土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造)
Online ISSN : 2185-6567
ISSN-L : 2185-6567
69 巻, 4 号
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和文論文
  • Paweena JARIYATHITIPONG, 細谷 多慶, 藤井 隆史, 綾野 克紀
    2013 年 69 巻 4 号 p. 337-347
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
     多くの下水道構造物において,コンクリートの硫酸侵食による劣化が社会的な問題となっている.一般に,普通コンクリートでは,硫酸環境のpHが低い場合には,硫酸濃度が同じであれば,高強度なものほど硫酸に対する抵抗性が低いといわれている.これに対して,本論文では,高炉スラグを細骨材として用いれば,硫酸と接するコンクリート表面に剥がれ落ちにくい密実な二水石こうの膜が形成されること,また,密実な二水石こうの膜によってコンクリート内への硫酸の侵入が抑制されることで,コンクリートの耐硫酸性が改善されるために,高強度なものほど硫酸に対する抵抗性が高くなることを示す.さらに,硫酸環境のpHが低い場合には,コンクリートの硫酸による侵食深さと,浸漬期間と硫酸濃度の積との間には,線形関係が成り立つことを示す.
  • 斎藤 豪, 大即 信明, 圓谷 百合子, 早川 康之
    2013 年 69 巻 4 号 p. 348-360
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
     本論文では,オートクレーブ養生したOPC-γ-C2S-ケイ石微粉末系材料(Q)の耐酸性能を評価した.その際,主に試験前後の生成物の変化や試験後の2次生成物に着目することで,耐酸性を有した材料設計における劣化抑制メカニズムの解明を試みた.その結果,粉体中のγ-C2SおよびQの置換率を40%および50%とした供試体は,OPCのみを使用した供試体と比較して約84%質量減少を抑える結果を得た.これは,オートクレーブ養生により供試体表面に生成したトバモライトや未反応で残存したγ-C2Sが酸により変質して,供試体表面にシリカゲルや低Ca/Si比のC-S-Hゲルを生成し,その後の硫酸イオンの浸透を抑制したためと考察した.また,実験室における耐酸試験と実環境における暴露試験が同様の傾向を示したことから,実験室における耐酸試験の有用性が示された.
  • 小林 仁, 先本 勉, 藤井 隆史, 綾野 克紀, 宮川 豊章
    2013 年 69 巻 4 号 p. 377-389
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル フリー
     コンクリートの乾燥収縮ひずみによって生じる変形は,100×100×400mmの角柱供試体や橋梁の上部工等,断面寸法に比べて部材の長さが長い場合には,平面保持の仮定が成り立ち,断面のどの位置で測定しても同じ大きさとなる.このような乾燥収縮ひずみの経時変化は,乾燥収縮ひずみの最終値と乾燥収縮ひずみの経時変化を表す項の二つの係数からなる双曲線によって表すことが可能である.
     本論文では,JIS A 1129に従い試験室で測定された乾燥収縮ひずみを基に,実構造物における乾燥収縮ひずみを予測する手法を検討した.厚さが400mm程度までの供試体または部材であれば,乾燥収縮ひずみの経時変化を表す項は部材厚の二乗に比例することを示す.
  • 小林 仁, 先本 勉, 藤井 隆史, 綾野 克紀, 宮川 豊章
    2013 年 69 巻 4 号 p. 390-401
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル フリー
     供用後,比較的早い段階でプレストレストコンクリート橋の上部工にひび割れが生じた事例を基に,その発生原因がコンクリートの乾燥収縮ひずみを大きくする粗骨材を使用したことである調査結果を報告する.また,乾燥収縮ひずみが原因で生じた損傷を数値解析によって再現した結果を示す.その結果,部材断面に比べてスパンが長く,乾燥収縮ひずみによる変形に平面保持が成り立つと仮定することができる場合であっても,断面内の乾燥収縮ひずみを一定と仮定した場合にはひび割れによる変状を完全には再現できないことを示す.また,実際に乾燥収縮ひずみが原因で生じたひび割れの方向や発生位置を再現するためには,拡散理論に基づき部材内部の水分移動を考慮した数値解析を実施し,断面内の乾燥収縮ひずみの分布を考慮する必要があることを示す.
  • 川端 雄一郎, 山田 一夫, 松下 博通
    2013 年 69 巻 4 号 p. 402-420
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル フリー
     アルカリシリカ反応(ASR)を最も効果的に抑制するのは鉱物質混和材(SCM)であり,空隙水のpHの低下がその理由と推定されるが,直接的に証明されていない.SCMをセメントの一部と置換する機構をセメントの水和反応解析を基に推定した相組成と空隙水の溶解平衡関係から検討するとともに,モルタルの膨張量試験との比較から,ASR抑制効果との関係について考察した.これらの結果から,セメントの一部をSCMにより置換したモルタルのASR抑制機構は低Ca/Siモル比のC-S-Hのアルカリ固定に伴う空隙水のOH-濃度低減という説が最も合理的と考えられた.これらの結果を基にSCM置換率とOH-濃度の関係を整理し,高反応性の骨材に対してはより厳しい抑制対策が必要であることを考察した.
