土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造)
Online ISSN : 2185-6567
ISSN-L : 2185-6567
76 巻, 4 号
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和文論文
  • 長谷 一矢, 横田 弘, 佐藤 靖彦
    2020 年 76 巻 4 号 p. 270-282
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     日本の最北端にある稚内港には,古代ギリシャ建築を彷彿させる北防波堤ドームがある.1936年に竣工したドームは,1981年の全面改修を経て,現在,再び劣化が顕在化してきた.ドームは構造が特殊で点検診断範囲が広大であり,対策の検討においては,部材性能の評価や補修範囲の決定方法が課題となった.そこで,広大な点検診断領域を格子状のエリアに細分化し,変状に基づき設定した5段階の劣化度で格付けした「劣化度マップ」を考案した.劣化度マップの活用により,広域変状の定量的な把握,鉄筋腐食状況の把握,エリア単位の合理的な予防保全のための補修が可能となる.本論文は,北防波堤ドームの維持管理をとおして,多面的な観点から作成する劣化度マップの考え方を整理し,劣化度マップに基づく補修判定の有効性を考察するものである.

  • 福島 邦治, 木下 尚宜, 原 幹夫, 吉武 勇
    2020 年 76 巻 4 号 p. 283-292
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     広帯域超音波法(WUT)は,比較的厚い部材にも適用できるため,ポストテンションPC橋のグラウト充填探査にしばしば用いられる.WUTは反射波を分析することでグラウト内の空隙を検出する方法である.分析する反射波には部材端面からの反射波も含まれ,その影響は無視できない.本研究では,WUTの精度向上を目的に,シースおよび端面からの反射波の影響について検討した.その基礎的実験として,A) 未充填シース・B) グラウト充填シースを埋設した240mm厚のコンクリート版,C) 240mm厚・D) 135mm厚のプレーンコンクリート版の4種類を準備し,WUTによるグラウト充填探査を行った.本実験により,シース反射波に加えて端面反射波を評価することで,グラウト充填判定の精度向上ができることを示した.

  • 内藤 勲, 横田 弘
    2020 年 76 巻 4 号 p. 293-305
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     本論文は,低温環境におけるエポキシ樹脂系ひび割れ注入材の注入充塡性を定量的に評価するため,低温での注入材の粘度変化と温度変化の計測およびコンクリート供試体による注入実験を行い,既往の研究で提案された注入面積速度を用いて低温時の注入性能と施工性を検討した結果を考察するものである.注入材粘度の経時変化等の計測および注入充塡性試験を行った結果,低温や少量では注入材の反応による発熱がほとんど発生しないため,注入性能はひび割れ内部の環境温度に依存することを明らかした.また,注入面積速度式に,環境温度5°C以下の低温域の場合の補正係数を導入すると,この関係式から低温環境におけるエポキシ樹脂系ひび割れ注入材の注入充塡性の定量的な評価が可能であることを確認した.

  • 酒井 雄也, 上原 真一
    2020 年 76 巻 4 号 p. 306-314
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     コンクリートを粉砕して得られる粉末を圧縮成形することで,十分な強度を有する成形体が形成される機構の理解と,コンクリートやセメントペーストの高圧下での変形機構を理解するため,溶脱処理したセメントペーストや水酸化カルシウム,合成C-S-Hの成形体を対象に三軸試験を実施した.その結果,水酸化カルシウムは飽和状態では,乾燥状態と比較して剛性や強度が大幅に低下すること,合成C-S-Hは拘束圧の増加に伴い剛性が低下するが,含水率の影響が小さいことを確認した.得られた結果に基づいて,コンクリート粉末の圧縮成形においては,まず変形しやすいC-S-Hが圧出されて,水酸化カルシウムの構造体が形成されること,圧縮成形時に水を加えると,この構造体が変形しやすくなることで圧縮変形が促進される,という仮説を提示した.

