土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造)
Online ISSN : 2185-6567
ISSN-L : 2185-6567
72 巻, 4 号
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和文論文
  • 平塚 慶達, 千田 峰生, 藤山 知加子, 前川 宏一
    2016 年 72 巻 4 号 p. 323-342
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー
     過去の荷重履歴によって導入された損傷の程度から,道路橋RC床版の余寿命を推定する方法(例えば データ同化)の成立性について考察を行った.過大な荷重や定点疲労載荷を予め床版に与えた後に移動輪荷重を作用させ,疲労余寿命を実験的に求めるとともに,数値解析法の精度の検証を行った.実橋梁床版に作用する重量車両荷重160kNから220kNの範囲内で,かつ鋼材腐食やASRによる劣化が無い条件下では,先行荷重履歴や荷重作用位置を陽に考慮しなくても,現時点での荷重応答たわみから残存余寿命をほぼ推定できること,および直接経路積分型の疲労有限要素解析を用いても,余寿命推定が可能であることを示した.余寿命推定にマイナー則を用いる場合と比較し,たわみによる同定方法では,高荷重レベルまで含める場合に,余寿命推定に優れることを示した.
  • 平塚 慶達, 前川 宏一
    2016 年 72 巻 4 号 p. 343-354
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー
     輪荷重走行試験機を用いた床版の疲労実験の多くは数か月に及ぶため,試験期間中にもコンクリートの乾燥収縮が進行する.水分移動とコンクリートの損傷と乾燥収縮の相互連成を考慮可能なマルチスケール解析を用いて,疲労試験中に進行するコンクリートの乾燥収縮が疲労寿命に及ぼす影響について検討した.さらに,試験結果との比較から解析の適用性を検証した.実橋梁を想定して,乾燥収縮がほぼ終結した後に疲労荷重を作用させる履歴に対しても,乾燥収縮と載荷履歴の複合過程が疲労寿命に及ばす影響を,解析的見地から考察した.
  • 齊藤 和秀, 吉田 亮, 吉澤 千秋, 梅原 秀哲
    2016 年 72 巻 4 号 p. 355-367
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー
     高炉スラグ細骨材を用いることで,コンクリートの長期強度増進,乾燥収縮低減,中性化抑制等の硬化物性向上効果が得られることが知られている.本研究では,高炉スラグ細骨材の硬化物性向上のメカニズムを解明することを目的として,粒径の違いに着目し,モルタルの硬化物性に対する各粒径の特性を検討した.その結果,高炉スラグ細骨材は粒径が小さいほど強度増進や乾燥収縮低減の効果が高く,特に0.045mm程度以下の粒径の効果が高いことを明らかにした.次に,0.045mm程度以下の粒径の含有量がコンクリートの硬化物性に与える影響を検証した.その結果,0.045mm程度以下の粒径として高炉スラグ微粉末を5%程度加えることにより,圧縮強度が顕著に増進すること,および乾燥収縮や中性化に与える影響は小さいことを明らかにした.
  • 酒井 雄也, 岸 利治
    2016 年 72 巻 4 号 p. 368-379
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー
     セメントペーストの変形機構を把握することを目的として,拘束圧と含水率を変化させて三軸試験を実施した.検討の結果,ある程度以上の拘束圧が作用すると,ひずみ10%まで変形しても応力は低下しなくなり,またマクロな損傷が確認されなくなった.応力低下やマクロな損傷が確認されなくなる拘束圧は含水率によって変化した.また段階的に荷重を増加させたクリープ試験において,差応力-ひずみ速度の両対数グラフの傾きは3前後となり,転位の影響を示唆する結果が得られた.スクロース水溶液で飽和し,水酸化カルシウムの析出を抑制した供試体は,より脆性的な挙動をピーク応力後に示した.以上の結果より,セメントペーストの挙動には転位や双晶,圧力溶解が影響している可能性を指摘した.
  • 豊福 俊泰, 永松 武則, 鶴窪 廣洋, 豊福 俊英, 中山 慎也
    2016 年 72 巻 4 号 p. 380-399
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
    ジャーナル フリー
     すりへりによって性能低下が生じるコンクリート構造物の維持管理においては,すりへり現象を定量的に予測する必要があるが,この手法は確立されていないのが現状である.そこで,本研究は,すりへり現象に及ぼす外力やコンクリート品質の要因(例えば,質量,速度,打撃回数,圧縮強度)を,鋼球の落下による衝撃摩耗試験装置を使用した実験により解明したものである.これまでの膨大な試験データから得られた種々の要因を回帰分析によって解析し,コンクリートのすりへり深さの進行予測法を提案した.
