土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造)
Online ISSN : 2185-6567
ISSN-L : 2185-6567
72 巻, 3 号
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和文論文
  • 酒井 貴洋, 山路 徹, 清宮 理
    2016 年 72 巻 3 号 p. 196-213
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/20
    ジャーナル フリー
     海水を練混ぜ水として用いたコンクリートの初期強度増進効果について淡水の場合と比較した結果,NaClによってC3Sの初期水和反応が促進されること,また海水を用いないものに比べ硬化体組織が緻密となる現象が確認され,海水の主成分であるNaClの影響が支配的と考えられた.また,海水・海砂が使用可能かつ優れた流動性と適度な粘性を付与する新規混和剤を開発し,フレッシュ性状および硬化コンクリ-ト特性を確認した.その結果,優れた流動性と適度な材料分離抵抗性を有する自己充填型コンクリ-トが製造でき,上水道水や陸砂を用いた自己充填型コンクリ-トと同等以上の基礎特性を示した.乾燥収縮ひずみは上水道水や陸砂を用いたものと同等である一方で,水和反応に伴う温度上昇速度が速くなり熱膨張係数がやや増大する傾向が認められた.
  • 小倉 大季, 国枝 稔, 中村 光
    2016 年 72 巻 3 号 p. 249-267
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,鉄筋補強した繊維補強セメント系複合材料の引張破壊を,繊維1本1本をモデル化した解析手法を用いて検証した.ひずみ軟化型とひずみ硬化型の繊維補強セメント系複合材料を対象に,繊維の混入率,鉄筋比,鉄筋-マトリクス間の付着特性,ならびに繊維の分布状態を変動させた解析を行い,引張破壊挙動を検証した結果,各パラメータの組合せによっては鉄筋降伏後にひび割れが局所化して進展する場合があることを確認した.そして,そのメカニズムとそれを抑制する方策を,架橋力に着目することによって明らかにした.ひずみ硬化型の材料においては,繊維分布のばらつきに伴う材料不均一性によって力学特性が低下した場合でも,鉄筋との併用により終局ひずみを向上できることを解析から提示した.
  • 大下 英吉, 今井 嵩弓, 林 詳悟, 福岡 養祐
    2016 年 72 巻 3 号 p. 268-287
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,潜伏期或いは進展期といった腐食ひび割れなどの鉄筋腐食に起因した変状がコンクリート表面に発生する前の段階に対しても,また鉄筋の腐食に起因した剥離による空洞の存在の有無に対しても,非破壊かつ非接触でコンクリート内部の鉄筋の腐食性状を高精度かつ簡易に定量化することのできる手法の構築を行った.また,構築した手法に新たな画像処理技術を導入することによって,剥離性状ならびに鉄筋腐食性状の推定精度の高度化も行った.
  • 中村 明彦, 國近 光生, 河村 圭, 中村 秀明
    2016 年 72 巻 3 号 p. 288-303
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
     コンクリート構造物の耐久性は,コンクリートの品質や施工状況などの内的要因の他,構造物が曝されている環境条件による外的要因によって影響を受ける.そのためコンクリート構造物の耐久性評価では,この外的要因をいかに正確に把握するかが重要である.外的要因の中でも重要なのが気象条件であり,この中でも特に外気温や湿度などの気象環境条件は,ひび割れ発生に影響を及ぼすだけでなく,鋼材腐食など劣化現象の駆動力となることが予測される.気象条件は,地域によって異なるため,初期ひび割れ予測など,構造物の耐久性評価では地域ごとにこれらの気象条件をモデル化する必要がある.
     そこで,本研究では最新の気象データを用いて全国各地の水蒸気圧と外気温,さらに相対湿度の年変動を的確に表すモデルの構築を行い,その精度の検証を行った.
  • 中村 英佑, 皆川 浩, 宮本 慎太郎, 久田 真, 古賀 裕久, 渡辺 博志
    2016 年 72 巻 3 号 p. 304-322
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/20
    ジャーナル フリー
     本論文では,通電により塩化物イオンを電気泳動させた供試体の内部の塩化物イオン浸透深さを硝酸銀溶液噴霧法により測定し,この測定値を用いてコンクリートの遮塩性能を評価する試験の適用方法を検討した.この試験では,塩化物イオンの移動流束が定常状態に達する前の非定常状態で測定した塩化物イオン浸透深さを用いるため,他の室内試験よりも迅速かつ簡便に試験結果を得ることができる.モルタル供試体とコンクリート供試体を用いた実験を行い,印加電圧や通電時間など試験条件の設定方法を提案し,非定常状態における塩化物イオンの移動状況を明らかにした.また,この試験を適用することによって,浸せき試験と同様に混和材の使用による遮塩性能の向上効果を評価できること,材齢の経過による遮塩性能の変化を定量的に把握できることを示した.
和文報告
  • 田中 良樹, 石田 雅博, 村越 潤
    2016 年 72 巻 3 号 p. 214-233
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/20
    ジャーナル フリー
     撤去された道路橋2橋のコンクリート部材について,劣化原因の調査を行った.一つは,多数の水平ひび割れが見られた供用75年の鉄筋コンクリート橋の床版である.もう一つは,側面の水みち付近にひび割れや浮きが見られた供用47年の橋脚である.両コンクリート部材ともに,ひび割れに沿った,複数の粗骨材の割れが見られた.いずれも川砂利が使用され,ASRの反応性骨材が含まれ,ASRの兆候が見られた.また,両橋ともに,冬季に凍結防止剤が散布されること,凍結融解の繰返しを受けることから,凍害の影響についても調査を行った.その結果,これらのひび割れは,発生条件を含めて,コンクリート舗装の継目部で見られるDクラックの初期症状に類似しており,ASRだけでなく,凍結融解繰返しによる粗骨材の割れに起因する可能性もあることが分かった.
  • 武地 真一, 佐々木 敏幸, 横関 康祐, 新保 弘, 秋山 吉弘, 矢田 勤, 辻 幸和
    2016 年 72 巻 3 号 p. 234-248
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
     放射性廃棄物の地下空洞型処分施設に用いるセメント系の上部充てん材は,崩壊熱により高温環境となる可能性がある廃棄体の直上に打ち込まれることから,その充てん性や硬化性状への高温度の影響が懸念される.また,上部充てん材は放射線環境下での施工となるため,遠隔操作による無人化施工で,遮へい性能を担保する部材厚さを確保する必要があるなど,施設特有の課題もある.
     本報告では,高温環境を模擬した充てん性試験により上部充てん材の配合を選定し,高温養生試験を行ってその硬化性状へ及ぼす高温度の影響を明らかにした.さらに,実規模試験により,ポンプ圧送方式と移動式バケット方式による無人化施工に向けた知見が整理された.
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