが可能となる.

  • 池田 裕一, 飯村 耕介
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26028
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     山間地域の森林管理が河川流量や水害リスクに与える影響を基礎的に検討するため,秋山川流域を対象に降雨流出氾濫(RRI)モデルによる流出解析を行った.管理率を変化させたシナリオの比較から,管理率が低下するほど河川流量は増加し,ピーク時間は早まる傾向がみられた.特に大規模降雨時に顕著で,ピーク流量は2倍に,ピーク時間差は最大3時間に達した.中流域では森林管理の有無による影響が大きく,周辺の管理状況が流量に強く影響すると示唆された.また表面流は管理された森林では極めて少なかったが,管理されない場合には局地的に無視できない量が発生し,内水氾濫のリスクを高める可能性があることが分かった.

  • 井原 雄人, 林 流石
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26029
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     脱炭素社会の実現のための多様な取り組みを進めるにあたっての合意形成手法として,気候市民会議が注目されている.本研究は,国内で開催された気候市民会議17地域18会議を対象に,情報提供の有無と政策提言の差異の把握を目的とし,運輸部門における専門家からの情報提供と市民からの政策提言の相関について調査した.その結果,自動車や公共交通等に関する施策が多く提案され,貨物輸送に関する施策が少ないことが分かった.また,電動車両に関する施策は充実する一方で,既存車両に関する施策は不十分であった.さらに,施策の実施主体として,行政・企業・市民が役割分担し,気候市民会議を脱炭素社会の実現のためのプロセスの一つと捉え,市民が自らの役割を見出すことが重要であることを示した.

  • 松橋 啓介, 金森 有子, 石河 正寛
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26030
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     脱炭素社会に向けた行動転換を実現するためにはカーボンプライシングが費用効果的である.ガソリン価格が高騰しており,補助金の導入や暫定税率の廃止が求められている状況を踏まえつつ,炭素配当を伴う受け入れられやすい炭素税について検討した.税収のすべてを国民に分配すると,自家用乗用車所有者の負担額が多くなるため反対されやすい.走行距離が中央値より少ない人は負担額がゼロになるしくみにすると,所有者の負担額が低下し,受け入れられやすくなる.また,地域別の炭素配当とすることで,たとえば,年間走行距離が長い傾向のある茨城県の負担額が下がり,地域格差の問題を避けることができる.暫定税率の廃止等の際に炭素税と炭素配当を導入することで,逆進性の小さい形でガソリン需要を抑える政策となることを期待している.

  • 根津 佳樹, 橋本 浩良
    2025 年81 巻26 号 論文ID: 25-26031
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル 認証あり

     エネルギー消費効率の変化を考慮した二酸化炭素(以下「CO2」という.)排出量の把握方法として,道路分野では,走行速度別の排出係数が用いられてきた.近年の車両性能の向上及びハイブリッド車,電気自動車の普及など,車両を取り巻く環境の変化への対応が求められる.そこで本研究では,次世代自動車の普及を見据え,「Well to Wheel」の考え方を参考に排出係数を提案し,有用性と活用に向けた課題を確認した.提案した排出係数から,「ガソリン車・ディーゼル車」,「ハイブリッド車」,「電気自動車」とも,旅行速度が増加すると排出係数は小さくなり,車種区分により違いはあるものの,高速道路では71~77km/h,一般道路では25~55km/hで最も小さくなり,それ以降はほぼ一定であることなどが確認された.今後のCO2排出量の把握に寄与すると考えられる.

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