土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造)
Online ISSN : 2185-6567
ISSN-L : 2185-6567
71 巻, 2 号
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和文論文
  • 吉田 夏樹, 中山 健一
    2015 年 71 巻 2 号 p. 97-106
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,硫酸および硫酸塩が混在する環境を想定し,コンクリートの硫酸劣化および硫酸塩劣化の侵食現象を包括的に検討し,整理した.pH(硫酸酸性度)およびSO42-濃度を調整した溶液に供試体を浸漬させ,化学的および物理的変化を分析した結果,作用する溶液のpHおよびSO42-濃度を指標として,侵食形態を3種に区分して整理することができた.SO42-濃度が低いと,pH2~3の硫酸でも侵食は相対的に穏やかであった.高SO42-濃度の条件では,エトリンガイトの生成によりひび割れが発生した.pH2~3以下,高SO42-濃度の条件では二水セッコウの脆弱層が生成して表層の断面欠損が生じた.各条件の侵食速度を数値化して比較すると,酸とSO42-の同時作用により侵食は相乗的に大きくなることが明確となった.
  • 堀口 賢一, 山口 明伸, 丸屋 剛, 武若 耕司
    2015 年 71 巻 2 号 p. 107-123
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,腐食発生限界塩化物イオン濃度を精度よく評価する方法を開発し,実験によりその閾値を定量的に求めることを目的とした.鉄筋コンクリート供試体に鉛照合電極を埋設し,供試体表面から局所的に塩化物イオンを浸透させつつ自然電位を連続的に計測すると,ある時点で自然電位が急激に低下する現象が確認され,鋼材表面の狭い範囲に腐食が生じており,腐食の発生時点を明確に捉えることができた.また,自然電位が低下した時点の鋼材表面での全塩化物イオン濃度を算出することにより,供試体ごとの腐食発生限界塩化物イオン濃度が得られ,これを統計的に処理すると,普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートの腐食発生限界塩化物イオン濃度は,単位結合材量254~446kg/m3(水結合材比65~35%)で,1.6~3.6kg/m3となった.
  • 黒岩 大地, 宮里 心一
    2015 年 71 巻 2 号 p. 124-134
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/20
    ジャーナル フリー
     予防維持管理の一つとして注目されている表面含浸工法を適用した場合,改質部と非改質部の塩化物イオン拡散係数を区分して耐久性設計することが推奨されている.しかし,改質部における拡散係数を同定する方法は確立されていない.本研究では,けい酸塩系表面含浸材を適用した場合の,改質部における見かけの拡散係数を推定する方法を提案した.すなわち,改質深さを測定した後,無塗布における塩化物イオン濃度分布と,表面含浸材を塗布したケ-スにおける塩化物イオン濃度分布を,等価かぶりを考慮しながらフィッティングさせ,改質部の拡散係数を同定した.さらに,表面含浸材を予防維持管理として適用した場合の発錆遅延期間を試算した.その結果,表面含浸材を塗布することで発錆時期が数年~12年間程度遅延されることを確認した.
  • 小林 將志, 石橋 忠良, 下村 匠
    2015 年 71 巻 2 号 p. 135-148
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/20
    ジャーナル フリー
     既設鉄筋コンクリート柱の耐震補強を合理的に進めるためには,支障物の撤去復旧を最小限にする必要があり,せん断補強鋼材の間隔を広げて配置する技術が求められている.しかし,塑性ヒンジ領域の補強鋼材の配置間隔は,変形性能に直接影響するため,部材断面の最小寸法の1/2以下にするなど,一定の間隔以上に広げることができないとされてきた.そこで,せん断補強鋼材を柱外周に配置し柱の四隅で定着する耐震補強方法を用いて,塑性ヒンジとなる領域の補強鋼材の配置間隔を断面高さの0.5~1.3倍程度に広げて配置した柱型試験体を製作して静的正負交番載荷試験を実施した.その結果,塑性ヒンジとなる領域の補強鋼材の間隔を断面高さの1/2以上に広げても,配置する補強鋼材量をコントロールすることで,破壊形態と変形性能を制御できることを示した.