  • 金光 俊徳, 小野 新平
    2020 年 76 巻 4 号 p. 315-331
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     分極抵抗法は,コンクリート内部鉄筋の腐食速度を評価する方法として用いられるが,既設構造物に対して一部破壊をともなうという課題があった.そこで本研究では,完全非破壊で腐食速度を評価できる手法を提案することを目的として,モルタルおよびコンクリート試験体表面に置いた4端子を用いて交流インピーダンス計測を行った.それに加えて,電流分散解析を用いて端子間隔および計測面からの鉄筋深さの変化にともなう計測値の変化を把握し,従来の分極抵抗法との比較による精度検証を行った.得られた結果より,本手法による計測が可能な条件を明らかにし,その条件下で腐食速度に換算できる指標を構築した.これにより,計測対象の鉄筋配置に応じて適切に端子配置を設定し,完全非破壊で内部鉄筋の腐食速度を定量的に評価することが可能となった.

  • 林 亮太, 櫨原 弘貴, 添田 政司, 深見 桜
    2020 年 76 巻 4 号 p. 332-348
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

     九州地区における実構造物の実態調査を基に,劣化の顕在化に与える影響要因を明らかにした.次に,室内試験および実構造物から採取したコアを用いて透気係数と各種劣化因子に対する物質移動抵抗性との関係性を明らかにし,透気係数を軸として劣化が顕在化し易いか否かについて評価を行った.その結果,「水掛かりあり」の箇所は鉄筋腐食の進行が早く,腐食ひび割れの発生や錆汁,剥離等の外観変状が早期に顕在化し易いことが分かった.また,同構造物において劣化部と健全部で透気係数を測定したところ,各種拡散係数が同等であっても劣化部の透気係数は,健全部に比べて大きくなっていた.採取コアを用いた透気係数の測定によって,将来的に劣化が顕在化し易いか否かを評価する指標として適用できると考えられた.

  • 藤掛 一典, 板垣 端, 池田 晋平, 東郷 智之, 竹内 啓五
    2020 年 76 巻 4 号 p. 349-359
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,RC版の押抜きせん断試験と非線形有限要素解析を介してRC版の押抜きせん断破壊メカニズムを検討することにある.特に,非線形有限要素解析においては,三軸圧縮応力下におけるコンクリートの応力-ひずみ関係を適切に表すことのできる構成モデル3D Nonlinear Cementitious 3を使用した.その結果,RC版の押抜きせん断耐力時にはRC版の載荷版周辺の近傍に応力レベルの大きな3軸圧縮応力領域が形成され,この部分のコンクリートが圧縮破壊することにより押抜きせん断破壊が生じることが分かった.また,その耐荷メカニズムに基づく角錐シェルモデルを提示した.この角錐シェルモデルから導かれた押抜きせん断耐力の評価式は,既往の実験結果と比較したところ良い対応をみた.

  • 藤掛 一典, 板垣 端, 池田 晋平, 東郷 智之, 竹内 啓五
    2020 年 76 巻 4 号 p. 360-373
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,面内拘束圧を受けるRC版の押抜きせん断載荷試験と非線形有限要素解析を介して,面内拘束圧がRC版の押抜きせん断耐力に及ぼす影響を調べることにある.特に面内拘束圧を受けるRC版の押抜きせん断破壊挙動を解析するためには,三軸圧縮応力下におけるコンクリートの応力-ひずみ関係を適切に表すことができる構成モデルの使用が不可欠である.その結果,面内拘束圧を受けるRC版の押抜きせん断耐力は,面内拘束圧を等価な換算鉄筋比として扱うことで,押抜きせん断破壊耐荷機構に基づく角錐シェルモデルから評価できることを示した.さらに本研究では,諸外国の設計基準における面内拘束圧の影響を考慮した押抜きせん断耐力の評価式についても検討している.

  • 保倉 篤, 宮里 心一, 岡村 脩平, 吉本 大士, 倉方 裕史
    2020 年 76 巻 4 号 p. 374-385
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

     短繊維補強コンクリートの作製直後の力学性能は明らかにされてきたが,水の影響を鑑みて長期に亘り暴露された後の力学性能を評価した検討はなされていない.そこで本研究では,異なる温度の水中および気中に暴露された後の,アラミド短繊維補強コンクリートの曲げ強度および曲げタフネスを評価した.その結果,1) 水中暴露した後の力学性能は,暴露温度が高い程,経時的に低下するのに対し,気中暴露した後の力学性能は保持された.2) 高温の水中で1ヶ月~3年間に亘り暴露することで,20℃の水中で100年間に亘り暴露された後の力学性能を推定した.3) 集束タイプの短繊維を混入した場合,20℃の水中に100年間に亘り暴露されたとしても,初期値に対して90%以上の力学性能を保持することが期待された.