  • 木村 亨, 沼尾 達弥, 徳元 智尋, 山下 悠貴
    2016 年 72 巻 4 号 p. 400-410
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
    ジャーナル フリー
     ジオポリマーの活性フィラーに一般廃棄物溶融スラグ微粉末を用いる場合,流動性の確保が難しい場合がある.一般廃棄物溶融スラグを粉砕した後保管して,あるいは保管した後に粉砕して用いることが,一般廃棄物溶融スラグ微粉末,モルタルのフローおよび圧縮強度に及ぼす影響を検討した.
     一般廃棄物溶融スラグを粉砕した後保管して,あるいは保管した後に粉砕して用いることで,ジオポリマーモルタルのフローは改善された.気中養生を行った場合,保管期間が長いほど,一般廃棄物溶融スラグ微粉末中の水和物または炭酸カルシウムの生成量が増加し,それに伴い圧縮強度が低下した.一方,蒸気養生を行った場合,給熱下の縮重合反応により強度発現を起こすことから,保管に伴う一般廃棄物溶融スラグ微粉末の変化が圧縮強度へ及ぼす影響は小さかった.
  • 渡部 太一郎, 小林 薫, 菅野 貴浩, 斉藤 成彦
    2016 年 72 巻 4 号 p. 411-426
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
    ジャーナル フリー
     高架下を移設が困難な機器室等に使用している橋脚に対して,機器室等に支障をきたさないよう橋脚側面に補強部材を設置して主鉄筋段落し部を補強する耐震補強工法を提案し,その曲げ補強効果を検討した.本研究では,橋脚を模擬したRC製の既設はり側面に補強はりをアンカー鉄筋で固定したはり試験体の曲げ載荷実験を行った.その結果,補強はりが分担する荷重は既設はりと補強はりの曲げ剛性と補強範囲で比較的精度良く表せることを明らかにした.さらに本耐震補強工法を実橋脚に適用することを目的として縮小模型試験体を用いた交番載荷実験を行い,補強後の損傷形態判別係数が1.3程度となるように補強することで段落し部の損傷を防止できることを明らかにした.
  • 原田 健二, 下村 匠
    2016 年 72 巻 4 号 p. 427-439
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
    ジャーナル フリー
     コンクリート中の液状水中に存在する塩分が,コンクリートの乾湿挙動に及ぼす影響を実験により検討した.コンクリートの細孔中の液状水に塩分が存在することで,平衡液状水量が増大すること,コンクリート内部の水分移動速度が低下すること,それらの結果コンクリートは湿潤傾向となることが実験より明らかとなった.塩分が水分の移動に及ぼす影響を考慮したコンクリート中の水分・塩分連成解析法を構築した.塩分の存在による平衡液状水量の増大は飽和水蒸気圧降下と液状水の物性の変化を考慮することで表現でき,コンクリート中の水分移動速度の低下は液状水の移動速度を細孔中の液状水の塩分濃度に応じて低減させることで表現できることを示した.
  • 中田 裕喜, 渡辺 健, 田所 敏弥, 岡本 大, 池田 学, 谷村 幸裕
    2016 年 72 巻 4 号 p. 440-455
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
     複合構造標準示方書に示された鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)棒部材のせん断耐力算定式は,単純支持されたSRCはりの実験結果より導出されたものである.この算定式をラーメン高架橋のSRCはりに適用する場合,その両端が固定されているという支持条件がせん断耐力に及ぼす影響を検討する必要がある.本研究では,支持条件の影響が大きいせん断スパン比の小さい領域を対象に,両端固定支持SRCはりの載荷実験および非線形有限要素解析を実施し,耐荷機構を明確にしてせん断耐力を評価した.スターラップの補強効果には上限があること,鉄骨腹板の諸元が同一でも鉄骨フランジ幅が小さくなるほどせん断耐力が増加することなどを明らかにし,それらを反映させたせん断耐力算定式を提案した.
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