  • 池田 唯順, 水田 真紀, 児島 孝之
    2015 年 71 巻 2 号 p. 149-160
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,コンクリートに塩化物イオンが浸透する場合,コンクリートの不均質性が浸透性状に及ぼす影響を検討した.材料不均質性を表す不確定因子は,表面塩分量,ペースト部と遷移帯の空隙率と含水率であり,それらを確率量とした塩分浸透解析手法を構築し,塩分浸透がばらつく様子をシミュレーションした.そして,パラメトリック解析から,本研究で考慮した不確定因子とその確率量の妥当性を確認した.さらに,W/Cとペースト部の含水率は,塩化物イオンの見かけの拡散係数のばらつきに大きく影響すること,材齢の経過に伴い,見かけの拡散係数が一定の値に収束する可能性があることを示した.
  • 上田 洋, 飯土井 剛, 子田 康弘, 佐伯 竜彦, 岩城 一郎, 鈴木 基行
    2015 年 71 巻 2 号 p. 161-180
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/20
    ジャーナル フリー
     本研究は厳しい塩害環境において架替え後15年が経過したPC道路橋の主にコンクリートの物性に着目した健全度評価に基づき,今後の維持管理方針について提案を行うものである.はじめに,本橋の施工から現在に至る変状を調査し,構造物表面に貼り付けたモルタル片の付着塩分量を測定することで,塩害に対する環境作用を評価した.さらに,透気係数および表面水分分布などを指標とした測定を複数回行い,コンクリートの耐久性に関わる物性を定量評価した.その結果,本橋は極めて厳しい塩害環境にある中,材料や施工,その後の維持管理に起因する問題を有しているものの,今後の戦略的な維持管理により所用の性能を確保し続けることが可能であると判断し,対策方法の検討と評価を行うとともに今後の維持管理のあり方について提案を行った.
  • 小川 淳史, 浅田 誉志大, 和多田 康男, 吉武 勇
    2015 年 71 巻 2 号 p. 181-190
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/20
    ジャーナル フリー
     鋼・コンクリート合成床版には機械式ずれ止めが多数用いられるが,その場合,工費と重量の増加およびコンクリートの施工性の低下を招くおそれがある.このような機械式ずれ止めの設置個数を削減し,接合構造をシンプルにするには,鋼板とコンクリート間に接着剤を用いる方法が考えられる.本研究では,セメント系接着剤を用いて結合構造を簡素化した鋼・コンクリート合成構造の要素試験体による押抜きせん断試験を行い,孔あき鋼板ジベルとの比較検討を行った.その結果,接着剤を用いた合成構造と孔あき鋼板ジベルを用いた合成構造では,せん断力とずれ変位の関係が大きく異なることを示した.
  • 磯部 龍太郎, 津野 和宏, 岩城 一郎, 岸 利治, 中澤 治郎
    2015 年 71 巻 2 号 p. 191-202
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/20
    ジャーナル フリー
     軽量コンクリート製の道路橋RC床版は,橋梁上部工の軽量化に資する一方,同等の設計基準強度の普通RC床版と比較して,耐疲労性が低下することが明らかにされている.また,膨張材は,床版コンクリートの初期に発生するひび割れを抑制することを目的として使用され,耐疲労性の向上にも一定の効果があることが確認されている.本研究は,軽量骨材(軽量II種)を用いたコンクリートに,膨張材をケミカルプレストレストコンクリート相当量混入したRC床版の実用化を目的とした検討の一環である.小型供試体を用いた各要素試験により,膨張材を併用した軽量コンクリートの硬化特性,膨張特性の把握を行った.また,実床版を模擬した供試体を用いた輪荷重走行試験を行い,普通コンクリート製RC床版に比べ耐疲労性が向上することを確認した.
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