  • 山田 雄太
    2020 年 76 巻 4 号 p. 386-402
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

     耐荷機構に立脚した簡便かつ合理的なせん断耐力予測式の構築を目的として,鉄筋コンクリートはりのせん断抵抗機構におけるビーム機構の耐力予測式を理論的に構築した.鉛直応力非卓越領域における斜めひび割れ経路で分かたれた自由体の力学的平衡状態から基礎式を導出し,せん断長さが800mmまでの試験体に対するせん断要素実験の結果から構成した斜めひび割れ経路上の開口幅に依存する応力伝達モデルを適用することで予測式の構築に至った.予測式の適用性を検証するために静的載荷実験および有限要素解析を行った結果,予測式は,せん断スパン比が1.0から3.0,有効高さが200mmから1600mmまでのはりにおけるビーム機構の耐力と算定値の比率に対して平均値が1.00,標準偏差が0.10,変動係数が10.0%の精度で予測可能であることを確認した.

  • 北 慎一郎, 櫻井 信彰, 前川 宏一
    2020 年 76 巻 4 号 p. 403-420
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

     複数のプレキャストPC床版を充填材のみで一体化して,実橋の中間支点付近で発生する負曲げ作用を与えた上で輪荷重走行試験を実施した.250kN一定荷重にて繰返し載荷を行ったところ,ポリマーセメントモルタル,エポキシ樹脂モルタルを適用した試験体はいずれも早期に剥離破壊した.また,充填材の引張疲労試験を実施して,輪荷重走行試験で使用した充填材料がコンクリートと比較して低い応力比の繰返しでも疲労破壊が生じる材料であることを確認した.

     これらを踏まえた繰返し載荷による疲労解析検討を行い,再現解析により試験において剥離が発生するまでに界面に作用する応力履歴を解明するとともに,負曲げ作用や載荷荷重を変化させた解析により,それぞれの充填材を用いた場合における実橋適用時の疲労耐久性を明らかにした.

  • 西村 和朗, 加藤 佳孝
    2020 年 76 巻 4 号 p. 421-431
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

     振動締固めによってフレッシュコンクリートが流動するメカニズムについては,様々な提案が報告されているが,統一的な見解が得られていない.このため,振動締固めがフレッシュコンクリートの流動挙動に及ぼす影響を検討した.まず,振動締固めを受けたフレッシュコンクリートのフロー速度を定式化し,実験結果から振動締固めがフレッシュコンクリートに与える影響を把握した.その結果,振動締固めを受けることで,コンクリートの見かけの降伏応力が低下し,フレッシュコンクリートの流動速度が増加することが分かった.加えて,振動締固めを受けるコンクリートの見かけの降伏応力は,粗骨材による流動抵抗,粗骨材の噛合い,振動波の加速度によって決定されると考えられた.

和文報告
  • 竹中 寛, 谷口 修, 田中 亮一, 与那嶺 一秀, 山路 徹, 清宮 理
    2020 年 76 巻 4 号 p. 255-269
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,遠隔離島で活用するコンクリートを想定し,海水,珊瑚由来の石灰石骨材および特殊混和剤を用いた自己充塡型コンクリートの基礎的性質,収縮特性,熱的性質および耐摩耗性について実験的検討を行った.その結果,コンクリート用材料として空隙が多い珊瑚由来の石灰石骨材を用いた場合においても,優れた流動性と適度な材料分離抵抗性を有する自己充塡型コンクリートを製造することができ,普通骨材を用いた場合と同等程度の強度発現性を有すること,収縮ひずみや熱膨張係数が小さくなることなどを明らかにした.また,水セメント比や単位粗骨材容積を小さく設定すれば,普通骨材と同等の耐摩耗性を確保できることがわかった.

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