  • 綾野 克紀, 藤井 隆史, 平 喜彦
    2013 年 69 巻 4 号 p. 421-437
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
     乾燥収縮ひずみは,部材のたわみ,ひび割れ,プレストレスの減少等に影響するため,構造物の安全性,耐久性および使用性を検討する上で重要となる.しかし,設計時において使用するコンクリートが選定されていることは稀で,乾燥収縮ひずみの値は,予測式を用いて求められることが多い.本研究は,日本国内で収集された実験データを基に,100×100×400mmの供試体より得られる乾燥収縮ひずみの経時変化を表す予測式の提案を行うものである.2年前と30年前に収集された実験データから,骨材の種類が乾燥収縮ひずみに与える影響を示すとともに,骨材に含まれる水分量を用いた予測式を提案する.また,実構造物では,部材寸法の影響で乾燥収縮ひずみの進行が遅くなること,乾燥収縮ひずみの最終値も温度履歴の影響を受けて小さくなることも示す.
  • 梁 俊, 丸屋 剛, 坂本 淳, 松元 淳一, 下村 泰造, 滝沢 正徳
    2013 年 69 巻 4 号 p. 438-449
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,コンクリートのスランプをパラメータとして,実構造物の配筋をモデル化した要素試験体を用いて,コンクリートの締固め完了エネルギーから施工に使用したコンクリートが必要とする内部振動機の挿入間隔と振動時間を定量的に評価する方法を検討し,累積された内部振動機による振動エネルギーが,コンクリートの締固めを完了するのに必要なエネルギー以上となった範囲を締固め完了範囲とすることで,鉄筋コンクリートの締固め完了範囲を評価することが可能であることを実寸大試験体より検証した.また,仕上げの締固めを行う後追い締固めにおいては,コンクリートのモルタル分が流されないため,締固め時間を適当に長くしても品質上は問題がないことを検証した.
  • 中村 繁貴, 高谷 哲, 前田 良文, 山本 貴士, 宮川 豊章
    2013 年 69 巻 4 号 p. 450-461
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
     近年,多くの構造物が老朽化している中で,効率的な維持管理を実現する手段の一つとして,赤外線サーモグラフィが注目されるようになってきている.土木構造物への適用事例は増加しており,環境要因が測定結果に与える影響に関する研究も多く報告されている.しかし,構造物の維持管理における調査診断でははく離部を検知するだけでなく,はく落の危険性を評価することが,補修工法の選定などのためには重要である.本研究ははく落の危険性を定量評価することを目標とし,鉄筋腐食膨張圧模擬実験による各損傷段階の供試体に対して赤外線サーモグラフィ測定を行った.その結果,かぶりや破壊形態を考慮せずに劣化の程度を評価できる指標としてはく落危険度を提案し,測定温度環境を考慮したはく落予測を行うことが可能であることを明らかにした.
  • 中田 裕喜, 渡辺 健, 渡邊 忠朋, 谷村 幸裕
    2013 年 69 巻 4 号 p. 462-477
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
     土木学会コンクリート標準示方書等では,せん断スパン比(a/d)に応じて,異なる設計せん断耐力式が設定されている.これによれば,せん断補強鉄筋を有する鉄筋コンクリート(RC)棒部材において,各せん断耐力式のせん断補強鉄筋比の貢献度評価が異なるために,それぞれの適用範囲の境界におけるせん断耐力算定値が不連続となることがある.本研究では,収集した611体の実験結果に基づき,せん断補強鉄筋による効果や載荷板の影響の考慮方法を検討した.そして,単純支持された矩形断面RCはりの,a/dに対する連続性を確保する設計せん断耐力算定法を提案した.さらに,棒部材のせん断耐力算定式が各種RC部材に適用されている現状を踏まえ,両端が固定されたRCはりや薄肉断面I形RCはり,RC壁式橋脚に対し,提案した式の適用性を検証した.
和文報告
  • 古賀 裕久, 百武 壮, 渡辺 博志, 脇坂 安彦, 西崎 到, 守屋 進
    2013 年 69 巻 4 号 p. 361-376
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
     我が国の様々な地域から収集された94種類の粗骨材を用いて作製され,23年以上屋外に暴露されていたコンクリート供試体を調査し,アルカリシリカ反応(以下,ASR)によるひび割れ等の発生状況を調べた.その結果,骨材の岩種とASRによるひび割れの発生割合は,従来の知見とおおむね合致していた.一方で,従来は反応性をほとんど有しないと考えられてきた半深成岩や中新世よりも古い火山岩類でも,ASRによると見られるひび割れが生じた場合があった.これらの骨材は遅延膨張性を有すると見られ,化学法やモルタルバー法で反応性を評価することは困難であった.また,アルカリ量を3kg/m3に調整した供試体について調査した結果,94種類の骨材のうち10種類では,ASRによるひび割れが生じていた.
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